説明

車両のサスペンションアーム支持構造

【課題】 車両のサスペンションアーム支持構造において、サブフレームを軽金属により形成して軽量化を図りながら、サブフレームにサスペンションアームが無理なく精度良く支持されるように構成する。
【解決手段】 サブフレーム5に受け部9を一体的に形成して横外方に延出し、サブフレーム5の受け部9から下方に所定間隔を置いて位置するように、鋼板部材15をサブフレーム5にボルト又はナットにより連結する。サブフレーム5の受け部9と鋼板部材15との間にサスペンションアーム13の基部13bを配置し、サブフレーム5の受け部9と鋼板部材15とを上下方向に貫通する連結ボルト16により、サスペンションアーム13の基部13bをサブフレーム5にゴムブッシュジョイント14を介して支持させ、連結ボルト16によりサブフレーム5の受け部9をサイドメンバー4に連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車や商用車等において、サスペンションアームの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両においては例えば特許文献1に開示されているように、車体の前部下部に前後方向に右及び左のサイドメンバー(特許文献1の図1及び図2のFR,FL)を配置し、サブフレーム(特許文献1の図1及び図2のFS)を、右及び左のサイドメンバーに亘って連結して、前輪を支持するサスペンションアーム(特許文献1の図1及び図2の11)を、サブフレームに支持させるように構成したものがある。
【0003】
特許文献1では、サスペンションアームを支持するサブフレームの複数の支持部分のうちの一つの支持部分において、サブフレームに上受け部(特許文献1の図2及び図5の21,22,22a)を備えて横外方に延出し、サブフレームの上受け部から下方に所定間隔を置いて、サブフレームに下受け部(特許文献1の図2及び図5の33)を備えて横外方に延出している。これにより、サブフレームの上及び下受け部を上下方向に貫通する連結ボルト(特許文献1の図2及び図5の34)により、サスペンションアームをサブフレームに、ゴムブッシュジョイント(特許文献1の図2及び図5の13)を介して支持させている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−370670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では軽量化の為に、サブフレームを軽金属により形成することが考えられている。このようにサブフレームを軽金属により形成する場合、特許文献1のように、サブフレームに上受け部(特許文献1の図2及び図5の21,22,22a)を備えて横外方に延出し、サブフレームの上受け部から下方に所定間隔を置いて、サブフレームに下受け部(特許文献1の図2及び図5の33)を備えて横外方に延出するように構成すると、サブフレームの上及び下受け部の間隔を、ゴムブッシュジョイント(サスペンションアームの基部)の上下長に精度良く合わす必要がある。
【0006】
これについて言い換えると、例えば軽金属によりサブフレームを形成した後、サブフレームの上及び下受け部の間隔が、ゴムブッシュジョイント(サスペンションアームの基部)の上下長よりも大きい場合、連結ボルトを締め込むことにより、サブフレームの下受け部を上方に曲げようとする力が発生し、サブフレームの下受け部の付近に割れの発生するおそれがある。従って、軽金属によりサブフレームを形成した後、サブフレームの上及び下受け部に機械加工を施して、サブフレームの上及び下受け部の間隔を、ゴムブッシュジョイント(サスペンションアームの基部)の上下長に精度良く合わす必要がある。
【0007】
さらにダイキャストによりサブフレームを形成する場合、特許文献1のように、サブフレームに上受け部を備えて横外方に延出し、サブフレームの上受け部から下方に所定間隔を置いて、サブフレームに下受け部を備えて横外方に延出するように構成すると、スライド金型を使用しなければ、サブフレームに上及び下受け部をダイキャストにより一体的に形成することができない。
【0008】
本発明は、車両のサスペンションアーム支持構造において、サブフレームを軽金属により形成して軽量化を図りながら、サブフレームにサスペンションアームが無理なく精度良く支持されるように構成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(構成)
本発明の第1特徴は、車両のサスペンションアーム支持構造において次のように構成することにある。
車体の下部に前後方向に配置された右及び左のサイドメンバーと、右及び左のサイドメンバーに亘って連結される軽金属製のサブフレームとを備えて、車輪を支持するサスペンションアームをサブフレームに支持させる。サスペンションアームを支持するサブフレームの複数の支持部分のうちの一つの支持部分において、サブフレームに受け部を一体的に形成して横外方に延出し、サブフレームの受け部から下方に所定間隔を置いて位置するように、鋼板部材をサブフレームにボルト又はナットにより連結する。サブフレームの受け部と鋼板部材との間にサスペンションアームの基部を配置し、サブフレームの受け部と鋼板部材とを上下方向に貫通する連結ボルトにより、サスペンションアームの基部をサブフレームにゴムブッシュジョイントを介して支持させ、連結ボルトによりサブフレームの受け部を右及び左のサイドメンバーに連結している。
【0010】
(作用)
[I]
本発明の第1特徴によると、サブフレームを軽金属により形成し、サブフレームに受け部を一体的に形成して横外方に延出した場合、サブフレームの下受け部に相当する部材部材として、サブフレームとは別部材である鋼板部材を使用している。
これによって、本発明の第1特徴によると、サブフレームの受け部と鋼板部材との間隔が、ゴムブッシュジョイントの上下長に精度良く合っていなくても(例えば、サブフレームの受け部と鋼板部材との間隔が、ゴムブッシュジョイント(サスペンションアームの基部)の上下長よりも少し大きくても)、連結ボルト(又はナット)の締め込みによって鋼板部材が弾性的にたわむことにより、サブフレームの受け部と鋼板部材との間隔とゴムブッシュジョイント(サスペンションアームの基部)の上下長との差が、鋼板部材によって吸収される。
【0011】
本発明の第1特徴のように、サブフレームの受け部と鋼板部材との間隔とゴムブッシュジョイント(サスペンションアームの基部)の上下長との差が、鋼板部材によって吸収されると、サブフレームの受け部に機械加工を施す必要がないのであり、サブフレームの受け部を曲げようとする力は発生せず、サブフレームの受け部の付近に割れの発生するようなことがない。
【0012】
本発明の第1特徴によると、鋼板部材を取り付ける際、ゴムブッシュジョイント(サスペンションアームの基部)の位置に組み付け誤差が生じていても、鋼板部材をサブフレームに取り付ける際の取付位置を微調節することによって、ゴムブッシュジョイント(サスペンションアームの基部)の位置の組み付け誤差を、鋼板部材によって吸収することができる。
【0013】
本発明の第1特徴によると、サブフレームを軽金属により形成し、サブフレームに受け部を一体的に形成して横外方に延出した場合、サブフレームとは別部材である鋼板部材を使用しており、特許文献1のようなサブフレームの上及び下受け部を備えていないので、例えばダイキャストによりサブフレームを形成する場合に、スライド金型を使用しなくても、サブフレーム及びサブフレームの受け部をダイキャストにより一体的に形成することができる。
【0014】
[II]
特許文献1のように、サブフレームから上及び下受け部(特許文献1の図2及び図5の21,22,22a,33)が横外方に延出されていると、メンテナンス等によりサスペンションアームをサブフレームから取り外す場合、連結ボルト(特許文献1の図2及び図5の34)を下方に抜いた後、サスペンションアームをサブフレームの上及び下受け部から横外方に抜き出すことによって、サスペンションアームを取り外すことになる。
【0015】
しかしながら、実際にはサスペンションアームの周りにはタイヤハウスや他の部材が配置されているので、サスペンションアームをサブフレームの上及び下受け部から横外方に抜き出すことは困難なものとなっている。従って、右及び左のサイドメンバーからサブフレームを取り外して、サブフレームを下方に移動させた後、連結ボルトを下方に抜いて、サスペンションアームをサブフレームの上及び下受け部から横外方に抜き出して取り外すことになる。
【0016】
これに対して本発明の第1特徴によると、メンテナンス等によりサスペンションアームをサブフレームから取り外す場合、連結ボルトを下方に抜いたり、連結ボルトからナットを取り外したりした後、サブフレームから鋼板部材を取り外すと、サブフレームの受け部に位置するサスペンションアームの基部の下方が開放されるので、サスペンションアームの基部を下方に抜き出して取り外すことができるのであり、タイヤハウスや他の部材の影響を受けることなく、サスペンションアームをサブフレームから下方に抜き出して取り外すことができる。
このようにタイヤハウスや他の部材の影響を受けることなく、サスペンションアームをサブフレームから下方に抜き出して取り外すことができれば、サスペンションアームをサブフレームから取り外す場合に、右及び左のサイドメンバーからサブフレームを取り外す必要がなくなる。
【0017】
[III]
前項[II]に記載のようにメンテナンス等によりサスペンションアームをサブフレームから取り外す場合に対して、車両を生産する場合、一般にはサブフレームにサスペンションアームや他の部材を取り付けた状態で、サブフレーム及びサスペンションアームを一つのユニットとして、右及び左のサイドメンバーに取り付けることが多い。このような生産工程において、本発明の第1特徴では、サブフレームに事前にサスペンションアームや鋼板部材を取り付けておけばよい。
【0018】
前述のような生産工程に対して、サブフレームに事前にサスペンションアームを取り付けずに、先ず右及び左のサイドメンバーにサブフレームを取り付け、この後にサブフレームにサスペンションアームを取り付けると言うような生産工程もある。
このような生産工程において、本発明の第1特徴によると、先ず右及び左のサイドメンバーにサブフレームを取り付ける。この場合、サブフレームの受け部の付近の下方が開放されるているので、タイヤハウスや他の部材の影響を受けることなく、サスペンションアームを上方に移動させて、サブフレームの受け部にサスペンションアームの基部を位置させることができるのであり、この後に鋼板部材をサブフレームに取り付け、連結ボルトをサブフレームの受け部と鋼板部材とに亘って上下方向に貫通させて、サスペンションアームの基部をサブフレームにゴムブッシュジョイントを介して支持させるのであり、連結ボルトによりサブフレームの受け部を右及び左のサイドメンバーに連結する。
【0019】
以上のように、本発明の第1特徴によると、サブフレーム及びサスペンションアームを一つのユニットとして右及び左のサイドメンバーに取り付けると言うような生産工程、並びに、先ず右及び左のサイドメンバーにサブフレームを取り付け、この後にサブフレームにサスペンションアームを取り付けると言うような生産工程の2つの生産工程に対応することができる。
【0020】
[IV]
本発明の第1特徴によると、サブフレームの受け部の下側にサスペンションアームの基部(ゴムブッシュジョイント)が位置し、サスペンションアームの基部(ゴムブッシュジョイント)の下側に鋼板部材が位置することになる。
これにより、サブフレームの受け部の付近において、鋼板部材が地面の障害物(例えば歩道の側石等)に接触する可能性が高く、サブフレームの受け部及びサスペンションアームの基部(ゴムブッシュジョイント)が地面の障害物に接触する可能性は低くなるので、サブフレームの受け部及びサスペンションアームの基部(ゴムブッシュジョイント)の破損を少なくすることができる。この場合、前項[II]に記載のようにサブフレームから鋼板部材を容易に取り外すことができるので、前述のように鋼板部材が地面の障害物に接触して破損しても、鋼板部材を交換すればよい。
【0021】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、車両のサスペンションアーム支持構造において、連結ボルト(又はナット)の締め込みによって鋼板部材が弾性的にたわむことにより、サブフレームの受け部と鋼板部材との間隔とゴムブッシュジョイント(サスペンションアームの基部)の上下長との差が、鋼板部材によって吸収される点、並びに鋼板部材をサブフレームに取り付ける際の取付位置を微調節することによって、ゴムブッシュジョイント(サスペンションアームの基部)の位置の組み付け誤差を、鋼板部材によって吸収することができる点により、サスペンションアームの取付精度を向上させることができた。
【0022】
本発明の第1特徴によると、サブフレームの受け部に機械加工を施す必要がない点、並びに、サブフレームの受け部を曲げようとする力が発生せず、サブフレームの受け部の付近に割れの発生するようなことがない点により、サブフレームの受け部及びサスペンションアームの基部(ゴムブッシュジョイント)の耐久性、及びメンテナンス性を向上させることができた。
又、例えばダイキャストによりサブフレームを形成する場合、スライド金型を使用しなくてもサブフレーム及びサブフレームの受け部をダイキャストにより一体的に形成することができることにより、サブフレームの生産コストの低減を図ることもできる。
【0023】
本発明の第1特徴によると、右及び左のサイドメンバーからサブフレームを取り外さなくても、サスペンションアームをサブフレームから取り外すことができる点、並びに、鋼板部材が地面の障害物に接触して破損しても、鋼板部材を容易に交換することができる点により、作業性を向上させることができた。
本発明の第1特徴によると、サブフレーム及びサスペンションアームに関して、2つの生産工程に対応することができるようになって、生産工程に対応した融通性を向上させることができた。
【0024】
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴の車両のサスペンションアーム支持構造において次のように構成することにある。
鋼板部材をサブフレームから延出して、鋼板部材の延出部分を車両の固定部に連結している。
【0025】
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第2特徴によると、サブフレームが鋼板部材によっても車両の固定部に連結されるので、サブフレームが強固に支持されるようになる。
【0026】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、サブフレームが強固に支持されるようになって、サブフレームの支持強度を高めることができた。
【0027】
(構成)
本発明の第3特徴は、本発明の第2特徴の車両のサスペンションアーム支持構造において次のように構成することにある。
右及び左のサイドメンバー、サブフレームが車体の前部下部に配置され、サスペンションアームを支持するサブフレームの複数の支持部分のうちの一つの支持部分がサブフレームの後部に位置する。鋼板部材をサブフレームから後方に延出して、鋼板部材の延出部分を右及び左のサイドメンバーに連結している。
【0028】
(作用)
本発明の第3特徴によると、本発明の第1及び第2特徴と同様の「作用」を備えておりこれに加えて以下のような「作用」を備えている。
車両では一般に、前方からの衝突の際に右及び左のサイドメンバーが破壊されることによって、衝突のエネルギーが吸収されるように構成されている。
この場合、本発明の第3特徴によれば、前方からの衝突の際に右及び左のサイドメンバーが破壊されて、衝突のエネルギーが吸収されるのであり、これに伴って右及び左のサイドメンバーとサブフレームとの連結部分が破壊されると、衝突のエネルギーによりサブフレームが後方に押されるので、これに伴って鋼板部材が破壊されることにより(特にサブフレームから後方に延出されている鋼板部材の延出部分が折れ曲がることにより)、衝突のエネルギーが吸収されるようになる。
【0029】
(発明の効果)
本発明の第3特徴によると、本発明の第1及び第2特徴と同様の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第3特徴によると、車体が前方から衝突した際の衝突のエネルギーを、右及び左のサイドメンバーに加えて鋼板部材にも吸収させることができるようになり、車両における衝突のエネルギーの吸収機能を高めることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
図1に示すように、乗用車等の車両において、車体の前部下部の右及び左側(エンジンルームの右及び左側)に、右及び左のサイドメンバー1が車体の前後方向に配置されている。サイドメンバー1は、後部分2、後部分2よりも高い位置の前部分3、前及び後部分2,3に亘る中間部分4を備えて構成されている。
【0031】
図1,2,3に示すように、サブフレーム5がアルミダイキャスト(軽金属の一例)によって一体的に形成されており、サブフレーム5の右及び左の横壁部6の前部に、ボス部7及び支柱状の連結部8が一体的に形成されている。図1,2,3,6に示すように、サブフレーム5の右及び左の横壁部6の後部の上部から、受け部9が一体的に形成されて横外方に延出されており、サブフレーム5の右及び左の横壁部6の後部及び受け部9の後部から、後壁部10が一体的に形成されて横外方に延出され、後壁部10の後部に連結部11が一体的に形成されている。
この場合、サブフレーム5はスライド金型を使用せずにアルミダイキャストにより一体的に形成されており、サブフレーム5の横壁部6、ボス部7、連結部8、受け部9、後壁部9及び連結部11等に機械加工は施されていない。
【0032】
図1及び図2に示すように、前輪12を支持する二股状のサスペンションアーム13が備えられており、サスペンションアーム13の前の基部13aが横向きのゴムブッシュジョイント(図示せず)を介して、サブフレーム5のボス部7に上下揺動自在に支持されている。右及び左のサイドメンバー1の前部分3に連結部3aが備えられており、サブフレーム5の連結部8がボルトによって右及び左のサイドメンバー1の前部分3の連結部3aに連結されている。
【0033】
図3,4,5に示すように、サスペンションアーム13の後の基部13bは平面視でリング状をしており、サスペンションアーム13の後の基部13bの内部に、ゴムブッシュジョイント14が上下向きに取り付けられている。ゴムブッシュジョイント14は、内側の金属製の円筒部材14a、外側の金属製のリング部材14b、円筒部材14a及びリング部材14bに亘って接続されるゴムブッシュ14cによって構成されており、ゴムブッシュジョイント14のリング部材14bが、サスペンションアーム13の後の基部13bに取り付けられている。
【0034】
図3,4,5に示すように、サスペンションアーム13の後の基部13b(ゴムブッシュジョイント14の円筒部材14a)が、サブフレーム5の受け部9に下側から当て付けられて、後述する鋼板部材15の連結部15aが、サスペンションアーム13の後の基部13b(ゴムブッシュジョイント14の円筒部材14a)に、下側から当て付けられている。鋼板部材15の連結部15aの連結口、サスペンションアーム13の後の基部13b(ゴムブッシュジョイント14の円筒部材14a)、及びサブフレーム5の受け部9の連結口に、連結ボルト16が下側から挿入されている(上下方向に貫通)。右及び左のサイドメンバー1の中間部分4の連結部4aにナット17が固定されており、連結ボルト16が右及び左のサイドメンバー1の中間部分4の連結部4a(ナット17)に連結されている。これにより、サスペンションアーム13(前及び後の基部13a,13b)が、ゴムブッシュジョイント14を介してサブフレーム5(ボス部7及び受け部9)に上下揺動自在に支持されている。
【0035】
この場合に、図4及び図5に示すように、サブフレーム5の受け部9と鋼板部材15の連結部15aとの間隔が、ゴムブッシュジョイント14の円筒部材14aの上下長に精度良く合っていなくても(例えば、サブフレーム5の受け部9と鋼板部材15の連結部15aとの間隔が、ゴムブッシュジョイント14の円筒部材14aの上下長よりも少し大きくても)、連結ボルト16の締め込みによって鋼板部材15の連結部15aが弾性的に上方にたわむことにより、サブフレーム5の受け部9と鋼板部材15の連結部15aとの間隔と、ゴムブッシュジョイント14の円筒部材14aの上下長との差が、鋼板部材15によって吸収される(鋼板部材15の連結部15aが、ゴムブッシュジョイント14の円筒部材14aの下端の位置に合わされる)。
前述の連結ボルト16の締め込みの際に、鋼板部材15の連結部15aが弾性的に上方にたわむことにより、サブフレーム5の受け部9を下方に曲げようとする力は発生せず、サブフレーム5の受け部9の付近に割れの発生するようなことがない。
【0036】
図4,5,6に示すように、鋼板部材15は鋼板をプレス加工して、一体的に形成されており、3個の連結部15a,15b,15cが同一の平面に位置するように三角状に配置され、連結部15cから屈曲部15eが延出されて、屈曲部15eに連結部15dが接続されている。補強のリブ効果を得る為の凹部15fが連結部15a,15b,15cの各々に亘って形成されており、屈曲部15eにも凹部15fが形成されている。
【0037】
図2,4,5,6に示すように、鋼板部材15の連結部15aが連結ボルト16によって、サブフレーム5の受け部9及び右及び左のサイドメンバー1の中間部分4の連結部4a(ナット17)に連結されており、鋼板部材15の連結部15bがボルト18によってサブフレーム5に連結され、鋼板部材15の連結部15cがボルト19によってサブフレーム5の連結部11に連結されている。この場合、平面視(図2及び図6参照)、鋼板部材15の連結部15a,15b,15c(連結ボルト16及びボルト18,19)が、三角形状に配置されている。図2,3,4,6に示すように、サブフレーム5の連結部11から後方に、鋼板部材15の屈曲部15eが延出されており、鋼板部材15の連結部15dがボルト20によって右及び左のサイドメンバー1の後部分2に連結されている。
【0038】
以上の構造により、サブフレーム5の連結部8がボルトによって右及び左のサイドメンバー1の前部分3の連結部3aに連結されており、サブフレーム5の受け部9が連結ボルト16によって右及び左のサイドメンバー1の中間部分4の連結部4a(ナット17)に連結されている。鋼板部材15の連結部15a,15b,15cが連結ボルト16及びボルト18,19によって、サブフレーム5、サブフレーム5の受け部9及び連結部11に連結されており、鋼板部材15の連結部15dがボルト20によって右及び左のサイドメンバー1の後部分2に連結されている。
【0039】
これによって、図3,4,5,6に示すように、連結ボルト16及びボルト18,19,20を取り外すことにより、鋼板部材15を下方に抜き出して取り外すことができるのであり、サスペンションアーム13の前の基部13aをサブフレーム5のボス部7から取り外すことにより、タイヤハウスや他の部材の影響を受けることなく、サスペンションアーム13をサブフレーム5から下方に抜き出して取り外すことができる。この場合、右及び左のサイドメンバー1からサブフレーム5を取り外す必要がない。
【0040】
図1及び図3に示す状態において、車体が前方から衝突した際、先ず右及び左のサイドメンバー1が破壊されることによって、衝突のエネルギーが吸収される。右及び左のサイドメンバー1において衝突のエネルギーが充分に吸収されると、サブフレーム5の連結部8及び受け部9が破壊されて、衝突のエネルギーが鋼板部材15に掛かる。これにより、鋼板部材15が破壊されることによって(鋼板部材15の屈曲部15eが折れ曲がることによって)、さらに衝突のエネルギーが吸収される。
【0041】
[発明の実施の別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]において、右及び左のサイドメンバー1の中間部分4の連結部4aにナット17を固定するのではなく、右及び左のサイドメンバー1の中間部分4の連結部4aに連結ボルト16を下向きに固定して、連結ボルト16をスタッドボルトとして使用するように構成してもよい。
【0042】
このように構成すると、連結ボルト16の下端にナットを締め付けることにより、サスペンションアーム13(前及び後の基部13a,13b)が、ゴムブッシュジョイント14を介してサブフレーム5(ボス部7及び受け部9)に上下揺動自在に支持される。連結ボルト16の下端からナットを取り外すことにより、鋼板部材15を下方に抜き出して取り外すことができるのであり、サスペンションアーム13の前の基部13aをサブフレーム5のボス部7から取り外すことにより、タイヤハウスや他の部材の影響を受けることなく、サスペンションアーム13をサブフレーム5から下方に抜き出して取り外すことができる。
【0043】
同様にボルト18,19,20をサブフレーム5、サブフレーム5の連結部11、右及び左のサイドメンバー1の後部分2に下向きに固定して、ボルト18,19,20をスタッドボルトとして使用するように構成してもよい。このように構成すると、鋼板部材15をサブフレーム5、サブフレーム5の連結部11、右及び左のサイドメンバー1の後部分2にナットによって連結する。
【0044】
本発明は、車体の後部下部の右及び左のサイドメンバー及びサブフレームに対しても適用できる。又、サブフレームをアルミダイキャストではなく、アルミの押し出し材を溶接により接合して形成してもよく、アルミダイキャスト及びアルミの押し出し材に代えて、サブフレームをアルミ合金や、マグネシウム及びマグネシウム合金、ジュラルミン等の軽量で比較的脆い軽金属によって形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】車体の前部下部の付近の側面図
【図2】サブフレーム及びサスペンションアーム、鋼板部材の付近の平面図
【図3】サブフレーム及びサスペンションアーム、左のサイドメンバー、鋼板部材の付近の側面図
【図4】サブフレームの受け部、サスペンションアームの後の基部、ゴムブッシュジョイント、鋼板部材の付近の縦断側面図
【図5】サブフレームの受け部、サスペンションアームの後の基部、ゴムブッシュジョイント、鋼板部材の付近の縦断正面図
【図6】サブフレームの受け部、ゴムブッシュジョイント、鋼板部材の付近の分解斜視図
【符号の説明】
【0046】
1 右及び左のサイドメンバー
5 サブフレーム
9 サブフレーム9の受け部
12 前輪
13 サスペンションアーム
13b サスペンションアームの基部
14 ゴムブッシュジョイント
15 鋼板部材
16 連結ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の下部に前後方向に配置された右及び左のサイドメンバーと、前記右及び左のサイドメンバーに亘って連結される軽金属製のサブフレームとを備えて、車輪を支持するサスペンションアームを前記サブフレームに支持させると共に、
前記サスペンションアームを支持するサブフレームの複数の支持部分のうちの一つの支持部分において、前記サブフレームに受け部を一体的に形成して横外方に延出し、前記サブフレームの受け部から下方に所定間隔を置いて位置するように、鋼板部材を前記サブフレームにボルト又はナットにより連結して、
前記サブフレームの受け部と鋼板部材との間にサスペンションアームの基部を配置し、前記サブフレームの受け部と鋼板部材とを上下方向に貫通する連結ボルトにより、前記サスペンションアームの基部をサブフレームにゴムブッシュジョイントを介して支持させ、前記連結ボルトによりサブフレームの受け部を右及び左のサイドメンバーに連結している車両のサスペンションアーム支持構造。
【請求項2】
前記鋼板部材をサブフレームから延出して、前記鋼板部材の延出部分を車両の固定部に連結している請求項1に記載の車両のサスペンションアーム支持構造。
【請求項3】
前記右及び左のサイドメンバー、サブフレームが車体の前部下部に配置され、前記サスペンションアームを支持するサブフレームの複数の支持部分のうちの一つの支持部分がサブフレームの後部に位置し、
前記鋼板部材をサブフレームから後方に延出して、前記鋼板部材の延出部分を右及び左のサイドメンバーに連結している請求項2に記載の車両のサスペンションアーム支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−82574(P2006−82574A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266252(P2004−266252)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】