説明

超音波診断装置

【課題】連続波を利用して速度情報と位置情報とを取得する超音波診断装置に関する改良技術を提供する。
【解決手段】のこぎり波の変調信号によって、周波数が周期的に増加する増加時間帯と周波数が周期的に減少する減少時間帯とを含んだ変調送信信号が生成される。スペクトラム演算部34は、増加時間帯に対応した周波数スペクトラムである増加時間帯スペクトラムと、減少時間帯に対応した周波数スペクトラムである減少時間帯スペクトラムを求める。そして、増加時間帯スペクトラムと減少時間帯スペクトラムとに基づいて生体内組織の位置と速度が求められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関し、特に、連続波を利用する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置の連続波を利用した技術として、連続波ドプラが知られている。連続波ドプラでは、例えば、数MHzの正弦波として構成される送信波が生体内へ連続的に放射され、生体内からの反射波が連続的に受波される。反射波には、生体内における運動体(例えば血流)によるドプラシフト情報が含まれる。そこで、その情報を取り出して周波数解析し、運動体の速度情報を反映したドプラ波形などが形成される。
【0003】
連続波を利用した連続波ドプラは、パルス波を利用したパルスドプラに比べて、一般に高速の速度計測の面で優れている。ところが、連続波ドプラでは、連続波を利用していることにより位置計測が困難である。例えば、従来の一般的な連続波ドプラの装置では、位置計測を行うことができなかった。
【0004】
こうした状況のもと、生体内組織の速度に加えて、生体内組織の位置を計測することができる連続波ドプラの技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2006−14916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術は、連続波ドプラを基本とする技術でありながら、組織などの速度に加えて位置も計測することができるという、画期的な技術であった。
【0007】
そして、本願の発明者らは、上記特許文献1に記載された画期的な技術の改良技術についてさらに研究を重ねてきた。
【0008】
本発明は、このような背景において成されたものであり、その目的は、連続波を利用して速度情報と位置情報とを取得する超音波診断装置に関する改良技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の好適な態様である超音波診断装置は、搬送波信号に対して変調信号を用いて周波数変調処理を施すことにより変調送信信号を生成する送信信号処理部と、生成された変調送信信号に対応した超音波を生体に送波し、生体からの反射波を受波して受信信号を取得する送受波部と、取得された受信信号に対して変調送信信号を用いて復調処理を施すことにより、送受信信号間における周波数差を反映させた周波数差信号を得る受信信号処理部と、周波数差信号の周波数スペクトラムを求めるスペクトラム演算部と、周波数差信号の周波数スペクトラムに基づいて生体内組織の位置と速度を求める位置速度演算部と、を有し、前記変調信号は、周波数を周期的に増加させる信号部分と周波数を周期的に減少させる信号部分とを含み、これにより、周波数が周期的に増加する増加時間帯と周波数が周期的に減少する減少時間帯とを含んだ変調送信信号が生成され、前記スペクトラム演算部は、増加時間帯に対応した周波数スペクトラムである増加時間帯スペクトラムと、減少時間帯に対応した周波数スペクトラムである減少時間帯スペクトラムと、を求め、前記位置速度演算部は、増加時間帯スペクトラムと減少時間帯スペクトラムに基づいて生体内組織の位置と速度を求める、ことを特徴とする。
【0010】
望ましい態様において、前記位置速度演算部は、増加時間帯スペクトラムと減少時間帯スペクトラムの両方の周波数軸上の互いに等しい位置に現れる固定組織のスペクトラム成分を認識し、固定組織のスペクトラム成分が除去された増加時間帯スペクトラムと減少時間帯スペクトラムを合成することにより得られる速度スペクトラムに基づいて、移動組織の位置と速度を求める、ことを特徴とする。
【0011】
望ましい態様において、前記位置速度演算部は、速度スペクトラム内において互いに複素共役の関係にある増加時間帯スペクトラム成分と減少時間帯スペクトラム成分との間の周波数差から移動組織の速度を求める、ことを特徴とする。
【0012】
望ましい態様において、前記位置速度演算部は、速度スペクトラム内において互いに複素共役の関係にある増加時間帯スペクトラム成分と減少時間帯スペクトラム成分との間の中間点の周波数から移動組織の位置を求める、ことを特徴とする。
【0013】
望ましい態様において、前記変調信号は、周波数を周期的に直線的に増加させる信号部分と周波数を周期的に直線的に減少させる信号部分とを含んだのこぎり波である、ことを特徴とする。
【0014】
望ましい態様において、前記位置速度演算部は、増加時間帯スペクトラムと減少時間帯スペクトラムの両方の周波数軸上の互いに等しい位置に現れる固定組織のスペクトラム成分を抽出し、固定組織のスペクトラム成分の周波数軸上の位置に基づいて固定組織の位置を求める、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、連続波を利用して速度情報と位置情報とを取得する超音波診断装置に関する改良技術が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。
【0017】
図1には、本発明に係る超音波診断装置の好適な実施形態が示されており、図1はその全体構成を示すブロック図である。送信用振動子20は生体内へ超音波の送信波を連続的に送波し、また、受信用振動子22は生体内からの反射波を連続的に受波する。このように、送信および受信が、それぞれ異なる振動子で連続的に実行される。なお、送信用振動子20および受信用振動子22は、それぞれ、複数の振動素子で形成されてもよい。そして、複数の振動素子を利用してビームフォーミングを行うことにより、送信用振動子20によって送信ビームを形成し、受信用振動子22によって受信ビームを形成してもよい。
【0018】
送信器18は、送信用振動子20へ送信信号を供給して超音波を送波させる。送信器18には、FM変調処理が施されたFM連続波(FMCW波)信号が入力され、送信器18がFM連続波信号に対応した送信信号を送信用振動子20へ供給することにより、FM連続波が送信用振動子20から送波される。
【0019】
FM変調器14は、RF波発振器16から供給されるRF波に対して変調信号に基づいて変調処理を施すことにより、FM連続波信号を発生する。変調信号は、のこぎり波発生器12からFM変調器14へ供給される。のこぎり波発生器12は、変調信号としてのこぎり波を発生する。つまり、周波数を周期的に直線的に増加させるのこぎり波と周波数を周期的に直線的に減少させるのこぎり波とを一定時間ごとに切り替えて発生する。なお、のこぎり波発生器12から発生されるのこぎり波の波形などについては後に詳述する。
【0020】
受信用振動子22によって生体内からの反射波が連続的に受波されると、前置増幅器24および主増幅器26は、受信用振動子22から供給される受波信号に対して増幅処理を施し、受信RF信号(受信信号)を形成してミキサ28へ出力する。ミキサ28は、受信RF信号に対して検波を施す回路である。ミキサ28に供給される参照信号は、FM変調器14から出力されるFM連続波信号である。
【0021】
こうして、ミキサ28において、受信RF信号(受信信号)に対してFM連続波信号(送信信号)による検波、つまり受信RF信号とFM連続波信号の乗算処理が行われ、ローパスフィルタ(LPF)30によって高周波数成分が除去されることにより、送受信信号間の周波数差信号が抽出される。
【0022】
なお、ミキサ28は、受信RF信号に対して直交検波を施して複素信号を生成してもよい。直交検波の場合、FM変調器14から出力されるFM連続波信号と、そのFM連続波信号の位相をπ/2だけずらした信号とによる、二つの信号を参照信号として検波が行われて、同相成分と直交成分の二つの成分が出力される。
【0023】
LPF30によって抽出された周波数差信号はスペクトラム演算部34に供給される。スペクトラム演算部34は、例えば、FFT演算を行う演算器(CPUやDSPなど)で構成され、周波数差信号に関する周波数スペクトラムを求める。なお、スペクトラム演算部34は、ゲート設定部32によって設定されるゲート期間に応じて、周波数スペクトラムを求める。また、スペクトラム演算部34で求められた周波数スペクトラムに対して、後段の各部によって適宜処理が実行されることにより、生体内組織の速度情報や位置情報が求められる。
【0024】
以上、概説したように、本実施形態では、のこぎり波でFM変調した連続波による超音波(FMCW波)を送受波し、組織の位置情報や速度情報を取得する。そこで、次に、本実施形態による位置情報や速度情報の取得の原理について説明する。なお、以下において、図1に示した構成(部分)には図1の符号を付して説明する。
【0025】
図2は、生体内組織の位置情報が周波数差信号に反映される様子を説明するための図である。図2は、対象組織が一つの場合の例を示している。
【0026】
図2(A)は、のこぎり波の周波数変化を示しており、送信信号60(実線)と固定組織から得られる受信信号62(破線)の各々の周波数変化を示している。図2(A)は、横軸を時間軸として縦軸に周波数を示すことにより、送信信号60と受信信号62の瞬時周波数が変化する様子を示している。
【0027】
先に説明したように、本実施形態では、のこぎり波を用いた変調処理によって形成されるFM連続波を送波している。図2(A)に示すように、送信信号60は、周波数が周期的に直線的に増加しており、送信信号60の波形はのこぎりの歯に似た形となっている。
【0028】
図2(A)の送信信号60は、送信用振動子20から生体内へ送波される送信波に対応しており、送信用振動子20から送波された後、生体内を深さ方向へ向かって伝播する。一方、図2(A)の受信信号62は、受信用振動子22によって取得される受波信号に対応しており、ある深さ(位置)に存在する一つの固定組織から反射された信号を示している。そのため、送信信号60と受信信号62との間には、対象組織の位置に応じた遅延時間差が存在する。その遅延時間差は、送信信号60と受信信号62との間の周波数差となって現れる。
【0029】
その周波数差(以下においてfbとする)から対象組織の位置(深さ)Lを算出することができる。その算出原理に関しては、特許文献1(特開2006−14916号公報)に詳述されている。その原理を本実施形態に応用すると次のようになる。
【0030】
本実施形態において、送信信号60の周波数が増加する時間Tmの間に周波数がΔfだけ増加すると、単位時間当たりの周波数変化はΔf/Tmとなる。また、送信用振動子20から送波された超音波が、対象組織までの距離Lだけ伝播し、その位置から反射されて受信用振動子22に戻ってくるまでの伝播時間τはτ=2L/cとなる。cは組織内の音速である。
【0031】
そのため、送信信号60と受信信号62との間の周波数差fbは、単位時間当たりの周波数変化と伝播時間とを乗算することにより、fb=(Δf/Tm)×(2L/c)と求めることができる。したがって、周波数差fbを計測することにより、既知の値であるΔf,Tm,cを利用して、対象組織の位置(深さ)Lを算出することができる。
【0032】
ちなみに、のこぎり波に換えて対称三角波を利用しても、送信信号60と受信信号62との間の周波数差fbから対象組織の位置Lを算出することができる。
【0033】
図2(B)は、対称三角波の周波数変化を示しており、送信信号60(実線)と固定組織から得られる受信信号62(破線)の各々の周波数変化を示している。図2(B)は、横軸を時間軸として縦軸に周波数を示すことにより、送信信号60と受信信号62の瞬時周波数が変化する様子を示している。
【0034】
図2(B)に示す対称三角波は、図2(A)に示すのこぎり波と同じ繰り返し周期である。つまり、図2(B)に示す対称三角波の送信信号60は、時間Tmの間に、周波数が直線的に増加する部分と周波数が直線的に減少する部分とを含んでおり、時間Tmの間に形成される二等辺三角形の波形が、時間Tmごとに繰り返し発生している。
【0035】
のこぎり波と対称三角波を変調波とした場合の距離の測定可能時間帯を比較する。測定可能時間帯は、送信信号60と受信信号62の間の遅延時間差の最大値に相当する。また、遅延時間差は、超音波が生体内を伝播する往復の時間であるから目標までの距離に比例している。そして、繰り返し周波数が同一であれば、つまり、のこぎり波と対称三角波の繰り返し時間が共にTmであれば、図2(A)(B)の比較から分かるように、のこぎり波の測定可能時間がTmであるのに対し、対称三角波の測定可能時間はTm/2となり、測定可能時間帯は、のこぎり波の方が対称三角波よりも2倍大きい。
【0036】
ちなみに、同一距離を測定する場合、ベースバンド信号の周波数スペクトラムの3dB半値幅は、のこぎり波よりも対称三角波の方が2倍大きくなる。
【0037】
また、のこぎり波の場合、同一の固定組織から得られる、距離情報を持ったビート周波数(送信信号60と受信信号62との間の周波数差)は、時間によって変化せずに一定となる。そのため、のこぎり波の場合、距離分解能向上を目的とした信号処理、例えば、重み付け回路や整合濾波器を設計する際に、その設計が非常に簡単になるという効果を奏する。
【0038】
したがって、距離測定に関しては、対称三角波を用いるよりも、のこぎり波を用いた方が、測定可能距離が長くなり、また、距離分解能の向上も容易になる。但し、移動する組織の位置と速度の測定にのこぎり波を利用する場合、単純な信号処理では正確な位置を測定することができない。本実施形態では、以下に説明する手法により、その欠点を解決している。
【0039】
図3は、生体内組織の位置情報と速度情報が周波数差信号に反映される様子を説明するための図である。図3は、対象組織が一つの場合の例を示している。
【0040】
図2(A)を利用して説明したように、対象組織が固定組織の場合、位置Lは、周波数差fbから比較的容易に算出することができる。ところが、移動組織の場合には、移動に伴うドプラシフトの影響を考慮する必要がある。
【0041】
図3(A)は、周波数を周期的に直線的に増加させるのこぎり波を示しており、送信信号(実線)と、位置情報のみを含んだ受信信号(破線)と、位置情報に加えて速度情報を含んだ受信信号(一点鎖線)の、各々の周波数変化を示している。つまり、図2(A)と同様に、図3(A)は、横軸を時間軸として縦軸に周波数を示すことにより、送信信号と受信信号の瞬時周波数が変化する様子を示している。
【0042】
移動組織の場合にも、その位置に応じて、送信信号と受信信号との間に時間的なずれ(受信信号の遅延)が生じることにより、同時刻の送信信号と受信信号との間に周波数差が現れる。つまり、送信信号(実線)と位置情報のみを含んだ受信信号(破線)との間に周波数差fbが現れる。
【0043】
移動組織の場合には、さらに、組織の移動に伴うドプラシフトfdが現れる。つまり、ドプラシフトfdの影響により、送信信号(実線)に対して、位置情報に加えて速度情報を含んだ受信信号(一点鎖線)が、縦軸方向にずれている。その結果、送信信号(実線)と受信信号(一点鎖線)との間の周波数差は、(fb+fd)となる。
【0044】
一方、図3(B)は、周波数を周期的に直線的に減少させるのこぎり波を示しており、送信信号(実線)と、位置情報のみを含んだ受信信号(破線)と、位置情報に加えて速度情報を含んだ受信信号(一点鎖線)の、各々の周波数変化を示している。
【0045】
周波数を減少させるのこぎり波についても、周波数を増加させるのこぎり波の場合と同様に、移動組織の位置に伴う周波数差fbと、移動組織の移動に伴うドプラシフトfdが現れる。
【0046】
ところが、周波数を増加させるのこぎり波では、図3(A)に示すようにドプラシフトfdによる影響が(fb+fd)となるのに対して、周波数を減少させるのこぎり波では、図3(B)に示すようにドプラシフトfdによる影響が(fb−fd)となる。本実施形態では、周波数を増加させるのこぎり波と周波数を減少させるのこぎり波との間の、ドプラシフトfdの影響の相違を利用して、移動組織の位置情報と速度情報を抽出する。
【0047】
なお、図3は、対象組織が一つの場合の例を示しており、この場合には、図3(A)に示す周波数差(fb+fd)と、図3(B)に示す周波数差(fb−fd)を加算することによりドプラシフトfdをキャンセルすることができ、また、周波数差(fb+fd)と周波数差(fb−fd)の差を求めることにより位置に伴う周波数差fbをキャンセルすることができる。ところが、生体内から得られる反射波には、複数の組織部分から得られる複数の反射波が含まれている。
【0048】
図4は、複数の組織部分から得られる複数の反射波が周波数差信号に反映される様子を説明するための図である。
【0049】
図4(a)は、周期的に直線的に増加させるのこぎり波によって変調された送信信号を示している。また、図4(b)は、図4(a)に示す送信信号60の周波数変化と、複数の反射波に対応した複数の受信信号62の周波数変化を示している。図4(b)は、横軸を時間軸として縦軸に周波数を示すことにより、送信信号60と受信信号62の瞬時周波数が変化する様子を示している。なお、図4(b)において、複数の受信信号62は、互いに異なる位置(深さ)から得られる信号に対応している。そのため、送信信号60と各受信信号62との間には、組織部分の位置に応じた遅延量が存在する。その遅延量は、各受信信号62ごとに異なっている。
【0050】
図4(c)は、図4(b)の送信信号60と各受信信号62との間の周波数差を示している。図4(c)の横軸に示す時間軸は、図4(b)の時間軸に揃えられており、図4(c)の縦軸は周波数差を示している。
【0051】
図4(b)の送信信号60と各受信信号62との間には、図4(c)に示すように、組織部分の位置に応じた周波数差が存在する。周波数差は、各受信信号62ごとに異なっている。そのため、図4(c)に示す波形内には複数の周波数差が現れており、対象組織が一つの場合に比べて、波形が複雑になる。
【0052】
図4では、ドプラシフトの影響を考慮していないが、ドプラシフトを伴う場合には、図4(c)に示す各波形にドプラシフトが反映され、さらに複雑な波形となる。本実施形態では、そのような複雑な波形内から複数の組織部分の速度情報と位置情報が抽出される。
【0053】
図5は、本実施形態で利用されるのこぎり波を説明するための図であり、図5(A)は、のこぎり波発生器12から発生されるのこぎり波の周波数変化を示しており、図5(B)は、ゲート設定部32によって設定されるゲート信号を示している。
【0054】
のこぎり波発生器12は、図5(A)に示すように、周波数が増加する時間帯(増加時間帯)に対応したのこぎり波と、周波数が減少する時間帯(減少時間帯)に対応したのこぎり波とを一定時間ごとに切り替えて発生する。増加時間帯に対応したのこぎり波は、周波数の直線的な増加を一定周期で繰り返している。また、減少時間帯に対応したのこぎり波は、周波数の直線的な減少を一定周期で繰り返している。図5(A)では、増加時間帯と減少時間帯の各々において波の数は4波であるが、本実施形態では、波の数が4波以外であってもよい。
【0055】
ゲート設定部32は、図5(B)に示すように、のこぎり波の周波数が増加する増加時間帯に対応したゲート期間(信号取り込みゲートA)と、のこぎり波の周波数が減少する減少時間帯に対応したゲート期間(信号取り込みゲートB)を、のこぎり波発生器12で発生されるのこぎり波に同期させて設定する。そして、ゲート設定部32によって設定されたゲート期間に応じて、スペクトラム演算部34において各種周波数スペクトラムが求められる。
【0056】
図6は、本実施形態で利用される各種周波数スペクトラムを説明するための図である。スペクトラム演算部34は、LPF30から出力される周波数差信号に対してFFT演算などを施して、周波数差信号の周波数スペクトラムを求める。その際、スペクトラム演算部34は、ゲート設定部32によって設定される各ゲート期間に応じた周波数スペクトラムを求める。
【0057】
図6(a)は、周波数が周期的に直線的に増加する増加時間帯に対応した周波数スペクトラム(増加時間帯スペクトラム)を示している。つまり、ゲート設定部32によって設定される信号取り込みゲートA(図5参照)がハイレベルの期間の周波数差信号から得られる周波数スペクトラムである。
【0058】
周波数差信号は、図4(c)を利用して説明したように、組織部分の位置に応じた周波数差成分を含んでいる。そのため、図6(a)に示す周波数スペクトラムには、周波数軸方向に沿って、複数の周波数差成分のスペクトラムが現れている。深い位置(遠い位置)に存在する組織部分ほど周波数差が大きくなる。つまり、図6(a)の横軸の右方向(周波数が大きくなる方向)に存在するスペクトラムほど、より深い位置の組織部分から得られたスペクトラムに相当する。
【0059】
図6には、縦軸に対して平行な8本の破線が示されており、それらの破線のうちの6本の破線上に、固定組織から得られたスペクトラムが示されている。6本の破線は、互いに異なる位置と周波数に対応している。従って、図6(a)に示された各破線に対応する固定組織のスペクトラムは、互いに異なる位置に存在する6つの固定組織から得られたものに相当する。そして、周波数が大きいものほど、深い位置に存在する組織から得られたものとなる。
【0060】
図6(a)には、さらに、移動組織から得られたスペクトラムも示されている。図3を利用して説明したように、移動組織から得られる周波数差信号は、移動組織の位置に応じた成分と、移動組織の移動に伴うドプラシフト成分とを含んでいる。そして、ドプラシフト成分は、図3を利用して説明したように、周波数を増加させるのこぎり波と周波数を減少させるのこぎり波とにおいて、周波数差に与える影響が異なっている。つまり、ドプラシフト成分(fd)が加算される場合と減算される場合がある。
【0061】
そのため、図6(a)において、移動組織から得られるスペクトラムは、その移動組織の位置(図6における破線の位置)に対応した周波数(図3におけるfbに相当する)の前後のいずれか一方に、ドプラシフト成分(図3におけるfdに相当する)だけずれた周波数位置に現れている。
【0062】
図6(a)には、8本の破線のうちの7本の破線に対応して、移動組織から得られたスペクトラムが示されている。そして、図6(a)に示された各破線に対応する移動組織のスペクトラムは、互いに異なる位置に存在する7つの移動組織から得られたものに相当する。なお、図6(a)では、各移動組織の位置に固定組織が存在する部分もある。つまり、図6(a)に示す6つの固定組織の各々に対応して6つの移動組織が存在している。そして、互いに対応する固定組織と移動組織が、生体内のほぼ同じ位置に存在することを示している。
【0063】
図6(a)の周波数スペクトラムは、例えば、互いに異なる深さに存在する血管などから得られる。その場合、固定組織が血管壁などに対応し、移動組織が血管内を流れる血流に対応する。なお、本実施形態の超音波診断装置の計測対象は、血管に限定されない。
【0064】
図6(b)は、周波数が周期的に直線的に減少する減少時間帯に対応した周波数スペクトラム(減少時間帯スペクトラム)を示している。つまり、ゲート設定部32によって設定される信号取り込みゲートB(図5参照)がハイレベルの期間の周波数差信号から得られる周波数スペクトラムである。
【0065】
図3を利用して説明したように、周波数を増加させるのこぎり波と周波数を減少させるのこぎり波は、周波数差に与える影響が異なっている。そのため、図6(a)と図6(b)に示す同一の移動組織から得られるスペクトラムは、その位置に対応する各破線を軸として対称的に現れる。また、図6(a)と図6(b)に示す同一の移動組織から得られるスペクトラムは、互いに複素共役の関係にある。つまり、複素共役のうちの一方のスペクトラムは縦軸の正方向側に現れており、複素共役のうちの他方のスペクトラムは縦軸の負方向側に現れている。
【0066】
図6(a)と図6(b)に示すように、増加時間帯と減少時間帯に分離してスペクトラムを求めることにより、同一移動組織から得られる互いに複素共役の関係にある二つのスペクトラムのうちの一方のみを抽出することができる。
【0067】
比較部40は、スペクトラム演算部34によって求められた増加時間帯スペクトラム(図6(a))と減少時間帯スペクトラム(図6(b))の二つのスペクトラムを比較する。そして、二つのスペクトラムの両方の周波数軸上の互いに等しい位置に現れる固定組織のスペクトラム成分を認識する。さらに、増加時間帯スペクトラムと減少時間帯スペクトラムの各々から固定組織のスペクトラム成分を除去し、固定組織のスペクトラム成分が除去された増加時間帯スペクトラムと減少時間帯スペクトラムを合成して速度スペクトラムを求める。
【0068】
図6(c)は、速度スペクトラムを示している。図6(a)(b)との比較において、図6(c)には、固定組織に対応したスペクトラムが除去された結果、7つの移動組織に対応したスペクトラムのみが残されている。なお、7つの移動組織の中には、固定組織と同じ位置に存在する移動組織(複合体)も含まれている。
【0069】
このように、比較部40によって、固定組織のスペクトラム成分が除去され、図6(c)の速度スペクトラムが得られる。比較部40は、例えば、図6(a)と図6(b)の二つのスペクトラムの差分をとることにより、二つのスペクトラムに存在する固定組織のスペクトラム成分を相殺する。また、比較部40は、例えば、図6(a)と図6(b)の二つのスペクトラムの各々の周波数軸上に沿って、二つのスペクトラムのスペクトラム成分を解析して、二つのスペクトラムの両方の周波数軸上の互いに等しい位置に現れる固定組織のスペクトラム成分を認識してもよい。
【0070】
さらに、比較部40は、増加時間帯スペクトラム(図6(a))と減少時間帯スペクトラム(図6(b))の二つのスペクトラムの両方の周波数軸上の互いに等しい位置に現れる固定組織のスペクトラム成分を抽出し、図6(d)に示す固定スペクトラムを求める。図6(d)に示す固定スペクトラムは、固定組織のスペクトラム成分のみを含んでいる。比較部40は、例えば、図6(a)の増加時間帯スペクトラムと図6(b)の減少時間帯スペクトラムの論理積(AND)演算から図6(d)の固定スペクトラムを求める。
【0071】
なお、比較部40によって求められた図6(d)に示す固定スペクトラムは、位置情報算出部54に供給され、位置情報算出部54は、図6(d)の固定スペクトラム内の各固定組織に対応したスペクトラム成分から各固定組織の位置(深さ)を求める。各固定組織の位置(深さ)を求める際には、先に説明した特許文献1の算出原理を利用する。
【0072】
次に、比較部40によって求められた図6(c)の速度スペクトラムから、移動組織の位置と速度を求める処理について説明する。
【0073】
図7は、移動組織のスペクトラム(速度スペクトラム)から移動組織の速度と位置を求める処理を説明するための図である。図7(e)は、図6(c)の速度スペクトラム上に各移動組織の位置を示した図であり、各移動組織の位置が周波数軸上の菱形で示されている。図3を利用して説明したように、複素共役の一方のスペクトラム成分と他方のスペクトラム成分は、ビート周波数(fb)から、互いに反対方向にドプラシフトfdだけずれている。つまり、互いに複素共役の関係にあるスペクトラム間の周波数軸上における距離(周波数の差)は、各移動組織の移動速度に比例したドプラシフトfdの2倍となる。従って、速度スペクトラム内の各移動組織の位置(菱形の位置)を挟んで存在する複素共役のスペクトラム間の周波数差から、その移動組織の速度を求めることができる。
【0074】
図7(f)は、図7(e)に示される各移動組織のスペクトラムのピーク周波数(スペクトラムがピークとなる周波数軸上の位置)とスペクトラムの極性を示した波形である。図7(f)に示す波形は、ピーク検出部42によって求められる。
【0075】
ピーク検出部42は、図7(e)の各スペクトラムのピークを検出してピークとなる周波数を求める。さらに、ピーク検出部42は、各スペクトラムの極性、つまり図7(e)の縦軸の正方向側に現れるスペクトラムか負方向側に現れるスペクトラムかを判断し、スペクトラムの極性に応じて、図7(f)の各ピーク波形を求める。これにより、各ピーク波形は、対応するスペクトラムのピーク位置と極性を示す波形となる。なお、各ピーク波形の振幅は規格化される。例えば、正方向のピークの振幅を「+1」、負方向のピークの振幅を「−1」とすることによりデジタル信号で表現することができる。
【0076】
本実施形態では、図7(f)のように求められた複数のピーク波形について、隣り合うピーク波形同士を加算することにより、同一移動組織から得られるピーク波形の組を導き出す。隣り合うピーク波形同士を加算すると、各ピーク波形が「+1」または「−1」に規格化されているため、隣同士の組み合わせ方により、大別して2通りの加算結果が得られる。例えば、図7(f)に示すように、隣り合うピーク波形同士の加算結果が全て「0」になる組み合わせ方と、隣り合うピーク波形同士の加算結果が「0,0,+2,0,−2,0」になる組み合わせ方が存在する。
【0077】
同一移動組織から得られるスペクトラムは、互いに複素共役の関係にあるため、同一移動組織に対応した二つのピーク波形は、互いに極性が異なり、それら二つのピーク波形同士の加算結果は「0」となる。そこで、隣接ピーク決定部44は、隣り合うピーク波形同士の加算結果が全て「0」になる組み合わせ方を選び出す。
【0078】
隣接ピーク決定部44は、例えば、隣り合うピーク波形の組の加算結果の絶対値を各組ごとに求め、全ての組の絶対値を合計した場合に、その合計値が「0」となる組み合わせ方を選択する。あるいは、その合計値が他の組み合わせに対して小さい方を選択する。例えば、図7(f)に示す例では、隣り合うピーク波形同士の加算結果が全て「0」になる組み合わせ方の場合に絶対値の合計値が「0」となり、隣り合うピーク波形同士の加算結果が「0,0,+2,0,−2,0」になる組み合わせ方の場合には絶対値の合計値が「4」となる。
【0079】
図7(g)は、同一移動組織から得られるピーク波形の組を導き出した結果を示している。図7(g)において、周波数軸上に示される波線は、隣り合うピーク波形同士の組み合わせ方を示すものであり、波線で分断されていないピーク波形同士が、同一移動組織から得られるピーク波形の組となる。同一移動組織から得られるピーク波形の組が決定されると、その組を構成する二つのピーク波形の周波数軸上における中間位置が求められる。
【0080】
図7(h)は、ピーク波形の組ごとに中間位置が求められた結果を示しており、各組の中間位置が周波数軸上の菱形によって示されている。菱形が示す周波数は、各移動組織の位置(深さ)に伴う周波数(図3における周波数差fb)に相当する。したがって、図7(h)に示す菱形の部分の周波数、つまり二つのピーク波形の中間位置から、各移動組織の位置を求めることができる。なお、移動組織の位置に伴う周波数から移動組織の位置を求める際には、先に説明したとおり、特許文献1に記載された原理が利用される。
【0081】
また、二つのピーク波形間の周波数軸上における距離(周波数の差)は、それらピーク波形の組に対応する移動組織の移動速度に比例したドプラシフト(図3におけるfdの2倍)に相当する。したがって、二つのピーク波形間の周波数軸上における距離から、それらのピーク波形に対応した移動組織の移動速度を求めることができる。ドプラシフト成分から速度を求める技術については、従来から公知の技術が利用される。なお、本実施形態において、移動組織の位置と速度は、位置速度情報算出部46によって求められる。
【0082】
隣接ピーク合成部48は、隣接するピーク波形に対応したスペクトラム成分を合成する。つまり、図7(i)に示すように、同一移動組織から得られる互いに複素共役の関係にあるスペクトラム同士を合成し、その移動組織から得られる反射電力に比例した合成スペクトラムを求める。求められた合成スペクトラムは、各移動組織の位置に対応した周波数にシフトされる。隣接ピーク合成部48は、各移動組織ごとに合成スペクトラムを求めて画像形成部50へ出力する。
【0083】
画像形成部50は、隣接ピーク合成部48で求められる図7(i)の合成スペクトラム、位置速度情報算出部46において算出される移動組織の位置と速度、位置情報算出部54において算出される固定組織の位置に基づいて、それらの情報を表示するための表示画像を形成する。表示画像には、様々な態様が考えられる。
【0084】
例えば、図7(i)に示した合成スペクトラムをそのまま表示させてもよい。つまり、横軸を周波数軸として縦軸にスペクトラムの大きさ(電力、密度など)を示すことにより、各移動組織から得られる合成スペクトラムを表示する。各移動組織の合成スペクトラムは、移動組織から得られる反射電力に比例しており、従って、図7(i)に示される表示態様は、その位置(周波数軸上の位置)に存在する移動組織の反射電力の大きさを示すことになる。
【0085】
また、図7(i)の各スペクトラム上に、各移動組織の速度の大きさとその方向を示す矢印の表示態様を重ねて表示させてもよい。つまり、各移動組織の速度の大きさが矢印の長さで表現され、速度の方向が矢印の向きで表現されてもよい。画像形成部50で形成される表示画像は、例えば、モニタに表示され、ユーザはモニタに表示される表示画像から、移動組織の位置と速度を視覚的に確認することができる。
【0086】
なお、超音波ビームを2次元平面内で走査させ、走査によって得られる複数の超音波ビームの各々から、図7(i)に示すスペクトラム表示(合成スペクトラム)を求めることにより、移動組織の位置と速度を2次元断層上で表現することも可能である。例えば、各移動組織の合成スペクトラムが移動組織から得られる反射電力に比例していることから、合成スペクトラムに応じて断層画像上の輝度を設定することにより、Bモード画像に相当する画像を形成することが可能になる。さらに、位置情報算出部54において算出される固定組織の位置情報を反映させた表示画像を形成してもよい。また、断層面に対する速度の極性を色で表示してもよい。例えば、断層面を手前から奥に向う血流を青、奥から手前に向う血流を赤で表示してもよい。
【0087】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本実施形態は、例えば次のような利点を有している。
【0088】
一般に、パルス波を利用する場合(パルス方式の場合)、SNRを向上させるためには、超音波パルスの尖頭値電力を大きくしなければならない。超音波パルスの尖頭値電力を大きくするためには、送信部の回路の高耐圧化や受信側への漏れ防止対策などが必要になるなど、回路構成が複雑になる。もちろん、超音波パルスの尖頭値電力を大きくした場合、ピーク音圧による生体への影響も考慮する必要がある。また、パルス方式で距離分解能を確保する場合、パルスの立ち上がり、立ち下り時間を小さくするために、受信系を広帯域に保つ必要がある。
【0089】
本実施形態では、連続波を利用しているため、復調したベースバンド信号の周波数スペクトラム帯域を狭帯域化することができ、パルス方式に比べて信号対ノイズ比(SNR)の向上が期待できる。しかも、距離分解能をパルス方式と同等に保つことができる。また、本実施形態では、パルス方式の場合に比べて、高耐圧化が不要となるので回路構成を簡単にすることができ、さらに、装置の小型化や低消費電力化にも有利である。
【0090】
また、本実施形態では、連続波を利用しているにも関わらず、対象組織の速度を測定することに加えて、対象組織の位置を測定することができる。さらに、測定速度の上限は、変調周波数によって制限されない。そして、超音波ビーム上に散在する複数の移動組織の速度計測において、従来のパルス方式や従来の連続波ドプラでは測定できなかった低速度の測定も可能になる。
【0091】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上述した実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明に係る超音波診断装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】生体内組織の位置情報が周波数差信号に反映される様子を説明するための図である。
【図3】生体内組織の位置情報と速度情報が周波数差信号に反映される様子を説明するための図である。
【図4】複数の組織部分から得られる複数の反射波が周波数差信号に反映される様子を説明するための図である。
【図5】本実施形態で利用されるのこぎり波を説明するための図である。
【図6】本実施形態で利用される各周波数スペクトラムを説明するための図である。
【図7】移動組織のスペクトラムから移動組織の速度と位置を求める処理を説明するための図である。
【符号の説明】
【0093】
12 のこぎり波発生器、14 FM変調器、34 スペクトラム演算部、46 位置速度情報算出部、50 画像形成部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送波信号に対して変調信号を用いて周波数変調処理を施すことにより変調送信信号を生成する送信信号処理部と、
生成された変調送信信号に対応した超音波を生体に送波し、生体からの反射波を受波して受信信号を取得する送受波部と、
取得された受信信号に対して変調送信信号を用いて復調処理を施すことにより、送受信信号間における周波数差を反映させた周波数差信号を得る受信信号処理部と、
周波数差信号の周波数スペクトラムを求めるスペクトラム演算部と、
周波数差信号の周波数スペクトラムに基づいて生体内組織の位置と速度を求める位置速度演算部と、
を有し、
前記変調信号は、周波数を周期的に増加させる信号部分と周波数を周期的に減少させる信号部分とを含み、これにより、周波数が周期的に増加する増加時間帯と周波数が周期的に減少する減少時間帯とを含んだ変調送信信号が生成され、
前記スペクトラム演算部は、増加時間帯に対応した周波数スペクトラムである増加時間帯スペクトラムと、減少時間帯に対応した周波数スペクトラムである減少時間帯スペクトラムと、を求め、
前記位置速度演算部は、増加時間帯スペクトラムと減少時間帯スペクトラムに基づいて生体内組織の位置と速度を求める、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記位置速度演算部は、増加時間帯スペクトラムと減少時間帯スペクトラムの両方の周波数軸上の互いに等しい位置に現れる固定組織のスペクトラム成分を認識し、固定組織のスペクトラム成分が除去された増加時間帯スペクトラムと減少時間帯スペクトラムを合成することにより得られる速度スペクトラムに基づいて、移動組織の位置と速度を求める、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波診断装置において、
前記位置速度演算部は、速度スペクトラム内において互いに複素共役の関係にある増加時間帯スペクトラム成分と減少時間帯スペクトラム成分との間の周波数差から移動組織の速度を求める、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項3に記載の超音波診断装置において、
前記位置速度演算部は、速度スペクトラム内において互いに複素共役の関係にある増加時間帯スペクトラム成分と減少時間帯スペクトラム成分との間の中間点の周波数から移動組織の位置を求める、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項4に記載の超音波診断装置において、
前記変調信号は、周波数を周期的に直線的に増加させる信号部分と周波数を周期的に直線的に減少させる信号部分とを含んだのこぎり波である、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項5に記載の超音波診断装置において、
前記位置速度演算部は、増加時間帯スペクトラムと減少時間帯スペクトラムの両方の周波数軸上の互いに等しい位置に現れる固定組織のスペクトラム成分を抽出し、固定組織のスペクトラム成分の周波数軸上の位置に基づいて固定組織の位置を求める、
ことを特徴とする超音波診断装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−330541(P2007−330541A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−166408(P2006−166408)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(593165487)学校法人金沢工業大学 (202)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】