説明

走行制御装置

【課題】所定区間への進入により車速が変更された場合に、所定区間通過後に速やかに車速を復帰させる。
【解決手段】道路脇に設置された路側通信端末32と、ACCシステム1が搭載された車両31とにより構成される走行制御システムであって、この走行制御ECU2は、ACC走行制御のための設定車速を設定する走行速度設定部21と、ISA区間に進入するとISAエリア内における設定車速をISAエリアの制限速度に変更する走行速度変更部22と、ISAエリアを走行中に再設定予約操作が行われた場合、ISAエリアの通過後に、設定車速を走行速度設定部21が設定した車速に再設定する走行速度再設定部23と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設定車速に従って車両を走行させる走行制御装置及び走行制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クルーズコントロールシステム(以下「ACC(Adaptive Cruise Control)システム」という)では、設定車速に従って車両を走行させると共に前方車両を追従するように車両を走行させている。そして、前方のカーブを検出すると、このカーブを安全に走行できる安全速度を算出し、設定車速の値を安全速度に変更してACC走行制御を行う技術が知られている(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
ところで、近年、光ビーコン等の無線通信手段による路車間通信によって、路側通信端末から車載通信端末に通知される各種情報に基づいて車両の走行制御を行うインフラ協調システムが考え出され、更に、インフラ協調システムをACCシステムに適用したISA(Intelligent Speed Adaptation)が考え出されている。このISAは、カーブ、スクールゾーン等の徐行すべき区間(以下「ISAエリア」という)において車両を安全に走行させるためのものであり、路側通信端末は、車両に対してISAエリア及びこのISAエリアの制限速度情報を車両に通知し、一方、ACC走行制御を行っている車両は、ISAエリアに進入すると、路側通信端末から通知された制限速度情報をACCシステムの設定車速として設定して、ACC走行制御を行うものである。
【特許文献1】特開平08−290728号公報
【特許文献2】特開2002−316600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のISAでは、ISAエリアに進入するときは設定車速を変更するものの、ISAエリアを通過するときは特に何の処理も行わないため、ISAエリアの通過後に元の車速に戻したいときや、ISAエリアの通過後に所望の車速に設定したいときは、ISAエリアの通過後に、ドライバが設定車速を再設定しなければならなかった。更に、ISAエリアの終了地点は視認により即座に判断できるものではないため、どのタイミングでACCシステムの設定車速を再設定してよいのか判断できず、ドライバに対して煩わしさやストレスを与えるという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、所定区間への進入により設定車速が変更された場合に、所定区間通過後に速やかに設定車速を再設定することができる走行制御装置及び走行制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の走行制御装置は、設定車速に従って車両を走行させる走行制御装置であって、設定車速を設定する走行速度設定手段と、所定区間に進入すると設定車速を所定車速に変更する走行速度変更手段と、所定区間の走行中に、所定区間の通過後の設定車速を予約する走行速度予約操作が行われた場合、所定区間の通過後に、走行速度変更手段で変更された設定車速を、走行速度予約操作で予約された設定車速に再設定する走行速度再設定手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
この走行制御装置では、走行速度設定手段により設定車速が設定された車両が所定区間に進入すると、設定車速が所定車速に変更されて走行制御が行われるが、この所定区間の走行中に走行速度予約操作が行われると、所定区間の通過後に、設定車速が走行速度予約操作により予約された設定車速に再設定されて走行制御される。このため、所定区間への進入により設定車速が変更されたとしても、所定区間の走行中に走行速度予約操作を行うことで、所定区間の通過後に設定速度が再設定されるため、ドライバに所定区間の終了地点を意識させることなく、速やかに設定速度を再設定することが可能となる。
【0008】
この場合、走行速度予約操作は、ドライバによるアクセル操作であることが好ましい。この走行制御装置によれば、走行速度予約操作として、車両の加速度を調整するための操作であるアクセル操作を採用することで、走行速度変更手段で変更された設定車速を変更したいというドライバの意思をより反映した走行制御を行うことが可能となる。
【0009】
本発明に係る走行制御システムは、設定車速に従って車両を走行させる走行制御システムであって、車両の外部に設けられ、車両に対して所定区間及び当該所定区間の目標車速を通知する走行速度通知装置と、車両に設けられ、設定車速に従って車両を走行させる走行制御装置と、を有し、走行制御装置は、設定車速を設定する走行速度設定手段と、所定区間に進入すると、設定車速を目標車速に変更する走行速度変更手段と、所定区間の走行中に、所定区間の通過後の設定車速を予約する走行速度予約操作が行われた場合、所定区間の通過後に、走行速度変更手段で変更された設定車速を、走行速度予約操作で予約された設定車速に再設定する走行速度再設定手段とを有することを特徴とする。
【0010】
この走行制御システムでは、走行速度設定手段により設定車速が設定された車両が、走行速度通知装置から通知された所定区間に進入すると、設定車速が走行速度通知装置から通知された目標車速に変更されて走行制御が行われるが、この所定区間の走行中に走行速度予約操作が行われると、所定区間の通過後に、設定車速が走行速度予約操作により予約された設定車速に再設定されて走行制御される。このため、所定区間への進入により設定車速が変更されたとしても、所定区間の走行中に走行速度予約操作を行うことで、所定区間の通過後に設定速度が再設定されるため、ドライバに所定区間の終了地点を意識させることなく、速やかに設定速度を再設定することが可能となる。また、所定区間及びこの所定区間の目標車速を、車両の外部に設けられた走行速度通知装置から通知することで、所定区間及び所定車速を一元管理することができるため、各車両に膨大な情報を保持しておく必要が無く、更に、所定区間及び所定車速の変更に対して、容易に対応することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、所定区間への進入により設定車速が変更された場合に、所定区間通過後に速やかに設定車速を再設定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明に係る走行制御装置及び走行制御システムの好適な実施形態について詳細に説明する。本実施形態は、本発明に係る走行制御装置をACCシステムに適用したものである。なお、全図中、同一又は相当部分には同一符号を付すこととする。
【0013】
図1は、本発明に係る実施形態のACCシステムのブロック構成を示した図である。図に示すように、本実施形態のACCシステム1は、ドライバの操作により設定される設定車速に従ってACC走行制御を行い、更に、車両前方の先行車両をミリ波レーダなどで認識して当該先行車両を追従するようにACC走行制御を行い、車両を走行させるシステムである。
【0014】
ACCシステム1は、走行制御ECU(走行制御装置)2を備えている。走行制御ECU2は、ACCシステム1におけるACC走行制御を行う制御部であり、例えば、CPU、ROM、RAMを含むコンピュータを主体として構成されている。
【0015】
走行制御ECU2には、ドライバがACCシステム1を操作するための設定スイッチ3、リジュームスイッチ4、コーストスイッチ5及びOFFスイッチ6と、車速センサ7と、アクセルセンサ8と、光ビーコン受信部9と、位置情報取得部10と、ミリ波レーダ11とが接続されている。
【0016】
設定スイッチ3は、ACCシステム1によるACC走行制御を起動すると共に設定車速を設定するためのスイッチである。設定スイッチ3は、ドライバによって設定スイッチ3が操作されると、設定信号を走行制御ECU2に送信する。
【0017】
リジュームスイッチ4は、ACC走行制御中にブレーキ操作等が行われてACC走行制御が一旦休止された後、設定スイッチ3の操作により設定された設定車速でACC走行制御を行うように設定車速を復帰させるためのスイッチである。リジュームスイッチ4は、ドライバによってリジュームスイッチ4が操作されると、リジューム信号を走行制御ECU2に送信する。
【0018】
コーストスイッチ5は、設定車速でACC走行制御を行っている際、設定車速を所定車速(例えば5km/h)ずつ下げるためのスイッチである。コーストスイッチ5は、ドライバによってコーストスイッチ5が操作されると、コースト信号を走行制御ECU2に送信する。
【0019】
OFFスイッチ6は、ACCシステム1によるACC走行制御を解除するためのスイッチである。OFFスイッチ6は、ドライバによってOFFスイッチ6が操作されると、OFF信号を走行制御ECU2に送信する。
【0020】
車速センサ7は、車両の走行速度を検出するセンサである。車速センサ7は、各車輪の回転速度を検出することによって車速を検出し、この検出した車速を車速信号として走行制御ECU2へ送信する。
【0021】
アクセルセンサ8は、ドライバのアクセル操作を検出するセンサである。アクセルセンサ8は、ドライバによってアクセルペダルが操作されたことを検出すると、アクセル信号を走行制御ECU2へ送信する。
【0022】
光ビーコン受信部9は、道路脇に設置される路側通信端末から、光ビーコンによって通知されるISAエリア情報及びこのISAエリアの制限速度(目標速度)情報を受信する受信部である。光ビーコン受信部9は、路側通信端末からISAエリア情報及びこのISAエリアの制限速度情報を受信すると、このISAエリア情報及びこのISAエリアの制限速度情報を走行制御ECU2に送信する。
【0023】
位置情報取得部10は、GPS等を利用したナビゲーションシステムから、自車両の位置情報を取得するものである。位置情報取得部10は、自車両の位置情報を取得すると、この位置情報を走行制御ECU2に送信する。
【0024】
ミリ波レーダ11は、車両の前側の中央に取り付けられ、ミリ波を利用して車両前方の物体を検出するためのレーダである。ミリ波レーダ11は、ミリ波を水平面内でスキャンしながら前方に向けて送信し、反射してきたミリ波を受信して、前方を走行する車両を検出すると共に、自車両と前方を走行する車両との距離を計測する。そして、ミリ波レーダ11は、自車両と前方を走行する車両との距離を距離信号として走行制御ECU2へ送信する。
【0025】
また、走行制御ECU2は、設定スイッチ3、リジュームスイッチ4、コーストスイッチ5、OFFスイッチ6、車速センサ7、アクセルセンサ8、光ビーコン受信部9、位置情報取得部10、及びミリ波レーダ11からそれぞれ送信される信号等に基づき、スロットルアクチュエータ12及びブレーキアクチュエータ13を制御して車両のACC走行制御を行う。そして、走行制御ECU2は、走行速度設定部21と、走行速度変更部22と、走行速度再設定部23と、走行速度制御部24とが設けられている。
【0026】
走行速度設定部21は、設定スイッチ3から送信される設定信号と、車速センサ7から送信される車速信号とに基づき、ACC走行制御のための設定車速を設定して、ACCシステム1によるACC走行制御を開始させる。
【0027】
走行速度変更部22は、光ビーコン受信部9から送信されるISAエリア情報及びこのISAエリアの制限速度情報と、位置情報取得部10から送信される位置情報とに基づき、ISAエリア内におけるACC走行制御のための設定車速を、ISAエリアの制限速度に変更する。
【0028】
走行速度再設定部23は、リジュームスイッチ4から送信されるリジューム信号と、コーストスイッチ5から送信されるコースト信号と、アクセルセンサ8から送信されるアクセル信号と、光ビーコン受信部9から送信されるISAエリア情報と、位置情報取得部10から送信される位置情報とに基づき、ISAエリアを走行中にACC設定速度の再設定予約を受け付けると、ISAエリアを抜けた後に、ACC走行制御のための設定車速を走行速度設定部21が設定した車速に再設定する。
【0029】
走行速度制御部24は、ミリ波レーダ11から送信される距離信号と、走行速度設定部21、走行速度変更部22、及び走行速度再設定部23で設定される設定車速とに基づき、設定車速の範囲で前方の車両を追従するように、スロットルアクチュエータ12及びブレーキアクチュエータ13を制御してACC走行制御を行う。
【0030】
図2は、本発明に係る実施形態の走行制御システム、及びISAエリアと車速との関係を示した図である。なお、本実施形態では、図2に示すように、車両31が道路を左側から右側に向いて走行している場合を考える。図に示すように、本実施形態に係る走行制御システム30は、ACCシステム1が搭載された車両31と、道路脇に設置された路側通信端末(走行速度通知装置)32とを備えている。
【0031】
路側通信端末32は、路上の複数地点に設置されており、各路側通信端末32は、交通管制センターに接続されている。路側通信端末32は、交通管制センターから送信されるISAエリア情報及びこのISAエリアの制限速度情報を、光ビーコンを用いて路上を走行する車両31に通知する。なお、路側通信端末32は、光ビーコンの代わりに電波ビーコンやFM多重放送を用いる装置など、路車間通信できる装置であれば他のものでもよく、これらの装置から情報を車両31に通知してもよい。
【0032】
次に、図2及び図3を参照しながら、本実施形態に係るACCシステム1及び走行制御システム30の動作について説明する。図3は、ACCシステムの動作を示すフローチャートである。
【0033】
まず、車両31が車速Vaで走行しているときに、ドライバが設定スイッチ3を操作すると、走行速度設定部21は、設定スイッチ3から出力された設定信号を受信したときに車速センサ7から出力された車速信号を取得し、この車速信号が示す車速Vaを設定速度として設定する(ステップS1)。そして、走行速度制御部24は、スロットルアクチュエータ12及びブレーキアクチュエータ13を制御して車速がVaとなるようにACC走行制御を行う(ステップS2)。
【0034】
そして、車両31が路側通信端末32の下方(又は付近)を通過する際、光ビーコン受信部9は、路側通信端末32から通知される光ビーコンを受信し、この光ビーコンに含まれるISAエリア情報及びISAエリアの制限速度情報を取得する(ステップS3)。このISAエリア情報は、ISAエリアを特定する情報であり、車両31の進行方向前方におけるISAエリアの開始地点a及び終了地点bを示す位置情報が含まれている。そして、制限速度情報は、ISAエリアの制限速度Vi(目標車速)を示す情報が含まれている。
【0035】
その後、走行制御ECU2が、位置情報取得部10から送信された車両31の位置情報と、光ビーコン受信部9から送信されたISAエリアの開始地点aとを対比することにより、車両31がISAエリアに進入したことを検出すると(ステップS4)、走行速度変更部22は、設定速度を路側通信端末32から通知された制限速度Viに変更する(ステップS5)。そして、走行速度制御部24は、ステップS2と同様にスロットルアクチュエータ12及びブレーキアクチュエータ13を制御して、車速がViとなるようにACC走行制御を行う(ステップS6)。
【0036】
次に、走行速度再設定部23は、車両31がISAエリア内を走行している間、ドライバによって再設定予約操作(走行速度予約操作)があるか否かを監視する(ステップS7)。再設定予約操作とは、ドライバがリジュームスイッチ4又はアクセルの操作を行ったことを指す。そして、ステップS7において、リジュームスイッチ4が操作されてリジュームスイッチ4からリジューム信号が出力されると、又は、アクセルが操作されてアクセルセンサ8からアクセル信号が出力されると、走行速度再設定部23は、再設定予約操作があったと判定する。なお、再設定予約操作は、他のスイッチや、再設定予約操作専用のスイッチを操作することによって行ってもよい。
【0037】
ステップS7において、再設定予約操作を検出しない場合(ステップS7:NO)、走行速度再設定部23による処理は行わずに、ステップS11に進む。
【0038】
一方、ステップS7において、再設定予約操作を検出した場合(ステップS7:YES)、走行速度再設定部23は、再設定予約を受け付け、保留しておく(ステップS8)。
【0039】
次に、走行速度再設定部23は、再設定予約を保留した後、ドライバによって再設定予約解除操作があるか否かを監視する(ステップS9)。再設定予約解除操作とは、ドライバがコーストスイッチ5の操作を行ったことを指す。そして、ステップS9において、コーストスイッチ5が操作されてコーストスイッチ5からコースト信号が出力されると、走行速度再設定部23は、再設定予約解除操作があったと判定する。なお、再設定予約解除操作は、他のスイッチや、再設定予約解除操作専用のスイッチを操作することによって行ってもよい。
【0040】
なお、ステップS9において、ドライバがコーストスイッチ5を初めて操作した場合は再設定予約解除操作があったと判定し、2回目以降の操作に対しては、重ねて再設定予約解除操作があったとは判定せず、コーストスイッチ5本来の機能として、設定車速を所定車速だけ下げる。このように、コーストスイッチ5の操作する回数によって、再設定予約解除と本来の機能とを切り替えるようにすることで、再設定予約解除を行うために独自のスイッチを設ける必要がなくなり、しかも、コーストスイッチ5の本来の機能も実行することが可能となる。
【0041】
そして、ステップS9において、再設定予約解除操作を検出した場合(ステップS9:YES)、走行速度再設定部23は、ステップS8において受け付けて保留した再設定予約を解除し(ステップS10)、ステップS6に戻り、設定車速Viに従ったACC走行制御を継続する。
【0042】
一方、ステップS9において、走行速度再設定部23が再設定予約解除操作を検出できない場合(ステップS9:NO)、走行制御ECU2は、位置情報取得部10から送信される車両31の位置情報と、光ビーコン受信部9から送信されたISAエリアの終了地点bとを対比することで、車両31がISAエリアの終了地点bを通過したか否かを判定する(ステップS11)。
【0043】
ステップS11において、ISAエリアの終了地点bを通過していないと判定した場合(ステップS11:NO)、走行速度制御部24は、ステップS6に戻り、設定車速Viに従ったACC走行制御を継続する。
【0044】
一方、ステップS11において、ISAエリアの終了地点bを通過したと判定した場合(ステップS11:YES)、走行速度再設定部23は、再設定予約が保留されているか否かを判定する(ステップS12)。
【0045】
ステップS12において、再設定予約が保留されていると判定した場合(ステップS12:YES)、走行速度再設定部23は、ACC走行制御のための設定車速が、ISAエリアに進入する前の車速であってステップS1において走行速度設定部21が設定した車速となるように、設定速度をViからVaに再設定する(ステップS13)。そして、走行速度制御部24は、スロットルアクチュエータ12及びブレーキアクチュエータ13を制御して車速がVaとなるようにACC走行制御を行う(ステップS14)。このため、ステップS7において、再設定予約操作があると、実質的に、ISAエリアの通過後に設定車速を、ステップS1において走行速度設定部21が設定した車速に再設定することを予約することとなる。
【0046】
一方、ステップS12において、再設定予約が保留されていないと判定した場合(ステップS12:NO)、走行速度再設定部23による処理は行わずに設定速度Viを維持し(ステップS15)、走行速度制御部24は、車速がステップS5で変更された設定速度Viとなるように、ACC走行制御を行う(ステップS16)。
【0047】
その後、ドライバがOFFスイッチ6を操作すると、走行制御ECU2は、OFFスイッチから出力されるOFF信号を検出して、ACC走行制御を終了する。
【0048】
このように、本実施形態に係るACC走行制御装置及び走行制御システムによれば、走行速度設定部21により設定車速Vaが設定されてACC走行制御が行われている車両31が、ISAエリアに進入すると、設定車速がISAエリアの制限速度に変更されてACC走行制御が行われるが、このISAエリア内の走行中に走行速度再設定操作が行われると、ISAエリアの通過後に、走行速度設定部21により設定された設定速度に再設定されてACC走行制御される。このため、ISAエリアへの進入により設定車速が変更されたとしても、ISAエリアの走行中に速度再設定操作を行うことで、ドライバにISAエリアの終了地点bを意識させることなく、速やかにISAエリアに進入する前の設定速度に復帰させることが可能となる。
【0049】
また、走行速度再設定部23は、GPS等により計測される車両31の位置と、路側通信端末32から通知されるISAエリアの終了地点bとを対比することにより、ISAエリアを通過したことを判定するため、ISAエリアを通過したことを迅速に認識することができ、ISAエリアの通過後、より速やかにISAエリアに進入する前の設定速度に復帰させることが可能となる。
【0050】
また、走行速度再設定操作として、車両31を加速させるための操作であるアクセル踏込み操作を採用することで、直ぐにでも加速したいというドライバの意思をより反映したACC走行制御を行うことが可能となる。
【0051】
また、ACCシステム1で用いるISAエリア及びこのISAエリアの制限速度情報を、交通管制センターに接続された路側通信端末32から通知することで、交通管制センターがISAエリア及びISAエリアの制限速度情報を一元管理することができるため、各車両31に膨大な情報を保持しておく必要が無くなり、更に、ISAエリアやISAエリアの制限速度の変更等に迅速且つ容易に対応することが可能となる。
【0052】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、走行速度再設定部23は、ISAエリアの走行中に再設定予約操作があると、ISAエリアの通過後に、設定車速を走行速度設定部21が設定した車速に再設定するように説明したが、所望の車速を選択できる車速選択スイッチ等を新たに設けて、再設定予約操作として、車速選択スイッチにより所望の車速を選択する操作を採用し、ISA区間の通過後に、設定車速を所望の車速に再設定するようにしてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、再設定予約操作としてアクセル操作があると、ISAエリアの通過後に、設定車速を変更するようにしたが、このアクセル操作は、アクセルを踏込む操作であっても、緩める操作であってもよい。例えば、上記実施形態のように、ISAエリアでは、走行速度設定部21で設定した設定速度よりも低速の車速に設定車速を変更する場合に、アクセルを踏込む操作を行うことで、ISAエリアの通過後に、設定車速を上昇させて走行速度設定部21で設定した設定速度に再設定してもよい。反対に、ISAエリアでは、走行速度設定部21で設定した設定速度よりも高速の車速に設定車速を変更する場合に、アクセルを緩める操作を行うことで、ISAエリアの通過後に、設定車速を下降させて走行速度設定部21で設定した設定速度に再設定してもよい。このように、アクセル操作を再設定予約操作とすることで、走行速度変更部22で変更された設定車速を変更したいというドライバの意思をより反映した走行制御を行うことが可能となる。
【0054】
また、上記実施形態では、ISAエリアに進入してから設定速度をISAエリアの制限速度に変更するように説明したが、ISAエリアの開始地点の所定距離手前において設定速度を変更しておき、ISAエリアに進入したときには既にISAエリアの制限速度に変更されているようにしてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、路側通信端末32から通知されるISAエリア情報は、ISAエリアの開始地点a及び終了地点bを示す位置情報として説明したが、ISAエリアの開始地点と終了地点が分かる情報であれば如何なる情報であっても良い。そのため、例えば、路側通信端末32から車両31に通知するISAエリア情報を、車両31が地図情報として周辺の交差点名及び各交差点の位置情報を保持している場合、開始地点a及び終了地点bを挟む2つの交差点名と、各交差点から開始地点a及び終了地点bまでの距離情報とし、走行制御ECU2は、ISAエリアの開始地点a及び終了地点bを算出して求めるようにしてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、ナビゲーションシステムから車両31の位置情報を取得して、ISAエリアの終了地点bを通過したことを検出するように説明したが、他の手段によりACCシステム1がISAエリアの終了地点bを通過したことを検出してもよい。例えば、ISAエリアの終了地点bに、ISAエリアの終了地点bであることを示す終了地点情報を通知する路側通信端末32を設置しておき、車両31が路側通信端末32の下方を通過する際に、路側通信端末32から車両31に対して終了地点情報を通知することで、ACCシステム1の走行制御ECU2は、ISAエリアの終了地点bを検出することができる。
【0057】
また、上記実施形態では、ISAエリアへの進入及び通過の情報をドライバに通知する具体的手段に関しては特に説明しなかったが、HMI(Human Machine Interface)等によりISAエリアへの進入及び通過等をドライバに通知するようにしてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、本発明に係る走行制御装置をACCシステムに適用して説明したが、適用されるシステムは如何なるシステムであってもよく、例えば、前方を走行する車両に追従する機能を備えない通常のクルーズコントロール(Cruise Control)システムに適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る実施形態の走行制御装置を備えたACCシステムのブロック構成を示した図である。
【図2】本発明に係る実施形態の走行制御システム、及びISAエリアと車速との関係を示した図である。
【図3】ACCシステムの動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0060】
1…ACCシステム、2…走行制御ECU(走行制御装置)、21…走行速度設定部、22…走行速度変更部、23…走行速度再設定部、30…走行制御システム、31…車両、32…路側通信端末(走行速度通知装置)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定車速に従って車両を走行させる走行制御装置であって、
前記設定車速を設定する走行速度設定手段と、
所定区間に進入すると前記設定車速を所定車速に変更する走行速度変更手段と、
前記所定区間の走行中に、前記所定区間の通過後の設定車速を予約する走行速度予約操作が行われた場合、前記所定区間の通過後に、前記走行速度変更手段で変更された設定車速を、前記走行速度予約操作で予約された設定車速に再設定する走行速度再設定手段と、
を有することを特徴とする走行制御装置。
【請求項2】
前記走行速度予約操作は、ドライバによるアクセル操作であることを特徴とする請求項1に記載の走行制御装置。
【請求項3】
設定車速に従って車両を走行させる走行制御システムであって、
前記車両の外部に設けられ、前記車両に対して所定区間及び当該所定区間の目標車速を通知する走行速度通知装置と、
前記車両に設けられ、前記設定車速に従って車両を走行させる走行制御装置と、を有し、
前記走行制御装置は、設定車速を設定する走行速度設定手段と、前記所定区間に進入すると、前記設定車速を前記目標車速に変更する走行速度変更手段と、前記所定区間の走行中に、前記所定区間の通過後の設定車速を予約する走行速度予約操作が行われた場合、前記所定区間の通過後に、前記走行速度変更手段で変更された設定車速を、前記走行速度予約操作で予約された設定車速に再設定する走行速度再設定手段とを有することを特徴とする走行制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−18633(P2009−18633A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−181249(P2007−181249)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】