説明

車両のステアリングシャフト支持構造

【課題】電動パワーステアリングユニットが、その両端の支持部の位置関係の変化の影響を受けにくくなるようにする。
【解決手段】ステアリングシャフト38の下端部に電動パワーステアリングユニット24に設けたインプットシャフト81を連結し、電動パワーステアリングシャフト24に設けたアウトプットシャフト82を車体フレーム11下部で回転自在に支持した車両において、電動パワーステアリングユニット24に備えるギヤケース102を車体フレーム11下部に取付け、ステアリングシャフト38の下端部を、ギヤケース102に付設したハウジング101で上部ベアリング107を介して回転自在に支持した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のステアリングシャフト支持構造の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両のステアリングシャフト支持構造として、パワーステアリング装置のインプット側のシャフトと、アウトプット側のシャフトとをそれぞれ車体フレームの異なる構成部材で支持したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−231011公報
【0003】
特許文献1の図4には、車体フレームを構成するアッパパイプ18にステアリングシャフト50の上部シャフト50aをシャフト支持部材52で回転自在に取付け、上部シャフト50aにユニバーサルジョイント51を介して電動パワーステアリング装置側に設けた下側シャフト50bの一端を連結し、この下側シャフト50bの他端を前クロスパイプ23側に設けた下ブラケット54にギヤケース55を介して回転自在に取付けたことが記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記ステアリングシャフト50を構成する上側シャフト50aと下側シャフト50bとは、アッパパイプ18と前クロスパイプ23という異なる部材で支持されるため、例えば、車体フレームの製造誤差や、車体フレームに外力が作用したときの変形により、上部シャフト50a側のシャフト支持部材52と、下側シャフト50b側の下ブラケット54との距離、位置関係が変化する。この変化が大きくなれば、ユニバーサルジョイント51で吸収できなくなり、電動パワーステアリング装置の支持に影響を受けることになる。
【0005】
本発明の目的は、電動パワーステアリングユニットが、その両端の支持部の位置関係の変化の影響を受けにくくなるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、車体フレーム上部でステアリングシャフトを回転自在に支持し、このステアリングシャフトの上端にバーハンドルを取付け、ステアリングシャフトの下端部に電動パワーステアリングユニットに設けたインプットシャフトを連結し、電動パワーステアリングユニットに設けたアウトプットシャフトを車体フレーム下部で回転自在に支持した車両において、電動パワーステアリングユニットに備えるギヤケースを車体フレーム下部に取付け、ステアリングシャフトの下端部を、ギヤケースに付設したハウジングでベアリングを介して回転自在に支持したことを特徴とする。
【0007】
電動パワーステアリングユニットの支持の作用として、電動パワーステアリングユニットのインプットシャフトを、ハウジング、ギヤケースを介して車体フレーム下部で支持し、電動パワーステアリングユニットのアウトプットシャフトをも車体フレーム下部で支持する。
【0008】
このように、電動パワーステアリングユニットのインプットシャフト及びアウトプットシャフトの両方を同じ車体フレーム下部で支持するため、電動パワーステアリングユニットが、車体フレームの製造誤差、変形等の影響を受けにくい。
【0009】
請求項2に係る発明は、ステアリングシャフトの下部に、このステアリングシャフトの回転角度を所定角度に規制するハンドルストッパを設け、このハンドルストッパの近傍のステアリングシャフトをハウジングにベアリングを介して取付けたことを特徴とする。
【0010】
ハンドルストッパの作用として、ハンドルストッパでステアリングシャフトの回転角度を所定角度に規制し、例えば、電動パワーステアリングユニットに備える操舵トルク検出用トーションバーが所定角度よりも大きく捩られるのを防止する。
【0011】
また、ハンドルストッパの近傍のステアリングシャフトをハウジングにベアリングを介して取付けたことで、ハンドルストッパが作動したときに生じる捩れ力を剛性の高いベアリング支持部で受けることが可能になる。
【0012】
請求項3に係る発明は、ステアリングシャフトの下端部とインプットシャフトとを結合するとともに、これらのステアリングシャフトとインプットシャフトとを軸方向に相対移動可能としたことを特徴とする。
【0013】
ステアリングシャフトとインプットシャフトとの結合の作用として、車体フレームの製造誤差、組付誤差や車体フレームの変形によりステアリングシャフトに外力が作用したときに、ステアリングシャフトとインプットシャフトとが軸方向に相対移動することで、インプットシャフトにスラスト力が作用しにくい。
【0014】
請求項4に係る発明は、ベアリングを複列式としたことを特徴とする。
ベアリングの作用として、複列式のベアリングによって軸受耐荷重が大きくなる。
【0015】
請求項5に係る発明は、ステアリングシャフトを、バーハンドル側のアッパシャフトとハンドルストッパを含むロアシャフトとに別体に分割し、アッパシャフト及びロアシャフトの一方の連結部を軸状とし、他方の連結部を穴状にするとともにこの連結部の外周面と穴内周面との間に割り溝を設け、ベアリングよりも上方で一方の連結部に他方の連結部を嵌合するとともに締め付けたことを特徴とする。
【0016】
ステアリングシャフトの連結構造の作用として、アッパシャフト及びロアシャフトの軸状の一方の連結部と穴状の他方の連結部とを嵌合させ、一方の連結部に他方の連結部を締め付けることで、アッパシャフトとロアシャフトとの連結が容易に且つ確実に行える。
【0017】
請求項6に係る発明は、ロアシャフトに、ベアリングの位置決め部と、アッパシャフトの位置決め部とを形成したことを特徴とする。
ロアシャフトの作用として、ロアシャフトに、ベアリングの位置決め部と、アッパシャフトの位置決め部とを形成したことで、例えば、ハウジングにベアリングを位置決めした後に、ベアリングに対してロアシャフトを位置決めし、次に、ロアシャフトに対してアッパシャフトの位置決めを行うことが可能になる。
【0018】
請求項7に係る発明は、電動パワーステアリングユニットの下方に第2のハンドルストッパを設け、バーハンドルによる左右の操舵を行う際、ハンドルストッパが第2のハンドルストッパよりも先に作動することを特徴とする。
【0019】
ハンドルストッパ及び第2のハンドルストッパの作用として、インプットシャフトとアウトプットシャフトとを、例えば、操舵トルク検出用のトーションバーで連結した場合に、バーハンドルを左右に操舵すると、ハンドルストッパが先に作動するため、インプットシャフトからアウトプットシャフトに回転が伝わらなくなり、トーションバーに負荷が作用しない。
【0020】
例えば、第2のハンドルストッパがハンドルストッパよりも先に作動する構造では、第2のハンドルストッパが作動した後も、ハンドルストッパが作動するまでインプットシャフトからアウトプットシャフトまで捩られ、トーションバーに大きな負荷が作用する場合がある。
【0021】
請求項8に係る発明は、ハウジングの背面に開口を設け、この開口に、電動パワーステアリングユニットに接続する導線を通すことを特徴とする。
ハウジングの開口の作用として、ハウジングの背面に開口を設けることで、ハウジング内に車両前方から飛び石、雨水、ダスト等が入りにくくなり、また、開口に電動パワーステアリングユニットに接続する導線を通すことで、導線の取り回しが楽になる。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に係る発明では、電動パワーステアリングユニットに備えるギヤケースを車体フレーム下部に取付け、ステアリングシャフトの下端部を、ギヤケースに付設したハウジングでベアリングを介して回転自在に支持したので、電動パワーステアリングユニットのインプットシャフト及びアウトプットシャフトの両方を車体フレーム下部で支持するため、電動パワーステアリングユニットを車体フレームで支持する場合に、電動パワーステアリングユニットが車体フレームの製造誤差、変形等の影響を受けにくくすることができる。
【0023】
請求項2に係る発明では、ステアリングシャフトの下部に、このステアリングシャフトの回転角度を所定角度に規制するハンドルストッパを設け、このハンドルストッパの近傍のステアリングシャフトをハウジングにベアリングを介して取付けたので、ハンドルストッパによって、例えば、電動パワーステアリングユニットに備える操舵トルク検出用トーションバーが所定角度よりも大きく捩られるのを防止することができる。
【0024】
また、ハンドルストッパの近傍のステアリングシャフトをハウジングにベアリングを介して取付けたことで、ハンドルストッパが作動したときに生じる捩れ力を剛性の高いベアリング支持部で受けることができる。
【0025】
請求項3に係る発明では、ステアリングシャフトの下端部とインプットシャフトとを結合するとともに、これらのステアリングシャフトとインプットシャフトとを軸方向に相対移動可能としたので、車体フレームの製造誤差、組付誤差や車体フレームの変形によりステアリングシャフトに外力が作用したときに、インプットシャフトにスラスト力が作用しにくくすることができ、電動パワーステアリングユニットを保護することができる。
【0026】
請求項4に係る発明では、ベアリングを複列式としたので、ベアリングが支持可能な軸受荷重(軸受耐荷重)が大きくすることができ、ステアリングシャフトの下端部の倒れをより一層抑制することができ、ステアリングシャフトに加わる倒れ荷重がインプットシャフトに作用しにくい。
【0027】
請求項5に係る発明では、ステアリングシャフトを、バーハンドル側のアッパシャフトとハンドルストッパを含むロアシャフトとに別体に分割し、アッパシャフト及びロアシャフトの一方の連結部を軸状とし、他方の連結部を穴状にするとともにこの連結部の外周面と穴内周面との間に割り溝を設け、ベアリングよりも上方で一方の連結部に他方の連結部を嵌合するとともに締め付けたので、アッパシャフトとロアシャフトとを容易に且つ確実に連結することができる。
【0028】
請求項6に係る発明では、ロアシャフトに、ベアリングの位置決め部と、アッパシャフトの位置決め部とを形成したので、例えば、ハウジングにベアリングを位置決めし、ベアリングにロアシャフトを位置決めし、ロアシャフトにアッパシャフトを位置決めするというように、組付けを効率良く行うことができる。
【0029】
請求項7に係る発明では、電動パワーステアリングユニットの下方に第2のハンドルストッパを設け、バーハンドルによる左右の操舵を行う際、ハンドルストッパが第2のハンドルストッパよりも先に作動するようにしたので、電動パワーステアリングユニットに操舵トルク検出用のトーションバーを設けた場合には、バーハンドル操作時にトーションバーに大きな負荷が作用するのを防止することができる。
【0030】
請求項8に係る発明では、ハウジングの背面に開口を設け、この開口に、電動パワーステアリングユニットに接続する導線を通すので、ハウジング内に車両前方から飛び石、雨水、ダスト等を入りにくくすることができ、また、開口に電動パワーステアリングユニットに接続する導線を通すことで、導線の取り回しを楽に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係るステアリングシャフト支持構造を採用した車両の側面図であり、車両としての不整地走行車両10は、車体フレーム11の中央部にエンジン12及び変速機13からなるパワーユニット14を搭載し、変速機13の前部にフロントプロペラシャフト16を介してフロント終減速装置17を連結し、このフロント終減速装置17に図示せぬドライブシャフトを介して左右の前輪18,18を連結し、変速機13の後部にリヤプロペラシャフト21を介してリヤ終減速装置22を連結し、このリヤ終減速装置22に図示せぬドライブシャフトを介して左右の後輪23,23を連結し、前輪18,18を操舵する操舵力を軽減する電動パワーステアリングユニット24を備えた四輪駆動車である。
【0032】
車体フレーム11は、前後に延ばした左右一対のアッパメインフレーム31,32(手前側の符号31のみ示す。)と、これらのアッパメインフレーム31,32の前端にそれぞれ連結した正面視逆U字形状のフロントフレーム33と、このフロントフレーム33の下端及びアッパメインフレーム31,32の中間部のそれぞれに連結した左右一対のロアメインフレーム34,36(手前側の符号34のみ示す。)と、上端にバーハンドル37を取付けたステアリングシャフト38の上部を回転自在に支持するためにフロントフレーム33の上端及びアッパメインフレーム31,32のそれぞれに連結した左右一対のくの字形状のフロントアッパフレーム41,42(手前側の符号41のみ示す。)と、アッパメインフレーム31,32の前端から後下がりにロアメインフレーム34,36に連結した左右一対の傾斜フレーム43,44(手前側の符号43のみ示す。)と、これらの傾斜フレーム43,44の中間部及びフロントフレーム33のそれぞれに渡して連結することで電動パワーステアリング装置24の下部を支持する左右一対のサブ傾斜フレーム46,47(手前側の符号46のみ示す。)とを備える。
【0033】
ここで、55はフロントキャリア、56は前輪18の上方及び後方を覆うフロントフェンダ、57は燃料タンク、58はシート、61はリヤキャリア、62はエンジン12のシリンダヘッド63の後部側に連結したキャブレタ、66はキャブレタ62にコネクティングチューブ67を介して連結したエアクリーナ、68はシリンダヘッド63の前部から車両後方に延ばした排気管、69は排気管68の後端に接続した消音器、71はロアメインフレーム34,36側に対して後輪23,23をスイング自在に支持するスイングアーム、72,72(手前側の符号72のみ示す。)はスイングアーム71とアッパメインフレーム31,32側とに渡して取付けた左右一対のリヤクッションユニット、73はパワーユニット14の側方に配置したボディサイドカバー、74は後輪23の上方及び前方を覆うリヤフェンダ、75はステップフロア、76は左右のロアメインフレーム34,36の前部下部及びロアメインフレーム34,36の前方を覆うスキッドプレートである。
【0034】
図2は本発明に係る車両の要部側面図であり、車体フレーム11の上部でステアリングシャフト38の中間部を回転自在に支持し、ステアリングシャフト38の下端部に電動パワーステアリングユニット24の上部に備えるインプットシャフト81を連結し、この電動パワーステアリングユニット24の下部を車体フレーム11の下部に取付けるとともに、電動パワーステアリングユニット24の下部に備えるアウトプットシャフト82を車体フレーム11の下部で回転自在に支持したことを示す。
【0035】
ステアリングシャフト38は、上端にバーハンドル37(図1参照)を取付けたアッパシャフト85と、このアッパシャフト85の下端に上端をセレーションにて結合するとともに下端をインプットシャフト81にセレーション結合したロアシャフト86とからなる。
【0036】
アッパシャフト85は、左右のフロントアッパフレーム41,42に渡して取付けたステアリング支持ブラケット88に上部軸受部91を介して回転自在に取付けた部材であり、下端にロアシャフト86の上端に設けた雄セレーション86aと結合する雌セレーション85aを形成するとともに、雌セレーション85a側と外周面側とに通じる軸方向に延びる割り溝85bを形成し、この割り溝85bの両縁部にそれぞれ突出部85c、85d(奥側の符号85dのみ示す。)を一体成形し、これらの突出部85c,85dにそれぞれボルト挿通穴85eを開け、これらのボルト挿通穴85eにそれぞれボルト92を通し、ボルト92の先端にナット(不図示)にねじ込むことで、アッパシャフト85の下端でロアシャフト86の上端を締め付ける。なお、86Aはアッパシャフト85の先端を当てて位置決めするためにロアシャフト86に設けた位置決め部である。
【0037】
ステアリング支持ブラケット88は、フロントアッパフレーム41,42に渡したクロス部材93と、このクロス部材93に取付けた左右のボス部94,94(手前側の符号94のみ示す。)とからなり、ボス部94,94にそれぞれボルト95をねじ込むことで上部軸受部91を固定する。
上部軸受部91は、アッパシャフト85に滑り自在に嵌合させたブッシュ(不図示)と、このブッシュを保持する一対の保持金具97,97とからなる。
【0038】
ロアシャフト86は、下部に軸部86b、中間部に後方にL字状に突出するL字突出部86cを備え、軸部86bに、インプットシャフト81の先端に形成した雄セレーション81aに結合する雌セレーション86dを形成した部材である。
【0039】
電動パワーステアリングユニット24は、上部を覆うハウジング101を付設したものであり、ハウジング101は、下部を電動パワーステアリングユニット24のギヤケース102に複数のボルト103で取付け、上部で中間部軸受部104を介してロアシャフト86の軸部86bを回転自在に支持した部材である。
【0040】
中間部軸受部104は、ハウジング101の上部に開けた穴部101a及び軸部86bに嵌合させた複列式の上部ベアリング107と、この上部ベアリング107の一端を位置決めする止め輪108と、この止め輪108に隣接させて穴部101aの一端部に嵌めたシール部材111と、軸部86bに嵌合させるとともに上部ベアリング107の他端に当てたカラー112と、軸部86bの先端のおねじ86fにねじ込むことでカラー112を介して上部ベアリング107の他端を押し付けて固定するナット113と、穴部101a及びカラー112のそれぞれの間に嵌合させたシール部材114とからなる。なお、86Bは上部ベアリング107の一端を当てて位置決めするために軸部86bに形成した位置決め部である。
【0041】
以上に示したように、ステアリングシャフト38のロアシャフト86は、その下端部を上部ベアリング107を介してハウジング101で支持し、電動パワーステアリングユニット24と共に車体フレーム11に取付け、ステアリングシャフト38のアッパシャフト85と結合させた部材である。
【0042】
電動パワーステアリングユニット24は、前述のインプットシャフト81及びアウトプットシャフト82と、操舵トルクを検出するトルクセンサ部121と、操舵力を補助する動力を発生させるパワーアシスト部122とからなり、トルクセンサ部121によって検出した操舵トルク等に基づいてパワーアシスト部122を図示せぬ制御装置で制御する。
【0043】
トルクセンサ部121は、インプットシャフト81とアウトプットシャフト82とに連結したトーションバー126を備えたものである。
バーハンドル37(図1参照)の操作によりインプットシャフト81を回転させると、インプットシャフト81とアウトプットシャフト82との間に相対回転角が生じ、トーションバー126が捩られる。この捩れ量をトルクに変換することで操舵トルクが求まる。
【0044】
パワーアシスト部122は、電動モータ128と、この電動モータ128の出力軸及びアウトプットシャフト82のそれぞれの間に介在させたクラッチ(不図示)及び減速機(不図示。ウォームギヤ及びウォームホイールからなる。)とで構成した部分である。
【0045】
電動パワーステアリングユニット24は、アウトプットシャフト82よりも前側のギヤケース102をサブ傾斜フレーム46,47に渡して取付けたプレート状の下部ブラケット131に前部支持部材132を介してボルト133で取付け、アウトプットシャフト82よりも後側のギヤケース102をサブ傾斜フレーム46,47に設けた後部支持部材134にボルト136で取付けたものである。
【0046】
このように、電動パワーステアリングユニット24は、ギヤケース102の下部を前部支持部材132及び後部支持部材134の前後2箇所でアウトプットシャフト82を挟むように支持される部材である。
【0047】
制御装置は、トルクセンサ部121により検出された操舵トルク、舵角センサ(不図示)により検出された舵角、不整地走行車両10(図1参照)の車速等に基づいてパワーアシスト部122を制御する。
【0048】
アウトプットシャフト82を回転自在に支持する下部軸受部140は、下部ブラケット131の中央部に取付けた軸支持部材141と、アウトプットシャフト82を回転自在に支持するために軸支持部材141に取付けた自動調心式の下部ベアリング142と、この下部ベアリング142をダスト等から保護するためのシール部材143とを備える。
【0049】
軸支持部材141は、車両前方側にアウトプットシャフト82にほぼ沿って下側に突出する下方突出部141aを形成したものである。
147はセンターアームであり、雌スプライン147aを形成することで、この雌スプライン147aをアウトプットシャフト82の下端部に形成した雄スプライン82aとスプライン結合する。
【0050】
151はボールジョイントであり、端部に設けたボルト部151aをセンターアーム147の後部にナット152で取付けた部材である。
154はアウトプットシャフト82の先端に設けたおねじにねじ結合することでアウトプットシャフト82にセンタアーム147を固定するナットである。
上記した軸支持部材141の下方突出部141aとセンターアーム147とは、下部ハンドルストッパ156を構成するものである。
【0051】
図3は本発明に係る車両の要部正面図であり、電動パワーステアリングユニット24に複数のボルト103でハウジング101を取付け、電動パワーステアリングユニット24の上部をハウジング101で覆ったことを示す。
【0052】
このように、ハウジング101で電動パワーステアリングユニット24の上部を覆うことで、電動パワーステアリングユニット24を、飛び石、雨水、ダスト等から保護することができる。
【0053】
図4は本発明に係る車両の要部平面図であり、ハウジング101の上部とロアシャフト86のL字突出部86cとで、バーハンドル37の回転範囲を規制する上部ハンドルストッパ161を構成することを示す。
【0054】
図5は本発明に係るハウジングの平面図であり、ハウジング101は、上部に設けた穴部101aの車幅方向(図の上下方向である。)外側に側方に突出する側方突出部101b,101cを一体成形し、これらの側方突出部101b,101cのそれぞれに、ロアシャフト86(図4参照)のL字突出部86c(図4参照)に当接可能な受け面101dを設けたものである。なお、101fはボルト103(図3参照)を通すためにハウジング101に設けたボルト挿通穴である。
受け面101dは、バーハンドル37(図1参照)の回転角度を精度良く規制するために素材面に切削加工を施した部分である。
【0055】
図6は図5の6矢視図であり、ハウジング101の後壁101hの中央よりも右方の部分に開口101jを形成し、上部の左右に平面とした受け面101d,101dを形成したことを示す。
【0056】
開口101jは、電動パワーステアリングユニット24(図2参照)に接続する電力供給用及び電動パワーステアリングユニット24の制御用の導線158(図2参照)を通すためのものである。
【0057】
以上に述べた上部ハンドルストッパ161の作用を次に説明する。
図7は本発明に係る上部ハンドルストッパの作用を示す作用図である。
ロアシャフト86に設けたL字突出部86cの端面86h,86jは、アッパシャフト85(図2参照)の回転に伴ってロアシャフト86が回転したときに、ハウジング101の受け面101d,101dに当たって回動範囲が規制される。図に実線で示したL字形突出部86cの位置は、バーハンドル37(図1参照)が車両直進時の位置にあるときのものであり、図に想像線で示したL字形突出部86cの位置は、回動範囲が規制されたときのものである。
θ1は、車両直進時からのロアアーム86の時計回り及び反時計回りの回転角度範囲であり、バーハンドル37、アッパシャフト85の回転角度範囲でもある。
【0058】
以上に述べた下部ハンドルストッパ156の作用を次に説明する。
図8は本発明に係る下部ハンドルストッパの作用を示す作用図である。
アウトプットシャフト82の回転に伴って、センターアーム147の後部に設けたタイロッド連結部147c,147dに連結したタイロッド165,166が車幅方向に移動し、これに伴って、左右の前輪18,18(図1参照)が転舵される。
【0059】
センターアーム147の両側方に設けた側方突出部147f,147g、詳しくは、当接面147j,147kは、アウトプットシャフト82の回転に伴ってセンターアーム147が回転したときに、軸支持部材141(図2参照)の下方突出部141a、詳しくは、受け面141c、141dに当たって回動範囲が規制される。
【0060】
図に実線で示したセンターアーム147の位置は、バーハンドル37(図1参照)が車両直進時の位置にあるときのものであり、図に想像線で示したセンターアーム147の位置は、バーハンドル37を大きく切って回転が規制されたときのものである。
【0061】
θ2は、車両直進時からのセンターアーム147の時計回り及び反時計回りの揺動角度範囲であり、アウトプットシャフト82の回転角度範囲でもあり、図7に示したロアシャフト86の回転角度範囲θ1よりも大きい。即ち、上部ハンドルストッパ161は下部ハンドルストッパ156よりも先に作動する、即ち先に回転角度規制が行われる。
【0062】
図1に戻って、不整地走行車両10は、図示せぬ転倒センサを備え、不整地走行車両10が転倒した場合、エンジンへの燃料供給を停止させるとともに電動パワーステアリングユニット24への電力供給を停止させる。
これにより、バーハンドル37又は前輪18からのトルクを検出したとしても電動モータは作動せず、アシスト力は発生しないので、トルクセンサ部に負荷は掛からない。また、バッテリの電力消費が抑えられる。
【0063】
以上の図2に示したように、本発明は第1に、車体フレーム11上部でステアリングシャフト38を回転自在に支持し、このステアリングシャフト38の上端にバーハンドル37(図1参照)を取付け、ステアリングシャフト38の下端部に電動パワーステアリングユニット24に設けたインプットシャフト81を連結し、電動パワーステアリングユニット24に設けたアウトプットシャフト82を車体フレーム11下部で回転自在に支持した車両としての不整地走行車両10(図1参照)において、電動パワーステアリングユニット24に備えるギヤケース102を車体フレーム11下部に取付け、ステアリングシャフト38の下端部を、ギヤケース102にやぐら状に付設したハウジング101でベアリングとしての上部ベアリング107を介して回転自在に支持したことを特徴とする。
【0064】
これにより、電動パワーステアリングユニット24のインプットシャフト81及びアウトプットシャフト82の両方を車体フレーム11下部で支持するため、電動パワーステアリングユニット24を車体フレーム11で支持する場合に、電動パワーステアリングユニット24が車体フレーム11の製造誤差、変形等の影響を受けにくくすることができる。
【0065】
本発明は第2に、図2及び図7に示したように、ステアリングシャフト38の下部に、このステアリングシャフト38の回転角度を所定角度θ1に規制する上部ハンドルストッパ161を設け、この上部ハンドルストッパ161の近傍のステアリングシャフト38をハウジング101に上部ベアリング107を介して取付けたことを特徴とする。
【0066】
これにより、上部ハンドルストッパ161によって、例えば、電動パワーステアリングユニット24に備える操舵トルク検出用トーションバー126が所定角度よりも大きく捩られるのを防止することができる。
【0067】
また、上部ハンドルストッパ161の近傍のステアリングシャフト38、詳しくは、ロアシャフト86をハウジング101に上部ベアリング107を介して取付けたことで、上部ハンドルストッパ161が作動したときに生じる捩れ力を剛性の高いベアリング支持部、詳しくは、中間部軸受部104を支持するハウジング101の上部で受けることができる。
【0068】
本発明は第3に、図2に示したように、ステアリングシャフト38の下端部、詳しくは、ロアシャフト86とインプットシャフト81とを結合するとともに、これらのステアリングシャフト38とインプットシャフト81とを軸方向に相対移動可能としたことを特徴とする。
【0069】
これにより、車体フレーム11の製造誤差、組付誤差や車体フレーム11の変形によりステアリングシャフト38に外力が作用したときに、インプットシャフト81にスラスト力が作用しにくくすることができ、電動パワーステアリングユニット24を保護することができる。
【0070】
本発明は第4に、上部ベアリング107を複列式としたことを特徴とする。
これにより、上部ベアリング107が支持可能な軸受荷重が大きくすることができ、信頼性を向上させることができる。
【0071】
本発明は第5に、ステアリングシャフト38を、バーハンドル37側のアッパシャフト85と上部ハンドルストッパ161を含むロアシャフト86とに別体に分割し、アッパシャフト85及びロアシャフト86の一方の連結部を軸状とし、他方の連結部を穴状にするとともにこの連結部の外周面と穴内周面との間に割り溝85bを設け、上部ベアリング107よりも上方で一方の連結部に他方の連結部を嵌合するとともに締め付けたことを特徴とする。
これにより、アッパシャフト85とロアシャフト86とを容易に且つ確実に連結することができる。
【0072】
本発明は第6に、ロアシャフト86に、上部ベアリング107の位置決め部86Bと、アッパシャフト85の位置決め部86Aとを形成したことを特徴とする。
これにより、例えば、ハウジング101に上部ベアリング107を位置決めし、上部ベアリング107にロアシャフト86を位置決めし、ロアシャフト86にアッパシャフト85を位置決めするというように、組付けを効率良く行うことができる。
【0073】
本発明は第7に、電動パワーステアリングユニット24の下方に第2のハンドルストッパとしての下部ハンドルストッパ156を設け、バーハンドル37(図1参照)による左右の操舵を行う際、上部ハンドルストッパ161が下部ハンドルストッパ156よりも先に作動することを特徴とする。
【0074】
これにより、電動パワーステアリングユニット24に操舵トルク検出用のトーションバー126を設けた場合には、バーハンドル37操作時にトーションバー126に大きな負荷が作用するのを防止することができる。
【0075】
本発明は第8に、図2及び図6に示したように、ハウジング101の背面としての後壁101hに開口101jを設け、この開口101jに、電動パワーステアリングユニット24に接続する導線158を通すことを特徴とする。
【0076】
これにより、ハウジング101内に車両前方から飛び石、雨水、ダスト等を入りにくくすることができ、また、開口101jに電動パワーステアリングユニット24に接続する導線158を通すことで、導線158の取り回しを楽に行うことができる。
【0077】
尚、本実施形態では、図2に示したように、ステアリングシャフト38のアッパシャフト85とロアシャフト86との結合、及びロアシャフト86とインプットシャフト81との結合をセレーション結合としたが、これに限らず、スプライン結合、あるいは他の結合(例えば、軸継手)としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明のステアリングシャフト支持構造は、電動パワーステアリングユニットを備えた車両に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明に係るステアリングシャフト支持構造を採用した車両の側面図である。
【図2】本発明に係る車両の要部側面図である。
【図3】本発明に係る車両の要部正面図である。
【図4】本発明に係る車両の要部平面図である。
【図5】本発明に係るハウジングの平面図である。
【図6】図5の6矢視図である。
【図7】本発明に係る上部ハンドルストッパの作用を示す作用図である。
【図8】本発明に係る下部ハンドルストッパの作用を示す作用図である。
【符号の説明】
【0080】
10…車両(不整地走行車両)、11…車体フレーム、18…前輪、24…電動パワーステアリングユニット、37…バーハンドル、38…ステアリングシャフト、81…インプットシャフト、85…アッパシャフト、85b…割り溝、86…ロアシャフト、86A…アッパシャフトの位置決め部、86B…ベアリングの位置決め部、101…ハウジング、101h…背面(後壁)、101j…開口、102…ギヤケース、107…ベアリング(上部ベアリング)、156…第2のハンドルストッパ(下部ハンドルストッパ)、158…導線、161…ハンドルストッパ(上部ハンドルストッパ)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレーム上部でステアリングシャフトを回転自在に支持し、このステアリングシャフトの上端にバーハンドルを取付け、前記ステアリングシャフトの下端部に電動パワーステアリングユニットに設けたインプットシャフトを連結し、電動パワーステアリングユニットに設けたアウトプットシャフトを車体フレーム下部で回転自在に支持した車両において、
前記電動パワーステアリングユニットに備えるギヤケースを前記車体フレーム下部に取付け、前記ステアリングシャフトの下端部を、前記ギヤケースに付設したハウジングでベアリングを介して回転自在に支持したことを特徴とする車両のステアリングシャフト支持構造。
【請求項2】
前記ステアリングシャフトの下部に、このステアリングシャフトの回転角度を所定角度に規制するハンドルストッパを設け、このハンドルストッパの近傍の前記ステアリングシャフトを前記ハウジングに前記ベアリングを介して取付けたことを特徴とする請求項1記載の車両のステアリングシャフト支持構造。
【請求項3】
前記ステアリングシャフトの下端部と前記インプットシャフトとを結合するとともに、これらのステアリングシャフトとインプットシャフトとを軸方向に相対移動可能としたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両のステアリングシャフト支持構造。
【請求項4】
前記ベアリングを複列式としたことを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3記載の車両のステアリングシャフト支持構造
【請求項5】
前記ステアリングシャフトは、前記バーハンドル側のアッパシャフトと前記ハンドルストッパを含むロアシャフトとに別体に分割され、前記アッパシャフト及び前記ロアシャフトの一方の連結部を軸状とし、他方の連結部を穴状にするとともにこの連結部の外周面と穴内周面との間に割り溝を設け、前記ベアリングよりも上方で前記一方の連結部に前記他方の連結部を嵌合するとともに締め付けたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の車両のステアリングシャフト支持構造。
【請求項6】
前記ロアシャフトに、前記ベアリングの位置決め部と、前記アッパシャフトの位置決め部とを形成したことを特徴とする請求項5記載の車両のステアリングシャフト支持構造。
【請求項7】
前記電動パワーステアリングユニットの下方に第2のハンドルストッパを設け、前記バーハンドルによる左右の操舵を行う際、前記ハンドルストッパが前記第2のハンドルストッパよりも先に作動することを特徴とする請求項2〜請求項6のいずれか1項記載の車両のステアリングシャフト支持構造。
【請求項8】
前記ハウジングの背面に開口を設け、この開口に、前記電動パワーステアリングユニットに接続する導線を通すことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項記載の車両のステアリングシャフト支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−98984(P2007−98984A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−288031(P2005−288031)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】