説明

車両における広告及びクーポン提示の管理システム及び管理方法

【課題】車両が受信する広告の量を制限するとともに広告の質を向上させるシステムを提供する。
【解決手段】提示スロットを利用して移動通信装置に対する広告及びクーポン提示を管理する方法である。車両センサデータに基づいて車両コンテクスト及び車両イベントを検出し、車両ユーザに広告と提示する。車両コンテクストまたは車両イベントの検出により提示スロットが発生すると、車両ユーザに提示される広告が識別される。ここで、広告は構成された提示スロットに対応している。識別された広告は、車両ユーザに提示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、移動ユニットに対する商品及びサービスの広告に関し、より詳細には、提示スロット(時間枠)を利用して移動ユニットに対する広告及びクーポンの提示を管理する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路看板は、ドライバ、歩行者、及び自転車利用者を含む旅行者に対して商品及びサービスを広告する手段としての役割を果たしてきた。この広告方法は、レストラン、自動車ディーラ、コンビニエンスストア、ホテル、病院、及び他のサービス産業及び製造者により頻繁に使用され、利用できるサービスまたは商品ならびに広告主の所在地の情報を提供する。このような商法は、道路看板に反応する、すなわち道路に近づいてこの広告を見るカスタマに依存する。一方、ピアツーピア技術、例えば802.11またはDSRCと、セルラ技術、例えばG3との組み合わせに基づく、大きく改良された情報伝搬能力を有する自動車の出現により、サービスプロバイダの広告の選択肢が大きく拡張する可能性がある。商業的な理由により、これらの新しい自動車情報能力は、広告の伝達及び他のマーケティングストラテジの実施に利用される可能性が非常に高い。そして、この情報能力は、交通情報、安全情報、天気情報及び他の娯楽内容の情報の伝達に加えて、さらにはこれらの情報に関連して提供される。
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2001/0042038号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/0032035号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2002/0194061号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0215526号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2003/0003929号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の広告伝達能力は、自動車ユーザが歓迎する広告の数を大きく上回る。このように広告が頻繁に届けられることによるユーザ注意散漫や苛立ちを制限するという問題に対処するために、個々の車両が受信する広告の量を制限するとともに広告の質を向上させるシステムが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
開示される実施形態は、上記の背景技術の議論及びここに引用された技術において認識された課題に対する改良された解決例を提供する。これらの例には、提示スロットを利用し、通信ネットワークを介して移動通信装置への広告及びクーポン提示を管理する改良された方法が示される。前記方法では、車両センサデータにもとづき、車両コンテクスト及び車両イベントを検知する。提示スロット、すなわち、車両ユーザに対して広告を提示できる特定の環境が構成される。車両コンテクストまたは車両イベントの検出によって提示スロットが引き起こされると、上記方法により、車両ユーザに提示する広告が識別される。ここで、広告は構成された提示スロットに対応している。識別された広告は、車両ユーザに提示される。
【0006】
別の実施形態においては、提示スロットを利用し、通信ネットワークを介して移動通信装置への広告及びクーポン提示を管理するシステムが提供される。前記システムは、ネットワーク装置によって使用されるプログラム(アプリケーション)として記憶され、実行される。前記システムは、車両位置情報データを提供する位置サービスモジュールと、車両に対する広告を特定する(targeting)目的で有用な情報を識別するコンテクスト検出モジュールとを含む。広告の特定は、提示スロットの使用により実現する。各提示スロットは、車両ユーザに対して広告を提供するために、特定の環境(条件)に応じて構成(設定)される。ナビゲーションサポートモジュールが、車両ユーザに対して、ナビゲーションマップ及びナビゲーションプランを提供する。取引イベント検出モジュールは、広告選択イベントを識別し、認証モジュールは、受け取った広告のネットワーク上への配信を許可する証明記録を獲得する。逆入札(reverse bidding)管理モジュールは、競合する広告を募って選択する。選択された広告は、提示モジュールによって車両ユーザに提示され、一方、通信モジュールは広告サービス及び広告主と通信し、サービスに対する入札を要求して受け取る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
ここに記載されるシステム及び方法は、「提示スロット」の管理による、広告の量の制限及び質の向上に関する。提示スロットは、ドライバに広告を提示可能な特定環境である。すなわち、提示スロットは、ドライバに広告を提示可能とする特定の環境(条件)に関連付けられており、特定の環境(条件)が満たされた場合に各提示スロットに対応付けて広告の表示を認めることを示すために用いられる。これらの提示スロットは、車両毎に規制してもよい。例えば、製造者及び/またはユーザによる定義及び構成、または自動車の動作環境のセンシング結果に依存させてもよい。あるいは、提示スロットを、例えば外部環境のセンシング結果などの外的要因、スロットを広告主に与える経済メカニズム、または配信された広告の量、位置及びコンテクストを制御する配信メカニズムによって規制してもよい。提示スロットとして指定できるイベント(提示スロットに関連付けられる特定の環境(条件))の例として以下が挙げられる。
1.車両発車
2.車載ナビゲーションシステムに対する行き先の特定
3.ガソリン低量警告
4.種々の車両誤作動警告
5.交通渋滞における停止
6.道路タイプの変化(高速道路から路面道路)
7.居住または政治境界線への移行(都市境界線、州境界線)
8.食事時間または他の日常イベントの時間
9.ドライバ休憩アドバイス(運転挙動にもとづく)
10.同乗者休憩アドバイス(落ち着かない子ども)
11.行き先変更
12.ドライバによる路側サービスの検索開始
【0008】
これらの提示スロットの多くは車両に予めプログラミングすることができるが、本発明のシステムでは、ドライバは広告主に対して利用可能な提示スロットを選択できる。将来的な展開に対応するため、システムは新しい提示スロットの定義をネットワークから受け入れ、車両の所有者の許可により、これらの新しいスロットも同様にインストールする。ここに記載される方法及びシステムは、4つの要素を組み合わせることで、広告の量を制限し、質を向上させる。これらの要素には、まず、提示スロットとして使用される時間及びイベントを制御する方法を含む。提示スロットは初めに車両製造者によって特定され、その後、車両ユーザによって調節される。第2に、センサデータを統合して提示スロットを発生させる。これにより、提示が、現実世界のイベント、例えば低燃料の警告に結びつき、車両ユーザが車両情報システムと対話しやすくなる。第3に、経済メカニズム、例えば、オークションにより、広告主に対して提示スロットを求めて争わせることができる。適切に設計されたメカニズムは、提示スロットに対するオークションの勝者が経済的に最も成長可能な(かつ、おそらく最も関連ある)広告を得ることを保障する。第4に、配信メカニズムは、広告主が提示された広告の数を制御できるようにし、提示の性質及び、車両の位置、移動方向にもとづき車両を特定する。なお、便宜上、以下の説明では、車両を、道路上を移動する自動車として記載し、旅行者はドライバとして記載するが、ここで用いられる車両には、自動車と同様に、無線通信能力を有する計算装置を備える任意の移動実体、例えば船、飛行機、またはセル電話(携帯電話)を携帯するユーザを含む。
【0009】
以下の説明においては、本発明のシステム及び方法を完全に理解する目的で、多くの具体的な詳細を述べる。しかしながら、このような具体的な詳細でなくとも本発明のシステム及び方法を実行できることは当業者にとって明白である。別の場合には、本発明を不必要に不明瞭にしないよう、特定の実施詳細を具体的に示していない。図1には、車両ネットワーク広告のためのシステムの1実施形態例が概略図で示されている。高度道路交通ネットワーク(intelligent transportation network)110は、さまざまな能力、例えば、経路情報及びナビゲーションサービス、天気情報、交通情報、道路状況情報、近隣車両位置、速度及び加速情報、交通信号情報、交通標識情報、売店/サービス位置情報、誘拐事件速報情報(AMBER alert information)などを、広告管理と同様に提供することができる。サーバーサポート高度道路交通ネットワーク110は、システムオペレーションを管理可能なソフトウェアモジュールが設けられた汎用コンピュータを含んでもよい。また、サーバーサポート高度道路交通ネットワーク110は、クーポン/広告管理のためのソフトウェアモジュールが組み込まれた車両間通信用に特定的にデザインされたシステムであってもよい。
【0010】
高度道路交通ネットワーク110内には、クーポン及び広告管理モジュール120が設けられ、クーポン及び広告管理モジュール120は、クーポン/広告課金モジュール150、クーポン/広告許可モジュール140及びクーポン/広告配信モジュール130を含む。クーポン/広告許可モジュール140は、選択された価格付け方式を有する広告主からのクーポン/広告を受付け、各クーポン/広告が配布される初期範囲を決定する。また、ネットワークにおいて配信するためにクーポン/広告にスタンピング(時刻を登録等の処理)し、認証する機能を含む複数の機能を実行できる。クーポン/広告配信モジュール130は、所定の範囲パラメータ、例えば面積及び時間に従ってネットワークにクーポン/広告を分配する。クーポン/広告課金モジュール150は、特定クーポンに対する車両ユーザの反応をモニタし、その情報を使用して、各広告主に対するコストを計算することができ、また、その情報を使用して、提示戦略を調整し、広告提示の効率を向上させる。課金モジュールはさらに、ネットワークにおけるクーポン/広告の配信の解除を、例えば広告主からの要求によって開始する機能を含んでもよい。高度道路交通ネットワーク110は、参加している車両180に、直接または路側に配置された送信ユニット170及び190を介して、情報を送る。
【0011】
図1に記載されるアーキテクチャは基礎となる無線送信プロトコルから独立しているが、現存する無線送信プロトコル、例えばDSRC(専用狭域通信プロトコル)、IEEE802.11(WiFi)を使用してもよい。選択された信号帯域及びプロトコルのための無線信号受信インターフェースを有する必要がある以外は、車両が高度道路交通ネットワーク110に参加するために特定の送信プロトコルは要求されない。送信ユニット170及び190などのような中間送信装置としては、受信及び再送信能力のいずれもが必要である。中間送信装置は、衛星またはセルラタワー等の送信元からの信号を、車両間での送信に使用するプロトコルと同様に、車両に送信するために使用するのとは異なるプロトコル及び無線媒体を使用して、受信してもよい。一般に、ネットワーク送信は、地域的なブロードキャスト(geographical broadcast)にもとづき、通常特定エリア内の車両を特定する。ユーザは情報が送信される前に、中央システムにアクセスする必要はない。
【0012】
種々のコンピューティング環境に、高度道路交通ネットワークを実現する能力を持たせることができる。以下の説明は、本発明の方法及びシステムが実施できる適切なコンピューティング環境を簡単に、かつ一般的に記載することを意図する。要件ではないが、本発明の方法及びシステムは、単一のコンピュータによって実行されている、コンピュータにより実行可能な命令、例えばプログラムモジュールとの一般的な関連で記載される。一般に、プログラムモジュールは、特定のタスクを行う、または特定のアブストラクトデータタイプを実施する、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含む。さらに、当業者であれば、本発明の方法及びシステムが、ハンドヘルド装置、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサベースのまたはプログラム可能な消費者用電気機器(consumer electronics)、ネットワークPC、マイクロコンピュータ、メインフレームコンピュータ、などを含む、他のコンピュータシステム構成で実行できることがわかるであろう。
【0013】
また、本発明の方法及びシステムは、通信ネットワークを介してリンクされた遠隔処理装置によってタスクが実行される分散コンピューティング環境において実行することもできる。分散コンピューティング環境においては、プログラムモジュールは、ローカル及びリモート両方のメモリ記憶装置に位置してもよい。
【0014】
図2を参照すると、車載ソフトウェアのアーキテクチャが示されている。ここで、ユーザインターフェース210は、逆入札管理モジュール220、取引イベント検出器230、及び広告提示管理モジュール240と直接通信する。逆入札管理モジュール220は、小売業者及びサービスプロバイダに対し、リアルタイムまたはニアリアルタイムでの在庫管理及び販売価格決定(sales-pricing)を実行可能にするとともに、情報にもとづく潜在的な顧客の特定を行う機会を与えることができる。例えば、レストランのマネージャは、客の数および到着時間の情報を到着前に得ることができ、旅行者は、利用できるサービス及びサービスプロバイダによる望ましい競合する経路計画の入札にしたがって自分の経路を計画する機会を有し、より効果的なサービスを得ることができる。広告提示管理モジュール240は、広告主に対してよりよい広告の特定及びより効果的な広告時間の使用を可能にする一方、旅行者はより関連のある広告を受信するとともに、広告のオーバーフローを避けることができる。
【0015】
取引イベント検出器230は、位置サービスモジュール260から車両位置情報を受信する。位置サービスモジュール260は、GPSデータにもとづき位置を決定する。位置変化情報にもとづき、「ドライブトゥ(drive-to)」イベントを検出できる。さらに、ユーザインターフェースに表示されたアイテムを「クリック」することで、取引イベント検出器230は「クリックスルー(click-though)」イベントを検出することができる。検出されたイベント、例えば「ドライブトュ(drive-to)」や「クリックスルー(click-though)」は、後に課金の目的で使用される。コンテクスト検出モジュール250は、広告を特定する目的で役立つ追加情報を識別する。例えば、車両内に子どもがいるか、車内の人数、レジャー旅行か出張か、燃料レベルが低量であるか、気温は高いか、タイヤ空気圧は低いか、食事休憩の時間が近づいているか、などを判断する。この情報は、位置サービスモジュール260から車両位置情報を受信している逆入札管理モジュール220に送られる。
【0016】
ナビゲーションサポートモジュール270は、ドライバが車両を特定の場所まで走行させるのを支援するとともに、広告提示管理モジュール240に旅行情報及び一般的なエリア情報を送る。ナビゲーションサポートモジュール270は、ナビゲーションマップ及びナビゲーションプラン(ドライバからの入力による)の能力を有する。ナビゲーションマップには、各位置におけるビジネス/サービス情報を含んでもよい。位置サービスモジュール260は、車両位置情報を取引イベント検出モジュール230及び逆入札管理モジュール220に提供する。なお、説明の目的で、モジュール260と270とを別のモジュールとして示しているが、これらを組み合わせて、単一のナビゲーション及び位置モジュールとすることができる。
【0017】
認証モジュール290は、認証メカニズムを使用して広告/クーポンデータの署名を確認する。既知の任意の認証メカニズムが使用できる。例えば、署名が(中央サーバにより提供された)正当な数列の組み合わせで表れているかを調べればよい。認証された広告は、広告提示管理モジュール240に送られる。通信モジュール280は、広告データを受信して、認証モジュール290に送る。認証が要求されない場合には、通信モジュール280は、受信したデータを直接モジュール240に送る。さらに、認証モジュール290は、認証されたデータを、逆入札管理のために逆入札管理モジュール220に送る。逆入札管理機能には、サービスプロバイダに入札の要請を送る機能、代替旅行経路に沿った入札を選択して集約する機能、車両ユーザから追加的な入力を求める機能、旅行プランを最終決定する機能、決定したプランをナビゲーションシステムに送る機能、経路決定をサービスプロバイダに通信する機能、経路に沿った進み具合をモニタし、警告及びリマインド機能を実行する機能を含む。
【0018】
逆入札管理モジュール220は、入札の要請を通信モジュール280に送ってもよい。そして、通信モジュール280が、要請をサービスプロバイダに送り、受信した入札、取引、または広告と、入札者の身元を逆入札管理モジュール220に供給し、ここでこれらの情報が選択され、集約され、またユーザインターフェース210を介してユーザに提示される。逆入札管理モジュール220の動作については、その開示内容が本願明細書の一部としてここに援用される、2005年8月26日出願の米国特許出願第XX/XXX,XXX号(「旅行サービスのための逆入札」("Reverse Bidding for Trip Services"、代理人整理番号20041782−US−NP))にさらに記載されている。
【0019】
図3を参照すると、1実施形態においては、広告メッセージ310は、広告内容、提示スロット仕様及び価格仕様を含んだタプルである。広告内容は、テキストまたはイメージの形式とすることができる。広告内容は、特別なオファー、例えばクーポンまたはディスカウントを含むことができる。提示スロット仕様には、その広告が関連する1つ以上のスロットリクエストを含むことができる。例えば、ガソリン販売の広告主であれば、「低量ガス警告」のスロットに入札することができる。広告主はさらに、ドライバがガソリンスタンドまで運転して広告に応答した場合にいくら支払うかを示す。この場合のメッセージテキストは、「レギュラー無鉛ガソリン$1.80(約114円)、このメッセージの受信者にガロン当たり$0.20(約23円)(1リットル当たり約6円)のディスカウントした値段です。出口25番をご利用ください。」というようなものになる。
【0020】
車載のセンサは、センサ情報320を提供する。センサ情報320には、センサとナビゲーションの両方のデータ、例えば、位置、速度、天候条件、タイヤ空気圧、乗車人数(occupant count)などを含んでもよい。ほとんどの提示スロットが、センサデータに依存することよってスロットを正確に識別する。スロットの供給を制限し、かつ広告主にこれらのスロットに対して競合させることにより、より関連性のある広告がスロットに現れる可能性がある。例えば、ガソリンスタンドは、「低燃料」警告スロットにおける広告の提示を求めて落札する可能性が高い。さらに、広告主は、自分の業種に関連する特定の位置に広告を向けることができる。燃料を例に取ると、ガソリンスタンドは、ガソリンスタンドを見かける機会がより少ない付近の道路を走行しているユーザに対してより大きいディスカウントを提供し、または、客が通る可能性のより低い道路に対してより大きいディスカウントを提供することができる。配信されたディスカウントの質及びサイズを制御することにより、ガソリンスタンドはそのサービスキューを管理することができる。
【0021】
広告メッセージ310及びセンサ情報320は、広告選択モジュール330に送られる。広告選択モジュール330は、この情報の組み合わせを利用して、提示スロット要件にもとづき適当な広告内容を選択する。提示スロットは、ドライバが提案に対して最も従順に従う時間に対応しているので、広告主にとって価値がある。提示スロットは、車両の環境における変化(例えば、低量ガス)または外部環境における変化(例えば、前方の交通渋滞)によって誘因される。すなわち、これらの変化は、ドライバに判断及びプランの変更を要求する可能性が高いため、広告主がドライバに接触する理想的なタイミングである。一方、提示スロットは、広告が提示される機会を厳密に制約し、これによりドライバの注意散漫の虞を低減するため、ドライバにとっても価値がある。設計によって、提示スロットは、広告中の情報がドライバにとって役立つとき(例えば、低燃料警告)にドライバに届くので、ランダムに特定した広告よりも歓迎される。選択された広告は、ネットワーク上の車両と通信する提示モジュール340によってドライバに提示される。
【0022】
図4及び図5には、集中化されていない(less centralized)、広告を車両間の臨時ネットワーク(ad hoc network)においてピアツーピア方式により配信することが可能な実施において、移動車両における広告提示方法の1実施形態を示すフローチャートが示されている。このアプローチは、広告サーバを使用して、配信前に広告を証明するが、広告が提示される際に広告サーバと車両とのオンライン接続を要求しない。この場合、ステップ410において、イベント及びコンテクストの検出が行われる。これには、ナビゲーションデータと、車載センサにより提供されるセンサデータが含まれる。このデータの例として、ガソリンレベル、タイヤ空気圧、乗車人数、位置、場所などが含まれる。このデータが、ステップ420において、構成された提示スロットのきっかけとなる。トリガ能力は、既知の任意の手段によって提供可能であり、例えば、検出されたコンテクストと広告において特定された提示スロットとの一致でもよい。
【0023】
提示スロットは、図5に示すように構成されている。ステップ510において、自動車製造者は、提示スロット管理の初期構成を提供する。これは、購入時に車両と共に含まれている。初期構成には、検出される車両環境に関連するスロット、例えば低量ガス警告、車体発車、タイヤ空気圧の急な変化、夕食時間が間近であること、都市/通りの境界への移行などを含んでもよい。ステップ520において、ユーザは、スロットを追加するか、あるいは製造者によって提供されたスロットを修正、選択または削除することにより、提示スロットの個人的構成を提供することができる。任意に、製造者は広告の提示が許可されない「除外スロット」を特定してもよい。例えば、車両が急なカーブを走行したり、一定速度以上で走行したりしている場合、またはドライバの完全な集中力を必要とする他の任意の状況などである。個人的構成の例には、日常イベント、例えば食事の時間、またはドライバ/同乗者の休憩アドバイス(break advisories)を含むことができる。再び図4を参照すると、ステップ430において、構成された提示スロットにより、提示される広告を決定できる。この決定は、中央広告サーバではなく、車両において行うことができる。こうして、ステップ440において、広告が視覚的あるいは音声を介してのいずれかによりドライバに提示される。
【0024】
1例として、ガソリン販売者AとBから2つのクーポンが受信された場合、販売者Aは、「クーポンを見て来店」の各イベントにつき$.01(約1.1円)の支払いを申し出、販売者Bは同じイベントに対して$.02(約2.3円)ドルの支払いを申し出るとする。ステップ420において、低燃料検出イベントにより、構成された「低量ガス」提示スロットが発生すると、ステップ430において、そのより高い支払い額のためにBのクーポンが所与の瞬間に選択される。一方、ステップ430において、以下があてはまる場合には、Bのクーポンではなく、Aのクーポンの提示が選択される可能性がある。例えば、過去の履歴に応じてクーポンを選択してもよい。すなわち、Bのガソリンスタンドが相対的に遠方にあり、ドライバがAを好むことが履歴から分かる場合、特に、ドライバがBのクーポンを無視する推定確率が50パーセント以上である場合である。いずれの場合にも、決定がなされると、落札された広告がステップ440において提示される。
【0025】
図6を参照すると、移動車両における広告提示方法の別の実施形態を示すフローチャートが示されている。この実施形態においては、ネットワーク上の車両は、ネットワークに対して連続的な低レイテンシ接続を有する。提示スロット広告は、サーチベースのキーワード広告と同様に実施されるが、この場合には、提示スロットの発生により、提示スロットのラベル(例えば、「低量ガス警告」)を、車両内のセンサの読取り結果及び車両の位置を記載する他の用語と同様に含む、代理サーチクエリ(surrogate search query)が自動的に生成される点が異なる。このクエリは広告サーバに送られ、ここで、車両に戻されドライバに提示される少数の広告で構成される応答が生成される。説明のために、ここでは単一の広告サーバが示されたが、多数の広告サーバをネットワーク全体に分散させてもよい。この実施形態では、広告主は広告サーバにコンタクトし、自分の広告を提示スロットに提示してもらえるように入札する。これらの入札は、いくつかの点でヤフー(登録商標名)またはグーグル(商標出願中)によって利用されるオークションと同様のオークションメカニズムにしたがって扱われ、キーワード広告を販売する(すなわち、オークションは、クリックスルーごとに支払う入札(pay-per-click-through bid)にもとづくことができ、あるいは予測収入(projected revenue)にもとづくことができる)。しかしながら、本発明のシステム及び方法は、さらに追加的な手段を含み、入札者が、自分の入札を特定の地理的領域に限定できるようにすることができる。広告主は、ドライバが広告に「応答した」時にのみ、広告に対して支払いをする。このときの応答は、以下のいずれかである。
1.「クリックスルー」イベント。この場合、ドライバは広告を選択し、さらなる情報を要求する。
2.ナビゲーションイベント。この場合、ドライバは、広告主の業務地までの経路を車両のナビゲーションシステムに要求し、かつ/またはその業務地まで運転する。
【0026】
この実施形態では、イベント及びコンテクストの検出がステップ610において行われる。これには、ナビゲーションデータと、車載センサにより提供されるセンサデータが含まれる。このデータの例として、低ガス警告またはタイヤ空気圧の急な変化、または都市/通りの境界への移行などが含まれる。図4のステップ420に関して上述したように、センサデータを使用して構成された提示スロットを発生させる。提示スロットの構成は図5に関連して上述したとおりであり、自動車の製造者及びユーザによって提示スロットが特定され、制御される。ステップ630において、車載システムは、車両ユーザの提示スロットに適した広告をサーバに問い合わせる。サーバは、ステップ640において、ユーザに対してどの広告を提示するかを、状況による(contextual)情報を用いて決定する。選択された広告は、ステップ650において車両に送られ、ステップ660において、車載システムがこの広告をユーザに提示する。
【0027】
一例として、ステップ610における低量燃料の検出により、ステップ620において構成された低量ガスの提示スロットが発生する。システムは、車両位置情報、低量ガスコンテクスト、及び他の情報、例えば好ましいガソリンのグレード及びタイプなどとともに、サーバに対してクーポン/広告を問い合わせる。サーバは、受信した情報を元に、対応する広告/クーポンをデータベース中で調べ、(期待される利益基準(expected benefit metric)にしたがって)最適なサブセットを車両に送る。車両は、ローカルフィルタリング及び順序付けを行い、クーポン/広告を車両ユーザに提示する適当な時間を選択することができる。車両が、情報の受信時にドライバの注意を中断させることが望ましくない状況(例えば、高速運転、急カーブ、除外スロットなど)にある場合には、おそらくは、車両ユーザが低燃料警告を通知して減速するまで、提示を延期してもよい。
【0028】
特定の実施形態に関連して本発明を説明したが、当業者にはさらなる修正及び改良が可能であることが明白である。例えば、図6に示される方法に提示管理を含むことができる。これは、サーバから広告を受信したが、処理を開始するためのコンテクストが変わってしまった(例えば、タイヤ空気圧センサからの読み取りミスでステップ620及びその後の処理が開始され、その直後にセンサによる読み取りが正常に戻った)場合には有用であり、この場合、現行のコンテクストでは広告が提示されない。別の変形例として、サーバが車両に任意の広告のセットを送り、最新のコンテクストに鑑み、車両のオペレータに、使用する適切な広告を決定させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】車両広告ネットワークの実施形態例を示す図である。
【図2】車両広告ネットワークのための逆入札管理を提供する計算アーキテクチャの1実施形態を示す図である。
【図3】移動車両における広告提示手続きの動作の実施形態例である。
【図4】移動車両における広告提示の方法の実施形態を示すフローチャートである。
【図5】図4の方法に関連する構成手続きの実施形態を示すフローチャートである。
【図6】移動車両における広告提示の方法の別の実施形態を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0030】
110 高度道路交通ネットワーク、120 クーポン及び広告管理モジュール、130 クーポン/広告配信モジュール、140 クーポン/広告許可モジュール、150 クーポン/広告課金モジュール、180 車両、170,190 送信ユニット、210 ユーザインターフェース、220 逆入札管理モジュール、230 取引イベント検出モジュール、240 広告提示管理モジュール、250 コンテクスト検出モジュール、260 位置サービスモジュール、270 ナビゲーションサポートモジュール、280 通信モジュール、290 認証モジュール、310 広告メッセージ、320 センサ情報、330 広告選択モジュール、340 提示モジュール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
提示スロットを利用して、移動通信装置に対する通信ネットワークによる広告及びクーポン提示を管理するプログラムであって、
コンピュータに、
車両ナビゲーションデータを含む少なくとも1つの車両コンテクストを検出するステップと、
車両センサデータにもとづき少なくとも1つの車両イベントを検出するステップと、
少なくとも1つの車両コンテクストまたは少なくとも1つ車両イベントの検出により、車両ユーザに広告を提示するために構成された少なくとも1つの提示スロットを発生させるステップと、
前記少なくとも1つの提示スロットに対応させて前記車両ユーザに対して提示される広告を識別するステップと、
前記識別された広告を前記車両ユーザに提示するステップと、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項2】
提示スロットを利用して、移動通信装置に対する通信ネットワークによる広告及びクーポン提示を管理するシステムであって、
車両位置情報データを提供する位置サービスモジュールと、
広告を車両ユーザに提示するために構成された少なくとも1つの提示スロットを使用して、車両に対する広告を特定するために有用である情報を識別するコンテクスト検出モジュールと、
ナビゲーションマップとナビゲーションプランとを前記車両ユーザに提供するナビゲーションサポートモジュールと、
広告選択イベントを識別する取引イベント検出モジュールと、
受け取った広告のネットワーク上での配信を許可する証明記録を得る認証モジュールと、
入札により競合する広告から広告を選択する逆入札管理モジュールと、
前記選択された広告を前記車両ユーザに提示する広告提示管理モジュールと、
広告サービス及び広告主と通信して、サービスに対する入札を求めて受信する通信モジュールと、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムにおいて、
前記車両は、通信ネットワーク上のサーバに接続されていることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のシステムであって、
クーポン/広告管理モジュールを有するネットワークサーバをさらに備え、
前記クーポン/広告管理モジュールは、
ネットワーク上の広告利用管理を行うモジュールであって、サービスプロバイダからの、価格付け方式が選択されたクーポンまたは広告の受け入れと、各クーポンまたは広告が配布される初期範囲の決定と、ネットワークで配信するためのクーポンまたは広告の認証と、から選択されるいずれかの処理を行うクーポン/広告許可モジュールと、
所定の範囲パラメータにしたがって、前記クーポンまたは広告をネットワークにおいて配信するクーポン/広告配信モジュールと、
特定のクーポンまたは広告に対する車両ユーザの反応をモニタし、広告の提供またはクーポンの前記車両ユーザによる受け入れに対し、サービスプロバイダにかかるコストを算出する課金モジュールと、
を含む、システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−66311(P2007−66311A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−228627(P2006−228627)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(502096543)パロ・アルト・リサーチ・センター・インコーポレーテッド (393)
【氏名又は名称原語表記】Palo Alto Research Center Incorporated
【Fターム(参考)】