貴金属ナノ構造体及び電気化学リアクター
【課題】貴金属のナノ粒子からなる多次元構造体、その微構造化技術及び電気化学素子等の部材を提供する。
【解決手段】1次粒子より構成されるナノメートルサイズの多次元的な構造を有する微構造化貴金属体であって、直径1から15nmの大きさの粒子形状を有すること、上記の多次元的な構造が、5から200nmメートルの大きさの線径を有する細線形状、もしくは5から200nmの表面粗さを有する凹凸構造又は突起状構造、もしくは5から200nmの大きさの径を有する球状の構造を有すること、これらの構造が、テンプレートを必要としない自立状態で形成されていること、で特徴付けられる微構造化貴金属ナノ構造体と、その製造方法、及び電気化学素子、電極材料、触媒材料並びに窒素酸化物浄化反応器等の部材。
【効果】自立した状態のナノメートルサイズの多次元的な構造体へ変化させた微構造化貴金属ナノ構造体とその部材を提供することができる。
【解決手段】1次粒子より構成されるナノメートルサイズの多次元的な構造を有する微構造化貴金属体であって、直径1から15nmの大きさの粒子形状を有すること、上記の多次元的な構造が、5から200nmメートルの大きさの線径を有する細線形状、もしくは5から200nmの表面粗さを有する凹凸構造又は突起状構造、もしくは5から200nmの大きさの径を有する球状の構造を有すること、これらの構造が、テンプレートを必要としない自立状態で形成されていること、で特徴付けられる微構造化貴金属ナノ構造体と、その製造方法、及び電気化学素子、電極材料、触媒材料並びに窒素酸化物浄化反応器等の部材。
【効果】自立した状態のナノメートルサイズの多次元的な構造体へ変化させた微構造化貴金属ナノ構造体とその部材を提供することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微構造化された貴金属ナノ構造体とその作製方法及びその部材に関するものであり、更に詳しくは、固体電解質と溶融塩を用いた電気化学反応によって、金属を溶解再析出させることで自立したナノ構造化されたナノメートルサイズの多次元的な微構造化貴金属ナノ構造体を作製する技術と、それによって得られる、例えば、線径がナノメートルの大きさの細線状貴金属ナノ構造体、及び粒子の表面もしくは全体を凹凸状あるいは突起状等へと変化させた、自立した新たな微構造化貴金属ナノ構造体に関するものである。本発明は、鋳型を使用することなしに、多次元的な構造を有するナノメートルサイズの大きさの微構造化貴金属構造ナノ構造体を自立した状態で得ることを可能とする微構造化貴金属ナノ構造体の作製技術とその部材を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
ナノメートルサイズの貴金属微粒子は、その高比表面積と高い活性を活用して、例えば、各種固体高分子燃料電池、固体酸化物燃料電池、1次電池、2次電池、キャパシター(コンデンサー)等の電極材料や、燃焼補助用、排ガス浄化用の各種触媒、抗菌剤、化粧品等、幅広い分野で原材料として活用される。
【0003】
従来、ナノメートルサイズの大きさの球状貴金属粒子の合成には、例えば、塩化白金等の液体原料を出発材料とした液相法を用いた球状粒子の合成方法や、物理的な粉砕を用いる方法、もしくは貴金属と第2物質を混合形成後、相分離を用いて析出する方法、あるいは貴金属を母材へイオン注入した後の母材をエッチングすることで表面へ貴金属を析出させる方法等がある(特許文献1参照)。
【0004】
これらの従来技術では、ナノメートルサイズの大きさの単純な球状粒子を比較的容易に合成することは可能であるものの、多次元的な構造を有するナノメートルサイズの大きさの微構造化貴金属ナノ構造体等を形成することは困難である。
【0005】
従来、最も有効とされているナノメートルサイズの大きさの細線状の貴金属構造体の合成方法は、ブロックコポリマー等を材料として用いたメソポーラス構造体(非特許文献1参照)や、陽極酸化アルミナ(非特許文献2参照)に形成されるナノメートルの大きさの細孔鋳型(テンプレート)として、貴金属の液体原料を用いて細線状の貴金属構造体を得るものである
【0006】
しかしながら、上記の鋳型(テンプレート)を用いた貴金属構造体の製造方法は、比較的サイズの揃った多次元的な構造体を得ることが可能であるが、貴金属の活性な表面が不可避的に鋳型の内部に埋もれており、該構造体を有効に活用できないという問題を有していた。
【0007】
また、上記鋳型を用いた方法では、鋳型を除去する場合に多次元構造が維持できない等の問題が生じるため、多次元構造の高比表面積を十分に活用可能な自立した状態(すなわち、鋳型を除去したフリーの状態)で貴金属の構造体を得ることは難しく、新たなナノメートルサイズの大きさの貴金属ナノ構造体を作製する技術の開発が強く望まれていた。
【0008】
また、貴金属の活用に際して、燃料電池等のデバイス開発では、電極や触媒の反応効率の向上を目的として、貴金属を高比表面積化させるために、ナノメートルサイズの大きさの白金粒子等の貴金属粒子を用いる場合がある。
【0009】
このような電極や触媒の材料として用いられるナノメートルサイズの大きさの白金粒子等の貴金属粒子は、高い活性を実現させることが可能である。しかし、該白金粒子等の貴金属粒子を用いて作製したデバイスは、運転時間の増加に伴い、ナノメートルサイズの大きさの白金粒子等は、粒成長を起こし、不可避的に性能劣化することが問題となっており、当該技術分野においては、これらの性能劣化の問題を解決するための再生(再微粒子化)技術等の開発も強く望まれていた。
【0010】
【特許文献1】特許第3635325号公報
【非特許文献1】Microporous and Mesoporous Materials,Volume 48,(2001)pp.171−179
【非特許文献2】Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997)pp.7791−7795
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、上記従来技術の問題点を確実に解決すると共に、鋳型(テンプレート)を使用することなく、自立したナノメートルサイズの多次元的な微構造化貴金属ナノ構造体を合成する技術を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、電気化学反応を利用した新しい技術を開発することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、ナノメートルサイズの貴金属の多次元構造体を得ること、すなわち、自立した状態のナノメートルサイズの大きさの多次元構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体と、これを形成する技術、及び該自立した微構造化貴金属ナノ構造体を利用した電極等のデバイス、触媒等を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)1次粒子より構成されるナノメートルサイズの多次元的な構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体であって、1)直径1から15nmの大きさの粒子形状を有する、2)上記の多次元的な構造が、5から200nmメートルの大きさの線径を有する細線形状、もしくは5から200nmの表面粗さを有する凹凸構造又は突起状構造、もしくは5から200nmの大きさの径を有する球状の構造を有する、3)これらの構造が、テンプレートを必要としない自立状態で形成されている、ことを特徴とする微構造化貴金属ナノ構造体。
(2)貴金属が、白金、金、パラジウム、又は銀である、前記(1)に記載の微構造化貴金属ナノ構造体。
(3)前記(1)に記載の微構造化貴金属ナノ構造体を製造する方法であって、予め配置した微構造化させるための母材となる貴金属からなる電極、対極となる電極及び酸素イオン伝導性を有する固体電解質層で構成される反応素子へ、通電を行うことによって、母材貴金属表面又はその全体を上記反応素子の反応場における反応によって微構造化することにより、多次元的な構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体を作製することを特徴とする微構造化貴金属ナノ構造体の製造方法。
(4)2つ、もしくは、それ以上の複数の電極を有し、そのうちの少なくとも一つが、反応場と接した状態にある微構造化させるための母材となる貴金属で構成され、かつ電極間に配置した導伝体を介して通電可能に構成された反応素子へ、通電を行うことによって、母材貴金属表面又はその全体を上記反応素子の反応場における反応によって微構造化することにより多次元的な構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体を作製する、前記(3)に記載の微構造化貴金属ナノ構造体の製造方法。
(5)2つ、もしくは、それ以上の複数の電極を有し、そのうちの少なくとも一つが、反応場と接した状態にある微構造化させるための母材となる貴金属で構成され、かつ電極間に配置した導伝体を介して通電可能に構成された反応素子へ、通電を行うことによって、母材貴金属を上記反応素子の反応場における反応によって微構造化し、母材貴金属あるいは、この母材貴金属電極に近接するように配置した異種材料表面、又はその両方へ、多次元的な構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体を作製する、前記(3)又は(4)に記載の微構造化貴金属ナノ構造体の製造方法。
(6)反応場として、溶融塩、又は溶融塩及びイオン伝導性液体を用いる、前記(3)から(5)のいずれか1項に記載の微構造化貴金属ナノ構造体の製造方法。
(7)反応のための通電条件を変化させることにより微構造の形態を制御する、前記(3)から(5)のいずれか1項に記載の微構造化貴金属ナノ構造体の製造方法。
(8)溶融塩誘引材により反応場へ効率的に溶融塩を誘導することによって反応を促進する、前記(3)から(5)のいずれか1項に記載の微構造化貴金属ナノ構造体の製造方法。
(9)被処理物に対して電気化学反応を行うための反応素子であって、イオン伝導体及びこれを挟んで相対する2つ、もしくは、それ以上の複数の電極で構成され、該電極が、前記(1)又は(2)に記載の1次粒子より構成される多次元的な構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体を用いた電極で構成され、酸素イオン伝導体、又は溶融塩及び酸素イオン伝導体と微構造化貴金属ナノ構造体との界面を反応場としていることを特徴とする電気化学素子。
(10)電気化学素子の作動のための電界印加によって、反応電極の多孔化及び反応表面積の増大を行い、被処理物質の分解性能を向上させうるようにした貴金属体電極を1つ以上持つ、前記(9)に記載の電気化学素子。
(11)反応場を構成又は形成させるための溶融塩が、窒素酸化物吸着性材料としても機能する、前記(9)又は(10)に記載の電気化学素子。
(12)前記溶融塩が、硝酸塩からなり、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム、硝酸バリウム、硝酸銀、硝酸鉛、硝酸アンモニウム、硝酸ニッケル、硝酸コバルト、炭酸ナトリウム、塩素酸カリウム、過酸化ナトリウムから選ばれた少なくとも1種を含む、前記(10)又は(11)に記載の電気化学素子。
(13)微構造化貴金属ナノ構造体電極の内部にもしくは隣接するように窒素酸化物吸着性材料が配置されている、前記(9)又は(10)に記載の電気化学素子。
(14)前記窒素酸化物吸着性材料が、Na、K、Ba、Rb、Cs、Caから選ばれた少なくとも1種を含み、その含有率が、全窒素酸化物吸着性材料に対して、5〜50mol%である、前記(11)又は(13)に記載の電気化学素子。
(15)被処理物が内燃機関の排ガスであり、作動温度域が400℃より低温である、前記(9)から(14)のいずれか1項に記載の電気化学素子。
(16)前記(1)又は(2)に記載のナノメートルサイズの多次元的な構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体から構成されることを特徴とする電極材料。
(17)前記(1)又は(2)に記載のナノメートルサイズの多次元的な構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体から構成されることを特徴とする触媒材料。
(18)前記(9)から(15)のいずれか1項に記載の電気化学素子を配置した電気化学反応器から構成されることを特徴とする窒素酸化物浄化反応器。
【0014】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、1次粒子より構成されるナノメートルサイズの多次元的な構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体であって、直径1から15nmの大きさの粒子形状を有すること、上記の多次元的な構造が、5から200nmメートルの大きさの線径を有する細線形状、もしくは5から200nmの表面粗さを有する凹凸構造又は突起状構造、もしくは5から200nmの大きさの径を有する球状の構造を有すること、これらの構造が、テンプレートを必要としない自立状態で形成されていること、を特徴とするものである。
【0015】
また、本発明は、上記の微構造化貴金属ナノ構造体を製造する方法であって、予め配置した微構造化させるための母材となる貴金属からなる電極、対極となる電極及び酸素イオン伝導性を有する固体電解質層で構成される反応素子へ、通電を行うことによって、母材貴金属表面又はその全体を上記反応素子の反応場における反応によって微構造化することにより、多次元的な構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体を作製することを特徴とするものである。
【0016】
本発明では、2つ、もしくは、それ以上の複数の電極を有し、そのうちの一つ以上が、反応場と接した状態にある微構造化させるための母材となる貴金属で構成され、かつ電極間に配置した導伝体を介して通電可能に構成された反応素子へ、通電を行うことによって、母材貴金属表面又はその全体を上記反応素子の反応場における反応によって微構造化することにより多次元的な構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体を作製すること、を好ましい実施の態様としている。
【0017】
また、本発明では、2つ、もしくは、それ以上の複数の電極を有し、そのうちの一つ以上が、反応場と接した状態にある微構造化させるための母材となる貴金属で構成され、かつ電極間に配置した導伝体を介して通電可能に構成された反応素子へ、通電を行うことによって、母材貴金属を上記反応素子の反応場における反応によって微構造化し、この母材貴金属電極に近接するように配置した異種材料表面、又はその両方へ、多次元的な構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体を作製すること、を好ましい実施の態様としている。
【0018】
本発明の方法では、反応場として、溶融塩、又は溶融塩及び酸素イオン伝導体を用いること、反応のための通電条件を変化させることにより微構造の形態を制御すること、溶融塩誘引材により反応場へ効率的に溶融塩を誘導することによって反応を促進すること、を好ましい実施の態様としている。
【0019】
また、本発明は、被処理物に対して電気化学反応を行うための素子であって、イオン伝導体及びこれを挟んで相対する2つ、もしくは、それ以上の複数の電極で構成され、該電極が、上記の1次粒子より構成される多次元的な構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体を用いた電極で構成され、酸素イオン伝導体、又は溶融塩及び酸素イオン伝導体と微構造化貴金属ナノ構造体との界面を反応場としていることを特徴とするものである。
【0020】
本発明の電気化学素子の基本形態としては、図1a)、図1b)に示すように、ナノメートルサイズの大きさの多次元構造を形成するための母材となる貴金属(以下、母材金属と記載することがある。)を用いた電極と、その対極となる電極、及び酸素イオン伝導性を有する固体電解質層で構成される電気化学素子が例示される。
【0021】
電極用の貴金属としては、例えば、白金、金、パラジウム、乃至銀、が用いられる。酸素イオン伝導性を有する固体電解質層は、特に限定されるものではないが、酸素イオン導電性が高く、母材金属をナノ構造化するための反応場として用いる溶融塩の融点の温度で溶融塩に対して十分に耐性があるものであることが望ましい。
【0022】
これらの電極及び固体電解質層に対して、電極をナノ構造化するための反応場として機能する溶融塩を、母材金属からなる電極の近傍に、それを覆うように配置する。溶融塩としては、硝酸塩が好ましく、特に、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム、硝酸バリウム、硝酸銀、硝酸鉛、硝酸アンモニウム、硝酸ニッケル、硝酸コバルト等が好適である。
【0023】
また、望ましくは、上記溶融塩に、反応促進剤として、炭酸ナトリウム、塩素酸カリウム、過酸化ナトリウム等を添加することが好ましい。この場合、望ましくは、母材金属を用いた電極に、硝酸塩等の溶融塩を誘引する溶融塩誘引材料、例えば、Ni、NiO、BaCO3等を、混合、もしくはメッキ等により、均質に配置する。
【0024】
母材金属のナノ構造化の反応のメカニズムは、電極の近傍に溶融した硝酸塩等の溶融塩が存在する状況において、導伝材料を挟むように配置された2つの電極に電場を印加することにより、溶融塩に、強い金属溶解性の反応場を形成する。ここに、微構造化しようとする母材金属が存在する場合、その金属は溶解するが、金属溶解性の反応場の強さは電界によって変化すると考えられる。
【0025】
電極へ交流電場を印加した場合、溶融した硝酸塩等の溶融塩の内部に存在する電極での母材金属の溶解量が、交流電場の変化伴う溶解性雰囲気強度の変化に合わせて繰り返して変化するため、溶解析出が連続的に起こり、それによってナノメートルサイズの大きさの粒子が合成されると考えられる。
【0026】
そのため、その交流電場の変調周波数や温度等を変化させることによって、任意に溶解再析出の速度や量等を変化させることが可能となり、析出過程の差によって、様々な形状の多次元構造を有する微構造化貴金属体を得ることが可能となる。
【0027】
図2は、本発明の一実施の形態に係る金属を多次元構造化するための電気化学セルの構成例において、電気化学反応時の様子を模式化して示したものである。図2の2つの電極へ電場を印加することにより、反応場として機能する溶融塩の存在下において、貴金属が溶解再析出し、微構造化貴金属体を形成する。
【0028】
この再析出は、母材となる貴金属の表面及び内部のみでなく、反応場の近傍に配置した異種材料上へも析出が可能であるため、母材貴金属による反応場中での描画やスタンプ等の技術を応用して、析出場所や方法を制御することで、母材となる貴金属自身を微構造化するだけでなく、微構造化貴金属のマクロな構造体を異種材料上の任意の場所に形成することも可能となる。
【0029】
本発明の微構造化貴金属ナノ構造体は、1次粒子より構成される多次元的な構造を有するナノメートルサイズの微構造体であって、1)直径1から15nm程度の大きさの粒子形状を有すること、2)上記の多次元的な構造が、a)5から200nm程度のナノメートルの大きさの線径を有する細線形状、b)5から200nm程度の表面粗さを有する凹凸構造又は突起構造、又はc)5から200nmのナノメートル程度の大きさの径を有する球状の構造、を有すること、3)これらの構造が、テンプレートを必要としない自立状態で形成されていること、で特徴付けられる。ここで、直径1から15nm程度、5から200nm程度のナノメートルの大きさ、とは、大部分がそれらの範囲に含まれることを意味するものであって、その範囲外のものが全く存在しないことを意味するものではないものとして定義される。
【0030】
本発明の電気化学素子では、電気化学素子の作動のための電界印加によって、反応電極の多孔化及び反応表面積の増大を行い、被処理物質の分解性能を向上させうるようにした貴金属体電極を1つ以上持つこと、反応場を構成する溶融塩が、窒素酸化物吸着性材料としても機能すること、が好ましい。
【0031】
また、本発明の電気化学素子では、微構造化貴金属体電極の内部にもしくは隣接するように窒素酸化物吸着性材料が配置されていること、前記窒素酸化物吸着性材料が、Na、K、Ba、Rb、Cs、Caから選ばれた少なくとも1種を含み、その含有率が、全窒素酸化物吸着性材料に対して、5〜50mol%であること、被処理物が内燃機関の排ガスであり、作動温度域が400℃以下であること、が好ましい。
【0032】
また、本発明では、上記微構造化貴金属ナノ構造体から構成される電極材料、触媒材料を提供することができ、また、上記電気化学素子を構成要素として含む、窒素酸化物浄化反応器(電気化学リアクター)を構築し、提供することができる。本発明において、多次元的な構造を有する微構造体とは、鋳型の内部に埋もれた部分がないナノメートルサイズの三次元的な微構造体であることを意味する。
【0033】
本発明では、上記電気化学反応器を、微構造化貴金属ナノ構造体の反応場として利用して、電極へ交流電場を印加することにより、微構造化貴金属ナノ構造体を合成することができる。ナノメートルの大きさの微構造化貴金属ナノ構造体は、電極への交流電場の印加により、電極を構成する金属の溶解再析出が交流電場に合わせて繰り返して起こり、ナノメートルの大きさの粒子が再生(再微粒子化)される、という格別の作用効果が得られる。その際に、電極へ印加する交流電場の変調周波数、温度、窒素酸化物濃度、酸素放出量、溶解析出の速度及び量を変化させることにより、様々な形状のナノメートルサイズの多次元構造体を合成することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)自立した、多次元的な構造を有する微構造貴金属ナノ構造体を提供することができる。
(2)ナノメートルの大きさの貴金属微粒子を提供することができる。
(3)高比表面積を有する貴金属電極を提供することができる。
(4)バルク構造の貴金属を三次元的なナノ構造体へ変換することができる。
(5)電気化学セル等において、性能劣化した電極を再生することができる。
(6)高比表面積電極を形成することにより、高効率な窒素酸化物浄化が可能な電気化学リアクターを提供することができる。
(7)高比表面積化した貴金属によって、活性の高い触媒を提供することができる。
(8)触媒に活用されるNOx吸着材を高分散配置することができる。
(9)高性能な燃料電池を作製するための多次元構造電極を提供することができる。
(10)電極の線形構造化等によって、より高感度なセンサ用の電極を構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0036】
本実施例では、電気化学セルを作製した。金属を多次元構造化するための電気化学セルを構成する基体となる酸素イオン伝導相の基板として、緻密に焼結されたガドリニアで安定化したセリア(以下、「セリア」と記載することがある。)を用いた。その形状は、直径20mm、厚さ0.5mmの円板状とした。
【0037】
電極は、白金及びNiOの混合物をスクリーン印刷により基板両面に配置した。白金とNiOの混合比は、白金とNiOが体積比で70:30になるように調整した。この混合物をスクリーン印刷した後、1400℃で熱処理することにより、電気化学セルを形成した。
【0038】
このようにして形成した電気化学セルに、白金のリード線を取り付け、硝酸カリウムの飽和水溶液へ浸した後、100℃で乾燥したものを石英管の中に配置し、管状炉にて350℃に温度を保持しながら、ガス流速50ml/minに調整した1000ppm−NO、2%−酸素、残部−Heの雰囲気にて、変調周波数0.3Hzのsin波による交流電場を±3.5Vで3時間印加した。
【0039】
その結果、白金電極には、図3に示すような細線状のPt(Pt wire)が形成されていることが確認された。
【実施例2】
【0040】
金属を多次元構造化するための電気化学セルを構成する基体となる酸素イオン伝導相の基板として、緻密に焼結されたセリアを用いた。その形状は、直径20mm、厚さ0.5mmの円板状とした。
【0041】
電極は、白金及びセリアの混合物をスクリーン印刷により基板両面に配置した。白金とセリアの混合比は白金とセリアが体積比で50:50になるように調整した。この混合物をスクリーン印刷した後、1400℃で熱処理することにより、電気化学セルを形成した。
【0042】
このようにして形成した電気化学セルに、白金のリード線を取り付け、硝酸カリウムの飽和水溶液へ浸した後、100℃で乾燥したものを石英管の中に配置し、管状炉にて350℃に温度を保持しながら、ガス流速50ml/minに調整した1000ppm−NO、2%−酸素、残部−Heの雰囲気にて、変調周波数0.3Hzのsin波による交流電場を±3.5Vで3時間印加した。
【0043】
その結果、セリアと白金のマトリックス中に、図4に示すような線形10nm程度の細線状のPtが形成されていることが確認された。
【実施例3】
【0044】
金属を多次元構造化するための電気化学セルを構成する基体となる酸素イオン伝導相の基板として、緻密に焼結されたガドリニアで安定化したセリアを用いた。その形状は、直径20mm、厚さ0.5mmの円板状とした。
【0045】
電極は、白金をスクリーン印刷により基板両面に配置した。白金をスクリーン印刷した後、1400℃で熱処理することにより、電気化学セルを形成した。
【0046】
このセルを、硝酸ニッケル水溶液へ浸し、白金電極へ負の電荷をかけることで、ニッケルをメッキした。
【0047】
このようにして形成した電気化学セルに、白金のリード線を取り付け、硝酸カリウムの飽和水溶液へ浸した後、100℃で乾燥したものを石英管の中に配置し、管状炉にて350℃に温度を保持しながら、ガス流速50ml/minに調整した1000ppm−NO、2%−酸素、残部−Heの雰囲気にて、変調周波数0.3Hzのsin波による交流電場を±3.5Vで3時間印加した。
【0048】
その結果、白金は、図5に示すような線形10nm程度の細線状のPtへ構造変化していることが確認された。
【実施例4】
【0049】
実施例3にて構造化された白金を、透過型顕微鏡を用いて観察した。その結果、図6に示すように、回折パターンと透過像より、細線試料は、直径が数nm程度の結晶粒子がランダム配向することによって構成さていることが確認された。更に、図7に示すように、EDSによる元素分析から、Ptであることも確認された。
【実施例5】
【0050】
実施例3と同様の手順を用いて形成した電気化学セルに、白金のリード線を取り付け、硝酸カリウムの飽和水溶液へ浸した後、100℃で乾燥したものを石英管の中に配置し、管状炉にて350℃に温度を保持しながら、ガス流速50ml/minに調整した1000ppm−NO、2%−酸素、残部−Heの雰囲気にて、変調周波数0.3HzのSin波による交流電場を±3.5Vで3時間印加した。
【0051】
その結果、白金は、図8に示すような凹凸構造を有する白金構造体へ変化することが確認された。
【実施例6】
【0052】
金属を多次元構造化するための電気化学セルを構成する基体となる酸素イオン伝導相の基板として、緻密に焼結されたセリアを用いた。その形状は、直径20mm、厚さ0.5mmの円板状とした。
【0053】
電極は、Au及びNiOの混合物を、スクリーン印刷により基板両面に配置した。AuとNiOの混合比は、AuとNiOが体積比で70:30になるように調整した。スクリーン印刷した後、1150℃で熱処理することにより、電気化学セルを形成した。
【0054】
このようにして形成した電気化学セルに白金のリード線を取り付け、硝酸カリウムの飽和水溶液へ浸した後、100℃で乾燥したものを石英管の中に配置し、管状炉にて350℃に温度を保持しながら、ガス流速50ml/minに調整した1000ppm−NO、1%−酸素、残部−Heの雰囲気にて、変調周波数0.3Hzのsin波による交流電場を±3.5Vで6時間印加した。
【0055】
その結果、Au電極は、図9に示すような細線状のAuが形成されていることが確認された。
【実施例7】
【0056】
本実施例では、多次元構造化可能な貴金属電極を有する電気化学反応器による被処理物質として、窒素酸化物とした場合の、浄化試験について具体的に説明する。
【0057】
電気化学反応器を構成する基体となる基材として、緻密に焼結された酸素イオン伝導性を有する固体電解質のガドリニア(Gd2O3)添加セリア(10mol%−Gd)を用いた。その形状は、直径20mm、厚さ0.5mmの円板状とした。
【0058】
電極として、PtとNiOとGd添加セリアの粉末を体積比で70:10:20の割合での混合した粉末を、ポリエチレングリコールを用いてペースト化し、これを、前記の基材の両面にスクリーン印刷にて印刷後、1400℃にて1時間の焼成を施した。試料の両電極に白金線を接続し、これを、微構造化のための溶融塩及び窒素酸化物の吸着剤として機能する硝酸カリウムの飽和水溶液に浸した後、乾燥して素子とした。
【0059】
次に、このように形成した本発明の電気化学反応器による窒素酸化物の処理方法を示す。温度を300℃に保った被処理ガス中に、電気化学反応器を配置し、電極に白金線をリード線として固定し、ファンクションジェネレーターへ電流増幅器を介して接続し、変調周波数0.3Hzにて、±3.5Vの交流電圧を電気化学反応器に印加して電流を流した。
【0060】
被処理ガスとして、一酸化窒素1000ppm、酸素10%、残部がヘリウムのモデル燃焼排ガスを流量50ml/minで流した。化学反応システムへの流入前後における被処理ガス中の窒素酸化物濃度を化学発光式NOx計で測定し、窒素及び酸素濃度をガスクロマトグラフィーで測定した。窒素酸化物の減少量から、窒素酸化物の浄化率を求め、浄化率に対する電流密度及び消費電力を測定した。
【0061】
図10に、NO浄化の時間依存性を示す。電流値は殆ど変化しなかったが、時間経過と共に浄化率が増加し、一定時間経過した場合に、浄化性能が収束した。これは、白金電極の微構造化の進行度合いと関係しており、微構造化が進むにつれて反応効率が格段に向上し、約1時間程度で電極の微構造化が終了したことに伴い、浄化量の向上が収束することが確認された。
【実施例8】
【0062】
実施例7の測定の後、温度を250℃に保った被処理ガス中に、同一の電気化学反応器を配置し、電極に白金線をリード線として固定し、ファンクションジェネレーターへ電流増幅器を介して接続し、変調周波数0.3Hzにて、±7.0Vの交流電圧を電気化学反応器に印加して電流を流した。
【0063】
被処理ガスとして、一酸化窒素1000ppm、酸素20%、残部がヘリウムのモデル燃焼排ガスを流量50ml/minで流した。化学反応システムへの流入前後における被処理ガス中の窒素酸化物濃度を化学発光式NOx計で測定し、窒素及び酸素濃度をガスクロマトグラフィーで測定した。窒素酸化物の減少量から、窒素酸化物の浄化率を求め、浄化率に対する電流密度及び消費電力を測定した。
【0064】
図11に、作動温度250℃での電気化学素子における白金電極の微構造化に伴うNO浄化の時間依存性を示す。予め電極を微構造化した電気化学反応器は、短時間で浄化特性の飽和点に到達する。また、この反応電極の微構造化によって、250℃という低温において、90%の窒素酸化物を浄化しており、大幅な作動温度の低減が可能になることが確認された。
【実施例9】
【0065】
電気化学反応器を構成する基体となる基材として、緻密に焼結された酸素イオン伝導性を有する固体電解質のガドリニア(Gd2O3)添加セリア(10mol%−Gd)を用いた。その形状は、直径20mm、厚さ0.5mmの円板状とした。
【0066】
電極として、AuとNiOとGd添加セリアの粉末を体積比で70:10:20の割合での混合した粉末を、ポリエチレングリコールを用いてペースト化し、これを、前記の基材の両面にスクリーン印刷にて印刷後、1400℃にて1時間の焼成を施した。試料の両電極に白金線を接続し、これを、微構造化のための溶融塩及び窒素酸化物の吸着剤として機能する硝酸カリウムの飽和水溶液に浸した後、乾燥して素子とした。
【0067】
次に、このように形成した本発明の電気化学反応器による窒素酸化物の処理方法を示す。温度を350℃に保った被処理ガス中に、電気化学反応器を配置し、電極に白金線をリード線として固定し、ファンクションジェネレーターへ電流増幅器を介して接続し、変調周波数0.3Hzにて、±3.5Vの交流電圧を電気化学反応器に印加して電流を流した。
【0068】
被処理ガスとして、一酸化窒素1000ppm、酸素1%、残部がヘリウムのモデル燃焼排ガスを流量50ml/minで流した。化学反応システムへの流入前後における被処理ガス中の窒素酸化物濃度を化学発光式NOx計で測定し、窒素及び酸素濃度をガスクロマトグラフィーで測定した。窒素酸化物の減少量から、窒素酸化物の浄化率を求め、浄化率に対する電流密度及び消費電力を測定した。
【0069】
図12に、作動温度350℃での電気化学素子における金電極の微構造化に伴うNO浄化の時間依存性と電流の平均値の変化を示す。これにより、時間経過に対する電流値の増加と比較して、NOの浄化率が大きく増加した。これは、浄化効率の上昇を意味しており、金電極の微構造化が進むにつれて、浄化効率が向上することが確認された。
【実施例10】
【0070】
本実施例では、多次元構造化が可能な貴金属電極を用いた微構造化貴金属のマクロ構造化方法について、具体的に説明する。
【0071】
微構造化貴金属をマクロ構造化させるための基体となる基材として、緻密に焼結された酸素イオン伝導性を有する固体電解質のガドリニア(Gd2O3)添加セリア(10mol%−Gd)を用いた。その形状は、直径20mm、厚さ0.5mmの円板状とした。
【0072】
電極として、白金ペーストを、前記の基材の片面にスクリーン印刷にて印刷後、1400℃にて1時間の焼成を施した後、電極に白金線を接続し、構造化させるための電極の対極とした。白金電極を形成した面と反対側の基板面に鏡面研磨を施し、この面が上になるようにして、400℃に加熱した加熱台の上に基材を配置した状態で、微構造化のための反応場として機能する硝酸カリウムを溶融状態で液滴となるように配置し、この部分に微構造化させるための白金線を探針のように点接触させた。
【0073】
次に、印刷した電極と点接触させた白金線に3Vの電圧を印加した状態で白金線を基板上で移動させることで、基材表面に白金のナノ構造体を構成した。このようにして得られた基材を洗浄後、電子顕微鏡により観察した結果、図13に示すような白金ナノ粒子によって構成された任意のマクロ構造体の軌跡が得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上詳述したように、本発明は、電気化学反応を利用した貴金属の多次元構造化技術に関するものであり、本発明により、自立した状態のナノメートルサイズの大きさの金属粒子、線形状構造体、乃至凹凸構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体を合成し、提供することができる。この微構造化貴金属ナノ構造体を用いることにより、高比表面積を有する貴金属電極、配線及び高活性触媒等を作製し、提供することができる。また、このナノ構造体からなる電極を用いることにより、高効率な窒素酸化物浄化が可能な電気化学リアクター、高性能な燃料電池や高感度センサを提供することが可能となる。本発明は、テンプレートなしで、自立した状態のナノメートルサイズの微構造化貴金属構造体を提供することを可能にするものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の電極の多次元構造化のための電気化学素子の一例を示す。
【図2】金属を多次元構造化する際の典型的な電気化学セルの構成例における反応機構の一例を示す。
【図3】電気化学反応により微構造化された白金電極の一例を示す。
【図4】電気化学反応によりネットワーク状に微構造化された白金と電解質の複合体の一例を示す。
【図5】電気化学反応により微構造化され線形構造を有する白金電極の一例を示す。
【図6】白金ナノ粒子から構成された細線状白金ナノ構造体の透過電子顕微鏡像と回折パターンを示す。
【図7】白金ナノ粒子から構成された細線状白金ナノ構造体のエネルギー分散型X線分光分析の結果を示す。
【図8】電気化学反応により表面が凹凸構造に微構造化された白金電極の例を示す。を示す。
【図9】電気化学反応により微構造化され線形構造を有するAu電極の一例を示す。
【図10】作動温度300℃での電気化学素子における白金電極の微構造化に伴うNO浄化特性の変化を示す。
【図11】作動温度250℃での電気化学素子における白金電極の微構造化に伴うNO浄化の時間依存性と特性の変化を示す。
【図12】作動温度350℃での電気化学素子における金電極の微構造化に伴うNO浄化の時間依存性と電流の平均値の変化を示す。白マルは、NO浄化率の経時変化、黒い四角は、NO浄化に要する電気化学素子を流れる電流量の経時変化を示す。
【図13】基板上に描画形成した微構造化された白金ナノ粒子より構成されるマクロ構造体を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、微構造化された貴金属ナノ構造体とその作製方法及びその部材に関するものであり、更に詳しくは、固体電解質と溶融塩を用いた電気化学反応によって、金属を溶解再析出させることで自立したナノ構造化されたナノメートルサイズの多次元的な微構造化貴金属ナノ構造体を作製する技術と、それによって得られる、例えば、線径がナノメートルの大きさの細線状貴金属ナノ構造体、及び粒子の表面もしくは全体を凹凸状あるいは突起状等へと変化させた、自立した新たな微構造化貴金属ナノ構造体に関するものである。本発明は、鋳型を使用することなしに、多次元的な構造を有するナノメートルサイズの大きさの微構造化貴金属構造ナノ構造体を自立した状態で得ることを可能とする微構造化貴金属ナノ構造体の作製技術とその部材を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
ナノメートルサイズの貴金属微粒子は、その高比表面積と高い活性を活用して、例えば、各種固体高分子燃料電池、固体酸化物燃料電池、1次電池、2次電池、キャパシター(コンデンサー)等の電極材料や、燃焼補助用、排ガス浄化用の各種触媒、抗菌剤、化粧品等、幅広い分野で原材料として活用される。
【0003】
従来、ナノメートルサイズの大きさの球状貴金属粒子の合成には、例えば、塩化白金等の液体原料を出発材料とした液相法を用いた球状粒子の合成方法や、物理的な粉砕を用いる方法、もしくは貴金属と第2物質を混合形成後、相分離を用いて析出する方法、あるいは貴金属を母材へイオン注入した後の母材をエッチングすることで表面へ貴金属を析出させる方法等がある(特許文献1参照)。
【0004】
これらの従来技術では、ナノメートルサイズの大きさの単純な球状粒子を比較的容易に合成することは可能であるものの、多次元的な構造を有するナノメートルサイズの大きさの微構造化貴金属ナノ構造体等を形成することは困難である。
【0005】
従来、最も有効とされているナノメートルサイズの大きさの細線状の貴金属構造体の合成方法は、ブロックコポリマー等を材料として用いたメソポーラス構造体(非特許文献1参照)や、陽極酸化アルミナ(非特許文献2参照)に形成されるナノメートルの大きさの細孔鋳型(テンプレート)として、貴金属の液体原料を用いて細線状の貴金属構造体を得るものである
【0006】
しかしながら、上記の鋳型(テンプレート)を用いた貴金属構造体の製造方法は、比較的サイズの揃った多次元的な構造体を得ることが可能であるが、貴金属の活性な表面が不可避的に鋳型の内部に埋もれており、該構造体を有効に活用できないという問題を有していた。
【0007】
また、上記鋳型を用いた方法では、鋳型を除去する場合に多次元構造が維持できない等の問題が生じるため、多次元構造の高比表面積を十分に活用可能な自立した状態(すなわち、鋳型を除去したフリーの状態)で貴金属の構造体を得ることは難しく、新たなナノメートルサイズの大きさの貴金属ナノ構造体を作製する技術の開発が強く望まれていた。
【0008】
また、貴金属の活用に際して、燃料電池等のデバイス開発では、電極や触媒の反応効率の向上を目的として、貴金属を高比表面積化させるために、ナノメートルサイズの大きさの白金粒子等の貴金属粒子を用いる場合がある。
【0009】
このような電極や触媒の材料として用いられるナノメートルサイズの大きさの白金粒子等の貴金属粒子は、高い活性を実現させることが可能である。しかし、該白金粒子等の貴金属粒子を用いて作製したデバイスは、運転時間の増加に伴い、ナノメートルサイズの大きさの白金粒子等は、粒成長を起こし、不可避的に性能劣化することが問題となっており、当該技術分野においては、これらの性能劣化の問題を解決するための再生(再微粒子化)技術等の開発も強く望まれていた。
【0010】
【特許文献1】特許第3635325号公報
【非特許文献1】Microporous and Mesoporous Materials,Volume 48,(2001)pp.171−179
【非特許文献2】Jpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997)pp.7791−7795
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、上記従来技術の問題点を確実に解決すると共に、鋳型(テンプレート)を使用することなく、自立したナノメートルサイズの多次元的な微構造化貴金属ナノ構造体を合成する技術を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、電気化学反応を利用した新しい技術を開発することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、ナノメートルサイズの貴金属の多次元構造体を得ること、すなわち、自立した状態のナノメートルサイズの大きさの多次元構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体と、これを形成する技術、及び該自立した微構造化貴金属ナノ構造体を利用した電極等のデバイス、触媒等を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)1次粒子より構成されるナノメートルサイズの多次元的な構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体であって、1)直径1から15nmの大きさの粒子形状を有する、2)上記の多次元的な構造が、5から200nmメートルの大きさの線径を有する細線形状、もしくは5から200nmの表面粗さを有する凹凸構造又は突起状構造、もしくは5から200nmの大きさの径を有する球状の構造を有する、3)これらの構造が、テンプレートを必要としない自立状態で形成されている、ことを特徴とする微構造化貴金属ナノ構造体。
(2)貴金属が、白金、金、パラジウム、又は銀である、前記(1)に記載の微構造化貴金属ナノ構造体。
(3)前記(1)に記載の微構造化貴金属ナノ構造体を製造する方法であって、予め配置した微構造化させるための母材となる貴金属からなる電極、対極となる電極及び酸素イオン伝導性を有する固体電解質層で構成される反応素子へ、通電を行うことによって、母材貴金属表面又はその全体を上記反応素子の反応場における反応によって微構造化することにより、多次元的な構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体を作製することを特徴とする微構造化貴金属ナノ構造体の製造方法。
(4)2つ、もしくは、それ以上の複数の電極を有し、そのうちの少なくとも一つが、反応場と接した状態にある微構造化させるための母材となる貴金属で構成され、かつ電極間に配置した導伝体を介して通電可能に構成された反応素子へ、通電を行うことによって、母材貴金属表面又はその全体を上記反応素子の反応場における反応によって微構造化することにより多次元的な構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体を作製する、前記(3)に記載の微構造化貴金属ナノ構造体の製造方法。
(5)2つ、もしくは、それ以上の複数の電極を有し、そのうちの少なくとも一つが、反応場と接した状態にある微構造化させるための母材となる貴金属で構成され、かつ電極間に配置した導伝体を介して通電可能に構成された反応素子へ、通電を行うことによって、母材貴金属を上記反応素子の反応場における反応によって微構造化し、母材貴金属あるいは、この母材貴金属電極に近接するように配置した異種材料表面、又はその両方へ、多次元的な構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体を作製する、前記(3)又は(4)に記載の微構造化貴金属ナノ構造体の製造方法。
(6)反応場として、溶融塩、又は溶融塩及びイオン伝導性液体を用いる、前記(3)から(5)のいずれか1項に記載の微構造化貴金属ナノ構造体の製造方法。
(7)反応のための通電条件を変化させることにより微構造の形態を制御する、前記(3)から(5)のいずれか1項に記載の微構造化貴金属ナノ構造体の製造方法。
(8)溶融塩誘引材により反応場へ効率的に溶融塩を誘導することによって反応を促進する、前記(3)から(5)のいずれか1項に記載の微構造化貴金属ナノ構造体の製造方法。
(9)被処理物に対して電気化学反応を行うための反応素子であって、イオン伝導体及びこれを挟んで相対する2つ、もしくは、それ以上の複数の電極で構成され、該電極が、前記(1)又は(2)に記載の1次粒子より構成される多次元的な構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体を用いた電極で構成され、酸素イオン伝導体、又は溶融塩及び酸素イオン伝導体と微構造化貴金属ナノ構造体との界面を反応場としていることを特徴とする電気化学素子。
(10)電気化学素子の作動のための電界印加によって、反応電極の多孔化及び反応表面積の増大を行い、被処理物質の分解性能を向上させうるようにした貴金属体電極を1つ以上持つ、前記(9)に記載の電気化学素子。
(11)反応場を構成又は形成させるための溶融塩が、窒素酸化物吸着性材料としても機能する、前記(9)又は(10)に記載の電気化学素子。
(12)前記溶融塩が、硝酸塩からなり、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム、硝酸バリウム、硝酸銀、硝酸鉛、硝酸アンモニウム、硝酸ニッケル、硝酸コバルト、炭酸ナトリウム、塩素酸カリウム、過酸化ナトリウムから選ばれた少なくとも1種を含む、前記(10)又は(11)に記載の電気化学素子。
(13)微構造化貴金属ナノ構造体電極の内部にもしくは隣接するように窒素酸化物吸着性材料が配置されている、前記(9)又は(10)に記載の電気化学素子。
(14)前記窒素酸化物吸着性材料が、Na、K、Ba、Rb、Cs、Caから選ばれた少なくとも1種を含み、その含有率が、全窒素酸化物吸着性材料に対して、5〜50mol%である、前記(11)又は(13)に記載の電気化学素子。
(15)被処理物が内燃機関の排ガスであり、作動温度域が400℃より低温である、前記(9)から(14)のいずれか1項に記載の電気化学素子。
(16)前記(1)又は(2)に記載のナノメートルサイズの多次元的な構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体から構成されることを特徴とする電極材料。
(17)前記(1)又は(2)に記載のナノメートルサイズの多次元的な構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体から構成されることを特徴とする触媒材料。
(18)前記(9)から(15)のいずれか1項に記載の電気化学素子を配置した電気化学反応器から構成されることを特徴とする窒素酸化物浄化反応器。
【0014】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、1次粒子より構成されるナノメートルサイズの多次元的な構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体であって、直径1から15nmの大きさの粒子形状を有すること、上記の多次元的な構造が、5から200nmメートルの大きさの線径を有する細線形状、もしくは5から200nmの表面粗さを有する凹凸構造又は突起状構造、もしくは5から200nmの大きさの径を有する球状の構造を有すること、これらの構造が、テンプレートを必要としない自立状態で形成されていること、を特徴とするものである。
【0015】
また、本発明は、上記の微構造化貴金属ナノ構造体を製造する方法であって、予め配置した微構造化させるための母材となる貴金属からなる電極、対極となる電極及び酸素イオン伝導性を有する固体電解質層で構成される反応素子へ、通電を行うことによって、母材貴金属表面又はその全体を上記反応素子の反応場における反応によって微構造化することにより、多次元的な構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体を作製することを特徴とするものである。
【0016】
本発明では、2つ、もしくは、それ以上の複数の電極を有し、そのうちの一つ以上が、反応場と接した状態にある微構造化させるための母材となる貴金属で構成され、かつ電極間に配置した導伝体を介して通電可能に構成された反応素子へ、通電を行うことによって、母材貴金属表面又はその全体を上記反応素子の反応場における反応によって微構造化することにより多次元的な構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体を作製すること、を好ましい実施の態様としている。
【0017】
また、本発明では、2つ、もしくは、それ以上の複数の電極を有し、そのうちの一つ以上が、反応場と接した状態にある微構造化させるための母材となる貴金属で構成され、かつ電極間に配置した導伝体を介して通電可能に構成された反応素子へ、通電を行うことによって、母材貴金属を上記反応素子の反応場における反応によって微構造化し、この母材貴金属電極に近接するように配置した異種材料表面、又はその両方へ、多次元的な構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体を作製すること、を好ましい実施の態様としている。
【0018】
本発明の方法では、反応場として、溶融塩、又は溶融塩及び酸素イオン伝導体を用いること、反応のための通電条件を変化させることにより微構造の形態を制御すること、溶融塩誘引材により反応場へ効率的に溶融塩を誘導することによって反応を促進すること、を好ましい実施の態様としている。
【0019】
また、本発明は、被処理物に対して電気化学反応を行うための素子であって、イオン伝導体及びこれを挟んで相対する2つ、もしくは、それ以上の複数の電極で構成され、該電極が、上記の1次粒子より構成される多次元的な構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体を用いた電極で構成され、酸素イオン伝導体、又は溶融塩及び酸素イオン伝導体と微構造化貴金属ナノ構造体との界面を反応場としていることを特徴とするものである。
【0020】
本発明の電気化学素子の基本形態としては、図1a)、図1b)に示すように、ナノメートルサイズの大きさの多次元構造を形成するための母材となる貴金属(以下、母材金属と記載することがある。)を用いた電極と、その対極となる電極、及び酸素イオン伝導性を有する固体電解質層で構成される電気化学素子が例示される。
【0021】
電極用の貴金属としては、例えば、白金、金、パラジウム、乃至銀、が用いられる。酸素イオン伝導性を有する固体電解質層は、特に限定されるものではないが、酸素イオン導電性が高く、母材金属をナノ構造化するための反応場として用いる溶融塩の融点の温度で溶融塩に対して十分に耐性があるものであることが望ましい。
【0022】
これらの電極及び固体電解質層に対して、電極をナノ構造化するための反応場として機能する溶融塩を、母材金属からなる電極の近傍に、それを覆うように配置する。溶融塩としては、硝酸塩が好ましく、特に、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム、硝酸バリウム、硝酸銀、硝酸鉛、硝酸アンモニウム、硝酸ニッケル、硝酸コバルト等が好適である。
【0023】
また、望ましくは、上記溶融塩に、反応促進剤として、炭酸ナトリウム、塩素酸カリウム、過酸化ナトリウム等を添加することが好ましい。この場合、望ましくは、母材金属を用いた電極に、硝酸塩等の溶融塩を誘引する溶融塩誘引材料、例えば、Ni、NiO、BaCO3等を、混合、もしくはメッキ等により、均質に配置する。
【0024】
母材金属のナノ構造化の反応のメカニズムは、電極の近傍に溶融した硝酸塩等の溶融塩が存在する状況において、導伝材料を挟むように配置された2つの電極に電場を印加することにより、溶融塩に、強い金属溶解性の反応場を形成する。ここに、微構造化しようとする母材金属が存在する場合、その金属は溶解するが、金属溶解性の反応場の強さは電界によって変化すると考えられる。
【0025】
電極へ交流電場を印加した場合、溶融した硝酸塩等の溶融塩の内部に存在する電極での母材金属の溶解量が、交流電場の変化伴う溶解性雰囲気強度の変化に合わせて繰り返して変化するため、溶解析出が連続的に起こり、それによってナノメートルサイズの大きさの粒子が合成されると考えられる。
【0026】
そのため、その交流電場の変調周波数や温度等を変化させることによって、任意に溶解再析出の速度や量等を変化させることが可能となり、析出過程の差によって、様々な形状の多次元構造を有する微構造化貴金属体を得ることが可能となる。
【0027】
図2は、本発明の一実施の形態に係る金属を多次元構造化するための電気化学セルの構成例において、電気化学反応時の様子を模式化して示したものである。図2の2つの電極へ電場を印加することにより、反応場として機能する溶融塩の存在下において、貴金属が溶解再析出し、微構造化貴金属体を形成する。
【0028】
この再析出は、母材となる貴金属の表面及び内部のみでなく、反応場の近傍に配置した異種材料上へも析出が可能であるため、母材貴金属による反応場中での描画やスタンプ等の技術を応用して、析出場所や方法を制御することで、母材となる貴金属自身を微構造化するだけでなく、微構造化貴金属のマクロな構造体を異種材料上の任意の場所に形成することも可能となる。
【0029】
本発明の微構造化貴金属ナノ構造体は、1次粒子より構成される多次元的な構造を有するナノメートルサイズの微構造体であって、1)直径1から15nm程度の大きさの粒子形状を有すること、2)上記の多次元的な構造が、a)5から200nm程度のナノメートルの大きさの線径を有する細線形状、b)5から200nm程度の表面粗さを有する凹凸構造又は突起構造、又はc)5から200nmのナノメートル程度の大きさの径を有する球状の構造、を有すること、3)これらの構造が、テンプレートを必要としない自立状態で形成されていること、で特徴付けられる。ここで、直径1から15nm程度、5から200nm程度のナノメートルの大きさ、とは、大部分がそれらの範囲に含まれることを意味するものであって、その範囲外のものが全く存在しないことを意味するものではないものとして定義される。
【0030】
本発明の電気化学素子では、電気化学素子の作動のための電界印加によって、反応電極の多孔化及び反応表面積の増大を行い、被処理物質の分解性能を向上させうるようにした貴金属体電極を1つ以上持つこと、反応場を構成する溶融塩が、窒素酸化物吸着性材料としても機能すること、が好ましい。
【0031】
また、本発明の電気化学素子では、微構造化貴金属体電極の内部にもしくは隣接するように窒素酸化物吸着性材料が配置されていること、前記窒素酸化物吸着性材料が、Na、K、Ba、Rb、Cs、Caから選ばれた少なくとも1種を含み、その含有率が、全窒素酸化物吸着性材料に対して、5〜50mol%であること、被処理物が内燃機関の排ガスであり、作動温度域が400℃以下であること、が好ましい。
【0032】
また、本発明では、上記微構造化貴金属ナノ構造体から構成される電極材料、触媒材料を提供することができ、また、上記電気化学素子を構成要素として含む、窒素酸化物浄化反応器(電気化学リアクター)を構築し、提供することができる。本発明において、多次元的な構造を有する微構造体とは、鋳型の内部に埋もれた部分がないナノメートルサイズの三次元的な微構造体であることを意味する。
【0033】
本発明では、上記電気化学反応器を、微構造化貴金属ナノ構造体の反応場として利用して、電極へ交流電場を印加することにより、微構造化貴金属ナノ構造体を合成することができる。ナノメートルの大きさの微構造化貴金属ナノ構造体は、電極への交流電場の印加により、電極を構成する金属の溶解再析出が交流電場に合わせて繰り返して起こり、ナノメートルの大きさの粒子が再生(再微粒子化)される、という格別の作用効果が得られる。その際に、電極へ印加する交流電場の変調周波数、温度、窒素酸化物濃度、酸素放出量、溶解析出の速度及び量を変化させることにより、様々な形状のナノメートルサイズの多次元構造体を合成することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)自立した、多次元的な構造を有する微構造貴金属ナノ構造体を提供することができる。
(2)ナノメートルの大きさの貴金属微粒子を提供することができる。
(3)高比表面積を有する貴金属電極を提供することができる。
(4)バルク構造の貴金属を三次元的なナノ構造体へ変換することができる。
(5)電気化学セル等において、性能劣化した電極を再生することができる。
(6)高比表面積電極を形成することにより、高効率な窒素酸化物浄化が可能な電気化学リアクターを提供することができる。
(7)高比表面積化した貴金属によって、活性の高い触媒を提供することができる。
(8)触媒に活用されるNOx吸着材を高分散配置することができる。
(9)高性能な燃料電池を作製するための多次元構造電極を提供することができる。
(10)電極の線形構造化等によって、より高感度なセンサ用の電極を構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0036】
本実施例では、電気化学セルを作製した。金属を多次元構造化するための電気化学セルを構成する基体となる酸素イオン伝導相の基板として、緻密に焼結されたガドリニアで安定化したセリア(以下、「セリア」と記載することがある。)を用いた。その形状は、直径20mm、厚さ0.5mmの円板状とした。
【0037】
電極は、白金及びNiOの混合物をスクリーン印刷により基板両面に配置した。白金とNiOの混合比は、白金とNiOが体積比で70:30になるように調整した。この混合物をスクリーン印刷した後、1400℃で熱処理することにより、電気化学セルを形成した。
【0038】
このようにして形成した電気化学セルに、白金のリード線を取り付け、硝酸カリウムの飽和水溶液へ浸した後、100℃で乾燥したものを石英管の中に配置し、管状炉にて350℃に温度を保持しながら、ガス流速50ml/minに調整した1000ppm−NO、2%−酸素、残部−Heの雰囲気にて、変調周波数0.3Hzのsin波による交流電場を±3.5Vで3時間印加した。
【0039】
その結果、白金電極には、図3に示すような細線状のPt(Pt wire)が形成されていることが確認された。
【実施例2】
【0040】
金属を多次元構造化するための電気化学セルを構成する基体となる酸素イオン伝導相の基板として、緻密に焼結されたセリアを用いた。その形状は、直径20mm、厚さ0.5mmの円板状とした。
【0041】
電極は、白金及びセリアの混合物をスクリーン印刷により基板両面に配置した。白金とセリアの混合比は白金とセリアが体積比で50:50になるように調整した。この混合物をスクリーン印刷した後、1400℃で熱処理することにより、電気化学セルを形成した。
【0042】
このようにして形成した電気化学セルに、白金のリード線を取り付け、硝酸カリウムの飽和水溶液へ浸した後、100℃で乾燥したものを石英管の中に配置し、管状炉にて350℃に温度を保持しながら、ガス流速50ml/minに調整した1000ppm−NO、2%−酸素、残部−Heの雰囲気にて、変調周波数0.3Hzのsin波による交流電場を±3.5Vで3時間印加した。
【0043】
その結果、セリアと白金のマトリックス中に、図4に示すような線形10nm程度の細線状のPtが形成されていることが確認された。
【実施例3】
【0044】
金属を多次元構造化するための電気化学セルを構成する基体となる酸素イオン伝導相の基板として、緻密に焼結されたガドリニアで安定化したセリアを用いた。その形状は、直径20mm、厚さ0.5mmの円板状とした。
【0045】
電極は、白金をスクリーン印刷により基板両面に配置した。白金をスクリーン印刷した後、1400℃で熱処理することにより、電気化学セルを形成した。
【0046】
このセルを、硝酸ニッケル水溶液へ浸し、白金電極へ負の電荷をかけることで、ニッケルをメッキした。
【0047】
このようにして形成した電気化学セルに、白金のリード線を取り付け、硝酸カリウムの飽和水溶液へ浸した後、100℃で乾燥したものを石英管の中に配置し、管状炉にて350℃に温度を保持しながら、ガス流速50ml/minに調整した1000ppm−NO、2%−酸素、残部−Heの雰囲気にて、変調周波数0.3Hzのsin波による交流電場を±3.5Vで3時間印加した。
【0048】
その結果、白金は、図5に示すような線形10nm程度の細線状のPtへ構造変化していることが確認された。
【実施例4】
【0049】
実施例3にて構造化された白金を、透過型顕微鏡を用いて観察した。その結果、図6に示すように、回折パターンと透過像より、細線試料は、直径が数nm程度の結晶粒子がランダム配向することによって構成さていることが確認された。更に、図7に示すように、EDSによる元素分析から、Ptであることも確認された。
【実施例5】
【0050】
実施例3と同様の手順を用いて形成した電気化学セルに、白金のリード線を取り付け、硝酸カリウムの飽和水溶液へ浸した後、100℃で乾燥したものを石英管の中に配置し、管状炉にて350℃に温度を保持しながら、ガス流速50ml/minに調整した1000ppm−NO、2%−酸素、残部−Heの雰囲気にて、変調周波数0.3HzのSin波による交流電場を±3.5Vで3時間印加した。
【0051】
その結果、白金は、図8に示すような凹凸構造を有する白金構造体へ変化することが確認された。
【実施例6】
【0052】
金属を多次元構造化するための電気化学セルを構成する基体となる酸素イオン伝導相の基板として、緻密に焼結されたセリアを用いた。その形状は、直径20mm、厚さ0.5mmの円板状とした。
【0053】
電極は、Au及びNiOの混合物を、スクリーン印刷により基板両面に配置した。AuとNiOの混合比は、AuとNiOが体積比で70:30になるように調整した。スクリーン印刷した後、1150℃で熱処理することにより、電気化学セルを形成した。
【0054】
このようにして形成した電気化学セルに白金のリード線を取り付け、硝酸カリウムの飽和水溶液へ浸した後、100℃で乾燥したものを石英管の中に配置し、管状炉にて350℃に温度を保持しながら、ガス流速50ml/minに調整した1000ppm−NO、1%−酸素、残部−Heの雰囲気にて、変調周波数0.3Hzのsin波による交流電場を±3.5Vで6時間印加した。
【0055】
その結果、Au電極は、図9に示すような細線状のAuが形成されていることが確認された。
【実施例7】
【0056】
本実施例では、多次元構造化可能な貴金属電極を有する電気化学反応器による被処理物質として、窒素酸化物とした場合の、浄化試験について具体的に説明する。
【0057】
電気化学反応器を構成する基体となる基材として、緻密に焼結された酸素イオン伝導性を有する固体電解質のガドリニア(Gd2O3)添加セリア(10mol%−Gd)を用いた。その形状は、直径20mm、厚さ0.5mmの円板状とした。
【0058】
電極として、PtとNiOとGd添加セリアの粉末を体積比で70:10:20の割合での混合した粉末を、ポリエチレングリコールを用いてペースト化し、これを、前記の基材の両面にスクリーン印刷にて印刷後、1400℃にて1時間の焼成を施した。試料の両電極に白金線を接続し、これを、微構造化のための溶融塩及び窒素酸化物の吸着剤として機能する硝酸カリウムの飽和水溶液に浸した後、乾燥して素子とした。
【0059】
次に、このように形成した本発明の電気化学反応器による窒素酸化物の処理方法を示す。温度を300℃に保った被処理ガス中に、電気化学反応器を配置し、電極に白金線をリード線として固定し、ファンクションジェネレーターへ電流増幅器を介して接続し、変調周波数0.3Hzにて、±3.5Vの交流電圧を電気化学反応器に印加して電流を流した。
【0060】
被処理ガスとして、一酸化窒素1000ppm、酸素10%、残部がヘリウムのモデル燃焼排ガスを流量50ml/minで流した。化学反応システムへの流入前後における被処理ガス中の窒素酸化物濃度を化学発光式NOx計で測定し、窒素及び酸素濃度をガスクロマトグラフィーで測定した。窒素酸化物の減少量から、窒素酸化物の浄化率を求め、浄化率に対する電流密度及び消費電力を測定した。
【0061】
図10に、NO浄化の時間依存性を示す。電流値は殆ど変化しなかったが、時間経過と共に浄化率が増加し、一定時間経過した場合に、浄化性能が収束した。これは、白金電極の微構造化の進行度合いと関係しており、微構造化が進むにつれて反応効率が格段に向上し、約1時間程度で電極の微構造化が終了したことに伴い、浄化量の向上が収束することが確認された。
【実施例8】
【0062】
実施例7の測定の後、温度を250℃に保った被処理ガス中に、同一の電気化学反応器を配置し、電極に白金線をリード線として固定し、ファンクションジェネレーターへ電流増幅器を介して接続し、変調周波数0.3Hzにて、±7.0Vの交流電圧を電気化学反応器に印加して電流を流した。
【0063】
被処理ガスとして、一酸化窒素1000ppm、酸素20%、残部がヘリウムのモデル燃焼排ガスを流量50ml/minで流した。化学反応システムへの流入前後における被処理ガス中の窒素酸化物濃度を化学発光式NOx計で測定し、窒素及び酸素濃度をガスクロマトグラフィーで測定した。窒素酸化物の減少量から、窒素酸化物の浄化率を求め、浄化率に対する電流密度及び消費電力を測定した。
【0064】
図11に、作動温度250℃での電気化学素子における白金電極の微構造化に伴うNO浄化の時間依存性を示す。予め電極を微構造化した電気化学反応器は、短時間で浄化特性の飽和点に到達する。また、この反応電極の微構造化によって、250℃という低温において、90%の窒素酸化物を浄化しており、大幅な作動温度の低減が可能になることが確認された。
【実施例9】
【0065】
電気化学反応器を構成する基体となる基材として、緻密に焼結された酸素イオン伝導性を有する固体電解質のガドリニア(Gd2O3)添加セリア(10mol%−Gd)を用いた。その形状は、直径20mm、厚さ0.5mmの円板状とした。
【0066】
電極として、AuとNiOとGd添加セリアの粉末を体積比で70:10:20の割合での混合した粉末を、ポリエチレングリコールを用いてペースト化し、これを、前記の基材の両面にスクリーン印刷にて印刷後、1400℃にて1時間の焼成を施した。試料の両電極に白金線を接続し、これを、微構造化のための溶融塩及び窒素酸化物の吸着剤として機能する硝酸カリウムの飽和水溶液に浸した後、乾燥して素子とした。
【0067】
次に、このように形成した本発明の電気化学反応器による窒素酸化物の処理方法を示す。温度を350℃に保った被処理ガス中に、電気化学反応器を配置し、電極に白金線をリード線として固定し、ファンクションジェネレーターへ電流増幅器を介して接続し、変調周波数0.3Hzにて、±3.5Vの交流電圧を電気化学反応器に印加して電流を流した。
【0068】
被処理ガスとして、一酸化窒素1000ppm、酸素1%、残部がヘリウムのモデル燃焼排ガスを流量50ml/minで流した。化学反応システムへの流入前後における被処理ガス中の窒素酸化物濃度を化学発光式NOx計で測定し、窒素及び酸素濃度をガスクロマトグラフィーで測定した。窒素酸化物の減少量から、窒素酸化物の浄化率を求め、浄化率に対する電流密度及び消費電力を測定した。
【0069】
図12に、作動温度350℃での電気化学素子における金電極の微構造化に伴うNO浄化の時間依存性と電流の平均値の変化を示す。これにより、時間経過に対する電流値の増加と比較して、NOの浄化率が大きく増加した。これは、浄化効率の上昇を意味しており、金電極の微構造化が進むにつれて、浄化効率が向上することが確認された。
【実施例10】
【0070】
本実施例では、多次元構造化が可能な貴金属電極を用いた微構造化貴金属のマクロ構造化方法について、具体的に説明する。
【0071】
微構造化貴金属をマクロ構造化させるための基体となる基材として、緻密に焼結された酸素イオン伝導性を有する固体電解質のガドリニア(Gd2O3)添加セリア(10mol%−Gd)を用いた。その形状は、直径20mm、厚さ0.5mmの円板状とした。
【0072】
電極として、白金ペーストを、前記の基材の片面にスクリーン印刷にて印刷後、1400℃にて1時間の焼成を施した後、電極に白金線を接続し、構造化させるための電極の対極とした。白金電極を形成した面と反対側の基板面に鏡面研磨を施し、この面が上になるようにして、400℃に加熱した加熱台の上に基材を配置した状態で、微構造化のための反応場として機能する硝酸カリウムを溶融状態で液滴となるように配置し、この部分に微構造化させるための白金線を探針のように点接触させた。
【0073】
次に、印刷した電極と点接触させた白金線に3Vの電圧を印加した状態で白金線を基板上で移動させることで、基材表面に白金のナノ構造体を構成した。このようにして得られた基材を洗浄後、電子顕微鏡により観察した結果、図13に示すような白金ナノ粒子によって構成された任意のマクロ構造体の軌跡が得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上詳述したように、本発明は、電気化学反応を利用した貴金属の多次元構造化技術に関するものであり、本発明により、自立した状態のナノメートルサイズの大きさの金属粒子、線形状構造体、乃至凹凸構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体を合成し、提供することができる。この微構造化貴金属ナノ構造体を用いることにより、高比表面積を有する貴金属電極、配線及び高活性触媒等を作製し、提供することができる。また、このナノ構造体からなる電極を用いることにより、高効率な窒素酸化物浄化が可能な電気化学リアクター、高性能な燃料電池や高感度センサを提供することが可能となる。本発明は、テンプレートなしで、自立した状態のナノメートルサイズの微構造化貴金属構造体を提供することを可能にするものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の電極の多次元構造化のための電気化学素子の一例を示す。
【図2】金属を多次元構造化する際の典型的な電気化学セルの構成例における反応機構の一例を示す。
【図3】電気化学反応により微構造化された白金電極の一例を示す。
【図4】電気化学反応によりネットワーク状に微構造化された白金と電解質の複合体の一例を示す。
【図5】電気化学反応により微構造化され線形構造を有する白金電極の一例を示す。
【図6】白金ナノ粒子から構成された細線状白金ナノ構造体の透過電子顕微鏡像と回折パターンを示す。
【図7】白金ナノ粒子から構成された細線状白金ナノ構造体のエネルギー分散型X線分光分析の結果を示す。
【図8】電気化学反応により表面が凹凸構造に微構造化された白金電極の例を示す。を示す。
【図9】電気化学反応により微構造化され線形構造を有するAu電極の一例を示す。
【図10】作動温度300℃での電気化学素子における白金電極の微構造化に伴うNO浄化特性の変化を示す。
【図11】作動温度250℃での電気化学素子における白金電極の微構造化に伴うNO浄化の時間依存性と特性の変化を示す。
【図12】作動温度350℃での電気化学素子における金電極の微構造化に伴うNO浄化の時間依存性と電流の平均値の変化を示す。白マルは、NO浄化率の経時変化、黒い四角は、NO浄化に要する電気化学素子を流れる電流量の経時変化を示す。
【図13】基板上に描画形成した微構造化された白金ナノ粒子より構成されるマクロ構造体を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次粒子より構成されるナノメートルサイズの多次元的な構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体であって、1)直径1から15nmの大きさの粒子形状を有する、2)上記の多次元的な構造が、5から200nmメートルの大きさの線径を有する細線形状、もしくは5から200nmの表面粗さを有する凹凸構造又は突起状構造、もしくは5から200nmの大きさの径を有する球状の構造を有する、3)これらの構造が、テンプレートを必要としない自立状態で形成されている、ことを特徴とする微構造化貴金属ナノ構造体。
【請求項2】
貴金属が、白金、金、パラジウム、又は銀である、請求項1に記載の微構造化貴金属ナノ構造体。
【請求項3】
請求項1に記載の微構造化貴金属ナノ構造体を製造する方法であって、予め配置した微構造化させるための母材となる貴金属からなる電極、対極となる電極及び酸素イオン伝導性を有する固体電解質層で構成される反応素子へ、通電を行うことによって、母材貴金属表面又はその全体を上記反応素子の反応場における反応によって微構造化することにより、多次元的な構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体を作製することを特徴とする微構造化貴金属ナノ構造体の製造方法。
【請求項4】
2つ、もしくは、それ以上の複数の電極を有し、そのうちの少なくとも一つが、反応場と接した状態にある微構造化させるための母材となる貴金属で構成され、かつ電極間に配置した導伝体を介して通電可能に構成された反応素子へ、通電を行うことによって、母材貴金属表面又はその全体を上記反応素子の反応場における反応によって微構造化することにより多次元的な構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体を作製する、請求項3に記載の微構造化貴金属ナノ構造体の製造方法。
【請求項5】
2つ、もしくは、それ以上の複数の電極を有し、そのうちの少なくとも一つが、反応場と接した状態にある微構造化させるための母材となる貴金属で構成され、かつ電極間に配置した導伝体を介して通電可能に構成された反応素子へ、通電を行うことによって、母材貴金属を上記反応素子の反応場における反応によって微構造化し、母材貴金属あるいは、この母材貴金属電極に近接するように配置した異種材料表面、又はその両方へ、多次元的な構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体を作製する、請求項3又は4に記載の微構造化貴金属ナノ構造体の製造方法。
【請求項6】
反応場として、溶融塩、又は溶融塩及びイオン伝導性液体を用いる、請求項3から5のいずれか1項に記載の微構造化貴金属ナノ構造体の製造方法。
【請求項7】
反応のための通電条件を変化させることにより微構造の形態を制御する、請求項3から5のいずれか1項に記載の微構造化貴金属ナノ構造体の製造方法。
【請求項8】
溶融塩誘引材により反応場へ効率的に溶融塩を誘導することによって反応を促進する、請求項3から5のいずれか1項に記載の微構造化貴金属ナノ構造体の製造方法。
【請求項9】
被処理物に対して電気化学反応を行うための反応素子であって、イオン伝導体及びこれを挟んで相対する2つ、もしくは、それ以上の複数の電極で構成され、該電極が、請求項1又は2に記載の1次粒子より構成される多次元的な構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体を用いた電極で構成され、酸素イオン伝導体、又は溶融塩及び酸素イオン伝導体と微構造化貴金属ナノ構造体との界面を反応場としていることを特徴とする電気化学素子。
【請求項10】
電気化学素子の作動のための電界印加によって、反応電極の多孔化及び反応表面積の増大を行い、被処理物質の分解性能を向上させうるようにした貴金属体電極を1つ以上持つ、請求項9に記載の電気化学素子。
【請求項11】
反応場を構成又は形成させるための溶融塩が、窒素酸化物吸着性材料としても機能する、請求項9又は10に記載の電気化学素子。
【請求項12】
前記溶融塩が、硝酸塩からなり、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム、硝酸バリウム、硝酸銀、硝酸鉛、硝酸アンモニウム、硝酸ニッケル、硝酸コバルト、炭酸ナトリウム、塩素酸カリウム、過酸化ナトリウムから選ばれた少なくとも1種を含む、請求項10又は11に記載の電気化学素子。
【請求項13】
微構造化貴金属ナノ構造体電極の内部にもしくは隣接するように窒素酸化物吸着性材料が配置されている、請求項9又は10に記載の電気化学素子。
【請求項14】
前記窒素酸化物吸着性材料が、Na、K、Ba、Rb、Cs、Caから選ばれた少なくとも1種を含み、その含有率が、全窒素酸化物吸着性材料に対して、5〜50mol%である、請求項11又は13に記載の電気化学素子。
【請求項15】
被処理物が内燃機関の排ガスであり、作動温度域が400℃より低温である、請求項9から14のいずれか1項に記載の電気化学素子。
【請求項16】
請求項1又は2に記載のナノメートルサイズの多次元的な構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体から構成されることを特徴とする電極材料。
【請求項17】
請求項1又は2に記載のナノメートルサイズの多次元的な構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体から構成されることを特徴とする触媒材料。
【請求項18】
請求項9から15のいずれか1項に記載の電気化学素子を配置した電気化学反応器から構成されることを特徴とする窒素酸化物浄化反応器。
【請求項1】
1次粒子より構成されるナノメートルサイズの多次元的な構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体であって、1)直径1から15nmの大きさの粒子形状を有する、2)上記の多次元的な構造が、5から200nmメートルの大きさの線径を有する細線形状、もしくは5から200nmの表面粗さを有する凹凸構造又は突起状構造、もしくは5から200nmの大きさの径を有する球状の構造を有する、3)これらの構造が、テンプレートを必要としない自立状態で形成されている、ことを特徴とする微構造化貴金属ナノ構造体。
【請求項2】
貴金属が、白金、金、パラジウム、又は銀である、請求項1に記載の微構造化貴金属ナノ構造体。
【請求項3】
請求項1に記載の微構造化貴金属ナノ構造体を製造する方法であって、予め配置した微構造化させるための母材となる貴金属からなる電極、対極となる電極及び酸素イオン伝導性を有する固体電解質層で構成される反応素子へ、通電を行うことによって、母材貴金属表面又はその全体を上記反応素子の反応場における反応によって微構造化することにより、多次元的な構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体を作製することを特徴とする微構造化貴金属ナノ構造体の製造方法。
【請求項4】
2つ、もしくは、それ以上の複数の電極を有し、そのうちの少なくとも一つが、反応場と接した状態にある微構造化させるための母材となる貴金属で構成され、かつ電極間に配置した導伝体を介して通電可能に構成された反応素子へ、通電を行うことによって、母材貴金属表面又はその全体を上記反応素子の反応場における反応によって微構造化することにより多次元的な構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体を作製する、請求項3に記載の微構造化貴金属ナノ構造体の製造方法。
【請求項5】
2つ、もしくは、それ以上の複数の電極を有し、そのうちの少なくとも一つが、反応場と接した状態にある微構造化させるための母材となる貴金属で構成され、かつ電極間に配置した導伝体を介して通電可能に構成された反応素子へ、通電を行うことによって、母材貴金属を上記反応素子の反応場における反応によって微構造化し、母材貴金属あるいは、この母材貴金属電極に近接するように配置した異種材料表面、又はその両方へ、多次元的な構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体を作製する、請求項3又は4に記載の微構造化貴金属ナノ構造体の製造方法。
【請求項6】
反応場として、溶融塩、又は溶融塩及びイオン伝導性液体を用いる、請求項3から5のいずれか1項に記載の微構造化貴金属ナノ構造体の製造方法。
【請求項7】
反応のための通電条件を変化させることにより微構造の形態を制御する、請求項3から5のいずれか1項に記載の微構造化貴金属ナノ構造体の製造方法。
【請求項8】
溶融塩誘引材により反応場へ効率的に溶融塩を誘導することによって反応を促進する、請求項3から5のいずれか1項に記載の微構造化貴金属ナノ構造体の製造方法。
【請求項9】
被処理物に対して電気化学反応を行うための反応素子であって、イオン伝導体及びこれを挟んで相対する2つ、もしくは、それ以上の複数の電極で構成され、該電極が、請求項1又は2に記載の1次粒子より構成される多次元的な構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体を用いた電極で構成され、酸素イオン伝導体、又は溶融塩及び酸素イオン伝導体と微構造化貴金属ナノ構造体との界面を反応場としていることを特徴とする電気化学素子。
【請求項10】
電気化学素子の作動のための電界印加によって、反応電極の多孔化及び反応表面積の増大を行い、被処理物質の分解性能を向上させうるようにした貴金属体電極を1つ以上持つ、請求項9に記載の電気化学素子。
【請求項11】
反応場を構成又は形成させるための溶融塩が、窒素酸化物吸着性材料としても機能する、請求項9又は10に記載の電気化学素子。
【請求項12】
前記溶融塩が、硝酸塩からなり、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム、硝酸バリウム、硝酸銀、硝酸鉛、硝酸アンモニウム、硝酸ニッケル、硝酸コバルト、炭酸ナトリウム、塩素酸カリウム、過酸化ナトリウムから選ばれた少なくとも1種を含む、請求項10又は11に記載の電気化学素子。
【請求項13】
微構造化貴金属ナノ構造体電極の内部にもしくは隣接するように窒素酸化物吸着性材料が配置されている、請求項9又は10に記載の電気化学素子。
【請求項14】
前記窒素酸化物吸着性材料が、Na、K、Ba、Rb、Cs、Caから選ばれた少なくとも1種を含み、その含有率が、全窒素酸化物吸着性材料に対して、5〜50mol%である、請求項11又は13に記載の電気化学素子。
【請求項15】
被処理物が内燃機関の排ガスであり、作動温度域が400℃より低温である、請求項9から14のいずれか1項に記載の電気化学素子。
【請求項16】
請求項1又は2に記載のナノメートルサイズの多次元的な構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体から構成されることを特徴とする電極材料。
【請求項17】
請求項1又は2に記載のナノメートルサイズの多次元的な構造を有する微構造化貴金属ナノ構造体から構成されることを特徴とする触媒材料。
【請求項18】
請求項9から15のいずれか1項に記載の電気化学素子を配置した電気化学反応器から構成されることを特徴とする窒素酸化物浄化反応器。
【図7】
【図11】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図11】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−90448(P2009−90448A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−68531(P2008−68531)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
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