説明

車両の下部構造

【課題】スライドシートが搭載された車両において、乗員の乗降性を向上させ、且つ車両の剛性を確保することができる車両の下部構造を提供する。
【解決手段】車両の下部構造は、フロント開口19の底辺25を形成し、車両のフロアパネル41の車幅方向両側に設けられたサイドシル11を備え、このサイドシル11のサイドシルアウタ27は、サイドシルインナ29と接合するための上フランジ31と、この上フランジ31の下端近傍から車幅方向外方に延びる上壁部45と、この上壁部45の車幅方向外方の端部から下方に延びる縦壁部47とを備え、フロント開口19の底辺25の車両前後方全域にわたって、上壁部45と縦壁部47との境界線63が車両前方に向かうにつれて車幅方向内方又は下方の少なくとも一方に向けて傾斜して延びるような形状を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の下部構造に関し、特に、スライドシートが搭載された車両の下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、乗員の乗降性を向上させるために、サイドシルの断面形状を車両前後方向において変形させて、車両後方側の高さを相対的に高くし、車両前方側の高さを相対的に低くした構造が知られている(例えば特許文献1)。具体的には、従来用いられていた構造では、所定の位置に固定されたシートを備える車両において、そのシートの側部に対応する位置においてサイドシルの高さを高くし、側部よりも前方においてサイドシルの高さを低くしてこれらの間に傾斜部を設けており、これにより、サイドシルの剛性と乗員の乗降性の両方を満足させることとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−106836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された構造では、シートの側部に対応する位置、及びそれよりも前の位置においてサイドシルの高さを変えるようにしており、従って特許文献1には、固定されたシートの位置を基準としてサイドシルの断面形状を変える構造が記載されているだけである。よって特許文献1の構造においては、乗員の体格について考慮されていないので、例えば小柄な乗員が乗降するときに無関係な位置においてもサイドシルの断面が小さくなってしまい、サイドシルの剛性を低下させてしまうという問題があった。さらに、特許文献1の構造においては、乗員の体格に関連するスライドシートのシートポジションについては考慮されていないので、特許文献1の構造は、現在多用されているスライドシートを備える車両について適用することができないという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、スライドシートを有する車両において、乗員の乗降性を向上させ、且つ車両の剛性を確保することができる車両の下部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、スライドシートが搭載された車両の下部構造であって、スライドシートの車幅方向外側において車両前後方向に延び、乗降口の底辺を形成し、車両のフロアパネルの車幅方向両側に設けられ、サイドシルアウタとサイドシルインナを接合して形成され、車幅方向において閉断面形状を有するサイドシルを備え、サイドシルアウタは、サイドシルインナと接合するための上フランジと、この上フランジの下端近傍から車幅方向外方に延びる上壁部と、この上壁部の車幅方向外方の端部から下方に延びる縦壁部とを備えており、乗降口の底辺の車両前後方全域にわたって、上壁部と縦壁部との境界線が車両前方に向かうにつれて車幅方向内方又は下方の少なくとも一方に向けて傾斜して延びるような形状を有することを特徴とする。
【0007】
このように構成された本発明によれば、サイドシルの形状を、その上壁部と縦壁部との境界線が乗降口の底辺の車両前後方向全域にわたって車幅方向内方又は下方の少なくとも一方に向けて傾斜した形状とすることができる。そして、このようにサイドシルの車幅方向断面の形状を変化させることにより、スライドシートの後側シートポジションに対応する位置では、サイドシルの閉断面の大きさを十分に確保しながら、前側シートポジションに対応する位置では、上壁部と縦壁部の車幅方向外方又は上方への突出量を少なくすることができる。これにより、サイドシルの剛性を確保しながら、小柄な乗員が乗降するときにサイドシルが乗員の脚と干渉するのを防止することができる。
【0008】
また本発明において好ましくは、サイドシルアウタは、乗降口の底辺の車両前後方全域にわたって、上壁部と縦壁部との境界線が車両前方に向かうにつれて車幅方向内方、且つ下方に向けて傾斜して延び、上壁部と縦壁部が乗降口の底辺の車両前方端部近傍でほぼ面一になるような形状を有する。
【0009】
このように構成された本発明によれば、乗降口の車両前方端部近傍において上壁部と縦壁部をほぼ面一にして、上壁部と縦壁部が車幅方向外方且つ上方に突出しないようにすることができる。これにより、小柄な乗員が跨ぐ、乗降口の車両前方端部近傍の位置において、サイドシルアウタが乗員の足に干渉するのを防止することができる。
【0010】
また本発明において好ましくは、サイドシルアウタは、上フランジの下端近傍、且つ上壁部の車幅方向内側端部近傍に設けられた、上方に突出するシール当接部を備え、乗降口を開閉するためのサイドドアには、シール当接部に当接するシール部材が設けられている。
【0011】
このように構成された本発明によれば、上壁部と縦壁部との境界線が車両前方に向かうにつれて傾斜した形状のサイドシルアウタを用いた場合においても、シール当接部とサイドドアに設けられたシール部材とを確実に当接させることができる。
【0012】
また本発明において好ましくは、サイドシルアウタは、フロントタイヤの車幅方向外側の面と同じ位置まで車幅方向外方に張り出した膨出部を備える。
【0013】
このように構成された本発明によれば、フロントタイヤの車幅方向外側の面と同じ位置まで張り出した膨出部を設けることにより、フロントタイヤによって巻き上げられた小石等がサイドドアに当たるのを防止することができる。
【0014】
また、上述した課題を解決するために、本発明は、スライドシートが搭載された車両の下部構造であって、スライドシートの車幅方向外側において車両前後方向に延びる、乗降口の底辺を形成し、車両のフロアパネルの車幅方向両側に設けられ、サイドシルアウタとサイドシルインナを接合して形成され、車幅方向において閉断面形状を有するサイドシルと、このサイドシルの一部を覆う加飾部材とを備え、サイドシルアウタは、サイドシルインナと接合するための上フランジと、この上フランジの下端近傍から車幅方向外方に延びる上壁部と、この上壁部の車幅方向外方の端部から下方に延びる縦壁部とを備え、乗降口の底辺の車両前後方全域にわたって、上壁部と縦壁部との境界線が車両前方に向かうにつれて下方に向けて傾斜して延びるような形状を有し、加飾部材は、上壁部及び縦壁部の上部を覆うようになっていることを特徴とする。
【0015】
このように構成された本発明によれば、サイドシルの形状を、その上壁部と縦壁部との境界線が乗降口の底辺の車両前後方向全域にわたって下方に向けて傾斜した形状とすることができる。そして、このようにサイドシルの車幅方向断面の形状を変化させることにより、スライドシートの後側シートポジションに対応する位置では、サイドシルの閉断面の大きさを十分に確保しながら、前側シートポジションに対応する位置では、上壁部と縦壁部の突出量を少なくすることができる。これにより、サイドシルの剛性を確保しながら、小柄な乗員が乗降するときにサイドシルが乗員の脚と干渉するのを防止することができる。また、このように構成された本発明によれば、サイドシルの車幅方向の断面を単純にすることができるため、上壁部と縦壁部の上部とを覆う加飾部材を一体成型しても、これを容易にサイドシルアウタに取り付けることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように本発明によれば、スライドシートを有する車両において、乗員の乗降性を向上させ、且つ車両の剛性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態による車両の下部構造を備える車両の側面図である。
【図2】図1のサイドドアを取り外した状態の側面図である。
【図3】図2のA‐A´断面の断面図である。
【図4】図2のB‐B´断面の断面図である。
【図5】図2のC‐C´断面の断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態にかかる車両の下部構造を示す車幅方向断面の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施形態による車両の下部構造ついて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による車両の下部構造を備える車両の側面図であり、図2は、図1のサイドドアを取り外した状態の側面図である。図1及び図2に示すように、車両は、車室の前側に設けられたフロントピラー1と、それよりも後方に設けられたセンタピラー3と、車室の後側に設けられたリアピラー5と、これらピラー1,3,5の間に延びるルーフサイドレール7と、車室9の下側に沿って延びるサイドシル11とを備える。そして車室9の側部には、フロントドア13とリアドア15が設けられている。
【0019】
また、車室9の前方には、フロントシート17が配置されており、その車幅方向外方には、フロントシート17に乗降するためのフロント開口19が設けられている。また、車室9の後方には、リアシート21が配置されており、これよりも車幅方向外方には、リアシート21に乗降するためのリア開口23が設けられている。フロント開口19は、その前部がフロントピラー1、その上部がルーフサイドレール7、その後部がセンタピラー3によって規定されている。また、フロント開口19の底辺25は、フロントシート17の側部において車両前後方向に直線状に延び、この直線状の底辺25はサイドシル11によって規定されている。
【0020】
フロントシート17は、乗員の体格によってシートポジションを車両前後方向調整することができるスライド式のシートである。そしてこのようなスライド式のフロントシート17を使用する場合、一般的には大柄な乗員はシートポジションを車両後方にセットし、小柄な乗員はシートポジションを車両前方にセットする。
【0021】
図3は図2のA‐A´断面の断面図であり、図4は図2のB‐B´断面の断面図であり、図5は図2のC‐C´断面の断面図である。
まず、図3に示すように、サイドシル11は、サイドシル11の車幅方向外側を形成するサイドシルアウタ27と、サイドシルインナ29とを備える。そしてサイドシルアウタ27と、サイドシルインナ29の各々の上下には、それぞれ上フランジ31,33と、下フランジ35,37とが形成されている。そしてサイドシル11は、これらサイドシルアウタ27の上フランジ31,33及び下フランジ35,37と、サイドシルインナ29の上フランジ31,33及び下フランジ35,37を互いに接合することで形成されており、これによりサイドシル11は、車両前後方向にわたって閉断面を有する。また、サイドシル11の内部には、サイドシル11を補強するためのレインフォースメント39が設けられている。
【0022】
サイドシルインナ29の側面には、フロアパネル41が接合されており、さらにフロアパネル41の上面には、フロントシート17のシートスライドレール43が固定されている。
【0023】
サイドシルアウタ27は、上記の上フランジ31に加えて、この上フランジ31の下端近傍から車幅方向外方に延びる上壁部45と、この上壁部45の車幅方向外方の端部から下方に延びる縦壁部47と、縦壁部47の下端から車幅方向外方に膨出している膨出部49と、上フランジ31の下端近傍、且つ上壁部45の車幅方向内方端部近傍に設けられ、車幅方向外方かつ上方に突出するシール当接部51とを備える。
【0024】
サイドシルアウタ27の上フランジ31とサイドシルインナ29の上フランジ33の上端部には、防音用のシール部材53が取り付けられている。そしてこの防音用のシール部材53は、フロントドア13を閉めた状態でフロントドア13のインナトリム55の下端に当接して外部からの騒音が車室内に入るのを防ぐようになっている。
【0025】
また、サイドシルアウタ27の上フランジ31の下端部と、上壁部45の間に設けられたシール当接部51は、サイドシル11の長手方向に沿って延びている。そしてこのシール当接部51には、フロントドア13の車幅方向内方の下端に取り付けられた流体用のシール部材57が当接するようになっている。この流体用のシール部材57をシール当接部51に当接させることにより、フロントドア13を閉めた状態で外部から水などが車室内に入るのを防ぐようになっている。
【0026】
また、膨出部49は、フロントタイヤ59によって巻き上げられた小石等がフロントドア13等に当たるのを防止するようになっており、その車幅方向外方の面61は、フロントタイヤ59の車幅方向外方の面と同じ位置まで、又はそれよりも車幅方向外方の位置まで車幅方向外方に張り出している。
【0027】
図3に示す、フロント開口19の底辺25の車両後方端部における位置では、上壁部45は、垂直方向に伸びる上フランジ31の下端近傍から、ほぼ水平方向に延びる。また、縦壁部47は、この上壁部45の車幅方向外方の端部から、縦方向に延びている。そしてこれら上壁部45と縦壁部47は、車幅方向外方かつ上方に突出したような形状を有しており、上壁部45と縦壁部47との境界線63は、ほぼ垂直方向に延びる縦壁部47の下端部と垂直方向に並ぶような位置にある。そしてこの上壁部45と縦壁部47との境界線63は、図3に示す位置よりも車両前方に向かうにつれて車幅方向内方かつ下方に向かうように延びている。
【0028】
次に、図4に示す、フロント開口19の底辺25の車両前後方向中央近傍における位置では、上壁部45と縦壁部47との境界線63は、図3に示す境界線63の位置よりも車幅方向内方かつ下方の位置にある。そして上壁部45は、上フランジ31の下端部近傍に位置する車幅方向内方の端部から車幅方向外方の端部にかけて下方に傾斜するように延びている。そして、縦壁部47は、その下端部から上端部にかけて車幅方向内方に向けて傾斜するようになっている。
【0029】
次に、図5に示す、フロント開口19の底辺25の車両前方端部における位置では、上壁部45は、図4に示す状態よりもさらに車幅方向内方に傾斜しており、縦壁部47も、図4に示す状態よりもさらに車幅方向内方に傾斜している。そして、この位置では、上壁部45と縦壁部47は、上壁部45の車幅方向内方の端部から、縦壁部47の下端部との間に延びる直線に沿って面一になっている。
【0030】
このように、図3乃至5を用いて説明したように、サイドシルアウタ27は、フロント開口19の底辺25の車両前後方全域にわたって、上壁部45と縦壁部47との境界線63が車両前方に向かうにつれて車幅方向内方且つ下方に向けて傾斜して延びるような形状を有している。
【0031】
次に上述のような断面形状を有するサイドシルアウタ27を備える、本発明の第1の実施形態にかかる車両の下部構造の作用について説明する。
【0032】
上述したように、サイドシルアウタ27は、フロント開口19の車両後端部では図3に示すような断面形状を有しており、この位置では車幅方向断面において比較的大きな断面を有している。即ち、フロント開口19の車両後端部でサイドシル27を跨いで車両に乗り降りする乗員は、シートポジションを車両後方にセットする大柄な乗員であり、図3に示す位置では、サイドシルアウタ27の上壁部45と縦壁部47によって形成される突出部が乗員の足と干渉することがないので、サイドシル11の断面を比較的大きくしたとしても大柄な乗員にとって乗降性は低下しない。従って、この位置では、サイドシル11の断面を小さくして乗員の足との干渉を防ぐことよりも、上壁部45と縦壁部47によって形成される突出部を比較的大きくすることによりサイドシル11の断面を比較的大きくしてサイドシル11の剛性を確保することを優先している。
【0033】
また、フロント開口19の底辺25の車両前後方向中央近傍における位置では図4に示すような断面形状を有している。この位置の断面は、フロント開口19の車両後端部における断面よりも小さくなっている。即ち、フロント開口19の車両前方向中央近傍でサイドシル11を跨いで車両に乗り降りする乗員は、シートポジションをシートスライドレール43の車両前後方向中央付近にセットするような中柄な乗員である。そして中柄な乗員の場合、大柄な乗員と比較して足がサイドシル11と干渉し易いので、この位置では、上壁部45の車幅方向外方の端部を下方に下げ、且つ縦壁部47の上端を下端よりも車幅内方にして、上壁部45と縦壁部47によって形成される突出部の車幅方向外方且つ上方への突出量が、図3に示すものよりも少なくなっている。これにより、中柄な乗員が乗り降りするときにサイドシルアウタ27が足と干渉するのを防止することができ、さらに、サイドシルアウタ27の上壁部45と縦壁部47によって形成される突出部の突出量を乗員の足と干渉しない最低限の量とすることで、サイドシル11の断面の大きさを確保することができる。
【0034】
さらに、フロント開口19の底辺25の車両前端部における位置では図5に示すような断面形状を有している。この位置の断面は、フロント開口19の車両後端部における断面、及びフロント開口19の底辺の車両前後方向中央近傍における断面よりも小さくなっている。即ち、フロント開口19の車両前後方向中央近傍でサイドシル11を跨いで車両に乗り降りする乗員は、シートポジションをシートスライドレール43の車両前方にセットするような小柄な乗員である。そして小柄な乗員の場合、大柄な乗員及び中柄な乗員と比較して足がサイドシル11と干渉し易いので、この位置では、上壁部45と縦壁部47がほぼ面一になっており、上壁部45及び縦壁部47が車幅方向外方且つ上方へ突出しないようになっている。これにより、小柄な乗員が乗り降りするときにサイドシルアウタ27が足と干渉するのを防止することができ、さらに、この位置だけサイドシルアウタ27の上壁部45と縦壁部47を面一にして突出部を無くすことで、その他の位置においてサイドシル11の断面の大きさを確実に確保することができる。
【0035】
また、上述のようにサイドシルアウタ27の上フランジ31の下端部と上壁部45の間にシール当接部51を設けて、フロントドア13に取り付けられた流体用のシール部材57を、このシール当接部51に当接させることによって、サイドシル11の断面形状を長手方向において不均一にした場合でも、シール部材57とサイドシル11とを確実に当接させることができる。
【0036】
以上のように、本発明の第1の実施形態によれば、サイドシル11の剛性を保てるように一定の断面を確保しながら、シートポジションから推定される乗員の体格に応じてサイドシル11の断面形状を変化させることができ、これにより、乗員の乗降性を向上させながら、車両の剛性を確保することができる。
【0037】
次に、本発明の第2の実施形態にかかる車両の下部構造について詳述する。
図6は、第2の実施形態にかかる車両の下部構造を示す車幅方向断面の断面図である。図6に示すように、第2の実施形態にかかる車両の下部構造は、第1の実施形態にかかる車両の下部構造と同様に、サイドシルアウタ65とサイドシルインナ67を接合して形成されるサイドシル69を備える。
【0038】
サイドシルアウタ65は、上フランジ71と、上フランジ71から車幅方向外方に向けて延びる上壁部73と、上壁部73の車幅方向外端から下方に延びる縦壁部75を備える。そして第2の実施形態にかかる車両の下部構造では、上壁部73と、縦壁部75との境界線77が、車両前方に向かうにつれて下方に向けて傾斜するように延びている。具体的には、上壁部73は、フロント開口19の底辺25の車両後方において、車幅方向内方から車幅方向外方に向けて、下向きに傾斜して延びている。そして上壁部73は、この傾斜を維持したまま車両前方に向かって延びている。また、縦壁部75は、ほぼ垂直に保たれたまま、車両前方に向かってその高さが漸減するようになっている。従って、上壁部73の車幅方向外方端部と縦壁部の上端の位置にある、上壁部と縦壁部との境界線77は、フロント開口19の底辺25の車両前後方向全域にわたって、車両前方に向かうにつれて下方に向けて傾斜している。
【0039】
また、車両の下部構造は、上壁部73と、縦壁部75の上部とを覆う加飾部材79を備える。この加飾部材79は、例えば、サイドシルの車幅方向外側に取り付けられるサイドシルガーニッシュと、サイドシルの上面に取り付けられるスカッフプレートとを一体成型したものである。そしてこの加飾部材79は、上壁部73から縦壁部75の上部にかけて設けられた凹部内81に固定されている。
【0040】
このように、本発明の第2の実施形態によれば、サイドシルアウタ65の形状を、上壁部73と縦壁部75との境界線77が車両前方に向かうにつれて下方に傾斜して延びるような形状とし、このような単純な構造によって、サイドシル69の剛性を保ちながら、シートポジションから推定される乗員の体格に応じてサイドシル69の断面形状を変化させて乗員の乗降性を向上させることができる。また、サイドシルアウタ65の形状を単純にすることができるので、サイドシルガーニッシュとスカッフプレートとを一体成型して加飾部材79を形成し、これを容易にサイドシル69に取り付けることができる。
【0041】
尚、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、上述した実施形態の構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0042】
例えば、上述の第1の実施形態では、上壁部45と縦壁部47との境界線63が車幅方向内方かつ下方に向かって傾斜するものとして説明したが、この境界線63を、単に車幅方向内方に向かって傾斜するようにしてもよい。この場合、縦壁部47の高さは車両の前後方向にわたって変化せずに、サイドシル11を上面視したときに、上壁部45が車両前方に向かうに連れて車幅方向内方に向かって傾斜するような形状となる。このように境界線63を、単に車幅方向内方に向かって傾斜させて上壁部45の車幅方向外方への突出量を減らすことによっても、上述の第1の実施形態と同様に、サイドシルが乗員の足と干渉するのを防止することができる。
【符号の説明】
【0043】
11,69 サイドシル
17 フロントシート
25 フロント開口の底辺
27,65 サイドシルアウタ
29,67 サイドシルインナ
31,71 上フランジ
45,73 上壁部
47,75 縦壁部
49 膨出部
51 シール当接部
63,77 上壁部と縦壁部との境界線
79 加飾部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドシートが搭載された車両の下部構造であって、
前記スライドシートの車幅方向外側において車両前後方向に延び、乗降口の底辺を形成し、車両のフロアパネルの車幅方向両側に設けられ、サイドシルアウタとサイドシルインナを接合して形成され、車幅方向において閉断面形状を有するサイドシルを備え、
前記サイドシルアウタは、サイドシルインナと接合するための上フランジと、この上フランジの下端近傍から車幅方向外方に延びる上壁部と、この上壁部の車幅方向外方の端部から下方に延びる縦壁部とを備えており、前記乗降口の底辺の車両前後方全域にわたって、前記上壁部と前記縦壁部との境界線が車両前方に向かうにつれて車幅方向内方又は下方の少なくとも一方に向けて傾斜して延びるような形状を有することを特徴とする車両の下部構造。
【請求項2】
前記サイドシルアウタは、前記乗降口の底辺の車両前後方全域にわたって、前記上壁部と前記縦壁部との境界線が車両前方に向かうにつれて車幅方向内方、且つ下方に向けて傾斜して延び、前記上壁部と前記縦壁部が前記乗降口の底辺の車両前方端部近傍でほぼ面一になるような形状を有する請求項1に記載の車両の下部構造。
【請求項3】
前記サイドシルアウタは、前記上フランジの下端近傍、且つ前記上壁部の車幅方向内側端部近傍に設けられた、上方に突出するシール当接部を備え、前記乗降口を開閉するためのサイドドアには、前記シール当接部に当接するシール部材が設けられている請求項1又は2に記載の車両の下部構造。
【請求項4】
前記サイドシルアウタは、フロントタイヤの車幅方向外側の面と同じ位置まで車幅方向外方に張り出した膨出部を備える請求項1乃至3の何れか1項に記載の車両の下部構造。
【請求項5】
スライドシートが搭載された車両の下部構造であって、
前記スライドシートの車幅方向外側において車両前後方向に延びる、乗降口の底辺を形成し、車両のフロアパネルの車幅方向両側に設けられ、サイドシルアウタとサイドシルインナを接合して形成され、車幅方向において閉断面形状を有するサイドシルと、
このサイドシルの一部を覆う加飾部材とを備え、
前記サイドシルアウタは、サイドシルインナと接合するための上フランジと、この上フランジの下端近傍から車幅方向外方に延びる上壁部と、この上壁部の車幅方向外方の端部から下方に延びる縦壁部とを備え、前記乗降口の底辺の車両前後方全域にわたって、前記上壁部と前記縦壁部との境界線が車両前方に向かうにつれて下方に向けて傾斜して延びるような形状を有し、
前記加飾部材は、前記上壁部及び縦壁部の上部を覆うようになっていることを特徴とする車両の下部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−176674(P2012−176674A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40390(P2011−40390)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】