説明

調理及び焦げ目付け用途用マイクロ波サセプタ

【課題】表面に均一に焦げ目を付けるための、従来のコーティング、印刷、成形、熱成形等の機器を用いる、様々な金属負荷を有する多くの形態のコーティング、インク、プラスチック、積層体等に採用可能な発熱マイクロ波サセプタを提供する。
【解決手段】マイクロ波処理可能な食品容器は、金属粒子と絶縁性粒子との均一な混合物を含む。この金属及び絶縁性粒子との混合物によって、表面により高い熱が生じ、食品により均一に印加され、その結果、ある種の食品によりよく焦げ目がつき、ピッツァ等の生地ベースの製品がよりよく調理される。また、食品容器を作製する方法、調理方法、及び食品容器の作製に有用な組成物も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年3月28日に出願された「調理及び焦げ目付け用途用マイクロ波サセプタ」を名称とする米国仮特許出願第60/665,761号を優先権主張しており、その全内容は、ここに参照することにより組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
食品加熱にマイクロ波放射を用いることは、その速さ、効率性及び低価格性から、いっそう望ましさを増している。しかし、マイクロ波加熱技術は、重大な欠点として、生の食品を充分に加熱すること、及び特別な包装材料を用いることなく、食品の表面に焦げ目を付け、カリカリにすることの両方を実現するに足る熱量を実現することができない。
【0003】
過去においては、マイクロ波包装に用いられる板紙の真空金属化によって、ある種の食品に焦げ目を付け、カリカリにするために必要な高い表面熱を発生させていた。この用途のために選択される金属は、ほとんどの場合、アルミニウムであった。しかし、真空金属化による場合、効率的に、板紙の模様又は特定の部分をコーティングしたり、包装表面上に金属を様々な量で施したりすることはできない。
【0004】
真空金属化された板紙の問題点を克服するため、金属粉末又はフレークを単独であるいは他の材料との組み合わせで含むインク又はコーティング組成物を利用する、その他種々のマイクロ波加熱技術が考案されてきた。特許文献1においてHuang及びPlordeは、少なくとも片面に、熱可塑性樹脂内に金属又は金属合金フレーク(好ましくはアルミニウムフレーク)を含むコーティングを施した誘電体基板を開示している。Hartmanらの特許文献2は、樹脂バインダに含まれた、導電性、半導電性、又は強磁性である微細化されたマイクロ波反応性材料(アルミニウム、錫、青銅、ニッケル等)と、カーボンブラック又はグラファイトと、粉末不活性固体温度調整材(クレイ、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム等)との合成物からなる、2層の紙の間の発熱体が明記されている。特許文献3、特許文献4及び特許文献5において、Pollart及びLaffertyは、紙、板紙、又は熱安定性ポリエステルフィルムの基板上に、樹脂バインダ中で合成された、微細化されたカーボンブラック又はグラファイトと、微細化された、アルミニウム、錫又は青銅等の金属と、微細化された不活性固体(好ましくはクレイ又は炭酸カルシウム)との合成物を含むコーティングを使用することを記載している。Tighe及びParkerの特許文献6及び特許文献7は、樹脂バインダと、金属粒子(ニッケル、鉄、亜鉛、銅、又は好ましくはアルミニウムの、粒子サイズ1−19ミクロンのフレーク、粉末、フラッフ、繊維又はニードル)のフィラーと半導体粒子(カーボンブラック、炭化チタン、酸化亜鉛)のフィラーとの合成物からなる基板、あるいはそれをコーティングした基板で構成される、食品に焦げ目を付けるためのマイクロ波サセプタ包装が記載されている。Fabishらは、特許文献8及び特許文献9において、片面が、誘電体(アルミニウム、カーボン、グラファイト、ピラードクレイ、又はペロブスカイト構造の強誘電体結晶)粒子と磁性体(鉄又はフェライト)粒子の両方を含むポリマー材料でコーティングされた金属基板の積層体を開示している。Alessio は、特許文献10において、金属粉末と第3ホスフィン又はアミンの両方を含む熱可塑性ポリオレフィン組成物を開示している。しかし、これらの技術は何れも、この用途にとって望ましい、高温、加熱均一性、及び加熱制御の組み合わせを提供するものではない。
【0005】
Winston E. Kockによる非特許文献1に記載されているマイクロ波強化のための方法において、格子をなす規則正しく並んだ導電性球体、ディスク、又はストリップが、絶縁性媒体を用いて、均一に互いから分離されている。用いられた導電性球体、ディスク、又はストリップは、巨視的なサイズを有しており、例えば、鋼球ベアリング、金属コーティングされた真珠等であった。この概念は、具体的には通信用途を意図したものであった。
【特許文献1】欧州特許第0,242,952号明細書
【特許文献2】米国特許第4,982,064号明細書
【特許文献3】米国特許第4,943,456号明細書
【特許文献4】米国特許第5,002,826号明細書
【特許文献5】米国特許第5,118,747号明細書
【特許文献6】米国特許第4,864,089号明細書
【特許文献7】米国特許第4,876,423号明細書
【特許文献8】米国特許第5,258,596号明細書
【特許文献9】米国特許第5,391,430号明細書
【特許文献10】WO2004/048463号明細書
【非特許文献1】書籍"Sound Waves and Light Waves"(1965)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、表面に均一に焦げ目を付けるための、従来のコーティング、印刷、成形、熱成形等の機器を用いる、様々な金属負荷を有する多くの形態のコーティング、インク、プラスチック、積層体等に採用可能な発熱マイクロ波サセプタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のマイクロ波サセプタの組成物は、それがコーティングされた表面の均一な加熱を可能にし、種々の用途に有用である。この組成物は、微細化された導電性金属粉末又はフレーク、好ましくはアルミニウム粉末又はフレークと、アスペクト比と粒子サイズの両方について比較的密な分布を有する、微細化された、低アスペクト比の絶縁性粒子、好ましくは球体ガラス粒子との合成物を含む。この導電性材料と低アスペクト比の絶縁性粒子との混合物によって、導電性材料の個々の粒子の規則正しい格子状の分離及び単離が可能になる。ほとんどの場合、粒子は、溶剤又は水中(液体コーティング又は印刷インクに用いられる場合)、又は可塑剤又は樹脂バインダ中(熱可塑性又は熱硬化性樹脂への成形、又は熱成形又は積層樹脂層に使用される厚膜及び薄膜熱可塑性樹脂シートへの押し出し成形に用いられる場合)に担持されるであろうが、乾燥状態で用いられてもよい(特に、粉末コーティングに使用される場合)。
【0008】
本発明は、調理容器のみを意図した容器、及び調理に有用であるのみならず食品用包装を意図した容器を含む、食品用容器として有用な製品を包含する。本発明は、調理される食品とそのような容器との組み合わせを包含する。本発明は、そのような容器を作製する方法、そのような容器を作製するのに有用な組成物、及び容器に収容された食品にマイクロ波エネルギーを印加することによって食品を調理する方法を包含する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、表面に均一に焦げ目を付けるための、従来のコーティング、印刷、成形、熱成形等の機器を用いる、様々な金属負荷を有する多くの形態のコーティング、インク、プラスチック、積層体等に採用可能な発熱マイクロ波サセプタを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、マイクロ波調理用の改良されたサセプタ、及び種々のマイクロ波処理可能な食品包装に採用された場合に、食品に焦げ目を付け、カリカリにするための改良された熱分布を提供する。インク又はコーティングの形態であるこの材料は、板紙、プラスチック、及び/又は発泡体基板等の食品容器包装に適用可能である。射出成形、又は押し出し成形されたシート又はフィルムを介して樹脂に合成された場合、この材料は、マイクロ波処理可能な皿、ボウル、トレイ、包装フィルム、インサート、器具等に形成されること、又はその一部を形成することができる。コーティング、インク、又は成形された/押し出し成形された材料の厚みは、変更、又は特定の加熱及び/又は必要な焦げ目付けに合わせて調整可能である。これらのコーティング、成形及び/又は押し出し成形された対象物は、その後、冷凍又は解凍された食品の貯蔵及び下準備に利用することができる。このサセプタ技術の食品包装への採用は、液体又は粉末コーティング、フレキソ、グラビア、又はシルクスクリーン印刷のインク、熱可塑性又は熱硬化性樹脂への成形、又は熱成形又は積層樹脂層に使用される厚膜及び薄膜熱可塑性樹脂シートへの押し出し成形の形態を取ってもよい。
【0011】
本発明の微細化された導電性金属粉末又はフレークは、アルミニウム、銅、亜鉛、錫、青銅、銀、鉄、ステンレス鋼、ニッケル、金、又はその他任意の導電性金属から構成されてもよい。以下に述べるような種々の形態の粒子を用いてもよい。
【0012】
金属粉末は、一般に10未満、最も典型的には3未満の低アスペクト比を有することを特徴とする。粒子のアスペクト比は、その長さ(粒子の最大寸法)をその厚み(長さに対して垂直に測定される最小寸法)で割ったものである。金属粉末は、通常、溶融金属を微粒化し、その後、急速に固化することによって作製され、一般的には粉末冶金において(下記の通り)金属フレークの前駆物質として、反応金属については爆発物及び花火技術において、用いられる。金属粉末は、粉末の輝きを増加させて、より好ましい美観効果を得るために、例えば、ボールミル又は磨砕機において、静かに研磨され、表面を滑らかにしたり、粉末の表面上の酸化物を部分的に取り除いたりする場合がある。本発明に用いられる場合、金属粉末の平均粒子サイズ(長さ)は1から50ミクロンの間である必要がある。特に、コーティング及びインクにおいては、平均粒子サイズが10ミクロン未満である粉末が好ましい。それより大きな粉末は、コーティング又はインクの表面から突出し、その結果、粗面化してより望ましくない美観効果をもたらす傾向があるからである。より大きな粒子サイズの粉末は、コーティング又はインクフィルムよりずっと厚い熱可塑性又は熱硬化性樹脂への成形、押し出し成形、又はカレンダ加工において効果的に用いることができる。
【0013】
金属フレークは、典型的には10から10,000の範囲の高アスペクト比を有することを特徴とする。これらは一般的に、導電性等の望ましい機能特性を付与すること、又は酸素又は水のマイグレーションに対する障壁をもたらすことと、高い視覚におけるより暗い外観と組み合わされた低い視覚における明るい外観(「フェイスフロップ(face-flop)」現象)、及び場合によっては色調といった、美観の向上の両方を目的として、液体及び粉末コーティング、インク、及びプラスチックにおける顔料として用いられる。最も一般的な金属フレーク顔料は、その可鍛性と高い正反射率からアルミニウムである。金属フレークは、最も典型的には、ボールミル、磨砕機等を用いて、金属粉末又は箔を研削して高アスペクト比を有する小さな粒子にすることによって作製される。これらの方法により作製されたフレークは、以下に述べるような詳細な形態によって更に特徴付けることができる。
【0014】
「コーンフレーク」金属フレークは、縁端が粗く、表面が不均一で、約50から2000と比較的高いアスペクト比を有することを特徴とする。その平均粒子サイズは約4ミクロンから約600ミクロンの範囲であり、その平均厚みは約0.05ミクロンから0.5ミクロンの範囲である。「コーンフレーク」顔料の例としては、シルバーライン社により商標名スパークルシルバーで販売されている製品がある。
【0015】
「シルバーダラー」又は「レンチキュラー(lenticular)」金属フレークは、(「コーンフレーク」材料に比して)より規則正しい、より丸に近い縁端を有し、表面がより平滑で、アスペクト比が約10から200とより低いことを特徴とする。その平均粒子サイズは約4ミクロンから約80ミクロンの範囲であり、その平均厚みは約0.1ミクロンから2.0ミクロンの範囲であり、「コーンフレーク」材料より狭い粒子サイズの分布を有する。「シルバーダラー」顔料の例としては、シルバーライン社により商標名スパークルシルバープレミアで販売されている製品がある。「シルバーダラー」フレークの一部は「耐劣化性」製品であり、それらは、アスペクト比が約10から50の範囲とやや低いことを除いて同様の特徴を有する。「耐劣化性シルバーダラー」顔料の例としては、シルバーライン社により商標名タフレイクで販売されている製品がある。
【0016】
金属フレーク顔料を作製する別の方法では、ポリマー樹脂剥離コートでコーティングされたフレキシブル基板が用いられ、物理蒸着による金属化が行われる。剥離コーティングは適切な溶剤に浸漬することにより可溶化されて、非常に薄い金属粒子が放出され、それらは続いて所望の粒子サイズに縮小される。他の金属フレーク顔料と同様に、これらの真空金属蒸着(「VMD」)顔料は、最も典型的にはアルミニウムを材料とする。従来の研削技術により作製された金属フレーク顔料に比して、「VMD」顔料はずっと薄く、ずっと平滑な表面を有し、その結果、向上した正反射率により非常に輝いた外観を有する。「VMD」顔料は、典型的には、厚みが0.005から0.05ミクロン(50から500オングストローム)の範囲であり、平均粒子サイズが約5から30ミクロンであり、約100から10,000と非常に高いアスペクト比を有する。「VMD」顔料の例としては、シルバーライン社により商標名スターブライトで販売されている製品がある。
【0017】
本発明の最も好ましい微細化された導電性金属粉末又はフレークは、(導電性が高く、入手し易く、比較的低価格であることから)アルミニウムを材料とし、「シルバーダラー」あるいは「VMD」の形態を有し(これらの材料の平滑面がマイクロ波性能を向上させるからである)、5から100ミクロンの範囲の平均粒子サイズを有する。好ましい粒子サイズは、目的とする用途に幾分依存し得る。膜厚が非常に小さくなる傾向があるグラビア又はフレキソ印刷のインクには、5から25ミクロンの範囲のより小さなフレークが好ましい。コーティングには、5から60ミクロンの範囲のやや大きいフレークを用いることができる。インク又はコーティングより比較的ずっと厚いプラスチックにおいては、50から100ミクロンの範囲のより大きいフレークが好ましい。
【0018】
上記非特許文献1に記載された規則正しく並んだ導電性粒子の格子を得るために、上記の金属成分が、微細化された低アスペクト比の絶縁性粒子であって、アスペクト比と粒子サイズの両方について比較的密な分布を有し、金属粉末又はフレークの最小寸法に少なくとも等しく、好ましくはそれより大きい金属粉末又はフレーク粒子間の間隔を得るのに充分なだけ大きい絶縁性粒子と共に採用される。格子は、導電性粒子間に規則正しい間隔を設け、導電体粒子が絶縁性材料に実質的に取り囲まれることを確実にするものでなければならない。導電性粒子が実質的に取り囲まれるとは、個々の導電性粒子が絶縁性材料に取り囲まれる、すなわち、他の導電性粒子と接触していない、又は、導電性粒子の小群が、絶縁性材料に取り囲まれた状態で互いに接触している、すなわち、他の導電性粒子とは接触していないことを意味する。一般に、小群に含まれる導電性粒子は10粒子未満、好ましくは6粒子未満、最も好ましくは3粒子以下であろう。
【0019】
金属粉末又はフレークを、インク又はコーティングに用いられる樹脂バインダ、又は成形された又は押し出し成形されたプラスチック物品のポリマー鎖等、連続的な絶縁層によって分離するだけでは、所望のマイクロ波放射強化を達成するのに充分なだけ規則正しい金属粒子の分布は得られない。同様に、粒子サイズ又はアスペクト比の何れか一方について広い分布を有する絶縁性粒子を用いることによっては、金属粉末又はフレークの格子状の配置は得られず、(プレートレット又はフレーク等)高アスペクト比を有する、又は金属粉末又はフレークの厚みより小さい粒子サイズを有する絶縁性粒子によっては、金属粉末又はフレーク間の適切な三次元的間隔は実現されない。絶縁性粒子の材料は、絶縁材、すなわち、MacMillen Encyclopedia of Physics(1996)に108オームメートル以上の抵抗率を有する材料として定義されているような絶縁材の標準的な定義を満たさなければならない。これらの材料には、ガラス、セラミックス、ゴム、多くの金属酸化物及びプラスチック等が含まれるが、それらに限定されない。
【0020】
絶縁性粒子の平均粒子サイズは、0.1から50ミクロンの間、好ましくは1から20ミクロンの間である。コーティング及びインクに用いられる場合、平均粒子サイズが10ミクロン未満の粒子が好ましく、最も好ましくは5ミクロン未満の粒子である。それより大きな粉末は、コーティング又はインクの表面から突出し、その結果、粗面化してより望ましくない美観効果をもたらす傾向があるからである。絶縁性粒子は、少なくとも80%の粒子が15ミクロンの範囲内に収まる粒子サイズ分布を有する必要がある。絶縁性粒子の平均アスペクト比は、4以下でなければならず、好ましくは2以下であり、アスペクト比の範囲は、平均値の+/−1以内でなければならず、好ましくは平均値の+/−0.5以内である。絶縁性粒子の最も好ましいアスペクト比は1.0、例えば、球体あるいは立方体である。この形態によって、3つの全次元において等しい間隔が得られ、導電性金属材料の粒子の規則正しい間隔の配置及び単離が可能になるからである。実際には、立方体及びその他の通例の立体よりも製造し易いことから、球体が好ましい。これらの球体は、中実であっても、薄壁中空であっても、厚壁中空であっても、又はこれらを組み合わせたものであってもよい。また、実際には、これらの粒子の材料として、ガラス又はセラミックスが好ましい。これらの材料を用いて作製された、粒子サイズ及び分布についての要件を満たす球状製品は、市販され、容易に入手可能であるからである。
【0021】
好ましい実施形態において、個々の導電性粒子又は粒子の小群は、絶縁性粒子の単一層によって、その最も隣接する導電性粒子又は導電性粒子の小群から分離される。従って、隣接する個々の粒子又は粒子の小群間の距離は、絶縁性粒子の厚み又は直径とほぼ同じとなるであろう。絶縁性粒子が互いに接触している必要はない。
【0022】
平均粒子サイズ、及び導電性及び絶縁性粒子の両方についての粒子サイズ分布は、任意の従来技術によって測定されてもよい。コーティング分野において、これは、最も頻繁には、レーザ回折法により、マルバーンマスタサイザ等の機器を用いて行われ、この方法は、本発明に関し、粒子サイズ及び粒子サイズ分布を求めることを目的として用いられる。アスペクト比を計算するために、粒子の厚みを測定又は計算する必要がある。平均厚みの推定値は、J. D. EdwardsとR.I. Wray によるReinhold Publishing Corp., New York(1955)、Aluminum Paint and Powder(第3版)、16頁から22頁に記載されている手順を用い、材料の単一層の水面被覆面積(WCA)を求めることによって計算することができる。そこに記載されているように、粒子の平均厚み(d、μm)は、以下の等式に従って得られる。
【0023】
(数1)
d (μm) = 0.4 (m2 x μm x g-1) / WCA (m2 x g-1)
このようにして得られた厚みの値は、本発明の目的に足る正確なものであり、この方法は、本発明に関し、必要に応じて厚みを求めるために用いられる。
【0024】
金属及び絶縁成分は何れも、9:1から1:9の間、好ましくは5:1から1:5の間、最も好ましくは2:1から1:2の間の、金属と絶縁材の重量比で完全に混合され、サセプタが導入されるであろうシステムと適合するように選ばれた、任意の溶剤、水、可塑剤、又は樹脂バインダと合成される。混合動作は、金属粉末又はフレークの曲がり又は変形を防止し、絶縁性粒子の欠け又は粉砕を防止するために、低せん断力で行われなければならない。混合の時間及び程度は、金属粉末又はフレークと絶縁性粒子の両方が、組成物全体にわたり、完全に均質に分散することを確実にし、例えば、その結果、金属粉末又はフレーク粒子が絶縁性粒子に実質的に取り囲まれるよう、適切でなければならない。金属粉末又はフレークと絶縁性粒子との合成は、別々の工程で行われても、あるいは液体又は粉末コーティング、インク、又はプラスチック配合物を作製するのに用いられる製法の一部として行われてもよい。しかし、金属粉末又はフレークと絶縁性粒子との合成物は、2つの成分がよく混合された混合物が存在することを確実にし、付与されたせん断力が、何れの成分に対しても如何なる損傷も与えない程度の低さであることを確実にするという両方の目的で、別々の操作で作製されるのが好ましい。この別々の操作の一部として、金属粉末又はフレークと絶縁性粒子に、最終用途にとって望ましい任意の溶剤、水、塑性剤、又は樹脂バインダを採用することも可能である。
【0025】
本発明の組成物は、種々の周知の方法により、マイクロ波による下準備のための食品用包装に採用してもよい。おそらく、最も用途の広い方法は、板紙、プラスチック、及び/又は発泡体基板等の食品容器包装に適用可能なインク又はコーティングの形態である。この方法によって、包装の選択された部分のみへの塗布が可能になり、特定の加熱及び/又は焦げ目付けの必要性に合わせて使用を調整するために、塗布する厚みを容易に変更する手段が提供されるからである。インク又はコーティングは、少なくとも、本発明の組成物、樹脂バインダ、及びキャリアとしての溶剤又は水から構成される。用途によっては、界面活性剤、分散剤、流動及び平滑化補助剤、安定剤、その他の顔料又はフィラー、流動性調整剤、架橋剤等、他の材料を所望の特性を得るために用いてもよい。また、任意的に、導電性、半導電性、又は強磁性である第2のマイクロ波活性材料を用いてもよい。インクは、グラビア、フレキソ、シルクスクリーン印刷等の任意の従来法によって塗布されてもよい。同様に、液体コーティングは、噴霧、はけ塗、ロール塗、ディッピング、インモールドコーティング等の任意の従来法によって塗布されてもよく、粉末コーティングの塗布は、噴霧、流動床コーティング等によって行われてもよい。上記の何れの形態においても、用いられる組成物の量は、インク又はコーティング配合物に用いられる樹脂バインダの重量の1%から50%、好ましくは3%から30%の導電性金属粉末又はフレークを得るのに充分でなければならず、インク又はコーティングフィルムの厚みは、0.1から10ミル、好ましくは0.5から4ミルでなければならない。導電性金属粉末又はフレークの量とコーティングの厚みは何れも、用いられる金属粉末又はフレークそのもの、必要な加熱及び/又は焦げ目付けの程度、及び所望の美観効果に依存するであろう。
【0026】
代替的に、本発明の組成物は、熱可塑性又は熱硬化性樹脂に混合されてもよい。この樹脂化合物は、少なくとも、本発明の組成物と、熱可塑性又は熱硬化性樹脂バインダから構成される。用途によっては、可塑剤、潤滑剤、加工補助剤、安定剤、その他の顔料又はフィラー、流動性調整剤、架橋剤等、他の材料を所望の特性を得るために用いてもよい。また、任意的に、導電性、半導電性、又は強磁性である第2のマイクロ波活性材料を用いてもよい。この樹脂化合物は、積層成形、熱成形等の技術によるマイクロ波包装容器の一部又は全体をコーティングするのに用いられてもよい、押し出し成形、カレンダ加工、三本ロールミリング等によって薄膜又は厚膜に形成されてもよい。フィルムの厚みは、用いられる金属粉末又はフレークそのもの、必要な加熱及び/又は焦げ目付けの程度、及び所望の美観効果に依存するであろう。また、樹脂組成物は、押し出し成形、射出成形、ブロー成形等によってプラスチックマイクロ波包装容器全体の中に直接用いてもよい。この後者の方法は、サセプタ層の厚みについて同じだけの制御は得られないが、包装全体にわたり、同程度の加熱及び/又は焦げ目付けが必要とされる場合に有用である。何れの場合も、熱可塑性又は熱硬化性樹脂に用いられる組成物の量は、熱可塑性又は熱硬化性樹脂の重量の0.5%から25%、好ましくは5%から20%の導電性金属粉末又はフレークを得るのに充分でなければならない。
【0027】
本発明の組成物は、食料品の下準備に用いられるものであるため、組成物の全成分が食品に接触する用途における使用に適していれば非常に望ましい。各成分は、一般に安全性が確認されている(Generally Recognized As Safe)(GRAS)材料のリストに挙げられているか、あるいは米国連邦規則集(CFR)の該当する節の特定の塗布及び樹脂系として認可されていなければならない。完成された包装が、食品と本発明の組成物との直接接触を防止するマイクロ波透過コーティングを利用する場合は、このような認可の必要性はないかもしれない。この場合、マイクロ波透過コーティングは、上記に定義したように、食品に接触する用途における使用に適した材料のみから構成されていなければならず、マイクロ波透過コーティング中の本発明の組成物の如何なる成分のマイグレーションも防止して、食品の接触が起こらないことを確実にするものでなければならない。しかし、そのようなマイクロ波透過コーティングを利用する場合、更に容器の製造工程が増えるので、最終製品のコスト増となる。
【0028】
印刷、コーティング、又は可塑性樹脂への混合の何れによって作製された場合も、本発明のサセプタは、製造業者から顧客への出荷用に食料製品を包装するのに用いられ、その後、食品のマイクロ波調理及び焦げ目付けに用いられた後、廃棄処分される単一目的容器にも、マイクロ波調理及び焦げ目付けのために食品を入れ、その後続いて洗浄され再利用される多目的容器にも、あるいは、マイクロ波調理に適した容器に導入されて、その中に配置された食品のより均一な加熱及び焦げ目付けを実現し、その後続いて洗浄され再利用される取り外し・再利用可能なインサートにも作製することができる。
【0029】
本発明のサセプタを用いて作製される容器は、マイクロ波放射によって加熱可能な全ての食品の下準備に使用可能であるが、最も効果的には、天火で焼く、あぶる、直火で焼く、フライパンで炒める、又はグリルで焼く等、マイクロ波を使用しない方法で調理される場合に、表面に焦げ目が付いた又は表面がカリカリになった食料製品を準備するのに用いられる。例としては、それらに限定されないが、肉、鶏肉、魚、及び海産食物(これらには全て、パン粉をまぶしてもまぶさなくてもよい)、ピッツァ、ストロンボリ、ピエロギ、ミートパイ等の生地製品、及びシシトウガラシ、タマネギ、マッシュルーム、ナス、カボチャ、トマト等の野菜が挙げられる。
【0030】
以下の実施例により、発明を説明するが、それらに限定されるものではない。
【実施例】
【0031】
(実施例1)平均粒子サイズ15ミクロンのアルミニウムフレーク70重量%を含有するシルバーライン社製「シルバーダラー」タイプアルミニウム顔料SSP-554、1000グラムをリボン羽根型混合機に加える。ここに、平均粒子サイズが4ミクロンであって、80%を超える粒子が1から10ミクロンの間に収まる粒子サイズ分布を有し、アスペクト比の範囲が1.0から1.25である球状ガラス粒子700グラムを加えて、金属と絶縁体の比率が1:1の組成物を得る。滑らかでペーストのような粘稠性を維持するため、更なる溶剤を加え、混合物を低速で2時間攪拌して、アルミニウムフレークとガラス球体の両方を、組成物全体にわたり、完全に均質に分散させる。
【0032】
(比較例1)実施例1を、ガラス球体を加えずに、SSP-554アルミニウム顔料を用いて実施する。
【0033】
(評価)実施例1及び比較例1の製品を、インク配合物に、インク中の樹脂バインダの12重量%のアルミニウムフレークを得るのに必要な量だけ加える。各インクを、板紙基板にグラビア印刷により塗布し、完全に乾燥させる。市販の冷凍ピッツァを、同一のマイクロ波オーブン内で、ピッツァの製造業者が勧める電力レベル及び時間で調理する。出来上がった際、ピッツァは両方とも全体にわたって完全に加熱されているが、実施例1のインクを印刷した板紙基板上で調理された方は、より均一で完全な焦げ目が付き、よりカリカリして、従来のオーブンで得られるものにより似通った外皮を有しているのに対し、比較例1のインクを印刷した板紙基板上で調理された方の外皮は、よりねっとりした、より生焼けのような粘稠性を有している。
【0034】
(実施例2及び3及び比較例2-7)表1に列挙されているような組成を有する樹脂化合物を準備し、直径2.25インチ、厚み0.125インチのディスクに射出成形により成形する。
【0035】
上記組成物に用いられる材料は、
・アルミニウム金属フレーク:平均粒子サイズ83ミクロンの顔料であるシルバーライン社製シルベット440-30-E1
・ガラス球体:実施例1に用いられたもの
・カーボンブラック:第2のマイクロ波活性材料として用いられる、平均粒子サイズ30nmの高導電性カーボンブラック
・フュームドシリカ:HartmanとPollart及びLaffertyに基づく先行技術に記載されているような「不活性固体」として用いられる、低アスペクト比を有する平均粒子サイズ12nmの材料
・カオリンクレイ:HartmanとPollart及びLaffertyに基づく先行技術に記載されているような「不活性固体」として用いられる、高アスペクト比を有する平均粒子サイズ0.2ミクロンの材料
・PS樹脂:メルトフローインデックス1.50の汎用ポリスチレン樹脂とした。
【0036】
【表1】

【0037】
(評価)成形されたディスクを、熱絶縁性マイクロ波不活性支持体上にセットし、筐体内に均等にマイクロ波エネルギーを供給するためのモード攪拌器を備えたマイクロ波オーブンの中央に配置する。光ファイバー熱電対を、ディスクの上面に、1つはディスク中央付近に、1つは縁端付近に、ガラステープで取り付け、データレコーダに接続する。オーブン扉を閉じ、2箇所における温度をデータレコーダによりモニターした状態で、周波数2.5GHz、電力800ワットのマイクロ波エネルギーを5分間印加する。表2に、達成されたピーク温度を列挙する。
【0038】
【表2】

【0039】
本発明の実施例は、絶縁性球体を含まない、又は先行技術の「不活性固体」と合成された同様のマイクロ波活性材料に比して、ディスクの表面全体にわたってより高い温度を提供し、それによってより均一な調理及び焦げ目付け性能が得られる。
【0040】
上記に、本発明の詳細な説明を行ってきたが、本発明はそれに限定されない。発明の精神に影響を及ぼさない変形例が明らかとなるであろう。発明は、特許請求の範囲によって定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性金属粒子と絶縁性粒子との均一な混合物を含む食品容器であって、
前記導電性粒子に規則正しい間隔が存在し、
前記導電性粒子が絶縁性粒子に実質的に取り囲まれている食品容器。
【請求項2】
前記混合物がコーティングとして存在する請求項1に記載の食品容器。
【請求項3】
成形された樹脂組成物からなり、前記樹脂組成物が前記金属粒子と絶縁性粒子との混合物を含む請求項1に記載の食品容器。
【請求項4】
前記金属粒子が、100ミクロン以下の粒子サイズを有するフレーク又は粉末の形態である請求項1に記載の食品容器。
【請求項5】
前記絶縁性粒子が0.1から50ミクロンの間の平均粒子サイズを有する請求項1に記載の食品容器。
【請求項6】
前記絶縁性粒子が1から20ミクロンの平均粒子サイズを有する請求項5に記載の食品容器。
【請求項7】
前記絶縁性粒子が10ミクロン未満の平均粒子サイズを有する請求項2に記載の食品容器。
【請求項8】
前記絶縁性粒子が5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する請求項7に記載の食品容器。
【請求項9】
前記絶縁性粒子は、少なくとも80%の粒子が15ミクロンの範囲内に収まる粒子サイズ分布を有する請求項1に記載の食品容器。
【請求項10】
前記絶縁性粒子が4以下の平均アスペクト比を有する請求項1に記載の食品容器。
【請求項11】
前記平均アスペクト比が2以下である請求項10に記載の食品容器。
【請求項12】
前記絶縁性粒子のアスペクト比の範囲が平均値の+/−1以内である請求項10に記載の食品容器。
【請求項13】
前記絶縁性粒子のアスペクト比の範囲が平均値の+/−0.5以内である請求項12に記載の食品容器。
【請求項14】
前記絶縁性粒子がセラミック又はガラスを材料とする請求項1に記載の食品容器。
【請求項15】
調理される食品を更に含む請求項1に記載の食品容器。
【請求項16】
前記容器が、前記食品の包装の形態を有する請求項15に記載の食品容器。
【請求項17】
第2のマイクロ波活性材料を更に含む請求項1に記載の食品容器。
【請求項18】
前記第2のマイクロ波活性材料が、導電性、半導電性、又は強磁性である請求項17に記載の食品容器。
【請求項19】
請求項1の食品容器に収容された食品にマイクロ波エネルギーを印加することを含む食品の調理方法。
【請求項20】
導電性金属粒子と絶縁性粒子との均一な混合物を含む、マイクロ波処理可能な食品の容器を作製するのに有用な組成物であって、
前記金属粒子が前記絶縁性粒子に実質的に取り囲まれている組成物。
【請求項21】
コーティング材料の形態であって、前記混合物用のキャリアを更に含む請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
成形可能な樹脂材料の形態であって、前記混合物が分散されている樹脂組成物を更に含む請求項20に記載の組成物。
【請求項23】
前記金属粒子が、100ミクロン以下の粒子サイズを有するフレーク又は粉末の形態である請求項20に記載の組成物。
【請求項24】
前記絶縁性粒子が0.1から50ミクロンの間の平均粒子サイズを有する請求項20に記載の組成物。
【請求項25】
前記絶縁性粒子が1から20ミクロンの平均粒子サイズを有する請求項20に記載の組成物。
【請求項26】
前記絶縁性粒子が10ミクロン未満の平均粒子サイズを有する請求項21に記載の組成物。
【請求項27】
前記絶縁性粒子が5ミクロン未満の平均粒子サイズを有する請求項21に記載の組成物。
【請求項28】
前記絶縁性粒子は、少なくとも80%の粒子が15ミクロンの範囲内に収まる粒子サイズ分布を有する請求項20に記載の組成物。
【請求項29】
前記絶縁性粒子が4以下の平均アスペクト比を有する請求項20に記載の組成物。
【請求項30】
前記平均アスペクト比が2以下である請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記絶縁性粒子のアスペクト比の範囲が平均値の+/−1以内である請求項29に記載の組成物。
【請求項32】
前記絶縁性粒子のアスペクト比の範囲が平均値の+/−0.5以内である請求項29に記載の組成物。
【請求項33】
前記絶縁性粒子がセラミック又はガラスを材料とする請求項20に記載の組成物。
【請求項34】
第2のマイクロ波活性材料を更に含む請求項20に記載の組成物。
【請求項35】
前記第2のマイクロ波活性材料が、導電性、半導電性、又は強磁性である請求項34に記載の組成物。

【公開番号】特開2006−289076(P2006−289076A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−85850(P2006−85850)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(506102178)シルバーライン マニュファクチュアリング コー.,インク. (2)
【Fターム(参考)】