説明

超音波撮像装置

【課題】 超音波の送受信によって得られる超音波エコー情報を有効に活用することにより、画質が改善された超音波画像を得ることができる超音波撮像装置を提供する。
【解決手段】 この超音波撮像装置は、複数の超音波トランスデューサ11aを含む超音波用探触子1と、被検体を走査するように複数の駆動信号を複数の超音波トランスデューサにそれぞれ供給する送信手段21と、複数の受信信号に対して位相整合処理を施すことにより、表示すべき各々の画素における超音波エコーの波形情報を表す波形信号を生成する走査方式変換手段35と、波形信号に基づいて画像信号を生成する画像信号生成手段36と、複数の異なる送信方向について複数種類の画像信号をそれぞれ格納する格納手段37と、複数種類の画像信号によって表される画像を合成することにより1種類の画像信号を求める画像合成手段38とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を送受信して被検体の超音波画像を表示することにより、生体内の臓器の診断や非破壊検査を行うために用いられる超音波撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、超音波診断装置や工業用の探傷装置等の超音波撮像装置においては、超音波の送受信機能を有する複数の超音波トランスデューサを含む超音波用探触子(プローブ)が用いられる。このような超音波用探触子を用いて、複数の超音波を合波することにより形成される超音波ビームによって被検体を走査し、被検体内部において反射された超音波エコーを受信することにより、超音波エコーの強度に基づいて被検体に関する画像情報が得られる。さらに、この画像情報に基づいて、被検体に関する2次元又は3次元画像が再現される。このような超音波ビームを用いた走査方法の1つとして、被検体の扇状の2次元領域を走査する、いわゆるセクタ走査が知られている。
【0003】
セクタ走査は、元来、人体の肋間から心臓を観察するための手法として開発されたものである。一般的に、セクタ走査においては、送信点から被検体の深さ方向に延びる複数の超音波ビームが被検体内に扇状に順次送信され、これらの超音波ビームによって、図5に示すように、被検体の扇状の2次元領域が等間隔の角度で走査される。
【0004】
被検体から反射される超音波エコーを受信する際には、各々の超音波ビーム(音線)に沿って被検体の深さ方向に等間隔で分布する複数のサンプリングポイントの各々から反射される超音波エコーに基づく複数の受信信号に対して位相整合処理が施されて、超音波エコーの焦点が絞り込まれた音線信号(走査線信号)が得られる。さらに、その音線信号が検波されると共に、走査方式を変換する処理が施されることにより、通常の表示装置に超音波画像を表示させるための画像信号が得られる。このようにして得られた超音波画像は、心臓については断層心エコー図と呼ばれている。
【0005】
しかしながら、セクタ走査においては、扇状に形成された超音波ビームによって被検体を走査することにより音線データが得られるので、被検体に対する深度が大きくなるにつれて音線の密度が低下する。従って、被検体の深部においては、画像の解像度が低下すると共に、モアレパターン等のアーチファクトが発生してしまうという問題がある。そこで、隣接する2つの音線の間の画像情報を補間することによって、画質の劣化を改善することが行われている。
【0006】
図6を参照しながら、画像情報の補間処理について説明する。図6には、2本の超音波ビームA及びBが示されており、これらの超音波ビームが被検体の各部分において反射されて生じる超音波エコーに基づいて、画素A1〜A5及びB1〜B5における画像情報が得られる。ところが、超音波ビームが通過しない画素Xにおける画像情報は得られないので、例えば、画素A2、A3、B2、B3における画像情報を用いて、画素Xにおける画像情報が補間される。画像情報の補間処理に関する詳細については、非特許文献1に記載されている。
【0007】
関連する技術として、下記の特許文献1には、システムのフレーム率を低下させることなく分解能を高める音響イメージング装置及びその方法が開示されている。この音響イメージング装置においては、通常は再構成プロセス時に失われる信号位相情報を利用して、イメージの分解能を高めるために、信号処理順が変更される。即ち、変換器によって発生する信号を検出し、制限を加えて処理を行う前に、信号に対して走査変換又はデータ補間が施される。
【0008】
下記の特許文献2には、複数方向受信可能な超音波診断装置において、S/N比を向上させ、診断能の高い画像を得ることが開示されている。この超音波診断装置は、1回の送信によって得られる複数の受信ビームの内で送信中心の移動後に重複する受信ビームをラインメモリに記憶し、受信ビームが重なるように送信中心を移動させると共に、重複する受信ビームと前回ラインメモリに記憶した受信ビームとを加算平均回路で処理し、これを順次フレームメモリに記憶して1つの画像を得る。これにより、S/N比を改善することができる。
【0009】
下記の特許文献3には、サンプリングされた複数地点間における画像データの正確な輝度情報を演算により再現することが可能な超音波走査変換装置が開示されている。この超音波走査変換装置においては、サンプリングされた輝度情報とそれに隣接するサンプリングされた輝度情報との変化量を算出してこれを符号化し、これが後者の画像情報データに付加される。そして、補間算出手段によって前記差の付加された画像情報データと隣接する画像情報データとの比例演算が行われ、これを前記符号化された差分の符号によって補正して、真の輝度情報に近い隣接する画像データ間のデータ算出が行われる。
【0010】
以上の特許文献においては、超音波エコーの焦点を絞り込むための位相整合と、位相整合後における音線信号(走査線信号)から表示用の画像信号への走査変換とを別個に行っているので、画像信号生成時の負担は軽いが、画質には改善の余地が残っている。
【非特許文献1】(社)日本電子機械工業会編「改訂医用超音波機器ハンドブック」(株)コロナ社、1985年4月20日初版発行、p.100−102
【特許文献1】特許第3408284号公報(第3頁、図3)
【特許文献2】特開平8−38472号公報(第1〜2頁、図1)
【特許文献3】特開平3−162841号公報(第2〜3頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、上記の点に鑑み、本発明は、超音波の送受信によって得られる超音波エコー情報を有効に活用することにより、画質が改善された超音波画像を得ることができる超音波撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明に係る超音波撮像装置は、複数の駆動信号に従って超音波ビームを形成して被検体に送信すると共に、被検体から反射される超音波エコーを受信して複数の受信信号をそれぞれ生成する複数の超音波トランスデューサを含む超音波用探触子と、超音波用探触子から複数の異なる送信方向に複数の超音波ビームを順次送信することによって被検体を所定の走査範囲に渡って走査するように、複数の駆動信号を複数の超音波トランスデューサにそれぞれ供給する送信手段と、複数の超音波トランスデューサが超音波エコーを受信することによって得られる複数の受信信号に対して位相整合処理を施すことにより、表示すべき各々の画素における超音波エコーの波形情報を表す波形信号を生成する走査方式変換手段と、走査方式変換手段によって生成された波形信号に基づいて、表示すべき各々の画素における輝度を表す画像信号を生成する画像信号生成手段と、複数の異なる送信方向について画像信号生成手段によって生成された複数種類の画像信号をそれぞれ格納する格納手段と、格納手段に格納されている複数種類の画像信号によって表される画像を合成することにより1種類の画像信号を求める画像合成手段とを具備する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の超音波トランスデューサが超音波エコーを受信することによって得られる複数の受信信号に対して位相整合処理を施すことにより、表示すべき各々の画素における超音波エコーの波形情報を表す波形信号を生成するので、超音波の送受信によって得られる超音波エコー情報を有効に活用して、画質が改善された超音波画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る超音波撮像装置の構成を示すブロック図である。この超音波撮像装置は、被検体に当接させて用いられる超音波用探触子(プローブ)1と、超音波用探触子1に接続された超音波撮像装置本体2とによって構成され、超音波用探触子1から被検体に向けて超音波ビームを送信し、被検体から反射された超音波エコーを受信して超音波画像を生成する。
【0015】
超音波用探触子1は、1次元又は2次元のトランスデューサアレイ(「アレイトランスデューサ」ともいう)11を構成する複数の超音波トランスデューサ11aを備えている。これらの超音波トランスデューサ11aは、信号線を介して超音波撮像装置本体2に接続される。
【0016】
各々の超音波トランスデューサ11aは、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛:Pb(lead) zirconate titanate)に代表される圧電セラミックや、PVDF(ポリフッ化ビニリデン:polyvinylidene difluoride)に代表される高分子圧電素子等の圧電性を有する材料(圧電体)の両端に電極を形成した振動子によって構成される。また、近年において、超音波トランスデューサの感度及び帯域向上に寄与するとして期待が寄せられているPZNT(鉛、亜鉛、ニオブ、チタンを含む酸化物)単結晶を含む圧電材料を用いても良い。
【0017】
このような振動子の電極に、パルス状又は連続波の電気信号を送って電圧を印加すると、圧電体が伸縮する。この伸縮により、それぞれの振動子からパルス状又は連続波の超音波が発生し、これらの超音波の合成によって超音波ビームが形成される。また、それぞれの振動子は、伝搬する超音波を受信することによって伸縮し、電気信号を発生する。これらの電気信号は、受信信号として出力される。
【0018】
超音波撮像装置本体2は、複数の切換回路20と、複数の送信回路21と、複数の受信回路22と、コンピュータ30と、記録部40と、表示部50とを含んでいる。
複数の切換回路20は、超音波の送信時において、超音波用探触子1に内蔵されている複数の超音波トランスデューサ11aを複数の送信回路21にそれぞれ接続し、超音波の受信時において、複数の超音波トランスデューサ11aを複数の受信回路22にそれぞれ接続する。
【0019】
複数の送信回路21の各々は、D/Aコンバータと、A級パワーアンプとを含んでいる。D/Aコンバータは、コンピュータ30から供給される波形データに基づいて、超音波ビームの送信方向に応じた遅延量を有する駆動信号を生成する。パワーアンプは、この駆動信号を増幅して、超音波用探触子1に供給する。
【0020】
複数の受信回路22の各々は、プリアンプと、A/D(アナログ/ディジタル)変換器とを含んでいる。各々の超音波トランスデューサ11aから出力される受信信号は、プリアンプによって増幅され、A/D変換器によってディジタル信号に変換される。なお、A/D変換器のサンプリング周波数としては、少なくとも超音波の周波数の10倍程度の周波数が必要であり、超音波の周波数の16倍以上の周波数が望ましい。また、A/D変換器の分解能としては、10ビット以上が望ましい。
【0021】
コンピュータ30は、記録部40に記録されているソフトウェア(制御プログラム)に基づいて超音波の送受信を制御する。記録部40としては、ハードディスク、フレキシブルディスク、MO、MT、RAM、CD−ROM、又はDVD−ROM等の記録媒体を用いることができる。コンピュータ30とソフトウェアとによって、走査制御部31と、波形データ生成部32と、走査方式変換部35と、画像データ生成部36と、画像合成部38と、画像処理部39とが、機能ブロックとして実現される。また、コンピュータ30は、送信メモリ33、受信メモリ34、及び、複数の画像メモリ37を有している。
【0022】
走査制御部31は、超音波ビームの送信方向と、超音波エコーの受信方向及び焦点位置とを順次設定する。波形データ生成部32は、走査制御部31の制御の下で、送信メモリ33に格納されている波形データを順次読み出し、複数の送信回路21に出力する。これらの送信回路21は、波形データに基づいて複数の駆動信号をそれぞれ生成し、超音波用探触子1に含まれている複数の超音波トランスデューサ11aに供給する。
【0023】
一方、受信メモリ34は、複数の受信回路22のA/D変換器から出力されるディジタルの受信信号を、超音波トランスデューサ毎に時系列に格納する。走査方式変換部35は、受信メモリ34に格納されている複数の受信信号に対して位相整合処理を施すことにより、表示装置に表示すべき各々の画素における超音波エコーの波形情報を表す波形信号を生成する。このようにして、セクタスキャン方式に従って被検体を走査することによって得られたR−θ座標の受信信号が、通常の表示装置において用いられる走査方式に従うX−Y座標の波形信号に変換される。
【0024】
画像信号生成部36は、走査方式変換部35によって生成された波形信号に基づいて、表示装置に表示すべき複数の画素における輝度を表す画像信号を生成する。例えば、画像信号生成部36は、波形信号によって表される波形の実効値を求めたり、波形信号によって表される波形のエンベロープを検出することによって、画像信号を生成する。さらに、画像信号生成部36は、生成された画像信号に対して、対数圧縮処理を施すようにしても良い。
【0025】
複数の画像メモリ37は、複数の異なる送信方向について画像信号生成部36によって生成された複数種類の画像信号をそれぞれ格納する。例えば、第1の画像メモリ37は、第1の送信方向について生成された第1の画像信号を格納する。同様に、第2の画像メモリ37は、第2の送信方向について生成された第2の画像信号を格納する。
【0026】
画像合成部38は、複数の画像メモリ37にそれぞれ格納されている複数種類の画像信号によって表される画像を合成することにより1種類の画像信号を求める。その際に、画像合成部38は、複数の画像メモリ37にそれぞれ格納されている複数種類の画像信号によってそれぞれ表される複数の輝度値を加算平均しても良いし、重み付けのためにこれらの輝度値に所定の係数を掛けて加算しても良いし、1画面を構成する複数のセクションの画像をそれぞれ表す複数種類の画像信号を組み合わせることにより1種類の画像信号を求めても良い。
【0027】
画像処理部39は、画像合成部38から出力される画像信号に対して、階調処理や輪郭強調処理等の画像処理を必要に応じて施す。表示部50は、例えば、CRTやLCD等の表示装置を含んでおり、画像処理部39から出力される画像信号に基づいて、超音波画像を表示する。
【0028】
次に、本実施形態に係る超音波撮像装置の動作について説明する。
図2は、図1に示すトランスデューサアレイを拡大して示す図である。トランスデューサアレイ11には、N個の超音波トランスデューサ(以下、「エレメント」ともいう)が含まれている。ここで、N個のエレメントの振動面に沿ってX軸をとり、トランスデューサアレイ11の中心においてこれらの振動面を含む平面と直交するようにY軸をとる。
【0029】
また、それぞれのエレメントのチャンネル番号をchで表し、チャンネル番号chのエレメントの位置ベクトルをa(ch)とし、超音波ビームが送信される被検体内の点Pの位置ベクトルをrとし、送信方向を変化させながら超音波ビームを送信する際の送信方向の順番をnTxとする。1つの方向に1回しか超音波ビームを送信しない場合には、nTxは送信回数に相当し、以下においてはその場合について説明する。
【0030】
ここで、時間間隔Δtで離散化された時刻をiで表し、チャンネル番号chのエレメントを用いて第nTx回目の送信で得られた受信信号の時間変化波形をs(ch,nTx,i)とし、第nTx回目の送信で得られた点P(位置ベクトルr)方向からのエコー波形をe(r,i,nTx)とし、第nTx回目の送信で得られた点Pにおけるエコー強度(輝度値のベースとなる値)をb(r,nTx)とし、点P方向からの超音波エコーに基づく複数の受信信号に対して位相整合処理を施す際にチャンネル番号chのエレメントからの受信信号に与える遅延量をiOFF(ch,r)とし、位相整合処理を施す際の重み付け係数をw(ch,nTx)とする。
【0031】
走査方式変換部35は、次式(1)を用いて位相整合を行うことにより、受信信号の時間変化波形に基づいて、点P方向からのエコー波形e(r,i,nTx)を表す波形信号を生成する。
【数1】



式(1)において、遅延量iOFF(ch,r)は、次式(2)によって与えられる。
【数2】



式(2)において、記号cは、被検体中における超音波の音速を示している。
【0032】
点P(位置ベクトルr)は、通常の表示装置において用いられる画素の位置(X,Y)を表しており、従って、セクタスキャン方式に従って被検体を走査することによって得られたR−θ座標の受信信号が、通常の表示装置において用いられる走査方式に従うX−Y座標の波形信号に変換される。
【0033】
ここで、走査方式変換部35は、1つの送信方向について得られる複数の受信信号に基づいて、1画面に含まれる複数の画素についての1種類の波形信号を生成する。従って、複数の送信方向について、複数種類の波形信号が生成されることになる。また、走査方式変換部35は、波形信号に対して補間処理を施すことなしに、1画面に含まれる全ての画素についての波形信号を生成することができる。
【0034】
画像信号生成部36は、次式(3)を用いることにより、走査方式変換部35によって生成された波形信号に基づいて、表示装置に表示すべき複数の画素における輝度値のベースとなるエコー強度b(r,nTx)を表す画像信号を生成する。
b(r,nTx)=function{r,e(r,i,nTx)} ・・・(3)
ここで、エコー波形からエコー強度を求める方法(関数functionに相当)としては、様々な方法を用いることができるが、その一例について、図3を参照しながら説明する。
【0035】
図3に、本実施形態におけるエコー波形と画像情報との対応関係を示す。画像信号生成部36は、第nTx回目の送信におけるエコー波形e(r,nTx,i)を表す波形信号に対して、点Pの位置ベクトルrに基づいて、波形の一部を切り出すための時間窓(範囲TRx)を設定し、範囲TRxにおけるエコー波形の実効値を求めて、輝度値のベースとなるエコー強度b(r,nTx)とする。図3には、範囲TRxにおけるエコー波形の拡大図と、範囲TRxにおける波形から得られる画像情報の画面上における位置とが示されている。
【0036】
このようにして、被検体の深さ方向に沿って超音波の受信及び信号処理を繰り返すことにより、1つの画面を表す1種類の画像信号が得られる。これを被検体内の走査領域に対応させて考えると、まず、第1の送信方向に向けて超音波ビームの送信を行い、被検体の深さ方向に沿って超音波の受信及び信号処理を繰り返すことにより、図4の(A)に示すように、複数本(例えば、5〜7本)の走査線を含むセクションSにおける輝度が明るい第1の画像信号が得られる。第1の画像信号において、セクションS以外の部分は、強い反射源がなければ、暗い画像となる。
【0037】
次に、送信方向を変えて、第2の送信方向に向けて超音波ビームの送信を行い、被検体の深さ方向に沿って超音波の受信及び信号処理を繰り返すことにより、図4の(B)に示すように、セクションSにおける輝度が明るい第2の画像信号が得られる。このようにして超音波の送受信を繰り返し、最後に、第Mの送信方向に向けて超音波ビームの送信を行い、被検体の深さ方向に沿って超音波の受信及び信号処理を繰り返すことにより、図4の(C)に示すように、セクションSにおける輝度が明るい第Mの画像信号が得られる。
【0038】
画像合成部38は、第1〜第Mの画像信号を合成することにより、コントラストが改善された1種類の画像信号を得ることができる。画像合成部38は、第1〜第Mの画像信号によってそれぞれ表される複数の輝度値を加算平均しても良いし、重み付けのためにこれらの輝度値に所定の係数を掛けて加算しても良い。このように、各部において送信ビームの強さが異なる画像信号を重ね合わせることにより、スペックルパターンの成分を低減することができる。なお、スペックルパターンとは、臓器内に存在する多数の構造物がエコー源となって一群の超音波パルスが加算される際に、波の干渉によって明るい点と暗い点とが散在するエコーパターンのことをいう。
【0039】
あるいは、走査方式変換部35が、第1〜第Mの送信方向についてセクションS〜Sの波形信号をそれぞれ生成し、画像信号生成部36が、第1〜第Mの送信方向についてセクションS〜Sの画像信号をそれぞれ生成し、画像合成部38が、1画面を構成するセクションS〜Sの画像をそれぞれ表す第1〜第Mの画像信号を組み合わせることにより、1種類の画像信号を求めても良い。
【0040】
以上においては、超音波の送信と、受信及び信号処理とを交互に行う例について説明したが、全ての送信方向について超音波の受信を完了した後に信号処理を行うようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、超音波を送受信して被検体の超音波画像を表示することにより、生体内の臓器の診断や非破壊検査を行うために用いられる超音波撮像装置において利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態に係る超音波撮像装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示すトランスデューサアレイを拡大して示す図である。
【図3】本発明の一実施形態におけるエコー波形と画像情報との対応関係を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態における画像信号と被検体内の走査領域との対応を示す図である。
【図5】セクタ走査方式を説明するための図である。
【図6】画像情報の補間処理について説明するための図である。
【符号の説明】
【0043】
1 超音波用探触子
2 超音波撮像装置本体
11 トランスデューサアレイ
11a 超音波トランスデューサ
20 切換回路
21 送信回路
22 受信回路
30 コンピュータ
31 走査制御部
32 波形データ生成部
33 送信メモリ
34 受信メモリ
35 走査方式変換部
36 画像信号生成部
37 画像メモリ
38 画像合成部
39 画像処理部
40 記録部
50 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の駆動信号に従って超音波ビームを形成して被検体に送信すると共に、被検体から反射される超音波エコーを受信して複数の受信信号をそれぞれ生成する複数の超音波トランスデューサを含む超音波用探触子と、
前記超音波用探触子から複数の異なる送信方向に複数の超音波ビームを順次送信することによって被検体を所定の走査範囲に渡って走査するように、複数の駆動信号を前記複数の超音波トランスデューサにそれぞれ供給する送信手段と、
前記複数の超音波トランスデューサが超音波エコーを受信することによって得られる複数の受信信号に対して位相整合処理を施すことにより、表示すべき各々の画素における超音波エコーの波形情報を表す波形信号を生成する走査方式変換手段と、
前記走査方式変換手段によって生成された波形信号に基づいて、表示すべき各々の画素における輝度を表す画像信号を生成する画像信号生成手段と、
前記複数の異なる送信方向について前記画像信号生成手段によって生成された複数種類の画像信号をそれぞれ格納する格納手段と、
前記格納手段に格納されている複数種類の画像信号によって表される画像を合成することにより1種類の画像信号を求める画像合成手段と、
を具備する超音波撮像装置。
【請求項2】
前記走査方式変換手段が、セクタスキャン方式に従って被検体を走査することによって得られる受信信号を、表示装置において用いられる走査方式に従う波形信号に変換する、請求項1記載の超音波撮像装置。
【請求項3】
前記走査方式変換手段が、1つの送信方向について得られる複数の受信信号に基づいて、1画面に含まれる複数の画素についての1種類の波形信号を生成する、請求項1又は2記載の超音波撮像装置。
【請求項4】
前記走査方式変換手段が、波形信号に対して補間処理を施すことなしに、1画面に含まれる全ての画素についての波形信号を生成する、請求項1〜3のいずれか1項記載の超音波撮像装置。
【請求項5】
前記画像信号生成手段が、前記走査方式変換手段によって生成される波形信号によって表される波形の実効値を求めることにより、表示すべき各々の画素における輝度を表す画像信号を生成する、請求項1〜4のいずれか1項記載の超音波撮像装置。
【請求項6】
前記画像信号生成手段が、前記走査方式変換手段によって生成される波形信号によって表される波形のエンベロープを検出することにより、表示すべき各々の画素における輝度を表す画像信号を生成する、請求項1〜4のいずれか1項記載の超音波撮像装置。
【請求項7】
前記画像合成手段が、前記格納手段に格納されている複数種類の画像信号によってそれぞれ表される複数の輝度値を加算平均することにより1種類の画像信号を求める、請求項1〜6のいずれか1項記載の超音波撮像装置。
【請求項8】
前記画像合成手段が、前記格納手段に格納されている複数種類の画像信号によってそれぞれ表される複数の輝度値に所定の係数を掛けて加算することにより1種類の画像信号を求める、請求項1〜6のいずれか1項記載の超音波撮像装置。
【請求項9】
前記画像合成手段が、前記格納手段に格納されており1画面を構成する複数のセクションの画像をそれぞれ表す複数種類の画像信号を組み合わせることにより1種類の画像信号を求める、請求項1〜6のいずれか1項記載の超音波撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−87668(P2006−87668A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−276751(P2004−276751)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】