説明

超音波診断装置

【課題】 医師の作業領域を十分に確保し、連携しあう診断機能や治療機能の低下をもたらすことなく、超音波画像と他の医療装置との連携を可能にする技術を提供する。
【解決手段】 超音波を送受波に基づく超音波画像を表示する超音波診断装置であって、超音波を送受波する超音波プローブと、前記超音波プローブの変位を検出するプローブ変位検出手段と、前記対象物の変位を検出する対象物変位検出手段と、検出された超音波プローブの変位と検出された対象物の変位とに基づき、前記超音波プローブと対象物との相対変位を算出する相対変位算出手段と、を備え、前記プローブ変位検出手段及び前記対象物変位検出手段は、光学測位又は磁気測位により変位を検出するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を送受波することにより超音波画像を表示する超音波診断装置に関し、特に各種診断装置や治療装置と連携して診断や治療をサポートする超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、患者の体力的な負担を考慮した低侵襲治療法(MIT:Minimally Invasive Treatment)の進歩は目覚しい。低侵襲治療法は、特に局所治療手法として発達している。この発達に伴い、治療箇所の正確な位置決めや適正な治療計画が非常に重要となっている。
【0003】
正確な位置決めや適正な治療計画を安全・手軽、かつリアルタイムで行うには、超音波診断によるサポートが優れており、超音波診断装置と他の診断装置や治療装置を組み合わせた装置が提案されている。
【0004】
この超音波診断によるサポートにおいて、治療箇所の正確な位置決めには、被検体内の観察箇所と治療箇所とがマッチングすることが重要であり、超音波プローブと治療装置との相対的な位置や姿勢を把握することが重要である。
【0005】
例えば、結石破砕用の治療用音源に位置決め用の超音波プローブを付加した装置がある。超音波プローブによって被検体に超音波を送受波して被検体内の超音波画像を表示し、超音波画像によって被検体内を観察しながら、治療用音源によりエネルギーを照射して患部の治療を行うものである。つまり、超音波診断とエネルギー治療との連携が行われる。
【0006】
この装置は、治療用音源と超音波プローブを物理的に固定することで、超音波プローブと治療用音源の相対的な位置や姿勢を把握し、観察箇所と治療箇所のマッチングが図られている(例えば、特許文献1参照)
【0007】
また、位置や姿勢を検出するアームに取り付けられた超音波プローブと、予め定められた位置を始点とする治療音源を有し、アームの動作によって超音波プローブの位置や姿勢を把握して、治療音源を動かす装置がある。この技術は、アームに取り付けられているモータの回転量をエンコーダにより検出することでアウタープローブの位置や姿勢を検出し、相対的な位置や姿勢を把握するものである。(例えば、特許文献2参照)
【0008】
適正な治療計画の作成には、超音波診断と他の診断方法を組み合わせて総合的に判断することが重要であり、超音波による診断箇所と他の診断方法による診断箇所との相対的な位置や向きを把握してマッチングさせる必要がある。そこで、超音波診断機能とX線CT機能とを兼ね備えた装置がある。
【0009】
【特許文献1】特開平2−303277号公報(図1)
【特許文献2】特開平6−197908号公報(図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような技術は、観察箇所と治療箇所、又は超音波による観察箇所と他の観察方法による観察箇所との相対的な位置や姿勢を把握することは可能である。しかし、一般的に複数機能を一装置に組み込むために装置構成が大掛かりになってしまう。そうすると、医師の作業領域の確保が困難になり、又は各機能同士が邪魔をしあう場合がある。結局、診断や治療を阻害し、超音波診断によるサポートの効果が低下し、効果的な連携がとれないおそれがある。
【0011】
例えば、特開平2−303277号公報の装置は、生体とのカップリングのために水袋等のバッファが必要である。このバッファは、エネルギー照射においては必須であるが、超音波画像の画質を劣化させてしまう。また、治療用音源の大きさから超音波プローブの使い勝手が損なわれてしまう。
【0012】
また、特開平6−197908号公報の装置は、位置や姿勢を把握するアームが大掛かりとなり、また、超音波機能とX線CT機能を併せ持った装置による超音波診断とX線CTの診断を連携をさせる場合も装置自体が大型化してしまう。このため医師の作業領域の確保が困難となり、診断効果、治療効果を低下させてしまう。
【0013】
上記問題から医師は、超音波画像による診断後に他の機器による診断や治療を行い、かつ頭の中で超音波画像を現状に合わせて再構成して位置決めや治療計画の修正を行っていた。
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、医師の作業領域を十分に確保し、連携しあう診断機能や治療機能の低下をもたらすことなく、超音波画像と他の医療装置との連携を可能にする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、超音波の送受波に基づく超音波画像を表示する超音波診断装置であって、超音波を送受波する超音波プローブと、前記超音波プローブの変位を検出するプローブ変位検出手段と、前記対象物の変位を検出する対象物変位検出手段と、検出された超音波プローブの変位と検出された対象物の変位とに基づき、前記超音波プローブと対象物との相対変位を算出する相対変位算出手段と、を備え、前記プローブ変位検出手段及び前記対象物変位検出手段は、光学測位又は磁気測位により変位を検出すること、を特徴とする。
【0016】
前記超音波プローブ変位検出手段は、曲がり及びねじれを検出する光ファイバー束を有し、一端が前記超音波プローブに接続され、他端が固定箇所に接続されるプローブ側センサケーブルを備え、前記対象物変位検出手段は、内部に曲がり及びねじれを検出する光ファイバー束を有し、一端が前記対象物に接続され、他端が固定箇所に接続される対象物側センサケーブルを備え、前記相対変位算出手段は、それぞれの光ファイバー束が検出する曲がり及びねじれに基づき、相対変位を算出するようにしてもよい(請求項2の発明に相当)。
【0017】
CT画像を表示するCT機構、MRI画像を表示するMRI機構、又はPET画像を表示するPET機構のいずれかの規定箇所に設置され、前記機構により捕捉した画像上に表示可能なターゲットを、前記対象物とし、算出された相対変位と前記機構が表示する画像上における前記ターゲットの位置に基づき、前記超音波画像と前記機構が表示する画像とを重畳して表示画面上に表示させる表示制御手段をさらに備えるようにしてもよい(請求項3の発明に相当)。
【0018】
CT画像を表示するCTスキャン機構、MRI画像を表示するMRI機構、又はPET画像を表示するPET機構のいずれかの規定箇所に設置され、前記機構により捕捉した画像上に表示可能なターゲットを、前記対象物とし、前記超音波画像上又は前記機構が表示する画像上のうち、一方にポインタが表示されると、算出された相対変位と前記機構が捕捉した画像上におけるターゲット位置に基づき、他方の画像上に該ポインタを反映させる表示制御手段をさらに備えるようにしてもよい(請求項4の発明に相当)。
【0019】
PEI若しくはRFA又はMCTの穿刺治療用ニードルのうちのいずれかを、前記対象物とし、算出された相対変位に基づき、前記穿刺治療用ニードルの先端位置を表示させる先端位置表示手段をさらに備えるようにしてもよい(請求項5の発明に相当)。
【0020】
結石破砕機構若しくは超音波治療機構又は放射線治療機構の照射エネルギー照射部のうちのいずれかを、前記対象物とし、算出された相対変位に基づき、前記超音波画像内に前記照射エネルギー照射部の焦点位置を表示させる表示制御手段をさらに備えるようにしてもよい(請求項6の発明に相当)。
【0021】
前記対象物は、被検体の所定箇所としてもよい(請求項7の発明に相当)。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、超音波プローブの変位を検出する手段と、対象物の変位を検出する手段を備え、これら手段に光学測位又は磁気測位により変位を検出させるようにした。更に超音波プローブの変位と対象物の変位から、超音波プローブと対象物との相対変位を算出するようにした。
【0023】
従って、医師の作業領域を十分に確保し、かつ超音波診断装置と他の診断装置の連携を機能を阻害することなく行うことができ、正確な位置決めや適正な治療計画をサポートすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係る超音波診断装置の好適な実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0025】
図1に示す超音波診断装置1は、装置操作者が操作パネル1dを用いて要求する超音波送受波方法に従って、超音波プローブ10で被検体に超音波を送受波し、装置本体にて受信信号から超音波画像を生成する装置である。超音波診断装置1の超音波画像生成部1aにより生成及び記憶された超音波画像は、モニタ1cに表示される。また、超音波診断装置1は、超音波画像生成部1aやモニタ1cを制御する制御部1bを備えており、CPU、ROM、RAM、HDDにより構成されて制御に必要な各種情報が一時的に記憶されている。
【0026】
この超音波診断装置1は、超音波プローブ10と対象物100との相対変位を算出する。更に、相対変位が算出されることにより、超音波診断装置10と対象物100との連携を実現させる。
【0027】
超音波診断装置1には、CPU、ROM、RAMによって構成される相対変位算出部2と表示制御部7と、装置本体外に超音波プローブ変位検出部4と対象物変位検出部3とが更に配されている。CPU、ROM、RAMは、超音波診断装置1が備える制御部1bを構成するものであってもよいし、別個に設けられたものであってもよい。相対変異算出部2と表示制御部7は、超音波診断装置1が備える超音波画像生成部1aが記憶する情報や制御部1bが記憶する情報を読み書きすることができ、モニタ1cを制御することができる。
【0028】
超音波プローブ変位検出部4と対象物変位検出部3は、超音波プローブ10の変位と対象物100の変位を検出すると、検出信号を相対変位算出部2に送出する。相対変位算出部2は、検出信号から超音波プローブ10と対象物100との相対変位を算出する。算出結果は、表示制御部7に送出される。尚、変位とは、位置と姿勢を指し、相対変位とは、相対的な位置と相対的な姿勢を指す。
【0029】
超音波プローブ変位検出部4と対象物変位検出部3は、光学測位により変位を検出する。これら変位検出部3,4は、それぞれ光送受信回路5,6と、複数の光ファイバー3a,4aを内包したセンサケーブル3b,4bで構成される。これら変位検出部3,4によると、センサケーブル3b,4bの可撓性により超音波プローブ10の自由な動きやコンパクト性を制限することがない。超音波プローブ10の自由な動きやコンパクト性を制限しなければ、超音波診断装置1を対象物100の間近まで近づけても医師や他の装置の作業領域を制限することがない。
【0030】
光送受信回路5,6は、それぞれ超音波診断装置1側に設置されており、センサケーブル3b,4bは、装置本体外へ導出している。特に光送受信回路6は、超音波プローブコネクタ9に内蔵されている。超音波プローブ変位検出部4のセンサケーブル4bは超音波プローブ10の所定箇所に接続されており、取廻しの便宜上、超音波プローブ10のケーブルに沿って配されている。対象物変位検出部3のセンサケーブル3bは、対象物100の所定箇所に接続されている。
【0031】
複数の光ファイバー3a,4aは、リング形状を有し、一端が光送受信回路5,6の送信部に接続され、他端が受信部に接続される。この複数の光ファイバー3a,4aは、それぞれ長さが異なり折り返し点が異なっている。内包されている光ファイバー3a,4aを長さ順に並べると、折り返し点が光送受信回路5,6の近傍に位置する長さから所定長ずつ延び、折り返し点が超音波プローブ10まで到達する長さになるように並ぶ。これら光ファイバー3a,4aは、それぞれ折り返し点付近の片側壁のクラッドが所定長に亘って削られており、一部の光が透過するようになっている。
【0032】
超音波プローブ変位検出部4及び対象物検出部3においては、ある箇所でセンサケーブル3b,4bが曲がった場合、その曲がった箇所近辺にクラッドが削られた壁面を有する少なくとも一本以上の光ファイバー3a,4aがその曲がりを検出する。
【0033】
光送受信回路5,6からは、図2の(a)に示すように、一本の光ファイバー3a,4a内に光ビームLが発信されている。
【0034】
例えば、図2の(b)に示すように、センサケーブル3a,4aのある箇所でクラッドが削られた壁面と逆側に曲がった場合を考える。その曲がり箇所近辺にクラッドが削られた壁面を有する複数の光ファイバー3a,4aでは、クラッドが削られた壁面から透過する光波Laの量が多くなり、光送受信回路5,6に戻ってくる光波Lbの量が少なくなる。
【0035】
また、図2の(c)に示すように、センサケーブル3a,4aのある箇所でクラッドが削られた壁面側に曲がった場合を考える。その曲がり箇所近辺にクラッドが削られた壁面を有する複数の光ファイバー3a,4aでは、クラッドが削られた壁面から透過する光波Laの量が少なくなり、光送受信回路5,6に戻ってくる光波Lbの量が多くなる。
【0036】
各光ファイバー3a,4aから回帰する光ビームLは、光波Lbの量をセンサケーブル3a,4aの曲がりやねじれに応じて増減させ、光送受信回路5,6に戻ってくる。光送受信回路5,6は、光波Lbの量を検出信号に変換して相対変位算出部2に送出する。この検出信号は、センサケーブル3b,4bの曲がり位置や曲がり具合、ねじれた位置やねじれ具合を特定する信号となる。
【0037】
相対変位算出部2は、双方の光送受信回路5,6、つまりセンサケーブル3b,4bの装置側接続点の位置関係の情報を予め記憶している。
【0038】
相対変位算出部2は、検出信号を解析し、曲がり位置や曲がり具合、ねじれた位置やねじれ具合を変位検出部3,4毎に積算することで、超音波プローブ10と対象物100の変位をそれぞれ特定する。更に特定したそれぞれの変位とセンサケーブルの装置側接続点同士の位置関係の情報とから超音波プローブ10と対象物100の相対変位を算出する。
【0039】
尚、本実施形態においては、光学測位の例としてセンサケーブルと光送受信回路5,6で構成された変位検出部3,4を例に挙げた。この他にも超音波プローブ10の自由な動きやコンパクト性を制限するものでなければ、他の検出法を用いることができる。例えば、超音波プローブ10や対象物100に検出ターゲット21を設けて、光トラッキングシステムによる光学的な三角測量を用いてもよいし、この光学的な三角測量に代えて磁気による三角測量を用いてもよい。
【0040】
相対変位算出部2が相対変位を算出すると、その算出結果は、表示制御部7に送出される。以下、実施形態に合わせて表示制御部7を説明する。
【0041】
(第一の実施形態:超音波診断と他の診断とを連携させる場合)
まず、超音波診断装置1と他の診断装置とを連携させる場合には、X線CT装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、PET(Positron Emission Tomography)装置等により捕捉した、画像上に表示可能なターゲットが対象物100となる。尚、MRI装置は、磁気を使って被検体内に存在している水の様子を映像化する装置であり、PET装置は、被検体内に注入したポジトロン放出核種を標識した化合物を検出して映像化する装置である。
【0042】
本実施形態では、X線CT装置を例示して説明する。図3に示すように、超音波診断装置1とX線CT装置20は、図示しないLAN等のネットワークにより接続され、相対変異算出部2と表示制御部7がX線CT装置20内に記憶されるCT画像や各種情報を読み書きし、図示しないモニタを制御することが可能になっている。
【0043】
X線CT装置20は、被検体にX線を照射して透過したX線量を検出する。更に検出されたX線量に基づき信号処理され、CT画像が生成される。生成されたCT画像は、装置本体内に記憶され、図示しないモニタに表示される。
【0044】
対象物変位検出部3は、対象物100として、ターゲット21と接続されている。ターゲット21は、放射線不透過性であり、X線CT装置20の規定箇所、例えば診察台上でX線照射により捕捉可能な箇所に設置されている。
【0045】
このターゲット21は、X線CT装置20が捕捉したCT画像が被検体のどこを表示するものであるかを知るために画像として捕捉可能な規定箇所に設置されるものである。CT画像上に表示されているターゲット21の画像上における位置や姿勢を解析することでCT画像が被検体のどこをどの向きで表示するものかを知ることができる。
【0046】
超音波診断装置1は、その機動性によりX線CT装置20の間近に設置されており、両変位検出部3,4のセンサケーブル3b,4bにより両診断を妨げずに相対変位を算出している。
【0047】
表示制御部7は、本実施形態において超音波画像とCT画像とを重畳して表示させる表示制御手段である。表示制御部7による処理は、超音波診断装置10が備える操作パネル1dを用いて装置操作者が画像の重畳を要求することで開始する。
【0048】
表示制御部7が参照するデータは、相対変位算出部2が算出した超音波プローブ10とターゲット21の相対変位の情報、X線CT装置20が記憶するCT画像である。CT画像には、ターゲット21の放射線不透過性により画像上におけるターゲット21の位置及び姿勢が像として表示されている。
【0049】
表示制御部7では、超音波プローブ10とターゲット21の相対変位から、超音波画像とターゲット21の相対変位を取得する。超音波プローブ10から送受波される超音波は、その方向や向きが超音波プローブ10に依存する。従って、表示制御部7は、超音波プローブ10とターゲット21の相対変位を取得して、予め記憶されている超音波プローブ10とセンサケーブル3b,4bの接続角度や接続距離といった接続関係を加算することで超音波画像とターゲット21の相対変位を取得する。
【0050】
また、CT画像に表示されているターゲット21の画像上の位置及び姿勢から、ターゲット21とCT画像の相対変位を算出する。ターゲット21の位置及び姿勢を明確に把握するためには、対象物変位検出部3を2つ以上備え、それぞれ異なる位置に設置されるターゲット21と接続することが望ましい。
【0051】
表示制御部7は、超音波画像とターゲット21の相対変位、CT画像とターゲット21の相対変位を取得すると、これら情報から超音波画像とCT画像の相対変位を取得する。超音波画像とCT画像の相対変位を取得すると、その相対変位に合致するように超音波画像とCT画像を重畳した画像を生成する。
【0052】
重畳された画像は、超音波診断装置1の超音波画像生成部1a、又はX線CT装置20に記憶させ、当該画像を超音波診断装置1のモニタ1c、又はX線CT装置20のモニタに表示させる。
【0053】
図4は、表示される重畳画像を示す。図4の(a)に示すように、表示制御部7は、三次元のCT画像に超音波プローブ10とターゲット21と超音波画像を算出された相対変位に合致させて配置した重畳画像を生成し、超音波診断装置1のモニタ1c又はX線CT装置20のモニタに表示させる。又は、図4の(b)に示すように、表示制御部7は、CT断層画像に超音波画像を重畳し、超音波診断装置1のモニタ1c又はX線CT装置20のモニタに表示させる。
【0054】
また、表示制御部7は、個別に表示されている超音波画像又はCT画像のいずれかにポインタが表示されると、他方の画像上にこのポインタを反映させる。例えば、超音波画像上にある関心領域を指すポインタが表示されると、CT画像上も関心領域に対応する箇所にポインタを表示させる。この表示制御部7は、超音波診断装置1が備える操作パネル1dを用いて装置操作者がいずれかの画像上にポインタを表示させることで動作する。
【0055】
表示制御部7が参照するデータは、相対変位算出部2が算出した超音波プローブ10とターゲット21の相対変位の情報、超音波画像又はCT画像上のポインタ位置情報である。表示制御部7は、ポインタが表示された装置、すなわち超音波診断装置1又はX線CT装置20から、ポインタを表示させるために保持しているポインタ位置情報を取得する。
【0056】
表示制御部7では、ポインタ位置情報からポインタと超音波画像又はCT画像の位置関係を取得する。この位置関係を、超音波画像とCT画像の相対変位に加算することで、ポインタを反映させる画像とポインタの相対変位を取得し、ポインタを反映させる。すなわち、超音波画像上にポインタが表示されれば、CT画像とポインタの相対変位を取得し、CT画像にポインタを反映させる。以後、ポインタの移動量、移動速度を算出してリアルタイムで反映させる。
【0057】
このような超音波診断装置1は、X線CT装置20のような大型の装置においても邪魔になることなく近づくことができ、実際の相対変位を正確に算出することができるから、両者の画像を正確に重畳することができ、両診断の連携を図ることができる。また、ポインタを双方の画像上に共通関心位置に表示することでも両診断の連携を図ることができる。
【0058】
尚、対象物100としてMRI装置やPET装置が捕捉可能なターゲットとしては、造影剤や微小な磁性体とすればよく、表示制御部7はX線CT装置20と連携させる場合と同様に機能させる。
【0059】
(第二の実施形態:超音波診断と穿刺治療との連携の場合)
次に、超音波画像と穿刺治療とを連携させる場合には、PEI(経皮的エタノール注入法)装置やRFA(ラジオ波焼灼療法)装置やMCT(マイクロ波凝固療法)装置等の穿刺治療用ニードルが対象物100となる。
【0060】
本実施形態では、図5に示すように、RFA装置30を例示して説明する。RFA装置30は、RFAニードル31を治療域に挿入して先端32からのラジオ波により治療域を治療する穿刺凝固治療の装置である。
【0061】
超音波診断装置1は、図5に示すように、RFAニードル31の所定位置に対象物変位検出部3を接続している。超音波診断装置10とRFA装置30は、LAN等のネットワークにより接続され、相対変異算出部2及び表示制御部7によるRFA装置30の制御が可能となっている。
【0062】
また、超音波プローブ10とRFAニードル31は、別体構成であり、独立して自由に移動させることが可能となっている。
【0063】
本実施形態では、相対変位算出部2は、超音波プローブ10とRFAニードル31の相対変位を算出している。
【0064】
表示制御部7は、超音波画像にRFAニードル31の先端32を表示させる表示制御手段となる。超音波診断装置10が備える操作パネルを用いて装置操作者が画像上にRFAニードル31の先端32の表示を要求することで表示制御部7は動作する。
【0065】
表示制御部7が参照するデータは、相対変位算出部2が算出した超音波プローブ10とRFAニードル31の相対変位の情報、RFAニードル31のセンサケーブル3bが接続されている位置から先端までの距離情報である。距離情報は、RFAニードル31の所定位置にセンサケーブル3bを接続することで予め表示制御部7に記憶されている。
【0066】
表示制御部7では、超音波プローブ10とRFAニードル31の相対変位に距離情報を加算することで、超音波画像とRFAニードル31の先端32との相対変位を取得する。超音波画像とRFAニードル31の先端32との相対変位を取得すると、図6に示すように、当該相対変位に合致するように超音波画像上にRFAニードル31の先端32を表示させ、RFAニードル31先端位置の移動に合わせてトレース32aして表示する。
【0067】
このように、超音波診断装置1は、超音波プローブ10とRFAニードル31が独立していても相対変位を把握することで、RFAニードル31の先端32を超音波画像上で把握することができる。したがって、超音波プローブ10に穿刺ガイドを付加して穿刺を行うことなく穿刺が可能となり、超音波画像にて関心領域を捉えながらも、自由な方向から穿刺を行うことが可能となる。尚、本実施形態においては、三次元の超音波画像を用いた場合に特に穿刺治療が簡便かつ正確となる。
【0068】
(超音波診断とエネルギー照射治療との連携の場合)
次に、超音波診断とエネルギー照射治療とを連携させる場合には、図7に示すように、結石破砕装置や超音波治療装置や放射線治療装置等の治療用エネルギー照射装置40の治療アプリケータ41を対象物100とする。
【0069】
治療用エネルギー照射装置40は、焦点42を結ぶようにエネルギーを集束させて照射させる装置であり、治療アプリケータ41のエネルギー源41aからエネルギーが照射される。焦点位置42は、治療用エネルギー照射装置40にてコントロールされている。尚、本実施形態においては、治療アプリケータ41に超音波プローブ10とは別個に超音波を送受波するインナープローブを備えている。
【0070】
超音波診断装置1と治療用エネルギー照射装置40は、LAN等のネットワークにより接続され、相対変異算出部2及び表示制御部7による治療用エネルギー照射装置40の制御が可能となっている。また、図7に示すように、超音波診断装置1には、治療アプリケータ41の駆動を制御する駆動制御部8が配される。この駆動制御部8もCPU、ROM、RAMにより構成される。
【0071】
本実施形態では、相対変位算出部2は、超音波プローブ10と治療アプリケータ41の相対変位を算出している。
【0072】
表示制御部7は、超音波画像に焦点位置42を表示させる表示制御手段となる。超音波診断装置1が備える操作パネル1dを用いて装置操作者が画像上に焦点位置42の表示を要求することで表示制御部7は動作する。この表示制御部7には、予め治療アプリケータ41とセンサケーブルが接続されている位置からエネルギー照射源41aまでの距離情報が記憶されている。
【0073】
表示制御部7が参照するデータは、相対変位算出部2が算出した超音波プローブ10と治療アプリケータ41の相対変位の情報、距離情報、治療用エネルギー照射装置40から取得する焦点位置42の情報である。
【0074】
表示制御部7では、超音波プローブ10と治療アプリケータ41の相対変位に距離情報と焦点位置42の情報を加算することで、超音波画像と焦点位置42との相対変位を取得する。当該相対変位を取得すると、図8に示すように、取得した相対変位に合致するように超音波画像上に焦点位置42を表示させる。
【0075】
治療アプリケータ41がアクチュエータを複数備えたアーム43を介して治療用エネルギー照射装置40に支持されている場合には、駆動制御部8により、自動で焦点位置42を所望箇所に移動させることもできる。
【0076】
装置操作者により操作パネルを用いて超音波画像上にポインタが表示されると、駆動制御部8は、ポインタ位置情報を取得して、ポインタと焦点位置42との相対変位を算出する。そして、ポインタと焦点位置42が一致するように、相対変位分アクチュエータを駆動させ、治療アプリケータ41を移動させる。
【0077】
この超音波診断装置1により、超音波診断装置1と治療用エネルギー照射装置40を自由なレイアウトで配置でき、作業領域の確保が容易になるとともに、超音波画像上で焦点位置42の把握が可能となり、また治療アプリケータ41を移動させることができる。
【0078】
(第三の実施形態:対象物を被検体の所定箇所とした場合)
また、対象物100としては、被検体の所定箇所50が挙げられる。図9に示すように、対象物変位検出部3は、被検体の所定箇所50に吸着盤等で取り付けられる。相対変位算出部2は、超音波プローブ10と被検体の所定箇所50との相対変位を算出している。
【0079】
表示制御部7は、超音波プローブ10と被検体の所定箇所50との相対変位を超音波画像上に表示する。さらに、超音波画像生成部1aに相対変位の情報を付加した超音波画像を記憶させる。この相対変位が付加された超音波画像は、装置操作者の操作パネルを用いた要求により、表示制御部7により再表示される。再表示は、超音波診断中であってもよく、この場合現在診断中の超音波画像と再表示される画像を2画面に分けて表示する。
【0080】
この超音波診断装置1によると、対象物変位検出部3を取り付ける被検体上の位置を規定することで、前回の超音波診断とは異なる時点で再度超音波診断を行っても、再表示された超音波画像に付加されている相対変位を参照し、同じ箇所に超音波プローブ10を当てることができる。
【0081】
このように、本発明の超音波診断装置1によると、可撓性を有する超音波プローブ変位検出手段4と対象物変位検出手段3により、医師の作業領域を制限することなく、又超音波診断と他の診断や治療等を妨げることなく、超音波診断装置によって他の診断や治療等と連携することができ、正確な位置決めや適正な治療計画をサポートすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】超音波診断装置の構成図である。
【図2】変位検出部の説明図である。
【図3】超音波診断装置とX線CT装置の概観構成を説明する構成図である。
【図4】表示制御部による画像の重畳を示す図である。
【図5】超音波診断装置と穿刺治療装置との連携を説明する図である。
【図6】穿刺ニードルの先端の超音波画像への表示を示す図である。
【図7】超音波診断装置と治療用エネルギー照射装置との連携を説明する図である。
【図8】焦点位置の超音波画像への表示を示す図である。
【図9】対象物を被検体の所定箇所とした場合の説明図である。
【符号の説明】
【0083】
1 超音波診断装置
1a 超音波画像生成部
1b 制御部
1c モニタ
1d 操作パネル
2 相対変位算出部
3 対象物変位検出部
4 超音波プローブ変位検出部
3a,4a 光ファイバー
3b,4b センサケーブル
5,6 光送受信回路
7 表示制御部
8 駆動制御部
9 超音波プローブコネクタ
10 超音波プローブ
20 X線CT装置
21 ターゲット
30 RFA装置
31 RFAニードル
32 RFAニードルの先端
32a トレース
40 治療用エネルギー照射装置
41 治療アプリケータ
41a エネルギー源
42 焦点位置
43 アーム
50 被検体の所定箇所
100 対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波の送受波に基づく超音波画像を表示する超音波診断装置であって、
超音波を送受波する超音波プローブと、
前記超音波プローブの変位を検出するプローブ変位検出手段と、
前記対象物の変位を検出する対象物変位検出手段と、
検出された超音波プローブの変位と検出された対象物の変位とに基づき、前記超音波プローブと対象物との相対変位を算出する相対変位算出手段と、
を備え、
前記プローブ変位検出手段及び前記対象物変位検出手段は、
光学測位又は磁気測位により変位を検出すること、
を特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記超音波プローブ変位検出手段は、
曲がり及びねじれを検出する光ファイバー束を有し、一端が前記超音波プローブに接続され、他端が固定箇所に接続されるプローブ側センサケーブルを備え、
前記対象物変位検出手段は、
内部に曲がり及びねじれを検出する光ファイバー束を有し、一端が前記対象物に接続され、他端が固定箇所に接続される対象物側センサケーブルを備え、
前記相対変位算出手段は、
それぞれの光ファイバー束が検出する曲がり及びねじれに基づき、相対変位を算出すること、
を特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
CT画像を表示するCT機構、MRI画像を表示するMRI機構、又はPET画像を表示するPET機構のいずれかの規定箇所に設置され、前記機構により捕捉した画像上に表示可能なターゲットを、前記対象物とし、
算出された相対変位と前記機構が表示する画像上における前記ターゲットの位置に基づき、前記超音波画像と前記機構が表示する画像とを重畳して表示画面上に表示させる表示制御手段をさらに備えること、
を特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項4】
CT画像を表示するCTスキャン機構、MRI画像を表示するMRI機構、又はPET画像を表示するPET機構のいずれかの規定箇所に設置され、前記機構により捕捉した画像上に表示可能なターゲットを、前記対象物とし、
前記超音波画像上又は前記機構が表示する画像上のうち、一方にポインタが表示されると、算出された相対変位と前記機構が捕捉した画像上におけるターゲット位置に基づき、他方の画像上に該ポインタを反映させる表示制御手段をさらに備えること、
を特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項5】
PEI若しくはRFA又はMCTの穿刺治療用ニードルのうちのいずれかを、前記対象物とし、
算出された相対変位に基づき、前記穿刺治療用ニードルの先端位置を表示させる先端位置表示手段をさらに備えること、
を特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項6】
結石破砕機構若しくは超音波治療機構又は放射線治療機構の照射エネルギー照射部のうちのいずれかを、前記対象物とし、
算出された相対変位に基づき、前記超音波画像内に前記照射エネルギー照射部の焦点位置を表示させる表示制御手段をさらに備えること、
を特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記対象物は、
被検体の所定箇所であること、
を特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−263068(P2006−263068A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−83872(P2005−83872)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】