説明

車両のシャシフレーム構造

【課題】エンジンマウント部の構造を単純化することができるシャシフレーム構造を提供する。
【解決手段】シャシフレーム20は、左右一対のサイドレール21,22と、車両幅方向に延びるアウトリガー部材50と、サイドレール21,22に固定された補強プレート60,61とを含んでいる。サイドレール21,22の縦壁21a,22aの車両内側にマウント部材70,71が設けられている。マウント部材70,71は、ボルト65とナット66によって補強プレート60,61と共締めされている。マウント部材70,71は車両内側に向って略水平方向に延びる支持面80,81を有している。マウント部材70,71の下方にサポート部材110が設けられている。サポート部材110は、サイドレール21,22間に設けられている。サポート部材110の両端111,112は、補強プレート60,61の下方に延びる延出部60a,61aに結合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リヤエンジンバス等の車両のシャシフレーム構造に係り、特に車両後部のエンジンマウント部を含むシャシフレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のエンジンをシャシフレームに支持するために、防振ゴムを備えたマウント部材を有するエンジンマウント部が知られている。従来のエンジンマウント部は、車両の前後方向に延びる左右一対のサイドレールにそれぞれマウント部材を設けるとともに、エンジン側の部材(エンジン本体やトランスミッションの側面等)に、前記マウント部材によって支持される被支持部が形成されている。
【0003】
従来のマウント部材の上面すなわちエンジンの荷重を支える支持面は、車両の前後方向から見て車両の内側から外側に向って高くなる傾斜した形状(逆「ハ」の字形)となっている。このためこの支持面に当接するエンジン側の前記被支持部も前記支持面の傾斜角度に応じて、車両の内側から外側に向って高くなるように傾斜した形状となっている。(例えば下記特許文献1,2,3参照)
【特許文献1】実開平1−87029号公報
【特許文献2】実公平4−4912号公報
【特許文献3】実開平6−14584号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記マウント部材は、鋳物あるいは板金等からなる金属製の枠部と、枠部の内側に設けられた防振ゴムなどによって構成されている。このため従来のように傾斜した支持面を有するマウント部材と、傾斜した形状のエンジン側の被支持部とを有するエンジンマウント部は、構造が複雑となり部品数も多くなっている。しかもマウント部材の傾斜角度とエンジン側の被支持部の傾斜角度とを合致させる必要があるなど、マウント部材の構造が複雑となり、マウント部材やエンジン側の被支持部の製作に格別な配慮が必要であるなどの問題が生じている。
【0005】
従って本発明の目的は、エンジンマウント部の構造を簡略化することができる車両のシャシフレーム構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシャシフレーム構造は、車両の前後方向に延在し、該車両の幅方向に間隔を有して配置されかつ断面が略コ字形をなし、その開口部が車両内側を向く左右一対のサイドレールと、前記車両の幅方向に延在し、前記一対のサイドレールに固定されて該サイドレールから車両外側に延びるアウトリガー部材と、前記アウトリガー部材の下方で前記一対のサイドレールの車両幅方向の外側の面に沿って配設された左右一対の補強プレートと、前記左右一対のサイドレールのそれぞれの縦壁(ウェブ板)の車両幅方向の内側の面に前記補強プレートと共締めされ、かつ車両内側に向って略水平方向に延びる支持面を有するマウント部材と、前記マウント部材の下方で前記一対のサイドレール間に設けられ、車両幅方向に延びかつ両端が前記補強プレートを介して前記一対のサイドレールに結合されることにより前記一対のサイドレールどうしを連結するサポート部材とを具備している。
【0007】
本発明の1つの形態では、前記一対のサイドレールのそれぞれの前記開口部に、該開口部を覆うリンフォース部材が前記縦壁と対向して設けられ、該リンフォース部材には前記マウント部材を収容する大きさのマウント部材収容孔が形成され、該マウント部材収容孔は、前記マウント部材の上面に沿う上縁部と、前記マウント部材の下面に沿う下縁部と、これら上縁部と下縁部をつなぐ曲率の円弧部とからなる内周縁を有している。また前記一対の補強プレートはそれぞれ前記サイドレールの下方に延びる延出部を有し、これら延出部に前記サポート部材の両端が結合されている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係るシャシフレーム構造によれば、マウント部材の支持面が略水平方向に延びているため、マウント部材の構造が簡単となるだけでなく、エンジン側の被支持部も簡易な形状にすることができるため、マウント部の構成が簡単となる。このマウント部材の前記支持面を介して左右一対のサイドレールにエンジンやトランスミッションの荷重が加わる。本発明では、車両の幅方向に延びる前記サポート部材の両端がそれぞれ補強プレートを介して一対のサイドレールに締結されているため、一対のサイドレールの下部が互いに広がる方向に変形することをサポート部材によって抑制することができる。
【0009】
請求項2によれば、エンジンやトランスミッションの仕様等に応じて、リンフォース部材に形成するマウント部材収容孔の形状や位置を変えることにより、マウント部材をサイドメンバの縦壁(ウェブ板)の所望の位置に取付けることができる。請求項3によれば、補強プレートの下方に延びる延出部を介してサポート部材の両端がサイドレールに固定されるため、一対のサイドレールの下部どうしを高い強度で結合することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明の一実施形態に係るシャシフレーム構造について、図1から図7を参照して説明する。
図1は車両10の一例としてのリヤエンジンバスの後部を示している。この車両10の車体11の後部、すなわち後輪12の後側に形成されたオーバーハング部13に、エンジンルーム14が設けられている。
【0011】
図2と図3は、前記車両10の後部に設けられたシャシフレーム20を示している。図2において矢印Xが車両の前後方向を示し、矢印Yが車両の幅方向、矢印Zが上下方向を示している。図4はシャシフレーム20の車両幅方向に沿う横断面を示している。シャシフレーム20は、車両10の前後方向に延在する左右一対のサイドレール21,22を有している。サイドレール21,22は車両10の幅方向に間隔を有して配置されている。
【0012】
図4に示すようにサイドレール21,22は、それぞれ、上下方向に延びる縦壁(ウェブ板)21a,22aと、縦壁21a,22aの上端に設けられた上フランジ21b,22bと、縦壁21a,22aの下端に設けられた下フランジ21c,22cとを有している。すなわちサイドレール21,22は、互いに左右対称形でそれぞれ断面が略コ字形をなし、その開口部が車両内側を向いている。
【0013】
各サイドレール21,22のそれぞれの開口部には、この開口部を覆うようにリンフォース部材25,26が設けられている。リンフォース部材25,26はプレート状をなし、それぞれの上端が上フランジ21b,22bの下面に溶接され、それぞれの下端が下フランジ21c,22cの上面に溶接されている。これらリンフォース部材25,26は、サイドレール21,22の縦壁21a,22aと対向し、縦壁21a,22aと略平行となるように上下方向に延びている。なおリンフォース部材25,26は、エンジンルーム14から下記の第1の仕切壁31にわたって配設されている。
【0014】
図2と図3に示すように、サイドレール21,22の長手方向の途中に、後輪12の前側に位置する第1の仕切壁31と、後輪12の後側に位置する第2の仕切壁32と、エンジンルーム14の前壁を構成する第3の仕切壁33などが設けられている。これらの仕切壁31,32,33はそれぞれ車両10の幅方向に延びている。サイドレール21,22の後端に、車両幅方向の外側に広がるオフセットフレーム35,36を介して、リヤバンパに対応する骨格部材37が設けられている。
【0015】
第2の仕切壁32は車両幅方向に延びるクロスメンバ40を含んでいる。第2の仕切壁32の前側にもクロスメンバ41が設けられている。これらクロスメンバ40,41は、サイドレール21,22間に配置され、それぞれサイドレール21,22に溶接されている。
【0016】
図2等に示すように、エンジンルーム14の前壁を構成する第3の仕切壁33は、車両幅方向に延在するアウトリガー部材50を含んでいる。アウトリガー部材50はサイドレール21,22の上側に位置する上枠部50aと、一方のサイドレール21の車両外側に位置する側枠部50bと、他方のサイドレール22の車両外側に位置する側枠部50cと、仕切板50dなどを有し、サイドレール21,22に固定されている。側枠部50b,50cは、それぞれサイドレール21,22の車両外側に延びている。
【0017】
図3に示すように、エンジンルーム14にエンジンの一部をなすエンジン本体55や補機類等が収容されている。第2の仕切壁32と第3の仕切壁33との間にトランスミッション56が配置されている。トランスミッション56はエンジン本体55に結合されている。トランスミッション56の出力軸は、例えばリターダ装置やプロペラシャフトを介して後輪12用の差動機(いずれも図示せず)に接続されている。
【0018】
図4と図5に示すように、サイドレール21,22の縦壁(ウェブ板)21a,22aの車両幅方向の外側の面に沿って、左右一対の補強プレート(ガセット)60,61が設けられている。これら補強プレート60,61はアウトリガー部材50の下方に位置し、複数本のボルト65とナット66と当て板67などによって、サイドレール21,22に固定されている。補強プレート60,61は、それぞれサイドレール21,22の下方に延びる延出部60a,61aを有している。補強プレート60,61の周囲には、曲げ剛性を高めるために曲げ縁68(図5に示す)が形成されている。
【0019】
サイドレール21,22の縦壁21a,22aの車両幅方向の内側の面に、マウント部材70,71が設けられている。マウント部材70,71は補強プレート60,61と対応した位置に設けられ、補強プレート60,61を固定する前記ボルト65とナット66によって、補強プレート60,61と共締めされている。前記リンフォース部材25,26には、マウント部材70,71を収容することができる大きさのマウント部材収容孔75,76が形成されている。
【0020】
マウント部材70,71は、車両内側に向って略水平方向に延びる支持面80,81を有している。この支持面80,81によって、トランスミッション56の両側面の被支持部85,86(図4に示す)が支持されるようになっている。マウント部材70,71の支持面80,81が水平方向に延びているため、エンジン側の被支持部85,86も水平方向に延びる簡易な形状となっている。マウント部材70,71はトランスミッション56を支持しているが、エンジンの形式等によってはエンジン本体を支持するようにしてもよい。
【0021】
マウント部材70,71は互いに左右対称形であり、基本的な構成が共通であるため、以下に図6と図7に示す一方のマウント部材71を代表して説明する。
マウント部材71は、鋳物あるいは板金等からなる金属製の枠部90と、枠部90の内側に設けられた防振ゴム91などによって構成されている。マウント部材71は、補強プレート61と対応した位置、すなわちサイドレール22の縦壁22aを挟んで補強プレート61と反対側の位置に、ボルト65とナット66によって固定されている。支持面81には、エンジン側の被支持部86を固定するためのボルト92(図4に示す)を挿入するねじ孔93が形成されている。他方のマウント部材70も前記マウント部材71と同様に構成されている。
【0022】
図7に示すように、サイドレール22の縦壁22aに前記ボルト65を通すための孔95が形成されている。リンフォース部材26に形成されたマウント部材収容孔76は、マウント部材71の上面に沿う上縁部100と、マウント部材71の下面に沿う下縁部101と、これら上縁部100と下縁部101をつなぐ曲率半径の円弧部102,103などからなる内周縁を有している。他方のリンフォース部材25のマウント部材収容孔75も前記マウント部材収容孔76と同様に構成されている。
【0023】
図4と図5等に示すように、マウント部材70,71の下方にサポート部材110が設けられている。サポート部材110は、サイドレール21,22間にわたって設けられ、車両幅方向に延びている。サポート部材110の一端111と他端112は、補強プレート60,61の延出部60a,61aにボルト120とナット121によって締結されている。このサポート部材110によって、一対のサイドレール21,22の縦壁21a,22aどうしが互いに連結されている。これら補強プレート60,61やマウント部材70,71、サポート部材110などによって、エンジンの一端側(車両前側の端部)を支持するエンジンマウント部115が構成されている。
【0024】
図3に示すようにシャシフレーム20の後端近傍に、エンジンの他端側(車両後側の端部)を支持するマウント部材130,131とサポート部材132が設けられている。サポート部材132は車両幅方向に延びている。サポート部材132の上方には、オフセットフレーム35,36等を補強するために補強部材(ガセット)135,136が設けられている。
【0025】
エンジン本体55やトランスミッション56等の重量が前記エンジンマウント部115に負荷されると、マウント部材70,71の支持面80,81の上方から加わる荷重によってサイドレール21,22の下部が互いに離れる方向にねじられる。このためサポート部材110が設けられていないと、サイドレール21,22がいわゆる下びらきとなる傾向が生じるが、本実施形態ではこのような変形をサポート部材110によって抑制することができ、耐久性を向上させることができる。
【0026】
サポート部材110の両端111,112は、それぞれ補強プレート60,61を介してサイドレール21,22に締結されているため、サイドレール21,22の下部が広がる方向に変形することを効果的に防止することができる。すなわち補強プレート60,61の下方に延びる延出部60a,61aにサポート部材110の両端111,112が固定されているため、サイドレール21,22どうしを高い強度で連結することができる。
【0027】
また本実施形態のエンジンマウント部115は、略水平方向に延びる支持面80,81を有するマウント部材70,71を用いているため、マウント部材70,71自身の構造が簡単となるだけでなく、エンジン側の被支持部85,86も略水平方向に延びる簡易な形状ですみ、エンジンマウント部115全体の構造を単純化することができる。
【0028】
エンジンやトランスミッションの仕様が変更になったときには、リンフォース部材25,26のマウント部材収容孔75,76の位置や形状を変えることにより対応することができる。そしてこのリンフォース部材25,26によってエンジンマウント部115付近の剛性を高めることができ、耐久性を向上させることができる。さらにリンフォース部材25,26がエンジンルーム14から第1の仕切壁31にわたって略全域に配設されているため、剛性および耐久性向上に大きく寄与している。
【0029】
なお本発明を実施するに当たって、サイドレールやアウトリガー部材等のシャシフレームを構成する骨格部材をはじめとして、補強プレートやマウント部材、サポート部材などの発明の構成要素を、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜に変形して実施できることは言うまでもない。エンジンの形態によっては、マウント部材がエンジン本体を支持してもよい。また本発明のシャシフレーム構造は、リヤエンジンバス以外の車両にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係るシャシフレームを備えた車両の後部の斜視図。
【図2】図1に示された車両の後部のシャシフレームの斜視図。
【図3】図2に示されたシャシフレームの平面図。
【図4】図3中のF4−F4線に沿うシャシフレームの横断面図。
【図5】図1に示されたシャシフレームのエンジンマウント部を車両外側から見た斜視図。
【図6】図5に示されたエンジンマウント部を車両内側から見た斜視図。
【図7】図6に示されたエンジンマウント部のマウント部材をサイドレールから取外した状態の斜視図。
【符号の説明】
【0031】
10…車両
11…車体
20…シャシフレーム
21,22…サイドレール
21a,22a…縦壁
25,26…リンフォース部材
50…アウトリガー部材
60,61…補強プレート
60a,61a…延出部
70,71…マウント部材
75,76…マウント部材収容孔
80,81…支持面
110…サポート部材
115…エンジンマウント部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前後方向に延在し、該車両の幅方向に間隔を有して配置されかつ断面が略コ字形をなし、その開口部が車両内側を向く左右一対のサイドレールと、
前記車両の幅方向に延在し、前記一対のサイドレールに固定されて該サイドレールから車両外側に延びるアウトリガー部材と、
前記アウトリガー部材の下方で前記一対のサイドレールの車両幅方向の外側の面に沿って配設された左右一対の補強プレートと、
前記左右一対のサイドレールのそれぞれの縦壁の車両幅方向の内側の面に前記補強プレートと共締めされ、かつ車両内側に向って略水平方向に延びる支持面を有するマウント部材と、
前記マウント部材の下方で前記一対のサイドレール間に設けられ、車両幅方向に延びかつ両端が前記補強プレートを介して前記一対のサイドレールに結合されることにより前記一対のサイドレールどうしを連結するサポート部材と、
を具備したことを特徴とする車両のシャシフレーム構造。
【請求項2】
前記一対のサイドレールのそれぞれの前記開口部に、該開口部を覆うリンフォース部材が前記縦壁と対向して設けられ、該リンフォース部材には前記マウント部材を収容する大きさのマウント部材収容孔が形成され、該マウント部材収容孔は、前記マウント部材の上面に沿う上縁部と、前記マウント部材の下面に沿う下縁部と、これら上縁部と下縁部をつなぐ曲率の円弧部とからなる内周縁を有していることを特徴とする請求項1に記載の車両のシャシフレーム構造。
【請求項3】
前記一対の補強プレートはそれぞれ前記サイドレールの下方に延びる延出部を有し、これら延出部に前記サポート部材の両端が結合されていることを特徴とする請求項1に記載の車両のシャシフレーム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−149751(P2010−149751A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331215(P2008−331215)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】