説明

車両のガラスガイド構造

【課題】 削り出しのような高価な部材の使用を回避し、ロール成形など従来から汎用されているガラスガイド部材を使用することのできる車両のガラスガイド構造を提供する。
【解決手段】 ガラスガイド構造3はガラスガイド部材10とガイド延長部品20と芯材ブラケット21とを有する。ガイド延長部品20は、ガラスガイド部材10の前側チャンネル15側に配設され、芯材ブラケット21は、ガラスガイド部材10の後側チャンネル16側に配設される。ガイド延長部品20は、ガラスガイド部材10の上端面に載置される第1、第2の側片部分20b、20cを備え、また、ガラスガイド部材10の開口25に嵌合する拡大ヘッド付き突起22を備えたプラスチック成型品である。芯材ブラケット21は金属製であり、平面視したときにドアガラスを受け入れることのできる略コ字状の形状を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のガラスガイド構造に関するものであり、より詳しくは、2つのサッシュレスガラスがガラスガイド部材を挟んで配置される形式のドアを備えた車両におけるガラスガイド構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、サッシュレスサイドドアを開示しており、このサッシュレスサイドドアは、三角窓とドアガラスとの間にガラスガイド部材が介在し、ガラスガイド部材は固定式の三角窓の後縁を支持すると共にドアガラスの昇降を案内するガラスガイド構造を開示している。特許文献1に開示のガラスガイド構造は、また、ガラスガイド部材の上端部に装着されたガイド上端シール部材を有し、このガイド上端シール部材はガラスガイド部材に対して凹凸嵌合により固定され、このガイド上端シール部材によって三角窓及びドアガラスの上端部が止水される。この種のガラスガイド構造では、ガイド上端シール部材にルーフなどの車体側部材との関係で横方向荷重や下方向荷重が加わる。
【0003】
特許文献1に開示のガラスガイド構造を適用した車両は、近年、実際に販売されているが、この車両は、比較的高価な価格帯の車両である関係から、ガラスガイド部材は削り出し材料によって構成されている。
【特許文献1】DE19906927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
削り出し材料は比較的高価であるため、特許文献1に開示のガラスガイド構造を適用した車両のように比較的高価な価格帯の車両の場合には採用可能であるにしても、製造コストを厳格に管理せざるを得ない価格を抑えた車両では、可能な限りコストを抑えることのできるガラスガイド構造が求められる。
【0005】
本発明は、上述の要請に応じるために案出されたものであり、その目的は、削り出しのような高価な部材の使用を回避し、ロール成形など従来から汎用されているガラスガイド部材を使用することのできる車両のガラスガイド構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の技術的課題は、本発明によれば、
互いに並設された2つのサッシュレスガラスを備えたドアを有し、2つのサッシュレスガラスの間に配設されたガラスガイド部材の上端部に弾性のガイド上端シール部材が装着され、該ガイド上端シール部材によって前記2つのサッシュレスガラスの上端部が止水される車両のガラスガイド構造を前提として、
前記ガラスガイド部材の上端部に、該ガラスガイド部材とは別部材の芯材ブラケットが設けられ、該芯材ブラケットにより前記ガラスガイド部材の全長が上方に延長されると共に、該芯材ブラケットが前記ガイド上端シール部材の内部に侵入していることを特徴とする車両のガラスガイド構造を提供することにより達成される。
【0007】
本発明にあっては、芯材ブラケットを別途用意することにしたことから、ガラスガイド構造の上端部に加わる横方向荷重や下方向荷重に適合した芯材ブラケットの形状の自由に設計することができ、これによりガラスガイド部材として比較的安価に製造できるロール成形品を使うことができる。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態では、ガラスガイド部材の上端部に、該ガラスガイド部材及び前記芯材ブラケットとは別部材のガイド延長部品が設けられる。そして、このガイド延長部品は、ガラスガイド部材の全長を上方に延長する延長部分を有し、この延長部分は、ガラスガイド部材の上端面に載置されると共にガイド上端シール部材の内部に侵入している。
【0009】
このような構成を採用することにより、例えばロール成形品からなるガラスガイド部材であれば、その上端面が切断面で構成されることになるが、この切断面がガイド延長部品の延長部分で覆われるため、作業者や車両の乗員が手を触れたとしても怪我をしてしまう虞を低減することができる。また、ガイド延長部品を芯材ブラケットと共にガラスガイド部材の上端部に装着することで、上述したガラスガイド構造の上端部に加わる横方向荷重や下方向荷重に適合させることが一層容易になる。このガイド延長部品の位置決めや抜け止めを効果的に行うのに、ガラスガイド部材の上端部分に開口を設けると共に、この開口に嵌合する突起をガイド延長部品に設けるのが好ましい。
【0010】
また、芯材ブラケットとガイド延長部品との配置に関し、この両部品でガラスガイド部材を挟み込むように配置するのが好ましい。ガラスガイド部材が本来的に備えている2つのサッシュレスガラスの支持機能に関し、例えば、芯材ブラケットとガイド延長部品とを共にガラスガイド部材の一方側に配設した場合には、一方のサッシュレスガラスの支持機能が低下してしまうことになるが、芯材ブラケットとガイド延長部品とをガラスガイド部材を挟み込むように配置することで、芯材ブラケットとガイド延長部品とを共にガラスガイド部材の一方側に配設した場合に比べて、双方のサッシュレスガラスに対する支持面積を確保することができる。
【0011】
三角窓とドアガラスのような面積の異なるガラスに対して本発明のガラスガイド構造を適用する場合には、芯材ブラケットを面積の大きなガラス(例えばドアガラス)側に配設し、更に、この芯材ブラケットの形状を例えばドアガラスの側縁を受け入れることのできる略コ字状に設計するのが好ましい。これにより、大きな面積を備えたガラスに対する支持剛性を確保することができる。実施例では、芯材ブラケットが、剛性を確保するのが容易な金属製であり、プレス成形により上記の略コ字状に形作られている。
【0012】
ガラスガイド部材は、互いに対抗した2つのチャンネルを備えた横断面H状の形状を有するのが一般的であるが、この2つのチャンネルのうち、例えばドアガラスのように大きな面積を備えた一方のサッシュレスガラスを受け入れるチャンネルの深さが、例えば三角窓のように比較的小さな面積のサッシュレスガラスを受け入れるチャンネルよりも深くなるように構成するのが合理的である。
【0013】
上記のガイド延長部品はガラスガイド部材の外表面と略面一となるように設計してもよいが、ガイド延長部品がガラスガイド部材から突出する形状に設定し、これによりガイド延長部品とガラスガイド部材との間の段部を作るようにしてもよい。ガイド上端シール部材は、ガイド延長部品から下方に垂下してガラスガイド部材の上端部を覆うように装着されることになるが、ガイド延長部品とガラスガイド部材との間の段部とガイド上端シール部材の下端部との間の摩擦係合によってガイド上端シール部材の抜け止め効果を高めることができる。また、ガイド上端シール部材の下端部の極端な肉厚を抑えつつ適度な厚みに設計することで、ガイド延長部品とガラスガイド部材との間の段部を傾斜した状態で乗り越えさせることができ、これにより、空力特性や外観上の見栄えの低下を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明する。
【0015】
図1は、実施例のガラスガイド構造を採用した車両を示す。図示の車両1は2シータオープンカーであり、車両1の後部に収容した幌又は折り畳み可能な鋼板製のルーフを展開することにより屋根付き車両に変化させることができる。
【0016】
車両1の左右のサイドドア2に実施例のガラスガイド構造3が適用されている。ガラスガイド構造3及びこれに関連した技術的事項について以下に詳しく説明する。先ず、サイドドア2は、Aピラー4に隣接して位置する、比較的小さな面積のいわゆる三角窓5と、この三角窓5の後方に位置する相対的に大きな面積を備えた主なるドアガラス6とを有する。ドアガラス6は、図示しない駆動機構によって従来と同様に上下に昇降可能であり、可動のドアガラス6を最も上まで上昇させると、ドアガラス6の上端縁が、幌又は鋼板製のルーフ部材に設けられた屋根シール部材と密接した状態となる。
【0017】
ガラスガイド構造3は、サイドドア2のドア本体2aの内部から上方に向けて突設された長尺のガラスガイド部材10を含み、このガラスガイド部材10及び三角窓5は、図2に示すブラケット11を介して、ドア本体2aに固定される。図2の参照符号12はベルトラインを示す。
【0018】
ガラスガイド構造3は、ガラスガイド部材10の上端部に嵌着されたガイド上端シール部材13を含み、このガイド上端シール部材13によって、従来と同様に、三角窓5とドアガラス6の上端部の止水が図られている。このガイド上端シール部材13は、弾性プラスチック材料からなる成型品である。当業者であれば図1から理解できるように、サイドドア2の三角窓5及び可動ドアガラス6は共にサッシュレスであり、サイドドア2を閉めると、三角窓5の前側縁及び前述したガイド上端シール部材13の上端部がAピラー4に設けられた車体側シール部材(図示せず)と密接した状態となり、また、可動のドアガラス6の上端が、幌又は鋼板製ルールの屋根側シール部材と密接した状態となる。
【0019】
図3は、図2のIII−III線に沿った断面図である。この図3を参照して、ガラスガイド部材10は横断面H形状のロール成形品からなり、ガラスガイド部材10の前面及び後面には、一対の側壁部分10a、10bと、両側壁部分10a、10bの中間部分を連結する連結部分10cとによって、ガラスガイド部材10の長手方向(上下方向)に延びる前側及び後側チャンネル15、16が互いに対抗して形成されている。
【0020】
ここに、横断面H形状のガラスガイド部材10は前後に非対称であり、前側チャンネル15と後側チャンネル16とを対比したときに、図3から明らかなように、後側チャンネル16の深さD1は前側チャンネル15の深さD2よりも大きい。すなわち、後側チャンネル16は前側チャンネル15に比べて深い溝で構成されており、これにより比較的大きな面積を備えた可動のドアガラス6に対する支持剛性が確保されている。前側及び後側チャンネル15、16には、夫々、前側及び後側ウエザーストリップ17、18が嵌着されており、これら前側及び後側ウエザーストリップ17、18によって三角窓5の後側縁と可動ドアガラス6の前側縁の止水が図られる。
【0021】
ガラスガイド構造3は、図4に示すように、ガラスガイド部材10の上端部に配設されるガイド延長部品20及び芯材ブラケット21を有し、これらの部品20、21は前述したガイド上端シール部材13の内部に隠れた存在となる。ガイド延長部品20は、ガラスガイド部材10の前側チャンネル15側に配設される。他方、芯材ブラケット21は、ガラスガイド部材10の後側チャンネル16側に配設される。すなわち、ガラスガイド部材10は、その上端部がガイド延長部品20、芯材ブラケット21によって挟まれた状態となり、そして、このガイド延長部品20、芯材ブラケット21によってガラスガイド部材10の全長が上方に向けて延長された状態となる。
【0022】
ガイド延長部品20は、プラスチック成型品であり、図5にも示すように、上下方向に延びる長方形の中央プレート部分20aと、中央プレート部分20aの一側及び他側から前後に延びる第1、第2の側片部分20b、20cと、この第1、第2の側片部分20b、20cの後端部の内側から下方に延びる垂下片部分20d、20eとを有する。
【0023】
第1、第2の側片部分20b、20cは、ガラスガイド部材10の一対の側壁部分10a、10bの上端面の外形輪郭と実質的に同じ外形輪郭を有し、この一対の側壁部分10a、10bの上に載置される。そして、ガイド延長部品20の第1、第2の側片部分20b、20cをガラスガイド部材10の上に載置した状態では、前記垂下片部分20d、20eが一対の側壁部分10a、10bの内壁面に沿って且つこれに当接した状態でガラスガイド部材10の上端から下方に向けて延在した状態になる。
【0024】
プラスチック成型品であるガイド延長部品20は、また、中央プレート部分20aの下端部に後方に向けて突出した突起22を含む。突起22は、円形軸部22aと、円形軸部22aの後端の拡大ヘッド22bとを有し、拡大ヘッド22bは軸部22aの外形輪郭から上方に拡大した係合爪22cを有する。前述したガラスガイド部材10は、ガイド延長部品20の突起22に対応した部分に第1開口25を有し、この第1開口25は、上述した拡大ヘッド付きの突起22と相補的な輪郭形状を有する。
【0025】
芯材ブラケット21は金属のプレス成型品であり、図6にも示すように、上下方向に延びる中央プレート部分21aと、中央プレート部分21aの一側及び他側の上端から後方に向けて延びる第1、第2の側片部分21b、21cと、前方に向けて延びる第3の側片部分21dを有する。芯材ブラケット21は、前述したように第1開口25を備えており、この第1開口25は中央プレート部分21aの下端部に形成されている。芯材ブラケット21は、更に、中央プレート部分21aの上下方向中央部分よりも若干上方位置に前方に向けて突出した膨出部26を有する。この膨出部26は、図示の例では、上下方向に延びる長方形の外形輪郭を有しているが、この形状に限定されることなく、例えば円形や楕円などの外形輪郭であってもよい。芯材ブラケット21は、好ましくは、第1、第2の側片部分21b、21cのうち、少なくとも一方の側片部分21cから下方に延びる側壁部分を有するのがよい。
【0026】
芯材ブラケット21の中央プレート部分21aには、膨出部26の下方に第2開口27を有し、この第2開口27は、前述したガラスガイド部材10の第1開口25に対応した位置に配設されている。芯材ブラケット21の第2開口27は、後に詳しく説明するが、ガラスガイド部材10の第1開口25の外形輪郭に近似した輪郭を備えているが、第1開口25に比べて上方に若干縦長である。
【0027】
図7は、ガイド延長部品20、芯材ブラケット21をガラスガイド部材10の上端部に組み付けた状態を示す。ガイド延長部品20、芯材ブラケット21は、ガラスガイド部材10を挟んで、その前側にガイド延長部品20が配設され、ガラスガイド部材10の後側に芯材ブラケット21が配設され、ガイド延長部品20、芯材ブラケット21によってガラスガイド部材10の全長が上方に延長された状態となり、また、プラスチック成形品であるガイド延長部品20によって、ガラスガイド部材10の両方の側壁部分10a、10bの上端面が覆われた状態となり、ガイド延長部品20、芯材ブラケット21の上に前述したガイド上端シール部材13が嵌合される(図8、図9)。
【0028】
上記のガラスガイド構造3の組み立て手順を説明すると、先ず、ガラスガイド部材10の後側チャンネル16の上端部に芯材ブラケット21を位置決めする。この位置決めは、膨出部26をガラスガイド部材10の連結部分10cの上端縁に係合させることにより行われる。図10から分かるように、芯材ブラケット21の膨出部26はガラスガイド部材10の後側チャンネル16から前側チャンネル15に向けて侵入した状態となる。このようにして芯材ブラケット21をガラスガイド部材10に位置決めした状態では、第2開口27が第1開口25に整合した状態になる。芯材ブラケット21をガラスガイド部材10に位置決めした後、芯材ブラケット21は溶接によりガラスガイド部材10に固定される。
【0029】
次いで、ガラスガイド部材10の前側チャンネル15の上端部にガイド延長部品20を装着する。この装着は、ガイド延長部品20の第1、第2の側片部分20b、20cを、夫々、ガラスガイド部材10の2つの側壁部分10a、10bの上に載置した状態で、突起22をガラスガイド部材10の第1開口25の中に挿入することにより行われる。これにより、ガイド延長部品20の第1、第2の側片部分20b、20cは、ガラスガイド部材10の全長を上方に向けて延長する延長部分を構成することになる。そして、突起22を第1開口25の中に挿入すると、突起22の拡大ヘッド22bが後側チャンネル16に位置し、拡大ヘッド22bの係合爪22cが後側チャンネル16の底壁(第1開口25の周辺部分)と係合し、これによりガラスガイド部材10に対するガイド延長部品20の位置決めが行われる。
【0030】
図11は図7のXI−XI線に沿った断面図であり、また、図12は図8のXII−XII線に沿った断面図である。これら図11、図12から分かるように、ガイド延長部品20の突起22は、ガラスガイド部材10の第1開口25の中に進入し、拡大ヘッド22bがガラスガイド部材10の連結部10cの後側チャンネル16側に位置し、そして、係合爪22cが連結部10cの後側チャンネル16側の板面と係合した状態となる。すなわち、係合爪22cは、第1開口25の開口周辺における上方領域と係合した状態となる。
【0031】
拡大ヘッド22bはその厚みが、金属製の芯材ブラケット21の中央プレート部分21aの厚みと同じかこれよりも僅かに薄い程度であるのがよい。前述したように、芯材ブラケット21の第2開口27は、ガラスガイド部材10の第1開口25よりも上方に拡大した大きさを有しており、これにより、芯材ブラケット21の第2開口27とガラスガイド部材10の第1開口25との間に形成される段部28(図12)に、前述した拡大ヘッド22bが収容され、これにより、拡大ヘッド22bは、芯材ブラケット21の第2開口27に収容されて中央プレート部分21aとほぼ面一の状態となる。
【0032】
上述した手順でガイド延長部品20、芯材ブラケット21をガラスガイド部材10に組み付けた後に、ガイド上端シール部材13を上方側から挿入することで、完成形である図8、図9に図示の状態になる。
【0033】
この第1実施例では、図13、図14から分かるように、ガイド延長部品20の第1、第2側片部分20b、20cがガラスガイド部材10の側壁部分10a、10bの外表面と略面一となるように形作られている。なお、図14は、図13の一部を拡大した図である。そして、ガイド上端シール部材13の下端は、ガイド延長部品20の第1、第2側片部分20b、20cの下端を超えてガラスガイド部材10の上端部まで垂下する長さ寸法を有し、ガラスガイド部材10の下端部を構成する下端リップ13aはガラス上端シール部材13に密着した状態となる。
【0034】
また、図13から理解できるように、ガイド上端シール部材13の内部には、ガイド延長部品20、芯材ブラケット21と相補的な形状を有する凹部が形成されており、これによりガラスガイド部材10に装着されたガイド延長部品20、芯材ブラケット21はガイド上端シール部材13とガラスガイド部材10との協同作用によって固定された状態となる。
【0035】
図1〜図14を参照して説明した実施例のガラスガイド構造13によれば、ガラスガイド部材10の上端から上方に延びるガイド延長部品20、芯材ブラケット21によってガラスガイド構造13の上端部分の剛性を確保しつつ、この上端部分の外形を自由に設定することができるため、ロール成形又はプレス成型のガラスガイド部材10を使って、従来の削り出しによるガラスガイド構造によることなく、比較的安価にガラスガイド構造13に加わる横方向荷重や下方荷重に対する取付剛性を確保することができる。また、ガイド延長部品20、芯材ブラケット21が弾性のガラス上端シール部材13によって覆われているため、乗員がガラス上端シール部材13に触れたとしても怪我する虞は無いのは勿論であるが、ガラス上端シール部材13は単に挿入するだけでよいため、作業性も優れている。
【0036】
また、ガイド延長部品20は、平板状の中央プレート部分20aを主体として、これにガラスガイド部材10の上端面に載置される第1、第2の側片部分20b、20cと共にガラスガイド部材10の第1開口25に嵌合する突起22が設けられているため、ガイド延長部品20をガラスガイド部材10に組み付けるときに、先ず第1、第2の側片部分20b、20cをガラスガイド部材10の上端面(側壁部分10a、10bの上端面)に載置した後に、突起22をガラスガイド部材10の第1開口25に挿入するときに、中央プレート部分20aの弾性変形を使って突起22を第1開口25に嵌入することができるため、ガイド延長部品20をガラスガイド部材10に組み付ける際の作業性も優れている。
【0037】
更に、ガイド延長部品20の突起22は拡大ヘッド22bを備え、この拡大ヘッド22bによって第1開口25の周辺部分と係合させるようにしてあるため、ガイド延長部品20の固定及び抜け止めを確実なものにすることができる。また、このガイド延長部品20はプラスチック成型品であるため形状を自在に設計することができる。このことから、ガラスガイド部材10の側壁部分10a、10bの上端面の形状の如何に関わりなく、ガラスガイド部材10及びガイド延長部品20により構成されるガラスガイド構造3の骨格の全長長さやガイド延長部品20によって形成される上端部分の形状を設計する自由度を高めることができる。
【0038】
また、ガラスガイド部材10の全長を上方に向けて実質的に延長するガイド延長部品20、芯材ブラケット21を、夫々、ガラスガイド部材10の前側及び後側チャンネル15,16に配設して、ガラスガイド部材10の連結部分10cをガイド延長部品20、芯材ブラケット21で挟み込むようにしてあるため、ガラスガイド部材10を挟んで配置される三角窓5、可動ドアガラス6の双方に対する支持面積を大きくすることができる。換言すれば、ガラスガイド部材10の前側又は後側チャンネル15、16の何れか一方側にガイド延長部品、芯材ブラケット20、21を配設した場合には、このガイド延長部品20、芯材ブラケット21によってチャンネル15(16)の深さが浅くなってしまい、三角窓5又は可動ドアガラス6に対する支持面積が小さくなってしまう。
【0039】
また、相対的に大きな面積を有するドアガラス6の側である後側チャンネル16に、後方(ドアガラス6側)に向けて略コ字状に延びる第1、第2側片部分21b、21cを備えた芯材ブラケット21を設けてあるため、この芯材ブラケット21によってドアガラス6に対する支持剛性を高めることができる。
【0040】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明は図1〜図14に図示の実施例に限定されることなく、図15、図16に示すように、変形例のガイド延長部品40の外形輪郭をガラスガイド部材10の外形よりも若干大きめに設計して、ガイド延長部品40とガラスガイド部材10との間に段部28を形成するようにしてもよい。図16は、図15の矢印XVIで示す部分を拡大した図である。これら図面において参照符号40b、40cは、前述したガラスガイド部品20の第1、第2の側片部分20b、20cに夫々対応している。この図15、図16に図示の変形例によれば、段部28によってガイド上端シール部材13の抜け止めを図ることができる。また、ガイド上端シール部材13の下端部つまり或程度の厚みを備えた下端リップ13aは段部28を超えて下方に垂下することになるが、段部28の部分は傾斜した状態となるため、段部28による急激な落差を緩和することができるため車両の空力特性や外観上の見栄えの悪化を抑えることができる。
【0041】
図1〜図14の実施例及び図15、図16の変形例は、その適用例として、図1に図示の2シータオープンカー1を典型例として開示したが、図17に図示の車両30のように、ヒンジ31aによる片開きのバックドア31を備え、このバックドア31のリアガラスとして、互いに隣接した第1、第2のサッシュレスリアガラス32、33を採用した場合に、第1、第2のリアガラス32、33の間に介在するガラスガイド構造として応用することができる。この場合に、第1のリアガラス32を固定式とし、第2のリアガラス33を昇降可能にすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施例のガラスガイド構造を適用した2シータオープンカーの側面図である。
【図2】図1の2シータオープンカーに適用したガラスガイド構造を抽出した図である。
【図3】図2のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】実施例のガラスガイド構造の構成要素であるガラスガイド部材、ガイド延長部品、芯材ブラケットの分解斜視図である。
【図5】ガイド延長部品の斜視図である。
【図6】芯材ブラケットの斜視図である。
【図7】ガラスガイド部材にガイド延長部品及び芯材ブラケットを組み付けた状態を示す斜視図である。
【図8】ガラスガイド部材にガイド延長部品及び芯材ブラケットを組み付けた後に弾性のガラス上端シール部材を装着した状態を示す斜視図である。
【図9】図8と同様に、ガラスガイド部材にガイド延長部品及び芯材ブラケットを組み付けた後に弾性のガラス上端シール部材を装着した状態を示す斜視図である。
【図10】図7のX−X線に沿った横断面図である。
【図11】図7のXI−XI線に沿った横断面図である。
【図12】図8のXII−XII線に沿った横断面図である。
【図13】図9のXIII−XIII線に沿った縦断面図である。
【図14】図12の要部を抽出した部分拡大断面図である。
【図15】図13に対応した図であり、変形例を説明するための断面図である。
【図16】図15の矢印XVIで示す部分を拡大した部分拡大図である。
【図17】実施例のガラスガイド構造を、バックドアを備えた車両に適用可能であることを説明するための図であり、車両を斜め後方から見た図である。
【符号の説明】
【0043】
1 車両
2 サイドドア
3 ガラスガイド構造
5 三角窓
6 可動ドアガラス
10 ガラスガイド部材
10a ガラスガイド部材の一方の側壁部分
10b ガラスガイド部材の他方の側壁部分
11 ブラケット
13 ガイド上端シール部材
13a ガイド上端シール部材の下端リップ
15 ガラスガイド部材の前側チャンネル
16 ガラスガイド部材の後側チャンネル
20 ガイド延長部品
20a ガイド延長部品の中央プレート部分
20b ガイド延長部品の第1側片部分(延長部分)
20c ガイド延長部品の第2側片部分(延長部分)
21 芯材ブラケット
21a 芯材ブラケットの中央プレート部分
21b 芯材ブラケットの第1側片部分
21c 芯材ブラケットの第2側片部分
22 ガイド延長部品の突起
25 ガラスガイド部材の開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに並設された2つのサッシュレスガラスを備えたドアを有し、2つのサッシュレスガラスの間に配設されたガラスガイド部材の上端部に弾性のガイド上端シール部材が装着され、該ガイド上端シール部材によって前記2つのサッシュレスガラスの上端部が止水される車両のガラスガイド構造において、
前記ガラスガイド部材の上端部に、該ガラスガイド部材とは別部材の芯材ブラケットが設けられ、該芯材ブラケットにより前記ガラスガイド部材の全長が上方に延長されると共に、該芯材ブラケットが前記ガイド上端シール部材の内部に侵入していることを特徴とする車両のガラスガイド構造。
【請求項2】
前記ガラスガイド部材の上端部には、該ガラスガイド部材及び前記芯材ブラケットとは別部材のガイド延長部品が設けられ、
該ガイド延長部品には、前記ガラスガイド部材の上端面に載置されて該ガラスガイド部材の全長を上方に延長する延長部分が形成され、該延長部分が前記ガイド上端シール部材の内部に侵入していることを特徴とする請求項1に記載の車両のガラスガイド構造。
【請求項3】
前記ガラスガイド部材の上端部分に開口が設けられ、該開口に嵌合する突起が前記ガイド延長部品に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の車両のガラスガイド構造。
【請求項4】
前記芯材ブラケットと前記ガイド延長部品とが前記ガラスガイド部材を挟み込むように配設されていることを特徴とする請求項3に記載の車両のガラスガイド構造。
【請求項5】
前記2つのサッシュレスガラスの一方のサッシュレスガラスが他方のサッシュレスガラスよりも大きな面積を有し、
前記芯材ブラケットが、前記ガラスガイド部材の前記一方のサッシュレスガラス側に配設されると共に、前記芯材ブラケットを平面視したときに、前記一方のサッシュレスガラスの側縁を受け入れることのできる略コ字状に延びる形状を有していることを特徴とする請求項1に記載の車両のガラスガイド構造。
【請求項6】
前記ガラスガイド部材が、互いに対抗した2つのチャンネルを備えた横断面H状の形状を有し、該2つのチャンネルのうち、前記大きな面積を備えた一方のサッシュレスガラスを受け入れる一方のチャンネルの深さが他方のチャンネルの深さよりも深いことを特徴とする請求項5に記載の車両のガラスガイド構造。
【請求項7】
前記ガラスガイド部材がロール成形品であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の車両のガラスガイド構造。
【請求項8】
前記ガイド延長部品が前記ガラスガイド部品の外表面から突出する形状を有し、該ガイド延長部品と前記ガラスガイド部材との間の段部を超えて前記ガイド上端シール部材の下端部が下方に延びていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の車両のガラスガイド構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−232137(P2006−232137A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−50897(P2005−50897)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【出願人】(000147660)株式会社石▼崎▲本店 (28)
【出願人】(000240949)片山工業株式会社 (42)
【出願人】(000196107)西川ゴム工業株式会社 (454)
【Fターム(参考)】