説明

負荷駆動回路

【課題】ユーザに対して異常が発生する前兆を事前に報知することができる負荷駆動回路を提供する。
【解決手段】検出回路14にて、過電流の発生やその前兆および他の異常の発生を検出し、温度上昇に基づいて過電流の発生やその前兆を検出したり、実際に半導体スイッチング素子12を通じて負荷3に流されている電流に基づいて過電流の発生やその前兆を検出すると共に、負荷3への電源電圧の印加の状態の異常、例えば負荷オープンと出力ON故障および出力OFF故障の発生を検出する。そして、過電流の前兆が検出されると、前兆ダイアグ回路18cにその旨を伝え、それに対応する前兆ダイアグ信号を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷への電源供給の状態の異常の発生に加えて異常の前兆を報知することができる負荷駆動回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1において、異常が発生したことを報知することができる車両用電子制御装置(以下、ECUという)が開示されている。具体的には、市場にて内部回路が保護できずに破壊された状態でECUが回収された場合に、部品の不良によってECUが破壊されたのか、それとも実際に過電圧やバッテリの逆接続が発生したために破壊されたのかが分からないことから、特許文献1に開示されたECUでは、過電圧や過電流が入力された際に、それをメモリとして記憶することで、その履歴が分かるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−53876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示されるECUでは、異常が発生したときに制御が行われるのであって、ECUによる出力を遮断して回路を積極的に保護するといった制御を行ったり、ユーザの意思に反して出力を遮断してしまうときに、その前兆をユーザに教えることはできない。
【0005】
本発明は上記点に鑑みて、ユーザに対して異常が発生する前兆を事前に報知することができる負荷駆動回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、電源(2)から負荷(3)への電圧印加のオンオフを制御する半導体スイッチング素子(12)と、スイッチ(4)の投入状態に応じた入力信号に基づいて制御信号を出力する入力回路(10)と、該入力回路(10)が出力する制御信号に基づいて半導体スイッチング素子(12)のオンオフを制御する出力制御回路(11)とを備えた負荷駆動回路において、負荷(3)への電源供給の状態の異常の発生およびその前兆を検出し、異常の前兆を示す前兆信号を出力する異常検出回路(13〜17)と、異常検出回路(13〜17)で検出された異常の前兆を示す前兆信号を出力する前兆ダイアグ回路(18c)とを備えていることを特徴としている。
【0007】
このように、異常検出回路(13〜17)にて異常の発生のみでなく、異常の前兆に関しても検出するようにしている。このため、ユーザに対して異常の発生を報知するだけでなく、異常の前兆を事前に報知することが可能となる。
【0008】
具体的には、請求項2に記載したように、異常検出回路(13〜17)にて、負荷に供給される負荷電流が過大であることを示す過電流の発生およびその前兆の検出を行い、前兆ダイアグ回路(18c)では、異常検出回路(13〜17)から過電流の前兆が検出されたことを示す前兆信号が伝えられることにより、過電流の前兆を示す前兆ダイアグ信号が出力されるようにすることができる。
【0009】
例えば、請求項3に記載したように、異常検出回路(13〜17)にて、負荷電流が異常閾値を超えている継続時間が故障判定時間(T)に至ると過電流の発生と判定し、負荷電流が異常閾値以下の前兆閾値を超えている継続時間が故障判定時間(T)よりも短い前兆判定時間(T’)に至るか、もしくは、異常閾値よりも小さい前兆閾値を超えている継続時間が故障判定時間(T)以下の前兆判定時間(T’)に至ると過電流の前兆と判定することができる。
【0010】
このような異常検出回路(13〜17)として、例えば請求項4に記載したように、負荷(3)に供給される負荷電流もしくは負荷(3)に印加される電圧を直接検出することで、過電流の発生およびその前兆を検出する過電流検出回路(15a)を備えることができる。
【0011】
また、請求項5に示すように、負荷(3)に流れる負荷電流に基づく半導体スイッチング素子(12)の温度上昇を検出することで過電流の発生およびその前兆を検出する加熱検出回路(15b)を備えることもできる。
【0012】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる負荷駆動回路1および負荷駆動回路1が接続される各部を示したブロック図である。
【図2】過電流の前兆もしくは発生の判定イメージを示したタイミングチャートである。
【図3】負荷オープンなどの各種異常の前兆もしくは発生の判定イメージを示したタイミングチャートである。
【図4】異常判定に閾値のみを使う場合の判定イメージを示したタイミングチャートである。
【図5】ダイアグ信号をシリアル信号にて出力する場合の構成を示したブロック図である。
【図6】過去ダイアグ回路18bへの記憶形態の変形例を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態にかかる負荷駆動回路1および負荷駆動回路1が接続される各部を示したブロック図である。以下、この図を参照して、本実施形態にかかる負荷駆動回路1などについて説明する。
【0016】
図1に示される負荷駆動回路1は、バッテリなどの電源2からの電力供給に基づいて、例えば車両用のヘッドランプなどの負荷3を駆動するものである。具体的には、負荷駆動回路1の入力端子1aにスイッチ4が接続されていると共に、電源端子1bに電源2が接続され、出力端子1cに負荷3が接続されている。そして、負荷駆動回路1は、ユーザによるスイッチ4の操作状態に応じた入力信号が入力端子1aを通じて入力されることで、その入力信号に応じて電源端子1bから入力される電源電圧を出力端子1cに接続された負荷3に対して印加する。
【0017】
スイッチ4は、一方の接点がグランド接続されており、スイッチ4が投入されることで入力端子1aの電位がグランド電位となる。このため、入力信号がスイッチ4の投入前にはハイレベル、投入後にはローレベルとなり、この入力信号の電位に応じて負荷3への電圧印加のオンオフが制御される。
【0018】
負荷駆動回路1は、入力回路10、出力制御回路11、半導体スイッチング素子12、温度検出回路13、検出回路14、外部ショート検出回路15、負荷オープン検出回路16、内部故障検出回路17、ダイアグ出力回路18およびOR回路19a〜19cを備えている。これらのうち、温度検出回路13、検出回路14、外部ショート検出回路15、負荷オープン検出回路16、内部故障検出回路17が本発明の異常検出回路を構成するものである。
【0019】
入力回路10は、入力端子1aを通じて入力される入力信号に応じて出力制御回路11による半導体スイッチング素子12の駆動を制御するものである。例えば、入力回路10は、スイッチ4が投下されて入力信号がローレベルのときには、出力制御回路11にて半導体スイッチング素子12をオンさせる制御信号を出力し、スイッチ4が遮断されて入力信号がハイレベルのときには、出力制御回路11にて半導体スイッチング素子12をオフさせる制御信号を出力する。
【0020】
出力制御回路11は、入力回路10から入力される制御信号に基づいて半導体スイッチング素子12をオンオフ駆動する。例えば、出力制御回路11は、入力回路10から入力される制御信号が半導体スイッチング素子12をオンさせることを指示しているときにはハイレベルを出力し、半導体スイッチング素子12をオフさせることを指示しているときにはローレベルを出力する。また、出力制御回路11は、外部ショート検出回路15での検出結果を示す信号を入力し、この検出結果に基づいて、過電流発生時に入力回路10からの制御信号に関わらず半導体スイッチング素子12をオフすることで負荷3に対して流される電流(以下、負荷電流という)が過大となる状態、つまり過電流の発生が継続することを抑制している。
【0021】
半導体スイッチング素子12は、MOSトランジスタやバイポーラトランジスタなどによって構成され、出力制御回路11の出力に応じてオンオフされる。そして、半導体スイッチング素子12がオンされると、電源端子1bを通じて入力される電源2の電圧が出力端子1cを通じて負荷3に印加される。
【0022】
温度検出回路13は、半導体スイッチング素子12の温度を検出するためのものである。例えば、温度検出回路13は、直列接続された複数のダイオードなどによって構成されており、図示しない定電圧源の電圧が複数のダイオードに印加され、複数のダイオードの順電圧Vfが温度特性によって変化することから、半導体スイッチング素子12の温度に応じて複数のダイオードに流れる電流の値もしくは複数のダイオード全体での電圧降下量が変動する。この電流値もしくは電圧降下量が半導体スイッチング素子12の温度を示していることから、温度検出回路13は、これら電流値もしくは電圧降下量を検出回路14に出力する。
【0023】
検出回路14は、負荷3への電源供給の状態の異常の発生や前兆を検出する。具体的には、検出回路14は、過電流の発生やその前兆および他の異常の発生を検出しており、温度上昇に基づいて過電流の発生やその前兆を検出したり、実際に半導体スイッチング素子12を通じて負荷3に流されている電流に基づいて過電流の発生やその前兆を検出すると共に、負荷3への電源電圧の印加の状態の異常、例えば負荷オープンと出力ON故障および出力OFF故障の発生を検出する。
【0024】
具体的には、検出回路14には、温度検出回路13の出力が入力されている。この温度検出回路13の出力に基づいて、検出回路14で半導体スイッチング素子12の温度上昇を検出することで過電流の発生やその前兆を検出している。すなわち、温度上昇は、負荷電流の大きさに応じた半導体スイッチング素子12の発熱に起因しているため、温度検出回路13で検出される電流値もしくは電圧降下量により負荷電流を推定できる。このため、温度検出回路13で検出される電流値もしくは電圧降下量を検出回路14に入力することによって検出回路14で負荷電流を推定し、それに基づいて過電流の発生やその前兆を検出する。
【0025】
また、検出回路14には、半導体スイッチング素子12のローサイド側の電圧が入力されている。そして、検出回路14は、半導体スイッチング素子12のローサイド側の電位が負荷3に印加されている電圧を表していることから、この電圧から負荷3に流される負荷電流を推定し、過電流の発生やその前兆を検出する。例えば、過電流は負荷3のショートなどに起因して発生するため、過電流が発生しているときには例えば半導体スイッチング素子12のローサイド側の電位が大幅に低下して零に近くなる。これを検出することで、過電流やその前兆を検出することができる。さらに、検出回路14は、半導体スイッチング素子12のローサイド側の電圧に基づいて、負荷オープンや出力ON故障および出力OFF故障やその前兆の検出を行っている。
【0026】
負荷オープンとは、半導体スイッチング素子12がオンしている状態であるにも関わらず、負荷3に対して電流が流れていないような状況を意味しており、負荷3に接続される経路(例えばワイヤ)の断線などが該当する。例えば、負荷3に対して電流が流れないために半導体スイッチング素子12のローサイド側の電位が電源電圧となっている場合など、負荷オープンが発生していないときと異なる電位のときに、負荷オープンを検出している。出力ON故障とは、半導体スイッチング素子12をオフしても電源2による電圧印加が続けられてしまう状態を意味しており、電源端子1bや出力端子1cよりも内側、つまり負荷駆動回路1内での故障が該当する。出力OFF故障とは、半導体スイッチング素子12をオンしても電源2からの電圧印加が行われない状態を意味しており、例えば半導体スイッチング素子12のオープン故障などが該当する。
【0027】
そして、検出回路14は、過電流の発生やその前兆を検出したり、負荷オープンや出力ON故障および出力OFF故障の発生を検出すると、それを示す信号を外部ショート検出回路15や負荷オープン検出回路16および内部故障検出回路17に出力することで、各部に過電流の発生やその前兆および異常の発生を伝えている。
【0028】
なお、ここでは、検出回路14に半導体スイッチング素子12のローサイド側の電位が入力されるようにすることで過電流の発生やその前兆を検出しているが、他の手法であっても構わない。例えば、半導体スイッチング素子12を負荷3に対して電流供給を行うメイン素子とメイン素子に流れる電流に比例しつつ十分に小さな電流を流すセンス素子とを有したカレントミラー回路にて構成し、センス素子側の電流が検出回路14に入力されるようにしても、過電流を直接検出することができる。
【0029】
外部ショート検出回路15は、負荷短絡などの外部ショートを検出する。外部ショート時には、過電流が発生することから、過電流の発生やその前兆を検出することで、外部ショートを検出している。具体的には、外部ショート検出回路15には、過電流検出回路15aと加熱検出回路15bが備えられている。
【0030】
過電流検出回路15aは、検出回路14が半導体スイッチング素子12のローサイド側の電位に基づいて過電流の発生やその前兆を検出したことを示す信号を出力すると、その信号を入力してそれに応じた信号を発生させる。例えば、本実施形態の場合には、過電流検出回路15aからハイレベルが出力される。また、加熱検出回路15bは、検出回路14が温度上昇に基づいて過電流の発生やその前兆を検出したことを示す信号を出力すると、その信号を入力してそれに応じた信号を発生させる。例えば、本実施形態の場合には、加熱検出回路15bからハイレベルが出力される。
【0031】
そして、過電流検出回路15aや加熱検出回路15bによる過電流の発生もしくは加熱の発生の前兆を示す信号(以下、前兆信号という)は、第1OR回路19aに入力され、過電流検出回路15aと加熱検出回路15bの前兆信号のいずれか一方でもハイレベルであれば、第1OR回路19aからも前兆信号としてハイレベルが出力される。また、過電流検出回路15aや加熱検出回路15bによる過電流の発生もしくは加熱の発生を示す信号(以下、発生信号という)は、第2OR回路19bに入力され、過電流検出回路15aと加熱検出回路15bの発生信号のいずれか一方でもハイレベルであれば、第2OR回路19bからも発生信号としてハイレベルが出力される。
【0032】
負荷オープン検出回路16は、検出回路14が負荷オープンの発生を検出したことを示す信号を出力すると、その信号を入力してそれに応じた信号を発生させる。例えば、本実施形態の場合には、負荷オープン検出回路16からハイレベルが出力される。
【0033】
内部故障検出回路17は、負荷駆動回路1の内部の故障を検出する。具体的には、内部故障検出回路17には、出力ON故障検出回路17aと出力OFF故障検出回路17bが備えられている。
【0034】
出力ON故障検出回路17aは、検出回路14が半導体スイッチング素子12のローサイド側の電位に基づいて出力ON故障の発生を検出したことを示す信号を出力すると、その信号を入力してそれに応じた信号を発生させる。例えば、本実施形態の場合には、出力ON故障検出回路17aからハイレベルが出力される。また、出力OFF故障検出回路17bは、検出回路14が出力OFF故障の発生を検出したことを示す信号を出力すると、その信号を入力してそれに応じた信号を発生させる。例えば、本実施形態の場合には、出力OFF故障検出回路17bからハイレベルが出力される。
【0035】
そして、出力ON故障検出回路17aや出力OFF故障検出回路17bによる出力ON故障や出力OFF故障の発生を示す信号は、第3OR回路19cに入力され、出力ON故障検出回路17aと出力OFF故障検出回路17bの出力のいずれか一方でもハイレベルであれば、第3OR回路19cからもハイレベルが出力される。
【0036】
ダイアグ出力回路18は、過電流の発生やその前兆もしくは異常の発生時に、それを示すダイアグ信号(検査信号)を出力するものである。具体的には、ダイアグ出力回路18には、現在ダイアグ回路18aと過去ダイアグ回路18bおよび前兆ダイアグ回路18cが備えられている。
【0037】
現在ダイアグ回路18aは、現在の状況を示すダイアグ信号を出力するもので、外部ショート検出回路15や負荷オープン検出回路16および内部故障検出回路17の検出結果に応じた現在ダイアグ信号を出力として発生させる。具体的には、現在ダイアグ回路18aは、第2OR回路19bの出力や負荷オープン検出回路16および第3OR回路19cの出力を受け取り、それに対応する現在ダイアグ信号を発生させる。
【0038】
過去ダイアグ回路18bは、現在ダイアグ回路18aと連動して外部ショート検出回路15の検出結果が示すダイアグ状態を図示しないメモリに記憶し、その記憶内容に応じた過去ダイアグ信号を出力として発生させる。例えば、過去ダイアグ回路18bは、所定周期毎に現在のダイアグ状態に更新しているが、スイッチ4を遮断した時には遮断直前に記憶していた内容をそのまま保持する。そして、例えば、ダイアグツールなどによる消去指令が外部から入力されると、記憶していたダイアグ状態をリセットする。
【0039】
前兆ダイアグ回路18cは、過電流の発生の前兆を示すダイアグ信号を出力するもので、外部ショート検出回路15の検出結果に応じた現在ダイアグ信号を出力として発生させる。具体的には、前兆ダイアグ回路18cは、第1OR回路19aの出力を受け取り、それに対応する前兆ダイアグ信号を発生させる。
【0040】
これら現在ダイアグ回路18aが発生させる現在ダイアグ信号、過去ダイアグ回路18bが発生させる過去ダイアグ信号および前兆ダイアグ回路18cが発生させる前兆ダイアグ信号は、それぞれ、第1〜第3ダイアグ出力端子1d〜1fから出力される。
【0041】
そして、これら第1〜第3ダイアグ出力端子1d〜1fから出力される各種ダイアグ信号が例えば負荷駆動回路1の外部に備えられたボデーECU5などの他のECUに入力され、ボデーECU5で過電流の発生の前兆があることや過電流の発生もしくは異常の発生が読み取られる。これに基づき、過電流の発生の前兆があることや過電流の発生もしくは異常の発生時に、ボデーECU5からウォーニングランプ6に対して報知指令信号が出力される。これにより、ウォーニングランプ6にて、過電流の発生の前兆があることや過電流の発生もしくは異常の発生がユーザに対して報知される。
【0042】
続いて、上記のように構成された負荷駆動回路1の作動について説明する。まず、スイッチ4が投入される前のときには、入力端子1aを通じて入力回路10に入力される入力信号がローレベルになっていないため、入力回路10からは半導体スイッチング素子12をオンさせる制御信号が出力されない。このため、出力制御回路11の出力もローレベルとなり、半導体スイッチング素子12がオフされ、負荷3に対して電源2の電源電圧が印加されない。
【0043】
次に、スイッチ4が投入されると、入力端子1aを通じて入力回路10に入力される入力信号がローレベルになるため、入力回路10から半導体スイッチング素子12をオンさせる制御信号が出力される。このため、出力制御回路11の出力がハイレベルになって半導体スイッチング素子12がオンされ、負荷3に対して電源2の電源電圧が印加される。これにより、負荷3が駆動される。例えば、負荷3がヘッドランプであれば、ヘッドランプが点灯される。
【0044】
このとき、負荷3のショートなどによる外部ショートが発生すると、半導体スイッチング素子12のローサイド側の電位が零に近い電圧になる。この電位に基づいて検出回路14で過電流検出が行われる。例えば、検出回路14では、過電流の判定に時間と閾値の双方を用いている。
【0045】
図2は、過電流の前兆もしくは発生の判定イメージを示したタイミングチャートである。上述したように、半導体スイッチング素子12のローサイド側の電位から負荷電流が推定される。この負荷電流が、図2に示されるように過電流になる前兆があると想定される前兆閾値を超え、かつ、その超えている時間が前兆判定時間T’を超えている場合には過電流が発生する前兆があると判定する。また、推定された負荷電流が過電流になっていると想定される異常閾値を超え、かつ、その超えている時間が前兆判定時間T’よりも長い故障判定時間Tを超えている場合には過電流の発生と判定し、例えば半導体スイッチング素子12を遮断して負荷3への電圧印加を遮断する。このようにすることで、過電流の発生だけでなく、過電流の発生の前兆も検出することができる。
【0046】
なお、ここでは、前兆判定時間T’を故障判定時間Tよりも短く、前兆閾値を異常閾値よりも小さく設定しているが、前兆閾値を異常閾値よりも小さくすれば前兆判定時間T’を故障判定時間Tと等しくしても良いし、逆に、前兆判定時間T’を故障判定時間Tよりも短くすれば前兆閾値を異常閾値と等しくしても良い。つまり、前兆判定時間T’が故障判定時間T以下の長さにしつつ前兆閾値を異常閾値よりも小さな値とするか、もしくは、前兆閾値を異常閾値以下にしつつ前兆判定時間T’を故障判定時間Tよりも短くすれば良い。
【0047】
また、同様の検出手法により、加熱検出も行っている。すなわち、図2に示したように、加熱検出に関しても、温度検出回路13で検出される電流値もしくは電圧降下量が検出回路14に入力され、それらから負荷電流が推定される。そして、この負荷電流が過電流になる前兆があると想定される前兆閾値を超え、かつ、その超えている時間が前兆判定時間T’を超えている場合には過電流が発生する前兆があると判定する。さらに、推定された負荷電流が過電流になっていると想定される異常閾値を超え、かつ、その超えている時間が故障判定時間Tを超えている場合には過電流の発生と判定する。このように、加熱検出においても、過電流に起因すると想定される加熱状態を時間と閾値の双方で判定することができる。これにより、加熱検出に基づく過電流の発生を検出することができるし、過電流の発生の前兆の検出することもできる。
【0048】
そして、このようにして過電流の発生の前兆が検出されると、検出回路14から過電流検出回路15aに過電流の発生の前兆を検出したことを示す信号が出力され、過電流検出回路15aや加熱検出回路15bから第1OR回路19aにハイレベルが出力される。この信号が前兆ダイアグ回路18cに入力され、前兆ダイアグ回路18cが前兆ダイアグ信号を発生させる。
【0049】
さらに、負荷オープンや出力ON故障もしくは出力OFF故障が発生した場合には、半導体スイッチング素子12のローサイド側の電位が故障時と異なる電位となる。この状態が所定時間継続しているような場合に、異常の前兆もしくは異常が発生したと判定している。
【0050】
例えば、負荷オープンが発生している異常時には、スイッチ4が投入されて半導体スイッチング素子12がオンされているにも関わらず、負荷3に電源電圧が印加されないため、半導体スイッチング素子12のローサイド側の電位が負荷オープンが発生していない正常時よりも高くなったり、逆に低くなったりする。つまり、検出回路14に入力される電位が異常時には正常時と異なる値となるため、異なった値の継続時間が故障判定時間Tを超えたときには負荷オープンの発生と判定する。同様に、出力ON故障や出力OFF故障が発生したときにも、半導体スイッチング素子12のローサイド側の電位が正常時と異なる値となるため、異なった値の継続時間が故障判定時間Tを超えたときに出力ON故障や出力OFF故障の発生と判定する。
【0051】
このようにして、過電流、負荷オープン、出力ON故障もしくは出力OFF故障の発生が検出されると、検出回路14からこれらの異常の発生を示す信号が出力される。これに基づき、過電流検出回路15aもしくは加熱検出回路15bから第2OR回路19bにハイレベルが出力されることで第2OR回路19bからハイレベルが出力されたり、負荷オープン検出回路16からハイレベルが出力されたり、出力ON故障検出回路17aや出力OFF故障検出回路17bから第3OR回路19cにハイレベルが出力されることで第3OR回路19cからハイレベルが出力される。この信号が現在ダイアグ回路18aに入力され、現在ダイアグ回路18aが現在ダイアグ信号を発生させる。
【0052】
また、現在ダイアグ回路18aに同期して過去ダイアグ回路18bのメモリにも現在のダイアグ状態が記憶されていき、それに基づいて過去ダイアグ回路18bが過去ダイアグ信号を発生させる。
【0053】
そして、上記したように、前兆ダイアグ信号や現在ダイアグ信号もしくは過去ダイアグ信号が出力されると、それらの信号がボデーECU5に入力されるため、ボデーECU5から各信号に応じた報知指令信号がウォーニングランプ6に対して出力される。これにより、前兆ダイアグ信号が出力されたときには、ウォーニングランプ6のうち過電流の前兆を示すランプが点灯させられ、現在ダイアグ信号が出力されたときにはウォーニングランプ6のうち過電流の発生や他の異常の発生を示すランプが点灯させられるなど、過電流や異常の発生状況に応じた報知を行うことができる。
【0054】
以上説明した本実施形態の負荷駆動回路1では、過電流の発生のみでなく、過電流の前兆に関しても検出するようにしている。このため、ユーザに対して過電流の発生を報知するだけでなく、過電流の前兆を事前に報知することが可能となる。したがって、例えば、ユーザの意思に反して負荷駆動回路1の出力を遮断して負荷3への電圧印加を停止するような場合にも、その前兆をユーザに対して教えることができる。
【0055】
(他の実施形態)
(1)上記実施形態では、過電流に関してのみその前兆があることを検出するようにしていたが、他の異常に関してもその前兆があることを検出し、ユーザに対して報知するようにしても良い。
【0056】
図3を参照して、負荷オープンや出力ON故障もしくは出力OFF故障の発生の前兆を検出する場合について説明する。図3は、上記した負荷オープンなどの各種異常の前兆もしくは発生の判定イメージを示したタイミングチャートである。
【0057】
例えば、負荷オープンが発生している異常時には、スイッチ4が投入されて半導体スイッチング素子12がオンされているにも関わらず、負荷3に電源電圧が印加されないため、半導体スイッチング素子12のローサイド側の電位が負荷オープンが発生していない正常時よりも高くなったり、逆に低くなったりする。つまり、図3に示されるように、検出回路14に入力される電位が異常時には正常時と異なる値となるため、故障判定時間Tを超えると、負荷オープンの発生と判定している。そして、例えば半導体スイッチング素子12を遮断して負荷3への電圧印加を遮断する。このため、異なった値の継続時間が故障判定時間Tよりも短い前兆判定時間T’を超えたときに負荷オープンが発生する前兆があると判定することで、負荷オープンの前兆を検出することも可能となる。このように、他の異常に関しても、異常が発生する前に、事前にその前兆を検出し、ユーザに報知するようにしても良い。なお、出力ON故障や出力OFF故障についても、同様の検出手法によって、それらの前兆を検出することができる。
【0058】
(2)上記では、過電流の判定に時間と閾値の双方を用いている場合について説明しており、負荷オープンなどの他の異常に関しては異常の判定に時間のみを用いる場合について説明しているが、これらの異常の判定に閾値のみを使っても良い。図4は、異常判定に閾値のみを使う場合の判定イメージを示したタイミングチャートである。
【0059】
例えば、過電流に関しては、推定される負荷電流が異常閾値を超えたときに過電流の発生と判定し、例えば半導体スイッチング素子12を遮断して負荷3への電圧印加を遮断することもできる。このため、図4に示したように、過電流の発生と判定される異常閾値よりも低い前兆閾値を設定し、負荷電流が前兆閾値を超えたときに過電流の前兆と判定するようにしても良い。このような判定手法としても、過電流が発生する前に、事前にその前兆を検出して、ユーザに報知することができる。なお、ここでは過電流について説明したが、負荷オープンや出力ON故障もしくは出力OFF故障についても、同様の検出手法によって、それらの前兆を検出することができる。
【0060】
(3)上記実施形態では、図1に示したように、現在ダイアグ回路18aや過去ダイアグ回路18bおよび前兆ダイアグ回路18cが出力する各ダイアグ信号がそれぞれ別々のラインを通じてボデーECU5に入力されるようにした例を示した。これに対して、各ダイアグ信号が1本の出力ラインを通じてボデーECU5に入力されるようにしても良い。
【0061】
例えば、図5に示すように各ダイアグ信号をシリアル信号に変換するためのシリアル変換回路18dを備え、シリアル変換回路18dに各ダイアグ信号を入力し、シリアル信号に変換する。そして、シリアル変換回路18dから一本の出力ラインを通じてシリアル信号を出力し、ボデーECU5に入力されるようにすることもできる。
【0062】
(4)上記実施形態では、現在ダイアグ回路18aに連動して過去ダイアグ回路18bのメモリに外部ショート検出回路15の検出結果を記憶させるようにしているが、必ずしも連動して記憶させる必要はない。例えば、図6に示すように、現在ダイアグ回路18aに対して外部ショート検出回路15の検出結果が入力されるようにしておくと共に、イグニッションスイッチがOFFされたときに、現在ダイアグ回路18aの内容が過去ダイアグ回路18bに記憶されるようにしても良い。
【0063】
(5)上記実施形態では、温度検出回路13、検出回路14、外部ショート検出回路15、負荷オープン検出回路16、内部故障検出回路17にて異常検出回路を構成している。そして、検出回路14にて過電流の発生や前兆を検出したとき、もしくは、他の異常を検出したときに、その旨の信号を外部ショート検出回路15や負荷オープン検出回路16もしくは内部故障検出回路17に対して出力し、これら各回路15〜17から(もしくは第1〜第3OR回路19a〜19bを通じて)ダイアグ出力回路18にダイアグ状態を伝えている。しかしながら、この構成は異常検出回路の単なる一例を示したに過ぎず、他の構成としても構わない。例えば、検出回路14を備えずに、温度検出回路13の検出結果が加熱検出回路15bに直接入力されるようにして、加熱検出回路15bで加熱状態の判定を行うようにしても良い。また、半導体スイッチング素子12のローサイド側の電位が過電流検出回路15aや負荷オープン検出回路16もしくは内部故障検出回路17に直接入力されるようにし、これらの各回路15a、16、17で過電流や負荷オープンなどの異常の判定を行うようにしても良い。
【符号の説明】
【0064】
1 負荷駆動回路
2 電源
3 負荷
4 スイッチ
5 ボデーECU
6 ウォーニングランプ
10 入力回路
11 出力制御回路
12 半導体スイッチング素子
13 温度検出回路
14 検出回路
15 外部ショート検出回路
15a 過電流検出回路
15b 加熱検出回路
16 負荷オープン検出回路
17 内部故障検出回路
17a 出力ON故障検出回路
17b 出力OFF故障検出回路
18 ダイアグ出力回路
18a 現在ダイアグ回路
18b 過去ダイアグ回路
18c 前兆ダイアグ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源(2)から負荷(3)への電圧印加のオンオフを制御する半導体スイッチング素子(12)と、
スイッチ(4)の投入状態に応じた入力信号に基づいて制御信号を出力する入力回路(10)と、
該入力回路(10)が出力する制御信号に基づいて前記半導体スイッチング素子(12)のオンオフを制御する出力制御回路(11)とを備えた負荷駆動回路において、
前記負荷(3)への電源供給の状態の異常の発生およびその前兆を検出し、異常の前兆を示す前兆信号を出力する異常検出回路(13〜17)と、
前記異常検出回路(13〜17)で検出された異常の前兆を示す前兆信号を出力する前兆ダイアグ回路(18c)とを備えていることを特徴とする負荷駆動回路。
【請求項2】
前記異常検出回路(13〜17)は、前記負荷に供給される負荷電流が過大であることを示す過電流の発生およびその前兆の検出を行っており、
前記前兆ダイアグ回路(18c)は、前記異常検出回路(13〜17)から過電流の前兆が検出されたことを示す前記前兆信号が伝えられることにより、前記過電流の前兆を示す前兆ダイアグ信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の負荷駆動回路。
【請求項3】
前記異常検出回路(13〜17)は、前記負荷電流が異常閾値を超えている継続時間が故障判定時間(T)に至ると前記過電流の発生と判定すると共に、前記負荷電流が前記異常閾値以下の前兆閾値を超えている継続時間が前記故障判定時間(T)よりも短い前兆判定時間(T’)に至るか、もしくは、前記異常閾値よりも小さい前兆閾値を超えている継続時間が前記故障判定時間(T)以下の前兆判定時間(T’)に至ると前記過電流の前兆と判定することを特徴とする請求項2に記載の負荷駆動回路。
【請求項4】
前記異常検出回路(13〜17)には、前記負荷(3)に供給される負荷電流もしくは前記負荷(3)に印加される電圧を直接検出することで、前記過電流の発生およびその前兆を検出する過電流検出回路(15a)が備えられていることを特徴とする請求項2または3に記載の負荷駆動回路。
【請求項5】
前記異常検出回路(13〜17)には、前記負荷(3)に流れる負荷電流に基づく前記半導体スイッチング素子(12)の温度上昇を検出することで前記過電流の発生およびその前兆を検出する加熱検出回路(15b)が備えられていることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1つに記載の負荷駆動回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−160289(P2011−160289A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21492(P2010−21492)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(390001812)アンデン株式会社 (97)
【Fターム(参考)】