説明

車両のカウル構造及びブレーキ液リザーバタンク

【課題】ブレーキ液リザーバタンクに対してブレーキ液をブレーキ液容器から注入管を介して安定的に注入させることができる車両のカウル構造及びブレーキ液リザーバタンクを提供する。
【解決手段】カウルルーバ2のルーバ部10には、注入管61を介したブレーキ液容器6からのブレーキ液注入時に、ブレーキ液容器6を支持可能なブレーキ液容器支持手段40が設けられている。ブレーキ液容器支持手段40は支持腕体41を備え、ブレーキ液注入時に、支持腕体41はブレーキ液容器6を支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のカウル構造及びカウルの下方に位置するブレーキ液リザーバタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンルームの小型化に伴って、ブレーキ液リザーバタンクがカウルの下方に配設されることがある。特許文献1は、図1に示されるとおり、その一例を開示する。この例では、タンク本体51は、その前面上部から斜め前方へ延在された注油パイプ52を備えている。その注油パイプ52の先端は注油口となっており、注油口はキャップ53により覆われている。
【0003】
ブレーキ液容器からブレーキ液をタンク本体51に注入するには、まず、注油口のキャップを外す。ブレーキ液容器は、注ぎ口を開栓した後、手で注ぎ口を覆う。ブレーキ液容器の注ぎ口が下を向くようにし、注油パイプ52の傍らから注ぎ口の手を放しつつ、その注ぎ口を注油パイプ52の注油口に挿入させる。
【特許文献1】特許第3167575号公報(とくに、段落[0016]参照。)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上で述べた特許文献1の場合、ブレーキ液容器からブレーキ液リザーバタンクへのブレーキ液の注入では、注入管の注入口に対してブレーキ液容器の姿勢を正しく定め、作業者がブレーキ液容器を把持し、注入口に留意しつつ支持しなければならない。注入管の構成によって注入口が傾斜しているため、ブレーキ液容器を垂直に倒立して載置することが出来ないためである。この時、ブレーキ液容器の姿勢が注入口に対して正しくなければ、ブレーキ液が注入口から漏れ出るおそれがある。
【0005】
また、特許文献1と異なり、注入口が真上を向いている場合でも、ブレーキ液リザーバタンクの上方にカウルが配置され、注入口に近接してカウルの構成部材が存在する場合には、ブレーキ液容器はカウルの構成部材に接触し、注入口に垂直に倒立して載置することが出来ない場合が多い。この場合も、注入口が傾斜している場合と同様に、作業者がブレーキ液容器を支持する必要がある。
【0006】
本発明は、こうした従来技術の不都合に鑑みてなされたものであり、その目的は、ブレーキ液リザーバタンクに対してブレーキ液をブレーキ液容器から注入管を介して安定的に注入させることができる車両のカウル構造及びブレーキ液リザーバタンクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、ブレーキ液注入用の注入管を備えたブレーキ液リザーバタンクの上方に配設される車両のカウル構造であって、前記注入管を介したブレーキ液容器からのブレーキ液注入時に、前記ブレーキ液容器を支持可能なブレーキ液容器支持手段が設けられたことを要旨とする。
【0008】
この構成によれば、ブレーキ液注入時においては、ブレーキ液容器がブレーキ液容器支持手段に支持される。ブレーキ液は、ブレーキ液容器から注入管を介してブレーキ液リザーバタンクに注入されることになるが、このとき、ブレーキ液容器の注入管に対する姿勢は保持されるため、ブレーキ液の注入が安定化する。とくに、ブレーキ液リザーバタンクの注入口に、ブレーキ液容器を垂直に倒立して載置することが出来ない場合にも、作業者がブレーキ液容器を把持することなく、ブレーキ液容器を適正な姿勢に保持することが可能となる。また、カウル構造について、ブレーキ液注入の安定化に寄与するという従来技術にはなかった機能が新たに追加される。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の車両のカウル構造において、前記ブレーキ液容器支持手段は、前記ブレーキ液容器を支持する支持腕体を備え、前記支持腕体は、前記注入管の開口縁よりも車両前側に配置される前端部を備えたことを要旨とする。この構成によれば、ブレーキ液の注入時に、車両前側に傾斜するブレーキ液容器を注入管の開口縁より車両前側で支持することができる。したがって、ブレーキ液注入時に、ブレーキ液容器が車両前側へ傾斜したとしても、ブレーキ液容器が車両前側へ転倒することを抑制できる。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明の車両のカウル構造において、前記支持腕体は、車両前側において車両の幅方向へ突出する突起を備え、前記突起は、ブレーキ液注入時に前記ブレーキ液容器を支持することを要旨とする。この構成によれば、突起が車両の幅方向へ突出しているため、ブレーキ液の注入時にはブレーキ液容器を車両前側から支持でき、ブレーキ液容器の車両前側への転倒防止をより確実にする。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項2又は請求項3に係る発明の車両のカウル構造において、前記支持腕体は一対設けられ、前記支持腕体はその間に前記ブレーキ液容器が挿入されることを許容し、ブレーキ液注入時には前記ブレーキ液容器を支持することを要旨とする。
【0012】
この構成によれば、ブレーキ液容器は、前記前端部間から車両後側へ向けて両支持腕体間に押し込まれる。ブレーキ液容器の両支持腕体間への挿入、その挿入後の両支持腕体による支持によって、ブレーキ液容器は、ブレーキ液リザーバタンクに対する適正な姿勢へ簡易に到る。また、支持腕体が一対設けられることから、ブレーキ液容器が車両の幅方向に転倒するおそれを回避する。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に係る発明の車両のカウル構造において、車両のフードとフロントガラスとの間にカウルルーバを備え、前記カウルルーバは、前記ブレーキ液リザーバタンクの注入管の上方を開放する切欠き凹部を備え、前記ブレーキ液容器支持手段は、前記切欠き凹部の下方に配設されることを要旨とする。
【0014】
この構成では、カウルルーバに切欠き凹部が備えられ、ブレーキ液の注入時には、ブレーキ液容器が切欠き凹部内の空間に存在しつつ該切欠き凹部よりも下方のブレーキ液容器支持手段によって支持されることになる。ブレーキ液容器支持手段は、カウルルーバよりも下方に配設されるため、その存在が目立つことはない。また、ブレーキ液注入時には、ブレーキ液容器はブレーキ液容器支持手段に支持されつつ、切欠き凹部の内域に配置することができるため、ブレーキ液容器をより起立させた状態で保持することができる。
【0015】
請求項6に係る発明は、ブレーキ液注入用の注入管を備えた車両のブレーキ液リザーバタンクであって、前記注入管を介したブレーキ液容器からのブレーキ液注入時に、前記ブレーキ液容器を支持可能なブレーキ液容器支持手段が設けられたことを要旨とする。
【0016】
この構成によれば、ブレーキ液注入時においては、ブレーキ液容器がブレーキ液容器支持手段に支持される。ブレーキ液は、ブレーキ液容器から注入管を介してブレーキ液リザーバタンクに注入されることになるが、このとき、ブレーキ液容器の注入管に対する姿勢は保持されるため、ブレーキ液の注入が安定化する。とくに、ブレーキ液リザーバタンクの注入口に、ブレーキ液容器を垂直に倒立して載置することが出来ない場合にも、作業者がブレーキ液容器を把持することなく、ブレーキ液容器を適正な姿勢に保持することが可能となる。また、ブレーキ液リザーバタンクについて、ブレーキ液注入の安定化に寄与するという従来技術にはなかった機能が新たに追加される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ブレーキ液リザーバタンクに対してブレーキ液をブレーキ液容器から注入管を介して安定的に注入させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した実施形態を図1〜図5に従って説明する。図1は、カウルの模式斜視図、図2は、ブレーキ液容器支持手段に対応する部分の模式斜視図、図3は、ブレーキ液注入時のカウルの模式斜視図、図4は、車両のカウル及びブレーキ液リザーバタンクの模式断面図、図5は、図3のA−A線における模式断面図である。なお、以下の説明では、図4に示されるような使用形態を基準として、「上方」、「下方」、「車両前側」、「車両後側」と述べることにする。
【0019】
カウル1は、カウルルーバ2とカウルパネル3とその他のカウル部材とから構成されている。カウルルーバ2は、車両のフード7とフロントガラス4との間に設けられ、ワイパ(図示せず)の駆動部を覆う状態でフロントガラス4に沿って車幅方向に延びるよう形成されている。図1に示すようにカウルルーバ2は、ルーバ部10と蓋体20とを備えており、ルーバ部10及び蓋体20は、樹脂を射出成形することにより構成されている。
【0020】
図1に示すように、ルーバ部10は、車体に組み付けられた状態において、フロントガラス4の前縁に沿いつつ車両の前側に向かって湾曲しながら延出される上壁10aとその上壁10aの前端で屈曲され下方へ延びる前壁10bとを備えている。ルーバ部10には、前壁10bから延出して、車幅方向に延びるフランジ11が形成されている。
【0021】
図1で示すように、上壁10a及び前壁10bには、車室内へ外気を導入する縦長で楕円形状の外気導入口12が複数形成されており、上壁10aには、ワイパピボット(図示せず)が貫通するピボット孔13が2個形成されている。
【0022】
フランジ11は、図2に示すとおり、後述するブレーキ液リザーバタンク5に対応する位置に切欠き凹部30を備えている。図2に示すとおり、切欠き凹部30に対応して、前壁10bには差込口14が2箇所設けられ、また、フランジ11の車両前側には嵌合孔31が2箇所設けられている。
【0023】
一方、蓋体20は、前記差込口14に差込み可能な凸部と、前記嵌合孔31に嵌合可能な折り曲げ部21とを備えている。板状の蓋体20は、切欠き凹部30に対して取付及び取外可能に設けられている。蓋体20が切欠き凹部30に取付けられているときは、凸部が差込口14に差し込まれ、折り曲げ部21が嵌合孔31に嵌合されている。ルーバ部10から蓋体20を取り外すと、ルーバ部10の下方に配設されるブレーキ液リザーバタンク5及びブレーキ液容器支持手段40が上方から視認できるようになる。
【0024】
図2に示すとおり、ルーバ部10には、ブレーキ液容器6を支持可能なブレーキ液容器支持手段40が前壁10bに設けられている。ブレーキ液容器支持手段40は、ルーバ部10の前壁10bから車両の前側に向けて延設され、互いに所定間隔をおいて設けられた一対の支持腕体41を備えている。支持腕体41は、前端部44が後述するブレーキ液リザーバタンク5の注入管61よりも車両前側に位置するように設けられている。支持腕体41は、下面に車両の前後方向に延設された突条45を備えている。この突条45は断面長方形状をなし、短辺面が上下に位置するように設けられている。支持腕体41は、樹脂で形成され、ブレーキ液容器6の支持腕体41間への押し入れ及び支持腕体41からの押し出しに応じて弾性変形するようになっている。
【0025】
支持腕体41は、前端部44に車両の幅方向に突出する突起46を備えている。上で述べたとおり、支持腕体41は一対設けられるが、突起46は、互いに対向するようにそれぞれ支持腕体41に設けられている。この突起46の先端は、車両後側から車両前側に向けて円弧状をなすように凹んでいる。この凹み形状であるが、後述する収容領域Sの中央を向くように設定され、ブレーキ液容器6を支持する際には、円筒状のブレーキ液容器6との接触面を増加させるように機能する。
【0026】
ブレーキ液容器支持手段40は、ルーバ部10の前壁10bから延設されつつ両支持腕体41の基端部43(車両の後側)を連結する支持基体42を備えている。支持基体42は板状をなし、ルーバ部10の前壁10bからの突出長が中央ほど小さく車両の幅方向に向かうに連れて大きくなるように形成されている。前記両支持腕体41及び支持基体42によって区画された空間は、ブレーキ液注入時にブレーキ液容器6を収容する収容領域Sとして機能する。
【0027】
図3及び図4に示すとおり、ブレーキ液リザーバタンク5は、カウル1の下方に配設されている。ブレーキ液リザーバタンク5は、車両前側で斜め上方に傾斜して延び、先端に車両上方に向けて開口する注入口62(開口縁)が設けられた注入管61を備えている。注入口62にはキャップ(図示せず)が装着されている。注入管61は、カウル1と接触することがないようにその長さが設定されている。注入管61は、支持腕体41及び支持基体42によって囲まれる収容領域S及び切欠き凹部30を指向するように設けられている。
【0028】
次に、図4及び図5に示すように、ブレーキ液容器6をブレーキ液容器支持手段40によって支持させ、ブレーキ液容器6のブレーキ液をブレーキ液リザーバタンク5に注入する工程について説明する。まず、フード7を開け、フランジ11に取付けられている蓋体20を取り外す。注入管61の注入口62に装着されたキャップを外し、ブレーキ液容器6の注ぎ口を開栓する。ブレーキ液容器6の注ぎ口を手で覆い、ブレーキ液容器6を寝かすようにして、注入口62の傍らに注ぎ口を近づける。
【0029】
その後、ブレーキ液容器6の注ぎ口を覆っていた手を離しつつ、ブレーキ液容器6の注ぎ口を注入口62に挿入する。そして、すぐさま、ブレーキ液容器6を起立させる。このとき、支持腕体41の突起46間にブレーキ液容器6が挿入される。挿入時には支持腕体41間(突起46間)の距離が一旦大きくなるが、ブレーキ液容器6が支持されるときには、挿入前と同様の支持腕体41間(突起46間)の距離に戻る。図5に示すように、ブレーキ液容器6は、収容領域Sに収容され、支持腕体41の内側面(収容領域Sに接する面)及び突起46はブレーキ液容器6に当接しつつ支持する。
【0030】
この実施形態では以下の効果を有する。
(1)ルーバ部10には、注入管61を介したブレーキ液容器6からのブレーキ液注入時に、ブレーキ液容器6を支持可能なブレーキ液容器支持手段40が設けられている。したがって、ブレーキ液注入時にブレーキ液容器6が傾斜した姿勢に保持されるため、ブレーキ液を安定して注入することができる。よって、注入口62が傾斜している、又は、注入口62にカウル構造が近接しているために、ブレーキ液容器6を注入口62に倒立して載置できない場合でも、作業者がブレーキ液容器6を支持する必要をなくすことができる。
【0031】
(2)ブレーキ液容器支持手段40は、ブレーキ液容器6を支持する支持腕体41を備え、支持腕体41の前端部44は、注入管61の注入口62よりも車両前側に配置されている。したがって、ブレーキ液注入時にブレーキ液容器6を注入管61の注入口62より車両前側で支持できるため、車両前側へ傾斜したブレーキ液容器6が転倒することを抑制できる。
【0032】
(3)支持腕体41は、車両前側において車両の幅方向へ突出する突起46を備え、突起46は、ブレーキ液注入時にブレーキ液容器6を支持する。したがって、ブレーキ液の注入時にはブレーキ液容器6を車両前側から支持でき、ブレーキ液容器6の車両前側への転倒をより確実に抑制する。
【0033】
(4)支持腕体41は一対設けられ、前端部44における突起46の間にブレーキ液容器6が挿入され、挿入後に、ブレーキ液容器6は、支持腕体41の内側面と突起46とによって支持される。ブレーキ液容器6は、一対の支持腕体41の間に挿入されれば、ブレーキ液リザーバタンク5の注入口62に対して適正な姿勢で保持される。つまり、ブレーキ液容器6の軸線方向とブレーキ液リザーバタンク5の注入管61の軸線方向とが互いにほぼ合致する状態で保持されるから、ブレーキ液の注入が安定化する。また、支持腕体41の内側面もブレーキ液容器6の支持に寄与することから、ブレーキ液容器6が車両の幅方向に転倒することを抑制する。
【0034】
(5)フランジ11の切欠き凹部30には蓋体20が取付けられている。したがって、ブレーキ液注入時には、この蓋体20を取り外すのみでブレーキ液容器6を注入管61に対して好適に起立させてブレーキ液容器6からブレーキ液リザーバタンク5へのブレーキ液注入が可能になる。つまり、ルーバ部10全体を車両から取り外す必要がないから、ブレーキ液の注入工程を簡易化することができる。しかも、蓋体20の存在によって、ルーバ部10の外観が損なわれることはない。
【0035】
(6)支持腕体41は突条45によって補強されている。仮に、何らかの外力が加えられたとしても、支持腕体41が破損することを抑制できる。また、突条45は、ブレーキ液容器6が支持腕体41間に挿入されたとしても、支持腕体41をブレーキ液容器6が挿入される前の状態へ円滑に戻すように機能する。
【0036】
(7)一対の支持腕体41は、前端部44に車両の幅方向に突出する突起46をそれぞれ備えている。この突起46の先端は、円弧状をなすように凹設されて収容領域Sの中央を向くように設定されているから、円筒状のブレーキ液容器6を支持するのに好適である。また、ブレーキ液容器6を、一対の突起46間に挿入する際に引っかかることなく収容領域Sへ、又は収容領域Sの外へ導くことも可能になる。
【0037】
(8)折り曲げ部21を嵌合孔31に嵌合するとともに、蓋体20の凸部を差込口14に差込むことで、蓋体20をルーバ部10に取付けている。したがって、ボルト等によって蓋体20を取付ける構成に比べて、蓋体20の取付け作業が容易である。
【0038】
(9)支持基体42は、ルーバ部10の前壁10bから延設されつつ、一対の支持腕体41の基端部43間を一体に連結している。したがって、支持腕体41の基端部43側において、支持腕体41の前壁10bに対する折れ曲がりを抑制することができる。
【0039】
(10)カウルルーバ2は切欠き凹部30を備え、注入管61は、切欠き凹部30を指向するように設けられている。たとえば、この切欠き凹部30が設けられていない場合、注入管61は、カウルルーバ2よりも車両前側を指向することになるが、その場合と比べて、注入管61の長さを短くすることができる。切欠き凹部30の構成は、注入管61の剛性確保の点で有利である。
【0040】
(11)支持腕体41は、蓋体20が取付可能な切欠き凹部30の下方に設けられている。したがって、通常、支持腕体41は、フランジ11の下方に位置することになるから、その存在が目立つことはない。また、支持腕体41はブレーキ液注入時にはブレーキ液リザーバタンク5の注入管61に近接して配置されるから、支持腕体41の支持機能を容易に理解することができる。
【0041】
上記実施形態は次のように変更することもできる。
○ ブレーキ液リザーバタンク5の注入管61について、車両前側への傾斜状態は、任意に変更可能である。たとえば、図6に示すように、上記実施形態よりもさらに車両前側に傾斜させ、注入管61の注入口62をルーバ部10のフランジ11よりも車両前側に配置してもよし、逆に、ほとんど傾斜無く垂直上方に延びていても良い。前者の場合、フランジ11に切欠き凹部30を備える必要もなく、そのため、蓋体20を付与する必要もない。なお、この変更例では、注入管61の傾斜状態について述べたが、ブレーキ液リザーバタンク5を車両前側に配置すれば、上記実施形態の注入管61と同様の傾斜状態を維持することもできる。
【0042】
○ 上記実施形態では、切欠き凹部30に蓋体20が取付けられていたが、この蓋体20を省略してもよい。
○ 一対の支持腕体41のうち、一方を省略してもよい。たとえば、支持腕体41の前端部44に設けられる突起46をより長く車両の幅方向に延設し、その長く延設された突起46によって、ブレーキ液注入時にブレーキ液容器6を支持するようにしてもよい。この場合、支持状態を安定化させるためには、たとえば、突起46の収容領域Sに接する側面を円弧状に凹設してブレーキ液容器6との接触面を大きくする等の方策が考えられる。なお、ブレーキ液容器6の収容領域Sへの挿入であるが、支持腕体41の突起46と前壁10bとの間に挿入されて行われることになる。
【0043】
○ 支持腕体41の突起46を省略してもよい。たとえば、単なる棒状の支持腕体41によってブレーキ液容器6を挟持して支持するようにしてもよい。また、突起46の配置について、上記実施形態では、前端部44に構成されたが、この構成を、前端部44を含む車両の前側における支持腕体41に具備されるようにしてもよい。さらに、突起46の先端形状は凹み形状に限定されるものでなく、たとえば、凸出形状であってもよい。
【0044】
○ 支持腕体41間の距離は、ブレーキ液容器6を支持した後、支持する前と同じに戻る必要は無い。
○ 支持腕体41の長さを、車両前側の先端が、たとえば注入口62より車両後側に位置するように短くしてもよい。この場合、一対の支持腕体41の間で相当の挟持力を確保しておく必要がある。
【0045】
○ 支持腕体41が設けられる部位を変更してもよい。たとえば、図7に示すようにカウルパネル3から車両前側に向けて延びるようにしてもよい。また、カウルルーバ2及びカウルパネル3の接合部位から延設されるようにしてもよいし、他のカウル部材から延設されるようにしてもよい。
【0046】
○ ルーバ部10の前壁10bから突出する支持基体42の突出長を大きくして、収容領域Sにブレーキ液容器6が収容されるブレーキ液注入時に、ブレーキ液容器6を支持するように構成してもよい。この場合、支持基体42は、ブレーキ液容器支持手段を構成するものとなり、支持基体42は、ブレーキ液容器6の車両後側への転倒を抑制する。また、車両前側の側面は円弧状に設けられているから、円筒状のブレーキ液容器6との接触面の拡張に有利である。
【0047】
○ ブレーキ液容器支持手段40の構成を変更してもよい。たとえば、ルーバ部10の前壁10bに対して一端が固定され、他端が着脱可能な伸縮自在のゴムバンドを備えるようにしてブレーキ液容器支持手段40を構成し、ゴムバンドによってブレーキ液容器6を支持するようにしてもよい。また、ブレーキ液容器6が鉄製であれば、ルーバ部10の前壁10bに対して強磁性の磁石を備えるようにしてブレーキ液容器支持手段40を構成し、磁石の磁力によってブレーキ液容器6を支持することも可能である。
【0048】
○ 図8に示すようにブレーキ液リザーバタンク5にブレーキ液容器支持手段40を設けてもよい。ブレーキ液リザーバタンク5は、支持板体70を設けている。支持板体70は、ブレーキ液リザーバタンク5に結合される基端部71と、該基端部71から上方へ延びてブレーキ液容器6と接触する腕部72とから構成されている。腕部72は、延設方向上面から見た場合に断面円弧状をなすように構成されて、ブレーキ液容器6との接触面が拡張されるように形成されている。また、腕部72は、注入管61の軸線方向と同様の方向に延設されて、注入管61の注入口62に対するブレーキ液容器6の姿勢がより好適な状態となるように設定されている。腕部72の高さであるが、蓋体20(フランジ11)を超えないように設定することが好ましい。なぜなら、腕部72の先端が蓋体20(フランジ11)から突出すると邪魔になるだけでなく、外力が与えられる可能性が高まって破損の原因となるからである。支持板体70の構成中、少なくとも、腕部72の前端は注入管61の注入口62(開口縁)よりも車両前側に配設されるように構成することがブレーキ液容器6の支持構造としては好ましく、これらの点は上記実施形態で述べたとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本実施形態におけるカウルの模式斜視図。
【図2】本実施形態におけるブレーキ液容器支持手段に対応する部分の模式斜視図。
【図3】本実施形態におけるブレーキ液注入時のカウルの模式斜視図。
【図4】本実施形態における車両のカウル及びブレーキ液リザーバタンクの模式断面図。
【図5】図3のA−A線の模式断面図。
【図6】別の実施形態における車両のカウル及びブレーキ液リザーバタンクの模式断面図。
【図7】別の実施形態における車両のカウル及びブレーキ液リザーバタンクの模式断面図。
【図8】別の実施形態における車両のカウル及びブレーキ液リザーバタンクの模式断面図。
【符号の説明】
【0050】
1…カウル、2…カウルルーバ、3…カウルパネル、4…フロントガラス、5…ブレーキ液リザーバタンク、6…ブレーキ液容器、7…フード、20…蓋体、30…切欠き凹部、40…ブレーキ液容器支持手段、41…支持腕体、44…前端部、46…突起、61…注入管、62…注入口(開口縁)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ液注入用の注入管を備えたブレーキ液リザーバタンクの上方に配設される車両のカウル構造であって、
前記注入管を介したブレーキ液容器からのブレーキ液注入時に、前記ブレーキ液容器を支持可能なブレーキ液容器支持手段が設けられた車両のカウル構造。
【請求項2】
前記ブレーキ液容器支持手段は、前記ブレーキ液容器を支持する支持腕体を備え、前記支持腕体は、前記注入管の開口縁よりも車両前側に配置される前端部を備えた請求項1に記載の車両のカウル構造。
【請求項3】
前記支持腕体は、車両前側において車両の幅方向へ突出する突起を備え、前記突起は、ブレーキ液注入時に前記ブレーキ液容器を支持する請求項2に記載の車両のカウル構造。
【請求項4】
前記支持腕体は一対設けられ、前記支持腕体はその間に前記ブレーキ液容器が挿入されることを許容し、ブレーキ液注入時には前記ブレーキ液容器を支持する請求項2又は請求項3に記載の車両のカウル構造。
【請求項5】
車両のフードとフロントガラスとの間にカウルルーバを備え、前記カウルルーバは、前記ブレーキ液リザーバタンクの注入管の上方を開放する切欠き凹部を備え、前記ブレーキ液容器支持手段は、前記切欠き凹部の下方に配設される請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車両のカウル構造。
【請求項6】
ブレーキ液注入用の注入管を備えた車両のブレーキ液リザーバタンクであって、
前記注入管を介したブレーキ液容器からのブレーキ液注入時に、前記ブレーキ液容器を支持可能なブレーキ液容器支持手段が設けられた車両のブレーキ液リザーバタンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−83783(P2007−83783A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−272626(P2005−272626)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】