説明

路面状態推定方法とその装置、及び、車両制御方法

【課題】タイヤにセンサーを取付けることなく、走行中の路面状態を精度よく推定することのできる方法とその装置を提供する。
【解決手段】ナックル31に設けられて車両バネ下部に伝播されるタイヤ20の振動を検出する加速度センサー11と、タイヤ20の回転速度を検出する車輪速センサー12と、この車輪速センサー12の出力から生成されたサンプリングパルスを用いて、タイヤ20の振動波形を回転次数分析して回転次数スペクトルを求める回転次数比分析手段15と、回転次数スペクトルから複数個の回転次数成分を抽出する回転次数成分抽出手段17と、回転次数成分の大きさと予め設定された閾値とを比較して走行中の路面Rが低μ路面か否かを推定する路面状態推定手段18とを備え、タイヤ周方向に沿って周期的なトレッドパターンを有するタイヤの振動から、走行中の路面Rの状態を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行中の路面の状態を推定する方法とその装置、及び、車両制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の走行安定性を高めるため、タイヤと路面間の摩擦係数(路面摩擦係数)もしくはタイヤの接地状態を精度良く推定し、車両制御へフィードバックすることが求められている。予め路面摩擦係数やタイヤの接地状態を推定することができれば、制駆動や操舵といった危険回避の操作を起こす前に、例えば、ABSブレーキのより高度な制御等が可能になり、安全性が一段と高まることが予想される。
【0003】
路面摩擦係数を推定する方法としては、例えば、車輪速を検出し、この検出された車輪速信号ωから外乱ΔTを受けたときの車輪速変動Δωを検出した後、このΔωを満足する車輪の伝達関数を最小二乗法で同定し、路面μの勾配を推定するとともに、この路面μの勾配と予め求めておいた車両の制動力と路面μの勾配との関係とから車両の制動力を推定し、この制動力と前記路面μの勾配とから、スリップ率が零のときの路面μの勾配を推定する方法(例えば、特許文献1参照)や、図7に示すように、タイヤ50のトレッド51にトレッド表面よりも高さの高いセンシングブロック52Hと、トレッド表面よりも高さの低いセンシングブロック52Lとを形成し、各センシングブロック52H,52Lのタイヤ周方向に平行な側面にそれぞれ歪ゲージ53H,53Lを貼り付けて、前記2つの歪ゲージ53H,53Lで検出した歪レベルの差と、予め求めておいた歪レベル差と路面摩擦係数との関係を示すマップとから路面摩擦係数を推定する方法などが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、車輪速に基づいて求めた路面μの勾配と推定した車両の制動力とからスリップ率が零のときの路面μの勾配を推定する方法では、タイヤ−路面間で発生している力の情報がないため、推定時間を必要とすることから、路面変化に対する追従性に限界があった。
また、高さの異なるセンシングブロック52H,52Lにそれぞれ貼り付けられた歪ゲージ53H,53Lで検出した歪レベルの差から路面摩擦係数を推定する方法では、路面と直接接するブロックに歪ゲージ53H,53Lなどのセンサーを取付ける構成であるため、センサーの耐久性の面で問題がある。
【0005】
そこで、本願出願人は、図8に示すような、リブ61からタイヤ幅方向に突出する擬似ブロック62の蹴り出し端の位置が、タイヤ周方向に一定の周期dで形成されているトレッドパターンを有するタイヤ60を用い、走行中のタイヤ60から車両バネ下部に伝播される、擬似ブロック62の蹴り出し端が路面から離れるときの振動を加速度センサーで検出し、この検出された振動の前記周期dに対応する周波数帯域の振動成分の大きさから走行中の路面状態を推定する方法を提案している(例えば、特許文献3参照)。これにより、タイヤ部にセンサーを設けることなく、走行中の路面状態を精度よく推定することができるだけでなく、センサーの耐久性についても向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−160620号公報
【特許文献2】特開2002−36836号公報
【特許文献3】特開2008−273388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献3に開示された発明では、タイヤ部にセンサーを設けることなく、走行中の路面状態を精度よく推定することができるが、タイヤとして特殊なトレッドパターンを有するタイヤを用いる必要があった。
一般にタイヤのトレッドパターンは、タイヤ周方向に周期的な構造が設けられている。そこで、一般的なトレッドパターンを有するタイヤを用いて走行中のトレッド振動を検出して路面状態を推定する方法が望まれている。
【0008】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、一般的なトレッドパターンを有するタイヤのトレッドの周期的な振動を検出して、走行中の路面の状態を精度よく推定することのできる方法とその装置、及び、路面の状態に基づいて車両の走行状態を制御する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
走行中のタイヤでは、トレッドのブロックが路面を蹴り出す際に発生するトレッド振動の大きさが路面状態により異なることが知られている。本発明者らは、このトレッド振動に起因するタイヤの振動の大きさと路面状態との関係について鋭意検討した結果、タイヤ周方向に沿って周期的なトレッドパターンを有するタイヤに発生する、前記周期に対応したタイヤの振動の回転次数成分の大きさが走行中の路面状態により異なることから、この回転次数成分の大きさを検出することにより、走行中の路面状態をより精度よく推定できることを見出し、本発明に到ったものである。
すなわち、本発明は、走行中の路面の状態を推定する方法であって、タイヤ周方向に沿って周期的なトレッドパターンを有するタイヤの振動を検出して回転次数比分析し、この回転次数比分析して得られたタイヤの振動の回転次数成分の大きさから走行中の路面状態を推定することを特徴とする。
【0010】
回転次数比分析(回転次数分析ともいう)は、回転体の振動を回転速度に同期してサンプリングした信号をFFT(高速フーリエ変換)し、横軸を回転次数(Order)とするパワースペクトルを求めるもので、回転体が1回転したときに1周期となる回転成分を回転1次成分、n周期となる回転成分を回転n次成分という。すなわち、回転次数nは、振動の1周期の角度をθ(deg.)とすると、n=360/θと表わせる。
タイヤの振動の回転次数成分(以下、回転次数成分という)は回転角度に対する周期成分の位相が固定されているので、時間単位で計測する周波数分析と比較して、振動成分を精度良く検出できる。したがって、タイヤ周方向に沿って周期的なトレッドパターンを有するタイヤの回転次数成分の大きさから走行中の路面状態を推定するようにすれば、走行中の路面状態を精度よく推定することができる。
なお、タイヤは、ストレートリブのみを有するタイヤのような特別のタイヤを除いては、周期的なトレッドパターンを有するので、本願発明で用いられる「タイヤ周方向に沿って周期的なトレッドパターンを有するタイヤ」としては、前記特許文献3に開示されているような特別な周期性をもつトレッドパターンを有するタイヤである必要はなく、ブロックパターンを有するタイヤやラグ溝を有するタイヤなどの、一般に使用されているタイヤであってよい。
【0011】
また、本発明は、路面状態の推定に用いる回転次数成分を、次数が10次以上80次以下の回転次数成分としたことを特徴とする。次数が10次未満である回転次数成分は、路面の凹凸に起因するノイズの影響を受け易いので、検出精度が低下する恐れがある。一方、次数が80次を超える回転次数成分は周期が短すぎるので、タイヤの周期性を反映していない成分である可能性が高い。したがって、路面状態の推定に用いる回転次数成分を、次数が10次以上80次以下の回転次数成分とすれば、路面状態の推定精度を向上させることができる。
【0012】
また、本発明は、回転次数成分を複数個としたことを特徴とする。このように、複数個の回転次数成分の大きさから路面状態を推定するようにすれば、1個の回転次数成分で推定した場合に比較して路面状態の検出精度が向上するとともに、車輪の回転速度によって変化するタイヤの共振振動による誤推定の確率を低下させることができる。なお、1個の回転次数成分で路面状態を推定した場合でも、推定に用いる回転次数をタイヤの共振振動の回転次数と重ならないようにすれば、タイヤの共振振動による誤推定を避けることができることは言うまでもない。
【0013】
また、本発明は、タイヤの回転速度を検出し、この回転速度を用いて、予め求めておいた前記タイヤの共振周波数に相当する回転次数を算出するとともに、前記路面状態を推定する際に用いる回転次数成分から、前記タイヤの共振周波数に相当する回転次数成分を除外することを特徴とする。これにより、路面状態を推定するための回転次数成分を容易に選択することができる。
また、本発明は、前記タイヤの振動を車両バネ下部にて検出するようにしたことを特徴とする。これにより、タイヤ部にセンサーを設けることなく、走行中の路面状態を精度よく推定することができる。また、タイヤへのセンサー取付けが不要になるので、タイヤの生産効率が向上する。また、タイヤ部にセンサーを装着した場合に比較してセンサーの耐久性を向上させることができるだけでなく、センサーの交換も容易となる。
また、本発明は、タイヤの回転速度を検出するとともに、前記タイヤの振動を、前記検出されたタイヤの回転速度に同期してサンプリングすることを特徴とする。これにより、簡単な構成でタイヤの振動の回転次数比分析を行うことができる。
【0014】
また、本発明は、車両の走行状態を制御する際に、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の路面状態推定方法により推定した路面状態に基づいて車両の走行状態を制御することを特徴とする。このように、推定された路面状態に基づいて、ABSブレーキ等を制御して車両の走行状態を制御すれば、車両の安全性を更に高めることができる。
【0015】
また、本発明は、走行中の路面の状態を推定する装置であって、タイヤ周方向に沿って周期的なトレッドパターンを有するタイヤと、車両バネ下部に設置されて車両バネ下部に伝播されるタイヤの振動を検出する振動検出手段と、前記タイヤの回転速度を検出する回転速度検出手段と、前記振動検出手段で検出されたタイヤの振動を、前記回転速度検出手段で検出されたタイヤの回転速度のデータを用いてサンプリングして、回転次数比分析する回転次数比分析手段と、前記回転次数比分析手段で得られた回転次数成分から複数の回転次数成分を抽出する回転次数成分抽出手段と、前記抽出された複数の回転次数成分の大きさに基づいて路面状態を推定する路面状態推定手段とを備えたことを特徴とする。このような構成を採ることにより、タイヤ部にセンサーを設けることなく、走行中の路面状態を精度よく推定することができるとともに、車輪の回転速度によって変化するタイヤの共振振動による誤推定の確率を低下させることができる。
【0016】
また、本発明は、路面状態を推定するための回転次数成分を容易に選択することができるようにするため、回転速度検出手段で検出した回転速度を用いて、予め求めておいたタイヤの共振周波数に相当する回転次数を算出する共振次数算出手段を設けるとともに、回転次数成分抽出手段において、路面状態を推定する際に用いる回転次数成分から、前記タイヤの共振周波数に相当する回転次数成分を除外するようにしたものである。
【0017】
なお、前記発明の概要は、本発明の必要な全ての特徴を列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施の形態に係る路面状態推定装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】使用タイヤのトレッドパターンの一例を示す図である。
【図3】回転次数スペクトルの一例を示す図である。
【図4】トレッドパターン設計図から求めた周期スペクトルと回転次数スペクトルとを比較した図である。
【図5】回転次数が27次の振動ピークの高さの分布を示すヒストグラムである。
【図6】回転次数成分の大きさの出現確率を示す分布曲線である。
【図7】従来の路面摩擦係数の推定方法を示す図である。
【図8】従来の路面状態の推定方法の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施の形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また、実施の形態の中で説明される特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0020】
図1は、本実施の形態に係る路面状態推定装置10の機能ブロック図である。
路面状態推定装置10は、振動検出手段としての加速度センサー11と、回転速度検出手段としての車輪速センサー12と、回転信号生成手段13と、記憶手段14と、回転次数比分析手段15と、共振次数算出手段16と、回転次数成分抽出手段17と、路面状態推定手段18と、警報手段19とを備え、タイヤ周方向に沿って周期的なトレッドパターンを有するタイヤ20に発生して車両バネ下部に伝達され、加速度センサー11にて検出されるタイヤの振動を回転次数比分析して、得られたタイヤの振動の回転次数成分の大きさから走行中の路面Rが低μ路面であるか否かを推定し、路面Rが低μ路面である場合には、運転者に音や光、表示などによる警報を発することができる。また、路面Rが低μ路面であるという情報を車両の走行状態を制御する車両制御手段40に出力して、ABSなどによる車両制御を行うことができる。
【0021】
タイヤ20としては、例えば、図2に示すような、トレッド21のタイヤ幅方向中央部とショルダー部とに、タイヤ周方向にブロックが配列されたブロックパターンを有するタイヤを用いた。このタイヤ20は、周方向溝22〜24とこれらの周方向溝22〜24に交差する方向に延長するラグ溝25とを備えており、周方向溝22,23とラグ溝25、及び、周方向溝23,24とラグ溝25とにより区画され、タイヤセンターCLのタイヤ幅方向両側に配列された複数のセンターブロック26と、タイヤ幅方向外側に位置する周方向溝(ショルダー溝)22,24のタイヤ幅方向外側に位置する複数のショルダーブロック27とを備えている。
【0022】
加速度センサー11は、図1に示すように、ナックル31に取り付けられて、ホイール32、ホイールハブ33を介してナックル31に伝播されるタイヤ20の振動(以下、タイヤ振動という)を検出する。加速度センサー11の検出方向はタイヤ前後方向である。
ナックル31は、タイヤ20を装着するホイール32とともに回転するホイールハブ33と軸受けを介して連結された車輪部30の非回転側部品(車両バネ下部品)で、このナックル31に図示しないブレーキ装置などが装着される。ナックル31はサスペンション部材34を備えた車両懸架装置の上下のアーム35,36と、ゴムブッシュなどの緩衝部材37,38を介して連結されている。
なお、加速度センサー11を、上下のアーム35,36などの、ホイール32と緩衝部材37,38を介して連結されている部材に取り付けると、緩衝部材37,38のダンパー効果によりトレッド21の振動の検出精度が低下する。したがって、加速度センサー11の取り付け箇所としては、車両バネ下部であっても、緩衝部材37,38よりもホイール32側に設置した方が当該タイヤ20から車両バネ下部に伝播される振動を精度良く検出することができる。
【0023】
車輪速センサー12は車輪の回転速度(以下、車輪速という)を検出するもので、本例では、外周部に歯車が形成され車輪とともに回転するローターと、このローターと磁気回路を構成するヨークと、磁気回路の磁束変化を検出するコイルとを備え、車輪の回転角度を検出する周知の電磁誘導型の車輪速センサーを用いている。ヨークとコイルとはナックル31に装着される。なお、車輪速センサー12としては、リング多極マグネットと磁気抵抗素子とを組み合わせたものなど、他の構成の車輪速センサーを用いてもよい。あるいは、図示しないトランスミッションの回転速度を検出し、これを車輪速としてもよい。
回転信号生成手段13は、車輪速センサー12の出力のゼロクロス点で立ち上がるパルス信号を生成して出力する。タイヤ1回転で生成されるパルス数は、ローターの歯車数もしくはリング多極マグネットの磁極数の2倍となる。したがって、パルス数を計数することで車輪速を検出することができるとともに、回転信号生成手段13から出力されるパルス信号をサンプリングクロックとして使用することができる。サンプリングクロックは、回転速度に同期しているので、このサンプリングクロックを用いて加速度センサー11で検出したタイヤ振動をサンプリングすれば、1回転あたりのサンプル数が車輪速に関わらず一定となる。但し、時間的にみると、サンプリング間隔は、車輪速が遅いほど狭く、車輪速が速くなると広がる。
【0024】
記憶手段14は、タイヤ20の固有振動周波数frと帯域幅Δfrと、図4に示すような、使用するタイヤ20のトレッドパターン設計図から求めた周期スペクトルに対応するタイヤ振動の回転次数のうちの、路面状態の推定に用いる回転次数njとを記憶して保存する。
回転次数比分析手段15は、ローパスフィルタ15aと、サンプリング手段15bと、分析手段15cとを備える。
ローパスフィルタ15aは、加速度センサー11で検出したタイヤ振動の高周波成分を除去するとともに、回転次数比分析におけるエリアジング現象(折り返し)の発生を抑制する。
サンプリング手段15bでは、まず、回転信号生成手段13から出力されるサンプリングクロックを用いて加速度センサー11で検出したタイヤ振動をサンプリングする。
分析手段15cは、このサンプリングし直されたタイヤ振動の振動波形をFFT処理して振動スペクトルを求める。時間間隔一定で計測された振動波形の振動スペクトル(周波数スペクトル)の横軸は周波数となるが、回転間隔一定で計測された振動波形の振動スペクトルの横軸は回転次数(Order)nとなる。
【0025】
図3は回転次数比分析により得られた振動スペクトル(以下、回転次数スペクトルという)の一例を示す図で、同図の細い実線が高μ路面(μ≒1.0)を走行した時の回転次数スペクトル、同図の太い実線が低μ路面(μ≒0.24)を走行した時の回転次数スペクトルである。なお、本例では、高μ路面としてはドライアスファルト、低μ路面としてはブラックアイスバーンの路面状態で実験した。車両の走行速度は40km/hである。同図の矢印で示す19次のピークは、タイヤ1回転で19回振動が発生することに対応し、27次のピークは、タイヤ1回転で27回振動が発生することに対応する。36次、54次についても同様である。
図4は、当該タイヤ20のトレッドパターンの設計図から求めた周期スペクトル(トレッドパターンの周期スペクトル)と、走行中のタイヤ20の振動を計測しこれを回転次数比分析して得られた回転次数スペクトルとを比較した図である。同図から明らかなように、計測した回転次数スペクトルとトレッドパターンの周期スペクトルとの間には、ピークに明確な対応が見られる。したがって、タイヤ振動の回転次数成分がトレッドパターンの周期成分と関係していることがわかる。
なお、加速度センサー11で検出したタイヤ振動を時間間隔一定でサンプリングした場合、速度変動のために、回転間隔は不均一になるが、Lomb-ScarglePeriodgram(Scargle, J.D. 1982, The Astrophysical
Journal, 263,835)に代表される、不均一間隔でサンプリングしたデータから振動スペクトルを推定する手法を用いれば、前記の回転間隔一定のサンプリングを行わなくとも、回転次数スペクトルを求めることができる。
【0026】
共振次数算出手段16は、車輪速センサー12から出力される車輪速と予め記憶手段14に保存されている当該タイヤ20の固有振動周波数fr及び帯域幅Δfrとから、当該タイヤ20の共振に基づく振動成分の回転次数である共振次数nrと共振領域の幅である次数幅Δnrとを算出し、これを回転次数成分抽出手段17に出力する。
回転次数成分抽出手段17は、回転次数比分析手段15で求めた回転次数スペクトルから、予め設定された複数個のピークの振動レベルを抽出する。本例では、回転次数nがそれぞれ、19次、27次、36次、54次の4つのピークの振動レベルを抽出する。
図3に示すように、回転次数スペクトルでは、10次未満の回転次数成分は路面の影響を受けやすい。一方、試験に用いたタイヤのブロック数は周上58個であるので、80次を超える周期の短い回転次数成分はタイヤの周期性を反映していない成分である。したがって、本例では、回転次数nが10次以上80次以下の範囲で、かつ、各々が互いに近づかないような位置を4つ(19次、27次、36次、54次)選択し、これらの回転次数成分の大きさを路面状態の推定に用いるようにしている。
【0027】
路面状態の推定に用いる回転次数成分を複数用いる理由としては、複数箇所で推定することで推定精度を向上させることの他に、タイヤ共振の影響を除去することにある。
タイヤの固有振動周波数frは、通常、200Hz付近にあることが知られている。周波数分析において用いられる周波数スペクトルでは、タイヤの固有振動に起因するタイヤ共振は車輪速に依存しないが、回転次数比分析により得られる回転次数スペクトルでは、タイヤ共振の回転次数である共振次数nrは、車輪速が速くなるほど小さくなる。換言すれば、回転次数スペクトルにおいては、タイヤ共振のピークが出現する共振次数nrの位置が車輪速の上昇に伴って低次数側に移動する。回転次数スペクトルにおける共振領域は、共振次数をnr、次数幅をΔnrとすると、nr−(Δnr/2)≦n≦nr+(Δnr/2)で表わせる。実験の結果、この共振領域ではピーク強度に信頼性がないことがわかった。すなわち、回転次数成分の大きさであるピーク高さは、路面摩擦係数μの低下に伴って低下するが、共振領域ではこれが逆転するケースがある。
なお、共振領域の幅である次数幅Δnrの大きさはタイヤ種により適宜決定されるもので、おおよその大きさとしては10〜15程度である。
回転次数成分抽出手段17では、路面状態の推定に用いる複数の回転次数(ここでは、19次、27次、36次、54次の4つの回転次数)を選択し、これらの回転次数の振動レベルである回転次数成分を抽出し、路面状態推定手段18に出力する。本例では、回転次数成分抽出手段17に、共振次数算出手段16で算出した共振次数nrと次数幅Δnrとが入力することで、共振領域[nr−(Δnr/2),nr+(Δnr/2)]にある次数については、回転次数成分の抽出を行わないようにしている。
【0028】
路面状態推定手段18は、データ蓄積手段18aと、ピーク値演算手段18bと、路面推定手段18cとを備える。
データ蓄積手段18aは、回転次数成分抽出手段17から入力された複数の回転次数成分の大きさのデータを回転次数毎に保存する。データは1秒間のデータを1単位とし、ラベル付けされて蓄積される。
本例では、回転次数成分の大きさを回転次数スペクトルにおけるピーク高さの絶対値ではなく、ピーク形状としての高さを用いている。例えば、27次の回転次数成分の大きさとして、回転次数スペクトルの27次のピーク値と27.4次のスペクトル値との差を27次のピーク高さとしている。
図5は、データ蓄積手段18aに蓄積された1秒ごとに求めた27次の振動ピークの高さの分布を示すヒストグラムで、白抜きの棒が高μ路面(μ≒1.0)走行時の振動ピークの高さの分布で、編み目模様の棒が低μ路面(μ≒0.24)走行時の振動ピークの高さの分布である。本例で用いられているタイヤ20のような一般的なタイヤでは、トレッドパターンに起因するロードノイズ(パターンノイズ)を抑制するため、ラグ溝のピッチを2ピッチバリエーションあるいは3ピッチバリエーションにするなど、タイヤ周方向の周期性をなるべくなくすようにしている。そのため、回転次数成分の大きさは、図5に示すような分布を持つ。
【0029】
ピーク値演算手段18bでは、データ蓄積手段18aに蓄積された回転次数成分の大きさの1秒間のデータから、各回転次数成分の大きさであるピーク値を演算する。具体的には、図5に示す分布が正規分布に従うものとして、回転次数成分毎に、振動ピークの高さの分布曲線を求め、この分布曲線から回転次数成分の大きさであるピーク値を求める。
図6はその一例を示す図で、同図の実線が高μ路面(μ≒1.0)を走行した時の回転次数成分の大きさの分布曲線で、破線が低μ路面(μ≒0.24)を走行した時の回転次数成分の大きさの分布曲線である。図6において、横軸は振動ピークの高さで縦軸はその出現確率を示す。この分布曲線におけるピークの高さ、すなわち、出現確率が最も高い振動ピークの高さがピーク値(回転次数成分の大きさ)である。
【0030】
路面推定手段18cは、ピーク値演算手段18bで演算された各回転次数成分のピーク値と予め設定された閾値Kとを比較して、走行中の路面が低μ路面であるか否かを推定する。この閾値Kは、回転次数毎に設定される。本例では、共振領域にある36次のピーク値P3を除く、19次、27次、54次のピーク値Pj(j=1,2,4)をそれぞれの閾値Kj(j=1,2,4)と比較する。閾値Kj(j=1〜4)は、試験車両を予め高μ路面と低μ路面にて走行させて、図6に示すような回転次数成分の分布曲線を回転次数毎に求めておき、高μ路面のピークと低μ路面のピークの中間値のピーク高さを用いるなどすればよい。
路面推定手段18cでは、ピーク値演算手段18bで演算された回転次数成分のピーク値Pj(j=1〜4)のうち、閾値Kj(j=1〜4)よりも小さいものが2つ以上あった場合に、走行中の路面が低μ路面であると推定する。
走行中の路面が低μ路面であると推定された場合には、路面状態推定手段18は警報手段19に、路面が低μ路面であるという信号を出力する。
警報手段19は、運転席近傍に設置されて、路面が低μ路面であるという信号が入力されたときに、警報用のLEDを点灯もしくは点滅させるなどしてドライバーに路面が低μ路面であることを認識させる。なお、警報用のブザーを駆動し、警報音により、ドライバーに路面が低μ路面であることを認識させるようにしてもよいし、警報用のブザーとLEDとを併用してもよい。
【0031】
次に、本実施の形態に係る路面状態の推定方法について説明する。
まず、加速度センサー11によりナックル31に伝播されたタイヤ20の振動波形を検出するとともに、車輪速センサー12により車輪速を検出する。
次に、タイヤ20の振動波形を回転次数比分析手段15にて回転次数比分析し、図3に示すような、横軸を回転次数とする回転次数スペクトルを求める。
回転次数スペクトルは、加速度センサー11で検出したタイヤ振動を、車輪速センサー12から出力される車輪速と回転信号生成手段13から出力されるパルス信号とに基づいてサンプリングした後、FFT処理して求められる。
そして、回転次数スペクトルから、回転次数が10次以上80次以下の複数個の回転次数成分を抽出する。なお、当該タイヤ20の固有振動周波数fr及び固有振動の帯域幅Δfrとから、当該タイヤ20の共振領域を求めるとともに、共振領域にある回転次数成分については抽出しないようにしてもよい。
路面状態の推定は、回転次数スペクトルから求めた、複数の回転次数成分の大きさと予め設定された閾値Kとを比較し、走行中の路面が低μ路面であるか否かを推定する。このとき、回転次数成分の大きさを蓄積したデータから、振動ピークの高さの分布曲線を求め、この分布曲線から回転次数成分の大きさであるピーク値を求め、このピーク値を回転次数成分の大きさとすることにより、回転次数成分の大きさを安定してかつ確実に求めることができる。
走行中の路面が低μ路面であると推定された場合には、警報用のLEDを点灯もしくは点滅させるなどしてドライバーに路面が低μ路面であることを認識させるとともに、路面が低μ路面であるという情報を車両制御手段40に出力して、ABSなどによる車両制御を行う。
【0032】
このように本実施の形態では、ナックル31に設けられて車両バネ下部に伝播されるタイヤ20の振動を検出する加速度センサー11と、タイヤ20の回転速度を検出する車輪速センサー12と、この車輪速センサー12の出力から生成されるサンプリングパルスを用いて、タイヤ20の振動波形を回転次数分析して回転次数スペクトルを求める回転次数比分析手段15と、この回転次数スペクトルから複数個の回転次数成分を抽出する回転次数成分抽出手段17と、回転次数成分の大きさと予め設定された閾値とを比較して走行中の路面が低μ路面か否かを推定する路面状態推定手段18とを備えた路面状態推定装置10を用い、加速度センサー11で検出した、タイヤ周方向に沿って周期的なトレッドパターンを有するタイヤの振動から、走行中の路面Rが低μ路面であるか否かを推定するようにしたので、タイヤ部にセンサーを設けることなく、走行中の路面状態を精度よく推定することができる。
また、本発明の路面状態推定装置10は路面の実効的な摩擦係数を推定できるので、本推定結果を、例えば、制御余裕の目安(例としては路面摩擦係数が低くグリップ状態が悪ければ、過大な制動力を加えられない)などの車両挙動の制御に用いることができる。
したがって、本発明の路面状態推定装置10で推定された路面状態の情報を車両制御手段40に出力して、車両の走行状態を制御するようにすれば、ABSブレーキのより高度な制御等が可能になり、車両の安全性を更に高めることができる。
【0033】
なお、前記実施の形態では、タイヤとして、センターブロック26とショルダーブロック27とを備えたブロックパターンを有するタイヤ20を用いたが、これに限るものではなく、例えば、周方向に連続するリブからタイヤ幅方向に突出する擬似ブロックがタイヤ周方向に配列されたトレッドパターンを有するタイヤなど、タイヤ周方向に周期的なトレッドパターンを有するタイヤであればよい。
【0034】
また、上記例では、回転次数nがそれぞれ、19次、27次、36次、54次のピークの振動レベルを抽出したが、これに限るものではなく、回転次数nが10次以上80次以下の範囲で、かつ、各々が互いに近づかないような複数の位置を選択し、これらの回転次数の振動レベルを路面状態の推定に用いるようにしてもよい。なお、回転次数の選択は、図4に示したような当該タイヤのトレッドパターン設計図から求めた周期スペクトルを参照して選択されることはいうまでもない。
また、上記例では、共振領域[nr−(Δnr/2),nr+(Δnr/2)]にある次数については、回転次数成分の抽出を行わないようにしたが、路面を推定する判定基準が、例えば、回転次数成分のピーク値のうち、閾値Kよりも小さいものが2つ以上あったときに走行中の路面が低μ路面であるとした場合には、共振次数算出手段16を省略し、4つの回転次数の回転次数成分を路面状態推定手段18に出力するようにしてもよい。
【0035】
なお、制約はあるが、1個の回転次数成分から路面状態を推定することも可能である。
具体的には、予め車輪速毎に抽出する回転次数成分を決めておき、回転次数成分抽出手段17では、車輪速センサー12で検出された車輪速に応じて、回転次数スペクトルから抽出する回転次数成分を決定すればよい。なお、車輪速毎に抽出する回転次数成分は、車輪速毎に予測される共振領域にはない回転次数成分とすることは言うまでもない。
【0036】
また、上記例では、車輪速センサー12の出力を回転信号生成手段13に送って、サンプリングクロックを生成し、これを回転次数比分析手段15に出力するようにしたが、車両制御手段40にCAN(コントローラ・エリア・ネットワーク)が形成されている車両では、車輪速をCANから取得することが好ましい。これにより、車輪速センサー12の分解能が低い場合でも、車輪速を正確に求めることができる。
【0037】
また、上記例では、低μ路面であるか否かを推定したが、閾値Kを2個設けて路面状態を3つ以上の状態に分け、ピーク値演算手段18bで演算したピーク値が第1の閾値以下の場合には低μ路面と推定し、ピーク値が第1の閾値よりも大きく、かつ、第1の閾値よりも大きな第2の閾値以下の場合には中μ路面と推定し、ピーク値が第2の閾値よりも大きい場合には高μ路面と推定するなどしてもよい。
また、上記例では、回転次数毎に予め閾値Kを設けて、路面が低μ路面であるか否かを推定したが、予め高μ路面走行時の回転次数スペクトルを求めてこれをマスターデータとして記憶しておき、このマスターデータと回転次数成分抽出手段17から入力された複数の回転次数成分の大きさ、もしくは、ピーク値演算手段18bで演算したピーク値とを比較して、路面が低μ路面であるか否かを推定してもよい。
[実施例]
【0038】
タイヤサイズが225/55R17のスタッドレスタイヤで、図2に示すようなトレッドパターンを有するタイヤを作製し、このタイヤを左前輪に装着した車両に本発明による路面状態推定装置を搭載し、公道ドライアスファルト(μ≒1.0)と公道ブラックアイスバーン(μ≒0.24)をそれぞれ速度は40km/hで走行させて、加速度及び車輪速を計測し、1秒毎に回転次数スペクトルを求めた。そして、得られた回転次数スペクトルを用いて走行時の路面状態を推定するとともに、各公道における、1分間における路面推定結果の正答率を求めた。その結果を、以下の表1に示す。
なお、加速度センサーは、左前輪のナックルに、検出方向が車両前後方向になるよう取り付けた。
【表1】

表1から明らかなように、走行路の推定結果の正答率は70%を超えており、特に、低μ路面である公道ブラックアイスバーン(μ≒0.24)では、100%に近い正答率が得られたことから、本発明による路面状態推定装置を用いて低μ路面か否かを判定するようにすれば、走行中の路面状態を精度よく推定することができることが確認された。
【0039】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上説明したように、本発明によれば、一般的なトレッドパターンを有するタイヤを用い、かつ、タイヤにセンサーを設けることなく、走行中の路面の状態を精度よく推定することができる、耐久性に優れた路面状態推定装置を提供することができる。
また、この路面状態推定装置で推定された路面状態に基づいて車両の走行状態を制御するようにすれば、車両の走行安全性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0041】
10 路面状態推定装置、11 加速度センサー、12 車輪速センサー、
13 回転信号生成手段、14 記憶手段、15 回転次数比分析手段、
15a ローパスフィルタ、15b サンプリング手段、15c 分析手段、
16 共振次数算出手段、17 回転次数成分抽出手段、18 路面状態推定手段、
18a データ蓄積手段、18b ピーク値演算手段、18c 路面推定手段、
20 タイヤ、21 トレッド、22〜24 周方向溝、25 ラグ溝、
26 センターブロック、27 ショルダーブロック、
30 車輪部、31 ナックル、32 ホイール、33 ホイールハブ、
34 サスペンション部材、35 上アーム、36 下アーム、37,38 緩衝部材、
40 車両制御手段、R 路面。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に沿って周期的なトレッドパターンを有するタイヤの振動を検出して回転次数比分析し、この回転次数比分析して得られたタイヤの振動の回転次数成分の大きさから走行中の路面状態を推定することを特徴とする路面状態推定方法。
【請求項2】
前記回転次数成分が、10次以上80次以下の回転次数成分であることを特徴とする請求項1に記載の路面状態推定方法。
【請求項3】
前記回転次数成分を複数個としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の路面状態推定方法。
【請求項4】
前記タイヤの回転速度を検出し、この回転速度を用いて、予め求めておいた前記タイヤの共振周波数に相当する回転次数を算出するとともに、前記路面状態を推定する際に用いる回転次数成分から、前記タイヤの共振周波数に相当する回転次数成分を除外することを特徴とする請求項3に記載の路面状態推定方法。
【請求項5】
前記タイヤの振動を車両バネ下部にて検出するようにしたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の路面状態推定方法。
【請求項6】
前記タイヤの回転速度を検出するとともに、前記タイヤの振動を、前記検出されたタイヤの回転速度に同期してサンプリングすることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の路面状態推定方法。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の路面状態推定方法により推定した路面状態に基づいて車両の走行状態を制御することを特徴とする車両制御方法。
【請求項8】
タイヤ周方向に沿って周期的なトレッドパターンを有するタイヤと、
車両バネ下部に設置されて車両バネ下部に伝播されるタイヤの振動を検出する振動検出手段と、
前記タイヤの回転速度を検出する回転速度検出手段と、
前記振動検出手段で検出されたタイヤの振動を、前記回転速度検出手段により検出されたタイヤの回転速度のデータを用いてサンプリングして、回転次数比分析する回転次数比分析手段と、
前記回転次数比分析手段で得られた回転次数成分から複数の回転次数成分を抽出する回転次数成分抽出手段と、
前記抽出された複数の回転次数成分の大きさに基づいて路面状態を推定する路面状態推定手段とを備えたことを特徴とする路面状態推定装置。
【請求項9】
前記回転速度検出手段で検出した回転速度を用いて、予め求めておいた前記タイヤの共振周波数に相当する回転次数を算出する共振次数算出手段を設けるとともに、
前記回転次数成分抽出手段は、路面状態を推定する際に用いる回転次数成分から、前記タイヤの共振周波数に相当する回転次数成分を除外することを特徴とする請求項8に記載の路面状態推定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−264917(P2010−264917A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119013(P2009−119013)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】