説明

走行案内装置、走行案内方法および走行案内プログラム

【課題】注意地点に対する運転者の注意を継続的に喚起することができる技術を提供する。
【解決手段】注意地点の位置を示す情報を取得し、前記注意地点に対する自車両の接近度合いを示す情報を取得し、前記自車両の車内に継続的に流される音声の原音を発生させるための原音信号を取得し、前記接近度合いに応じた変調量で前記原音信号を変調して変調音信号を生成し、生成された前記変調音信号を用いて変調音をスピーカに出力させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注意地点を走行する際に音声による案内を行う走行案内装置、走行案内方法および走行案内プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、学校の種類や、曜日・時間などに応じて、学校の周囲にスクールゾーンを設定し、運転者に対する注意喚起のための音声案内を行う技術が知られている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−250632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1には、スクールゾーンに進入する前、スクールゾーンを走行中、スクールゾーンから退出したときに、音声案内を実施することが記載されている。例えばスクールゾーンに進入する前に「Xメートル先にスクールゾーンがあります。」などのようなフレーズによる音声案内が実施される。しかし、注意地点からXメートル手前の地点でそのような音声案内を実施したとしても、それ以降、最も注意しなければならない注意地点までの間、運転者の注意を継続的に喚起することができない。特許文献1には、音声案内を繰り返すことも記載されているが、「スクールゾーンを走行中です。」などのような同一のフレーズの音声案内が繰り返されたとしても運転者にとっては煩わしい。しかも、例えば運転者がラジオを聞いている場合、このような音声案内のフレーズが繰り返される間中、ラジオからの音声が聞き取りづらくなる。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、注意地点に対する運転者の注意を継続的に喚起することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明においては、前記注意地点に対する自車両の接近度合いを示す情報を取得し、前記自車両の車内に継続的に流される音声の原音を発生させるための原音信号を取得し、前記接近度合いに応じた変調量で前記原音信号を変調して変調音信号を生成し、生成された前記変調音信号を用いて変調音をスピーカに出力させる構成を採用する。この構成によると、運転者の注意を継続的に喚起することができる。すなわち、注意地点に対する接近度合いを運転者は継続的に把握することができる。また、車内に流される原音を変調した変調音を出力することで接近度合いを示す構成であるので、運転者にとって、原音とは別の案内音声によって原音が有する音声情報が把握しづらくなることがない。
【0006】
注意地点情報取得手段においては、少なくとも注意地点の位置を示す情報を取得することができればよい。注意地点とは、一時停止や事故多発地点、踏み切り、カーブの入り口・途中・出口の地点、学校など、走行するにあたり運転者に対して注意を促すための基準地点として予め設定されている構成を採用可能である。注意地点の位置を示す情報は、記憶媒体に予め記憶されているものを取得する構成であってもよいし、記憶されている注意地点に関する情報に基づいて、曜日や時間帯などによって動的に注意地点が生成されてもよい。運転者の運転癖や走行履歴に基づいて注意地点を設定あるいは解除していく構成をさらに備えていてもよい。
【0007】
接近度合い情報取得手段においては、注意地点に対する自車両の接近度合いを示す情報を取得することができればよい。注意地点に対する自車両の接近とは、注意地点に対する正の接近および負の接近、すなわち注意地点に近づくことおよび遠ざかることの少なくともいずれか一方を含むものとする。接近度合いを示す情報として、例えば自車両と注意地点との間の距離を取得する構成を採用可能である。自車両と注意地点との距離は、自車両の位置と注意地点の位置とから導出可能である。なお、自車両と注意地点との距離は、自車両と注意地点との直線距離であってもよいし、道なりの距離であってもよい。自車両の位置は、GPS衛星や各種の車載センサからの信号、地図情報、路車間通信等によって特定可能である。
【0008】
接近度合いを示す情報として、例えば注意地点に対する自車両の速度を取得してもよい。自車両の速度は、例えば車輪の回転数を検出する車速センサから取得可能である。単位時間あたりの自車両の位置の変化から導出したり、リンクの旅行時間をリンクの距離で除して導出してもよい。また例えば、接近度合いを示す情報として、自車両の加速度を取得してもよい。自車両の加速度は、例えば車両の前後方向の加速度を検出する加速度センサから取得してもよいし、単位時間あたりの速度の変化から導出してもよい。
【0009】
原音信号取得手段においては、車内に継続的に流される音声の原音を発生させるための原音信号を取得することができればよい。例えば、AM/FMラジオ放送やテレビ放送を受信するチューナから原音信号を取得する構成や、カセットテープやCD、MD(登録商標)、DVD、HDD、フラッシュメモリなどの記憶媒体に記憶されている原音信号を取得する構成を採用可能である。原音信号の取得は、アナログ形式でもデジタル形式でもよい。
【0010】
変調音出力手段においては、注意地点に対する自車両の接近度合いに応じた変調量で原音信号を変調して変調音信号を生成し、生成された変調音信号を用いて変調音をスピーカに出力させる。すなわち、変調音出力手段においては、注意地点により近づくにつれて変調の度合いを大きくする態様、より近づくにつれて変調の度合いを小さくする態様、より遠ざかるにつれて変調の度合いを大きくする態様、より遠ざかるにつれて変調の度合いを小さくする態様などを含む。
【0011】
さらに、変調音出力手段においては、原音に加え変調音をスピーカに出力させるようにしてもよい。すなわち、接近度合いに応じて、変調音の付加の態様を変更する。その結果、変調音の付加の態様の変化によって注意地点に対する接近度合いを運転者に認識させることができる。なお、変調音の付加の態様は例えば、変調音の音量、変調音の付加のタイミングなどを指す。
【0012】
さらに、変調音出力手段は、原音に加え原音を遅延させた遅延音を出力させる機能を有し、接近度合いに応じて、原音からの遅延時間を変更するようにしてもよい。この場合、運転者は、遅延時間の変化と対応付けて、注意地点に対する自車両の接近度合いを認識することができる。
【0013】
さらに、変調音出力手段は、原音に加え原音に残響効果を付加した残響音を出力させる機能を有し、前記接近度合いに応じて、前記残響効果の度合いを変更するようにしてもよい。この場合、運転者は、残響効果の度合いの変化と対応付けて、注意地点に対する自車両の接近度合いを認識することができる。残響効果の度合いとは、例えば残響音の音量、残響時間、原音に対する残響開始時間などを想定可能である。
【0014】
さらに、変調音出力手段は、原音に含まれる特定の周波数帯の音の音量を変更する機能を有し、接近度合いに応じて、前記特定の周波数帯の音の音量を変更するようにしてもよい。この場合、運転者は、特定の周波数帯の音の音量の変化と対応付けて、注意地点に対する自車両の接近度合いを認識することができる。なお、特定の周波数帯が、原音に含まれる全ての周波数帯であってもよい。
【0015】
なお、変調音出力手段による変調の態様は、上記の内容に限定されるものではなく、原音を変調する限りにおいて他にも様々な音響効果やその組み合わせを含む。原音を任意の高さの音に変調する音響効果を利用して、疑似ドップラー効果を表現するようにしてもよい。すなわち、注意地点を音源に見立て、注意地点に近づくにつれて徐々に音を高くし、注意地点を過ぎるとまた徐々に音を低くするドップラー効果を擬似的に再現することによって、注意地点に対する接近度合いを運転者に連想させることが可能である。
【0016】
さらに、注意地点情報取得手段は、注意地点の種類を示す情報を取得してもよく、この構成において変調音出力手段は、注意地点の種類に応じて変調の態様を変えてもよい。変調の態様(変調の種類や変調量)を変えることにより、注意地点に関する注意の内容を区別して運転者に認識させることができる。例えば、ある注意地点に関する注意の対象が、ピンポイントに当該注意地点だけであるか、当該注意地点を囲む所定範囲の区域であるか、を区別して認識させたい場合、後者の変調の態様を、運転者に空間を感じさせるような音響効果とし、前者の変調の態様をそれ以外の音響効果としてもよい。空間的な感覚を与えるような音響効果は、自身が注意の対象となる区域内にいるという認識と結びつけやすい。
【0017】
なお、本発明のように、自車両の車内に継続的に流される音声の原音を発生させるための原音信号を取得し、注意地点に対する自車両の接近度合いに応じた変調量で原音信号を変調して変調音信号を生成し、生成された変調音信号を用いて変調音をスピーカに出力させる手法は、この処理を行うプログラムや方法としても適用可能である。また、以上のような走行案内装置、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のような走行案内装置の一部あるいは全部を備えたナビゲーション装置や方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、走行案内装置を制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)ナビゲーション装置の構成:
(2)走行案内処理:
(3)他の実施形態:
【0019】
(1)ナビゲーション装置の構成:
図1は、本発明にかかる走行案内装置を含むナビゲーション装置10の構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置10は、CPU、RAM、ROM等を備える制御部20と記憶媒体30とを備えており、記憶媒体30やROMに記憶されたプログラムを制御部20で実行することができる。本実施形態においては、このプログラムの一つとしてナビゲーションプログラム21を実行可能であり、当該ナビゲーションプログラム21はその機能として、入力した音声を変調し、変調音を用いて走行案内制御を行う機能を備えている。
【0020】
本実施形態における車両は、ナビゲーションプログラム21による機能を実現するために、GPS受信部40と車速センサ41とAVユニット42、カメラ43、スピーカユニット44とを備えており、これらの各部と制御部20とが協働することによってナビゲーションプログラム21による機能を実現する。GPS受信部40は、GPS衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して車両の現在位置を算出するための情報を出力する。制御部20は、この信号を取得して車両の現在位置を取得する。車速センサ41は、車両が備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車両の速度を取得する。
【0021】
AVユニット42は、カセットテープ、CD、MD(登録商標)、DVD、HDD、フラッシュメモリ等の記憶媒体に記憶された音声を再生するための信号を取得し、図示しないインタフェースを介して制御部20に出力する機能を有している。またAVユニット42は、AM/FMラジオ放送やテレビ放送のチューナを備え、ラジオ放送やテレビ放送を再生するための信号を取得し、音声信号を制御部20に出力する機能を有している。またAVユニット42はプリアンプおよびパワーアンプを備えていてもよい。制御部20に出力される信号は、プリアンプやパワーアンプにて増幅されたものであってもよいし、当該プリアンプやパワーアンプを経由しないものであってもよい。制御部20に出力される原音信号は、デジタル形式であってもよいしアナログ形式であってもよい。いずれにしても本実施形態においては、AVユニット42から制御部20に出力された信号を、原音信号というものとする。
【0022】
カメラ43は、車両を運転する運転者の顔や体を視野に含むように自車両に対して取り付けられ、撮影した画像を示す画像データを出力する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してこの画像データを取得する。連続する複数のフレームの画像を用いて、運転者の顔や眼球や瞼の動きを検知することによって、制御部20は、わき見や居眠りなど運転者の状態を示す情報を取得する。
【0023】
制御部20は、任意の音声出力を行うための信号をD/Aコンバータなどの図示しないインタフェースを介して出力する。出力された信号はスピーカユニット44に出力される。その結果、スピーカユニット44は上述の信号に応じた任意の音声を出力する。車内には、出力する音声の周波数帯に応じて、あるいは配置箇所数に応じて、複数のスピーカが備えられている。
【0024】
本実施形態において、ナビゲーションプログラム21は、上述の各部と協働して走行案内を行うため、注意地点情報取得部21a、接近度合い情報取得部21b、原音信号取得部21c、変調音出力部21dとを備えている。また、記憶媒体30には、ナビゲーションプログラム21による走行案内を実施するための地図情報30aが記憶されている。地図情報30aは、道路上に設定されたノードを示すノードデータやノード同士の連結を示すリンクデータ、施設を示すデータ等を含み、自車両の位置の特定や目的地への案内などに利用される。
【0025】
注意地点は、一時停止や事故多発地点、踏み切り、カーブの入り口・途中・出口の地点、学校など、走行するにあたり運転者に対して注意を促すための基準地点として予め決められており、注意地点の位置や種類を示す情報は地図情報30aに含まれている。注意地点の位置や種類を示す情報を記憶するデータ構造の態様は特に限定されないが例えば、注意地点はノードとして記憶されていてもよくノード種別として「一時停止」や「事故多発地点」が記憶されていてもよい。また例えば施設の種別が「学校」である施設の基準地点を制御部20が注意地点として扱ってもよい。注意の対象がピンポイントに当該注意地点であるのではなくて、当該注意地点を囲む所定範囲の区域であるような場合、その範囲を規定するための情報がさらに記憶されていてもよい。例えば所定範囲は、注意地点を中心とした半径Yメートルの範囲として「Yメートル」が記憶されていてもよいし、当該範囲を規定するためのノードが道路上に新たに設定されてもよいし、リンク単位で当該範囲を示すようにしてもよい(例えばリンク種別に当該範囲である旨の情報が含まれている)。
【0026】
注意地点情報取得部21aは、記憶媒体30に記憶されている地図情報30aに基づいて、注意地点の位置や種類を示す情報を取得する機能を制御部20に実現させるモジュールである。
【0027】
接近度合い情報取得部21bは、注意地点に対する自車両の接近度合いを示す情報を取得する機能を制御部20に実現させるモジュールである。注意地点に対する自車両の接近とは、注意地点に対する正の接近および負の接近、すなわち注意地点に近づくことおよび遠ざかることの少なくともいずれか一方を含む。制御部20は、GPS受信部40が出力する信号と車速センサ41が出力する信号と地図情報30aとに基づいて車両の現在位置を特定し、自車両の現在位置と注意地点との間の距離を取得する。なお、自車両と注意地点との距離は、自車両と注意地点との直線距離であってもよいし、道なりの距離であってもよい。自車両の位置は、路車間通信などによって特定される構成であってもよい。
【0028】
原音信号取得部21cは、車内に継続的に流される音声の原音を発生させるための原音信号を取得する機能を制御部20に実現させるモジュールである。具体的には制御部20は、AVユニット42から出力された原音信号を取得する。A/Dコンバータを備えていてもよい。
【0029】
変調音出力部21dは、注意地点に対する自車両の接近度合いに応じた変調量で原音信号を変調して変調音信号を生成し、生成された変調音信号を用いて変調音をスピーカに出力させる機能を制御部20に実現させる。具体的には例えば、変調音出力部21dは、音声処理を高速に実施する図示しないDSP(Digital Signal Processor)を備えており、DSPは、変調音出力部21dが設定したパラメータ(変調量)に基づいて原音信号の変調処理を行う。DSPは、ディレイ(原音に加え原音を遅延させた遅延音を出力させる音響効果)、リバーブ(原音に加え原音に残響効果を付加した残響音を出力させる音響効果)、イコライザ(原音に含まれる特定の周波数帯の音の音量を変更する音響効果)、フェイザ、フランジャ、コーラス、ピッチシフタ、全体の音量調整など、様々な音響効果を付与する機能を有している。接近度合いに応じた変調の態様については、走行案内処理の説明と合わせて詳述する。
以上、ナビゲーション装置10の構成を説明した。
【0030】
(2)走行案内処理:
次に、以上の構成において本実施形態にかかるナビゲーション装置10が実施する走行案内処理について説明する。図2は、走行案内処理の流れを示すフローチャートである。図2に示す処理は、所定時間経過ごとに繰り返し制御部20によって実行される。
【0031】
はじめに、制御部20は、接近度合い情報取得部21bの処理を実行することにより、自車両の現在位置を取得する(ステップS100)。
次に、注意地点情報取得部21aの処理を実行することにより、制御部20は、注意地点が存在するか否かを判定する(ステップS105)。具体的には、自車両の現在位置を基準に自車両の所定距離範囲内のノードデータや施設データを参照して注意地点に関する情報を取得する。そして制御部20は、自車両の前方に注意地点が存在するか、あるいは自車両が当該注意地点を通過したかを判定する。注意地点が存在する場合、制御部20は、接近度合い情報取得部21bの処理を実行することにより、注意地点に対する自車両の接近度合いを示す情報を取得する(ステップS110)。本実施形態では、接近度合いを示す情報として自車両と注意地点との距離を用いる。
【0032】
次に制御部20は、変調音出力部21dの処理を実行することにより、注意地点に対する自車両の接近度合いに応じて変調量を決定する(ステップS115)。変調量は、例えば音響効果が「ディレイ」の場合、遅延音を原音から遅延させる遅延時間の長短によって調節される。
【0033】
次に制御部20は、変調音出力部21dの処理を実行することにより、ステップS115で決定した変調量にて原音信号を変調し、変調音信号を生成する(ステップS120)。具体的には例えば、図示しないDSPに変調量に対応するパラメータを設定し、DSPはパラメータに基づいて変調音信号を生成する。次に制御部20は、変調音出力部21dの処理を実行することにより、生成された変調音信号を用いて変調音を再生する(ステップS125)。具体的には例えば、音響効果が「ディレイ」である場合、原音に加えて、原音から遅延時間分遅らせて遅延音を再生する。例えば、複数のスピーカのうちのいずれかのスピーカに原音を出力させ、残りのスピーカに遅延音を出力させる。
以上説明した走行案内処理が、所定時間経過ごとに繰り返される。
【0034】
次に、図3および図4を用いて、上述した走行案内処理を実施することによる作用の例を説明する。図3および図4は、接近度合いと変調量との対応関係の一例を示す図である。図3において、注意地点Pは「一時停止」地点を示している。すなわち本実施形態において注意地点Pは、当該注意地点に関する注意の対象がピンポイントであることを示している。例えば、注意地点Pに向かって車両が走行して行く際(太線で示すルートR参照)、図4Aに示すように、注意地点Pの所定距離Dまで近づくと音響効果「ディレイ」を開始し、距離dが短くなるほど音響効果「ディレイ」の遅延時間を短くする。その結果、運転者は距離Dの地点を通過したとき、前方に注意地点が控えていることを認識することができる。さらにルートRを進行するにつれ遅延時間が短くなるので、遅延音が原音に近づく様子と対応付けて、自車両が注意地点へ近づいていく状況を運転者は継続的に認識することができる。その結果、運転者の注意を継続的に喚起することができる。また、車内に流される原音を変調した変調音を出力することで接近度合いを示す構成であるので、運転者にとって、原音とは別の案内音声によって原音が有する音声情報が把握しづらくなることがない。
【0035】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は、本発明を実施するための一例であり、発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、上記実施形態では接近度合いを示す情報として距離を用いる例を説明したが、接近度合いを示す情報として、注意地点に対する自車両の速度を用いてもよい。そして当該速度に応じて変調量を決定してもよい。例えば、図4Aにおいて注意地点Pから距離D手前の位置を通過したときの車速が40km/時の場合と20km/時の場合とでは、前者の場合の遅延時間を後者の場合の遅延時間より長く設定する等してもよい。自車両の速度は、例えば車輪の回転数を検出する車速センサ41から取得可能である。単位時間あたりの自車両の位置の変化から導出する構成や、リンクの旅行時間をリンクの距離で除して導出する構成でもよい。また例えば、接近度合いを示す情報として、自車両の加速度を取得し、当該加速度に応じて変調量を決定してもよい。自車両の加速度は、例えば車両の前後方向の加速度を検出する加速度センサから取得してもよいし、単位時間あたりの速度の変化から導出してもよい。
【0036】
本発明において変調音出力手段は、上記実施形態で説明した変調の態様(注意地点に近づくにつれて変調の度合いを小さくする態様)以外の態様も含んでいる。すなわち、注意地点により近づくにつれて変調の度合いを大きくする態様、より遠ざかるにつれて変調の度合いを大きくする態様、より遠ざかるにつれて変調の度合いを小さくする態様などを含む。
【0037】
さらに、変調音出力手段においては、原音に加え変調音をスピーカに出力させるようにしてもよい。すなわち、接近度合いに応じて、変調音の付加の態様を変更する。その結果、変調音の付加の態様の変化によって注意地点に対する接近度合いを運転者に認識させることができる。なお、変調音の付加の態様は例えば、変調音の音量、変調音の付加のタイミングなどを指す。
【0038】
例えば、原音に加え原音に残響効果を付加した残響音を出力させる効果(リバーブ)を用いる場合、接近度合いに応じて、残響効果の度合いを変更するようにしてもよい。この場合、運転者は、残響効果の度合いの変化と対応付けて、注意地点に対する自車両の接近度合いを認識することができる。残響効果の度合いとは、例えば残響音の音量、残響時間、原音に対する残響開始時間などを想定しうる。
【0039】
また例えば、原音に含まれる特定の周波数帯の音の音量を変更する音響効果(イコライザ)を用いる場合、接近度合いに応じて、特定の周波数帯の音の音量を変更するようにしてもよい。この場合、運転者は、特定の周波数帯の音の音量の変化と対応付けて、注意地点に対する自車両の接近度合いを認識することができる。例えば、ボーカルの音量や重低音の音量を接近度合いに応じて変更する。なお、特定の周波数帯が、原音に含まれる全ての周波数帯であってもよい。この場合、原音の全体の音量を変更することを意味する。
【0040】
なお、変調音出力手段による変調の態様は、上記の内容に限定されるものではなく、原音を変調する限りにおいて他にも様々な音響効果やその組み合わせを含む。ディレイ、リバーブ、イコライザの他にも例えば、フェイザ、フランジャ、コーラス、ピッチシフタなどの音響効果を含んでもよい。原音を任意の高さの音に変調する音響効果を利用して、疑似ドップラー効果を表現するようにしてもよい。すなわち、注意地点を音源に見立て、注意地点に近づくにつれて徐々に音を高くし、注意地点を過ぎるとまた徐々に音を低くするドップラー効果を擬似的に再現することによって、注意地点に対する接近度合いを運転者に連想させることが可能である。
【0041】
さらに、注意地点情報取得手段は、注意地点の種類を示す情報を取得してもよく、この構成において変調音出力手段は、注意地点の種類に応じて変調の態様を変えてもよい。変調の態様(変調の種類や変調量)を変えることにより、注意地点に関する注意の内容を区別して運転者に認識させることができる。図3および図4を用いて具体例を説明する。図3において、注意地点Pは「A小学校」の基準地点を示している。注意地点P(一時停止)は上記したように注意の対象がピンポイントであり、注意地点P(学校)は当該注意地点に関する注意の対象が当該注意地点を囲む所定範囲の区域(スクールゾーン)であると予め決められているとする。それらを区別して運転者に認識させるために、例えば後者の変調の態様を、運転者に空間を感じさせるような音響効果(例えばリバーブ)とし、前者の変調の態様をそれ以外の音響効果とする。空間的な感覚を与えるような音響効果は、自身が注意の対象となる区域内にいるという認識と結びつけやすい。
【0042】
車両がルートRに走行する場合、例えば図4Bに示すように、スクールゾーンに進入すると音響効果「リバーブ」を開始し、地点P20に近づくほど残響音の音量を大きくし、地点P20から遠ざかるほど残響音の音量を小さくしてもよい。なお地点P20は、ルートR上において注意地点Pに直線距離が最も近い地点である。また例えば、図4Cに示すように、スクールゾーン進入地点Pとスクールゾーン退出地点Pを新たな注意地点とし、スクールゾーン進入地点Pに近づくほど残響音量を大きくし、スクールゾーン退出地点Pから遠ざかるほど残響音量を小さくしてもよい。
【0043】
注意地点の位置を示す情報は、記憶媒体に予め記憶されているものを取得する構成であってもよいし、記憶されている注意地点に関する情報に基づいて、曜日や時間帯などによって動的に注意地点が生成されてもよい。例えば、注意地点が学校である場合は、月曜日から金曜日の午前7時から8時半の間と午後3時から5時の間だけ、スクールゾーンが設定され、スクールゾーン境界線上やスクールゾーン内に新たな注意地点が生成されてもよい。また、運転者の運転癖や走行履歴に基づいて注意地点を設定あるいは解除していく構成をさらに備えていてもよい。例えば、所定量以上のブレーキ操作がなされた地点や、所定以上の減速加速度が検出された地点などを記憶しておき、それらの地点を注意地点として設定してもよい。
【0044】
さらに、カメラ43から取得した画像データに基づいて、わき見や居眠りなど運転者の状態を示す情報を取得し、変調音出力手段は、運転者がわき見や居眠りなど注意力が散漫になっている状態であるとき、変調の態様をさらに変更してもよい。例えば、瞬きの回数が増えている場合は、そうでない場合より、全体の音量をさらに上げてもよい。
【0045】
さらに、変調音出力手段は、原音信号に応じて変調の態様を変更してもよい。例えば、原音信号の取得もとがチューナからの音声である場合とCD再生部からの音声である場合とでさらに変調の態様を変更してよい。また、原音信号の特性を解析して、原音が話し声である場合と楽音である場合とで変調の態様を変更してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態にかかるナビゲーション装置のブロック図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる走行案内処理を示すフローチャートである。
【図3】注意地点に対する自車両の接近度合いと変調量との関係を説明するための図である。
【図4】注意地点に対する自車両の接近度合いと変調量との関係を説明するための図である。
【符号の説明】
【0047】
10:ナビゲーション装置、20:制御部、21:ナビゲーションプログラム、21a:注意地点情報取得部、21b:接近度合い情報取得部、21c:原音信号取得部、21d:変調音出力部、30:記憶媒体、30a:地図情報、40:GPS受信部、41:車速センサ、42:AVユニット、43:カメラ、44:スピーカユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
注意地点の位置を示す情報を取得する注意地点情報取得手段と、
前記注意地点に対する自車両の接近度合いを示す情報を取得する接近度合い情報取得手段と、
前記自車両の車内に継続的に流される音声の原音を発生させるための原音信号を取得する原音信号取得手段と、
前記接近度合いに応じた変調量で前記原音信号を変調して変調音信号を生成し、生成された前記変調音信号を用いて変調音をスピーカに出力させる変調音出力手段と、
を備える走行案内装置。
【請求項2】
前記変調音出力手段は、前記原音に加え前記変調音を出力させる、
請求項1に記載の走行案内装置。
【請求項3】
前記変調音出力手段は、前記原音に加え前記原音を遅延させた遅延音を出力させる機能を有し、前記接近度合いに応じて、前記原音からの遅延時間を変更する、
請求項2に記載の走行案内装置。
【請求項4】
前記変調音出力手段は、前記原音に加え前記原音に残響効果を付加した残響音を出力させる機能を有し、前記接近度合いに応じて、前記残響効果の度合いを変更する、
請求項2に記載の走行案内装置。
【請求項5】
前記変調音出力手段は、前記原音に含まれる特定の周波数帯の音の音量を変更する機能を有し、前記接近度合いに応じて、前記周波数帯の音の音量を変更する、
請求項1に記載の走行案内装置。
【請求項6】
前記注意地点情報取得手段は、前記注意地点の種類を示す情報を取得し、
前記変調音出力手段は、前記注意地点の種類に応じて変調の態様を変える、
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の走行案内装置。
【請求項7】
注意地点の位置を示す情報を取得する注意地点情報取得工程と、
前記注意地点に対する自車両の接近度合いを示す情報を取得する接近度合い情報取得工程と、
前記自車両の車内に継続的に流される音声の原音を発生させるための原音信号を取得する原音信号取得工程と、
前記接近度合いに応じた変調量で前記原音信号を変調して変調音信号を生成し、生成された前記変調音信号を用いて変調音をスピーカに出力させる変調音出力工程と、
を含む走行案内方法。
【請求項8】
注意地点の位置を示す情報を取得する注意地点情報取得手段と、
前記注意地点に対する自車両の接近度合いを示す情報を取得する接近度合い情報取得手段と、
前記自車両の車内に継続的に流される音声の原音を発生させるための原音信号を取得する原音信号取得手段と、
前記接近度合いに応じた変調量で前記原音信号を変調して変調音信号を生成し、生成された前記変調音信号を用いて変調音をスピーカに出力させる変調音出力手段としてコンピュータを機能させる走行案内プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−122013(P2009−122013A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−297699(P2007−297699)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】