説明

貸金庫システムにおけるマス構成の自動学習システム

【課題】ラックのマス構成の変更に伴うコントローラ内の保護箱データおよび格納位置データの設定変更を容易に行うことを目的とする。
【解決手段】ラックの或る連のマス構成を変更した場合に、最下マスから上方に向かって全ての保護箱について、キャリッジによる保護箱の取り出しと保護箱データの読み取りと保護箱の格納とを行い、その際、読み取った保護箱の種別からキャリッジの次のマスへの上昇ストロークと次のマスの保護箱の格納位置データとを割り出し、割り出した格納位置データとキャリッジで読み取る保護箱データとで、コントローラに設定されている両データの自動更新を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貸金庫システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
貸金庫システムの一例として、各顧客の物品を収納する保護箱と、この保護箱を複数格納するラックと、このラックに沿って走行するスタッカクレーンに昇降自在に取り付けられ、ラックとの間で保護箱の取り出しおよび格納を行うキャリッジと、を備えた構成のものが挙げられる(例えば、特許文献1−3参照)。
【0003】
貸金庫システムによっては、保護箱について高さ寸法の違いによる複数の種別が用意されている場合があり、契約時などに、保護箱に預ける物品の大きさや数などに合わせて種別が決定される。ラックは保護箱の高さに合わせて棚板を取り付けることで、各保護箱の格納部を確保している。
【特許文献1】特公平2−1956号公報
【特許文献2】特開2006−97434号公報
【特許文献3】特開2007−23668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
保護箱の格納部の配置構成(マス構成)に関するデータは、少なくとも保護箱の種別や貸金庫番号等を特定する保護箱データと保護箱の格納位置を特定する格納位置データとしてコントローラに設定保存されるのであるが、従来の貸金庫システムでは、棚板の取付位置の変更などでラックのマス構成を変更した場合、前記コントローラの端末装置等を用いて手入力で変更したマス構成に対応させて、保護箱データや格納位置データなどの更新作業を行う必要があった。その場合、更新作業を行う者としては端末装置の更新操作に熟練した技術者に限られ、マス構成の変更に伴うコントローラ内の保護箱データおよび格納位置データの設定変更を容易に行うことはできなかった。
【0005】
本発明は、このような問題を解消するために創作されたものであり、熟練した技術者を要することなく、マス構成の変更に伴うコントローラ内の保護箱データおよび格納位置データの設定変更を容易に行える貸金庫システムにおけるマス構成の自動学習システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、高さ寸法の違いにより複数の種別を有し、この種別と貸金庫番号とからなる保護箱データが付設された、顧客の物品を収納する保護箱と、この保護箱を複数格納するラックと、このラックに沿って走行するスタッカクレーンに昇降自在に取り付けられ、前記ラックとの間で前記保護箱の取り出しおよび格納を行うとともに、前記保護箱データの読み取りを行うキャリッジと、前記保護箱データと保護箱の格納位置データとを関連付けて設定するコントローラと、を備えた貸金庫システムにおいて、前記ラックは、横方向に複数の連が形成され、各連ごとに、前記保護箱の種別に応じた棚板のピッチの変更によりマス構成の変更が可能に形成され、ラックの或る連のマス構成を変更した場合に、最下マスから上方に向かって全ての保護箱について、前記キャリッジによる保護箱の取り出しと前記保護箱データの読み取りと保護箱の格納とを行い、その際、読み取った保護箱の種別から前記キャリッジの次のマスへの上昇ストロークと次のマスの保護箱の格納位置データとを割り出し、割り出した格納位置データと前記キャリッジで読み取る保護箱データとで、前記コントローラに設定されている両データの自動更新を行うマス構成の自動学習システムとした。
【0007】
このマス構成の自動学習システムによれば、マス構成の変更に伴うコントローラ内の保護箱データおよび格納位置データの設定変更が自動で行われるので、設定変更を行うための熟練した技術者を要さず、データ変更に要する処理時間も短縮される。また、データが自動で更新されるため、入力ミスの問題もなく、ラックのマス構成の変更とコントローラの更新データとが正確に一致する。
【0008】
また、本発明は、前記コントローラには、前記保護箱データおよび格納位置データと、顧客情報のデータとが同じレコード番号で設定保存され、前記保護箱データおよび格納位置データの自動更新を行ったときに、前記顧客情報のデータを更新後の前記保護箱データおよび格納位置データのレコード番号となるように自動的に書き換えることを特徴とする。
【0009】
このマス構成の自動学習システムによれば、顧客情報のデータを手動で書き換える場合に比して書き換え時間が短縮される。また、顧客情報のデータが自動で書き換えられるため、入力ミスの問題もない。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熟練した技術者を要することなく、マス構成の変更に伴うコントローラ内の保護箱データおよび格納位置データの設定変更を容易に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明が適用される貸金庫システムの一例を示す外観斜視図であり、先ず本図を参照して貸金庫システム1全体の概略構造について説明する。符号2は顧客の物品を収納する保護箱を示す。顧客が利用するブース3は仕切り壁5を隔てて貸金庫室4に隣接しており、ブース機器6が仕切り壁5に接面するようにしてブース3内に設置されている。
【0012】
ブース機器6は、ブース情報装置7と保護箱利用口8とブース内搬送手段9とを備えている。ブース情報装置7は、顧客がタッチパネルなどの入力方式で保護箱2の取り出しや返却の指示等を行う装置であって、その操作パネル7aはブース機器6の筐体の上部に設置されている。保護箱利用口8はブース機器6の筐体の上部に形成されており、通常時は閉じ、顧客が保護箱2を利用する際に開くスライド式のシャッタ8aが付設されている。
【0013】
ブース内搬送手段9は、保護箱利用口8と貸金庫室4との間で保護箱2を搬送する機能を担い、ブース機器6の筐体内に設けられている。このブース内搬送手段9は、例えば貸金庫室4側と保護箱利用口8の直下周りとにわたって延設され、保護箱2を水平方向に搬送するコンベアなどから構成される。また、顧客がブース3に入室する際の認証装置として、ブース3の入出ドア10a周りにゲート装置10が設けられている。顧客は携帯した認証カードでゲート装置10を操作し、入出ドア10aのロックを解除してブース3に入室する。
【0014】
一方、貸金庫室4側においては、ラック11と、キャリッジ14を備えたスタッカクレーン12と、庫内搬送手段13とが設けられている。ラック11は保護箱2を上下左右に複数格納する。スタッカクレーン12はラック11の前面に沿って走行する。このスタッカクレーン12には、ラック11との間で保護箱2の取り出しおよび格納を行うとともに、後記する保護箱データD1の読み取りを行うキャリッジ14が昇降自在に取り付けられている。庫内搬送手段13は、スタッカクレーン12と前記したブース内搬送手段9との間に介設されて両者間の保護箱2の受け渡し機能を担うものであり、具体的には保護箱2を水平方向に回転させて方向転換させたり、保護箱2を通すべく仕切り壁5の貫通口に設けた開閉扉(図示せず)を開閉するなどの機能を有する。
【0015】
図2は貸金庫システム1の構成ブロック図である。貸金庫システム1は、貸金庫メインコントローラ15、ブース搬送コントローラ16、スタッカクレーン12、キャリッジ14、庫内搬送手段13、ブース内搬送手段9、ゲート装置10、モニタPC17、ブース情報装置7を備える。
【0016】
「貸金庫メインコントローラ15」
貸金庫メインコントローラ15は、貸金庫システム1全体の機器の制御を行うものであり、貸金庫室4(図1)に設置される。貸金庫メインコントローラ15には顧客の登録データや各種の設定データなどを含むマスタデータMD(図5)が設定保存される。また、本実施形態では、貸金庫メインコントローラ15はブース情報装置7からの自動更新の実行の指示を受けて、キャリッジ14に自動更新の実行を指示する。自動更新の実行により、貸金庫メインコントローラ15は、キャリッジ14が読み取った保護箱データD1(図3)を格納位置データD2(図5)に関連付けて設定保存する。
【0017】
「ブース搬送コントローラ16」
ブース搬送コントローラ16は、ブース内搬送手段9の制御やシャッタ8a(図1)の開閉制御などを行うものであり、図1に示すようにブース機器6に内蔵される。
【0018】
「スタッカクレーン12、キャリッジ14」
前記したように、スタッカクレーン12は、図1においてラック11の前面に沿って走行するものであり、ラック11との間で保護箱2の取り出しおよび格納を行うとともに、後記する保護箱データD1の読み取りを行うキャリッジ14が昇降自在に取り付けられている。
【0019】
「ブース内搬送手段9」
前記したように、ブース内搬送手段9は、図1において保護箱利用口8と貸金庫室4との間で保護箱2を搬送する機能を担う。
【0020】
「庫内搬送手段13」
前記したように、庫内搬送手段13は、図1においてスタッカクレーン12とブース内搬送手段9との間に介設されて両者間の保護箱2の受け渡し機能を担う。
【0021】
「ゲート装置10」
前記したように、顧客がブースに入室する際の認証装置として、ゲート装置10がブースの入出ドア10a周りに設けられている。顧客は携帯した認証カードでゲート装置10を操作し、入出ドア10aのロックを解除してブース3に入室する。
【0022】
「ブース情報装置7」
前記したように、ブース情報装置7は、顧客がタッチパネルなどの入力方式で保護箱2の取り出しや返却の指示等を行う装置である。本実施形態では、自動学習の操作としてこのブース情報装置7を利用しており、操作パネル7aにおいて学習の画面を選択して操作することで貸金庫メインコントローラ15に実行を指示する。
【0023】
「モニタPC17」
モニタPC17は店舗のオペレータが操作する端末装置であって、図示しない営業室などに設置される。モニタPC17では、顧客の新規契約や契約内容の変更、解約処理、利用状況、エラー内容の確認などの処理が行われる。
【0024】
次に、保護箱2とラック11について説明する。図3は保護箱2の外観斜視図である。保護箱2の上面には錠2bの付いた開閉蓋2aが設けられている。顧客は、保護箱利用口8(図1)まで搬送されてきた保護箱2に対し、所持している鍵で錠2bを解錠して開閉蓋2aを開け、物品の出し入れを行う。
【0025】
保護箱2は高さ寸法Hの違いによる複数の種別を有しており、例えば高さ寸法Hが60mm(種別60H)、100mm(種別100H)、140mm(種別140H)、180mm(種別180H)、220mm(種別220H)の各サイズが用意され、契約時に顧客がいずれかを選択して使用する。保護箱2には、この保護箱2を特定する貸金庫番号S1と種別(60H,100H,…のいずれか)とからなる保護箱データD1が付設されており、本実施形態では保護箱データD1をバーコードラベル21から構成して、保護箱2の側面に付設している。バーコード情報は例えば貸金庫番号S1を4桁、種別を3桁として表す計7桁の数字からなる。例として、貸金庫番号S1が「1203」で、種別が「100H」の保護箱2のバーコード情報は「1203100」となる。キャリッジ14(図1)には、このバーコード情報を読み取るバーコードリーダ(図示せず)が設けられている。
【0026】
図4はラック11の説明図であり、(a)、(b)はそれぞれラック11の外観斜視図、部分正面図である。図4(a)ではラック11を2列設けた場合を示しており、スタッカクレーン12は両ラック11の間を走行する。両ラック11はその前面が互いに対向するように配置され、キャリッジ14は両ラック11のどちらからでも保護箱2の格納・取り出しが可能である。ラック11は横方向に複数のブロックに画成されており、本発明ではこの横方向におけるブロック単位を「連」というものとする。また、本発明では保護箱2の格納部の配置構成をマス構成というものとする。
【0027】
図4(b)に示すように、連を区画する仕切り板22には棚板取り付け孔23が上下方向に等ピッチで穿設されており、保護箱2の種別に合わせて棚板24が所定の棚板取り付け孔23に対し爪係合方式やねじ止め方式、ピン係合方式など公知の取付構造を介して取り付けられる。仮にピッチpを40mmとした場合、種別60Hの保護箱2を格納するのに必要なピッチ数は2ピッチとなり、種別100Hの場合は3ピッチ、種別140Hの場合は4ピッチ、種別180Hの場合は5ピッチ、種別220Hの場合は6ピッチが必要となる。棚板24の取り付けは、これら必要最小限のピッチ数を各種別の設定ピッチ数として取り付けられる。
【0028】
図4(b)は、下から1〜3マス目まで全て種別60Hの保護箱2を格納したレイアウトから、2マス目を種別100Hの保護箱2に変更した場合を示しており、この際、3マス目の棚板24の最下からのピッチ数は4から5に変わる。このように、連における保護箱2の格納位置は最下からのピッチ数によって求まり、したがって全体のラック11における保護箱2の格納位置は、ラック11の列数、連数およびピッチ数からなる格納位置データD2(図5)で特定されることになる。格納位置データD2は例えば列数を1桁、連数を2桁、ピッチ数を2桁として表す計5桁の数字からなる。例として、ラック11の第1列の第01連において、ピッチ数06の棚板24に載置される保護箱2の格納位置データD2は、前記ピッチ数に1を加えて「10107」で示される格納ロケーション番号となる。
【0029】
以上の保護箱データD1と格納位置データD2とは互いに関連付けされて貸金庫メインコントローラ15(図2)に設定保存される。図5に、貸金庫メインコントローラ15に設定保存されるマスタデータMDの一例を示す。マスタデータMDは、マスタキーファイルF1、利用者データファイルF2、ゲート機器設定ファイルF3、搬送機器設定ファイルF4、ブロックマスタファイルF5等からなる。
【0030】
マスタキーファイルF1は、貸金庫番号S1および種別からなる保護箱データD1と、これに関連付けされた格納ロケーション番号からなる格納位置データD2とから構成される。なお、保存される種別のデータは、60H、100H、…の各種別にそれぞれ割り振られた1、2、…、N(Nは整数)の数値で保存される。
【0031】
利用者データファイルF2は、利用者(顧客)の登録データなどの顧客の個人情報からなる。利用者の登録データとしては、氏名、住所、生体情報等の個人情報、属性、禁止情報などである。図6はマスタキーファイルF1と利用者データファイルF2との関係を示す説明図であり、氏名「A」という顧客が貸金庫番号「1001」、格納ロケーション番号「10101」、種別「1(60H)」の保護箱を使用していることがレコード番号「1」で特定され、氏名「B」という顧客が貸金庫番号「1002」、格納ロケーション番号「10103」、種別「1(60H)」の保護箱を使用していることがレコード番号「2」で特定される。このように、利用者データファイルF2はマスタキーファイルF1のレコード番号に1対1で対応して保存される。なお、マスタキーファイルF1において、未使用分のマス(例えばレコード番号34〜42)についてはダミー設定される。
【0032】
図5において、ゲート機器設定ファイルF3には、ゲート装置などの設定・仕様情報や保護箱の仕様情報(前記した60H、100H、…の各種別に対する1、2、…、N(Nは整数)の割り振り仕様)などが保存される。
【0033】
搬送機器設定ファイルF4には、ブース内搬送手段や庫内搬送手段などの搬送機器の設定・仕様情報が保存される。
【0034】
ブロックマスタファイルF5には、ラックのブロック情報が保存される。例えば、ラックの1つの連を1ブロックとしてそのマス構成を保存する。本実施形態では、1つの連において、種別60Hの保護箱の最大格納数として42マス分のデータエリアを設定してある。
【0035】
本発明は、図4において、ラック11の或る連のマス構成を変更した場合に、最下マスから上方に向かって全ての保護箱2について、キャリッジ14による保護箱2の取り出しと保護箱データD1(図3)の読み取りと保護箱2の格納とを行い、その際、読み取った保護箱2の種別からキャリッジ14の次のマスへの上昇ストロークと次のマスの保護箱2の格納位置データD2とを割り出し、割り出した格納位置データD2とキャリッジ14で読み取る保護箱データD1とで、コントローラ(図2の貸金庫メインコントローラ15)に設定されている両データの自動更新を行ってマス構成を自動学習させることを主な特徴とする。
【0036】
図7に操作パネル7a(図1)における学習処理画面の一例を示す。画面には、学習するラックの列を選択する学習列選択ボタンB1、学習実行ボタンB4、ファイル作成ボタンB5、連ごとに設けられる状態表示エリア、動作切替ボタンB2、マス数入力ボタンB3などが表示される。状態表示エリアには、未学習であることを示す「変更なし」、学習を行ったことを示す「学習済み」、学習に失敗したことを示す「学習失敗」、学習したが貸金庫番号が重複していたことを示す「番号重複」のいずれかが表示される。動作切替ボタンB2には、ボタンを押すたびに、学習しないことを示す「選択可」、学習結果を破棄し元の状態に戻すことを示す「元に戻す」、これから学習することを示す「学習する」のいずれかが表示される。
【0037】
第1列のラックの第1連目においてマス構成の変更を行い、そのマス数、つまり保護箱の合計数が36であった場合の画面操作例について説明すると、先ずオペレータは学習列選択ボタンB1を押して第1列のラックを選択する。次いで、第1連目に対応した動作切替ボタンB2を押して「学習する」に変更するとともに、マス数入力ボタンB3で「36」と入力する。他の連でも変更があった場合には同様の操作を行い、以上の設定が終了したら学習実行ボタンB4を押す。これにより、実行指令が貸金庫メインコントローラ15(図2)に送信されて学習動作が開始される。学習が正常に完了すると画面が切り替わって「すべての学習は正常に終了しました」などのメッセージが表示され、図示しない「確認」ボタンを押すと図7の学習処理画面に戻る。
【0038】
次いで、ファイル作成ボタンB5を押すと、画面が切り替わって例えば「学習した内容で新しいファイルを作成します。これまでの学習状況はクリアされます」などのメッセージが表示され、図示しない「はい」ボタンを押すと、「新しいファイルを作成しました」のメッセージが表示される。そして、図示しない「確認」ボタンを押すと、変更後のマス構成に関して、貸金庫メインコントローラ15(図2)内に図5に示したマスタキーファイルF1、ゲート機器設定ファイルF3、搬送機器設定ファイルF4、ブロックマスタファイルF5の4つのファイルが作成され、これらのファイルの自動更新がなされる。ここでは、これまでになかった保護箱2の種別や、なくなった保護箱2の種別などの情報が更新される。
【0039】
次いで、自動更新されたマスタキーファイルF1に対応するように利用者データファイルF2の顧客情報のデータを書き換える必要がある。例えば図8に示すように、マスタキーファイルF1において、マス構成変更前にレコード番号「43」、「44」でそれぞれ特定された貸金庫番号「1101」、「1102」の保護箱を移し変えて、その結果、マス構成変更後にレコード番号が「2」、「3」に書き換えられた場合、利用者データファイルF2においても、その顧客情報である氏名「D」、「E」や住所などをレコード番号「43」、「44」からレコード番号「2」、「3」に書き換えて対応させる必要がある。前記したようにマスタキーファイルF1と利用者データファイルF2とは、同じレコード番号で設定保存されるからである。この利用者データファイルF2の書き換えを手動で行うには、例えばモニタPC17(図2)における所定操作により、作成した変更後のマスタキーファイルF1と変更前のマスタキーファイルF1とを比較して、同じ貸金庫番号があった場合に変更前の利用者データファイルF2をそのレコード番号にコピーする。勿論、この利用者データファイルF2の書き換えは学習処理時や学習処理後に自動で行うことが可能である。
【0040】
次に、マス構成の自動学習システムの動作フローについて図9を参照して説明する。なお、以下の説明中、符号付きの構成要素については適宜に他図を参照されたい。ラック11のマス構成の変更を行い、その後、オペレータが操作パネル7aの学習処理画面で所定の操作を行って学習実行ボタンB4を押すと、スタッカクレーン12が学習開始の連まで移動して、キャリッジ14がその連の棚板取り付け孔23の1ピッチ目、つまり最下マスまで移動し(ステップS1)、ラック11からの保護箱2の取り出しを行う(ステップS2)。
【0041】
キャリッジ14が保護箱2を取り込んだか否か、つまりキャリッジ14内に保護箱2が有るか否かを、キャリッジ14内に設けたセンサ(図示せず)の信号に基づいて判定し(ステップS3)、保護箱2が無い場合(ステップS3のNo)にはステップS4に進む。ステップS4では、+1したピッチが範囲内であるか否かを判定する。すなわち、ラック11の高さから割り出されるそのラック11の最大のピッチ数を超えたか否かの判定を行う。例えば、ラック11の高さが3000mmで、棚のピッチpが40mmの場合では、最大のピッチ数は「65」となるので、+1したピッチがこの「65」の範囲内であるか否かを判定する。ステップS4でYesの場合にはキャリッジ14が「+1ピッチ」の位置へ移動して(ステップS5)、ステップS2に戻る。ステップS4でNoの場合には異常終了する。
【0042】
ステップS3でYesの場合、キャリッジ14内のバーコードリーダが保護箱データD1を読み取る(ステップS6)。この読み取った保護箱データD1と格納位置データD2とで、マスタキーファイルF1に設定されている両データの更新を行うとともに、検知した保護箱数を+1カウントする(ステップS7)。読み取り後、キャリッジ14は保護箱2を元に戻すべくラック11に格納する。格納位置データD2に関して、最下マス(1マス目)の保護箱2については1ピッチ目であることから特定され、2マス目以降の保護箱2については、前回のマスで読み取った保護箱データD1の内の種別(60H、100H、…)の設定ピッチ数から特定される。つまり、あるマスで読み取った保護箱2の種別から次のマスの保護箱2の格納位置データD2を割り出す。また、同時にキャリッジ14の次のマスへの上昇ストロークも割り出す。
【0043】
保護箱データD1と格納位置データD2の自動更新の実施例について、より具体的に説明すると、最下マスの保護箱2については前記したようにその格納位置データD2は1ピッチ目であることから特定され、その特定された格納位置データD2にキャリッジ14が保護箱2を取り出しにいき、保護箱2があればバーコードデータである保護箱データD1を読み取る。このように特定された格納位置データD2のマスに保護箱2が存在すれば、この時点で読み取った保護箱データD1と特定されている格納位置データD2とで、マスタキーファイルF1に設定されている両データの更新を行う。
2マス目以降の保護箱については、前回のマスで読み取った保護箱データD1の内の種別から対象マスに関する格納位置データD2を割り出し、プログラムの内部メモリに仮登録する。仮登録された格納位置データD2にキャリッジ14が保護箱2を取り出しにいき、保護箱2があればバーコードデータである保護箱データD1を読み取る。このように仮登録された格納位置データD2のマスに保護箱2が存在すれば、この時点で読み取った保護箱データD1と仮登録されている格納位置データD2とで、マスタキーファイルF1に設定されている両データの更新を行う。
【0044】
フローに戻って、ステップS8で指定の保護箱数分検知されたか否かを判定し、Noの場合、ステップS6で読み取った種別の保護箱までの合計ピッチ数が最大のピッチ数(例えば前記したピッチ数「65」)の範囲内であるか否かを判定する(ステップS9)。ステップS9でNoの場合には異常終了し、Yesの場合にはキャリッジ14が読み取った種別の設定ピッチ分、つまり割り出された上昇ストローク分だけ次のマスの位置へ移動して(ステップS10)、ステップS2を行う。
【0045】
ステップS8でYesの場合、ステップS11で次の学習する連が有るか否かを判定し、Noの場合には正常終了し、Yesの場合にはスタッカクレーン12およびキャリッジ14が次の学習する連の1ピッチ目に移動して(ステップS12)、ステップS2を行う。なお、学習処理画面のマス数入力ボタンB3により入力された保護箱数が誤っていた場合には、ステップS8による指定の保護箱数の検知では、正しくマス構成の自動学習が行われない。そのため、学習するラックの連の最上部の棚ピッチ数までキャリッジ14による保護箱2の取り出しを行うようにしてもよく、これによれば保護箱数を間違って入力しても正しいマス構成が自動学習される。
【0046】
以上のように、ラック11の或る連のマス構成を変更した場合に、最下マスから上方に向かって全ての保護箱2について、キャリッジ14による保護箱2の取り出しと保護箱データD1の読み取りと保護箱2の格納とを行い、その際、読み取った保護箱2の種別からキャリッジ14の次のマスへの上昇ストロークと次のマスの保護箱2の格納位置データD2とを割り出し、割り出した格納位置データD2とキャリッジ14で読み取る保護箱データD1とで、貸金庫メインコントローラ15に設定されている両データの自動更新を行う自動学習システムとすれば、マス構成の変更に伴う貸金庫メインコントローラ15内の保護箱データD1および格納位置データD2の設定変更が自動で行われるので、従来のように、設定変更を行うにあたり熟練した技術者を要さず、データ変更に要する処理時間も短縮される。
また、データが自動で更新されるため、入力ミスの問題もなく、ラック11のマス構成の変更と貸金庫メインコントローラ15の更新データとが正確に一致する。
【0047】
また、図8で説明したように、マスタキーファイルF1における保護箱データD1および格納位置データD2の自動更新を行ったときに、利用者データファイルF2における氏名や住所などの顧客情報のデータを更新後の保護箱データD1および格納位置データD2のレコード番号となるように自動的に書き換える構成とすれば、手動で書き換える場合に比して書き換え時間が短縮される。また、顧客情報のデータが自動で書き換えられるため、入力ミスの問題もない。
【0048】
以上、本発明の最良の形態について説明した。説明した形態では、前回のマスで読み取った保護箱データD1の内の種別から対象マスに関する格納位置データD2を割り出してこれをプログラムの内部メモリに仮登録しておき、この仮登録された格納位置データD2にキャリッジ14が保護箱2を取り出しにいって、保護箱2が存在すればこのときに読み取る保護箱データD1と仮登録されている格納位置データD2とで両データの更新を行うものとしたが、本発明はこれに限られるものではない。
変形例としては、先ず、或る格納位置データD2のマスにキャリッジ14が保護箱2を取り出しにいき、保護箱2が存在すればバーコードデータである保護箱データD1を読み取り、この読み取った保護箱データD1の内の種別から次のマスの格納位置データD2を割り出す。ここで、格納位置データD2を仮登録することなく、読み取った保護箱データD1と割り出した次のマスの格納位置データD2とで両データの更新を行うものとしてもよい。要は、保護箱データD1と保護箱2の種別から割り出される次のマスの格納位置データD2とを利用するものであれば、各データの更新タイミングはいかなるものでも本発明に包含される。
その他、本発明は、各構成要素のレイアウトや形状、個数等について図面に記載したものに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に設計変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明が適用される貸金庫システムの一例を示す外観斜視図である。
【図2】本発明が適用される貸金庫システムの構成ブロック図である。
【図3】保護箱の外観斜視図である。
【図4】(a)、(b)はそれぞれラックの外観斜視図、部分正面図である。
【図5】貸金庫メインコントローラに設定保存されるマスタデータの構成例である。
【図6】マスタキーファイルと利用者データファイルとの関係を示す説明図である。
【図7】操作パネルにおける学習処理画面の一例である。
【図8】マスタキーファイルと利用者データファイルのそれぞれ変更前、変更後の状態を示す説明図である。
【図9】本発明に係るマス構成の自動学習システムのフロー図である。
【符号の説明】
【0050】
1 貸金庫システム
2 保護箱
3 ブース
4 貸金庫室
11 ラック
12 スタッカクレーン
14 キャリッジ
15 貸金庫メインコントローラ(コントローラ)
D1 保護箱データ
D2 格納位置データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高さ寸法の違いにより複数の種別を有し、この種別と貸金庫番号とからなる保護箱データが付設された、顧客の物品を収納する保護箱と、
この保護箱を複数格納するラックと、
このラックに沿って走行するスタッカクレーンに昇降自在に取り付けられ、前記ラックとの間で前記保護箱の取り出しおよび格納を行うとともに、前記保護箱データの読み取りを行うキャリッジと、
前記保護箱データと保護箱の格納位置データとを関連付けて設定するコントローラと、
を備えた貸金庫システムにおいて、
前記ラックは、横方向に複数の連が形成され、各連ごとに、前記保護箱の種別に応じた棚板のピッチの変更によりマス構成の変更が可能に形成され、
ラックの或る連のマス構成を変更した場合に、
最下マスから上方に向かって全ての保護箱について、前記キャリッジによる保護箱の取り出しと前記保護箱データの読み取りと保護箱の格納とを行い、
その際、読み取った保護箱の種別から前記キャリッジの次のマスへの上昇ストロークと次のマスの保護箱の格納位置データとを割り出し、割り出した格納位置データと前記キャリッジで読み取る保護箱データとで、前記コントローラに設定されている両データの自動更新を行うことを特徴とする貸金庫システムにおけるマス構成の自動学習システム。
【請求項2】
前記コントローラには、前記保護箱データおよび格納位置データと、顧客情報のデータとが同じレコード番号で設定保存され、
前記保護箱データおよび格納位置データの自動更新を行ったときに、前記顧客情報のデータを更新後の前記保護箱データおよび格納位置データのレコード番号となるように自動的に書き換えることを特徴とする請求項1に記載の貸金庫システムにおけるマス構成の自動学習システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−100364(P2010−100364A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−271168(P2008−271168)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(307011510)株式会社熊平製作所 (12)
【Fターム(参考)】