説明

車両と衝突対象の間の相対速度を突き止める装置

車両と衝突対象の間の相対速度を突き止める装置を提案する。この装置は車両自体内に配置されている。この装置はアクティブな周辺センサシステム(10)とコンタクトセンサシステム(11)を有している。この装置は周辺センサシステム(10)の第1の信号とコンタクトセンサシステム(11)の第2の信号に基づいて相対速度を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来技術
本発明は、独立請求項の上位概念に記載された、車両と衝突対象の間の相対速度を突き止める装置から出発する。
【0002】
DE19817334C1号から、乗員保護装置のトリガ閾値を整合させる方法が公知である。ここではトリガ閾値がプレクラッシュ信号および衝突信号に依存して低減される。衝突センサとしては、ファイバー光学式負荷センサが提案される。この負荷センサは、少なくとも1つの、事故状況に対して典型的な衝突面に設けられ、光ファイバー装置に力が作用したときに、光出力端部で光測定部によって測定される光出力が変化する。これに依存して、衝突信号が送出される。この衝突信号は、例えばANDゲートにおいてプレクラッシュ信号と論理的に結合される。これによって、加速度センサの信号に基づいて行われる、衝突閾値の低減が可能になる。
【0003】
発明の利点
独立請求項の特徴部分に記載された構成を有する、車両と衝突対象の間の相対速度を突き止める本発明の装置は、従来技術に対して次のような利点を有している。すなわちここでは、衝突対象と車両の間の相対速度がプレクラッシュセンサの信号のみによって定められるのではなく、コンタクトセンサの信号も用いて定められるという利点を有している。殊に、事故の最終段階では、相当のブレーキ過程が生じる。従って、プレクラッシュセンサが単独で突き止めた相対速度は、過大見積もりとなり得る。これは、コンタクトセンサの信号によって修正される。ここでは今度は、この信号も相対速度を求めるために使用される。周辺センサシステムまたはプレクラッシュセンサシステムは、種々異なる周辺センサタイプによって構築されている。相対速度を突き止めることによって、拘束手段またはアクチュエータ装置が一般的に相応して使用される。なぜなら、相対速度によって事故の程度が明確に定められるからである。殊に、超音波センサを周辺センサとして使用する場合には、コンタクトセンサによって速度領域が拡張される。しかしいわゆるロングレンジレーダーセンサ(例えば77GHzの場合)のようなレーダーセンサの場合にも、殊に速度が低い場合には、車両前の0〜2メートルの領域における制動または加速によって、レーダーセンサによって測定された速度の大きな変化が生じ得る。上述した衝突速度のこのような不確実性によって、接近速度に関する情報は非常に制限されてしか、不可逆性(irreversiblen)拘束手段のトリガの制御に使用されない。
【0004】
コンタクトセンサシステムを用いることによって、正確な接触時点が定められる。レーダーセンサによって予測された衝突時点とコンタクトセンサによって測定された衝突時点との間に相対的な差がある場合には、次のことが推測される。すなわちレーダーセンサが感知しない領域で対象が加速された、ないし制動されたことが推測される。見積もられた衝突時点と測定された衝突時点との間の差から、速度見積もりが修正され、エアバッグトリガないしはシートベルトプリテンショナートリガがこの衝突速度を使用して最適化される。この場合には相応に、拘束手段に対するトリガ閾値を変えることも可能である。しかしトリガ信号を変えることもここでは可能である。超音波センサとコンタクトセンサを組み合わせる場合には、この状況は別である。従って、目下は、速度測定に対する上方測定限界は、超音波センサのみの場合には約40Km/hである。対象が車両に向かってより速く動く場合、超音波センサが速度を計算するために充分に測定時点を検出することができない恐れがある。例えばより速い速度または超音波センサのより低いセンサQ値に基づいて、2つまたは3つの、対象の距離点しか既知でない場合、この距離情報およびコンタクトセンサによって測定された接触時点から速度が計算される。これはその後、エアバッグトリガアルゴリズムにおいて使用される。従ってより速い速度(例えば40km/hを超える領域)に対する速度情報も得られる。このような速度領域では超音波センサ単独ではもはや状況を示すデータを供給することはできない。
【0005】
超音波センサのレーダーセンサとコンタクトセンサの組み合わせも、車両内に組み込み可能である。この組み合わせによっても同じように、検出領域が拡張される。さらに、あるセンサシステムから次のセンサシステムへの対象の引き渡しも実行可能である。これによって例えば対象の妥当性検査が容易になる。この情報によって、拘束手段トリガも可逆拘束手段のアクティブ化も改善される。付加的に、歩行者センシングを改善するために周辺センサシステムがこの情報を使用する。これは、例えば対象速度が歩行者速度を超えている場合、歩行者識別の準備ないしは推測基準の導入によって可能になる。
【0006】
従属請求項に記載された方法および発展形態によって、独立請求項に記載された、車両と衝突対象の間の相対速度を突き止める装置がさらに改善される。
【0007】
特に有利には、コンタクトセンサシステムはピエゾケーブルを有している。このピエゾケーブルは、車両外部被覆部(Fahrzeugaussenhaut)に配置されている。この種のピエゾケーブルは容量性、圧電性であり、ケーブルの伸張時の抵抗変化によって、コンタクトセンサとして衝突に反応する。このようにして固有の種々異なる測定原則が提供されるので、非常に確実なコンタクトセンサが得られる。択一的に、コンタクト路(Kontaktbahnen)のようなスイッチも可能である。これらのコンタクト路は衝突時に圧縮され、これによって衝突対象との接触が非常に確実に検出される。しかし、他のコンタクトセンサも可能である。ここでは例えば、車両正面内に組み込まれた、加速度に基づいたセンサが挙げられる。これは例えばアップフロントセンサであり、これは通常のクラッシュセンサより敏感に較正されている。
【0008】
さらに有利には、周辺センサシステムは超音波センサないしレーダーセンサだけではなく、PMDセンサ(フォトミキサーデバイス:Photo Mixer Device)も含む。このようなセンサではセンサは周囲を光で照らし、受光部は、三次元画像を得るために伝播時間を測定する。
【0009】
図面
本発明の実施例を図示し、以下でより詳細に説明する。
【0010】
図1には、本発明による装置のブロック回路図が示されており、
図2には、第1のフローチャートが示されており、
図3には、第2のフローチャートが示されている。
【0011】
説明
周辺センサとしてのレーダーセンサおよび超音波センサは、殊に、オートマチッククルーズコントロールまたは駐車補助等の快適性機能用に開発されてきた。しかしプレクラッシュセンサとしても、この種の周辺センサは既に提案されている。歩行者保護の分野においては目下、コンタクトセンサが開発されている。
【0012】
本発明では、衝突時点での相対速度を突き止めることは、周辺センサシステムの信号とコンタクトセンサシステムの信号を組み合わせることによって行われる。周辺センサシステムとしては、殊に、例えば77GHzでのロングレンジレーダ(LRR)または超音波センサシステムが使用され、コンタクトセンサとしては例えばピエゾケーブルまたはスイッチが使用される。しかし、他のコンタクトセンサも公知である。有利にはコンタクトセンサを使用することによって、相対速度を求めるための検出領域が拡大される。レーダーセンサ、超音波センサおよびコンタクトセンサの使用は、衝突対象の完璧な追跡を確実にする。同時に、コンタクトセンサは妥当性センサとして使用される。全体的に本発明の装置によって、車両乗員の安全性が高められる。
【0013】
図1には、本発明による装置のブロック回路図が示されている。周辺センサシステム10とコンタクトセンサシステム11は、拘束手段の駆動制御のためにそれぞれ制御装置12に接続されている。周辺センサシステム10も、コンタクトセンサシステム11も車両正面に配置されている。しかし、車両の外部被覆部の別の場所に周辺センサシステム10およびコンタクトセンサシステム11を付加的に、または車両正面の代わりに配置することも可能である。周辺センサシステム10は、ここではレーダーセンサシステム(これはレーダー波を77GHzで放出する)を有している。このようにレーダーセンサは殊に遠方監視に適している。コンタクトセンサシステム11は、ここでは例えばピエゾケーブルを有している。これは車両のバンパ内に配置されており、容量性測定、圧電性測定および抵抗測定を用いて、衝突時の固有の確実なセンサである。付加的に周辺センサシステム10が、超音波センサシステムを有していてもよい。さらに、周辺センサシステム10が、レーダーセンサの代わりに、超音波センサシステムのみを有していてもよい。周辺センサシステム10の測定信号は、例えば既に相対速度を突き止めるために、増幅されて、デジタル化されて、場合によっては事前処理される。この信号は、その後、制御装置12に伝送される。コンタクトセンサシステム11もコンタクト信号をデジタル信号として制御装置12に供給する。センサ10および11をバスに配置し、このように制御装置12と接続することが可能である。センサ10および11と制御装置12間のデータの無線伝送もここでは可能である。
【0014】
制御装置12は、周辺センサシステム10が定めた相対速度を用いる、または周辺センサシステム10自体の測定データから、車両と衝突対象の間の相対速度を定める。制御装置12は、コンタクトセンサシステム11の信号を使用して、相対速度の決定を修正する。相対速度はその後、拘束手段の選択のために使用されるないしは、トリガアルゴリズム内にインプットされ、例えば拘束手段のトリガを定める閾値または、トリガ閾値と比較される信号を変える。従って、相対速度に依存して、エアバッグトリガアルゴリズムは鋭敏にされるまたは和らげられる。
【0015】
しかし制御装置12は、拘束手段をプレクラッシュセンサシステム10およびコンタクトセンサシステム11の信号にのみ依存して駆動制御するのではなく、殊に、クラッシュセンサシステム13にも依存して駆動制御する。このクラッシュセンサシステム13は殊に加速度センサを有している。この加速度センサは衝突の程度および衝突の経過に関する付加的な情報を提供する。加速度センサは車両内に分割されて配置されてもよい。例えばこれはアップフロントセンサとして車両正面に配置されてもよいし、側面、例えば車両のBピラーや制御装置12自体内に配置されてもよい。加速度センサは、種々異なる空間方向での加速度を検出するために異なる感知軸を有する。ロールオーバー過程も検出可能である。ここでこの場合にはヨーレートセンサまたは回転角度センサも使用される。運動センサプラットフォームもここで必要なデータを供給する。しかし例えば圧力センサのような他のクラッシュセンサも側面衝突センシングのために使用可能である。
【0016】
さらに制御装置12は、キャビンセンサシステム14と接続されている。キャビンセンサシステム14(例えばビデオ監視部または重量センシング部)は、乗員の数および種類についての情報を与える。殊にキャビンセンサシステム14によって、物と人間を区別することができる。すなわちこれによって、実際に人物を保護する拘束手段のみが駆動制御される。これらの全ての信号に依存して、制御装置12は拘束手段15を駆動制御する。ここでこの制御装置は、これらの信号を評価するためにプロセッサを有している。拘束手段15は、ここでpoint -to-point接続を介して制御装置12と接続されるか、またはバスを介して接続される。拘束手段15とはここでは殊にエアバッグである。このエアバッグにはドライバーエアバッグ、助手席エアバッグ、膝エアバッグ、ウィンドウエアバッグが挙げられる。しかしこれにはロールオーバーバーおよびシートベルトプリテンショナー(殊に可逆シートベルトプリテンショナー)および衝突に対する乗員の座位置を改善する座席アクチュエータも挙げられる。
【0017】
図2には、本発明による装置の機能を図示した第1のフローチャートが示されている。ステップ20では周辺センサシステム10によって衝突対象が追跡される。これによって、詳細には周辺センサシステム10のデータによって、ステップ21において、車両に対するこの対象の相対速度が定められる。接触、すなわち車両と対象との衝突が生じた場合、これはステップ22においてコンタクトセンサシステム11に基づいて検出される。コンタクトセンサシステムの信号は、ステップ23において、相対速度を修正するために用いられる。このようにして修正された相対速度はその後、トリガアルゴリズムにおいてトリガ時間を突き止めるために使用される。相対速度が拘束手段の選択に使用されてもよい。なぜなら、衝突が軽度である場合にはエアバッグの使用は強制的には指示されないからである。この場合にはシートベルトプリテンショナーの使用で十分である。
【0018】
図3には別のフローチャートが示されている。これは修正された相対速度によって行われる。ステップ30では修正された相対速度が供給される。これはステップ31においてアルゴリズムに供給される。このアルゴリズムは、拘束手段のトリガを制御する。相対速度は例えば事故程度に対するパラメータとして使用される。相対速度は、トリガアルゴリズムを変えるまたはトリガ信号を修正するためにも使用される。従って、より迅速にまたはより緩慢にトリガが生じる。さらに相対速度は、トリガされるべき拘束手段を選択するためにも使用される。従ってアルゴリズム31は可逆性拘束手段32、不可逆性拘束手段33および歩行者保護手段34を駆動制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による装置のブロック回路図
【図2】第1のフローチャート
【図3】第2のフローチャート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両と衝突対象の間の相対速度を突き止める装置であって、
当該装置は車両内に配置されており、
前記装置は少なくとも1つのアクティブな周辺センサシステム(10)と少なくとも1つのコンタクトセンサシステム(11)を有している形式のものにおいて、
前記装置は次のように構成されている、すなわち、当該装置が、前記少なくとも1つの周辺センサシステム(10)の第1の信号と前記少なくとも1つのコンタクトセンサシステム(11)の第2の信号に基づいて相対速度を求めるように構成されている、
ことを特徴とする、車両と衝突対象の間の相対速度を突き止める装置。
【請求項2】
前記アクティブな周辺センサシステム(10)は、レーダーセンサシステムを有している、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記アクティブな周辺センサシステム(10)は、ライダセンサシステムを有している、請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記アクティブな周辺センサシステム(10)は、ビデオセンサシステムを有している、請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記アクティブな周辺センサシステム(10)は、超音波センサシステムを有している、請求項1記載の装置。
【請求項6】
前記アクティブな周辺センサシステム(10)は、PMDセンサシステムを有している、請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記レーダーセンサシステムは77GHzの測定信号を生成する、請求項2記載の装置。
【請求項8】
前記コンタクトセンサシステム(11)はピエゾケーブルを有しており、
当該ピエゾケーブルは車両外部被覆部に配置されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
前記コンタクトセンサシステム(11)は光学式センサを有している、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置。
【請求項10】
前記コンタクトセンサシステム(11)は加速度センサを有している、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置。
【請求項11】
前記コンタクトセンサシステム(11)は少なくとも1つのスイッチを有している、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置
【請求項12】
前記装置はアクチュエータシステムと結合されており、相対速度は当該アクチュエータシステムの駆動制御時に使用される、請求項1から11までのいずれか1項記載の装置。
【請求項13】
前記アクチュエータシステムは可逆拘束手段を有している、請求項12記載の装置。
【請求項14】
前記アクチュエータシステムは歩行者保護手段を有している、請求項12記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−511743(P2007−511743A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529571(P2006−529571)
【出願日】平成16年3月17日(2004.3.17)
【国際出願番号】PCT/DE2004/000534
【国際公開番号】WO2004/110822
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】