説明

車両のバッテリ冷却構造

【課題】部品点数を削減して軽量化とコストダウン及び室内空間の有効利用を図ることができる車両のバッテリ冷却構造を提供すること。
【解決手段】車両のフロアパネル3上に配置されたバッテリ9の冷却構造において、前記バッテリ9を車両前後方向において前席下から後席足元までに配設するとともに、車両前部に搭載されたエアコンユニットから車両後方へ延びる後席足元暖房用ダクト10を前記バッテリ9に接続し、バッテリ9から車両後方へと延びる排気ダクト12をリヤフロア13の立ち上がり部に形成された閉断面空間Sに接続し、該閉断面空間Sを構成するパネル14に排気孔14aを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車やハイブリッド車等の車両のフロアパネル上に配置されるバッテリの冷却構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動モータのみを駆動源とする電気自動車(EV)や電動モータとガソリンエンジン等を駆動源とするハイブリッド車(HEV)においては、電動モータに電力を供給するバッテリの搭載が必須となる。ここで、バッテリとしては繰り返し充放電が可能なニッカド電池(Ni−Cd電池)やニッケル水素電池等の二次電池が使用されるが、このバッテリは充放電中に発熱する。
【0003】
ところで、バッテリは密閉されたバッテリケース内に電池セルを収容して構成されているため、これが発熱するとその温度はかなりの高温になる。バッテリが高温(例えば50℃以上)になると、その性能が低下するばかりか、寿命が著しく低下するため、これを冷却する必要がある。
そこで、例えば特許文献1には、車両のシート下方のフロアパネル上にバッテリを配設し、電動ファンによってバッテリ内に冷却風を送って該バッテリを冷却する冷却構造が開示されており、バッテリ周りに配索されるワイヤーハーネスや冷却ダクトを保護部材によって保護する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−280036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1において提案された冷却構造では、電動ファンを車室内に配設する構成が採用されているため、バッテリ専用の電動ファンや該電動ファンからバッテリへと室内空気を導入するための冷却ダクトが必要となって部品点数が増え、重量増加とコストアップを招くとともに、室内空間が電動ファンによって縮小するという問題がある。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、部品点数を削減して軽量化とコストダウン及び室内空間の有効利用を図ることができる車両のバッテリ冷却構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、車両のフロアパネル上に配置されたバッテリの冷却構造において、前記バッテリを車両前後方向において前席下から後席足元までに配設するとともに、車両前部に搭載されたエアコンユニットから車両後方へ延びる後席足元暖房用ダクトを前記バッテリに接続し、バッテリから車両後方へと延びる排気ダクトをリヤフロアの立ち上がり部に形成された閉断面空間に接続し、該閉断面空間に排気孔を形成したことを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記排気ダクトに車室内に開口する排気口を形成するとともに、該排気口の車両後方に開閉制御弁を設け、該開閉制御弁の開閉によって前記バッテリからの排気の排出経路を、排気を前記排気口から車室内に導入する第1の経路と、排気を前記閉断面空間を経て前記排気孔から車外へと排出する第2経路とに切り替え可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、既存のエアコンユニットに設けられた電動ファンから送られる冷気を既存の後席足元暖房用ダクトを経てバッテリへと送り込んで該バッテリを冷却することができるため、従来必要であった専用の電動ファンや冷却ダクトが不要となり、部品点数を削減して軽量化とコストダウン及び室内空間の有効利用を図ることができる。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、バッテリの冷却に供されて温度が高くなった排気を冬期に第1の経路を経て車室内に導入して車室内の暖房に供することができ、エネルギーの有効利用を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るバッテリ冷却構造を備える車両の概略側面図である。
【図2】本発明に係るバッテリ冷却構造を示す車両要部の斜視図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】本発明に係るバッテリ冷却構造の別実施形態を示す部分側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係るバッテリ冷却構造を備える車両の概略側面図、図2は本発明に係るバッテリ冷却構造を示す車両要部の斜視図、図3は図2のA−A線断面図である。
【0012】
図1に示す車両1は、不図示の電動モータとエンジンを駆動源として走行するハイブリッド車(HEV)であって、その車室2の底部を構成するフロアパネル3(図2及び図3参照)上の車両前後には前部シート4と後部シート5が適当な間隔を隔てて配設されている。
【0013】
又、車両1の前部のエンジンルーム6と車室2とを区画するダッシュボード7にはエアコンユニット8が配設されている。尚、このエアコンユニット8は、エンジンルーム6内に搭載された不図示のエンジンによって駆動され、その内部には不図示の電動ファンが設けられており、この電動ファンによって冷気又は暖気が車室2内に吹き出されて車室2内が冷房又は暖房される。
【0014】
ところで、フロアパネル3上には左右一対のバッテリ9(図2参照)が車両前後方向において前席下から後席足元までに配設されており、各バッテリ9の前端面には、図2に示すように、前記エアコンユニット8から左右に分岐して車両後方へと延びる左右一対の各後席足元暖房用ダクト10がそれぞれ接続されている。尚、図3に示すように、前部シート4の下方のフロアパネル3上にはクロスメンバ11が車幅方向に配設されており、各後席足元暖房用ダクト10(図3には一方のみ図示)はクロスメンバ11に形成された貫通孔11aを貫通し、その後端部が各バッテリ9の前端面にそれぞれ接続されている。
【0015】
ここで、各バッテリ9としては繰り返し充放電が可能なニッカド電池(Ni−Cd電池)やニッケル水素電池等の二次電池が使用され、これらのバッテリ9から不図示の電動モータに電力が供給されて該電動モータが回転駆動される。
【0016】
そして、図3に示すように、各バッテリ9の後端面からは排気ダクト12(図3には一方のみ図示)が車両後方に向かってそれぞれ略水平に延びており、各排気ダクト12は、リヤフロア13の立ち上がり部において斜めの前方隔壁13Aとパネル14によって形成された閉断面空間Sに接続されている。即ち、斜面を成す前方隔壁13Aの左右には貫通孔13aが形成されており、各排気ダクト12は貫通孔13aを貫通し、その後端は閉断面空間Sに開口している。又、パネル14の後面にはルーバー状の排気孔14aが形成されている。
【0017】
而して、バッテリ9は充放電中に発熱するが、本実施の形態ではバッテリ9の充放電中はエアコンユニット8に内蔵された不図示の電動ファンが駆動され、エアコンユニット8からの冷気が左右の後席足元暖房用ダクト10を経て各バッテリ9へとそれぞれ送り込まれ、各バッテリ9は冷気によって冷却されてその温度上昇が抑えられ、該バッテリ9の性能と寿命の低下が防がれる。そして、各バッテリ9を冷却して温度が高くなった冷気(排気)は、各排気ダクト12から閉断面空間Sへと流入し、閉断面空間Sからパネル14の排気孔14aを通って大気中へと排出される。
【0018】
以上のように、本実施の形態においては、既存のエアコンユニット8に設けられた電動ファンから送られる冷気を既存の後席足元暖房用ダクト10を経て各バッテリ9へとそれぞれ送り込んで該バッテリ9を冷却するようにしたため、従来必要であった専用の電動ファンや冷却ダクトが不要となり、部品点数を削減して軽量化とコストダウン及び室内空間の有効利用を図ることができる。
【0019】
次に、本発明の別実施形態を図4に基づいて説明する。
【0020】
図4は本発明に係るバッテリ冷却構造の別実施形態を示す部分側断面図であり、本実施の形態では、排気ダクト12に車室2内に開口する排気口12aを形成するとともに、該排気口12aの車両後方に排気ダクト12を開閉する開閉制御弁15を設け、該開閉制御弁15の開閉によってバッテリ9からの排気の排出経路を、排気を前記排気口12aから車室2内に導入する第1の経路と、排気を閉断面空間Sを経てパネル14の排気孔14aから車外へと排出する第2経路とに切り替え可能としている。
【0021】
而して、冬期においては図4に実線にて示すように開閉制御弁15によって排気ダクト12を閉じ、バッテリ9の冷却に供されて温度が高くなった排気を第1の経路を経て排気口12aから車室2内に導入して車室2内の暖房に供することができるため、エネルギーの有効利用を図ることができる。
【0022】
他方、車室2内の暖房が不要な場合には、図4に示すように開閉制御弁15が開かれ、バッテリ9の冷却に供されて温度が高くなった排気は、閉断面空間Sを経てパネル14の排気孔14aから大気中に排出される。
【0023】
尚、以上の実施の形態では、本発明をハイブリッド車(HEV)に搭載されたバッテリの冷却構造に対して適用した形態について説明したが、本発明は、電動モータを駆動源とする電気自動車(EV)に搭載されたバッテリの冷却構造に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0024】
1 車両
2 車室
3 フロアパネル
4 前部シート
5 後部シート
6 エンジンルーム
7 ダッシュボード
8 エアコンユニット
9 バッテリ
10 後席足元暖房用ダクト
11 クロスメンバ
11a クロスメンバの貫通孔
12 排気ダクト
12a 排気ダクトの排気口
13 リヤフロア
13A リヤフロアの前方隔壁
13a 前方隔壁の貫通孔
14 パネル
14a パネルの排気孔
15 開閉制御弁
S 閉断面空間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロアパネル上に配置されたバッテリの冷却構造において、
前記バッテリを車両前後方向において前席下から後席足元までに配設するとともに、車両前部に搭載されたエアコンユニットから車両後方へ延びる後席足元暖房用ダクトを前記バッテリに接続し、バッテリから車両後方へと延びる排気ダクトをリヤフロアの立ち上がり部に形成された閉断面空間に接続し、該閉断面空間に排気孔を形成したことを特徴とする車両のバッテリ冷却構造。
【請求項2】
前記排気ダクトに車室内に開口する排気口を形成するとともに、該排気口の車両後方に開閉制御弁を設け、該開閉制御弁の開閉によって前記バッテリからの排気の排出経路を、排気を前記排気口から車室内に導入する第1の経路と、排気を前記閉断面空間を経て前記排気孔から車外へ排出する第2経路とに切り替え可能としたことを特徴とする請求項1記載の車両のバッテリ冷却構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−57191(P2011−57191A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212585(P2009−212585)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】