車両の乗員保護装置
【課題】衝突箇所から遠い側の車両用シートに着座している乗員が、コンソールとの接触により胸部に衝撃を受けるのを抑制しつつ、頭部の衝突箇所側への移動を的確に抑制する。
【解決手段】コンソールボックス14を有するセンターコンソール11の両側に一対の車両用シート15,16を並設した車両に対し、並設方向の一方(右方)から他方(左方)へ向けて衝撃が加わったとき、コンソールボックス14を移動機構により上方へ移動させ、車両の衝突箇所から遠い側の車両用シート15に着座した乗員Pの腰部PPの衝突箇所側への移動をセンターコンソール11の側面11Sで規制する。移動機構は、コンソールボックス14の上面14Uが、ISO6549−1999規格に準拠した乗員Pのヒップポイントから190mm〜300mm上方へ離間した箇所に位置するようにコンソールボックス14を移動させる。
【解決手段】コンソールボックス14を有するセンターコンソール11の両側に一対の車両用シート15,16を並設した車両に対し、並設方向の一方(右方)から他方(左方)へ向けて衝撃が加わったとき、コンソールボックス14を移動機構により上方へ移動させ、車両の衝突箇所から遠い側の車両用シート15に着座した乗員Pの腰部PPの衝突箇所側への移動をセンターコンソール11の側面11Sで規制する。移動機構は、コンソールボックス14の上面14Uが、ISO6549−1999規格に準拠した乗員Pのヒップポイントから190mm〜300mm上方へ離間した箇所に位置するようにコンソールボックス14を移動させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンソールの両側に車両用シートが並設された車両に対し、その並設方向の一方から他方に向けて衝突による衝撃が加わった場合等に、同車両の衝突箇所から遠い側の車両用シートに着座している乗員が衝突箇所側へ移動するのを抑制して、衝突箇所側の車両構成部材等との接触から保護するようにした車両の乗員保護装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両内の車幅方向の中央部分には、同車両の前後方向に延びるセンターコンソールが設けられており、このセンターコンソールを挟んで車幅方向両側には一対の車両用シートが並設されている。また、車両内には、同車両の衝突時に、各車両用シートに着座した乗員の移動を制限して同乗員を保護するためのシートベルト装置が車両用シート毎に設けられている。
【0003】
ところで、側面衝突等により車両に車幅方向の一方から他方に向けて衝撃が加わった場合、同車幅方向については、慣性力により乗員がその位置にとどまろうとするのに対し、車両は同方向へ移動したり変形したりしようとする。車両を基準とすると、乗員は同車両に対し衝突箇所側へ移動しようとする。この際、シートベルト装置のショルダベルト部にあっては、その構造上、車両の前方への乗員の移動を制限することはできるものの、衝突箇所側への乗員の移動についてはこれを的確に制限することが難しい。そのため、図11に示すように、衝突箇所から遠い側(図11の左側)の車両用シート71に着座した乗員Pは、シートベルト装置72のショルダベルト部73をすり抜けて衝突箇所側(図11の右側)へ大きく相対移動する。この際、乗員Pの腰部PPについては、衝突箇所側への移動がセンターコンソール74によってある程度規制される。これに対し、着座姿勢を採った乗員Pの腰部PPよりも上側部分(上半身UB)については、衝突箇所側への移動を規制するものが特段ない。そのため、乗員Pの腰部PPがセンターコンソール74に当った後は、同乗員Pの上半身UBが上側ほど上記衝突箇所に近づくように傾斜し、さらに、頭部PHが上側ほど上記衝突箇所に近づくように傾斜する。これらの傾斜により、頭部PHが、図11において二点鎖線で示すように、衝撃により車内側へ変形したサイドドア等の車両構成部材75に接触して衝撃を受けるおそれがある。
【0004】
これに対し、特許文献1には、少なくとも自身の上部のコンソールボックスを可動部としたセンターコンソールを車両内に配設するとともに、車両への衝撃に応じ同可動部を上方へ移動させる移動機構を設けた「車両の乗員保護装置」が記載されている。この乗員保護装置では、車両への衝撃に応じて移動機構が作動し、可動部が非衝突時よりも高い位置へ移動させられる。このため、乗員の上半身のうち、腰部とその上方近傍部分は、コンソールの側面のより広い部位によって受け止められ、衝突箇所側への移動を規制される。この規制に伴い、乗員の上半身のうちセンターコンソールよりも高い部位(例えば、胸部、頭部等)は、衝突箇所側へ移動しにくくなる。
【0005】
なお、上記特許文献1には、移動機構による可動部の上方への移動量の上限値が規定されている。これは、乗員の上半身のうち比較的耐衝撃性の低い箇所である胸部が可動部に接触して衝撃を受けるのを回避するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−143272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、衝突箇所から遠い側の車両用シートに着座した乗員が衝突箇所側へ相対移動し車両構成部材と接触する箇所は主として頭部である。従って、上記乗員が車両構成部材と接触するかどうかは頭部の衝突箇所側への移動量によって決定される。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1には、この頭部の移動量についての記載はなされていない。上方へ移動させられた可動部によって、腰部の衝突箇所側への移動が規制されるといった記載にとどまっている。また、特許文献1には、移動機構による可動部の上方への移動量の下限値については言及されていない。
【0009】
そのため、特許文献1は、頭部の衝突箇所側への移動を的確に規制して車両構成部材との接触を抑制する観点からは、未だ改善の余地が残されている。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、衝突箇所から遠い側の車両用シートに着座している乗員が、コンソールとの接触により胸部に衝撃を受けるのを抑制しつつ、頭部の衝突箇所側への移動を的確に抑制することのできる車両の乗員保護装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、少なくとも自身の上部を可動部としたコンソールを車両内に配設するとともに、同コンソールの両側に一対の車両用シートを並設し、前記車両に対し、前記車両用シートの並設方向の一方から他方へ向けて衝突による衝撃が加わったとき、又は加わることが予測されたとき、前記可動部を移動機構により上方へ移動させ、前記車両の衝突箇所から遠い側の車両用シートに着座した乗員の腰部の前記衝突箇所側への移動を前記コンソールの側面で規制するようにした車両の乗員保護装置であって、前記移動機構は、前記可動部の上面が、ISO6549−1999規格に準拠した乗員のヒップポイントから190mm〜300mm上方へ離間した箇所に位置するように前記可動部を移動させるものであることを要旨とする。
【0011】
上記の構成によれば、車両に対し、車両用シートの並設方向の一方から他方へ向けて衝突による衝撃が加わると、同並設方向については、同車両用シートに着座している乗員が慣性力によりその位置にとどまろうとするのに対し、車両は同方向へ移動したり変形したりしようとする。表現を変えると、乗員は車両に対し衝突箇所側へ移動しようとする。この移動により、乗員の頭部は、衝撃により変形したり車内側へ進入したりする車両構成部材等と接触するおそれがある。
【0012】
これに対し、請求項1に記載の発明では、車両に衝突による衝撃が加わると、又は加わることが予測されると、車両への衝撃に応じて移動機構が作動し、コンソールの可動部が同移動機構によって上方へ移動させられる。この移動により、可動部の上面が、移動機構の作動前よりも高くなる。このため、乗員の上半身のうち腰部及びその上方近傍は、コンソールの側面のより広い部位によって受け止められ、衝突箇所側への移動を規制される。この規制に伴い、乗員の上半身のうちコンソールよりも高い部位(例えば、胸部、頭部等)は、衝突箇所側へ移動しにくくなる。
【0013】
コンソールが衝突箇所側への移動を規制する上記効果は、可動部の上面が、ISO6549−1999規格に準拠した乗員のヒップポイントから190mm以上である場合に得られる。190mmよりも低いと、コンソールの側面によって乗員の衝突箇所側への移動を規制する効果は、可動部を上方へ移動させない場合とほとんど同じであって、可動部を上方へ移動させることによるメリットがほとんど得られない。
【0014】
なお、コンソールによる上記効果は、可動部の上面が高くなるほど大きくなる。反面、可動部の上面が過度に高くなると、乗員の上半身のうち耐衝撃性のさほど高くない箇所である胸部が、コンソール(可動部)に接触して衝撃を受けるおそれがある。
【0015】
この点、請求項1に記載の発明では、可動部は、その上面が、ヒップポイントから300mm上方へ離間した箇所よりも高い位置へは移動させられない。このため、乗員の上半身のうち胸部がコンソールに接触して衝撃を受けることが抑制される。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記コンソールとは別に設けられ、かつ前記乗員のうち、前記移動機構により上方へ移動させられた前記可動部よりも上側の部位を拘束する拘束手段をさらに備えることを要旨とする。
【0017】
上記の構成によれば、乗員の上半身のうち腰部と、その上方近傍部分との衝突箇所側へ移動は、前述したように、可動部が移動機構によって上方へ移動させられたコンソールによって規制される。さらに、乗員の上半身のうち、上方へ移動させられた可動部よりも上側の部位は拘束手段によって拘束される。この拘束により、上記部位の衝突箇所側への移動が抑制される。
【0018】
従って、拘束手段による拘束がない場合に比べ、すなわち、コンソールのみによって乗員の衝突箇所側への移動を規制する場合に比べ、乗員の頭部の衝突箇所側への移動量を少なくすることができるようになる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記車両内には、前記乗員を、同乗員が着座した前記車両用シートに拘束するためのシートベルト装置が設けられており、前記拘束手段は、前記車両への前記衝撃に応じ前記シートベルト装置のウェビングを非衝突時よりも緊張状態にするプリテンショナ装置であることを要旨とする。
【0020】
上記の構成によれば、車両への衝撃に応じプリテンショナ装置が拘束手段として作動し、シートベルト装置のウェビングが非衝突時よりも緊張状態にされる。この緊張状態のウェビングにより、乗員の上半身が車両用シートに押付けられ、上半身と車両用シートとの間で発生する摩擦が増大する。この増大した摩擦により、乗員の上半身のうち、移動機構によって上方へ移動させられた可動部よりも上側の部位が車両用シートに拘束され、同部位の衝突箇所側への移動が抑制される。このウェビングによる拘束は、コンソールのような硬いものを拘束手段とした場合よりもソフトに行われる。
【0021】
また、上記摩擦の増大により、上半身の上記部位が衝突箇所側へ移動する際の衝突箇所側の車両構成部材との相対速度差が小さくなる。そのため、車両構成部材の車内側への移動量や変形量が想定したものよりも大きく、万が一乗員の頭部が車両構成部材に当るようなことがあったとしても、その接触により頭部が車両構成部材から受ける衝撃は小さなものとなる。
【0022】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の発明において、前記拘束手段は、前記乗員の前記衝突箇所側の側方近傍であって、前記移動機構により上方へ移動させられた前記可動部の前記上面よりも少なくとも上側で、膨張用ガスにより膨張するエアバッグを備えるエアバッグ装置であることを要旨とする。
【0023】
上記の構成によれば、車両への衝撃に応じエアバッグ装置が拘束手段として作動し、エアバッグが、乗員の衝突箇所側の側方近傍であって、移動機構によって上方へ移動させられた可動部の上面よりも少なくとも上側で膨張する。上半身のうち、上方へ移動させられた可動部よりも上側の部位が、エアバッグによって受け止められて拘束され、同部位の衝突箇所側への移動が抑制される。このエアバッグによる拘束は、コンソールのような硬いものを拘束手段とした場合よりもソフトに行われる。
【0024】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記エアバッグは、前記移動機構により上方へ移動させられた前記可動部の前記上面よりも下側であって、前記コンソールと前記乗員との間で膨張する部分を一部に有することを要旨とする。
【0025】
ここで、車両への衝撃に応じ、乗員の上半身が衝突箇所側へ移動しようとすると、膨張状態のエアバッグに対し、上半身による衝突箇所側へ向かう押圧力が加わる。この際、仮にエアバッグよりも衝突箇所側に同エアバッグを受け止めるものが何もないとすると、エアバッグが上記押圧力により固定箇所を支点として衝突箇所側へ変位(回転)するおそれがある。
【0026】
しかし、請求項5に記載の発明では、車両への衝撃に応じエアバッグ装置が拘束手段として作動すると、エアバッグの一部が、移動機構によって上方へ移動させられた可動部の上面よりも下側であって、コンソールと乗員との間で膨張する。エアバッグのこの部分の衝突箇所側には、コンソールのうち、上方へ移動させられた可動部が少なくとも位置する。このコンソールの少なくとも可動部は、エアバッグの上記部分(一部)を衝突箇所側から受け止め、同エアバッグが固定箇所を支点として衝突箇所側へ変位(回転)するのを規制する。その結果、乗員の上半身のうち、上方へ移動させられた可動部よりも上側の部位が、衝突箇所側へ移動するのをエアバッグによって規制する効果がより確実に得られるようになる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の車両の乗員保護装置によれば、衝突箇所から遠い側の車両用シートに着座している乗員が、コンソールとの接触により胸部に衝撃を受けるのを抑制しつつ、頭部の衝突箇所側への移動を的確に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明を具体化した第1実施形態において、シートベルト装置によって車両用シートに拘束された乗員と、センターコンソールとの関係を示す側面図。
【図2】第1実施形態において、シートベルト装置によって車両用シートに拘束された乗員と、センターコンソールとの関係を示す正面図。
【図3】第1実施形態において、車両用シートとシートベルト装置との関係を示す部分斜視図。
【図4】第1実施形態において、非側面衝突時のセンターコンソールの状態を模式的に示す側面図。
【図5】第1実施形態において、側面衝突時のセンターコンソールの状態を模式的に示す側面図。
【図6】第1実施形態において、乗員の衝突箇所側への移動がセンターコンソールによって規制される様子を示す正面図。
【図7】本発明を具体化した第2実施形態において、シートベルト装置によって車両用シートに拘束された乗員と、センターコンソールとの関係を示す側面図。
【図8】本発明を具体化した第3実施形態において、シートベルト装置によって車両用シートに拘束された乗員と、センターコンソールと、エアバッグ装置との関係を示す側面図。
【図9】第3実施形態において、エアバッグによって乗員が拘束される様子を示す平面図。
【図10】第3実施形態において、エアバッグによって乗員が拘束される様子を示す正面図。
【図11】乗員保護装置が設けられていない従来技術を示す図であり、側面衝突の衝撃により乗員が衝突箇所側へ移動する様子を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態について、図1〜図6を参照して説明する。
なお、以下の記載において、車両の前進方向を前方として説明し、車両の後進方向を後方として説明する。また、以下の記載における上下方向は車両の上下方向を意味し、左右方向は車両の車幅方向であって車両前進時の左右方向と一致するものとする。
【0030】
図1及び図2の少なくとも一方に示すように、車両10内の前部であって車幅方向の中央部分には、同車両10の前後方向へ延びるセンターコンソール11が設けられている。センターコンソール11は、特許請求の範囲におけるコンソールに該当するものであり、上面に開口(図示略)を有するコンソール本体12と、略直方体形状をなし、かつ上記開口を通じてコンソール本体12から出没するコンソールボックス14とを備えている。コンソールボックス14は、特許請求の範囲における「可動部」に該当するものであり、センターコンソール11の少なくとも上部を構成している。また、コンソールボックス14は、図示はしないが、小物類、車両備品等の被収容物の出し入れ口と、スライド、回動等により上記出し入れ口を開閉する蓋部とを備えている。コンソールボックス14(蓋部)の上面14Uは水平方向に略平らに形成されている。この上面14Uの高さは、衝突による衝撃が車両に加わらない通常時に乗員Pがひじを置くことのできる高さに設定されている。センターコンソール11には、図示はしないが、上記以外にもシフトレバー、サイドブレーキレバー等の操作部や、カップホルダ、灰皿等も設けられている。
【0031】
なお、車両10及びその構成部材について、車幅方向を規定する場合には、センターコンソール11を基準とする。センターコンソール11に近い側を「車内側」といい、センターコンソール11から遠ざかる側を「車外側」というものとする。
【0032】
センターコンソール11を挟んだ車幅方向両側には、一対の車両用シート15,16が並設されている。両車両用シート15,16は、車内の前部に設けられたもの(前席)であって、運転席及び助手席をなしている。各車両用シート15,16は、略水平状に配置されたシートクッション(座部)17と、そのシートクッション17の後側に配置されたシートバック(背もたれ部)18とを備えており、乗員(運転者及び同乗者)Pが車両前側を向いてシートクッション17に着座してシートバック18に凭れることが可能となっている。
【0033】
また、車両10内には、その衝突時に、各車両用シート15,16に着座した乗員Pの移動を制限して同乗員Pを保護するためのシートベルト装置20が車両用シート15,16毎に設けられている。なお、図2では、乗員Pを車両用シート16に拘束するためのシートベルト装置の図示が省略されている。後述する図6及び図10についても同様である。また、図9では、車両用シート15,16のいずれについてもシートベルト装置の図示が省略されている。
【0034】
図1及び図3の少なくとも一方に示すように、シートベルト装置20は、乗員Pを直接拘束する部材である帯状のウェビング(シートベルト)21と、ウェビング21に対しその長手方向への移動(摺動)可能に取付けられたタング22と、シートクッション17の車内側近傍に配置されてタング22が係脱可能に装着されるバックル23とを備えている。
【0035】
ウェビング21は、その一端部が、アンカプレート24により、シートクッション17の車外側近傍に支持され、他端部が、同車外側に配設された巻取り装置25により巻取られる構成とされている。また、ウェビング21は、上記巻取り装置25の略上方に配設されたショルダアンカ26に摺動可能に挿通されている。
【0036】
シートベルト装置20では、ウェビング21に対してタング22を摺動させることで、主として乗員Pの腰部PPを拘束するラップベルト部27と、主として乗員Pの肩部PSを拘束するショルダベルト部28との各長さを変更可能である。ラップベルト部27は、ウェビング21において、タング22からウェビング21のアンカプレート側端部までの部分であり、着座した乗員Pの腰部PPの一側方から水平方向に同腰部PPの前を経由して他側方に架け渡される。ショルダベルト部28は、ウェビング21において、ショルダアンカ26とタング22との間の部分であり、着座した乗員Pの肩部PSから斜めに胸部PT(図2参照)の前を経由して腰部PPの側方に架け渡される。
【0037】
ところで、図2に示すように、一対の車両用シート15,16が並設された車両10に対し、側面衝突(側突)により、同車両用シート15,16の並設方向(車幅方向)の一方から他方へ向けて衝撃が加わる場合がある。この衝撃の加わる方向は、車両用シート15,16の並設方向、すなわち車両10の進行方向に直交する方向が代表的であるが、ここではこれに限らず、同並設方向(車両進行方向に直交する方向)に斜めに交差する方向も含まれるものとする。こうした衝撃が加わった場合、同車幅方向については、慣性力により乗員Pがその位置にとどまろうとするのに対し、車両10は同方向へ移動したり変形したりしようとする。車両10を基準とすると、乗員Pは同車両10に対し衝突箇所側へ移動しようとする。
【0038】
例えば、図2において矢印で示す方向(右方)から衝突(側面側突)による衝撃が加わった場合、乗員Pは右方へ移動しようとし、これとは反対方向(左方)から衝撃が加わった場合、乗員Pは左方へ移動しようとする。また、車両10において、側方からの衝撃を直接受ける箇所であるボディサイド部31,32は、車内側へ変形しようとする。
【0039】
ここで、ボディサイド部31,32とは、車両10の車幅方向についての両側部に配置されている車両構成部材を指し、例えば、前席に対応するボディサイド部31,32は、フロントドア、センターピラー(Bピラー)等である。
【0040】
上記のようにボディサイド部31,32に側面衝突による衝撃が加わった場合、シートベルト装置20のショルダベルト部28にあっては、その構造上、車両10の前方への乗員Pの移動を制限することはできるものの、衝突箇所側への乗員Pの移動についてはこれを的確に制限することが難しい。そのため、衝突箇所から遠い側の車両用シート15,16に着座した乗員Pの上半身UBは、ショルダベルト部28をすり抜けて衝突箇所側へ大きく相対移動しようとする。そして、乗員Pの頭部PHが、衝撃により変形した衝突箇所側のボディサイド部31,32と接触するおそれがある。
【0041】
そこで、第1実施形態では、図1及び図4の少なくとも一方に示すように、頭部PHの上記接触を抑制して乗員Pを保護する乗員保護装置40が設けられている。次に、この乗員保護装置40について説明する。
【0042】
コンソール本体12の内部においてコンソールボックス14の下方には、そのコンソールボックス14を上方へ移動させるための移動機構41が設けられている。この移動機構41は、上下方向に延びてコンソール本体12、車両10の床等に固定されたシリンダ42と、シリンダ42内に摺動可能に収容されたピストン(図示略)と、自身の下端部において上記ピストンに連結され、かつ自身の上端部においてコンソールボックス14に取付けられたロッド44とを備えている。こうした構成の移動機構41は、所定の駆動信号の入力に応じ点火してガスを発生し、ピストンを通じて図5に示すようにロッド44をシリンダ42から上方へ突出させ、同ロッド44によってコンソールボックス14を瞬時に上方へ押上げる。
【0043】
移動機構41によるコンソールボックス14の移動量は、次の条件を満たすように設定されている。
<条件>
ISO6549−1999規格に準拠した乗員PのヒップポイントHPを基準とし、コンソールボックス14の上面14UがヒップポイントHPから190mm〜300mm上方へ離間した箇所に位置すること(図1)。
【0044】
コンソールボックス14の上面14Uの位置が採り得る範囲を上記のように規定したのは、下記の表1に示す解析(CAE解析)の結果によるものである。
【0045】
【表1】
この解析は、公的機関による車両の衝突事故の調査結果に基づき、最も頻度の高い衝突形態に近い形態で側面衝突を起こさせ、そのときに生ずる乗員の頭部の移動量(頭部移動量D)を算出したものである。衝突形態の主なものは、衝突の速度及び方向である。なお、衝突の方向については、車両の進行方向に対し直交する方向に限らず、斜めに交差する方向も含まれる。
【0046】
この解析では、ヒップポイントHPからコンソールボックスの上面までの距離を「高さH」とし、この高さHを150mm、190mm、250mm、300mmとした場合の各頭部移動量Dを算出している。ただし、頭部移動量Dは実際の数値ではなく、高さHを150mmとした場合を基準(100%)とし、高さHを190mm、250mm、300mmとした場合に、基準のどれだけ(何%)になるかを算出している。高さHが150mmである状態は、移動機構によりコンソールボックスをコンソール本体から上方へ移動させる前の状態である。
【0047】
解析は、2種類のモデル(モデルA及びモデルB)について行っている。これは、1種類のモデルのみについて解析した場合よりも解析精度を高めるためである。一方のモデルAは、平均的な成人を模し、かつ評価にも用いられるダミー体に対応するモデルである。他方のモデルBは、上記モデルAよりも人体に近い挙動を示すモデルである。モデルBでは、モデルAとは異なり、関節間での動きも考慮して頭部の移動量が算出される。ただし、モデルAについて算出した値については、モデル体で評価(検証)することができるのに対し、モデルBについてはこうした評価ができない。
【0048】
なお、モデルA及びモデルBのいずれについても、頭部移動量Dが92%よりも多いと、頭部が衝突箇所側のボディサイド部に接触する。
モデルAについては、コンソールボックスの高さHと頭部移動量Dとの間の関係として、次の傾向が見られる。高さHが150mm〜250mmの領域では、コンソールボックスの上方への移動量増加に伴い、頭部移動量Dが略一定量ずつ減少していく。表現を変えると、上記範囲では、頭部移動量Dの減少度合いが比較的大きく、かつ略一定である。すなわち、上記範囲では、コンソールボックスの上方への移動による頭部移動量Dを低減する効果として、比較的大きなものが得られる。高さHが250mmを越えると、頭部移動量Dの減少度合いが小さくなり、コンソールボックスの上方への移動による頭部移動量Dを低減する上記効果が小さくなる。
【0049】
これに対し、モデルBについては、コンソールボックスの高さHと頭部移動量Dとの間の関係として、次の傾向が見られる。高さHが150mm〜190mmの領域では、高さHが変化しても頭部移動量Dがほとんど変化せず、コンソールボックス14の上方への移動による頭部移動量Dを低減する効果が小さい。高さHが190mmよりも大きな領域では、コンソールボックス14の上方への移動量増加に伴い、頭部移動量Dが略一定量ずつ減少していく。表現を変えると、上記範囲では、頭部移動量Dの減少度合いが比較的大きく、かつ略一定である。すなわち、上記範囲では、コンソールボックスの上方への移動による頭部移動量Dを低減する効果として、比較的大きなものが得られる。
【0050】
さらに、高さHが300mmを越えると、モデルA及びモデルBのいずれについても、胸部PTがコンソールボックスに接触し、衝撃を受ける可能性が高まる。
上述した傾向と、胸部PTのコンソールボックス14との接触抑制とを考慮すると、モデルA及びモデルBの両者に共通する事項として、高さHが190mm〜300mmとなるようにコンソールボックス14を上方へ移動させることが重要であることが判る。このような経緯から、第1実施形態では、移動機構41によるコンソールボックス14の移動量に関する上記の条件を設定している。
【0051】
図1に示すように、乗員保護装置40は、加速度センサ等からなる衝撃センサ51と、制御装置52とをさらに備えている。衝撃センサ51は、ボディサイド部31,32(図2参照)等に設けられており、同ボディサイド部31,32に側方から加えられる衝撃を検出する。制御装置52は、衝撃センサ51からの検出信号に基づき、移動機構41の作動を制御する。
【0052】
次に、上記のように構成された第1実施形態において、側面衝突により、車両10に対し、車両用シート15,16の並設方向(車幅方向)の一方から他方へ向けて衝撃が加わった場合の作用について説明する。ここでは、一方の車両用シート(運転席)15にのみ乗員(運転者)Pが着座している状況のもと、乗員(同乗者)Pが着座していない車両用シート16側のボディサイド部32に対し、図2において矢印で示す方向(図2の右方)から衝撃が加わったものとする。
【0053】
このように、一方のボディサイド部32に対し側面衝突による衝撃が加わると、上述したように、車両用シート15,16の並設方向(車幅方向)については、車両用シート15に着座している乗員Pが慣性力によりその位置にとどまろうとするのに対し、車両10は同方向へ移動したり変形したりしようとする。車両10を基準とすると、図6に示すように、乗員Pは車両10に対し衝突箇所側(ボディサイド部32側)へ移動しようとする。この移動により、乗員Pの頭部PHは、衝撃により変形したり車内側へ進入したりするボディサイド部32と接触するおそれがある。
【0054】
一方、ボディサイド部32に所定値以上の衝撃が加わったことが衝撃センサ51によって検出されると、その検出信号に基づき制御装置52から、移動機構41に対し、これを作動させるための指令信号が出力される。この指令信号に応じて、移動機構41では、シリンダ42内で点火が行われてガスが発生される。このガスによって、ロッド44が図5に示すようにシリンダ42から上方へ大きく突出させられ、同ロッド44によってコンソールボックス14が瞬時に上方へ押上げられる。
【0055】
この押上げにより、コンソールボックス14の上面14Uが、移動機構41の作動前(非衝突時、図4参照)よりも高くなる。このため、乗員Pの上半身UBのうち腰部PP及びその上方近傍は、センターコンソール11の側面11Sのより広い部位によって受け止められ、衝突箇所側への移動を規制される。ここでのセンターコンソール11の側面11Sは、コンソール本体12の乗員P側の側面全体と、コンソールボックス14の乗員P側の側面のうちコンソール本体12から露出する部分とからなる。この規制に伴い、乗員Pの上半身UBのうち、上方へ移動させられたコンソールボックス14よりも高い部位(例えば、胸部PT、頭部PH等)は、衝突箇所側へ移動し(倒れ)にくくなる。
【0056】
センターコンソール11が衝突箇所側への移動を規制する上記効果は、コンソールボックス14の上面14Uが、乗員PのヒップポイントHPから190mm以上高い箇所に位置する場合に得られる。190mmよりも低いと、コンソールボックス14を上方へ移動させたセンターコンソール11の側面11Sによって乗員Pの衝突箇所側への移動を規制する効果は、コンソールボックス14を上方へ移動させない場合の同効果とほとんど同じであって、コンソールボックス14を上方へ移動させることによるメリットがほとんど得られない。
【0057】
なお、上記コンソールボックス14を上方へ移動させたセンターコンソール11によって乗員Pの衝突箇所側への移動を規制する効果は、コンソールボックス14の上面14Uが高くなるほど大きくなる。反面、コンソールボックス14の上面14Uが過度に高くなると、乗員Pの上半身UBのうち耐衝撃性のさほど高くない箇所である胸部PTが、コンソールボックス14に接触して衝撃を受けるおそれがある。
【0058】
この点、第1実施形態では、コンソールボックス14の上面14Uが、ヒップポイントHPから300mm上方へ離間した箇所よりも高い位置へは移動させられない。このため、乗員Pの上半身UBのうち胸部PTがコンソールボックス14に接触して衝撃を受けることが抑制される。
【0059】
以上詳述した第1実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)センターコンソール11に移動機構41を設けている。そして、車両10に対し車両用シート15,16の並設方向の一方から他方へ向けて衝撃が加わった場合には、上面14Uが、乗員PのヒップポイントHPから190mm〜300mm上方へ離間した箇所に位置するように、コンソールボックス14を、移動機構41によって上方へ移動させるようにしている。
【0060】
このため、衝突箇所から遠い側の車両用シート15,16に着座している乗員Pが、センターコンソール11との接触により胸部PTに衝撃を受けるのを抑制することができる。これに加え、頭部PHの移動を的確に抑制することで、頭部PHの衝突箇所側のボディサイド部31,32との接触を抑制することができる。
【0061】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態について図7を参照して説明する。
第2実施形態は、乗員保護装置40が、センターコンソール11とは別に設けられ、かつ乗員Pのうち、移動機構41によって上方へ移動させられたコンソールボックス14よりも上側の部位を拘束する拘束手段をさらに備えている点において、上記第1実施形態と異なっている。
【0062】
拘束手段は、車両10への衝撃に応じシートベルト装置20のウェビング21を非衝突時よりも緊張状態にするプリテンショナ装置55によって構成されている。シートベルト装置20が巻取り装置25を備えていることについては、第1実施形態で説明したとおりであるが、プリテンショナ装置55はこの巻取り装置25内に設けられている。プリテンショナ装置55は、車両10への側方からの衝撃に応じてガスを発生するガス発生装置(図示略)を備えており、この発生したガスの膨張力を利用して、ワイヤ、ボール、歯車等を動かして巻取り装置25によりウェビング21の弛み分を瞬時に巻き取らせる。プリテンショナ装置55に接続された制御装置52は、衝撃センサ51からの検出信号に基づき、上述した移動機構41の作動に加え、プリテンショナ装置55の作動を制御する。プリテンショナ装置55は、通常は、前面衝突等により車両10に対し前方から衝撃が加わった場合に作動するが、第2実施形態では、側面衝突により車両10に対し側方から衝撃が加わった場合に作動する。
【0063】
上記の構成を有する第2実施形態において、側面衝突により、車両10に対し、車両用シート15,16の並設方向(車幅方向)の一方から他方へ向けて衝撃が加わり、そのことが衝撃センサ51によって検出されると、その検出信号に基づき制御装置52から移動機構41に対し、これを作動させるための指令信号が出力される。この指令信号に応じて、移動機構41が作動してコンソールボックス14が瞬時に上方へ押上げられる。乗員Pの上半身UBのうち腰部PPとその上方近傍部分との衝突箇所側へ移動は、コンソールボックス14を上方へ移動させたセンターコンソール11によって規制される。この点は、上述した第1実施形態と同様である。
【0064】
また、上記衝撃センサ51の検出信号に基づき制御装置52から、プリテンショナ装置55に対し、これを作動させるための指令信号が出力される。この指令信号に応じて、プリテンショナ装置55では、ガス発生装置からガスが発生される。このガスの膨張力により、ウェビング21の弛み分が瞬時に巻き取られ、同ウェビング21が非衝突時よりも緊張状態にされる。この緊張状態のウェビング21により、乗員Pの上半身UBが車両用シート15,16に押付けられ、上半身UBと車両用シート15,16との間で発生する摩擦が増大する。この増大した摩擦により、上半身UBのうち、移動機構41によって上方へ移動させられたコンソールボックス14よりも上側の部位が車両用シート15,16に拘束され、同部位の衝突箇所側への移動が抑制される。このウェビング21による拘束は、センターコンソール11のような硬いものを拘束手段とした場合よりもソフトに行われる。
【0065】
また、上記摩擦の増大により、上半身UBの上記部位が衝突箇所側へ移動する際の衝突箇所側のボディサイド部31,32との相対速度差が小さくなる。
従って、第2実施形態によれば、上述した(1)と同様の効果が得られるほか、次の効果が得られる。
【0066】
(2)乗員Pのうち、移動機構41によって上方へ移動させられたコンソールボックス14(可動部)よりも上側の部位を拘束する拘束手段として、車両10への衝撃に応じシートベルト装置20のウェビング21を非衝突時よりも緊張状態にするプリテンショナ装置55を設けている。
【0067】
そのため、緊張状態のウェビング21により、乗員Pの上半身UBと車両用シート15,16との間の摩擦を増大させて、同上半身UBの上記部位を車両用シート15,16に拘束することができる。その結果、プリテンショナ装置55による拘束がなされない場合に比べ、すなわち、センターコンソール11のみによって乗員Pの衝突箇所側への移動を規制する上記第1実施形態に比べ、乗員Pの頭部PHの衝突箇所側への移動量(頭部移動量D)を少なくすることができる。
【0068】
また、上記摩擦の増大により、上半身UBの上記部位の衝突箇所側のボディサイド部31,32との相対速度差を小さくすることができる。その結果、ボディサイド部31,32の車内側への移動量や変形量が想定したものよりも大きく、万が一、乗員Pの頭部PHがこのボディサイド部31,32に接触するようなことがあったとしても、その接触により頭部PHがボディサイド部31,32から受ける衝撃を小さくすることができる。
【0069】
(第3実施形態)
次に、本発明を具体化した第3実施形態について、図8〜図10を参照して説明する。
第3実施形態は、乗員Pのうち、移動機構41によって上方へ移動させられたコンソールボックス14(可動部)よりも上側の部位を拘束する拘束手段として、前記プリテンショナ装置55に代えてエアバッグ装置60が設けられている点において、上記第2実施形態と異なっている。
【0070】
エアバッグ装置60は、主要な構成部材として、エアバッグ61と、そのエアバッグ61内の後端部61Rに配置されたガス発生源としてのインフレータ62とを備えている。
エアバッグ61は、強度が高く、かつ可撓性を有していて容易に折り畳むことのできる素材、例えばポリエステル糸やポリアミド糸等によって形成した織布等を基布として用い、この基布の周縁部を縫製糸で縫着すること等によって所定の袋状に形成されている。
【0071】
エアバッグ61は、乗員Pの上半身UBのうち、頭部PHよりも下側の領域の側方で膨張し得る大きさ及び形状を有している。また、エアバッグ61は、移動機構41によって上方へ移動させられたコンソールボックス14の上面14Uよりも下側であって、センターコンソール11と乗員Pとの間で膨張する部分61Lを、自身の下部に有している。第3実施形態では、部分61Lは、コンソールボックス14にとどまらず、コンソール本体12の上部と乗員Pとの間で膨張する大きさを有している。
【0072】
インフレータ62の内部には、膨張用ガスを発生するガス発生剤(図示略)が収容されている。このインフレータ62はパイロタイプと呼ばれるものであるが、それ以外にも、高圧ガスの充填された高圧ガスボンベの隔壁を火薬等によって破断してガスを噴出させるタイプ(ストアードガスタイプ)や、パイロタイプとストアードガスタイプの両者を組み合わせた形態のハイブリッドタイプ等が用いられてもよい。
【0073】
エアバッグ61は折り畳まれた状態で、インフレータ62と一緒に、各車両用シート15,16におけるシートバック18の車内側の側部18Iに配置されている。この配置箇所は、車両用シート15,16に着座した乗員Pからすると、衝突箇所側(車内側)の後方近傍となる。そして、シートバック18内に配置された車内側のサイドフレーム部63Sに対し、インフレータ62がエアバッグ61の後端部61Rと一緒に固定されている。
【0074】
インフレータ62は上述した制御装置52に接続されている。制御装置52は、衝撃センサ51からの検出信号に基づき、上述した移動機構41の作動に加え、インフレータ62の作動を制御する。
【0075】
上記の構成を有する第3実施形態において、側面衝突により、車両10に対し、車両用シート15,16の並設方向(車幅方向)の一方から他方へ向けて衝撃が加わり、そのことが衝撃センサ51によって検出されると、その検出信号に基づき制御装置52から、移動機構41に対し、これを作動させるための指令信号が出力される。この指令信号に応じて、移動機構41が作動してコンソールボックス14が瞬時に上方へ押上げられる。乗員Pの上半身UBのうち腰部PPと、その上方近傍部分との衝突箇所側へ移動は、コンソールボックス14を上方へ移動させたセンターコンソール11によって規制される。この点は、上述した第1実施形態と同様である。
【0076】
また、上記衝撃センサ51の検出信号に基づき制御装置52から、インフレータ62に対し、これを作動させるための指令信号が出力される。この指令信号に応じて、インフレータ62から膨張用ガスが発生されて、エアバッグ61内に供給される。この膨張用ガスによりエアバッグ61が膨張を開始する。エアバッグ61は、膨張用ガスの供給開始直後にはシートバック18の側部18I内で折り状態を解消しながら膨張する。この膨張の過程でエアバッグ61はシートバック18を破断させ、自身の一部(後端部61R)を側部18I内に残した状態でシートバック18の前方へ飛び出す。その後もエアバッグ61は、乗員Pの衝突箇所側の側方近傍であって、移動機構41によって上方へ移動させられたコンソールボックス14の上面14Uよりも少なくとも上側で、折り状態を解消しながら前方へ向けて膨張する。上半身UBのうち、上方へ移動させられたコンソールボックス14よりも上側の部位が、エアバッグ61によって受け止められて拘束され、同部位の衝突箇所側への移動が抑制される。このエアバッグ61による拘束は、センターコンソール11のような硬いものを拘束手段とした場合よりもソフトに行われる。
【0077】
ここで、車両10への衝撃に応じ、乗員Pの上半身UBが衝突箇所側へ移動しようとすると、膨張状態のエアバッグ61に対し、上半身UBによる衝突箇所側へ向かう押圧力が加わる。この際、仮にエアバッグ61よりも衝突箇所側に同エアバッグ61を受け止めるものが何もないものとすると、上記押圧力により、エアバッグ61がその固定箇所である後端部61Rを支点として衝突箇所側へ回転するおそれがある。
【0078】
しかし、第3実施形態では、車両10への衝撃に応じ拘束手段としてエアバッグ装置60が作動すると、エアバッグ61の下部を構成する部分61Lが、移動機構41によって上方へ移動させられたコンソールボックス14の上面14Uよりも下側であって、センターコンソール11と乗員Pとの間で膨張する。エアバッグ61のこの部分61Lの衝突箇所側には、センターコンソール11のうち、少なくとも上方へ移動させられたコンソールボックス14が位置する、このコンソールボックス14を含むセンターコンソール11は、エアバッグ61の上記部分61Lを衝突箇所側から受け止める。
【0079】
従って、第3実施形態によれば、上述した(1)と同様の効果が得られるほか、次の効果が得られる。
(3)乗員Pのうち、移動機構41によって上方へ移動させられたコンソールボックス14(可動部)よりも上側の部位を拘束する拘束手段として、乗員Pの衝突箇所側(車内側)の側方近傍であって、同コンソールボックス14の上面14Uよりも少なくとも上側で膨張するエアバッグ61を備えるエアバッグ装置60を設けている。
【0080】
そのため、乗員Pの上半身UBのうち、上方へ移動させられたコンソールボックス14よりも上側の部位をエアバッグ61によって受け止めて拘束し、同部位の衝突箇所側への移動を抑制することができる。その結果、エアバッグ61を用いない場合に比べ、すなわち、センターコンソール11のみによって乗員Pの衝突箇所側への移動を規制する上記第1実施形態に比べ、乗員Pの頭部PHの衝突箇所側への移動量(頭部移動量D)を少なくすることができる。
【0081】
(4)エアバッグ61の一部(下部)に、移動機構41によって上方へ移動させられたコンソールボックス14の上面14Uよりも下側であって、センターコンソール11と乗員Pとの間で膨張する部分61Lを設けている。このため、エアバッグ61が、サイドフレーム部63Sとの固定箇所である後端部61Rを支点として衝突箇所側へ回転するのを、上記部分61Lにおいて抑制することができ、上記(3)の効果をより確実なものとすることができる。
【0082】
(5)上記部分61Lを、上方へ移動させられたコンソールボックス14と乗員Pとの間にとどまらず、コンソール本体12の一部(上部)と乗員Pとの間で膨張させるようにしている。そのため、センターコンソール11の側面11Sのより広い面によって部分61Lを受け止め、上記エアバッグ61の回転をより確実に抑制することができる。
【0083】
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
<移動機構について>
・移動機構として、車両への衝撃に応じ、コンソールの可動部を上方へ移動させることのできるものであることを条件に、前記第1〜第3の各実施形態とは異なる構成を有するものを採用してもよい。
【0084】
例えば、コンソールに対して可動部を昇降させるリンク機構をスプリングとともに設け、ロック機構の解除によりスプリング及びリンクをともに作動させて、可動部を上方へ移動させるようにしてもよい。
【0085】
また、上下方向へ延びるねじ孔を有するナットを可動部の下方側に回転不能に支持する。上下方向に細長く、かつ少なくとも上部にねじが形成されたシャフトをコンソールの底部に回転可能かつ上下動不能に支持する。このねじにおいて、シャフトを上記ナットに螺入させる。そして、電動モータによってこのシャフトを回転させることにより、ナットを可動部とともに上方へ移動させるようにしてもよい。
【0086】
なお、電動モータの回転軸が水平方向へ延びていてシャフトの回転方向とは異なる方向へ回転する場合には、電動モータとシャフトの間に、回転方向を変換する機構、例えばウォームホイールとウォームギヤの組合わせを介在させてもよい。
【0087】
また、電動モータによってシャフトを逆方向へ回転させれば、ナットを可動部とともに下方へ移動させることもできる。この場合には、電動モータによって可動部が昇降されることとなる。
【0088】
<センターコンソール11について>
・センターコンソール11は、少なくとも自身の上部を可動部としたものであればよい。従って、コンソールボックス14に加えコンソール本体12を可動部とし、両者を上方へ移動させるようにしてもよい。
【0089】
また、センターコンソール11はコンソールボックス14を有するものに限られず、コンソールボックス14を有しないものであってもよい。この場合には、センターコンソール11全体を可動部として上方へ移動させるようにする。
【0090】
・センターコンソール11は、車両10内の床面に接した状態で配設されたものに限らず、床面から上方へ離間した状態で配設されたものであってもよい。
<拘束手段について>
・第2実施形態において、プリテンショナ装置として、巻取り装置25に代えて、バックル23側でウェビング21を引っ張るタイプを用いてもよい。このタイプはバックルプリテンショナ、ラッププリテンショナと呼ばれるものである。このタイプも、前述した巻取り装置25側でウェビング21を巻き取るタイプと同様、ガス発生装置を用いており、急激に発生したガスによってピストンを動かしてワイヤを引っ張る。すると、このワイヤによってバックル23が下方へ引っ張られ、結果としてウェビング21も引っ張られて緊張状態にされる。
【0091】
・巻取り装置25側でウェビング21を巻取るタイプのプリテンショナ装置と、バックル23側でウェビング21を引っ張るタイプのプリテンショナ装置とを併用してもよい。
・第3実施形態におけるエアバッグ61は、移動機構41によって上方へ移動させられた可動部(コンソールボックス14)の上面14Uよりも少なくとも上側で膨張する部分を有するものであればよい。従って、エアバッグ61は、乗員Pの腹部、胸部PT、肩部PS、頭部PHの少なくとも1箇所の側方近傍で膨張するものであってもよい。
【0092】
・コンソールボックス14の上方への移動量が充分に多い場合には、第3実施形態におけるエアバッグ61の部分61Lは、上方へ移動させられたコンソールボックス14と乗員Pとの間でのみ膨張する(上方へ移動させられたコンソールボックス14よりも低い箇所では膨張しない)ものであってもよい。
【0093】
・第3実施形態におけるエアバッグ61は、固定箇所(後端部61R)を支点とした回転がさほど多くない場合には、上方へ移動させられたコンソールボックス14の上面14Uよりも下側であって、センターコンソール11と乗員Pとの間で膨張する部分61Lを有しないものであってもよい。
【0094】
・第3実施形態におけるエアバッグ61を、シートバック18とは異なる箇所、例えばセンターコンソール11等に組み込んでもよい。
・拘束手段として、第2実施形態のプリテンショナ装置55と、第3実施形態のエアバッグ装置60とを併用してもよい。
【0095】
<乗員保護装置40の適用対象について>
・本発明の乗員保護装置は、車幅方向に3つ以上の車両用シートが並設された車両にも適用可能である。この場合、乗員保護装置は、車両に対し車両用シートの並設方向の一方から他方へ向けて衝突による衝撃が加わるときの同車両の衝突箇所に最も近い車両用シートを除く他の車両用シートに適用される。
【0096】
・本発明の乗員保護装置は、乗員が着座したときに、車両の前後方向とは異なる方向、例えば直交する方向(車幅方向)を向くように車両用シートの配置された車両にも適用可能である。この場合、車両に対し前方又は後方から衝突による衝撃が加わると、その衝撃が車両用シートの並設方向の一方から他方へ向かう衝撃となる。
【0097】
<その他>
・第1〜第3の各実施形態において、プリクラッシュ制御装置を設け、これを上記制御装置52に接続する。プリクラッシュ制御装置は、ミリ波レーダ等の検出信号に基づき、車両に対し側方から接近してくる他の車両等を認知すると、両車両の相対速度や距離等を演算する。プリクラッシュ制御装置は、この演算結果に基づき側面衝突が不可避であると判断すると、すなわち側面衝突を予測すると、その情報をプリクラッシュ信号として出力する。
【0098】
そして、制御装置52による移動機構41の制御に際し、同制御装置52はプリクラッシュ制御装置からのプリクラッシュ信号に応じて、移動機構41を作動させるようにしてもよい。このようにすれば、乗員Pの衝突箇所側への移動に先立ち、可動部(コンソールボックス14)を上方へ移動させ、同コンソールボックス14による移動抑制効果をより確実なものとすることができる。
【0099】
・第2及び第3の各実施形態において、上記プリクラッシュ制御装置からのプリクラッシュ信号に応じて、制御装置52による拘束手段(プリテンショナ装置55、エアバッグ装置60)の作動を開始させるようにしてもよい。このようにすれば、乗員Pの衝突箇所側への移動に先立ち拘束手段を作動させ、同手段による乗員Pの拘束・移動抑制効果をより確実なものとすることができる。
【0100】
・移動機構により、可動部をコンソールに対し上方へ移動させるだけでなく下方へも移動させる乗員保護装置、例えば、上述した電動モータによって可動部を昇降させるようにした乗員保護装置に、上記プリクラッシュ制御装置を適用する。そして、プリクラッシュ制御装置によって側面衝突が予測された場合には、移動機構により可動部を上方へ移動させる。その後に、側面衝突が回避された場合には、移動機構により可動部を下方へ移動させるようにしてもよい。このようにすると、側面衝突が予測されたにも拘わらず実際には起きなかった場合、可動部を元の位置へ戻し、次回の側面衝突に備えることができる効果がある。
【符号の説明】
【0101】
10…車両、11…センターコンソール(コンソール)、11S…センターコンソールの側面、14…コンソールボックス(可動部)、14U…コンソールボックスの上面、15,16…車両用シート、20…シートベルト装置、21…ウェビング、40…乗員保護装置、41…移動機構、55…プリテンショナ装置(拘束手段)、60…エアバッグ装置(拘束手段)、61…エアバッグ、61L…部分、HP…ヒップポイント、P…乗員、PP…腰部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンソールの両側に車両用シートが並設された車両に対し、その並設方向の一方から他方に向けて衝突による衝撃が加わった場合等に、同車両の衝突箇所から遠い側の車両用シートに着座している乗員が衝突箇所側へ移動するのを抑制して、衝突箇所側の車両構成部材等との接触から保護するようにした車両の乗員保護装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両内の車幅方向の中央部分には、同車両の前後方向に延びるセンターコンソールが設けられており、このセンターコンソールを挟んで車幅方向両側には一対の車両用シートが並設されている。また、車両内には、同車両の衝突時に、各車両用シートに着座した乗員の移動を制限して同乗員を保護するためのシートベルト装置が車両用シート毎に設けられている。
【0003】
ところで、側面衝突等により車両に車幅方向の一方から他方に向けて衝撃が加わった場合、同車幅方向については、慣性力により乗員がその位置にとどまろうとするのに対し、車両は同方向へ移動したり変形したりしようとする。車両を基準とすると、乗員は同車両に対し衝突箇所側へ移動しようとする。この際、シートベルト装置のショルダベルト部にあっては、その構造上、車両の前方への乗員の移動を制限することはできるものの、衝突箇所側への乗員の移動についてはこれを的確に制限することが難しい。そのため、図11に示すように、衝突箇所から遠い側(図11の左側)の車両用シート71に着座した乗員Pは、シートベルト装置72のショルダベルト部73をすり抜けて衝突箇所側(図11の右側)へ大きく相対移動する。この際、乗員Pの腰部PPについては、衝突箇所側への移動がセンターコンソール74によってある程度規制される。これに対し、着座姿勢を採った乗員Pの腰部PPよりも上側部分(上半身UB)については、衝突箇所側への移動を規制するものが特段ない。そのため、乗員Pの腰部PPがセンターコンソール74に当った後は、同乗員Pの上半身UBが上側ほど上記衝突箇所に近づくように傾斜し、さらに、頭部PHが上側ほど上記衝突箇所に近づくように傾斜する。これらの傾斜により、頭部PHが、図11において二点鎖線で示すように、衝撃により車内側へ変形したサイドドア等の車両構成部材75に接触して衝撃を受けるおそれがある。
【0004】
これに対し、特許文献1には、少なくとも自身の上部のコンソールボックスを可動部としたセンターコンソールを車両内に配設するとともに、車両への衝撃に応じ同可動部を上方へ移動させる移動機構を設けた「車両の乗員保護装置」が記載されている。この乗員保護装置では、車両への衝撃に応じて移動機構が作動し、可動部が非衝突時よりも高い位置へ移動させられる。このため、乗員の上半身のうち、腰部とその上方近傍部分は、コンソールの側面のより広い部位によって受け止められ、衝突箇所側への移動を規制される。この規制に伴い、乗員の上半身のうちセンターコンソールよりも高い部位(例えば、胸部、頭部等)は、衝突箇所側へ移動しにくくなる。
【0005】
なお、上記特許文献1には、移動機構による可動部の上方への移動量の上限値が規定されている。これは、乗員の上半身のうち比較的耐衝撃性の低い箇所である胸部が可動部に接触して衝撃を受けるのを回避するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−143272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、衝突箇所から遠い側の車両用シートに着座した乗員が衝突箇所側へ相対移動し車両構成部材と接触する箇所は主として頭部である。従って、上記乗員が車両構成部材と接触するかどうかは頭部の衝突箇所側への移動量によって決定される。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1には、この頭部の移動量についての記載はなされていない。上方へ移動させられた可動部によって、腰部の衝突箇所側への移動が規制されるといった記載にとどまっている。また、特許文献1には、移動機構による可動部の上方への移動量の下限値については言及されていない。
【0009】
そのため、特許文献1は、頭部の衝突箇所側への移動を的確に規制して車両構成部材との接触を抑制する観点からは、未だ改善の余地が残されている。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、衝突箇所から遠い側の車両用シートに着座している乗員が、コンソールとの接触により胸部に衝撃を受けるのを抑制しつつ、頭部の衝突箇所側への移動を的確に抑制することのできる車両の乗員保護装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、少なくとも自身の上部を可動部としたコンソールを車両内に配設するとともに、同コンソールの両側に一対の車両用シートを並設し、前記車両に対し、前記車両用シートの並設方向の一方から他方へ向けて衝突による衝撃が加わったとき、又は加わることが予測されたとき、前記可動部を移動機構により上方へ移動させ、前記車両の衝突箇所から遠い側の車両用シートに着座した乗員の腰部の前記衝突箇所側への移動を前記コンソールの側面で規制するようにした車両の乗員保護装置であって、前記移動機構は、前記可動部の上面が、ISO6549−1999規格に準拠した乗員のヒップポイントから190mm〜300mm上方へ離間した箇所に位置するように前記可動部を移動させるものであることを要旨とする。
【0011】
上記の構成によれば、車両に対し、車両用シートの並設方向の一方から他方へ向けて衝突による衝撃が加わると、同並設方向については、同車両用シートに着座している乗員が慣性力によりその位置にとどまろうとするのに対し、車両は同方向へ移動したり変形したりしようとする。表現を変えると、乗員は車両に対し衝突箇所側へ移動しようとする。この移動により、乗員の頭部は、衝撃により変形したり車内側へ進入したりする車両構成部材等と接触するおそれがある。
【0012】
これに対し、請求項1に記載の発明では、車両に衝突による衝撃が加わると、又は加わることが予測されると、車両への衝撃に応じて移動機構が作動し、コンソールの可動部が同移動機構によって上方へ移動させられる。この移動により、可動部の上面が、移動機構の作動前よりも高くなる。このため、乗員の上半身のうち腰部及びその上方近傍は、コンソールの側面のより広い部位によって受け止められ、衝突箇所側への移動を規制される。この規制に伴い、乗員の上半身のうちコンソールよりも高い部位(例えば、胸部、頭部等)は、衝突箇所側へ移動しにくくなる。
【0013】
コンソールが衝突箇所側への移動を規制する上記効果は、可動部の上面が、ISO6549−1999規格に準拠した乗員のヒップポイントから190mm以上である場合に得られる。190mmよりも低いと、コンソールの側面によって乗員の衝突箇所側への移動を規制する効果は、可動部を上方へ移動させない場合とほとんど同じであって、可動部を上方へ移動させることによるメリットがほとんど得られない。
【0014】
なお、コンソールによる上記効果は、可動部の上面が高くなるほど大きくなる。反面、可動部の上面が過度に高くなると、乗員の上半身のうち耐衝撃性のさほど高くない箇所である胸部が、コンソール(可動部)に接触して衝撃を受けるおそれがある。
【0015】
この点、請求項1に記載の発明では、可動部は、その上面が、ヒップポイントから300mm上方へ離間した箇所よりも高い位置へは移動させられない。このため、乗員の上半身のうち胸部がコンソールに接触して衝撃を受けることが抑制される。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記コンソールとは別に設けられ、かつ前記乗員のうち、前記移動機構により上方へ移動させられた前記可動部よりも上側の部位を拘束する拘束手段をさらに備えることを要旨とする。
【0017】
上記の構成によれば、乗員の上半身のうち腰部と、その上方近傍部分との衝突箇所側へ移動は、前述したように、可動部が移動機構によって上方へ移動させられたコンソールによって規制される。さらに、乗員の上半身のうち、上方へ移動させられた可動部よりも上側の部位は拘束手段によって拘束される。この拘束により、上記部位の衝突箇所側への移動が抑制される。
【0018】
従って、拘束手段による拘束がない場合に比べ、すなわち、コンソールのみによって乗員の衝突箇所側への移動を規制する場合に比べ、乗員の頭部の衝突箇所側への移動量を少なくすることができるようになる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記車両内には、前記乗員を、同乗員が着座した前記車両用シートに拘束するためのシートベルト装置が設けられており、前記拘束手段は、前記車両への前記衝撃に応じ前記シートベルト装置のウェビングを非衝突時よりも緊張状態にするプリテンショナ装置であることを要旨とする。
【0020】
上記の構成によれば、車両への衝撃に応じプリテンショナ装置が拘束手段として作動し、シートベルト装置のウェビングが非衝突時よりも緊張状態にされる。この緊張状態のウェビングにより、乗員の上半身が車両用シートに押付けられ、上半身と車両用シートとの間で発生する摩擦が増大する。この増大した摩擦により、乗員の上半身のうち、移動機構によって上方へ移動させられた可動部よりも上側の部位が車両用シートに拘束され、同部位の衝突箇所側への移動が抑制される。このウェビングによる拘束は、コンソールのような硬いものを拘束手段とした場合よりもソフトに行われる。
【0021】
また、上記摩擦の増大により、上半身の上記部位が衝突箇所側へ移動する際の衝突箇所側の車両構成部材との相対速度差が小さくなる。そのため、車両構成部材の車内側への移動量や変形量が想定したものよりも大きく、万が一乗員の頭部が車両構成部材に当るようなことがあったとしても、その接触により頭部が車両構成部材から受ける衝撃は小さなものとなる。
【0022】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の発明において、前記拘束手段は、前記乗員の前記衝突箇所側の側方近傍であって、前記移動機構により上方へ移動させられた前記可動部の前記上面よりも少なくとも上側で、膨張用ガスにより膨張するエアバッグを備えるエアバッグ装置であることを要旨とする。
【0023】
上記の構成によれば、車両への衝撃に応じエアバッグ装置が拘束手段として作動し、エアバッグが、乗員の衝突箇所側の側方近傍であって、移動機構によって上方へ移動させられた可動部の上面よりも少なくとも上側で膨張する。上半身のうち、上方へ移動させられた可動部よりも上側の部位が、エアバッグによって受け止められて拘束され、同部位の衝突箇所側への移動が抑制される。このエアバッグによる拘束は、コンソールのような硬いものを拘束手段とした場合よりもソフトに行われる。
【0024】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記エアバッグは、前記移動機構により上方へ移動させられた前記可動部の前記上面よりも下側であって、前記コンソールと前記乗員との間で膨張する部分を一部に有することを要旨とする。
【0025】
ここで、車両への衝撃に応じ、乗員の上半身が衝突箇所側へ移動しようとすると、膨張状態のエアバッグに対し、上半身による衝突箇所側へ向かう押圧力が加わる。この際、仮にエアバッグよりも衝突箇所側に同エアバッグを受け止めるものが何もないとすると、エアバッグが上記押圧力により固定箇所を支点として衝突箇所側へ変位(回転)するおそれがある。
【0026】
しかし、請求項5に記載の発明では、車両への衝撃に応じエアバッグ装置が拘束手段として作動すると、エアバッグの一部が、移動機構によって上方へ移動させられた可動部の上面よりも下側であって、コンソールと乗員との間で膨張する。エアバッグのこの部分の衝突箇所側には、コンソールのうち、上方へ移動させられた可動部が少なくとも位置する。このコンソールの少なくとも可動部は、エアバッグの上記部分(一部)を衝突箇所側から受け止め、同エアバッグが固定箇所を支点として衝突箇所側へ変位(回転)するのを規制する。その結果、乗員の上半身のうち、上方へ移動させられた可動部よりも上側の部位が、衝突箇所側へ移動するのをエアバッグによって規制する効果がより確実に得られるようになる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の車両の乗員保護装置によれば、衝突箇所から遠い側の車両用シートに着座している乗員が、コンソールとの接触により胸部に衝撃を受けるのを抑制しつつ、頭部の衝突箇所側への移動を的確に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明を具体化した第1実施形態において、シートベルト装置によって車両用シートに拘束された乗員と、センターコンソールとの関係を示す側面図。
【図2】第1実施形態において、シートベルト装置によって車両用シートに拘束された乗員と、センターコンソールとの関係を示す正面図。
【図3】第1実施形態において、車両用シートとシートベルト装置との関係を示す部分斜視図。
【図4】第1実施形態において、非側面衝突時のセンターコンソールの状態を模式的に示す側面図。
【図5】第1実施形態において、側面衝突時のセンターコンソールの状態を模式的に示す側面図。
【図6】第1実施形態において、乗員の衝突箇所側への移動がセンターコンソールによって規制される様子を示す正面図。
【図7】本発明を具体化した第2実施形態において、シートベルト装置によって車両用シートに拘束された乗員と、センターコンソールとの関係を示す側面図。
【図8】本発明を具体化した第3実施形態において、シートベルト装置によって車両用シートに拘束された乗員と、センターコンソールと、エアバッグ装置との関係を示す側面図。
【図9】第3実施形態において、エアバッグによって乗員が拘束される様子を示す平面図。
【図10】第3実施形態において、エアバッグによって乗員が拘束される様子を示す正面図。
【図11】乗員保護装置が設けられていない従来技術を示す図であり、側面衝突の衝撃により乗員が衝突箇所側へ移動する様子を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態について、図1〜図6を参照して説明する。
なお、以下の記載において、車両の前進方向を前方として説明し、車両の後進方向を後方として説明する。また、以下の記載における上下方向は車両の上下方向を意味し、左右方向は車両の車幅方向であって車両前進時の左右方向と一致するものとする。
【0030】
図1及び図2の少なくとも一方に示すように、車両10内の前部であって車幅方向の中央部分には、同車両10の前後方向へ延びるセンターコンソール11が設けられている。センターコンソール11は、特許請求の範囲におけるコンソールに該当するものであり、上面に開口(図示略)を有するコンソール本体12と、略直方体形状をなし、かつ上記開口を通じてコンソール本体12から出没するコンソールボックス14とを備えている。コンソールボックス14は、特許請求の範囲における「可動部」に該当するものであり、センターコンソール11の少なくとも上部を構成している。また、コンソールボックス14は、図示はしないが、小物類、車両備品等の被収容物の出し入れ口と、スライド、回動等により上記出し入れ口を開閉する蓋部とを備えている。コンソールボックス14(蓋部)の上面14Uは水平方向に略平らに形成されている。この上面14Uの高さは、衝突による衝撃が車両に加わらない通常時に乗員Pがひじを置くことのできる高さに設定されている。センターコンソール11には、図示はしないが、上記以外にもシフトレバー、サイドブレーキレバー等の操作部や、カップホルダ、灰皿等も設けられている。
【0031】
なお、車両10及びその構成部材について、車幅方向を規定する場合には、センターコンソール11を基準とする。センターコンソール11に近い側を「車内側」といい、センターコンソール11から遠ざかる側を「車外側」というものとする。
【0032】
センターコンソール11を挟んだ車幅方向両側には、一対の車両用シート15,16が並設されている。両車両用シート15,16は、車内の前部に設けられたもの(前席)であって、運転席及び助手席をなしている。各車両用シート15,16は、略水平状に配置されたシートクッション(座部)17と、そのシートクッション17の後側に配置されたシートバック(背もたれ部)18とを備えており、乗員(運転者及び同乗者)Pが車両前側を向いてシートクッション17に着座してシートバック18に凭れることが可能となっている。
【0033】
また、車両10内には、その衝突時に、各車両用シート15,16に着座した乗員Pの移動を制限して同乗員Pを保護するためのシートベルト装置20が車両用シート15,16毎に設けられている。なお、図2では、乗員Pを車両用シート16に拘束するためのシートベルト装置の図示が省略されている。後述する図6及び図10についても同様である。また、図9では、車両用シート15,16のいずれについてもシートベルト装置の図示が省略されている。
【0034】
図1及び図3の少なくとも一方に示すように、シートベルト装置20は、乗員Pを直接拘束する部材である帯状のウェビング(シートベルト)21と、ウェビング21に対しその長手方向への移動(摺動)可能に取付けられたタング22と、シートクッション17の車内側近傍に配置されてタング22が係脱可能に装着されるバックル23とを備えている。
【0035】
ウェビング21は、その一端部が、アンカプレート24により、シートクッション17の車外側近傍に支持され、他端部が、同車外側に配設された巻取り装置25により巻取られる構成とされている。また、ウェビング21は、上記巻取り装置25の略上方に配設されたショルダアンカ26に摺動可能に挿通されている。
【0036】
シートベルト装置20では、ウェビング21に対してタング22を摺動させることで、主として乗員Pの腰部PPを拘束するラップベルト部27と、主として乗員Pの肩部PSを拘束するショルダベルト部28との各長さを変更可能である。ラップベルト部27は、ウェビング21において、タング22からウェビング21のアンカプレート側端部までの部分であり、着座した乗員Pの腰部PPの一側方から水平方向に同腰部PPの前を経由して他側方に架け渡される。ショルダベルト部28は、ウェビング21において、ショルダアンカ26とタング22との間の部分であり、着座した乗員Pの肩部PSから斜めに胸部PT(図2参照)の前を経由して腰部PPの側方に架け渡される。
【0037】
ところで、図2に示すように、一対の車両用シート15,16が並設された車両10に対し、側面衝突(側突)により、同車両用シート15,16の並設方向(車幅方向)の一方から他方へ向けて衝撃が加わる場合がある。この衝撃の加わる方向は、車両用シート15,16の並設方向、すなわち車両10の進行方向に直交する方向が代表的であるが、ここではこれに限らず、同並設方向(車両進行方向に直交する方向)に斜めに交差する方向も含まれるものとする。こうした衝撃が加わった場合、同車幅方向については、慣性力により乗員Pがその位置にとどまろうとするのに対し、車両10は同方向へ移動したり変形したりしようとする。車両10を基準とすると、乗員Pは同車両10に対し衝突箇所側へ移動しようとする。
【0038】
例えば、図2において矢印で示す方向(右方)から衝突(側面側突)による衝撃が加わった場合、乗員Pは右方へ移動しようとし、これとは反対方向(左方)から衝撃が加わった場合、乗員Pは左方へ移動しようとする。また、車両10において、側方からの衝撃を直接受ける箇所であるボディサイド部31,32は、車内側へ変形しようとする。
【0039】
ここで、ボディサイド部31,32とは、車両10の車幅方向についての両側部に配置されている車両構成部材を指し、例えば、前席に対応するボディサイド部31,32は、フロントドア、センターピラー(Bピラー)等である。
【0040】
上記のようにボディサイド部31,32に側面衝突による衝撃が加わった場合、シートベルト装置20のショルダベルト部28にあっては、その構造上、車両10の前方への乗員Pの移動を制限することはできるものの、衝突箇所側への乗員Pの移動についてはこれを的確に制限することが難しい。そのため、衝突箇所から遠い側の車両用シート15,16に着座した乗員Pの上半身UBは、ショルダベルト部28をすり抜けて衝突箇所側へ大きく相対移動しようとする。そして、乗員Pの頭部PHが、衝撃により変形した衝突箇所側のボディサイド部31,32と接触するおそれがある。
【0041】
そこで、第1実施形態では、図1及び図4の少なくとも一方に示すように、頭部PHの上記接触を抑制して乗員Pを保護する乗員保護装置40が設けられている。次に、この乗員保護装置40について説明する。
【0042】
コンソール本体12の内部においてコンソールボックス14の下方には、そのコンソールボックス14を上方へ移動させるための移動機構41が設けられている。この移動機構41は、上下方向に延びてコンソール本体12、車両10の床等に固定されたシリンダ42と、シリンダ42内に摺動可能に収容されたピストン(図示略)と、自身の下端部において上記ピストンに連結され、かつ自身の上端部においてコンソールボックス14に取付けられたロッド44とを備えている。こうした構成の移動機構41は、所定の駆動信号の入力に応じ点火してガスを発生し、ピストンを通じて図5に示すようにロッド44をシリンダ42から上方へ突出させ、同ロッド44によってコンソールボックス14を瞬時に上方へ押上げる。
【0043】
移動機構41によるコンソールボックス14の移動量は、次の条件を満たすように設定されている。
<条件>
ISO6549−1999規格に準拠した乗員PのヒップポイントHPを基準とし、コンソールボックス14の上面14UがヒップポイントHPから190mm〜300mm上方へ離間した箇所に位置すること(図1)。
【0044】
コンソールボックス14の上面14Uの位置が採り得る範囲を上記のように規定したのは、下記の表1に示す解析(CAE解析)の結果によるものである。
【0045】
【表1】
この解析は、公的機関による車両の衝突事故の調査結果に基づき、最も頻度の高い衝突形態に近い形態で側面衝突を起こさせ、そのときに生ずる乗員の頭部の移動量(頭部移動量D)を算出したものである。衝突形態の主なものは、衝突の速度及び方向である。なお、衝突の方向については、車両の進行方向に対し直交する方向に限らず、斜めに交差する方向も含まれる。
【0046】
この解析では、ヒップポイントHPからコンソールボックスの上面までの距離を「高さH」とし、この高さHを150mm、190mm、250mm、300mmとした場合の各頭部移動量Dを算出している。ただし、頭部移動量Dは実際の数値ではなく、高さHを150mmとした場合を基準(100%)とし、高さHを190mm、250mm、300mmとした場合に、基準のどれだけ(何%)になるかを算出している。高さHが150mmである状態は、移動機構によりコンソールボックスをコンソール本体から上方へ移動させる前の状態である。
【0047】
解析は、2種類のモデル(モデルA及びモデルB)について行っている。これは、1種類のモデルのみについて解析した場合よりも解析精度を高めるためである。一方のモデルAは、平均的な成人を模し、かつ評価にも用いられるダミー体に対応するモデルである。他方のモデルBは、上記モデルAよりも人体に近い挙動を示すモデルである。モデルBでは、モデルAとは異なり、関節間での動きも考慮して頭部の移動量が算出される。ただし、モデルAについて算出した値については、モデル体で評価(検証)することができるのに対し、モデルBについてはこうした評価ができない。
【0048】
なお、モデルA及びモデルBのいずれについても、頭部移動量Dが92%よりも多いと、頭部が衝突箇所側のボディサイド部に接触する。
モデルAについては、コンソールボックスの高さHと頭部移動量Dとの間の関係として、次の傾向が見られる。高さHが150mm〜250mmの領域では、コンソールボックスの上方への移動量増加に伴い、頭部移動量Dが略一定量ずつ減少していく。表現を変えると、上記範囲では、頭部移動量Dの減少度合いが比較的大きく、かつ略一定である。すなわち、上記範囲では、コンソールボックスの上方への移動による頭部移動量Dを低減する効果として、比較的大きなものが得られる。高さHが250mmを越えると、頭部移動量Dの減少度合いが小さくなり、コンソールボックスの上方への移動による頭部移動量Dを低減する上記効果が小さくなる。
【0049】
これに対し、モデルBについては、コンソールボックスの高さHと頭部移動量Dとの間の関係として、次の傾向が見られる。高さHが150mm〜190mmの領域では、高さHが変化しても頭部移動量Dがほとんど変化せず、コンソールボックス14の上方への移動による頭部移動量Dを低減する効果が小さい。高さHが190mmよりも大きな領域では、コンソールボックス14の上方への移動量増加に伴い、頭部移動量Dが略一定量ずつ減少していく。表現を変えると、上記範囲では、頭部移動量Dの減少度合いが比較的大きく、かつ略一定である。すなわち、上記範囲では、コンソールボックスの上方への移動による頭部移動量Dを低減する効果として、比較的大きなものが得られる。
【0050】
さらに、高さHが300mmを越えると、モデルA及びモデルBのいずれについても、胸部PTがコンソールボックスに接触し、衝撃を受ける可能性が高まる。
上述した傾向と、胸部PTのコンソールボックス14との接触抑制とを考慮すると、モデルA及びモデルBの両者に共通する事項として、高さHが190mm〜300mmとなるようにコンソールボックス14を上方へ移動させることが重要であることが判る。このような経緯から、第1実施形態では、移動機構41によるコンソールボックス14の移動量に関する上記の条件を設定している。
【0051】
図1に示すように、乗員保護装置40は、加速度センサ等からなる衝撃センサ51と、制御装置52とをさらに備えている。衝撃センサ51は、ボディサイド部31,32(図2参照)等に設けられており、同ボディサイド部31,32に側方から加えられる衝撃を検出する。制御装置52は、衝撃センサ51からの検出信号に基づき、移動機構41の作動を制御する。
【0052】
次に、上記のように構成された第1実施形態において、側面衝突により、車両10に対し、車両用シート15,16の並設方向(車幅方向)の一方から他方へ向けて衝撃が加わった場合の作用について説明する。ここでは、一方の車両用シート(運転席)15にのみ乗員(運転者)Pが着座している状況のもと、乗員(同乗者)Pが着座していない車両用シート16側のボディサイド部32に対し、図2において矢印で示す方向(図2の右方)から衝撃が加わったものとする。
【0053】
このように、一方のボディサイド部32に対し側面衝突による衝撃が加わると、上述したように、車両用シート15,16の並設方向(車幅方向)については、車両用シート15に着座している乗員Pが慣性力によりその位置にとどまろうとするのに対し、車両10は同方向へ移動したり変形したりしようとする。車両10を基準とすると、図6に示すように、乗員Pは車両10に対し衝突箇所側(ボディサイド部32側)へ移動しようとする。この移動により、乗員Pの頭部PHは、衝撃により変形したり車内側へ進入したりするボディサイド部32と接触するおそれがある。
【0054】
一方、ボディサイド部32に所定値以上の衝撃が加わったことが衝撃センサ51によって検出されると、その検出信号に基づき制御装置52から、移動機構41に対し、これを作動させるための指令信号が出力される。この指令信号に応じて、移動機構41では、シリンダ42内で点火が行われてガスが発生される。このガスによって、ロッド44が図5に示すようにシリンダ42から上方へ大きく突出させられ、同ロッド44によってコンソールボックス14が瞬時に上方へ押上げられる。
【0055】
この押上げにより、コンソールボックス14の上面14Uが、移動機構41の作動前(非衝突時、図4参照)よりも高くなる。このため、乗員Pの上半身UBのうち腰部PP及びその上方近傍は、センターコンソール11の側面11Sのより広い部位によって受け止められ、衝突箇所側への移動を規制される。ここでのセンターコンソール11の側面11Sは、コンソール本体12の乗員P側の側面全体と、コンソールボックス14の乗員P側の側面のうちコンソール本体12から露出する部分とからなる。この規制に伴い、乗員Pの上半身UBのうち、上方へ移動させられたコンソールボックス14よりも高い部位(例えば、胸部PT、頭部PH等)は、衝突箇所側へ移動し(倒れ)にくくなる。
【0056】
センターコンソール11が衝突箇所側への移動を規制する上記効果は、コンソールボックス14の上面14Uが、乗員PのヒップポイントHPから190mm以上高い箇所に位置する場合に得られる。190mmよりも低いと、コンソールボックス14を上方へ移動させたセンターコンソール11の側面11Sによって乗員Pの衝突箇所側への移動を規制する効果は、コンソールボックス14を上方へ移動させない場合の同効果とほとんど同じであって、コンソールボックス14を上方へ移動させることによるメリットがほとんど得られない。
【0057】
なお、上記コンソールボックス14を上方へ移動させたセンターコンソール11によって乗員Pの衝突箇所側への移動を規制する効果は、コンソールボックス14の上面14Uが高くなるほど大きくなる。反面、コンソールボックス14の上面14Uが過度に高くなると、乗員Pの上半身UBのうち耐衝撃性のさほど高くない箇所である胸部PTが、コンソールボックス14に接触して衝撃を受けるおそれがある。
【0058】
この点、第1実施形態では、コンソールボックス14の上面14Uが、ヒップポイントHPから300mm上方へ離間した箇所よりも高い位置へは移動させられない。このため、乗員Pの上半身UBのうち胸部PTがコンソールボックス14に接触して衝撃を受けることが抑制される。
【0059】
以上詳述した第1実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)センターコンソール11に移動機構41を設けている。そして、車両10に対し車両用シート15,16の並設方向の一方から他方へ向けて衝撃が加わった場合には、上面14Uが、乗員PのヒップポイントHPから190mm〜300mm上方へ離間した箇所に位置するように、コンソールボックス14を、移動機構41によって上方へ移動させるようにしている。
【0060】
このため、衝突箇所から遠い側の車両用シート15,16に着座している乗員Pが、センターコンソール11との接触により胸部PTに衝撃を受けるのを抑制することができる。これに加え、頭部PHの移動を的確に抑制することで、頭部PHの衝突箇所側のボディサイド部31,32との接触を抑制することができる。
【0061】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態について図7を参照して説明する。
第2実施形態は、乗員保護装置40が、センターコンソール11とは別に設けられ、かつ乗員Pのうち、移動機構41によって上方へ移動させられたコンソールボックス14よりも上側の部位を拘束する拘束手段をさらに備えている点において、上記第1実施形態と異なっている。
【0062】
拘束手段は、車両10への衝撃に応じシートベルト装置20のウェビング21を非衝突時よりも緊張状態にするプリテンショナ装置55によって構成されている。シートベルト装置20が巻取り装置25を備えていることについては、第1実施形態で説明したとおりであるが、プリテンショナ装置55はこの巻取り装置25内に設けられている。プリテンショナ装置55は、車両10への側方からの衝撃に応じてガスを発生するガス発生装置(図示略)を備えており、この発生したガスの膨張力を利用して、ワイヤ、ボール、歯車等を動かして巻取り装置25によりウェビング21の弛み分を瞬時に巻き取らせる。プリテンショナ装置55に接続された制御装置52は、衝撃センサ51からの検出信号に基づき、上述した移動機構41の作動に加え、プリテンショナ装置55の作動を制御する。プリテンショナ装置55は、通常は、前面衝突等により車両10に対し前方から衝撃が加わった場合に作動するが、第2実施形態では、側面衝突により車両10に対し側方から衝撃が加わった場合に作動する。
【0063】
上記の構成を有する第2実施形態において、側面衝突により、車両10に対し、車両用シート15,16の並設方向(車幅方向)の一方から他方へ向けて衝撃が加わり、そのことが衝撃センサ51によって検出されると、その検出信号に基づき制御装置52から移動機構41に対し、これを作動させるための指令信号が出力される。この指令信号に応じて、移動機構41が作動してコンソールボックス14が瞬時に上方へ押上げられる。乗員Pの上半身UBのうち腰部PPとその上方近傍部分との衝突箇所側へ移動は、コンソールボックス14を上方へ移動させたセンターコンソール11によって規制される。この点は、上述した第1実施形態と同様である。
【0064】
また、上記衝撃センサ51の検出信号に基づき制御装置52から、プリテンショナ装置55に対し、これを作動させるための指令信号が出力される。この指令信号に応じて、プリテンショナ装置55では、ガス発生装置からガスが発生される。このガスの膨張力により、ウェビング21の弛み分が瞬時に巻き取られ、同ウェビング21が非衝突時よりも緊張状態にされる。この緊張状態のウェビング21により、乗員Pの上半身UBが車両用シート15,16に押付けられ、上半身UBと車両用シート15,16との間で発生する摩擦が増大する。この増大した摩擦により、上半身UBのうち、移動機構41によって上方へ移動させられたコンソールボックス14よりも上側の部位が車両用シート15,16に拘束され、同部位の衝突箇所側への移動が抑制される。このウェビング21による拘束は、センターコンソール11のような硬いものを拘束手段とした場合よりもソフトに行われる。
【0065】
また、上記摩擦の増大により、上半身UBの上記部位が衝突箇所側へ移動する際の衝突箇所側のボディサイド部31,32との相対速度差が小さくなる。
従って、第2実施形態によれば、上述した(1)と同様の効果が得られるほか、次の効果が得られる。
【0066】
(2)乗員Pのうち、移動機構41によって上方へ移動させられたコンソールボックス14(可動部)よりも上側の部位を拘束する拘束手段として、車両10への衝撃に応じシートベルト装置20のウェビング21を非衝突時よりも緊張状態にするプリテンショナ装置55を設けている。
【0067】
そのため、緊張状態のウェビング21により、乗員Pの上半身UBと車両用シート15,16との間の摩擦を増大させて、同上半身UBの上記部位を車両用シート15,16に拘束することができる。その結果、プリテンショナ装置55による拘束がなされない場合に比べ、すなわち、センターコンソール11のみによって乗員Pの衝突箇所側への移動を規制する上記第1実施形態に比べ、乗員Pの頭部PHの衝突箇所側への移動量(頭部移動量D)を少なくすることができる。
【0068】
また、上記摩擦の増大により、上半身UBの上記部位の衝突箇所側のボディサイド部31,32との相対速度差を小さくすることができる。その結果、ボディサイド部31,32の車内側への移動量や変形量が想定したものよりも大きく、万が一、乗員Pの頭部PHがこのボディサイド部31,32に接触するようなことがあったとしても、その接触により頭部PHがボディサイド部31,32から受ける衝撃を小さくすることができる。
【0069】
(第3実施形態)
次に、本発明を具体化した第3実施形態について、図8〜図10を参照して説明する。
第3実施形態は、乗員Pのうち、移動機構41によって上方へ移動させられたコンソールボックス14(可動部)よりも上側の部位を拘束する拘束手段として、前記プリテンショナ装置55に代えてエアバッグ装置60が設けられている点において、上記第2実施形態と異なっている。
【0070】
エアバッグ装置60は、主要な構成部材として、エアバッグ61と、そのエアバッグ61内の後端部61Rに配置されたガス発生源としてのインフレータ62とを備えている。
エアバッグ61は、強度が高く、かつ可撓性を有していて容易に折り畳むことのできる素材、例えばポリエステル糸やポリアミド糸等によって形成した織布等を基布として用い、この基布の周縁部を縫製糸で縫着すること等によって所定の袋状に形成されている。
【0071】
エアバッグ61は、乗員Pの上半身UBのうち、頭部PHよりも下側の領域の側方で膨張し得る大きさ及び形状を有している。また、エアバッグ61は、移動機構41によって上方へ移動させられたコンソールボックス14の上面14Uよりも下側であって、センターコンソール11と乗員Pとの間で膨張する部分61Lを、自身の下部に有している。第3実施形態では、部分61Lは、コンソールボックス14にとどまらず、コンソール本体12の上部と乗員Pとの間で膨張する大きさを有している。
【0072】
インフレータ62の内部には、膨張用ガスを発生するガス発生剤(図示略)が収容されている。このインフレータ62はパイロタイプと呼ばれるものであるが、それ以外にも、高圧ガスの充填された高圧ガスボンベの隔壁を火薬等によって破断してガスを噴出させるタイプ(ストアードガスタイプ)や、パイロタイプとストアードガスタイプの両者を組み合わせた形態のハイブリッドタイプ等が用いられてもよい。
【0073】
エアバッグ61は折り畳まれた状態で、インフレータ62と一緒に、各車両用シート15,16におけるシートバック18の車内側の側部18Iに配置されている。この配置箇所は、車両用シート15,16に着座した乗員Pからすると、衝突箇所側(車内側)の後方近傍となる。そして、シートバック18内に配置された車内側のサイドフレーム部63Sに対し、インフレータ62がエアバッグ61の後端部61Rと一緒に固定されている。
【0074】
インフレータ62は上述した制御装置52に接続されている。制御装置52は、衝撃センサ51からの検出信号に基づき、上述した移動機構41の作動に加え、インフレータ62の作動を制御する。
【0075】
上記の構成を有する第3実施形態において、側面衝突により、車両10に対し、車両用シート15,16の並設方向(車幅方向)の一方から他方へ向けて衝撃が加わり、そのことが衝撃センサ51によって検出されると、その検出信号に基づき制御装置52から、移動機構41に対し、これを作動させるための指令信号が出力される。この指令信号に応じて、移動機構41が作動してコンソールボックス14が瞬時に上方へ押上げられる。乗員Pの上半身UBのうち腰部PPと、その上方近傍部分との衝突箇所側へ移動は、コンソールボックス14を上方へ移動させたセンターコンソール11によって規制される。この点は、上述した第1実施形態と同様である。
【0076】
また、上記衝撃センサ51の検出信号に基づき制御装置52から、インフレータ62に対し、これを作動させるための指令信号が出力される。この指令信号に応じて、インフレータ62から膨張用ガスが発生されて、エアバッグ61内に供給される。この膨張用ガスによりエアバッグ61が膨張を開始する。エアバッグ61は、膨張用ガスの供給開始直後にはシートバック18の側部18I内で折り状態を解消しながら膨張する。この膨張の過程でエアバッグ61はシートバック18を破断させ、自身の一部(後端部61R)を側部18I内に残した状態でシートバック18の前方へ飛び出す。その後もエアバッグ61は、乗員Pの衝突箇所側の側方近傍であって、移動機構41によって上方へ移動させられたコンソールボックス14の上面14Uよりも少なくとも上側で、折り状態を解消しながら前方へ向けて膨張する。上半身UBのうち、上方へ移動させられたコンソールボックス14よりも上側の部位が、エアバッグ61によって受け止められて拘束され、同部位の衝突箇所側への移動が抑制される。このエアバッグ61による拘束は、センターコンソール11のような硬いものを拘束手段とした場合よりもソフトに行われる。
【0077】
ここで、車両10への衝撃に応じ、乗員Pの上半身UBが衝突箇所側へ移動しようとすると、膨張状態のエアバッグ61に対し、上半身UBによる衝突箇所側へ向かう押圧力が加わる。この際、仮にエアバッグ61よりも衝突箇所側に同エアバッグ61を受け止めるものが何もないものとすると、上記押圧力により、エアバッグ61がその固定箇所である後端部61Rを支点として衝突箇所側へ回転するおそれがある。
【0078】
しかし、第3実施形態では、車両10への衝撃に応じ拘束手段としてエアバッグ装置60が作動すると、エアバッグ61の下部を構成する部分61Lが、移動機構41によって上方へ移動させられたコンソールボックス14の上面14Uよりも下側であって、センターコンソール11と乗員Pとの間で膨張する。エアバッグ61のこの部分61Lの衝突箇所側には、センターコンソール11のうち、少なくとも上方へ移動させられたコンソールボックス14が位置する、このコンソールボックス14を含むセンターコンソール11は、エアバッグ61の上記部分61Lを衝突箇所側から受け止める。
【0079】
従って、第3実施形態によれば、上述した(1)と同様の効果が得られるほか、次の効果が得られる。
(3)乗員Pのうち、移動機構41によって上方へ移動させられたコンソールボックス14(可動部)よりも上側の部位を拘束する拘束手段として、乗員Pの衝突箇所側(車内側)の側方近傍であって、同コンソールボックス14の上面14Uよりも少なくとも上側で膨張するエアバッグ61を備えるエアバッグ装置60を設けている。
【0080】
そのため、乗員Pの上半身UBのうち、上方へ移動させられたコンソールボックス14よりも上側の部位をエアバッグ61によって受け止めて拘束し、同部位の衝突箇所側への移動を抑制することができる。その結果、エアバッグ61を用いない場合に比べ、すなわち、センターコンソール11のみによって乗員Pの衝突箇所側への移動を規制する上記第1実施形態に比べ、乗員Pの頭部PHの衝突箇所側への移動量(頭部移動量D)を少なくすることができる。
【0081】
(4)エアバッグ61の一部(下部)に、移動機構41によって上方へ移動させられたコンソールボックス14の上面14Uよりも下側であって、センターコンソール11と乗員Pとの間で膨張する部分61Lを設けている。このため、エアバッグ61が、サイドフレーム部63Sとの固定箇所である後端部61Rを支点として衝突箇所側へ回転するのを、上記部分61Lにおいて抑制することができ、上記(3)の効果をより確実なものとすることができる。
【0082】
(5)上記部分61Lを、上方へ移動させられたコンソールボックス14と乗員Pとの間にとどまらず、コンソール本体12の一部(上部)と乗員Pとの間で膨張させるようにしている。そのため、センターコンソール11の側面11Sのより広い面によって部分61Lを受け止め、上記エアバッグ61の回転をより確実に抑制することができる。
【0083】
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
<移動機構について>
・移動機構として、車両への衝撃に応じ、コンソールの可動部を上方へ移動させることのできるものであることを条件に、前記第1〜第3の各実施形態とは異なる構成を有するものを採用してもよい。
【0084】
例えば、コンソールに対して可動部を昇降させるリンク機構をスプリングとともに設け、ロック機構の解除によりスプリング及びリンクをともに作動させて、可動部を上方へ移動させるようにしてもよい。
【0085】
また、上下方向へ延びるねじ孔を有するナットを可動部の下方側に回転不能に支持する。上下方向に細長く、かつ少なくとも上部にねじが形成されたシャフトをコンソールの底部に回転可能かつ上下動不能に支持する。このねじにおいて、シャフトを上記ナットに螺入させる。そして、電動モータによってこのシャフトを回転させることにより、ナットを可動部とともに上方へ移動させるようにしてもよい。
【0086】
なお、電動モータの回転軸が水平方向へ延びていてシャフトの回転方向とは異なる方向へ回転する場合には、電動モータとシャフトの間に、回転方向を変換する機構、例えばウォームホイールとウォームギヤの組合わせを介在させてもよい。
【0087】
また、電動モータによってシャフトを逆方向へ回転させれば、ナットを可動部とともに下方へ移動させることもできる。この場合には、電動モータによって可動部が昇降されることとなる。
【0088】
<センターコンソール11について>
・センターコンソール11は、少なくとも自身の上部を可動部としたものであればよい。従って、コンソールボックス14に加えコンソール本体12を可動部とし、両者を上方へ移動させるようにしてもよい。
【0089】
また、センターコンソール11はコンソールボックス14を有するものに限られず、コンソールボックス14を有しないものであってもよい。この場合には、センターコンソール11全体を可動部として上方へ移動させるようにする。
【0090】
・センターコンソール11は、車両10内の床面に接した状態で配設されたものに限らず、床面から上方へ離間した状態で配設されたものであってもよい。
<拘束手段について>
・第2実施形態において、プリテンショナ装置として、巻取り装置25に代えて、バックル23側でウェビング21を引っ張るタイプを用いてもよい。このタイプはバックルプリテンショナ、ラッププリテンショナと呼ばれるものである。このタイプも、前述した巻取り装置25側でウェビング21を巻き取るタイプと同様、ガス発生装置を用いており、急激に発生したガスによってピストンを動かしてワイヤを引っ張る。すると、このワイヤによってバックル23が下方へ引っ張られ、結果としてウェビング21も引っ張られて緊張状態にされる。
【0091】
・巻取り装置25側でウェビング21を巻取るタイプのプリテンショナ装置と、バックル23側でウェビング21を引っ張るタイプのプリテンショナ装置とを併用してもよい。
・第3実施形態におけるエアバッグ61は、移動機構41によって上方へ移動させられた可動部(コンソールボックス14)の上面14Uよりも少なくとも上側で膨張する部分を有するものであればよい。従って、エアバッグ61は、乗員Pの腹部、胸部PT、肩部PS、頭部PHの少なくとも1箇所の側方近傍で膨張するものであってもよい。
【0092】
・コンソールボックス14の上方への移動量が充分に多い場合には、第3実施形態におけるエアバッグ61の部分61Lは、上方へ移動させられたコンソールボックス14と乗員Pとの間でのみ膨張する(上方へ移動させられたコンソールボックス14よりも低い箇所では膨張しない)ものであってもよい。
【0093】
・第3実施形態におけるエアバッグ61は、固定箇所(後端部61R)を支点とした回転がさほど多くない場合には、上方へ移動させられたコンソールボックス14の上面14Uよりも下側であって、センターコンソール11と乗員Pとの間で膨張する部分61Lを有しないものであってもよい。
【0094】
・第3実施形態におけるエアバッグ61を、シートバック18とは異なる箇所、例えばセンターコンソール11等に組み込んでもよい。
・拘束手段として、第2実施形態のプリテンショナ装置55と、第3実施形態のエアバッグ装置60とを併用してもよい。
【0095】
<乗員保護装置40の適用対象について>
・本発明の乗員保護装置は、車幅方向に3つ以上の車両用シートが並設された車両にも適用可能である。この場合、乗員保護装置は、車両に対し車両用シートの並設方向の一方から他方へ向けて衝突による衝撃が加わるときの同車両の衝突箇所に最も近い車両用シートを除く他の車両用シートに適用される。
【0096】
・本発明の乗員保護装置は、乗員が着座したときに、車両の前後方向とは異なる方向、例えば直交する方向(車幅方向)を向くように車両用シートの配置された車両にも適用可能である。この場合、車両に対し前方又は後方から衝突による衝撃が加わると、その衝撃が車両用シートの並設方向の一方から他方へ向かう衝撃となる。
【0097】
<その他>
・第1〜第3の各実施形態において、プリクラッシュ制御装置を設け、これを上記制御装置52に接続する。プリクラッシュ制御装置は、ミリ波レーダ等の検出信号に基づき、車両に対し側方から接近してくる他の車両等を認知すると、両車両の相対速度や距離等を演算する。プリクラッシュ制御装置は、この演算結果に基づき側面衝突が不可避であると判断すると、すなわち側面衝突を予測すると、その情報をプリクラッシュ信号として出力する。
【0098】
そして、制御装置52による移動機構41の制御に際し、同制御装置52はプリクラッシュ制御装置からのプリクラッシュ信号に応じて、移動機構41を作動させるようにしてもよい。このようにすれば、乗員Pの衝突箇所側への移動に先立ち、可動部(コンソールボックス14)を上方へ移動させ、同コンソールボックス14による移動抑制効果をより確実なものとすることができる。
【0099】
・第2及び第3の各実施形態において、上記プリクラッシュ制御装置からのプリクラッシュ信号に応じて、制御装置52による拘束手段(プリテンショナ装置55、エアバッグ装置60)の作動を開始させるようにしてもよい。このようにすれば、乗員Pの衝突箇所側への移動に先立ち拘束手段を作動させ、同手段による乗員Pの拘束・移動抑制効果をより確実なものとすることができる。
【0100】
・移動機構により、可動部をコンソールに対し上方へ移動させるだけでなく下方へも移動させる乗員保護装置、例えば、上述した電動モータによって可動部を昇降させるようにした乗員保護装置に、上記プリクラッシュ制御装置を適用する。そして、プリクラッシュ制御装置によって側面衝突が予測された場合には、移動機構により可動部を上方へ移動させる。その後に、側面衝突が回避された場合には、移動機構により可動部を下方へ移動させるようにしてもよい。このようにすると、側面衝突が予測されたにも拘わらず実際には起きなかった場合、可動部を元の位置へ戻し、次回の側面衝突に備えることができる効果がある。
【符号の説明】
【0101】
10…車両、11…センターコンソール(コンソール)、11S…センターコンソールの側面、14…コンソールボックス(可動部)、14U…コンソールボックスの上面、15,16…車両用シート、20…シートベルト装置、21…ウェビング、40…乗員保護装置、41…移動機構、55…プリテンショナ装置(拘束手段)、60…エアバッグ装置(拘束手段)、61…エアバッグ、61L…部分、HP…ヒップポイント、P…乗員、PP…腰部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも自身の上部を可動部としたコンソールを車両内に配設するとともに、同コンソールの両側に一対の車両用シートを並設し、前記車両に対し、前記車両用シートの並設方向の一方から他方へ向けて衝突による衝撃が加わったとき、又は加わることが予測されたとき、前記可動部を移動機構により上方へ移動させ、前記車両の衝突箇所から遠い側の車両用シートに着座した乗員の腰部の前記衝突箇所側への移動を前記コンソールの側面で規制するようにした車両の乗員保護装置であって、
前記移動機構は、前記可動部の上面が、ISO6549−1999規格に準拠した乗員のヒップポイントから190mm〜300mm上方へ離間した箇所に位置するように前記可動部を移動させるものであることを特徴とする車両の乗員保護装置。
【請求項2】
前記コンソールとは別に設けられ、かつ前記乗員のうち、前記移動機構により上方へ移動させられた前記可動部よりも上側の部位を拘束する拘束手段をさらに備える請求項1に記載の車両の乗員保護装置。
【請求項3】
前記車両内には、前記乗員を、同乗員が着座した前記車両用シートに拘束するためのシートベルト装置が設けられており、
前記拘束手段は、前記車両への前記衝撃に応じ前記シートベルト装置のウェビングを非衝突時よりも緊張状態にするプリテンショナ装置である請求項2に記載の車両の乗員保護装置。
【請求項4】
前記拘束手段は、前記乗員の前記衝突箇所側の側方近傍であって、前記移動機構により上方へ移動させられた前記可動部の前記上面よりも少なくとも上側で、膨張用ガスにより膨張するエアバッグを備えるエアバッグ装置である請求項2又は3に記載の車両の乗員保護装置。
【請求項5】
前記エアバッグは、前記移動機構により上方へ移動させられた前記可動部の前記上面よりも下側であって、前記コンソールと前記乗員との間で膨張する部分を一部に有する請求項4に記載の車両の乗員保護装置。
【請求項1】
少なくとも自身の上部を可動部としたコンソールを車両内に配設するとともに、同コンソールの両側に一対の車両用シートを並設し、前記車両に対し、前記車両用シートの並設方向の一方から他方へ向けて衝突による衝撃が加わったとき、又は加わることが予測されたとき、前記可動部を移動機構により上方へ移動させ、前記車両の衝突箇所から遠い側の車両用シートに着座した乗員の腰部の前記衝突箇所側への移動を前記コンソールの側面で規制するようにした車両の乗員保護装置であって、
前記移動機構は、前記可動部の上面が、ISO6549−1999規格に準拠した乗員のヒップポイントから190mm〜300mm上方へ離間した箇所に位置するように前記可動部を移動させるものであることを特徴とする車両の乗員保護装置。
【請求項2】
前記コンソールとは別に設けられ、かつ前記乗員のうち、前記移動機構により上方へ移動させられた前記可動部よりも上側の部位を拘束する拘束手段をさらに備える請求項1に記載の車両の乗員保護装置。
【請求項3】
前記車両内には、前記乗員を、同乗員が着座した前記車両用シートに拘束するためのシートベルト装置が設けられており、
前記拘束手段は、前記車両への前記衝撃に応じ前記シートベルト装置のウェビングを非衝突時よりも緊張状態にするプリテンショナ装置である請求項2に記載の車両の乗員保護装置。
【請求項4】
前記拘束手段は、前記乗員の前記衝突箇所側の側方近傍であって、前記移動機構により上方へ移動させられた前記可動部の前記上面よりも少なくとも上側で、膨張用ガスにより膨張するエアバッグを備えるエアバッグ装置である請求項2又は3に記載の車両の乗員保護装置。
【請求項5】
前記エアバッグは、前記移動機構により上方へ移動させられた前記可動部の前記上面よりも下側であって、前記コンソールと前記乗員との間で膨張する部分を一部に有する請求項4に記載の車両の乗員保護装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−46308(P2011−46308A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197164(P2009−197164)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
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