説明

車両の側部構造

【課題】 高い位置から側面衝突を受けた場合でも、車両の中央部に効率よく衝突荷重を伝達し、もって車両の破損を小さくすることができる車両の側部構造を提供する。
【解決手段】 車両におけるセンターピラー1には、車両側面部材2が設けられており、車両側面部材2は、外側硬部11と内側軟部12とを有している。センターピラー1の外側から他の車両などの物体が衝突した際には、車両側面部材2が車両の内側に移動させられてパイプ部材4に接触する。このとき、車両側面部材2の内側軟部12がパイプ部材4に食い込み、車両側面部材2とパイプ部材4とが一体化して、パイプ部材4の押し下げが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の側部構造に係り、特に、衝突時等における車両の破損を小さくすることができる車両の側部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の側面から他の車両等の物体が衝突する側面衝突が生じた際に、車両に対する衝撃荷重を小さくするため、従来、たとえば特開平9−169232号公報に開示された車両用シートがある。この車両用シートでは、シートバックフレームにおける下部フレームのインナー側の一端より補強パイプが挿入されている。この補強パイプは、シートバックフレームのアウター側のサイドフレームまで延設されており、補強パイプのインナー側の端部には荷重伝達材が固着されている。さらに、荷重伝達材は、インナー側のリクライニング機構に近接して配置されている。このような構造とされていることにより、側面衝突が生じて車両のアウター側から衝撃荷重が与えられた際、補強パイプが下部フレームの強度を補強するとともに、荷重伝達材を介してインナー側のリクライニング機構に荷重が伝達されて衝撃荷重が吸収される。このため、車両の破損を小さくすることができるというものである。
【特許文献1】特開平9−169232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示された車両用シートでは、側面衝突が生じた車両の高さ位置が下部フレームと同程度であれば所期の目的を達成することができる。ところが、近年、いわゆるRV車などの増加に伴い、バンパが高い位置に設定された車両も多くなっている。このようなバンパが高い位置に設定された車両が側面衝突してきた場合、その側面衝突の高さ位置は高い位置となる。この場合、上記特許文献1に開示された車両用シートでは、ドアに接触した物体が下部フレームを押し下げてしまい、荷重をインナー側(中央側)に効率よく伝達できないという問題があった。
【0004】
そこで、本発明の課題は、高い位置から側面衝突を受けた場合でも、車両の中央部に効率よく衝突荷重を伝達し、もって車両の破損を小さくすることができる車両の側部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決した本発明に係る車両の側部構造は、車両におけるシートに設けられ、車幅方向に延在する棒状の車幅方向部材と、車幅方向部材と対向し、車幅方向内側に位置する対向部材と、車幅方向部材と対向し、車幅方向外側の車両側面部に位置する車両側面部材と、を備え、車両側面部材は、車両の側面からの荷重によって移動することにより、車幅方向部材と一体化する構造とされているものである。
【0006】
本発明に係る車両の側部構造では、車両側面部材が設けられており、この車両側面部材は、車両の側面からの荷重によって移動することにより、車幅方向部材と一体化する構造とされている。このため、車両に側面衝突が生じて車両側面部材が車両の中央方向に荷重を受けて移動したとしても、車両側面部材は、車幅方向部材と一体化する。したがって、高い位置から側面衝突を受けた場合でも、車両側面部材と車幅方向部材とが一体化するので、車幅方向部材が落下するのを防止することができる。このように車幅方向部材が落下することがないので、この車幅方向部材を通じて車幅方向内側に位置する車両の中央の対向部材に向けて効率よく衝突荷重を伝達することができ、もって車両の破損を小さくすることができる。なお、本発明にいう「一体化する構造」とは、側面部材により車幅方向部材を拘束し、側面部材に対する車幅方向部材の動きを抑制する構造であればよい。
【0007】
ここで、車両側面部材は、外側に配置された硬性部材と、硬性部材における車幅方向部材側に配置された易変形性部材と、を有する態様とすることができる。
【0008】
このように、硬性部材における車幅方向部材側に易変形性部材を配置することにより、側面衝突が生じて車両側面部材が車両の中央側に移動すると、易変形性部材が車幅方向部材に衝突して変形し、易変形部材と車幅方向部材とが一体化される。このようにして車両側面部材を形成することができる。このような易変形部材としては、金属薄板、ナイロンインゴッドなどの樹脂、ハニカム構造の金属部材などを用いることができる。
【0009】
また、車両側面部材は、車幅方向部材の側面に嵌合する嵌合部を有する態様とすることもできる。
【0010】
このような嵌合部を設けることにより、車両側面部材を車幅方向部材に確実に一体化させることができる。
【0011】
さらに、嵌合部は、車幅方向部材の高さ位置の上下にそれぞれ配置された上部フランジおよび下部フランジを有する態様とすることもできる。
【0012】
このように、嵌合部として上部フランジおよび下部フランジを設けることにより、車両側面部材を車幅方向部材に対してより確実に一体化させることができる。
【0013】
また、車幅方向部材がシートに取り付けられており、車両側面部材は、車幅方向部材が移動する範囲の車両前後方向に延びて配置されている態様とすることもできる。
【0014】
このように、車両側面部材が車両の前後方向に延びて配置されていることにより、車幅方向部材が取り付けられたシートを前後方向に移動させた場合でも、車幅方向部材の側方に確実に車両側面部材を配置させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る車両の側部構造によれば、高い位置から側面衝突を受けた場合でも、車両の中央部に効率よく衝突荷重を伝達し、もって車両の破損を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する部分については同一の符号を付し、重複する説明は省略することがある。図1は、本発明の第一実施形態に係る車両の側部構造の要部斜視図、図2は、その要部側面図、図3は、その要部正面図である。
【0017】
図1ないし図3に示すように、本実施形態における車両には、センターピラー1が設けられており、センターピラー1における車両内側には、センターピラー1のトリム構造の一部として、車両側面部材2が取り付けられている。また、車両における室内には、乗員が着座するシート部材3が設けられており、シート部材3の下部に本発明の車幅方向部材であるパイプ部材4が設けられている。パイプ部材4は、車幅方向に延在する棒状の部材である。このように、車両側面部材2は、パイプ部材4の側方位置であって、車両の外側位置に配置されている。
【0018】
センターピラー1に取り付けられた車両側面部材2は、パイプ部材4の径よりも高さ方向に長い部材であり、その高さ方向中心位置は、パイプ部材4の高さ位置とほぼ同じ高さ位置に配置されている。このため、車両側面部材2の上端部は、パイプ部材4よりも高い位置に位置し、下端部は、パイプ部材4よりも低い位置に位置している。さらに、パイプ部材4の外側端部および内側端部は、いずれもシート部材3の側方からはみ出した位置まで延在しており、外側端部は露出した状態にある。このうち、パイプ部材4の内側端部は、図3に示すように、パイプ部材4と対向し、パイプ部材4の内側に位置する対向部材である支持部材5によって支持されている。この支持部材5は、車両のボディに取り付けられている。
【0019】
センターピラー1に取り付けられた車両側面部材2は、図2に示すように、本発明の硬性部材となる外側硬部11と、本発明の易変形部材となる内側軟部12とを備えている。外側硬部11は、たとえば金属塊からなり、比較的高い硬度を有している。一方、内側軟部12は、たとえばナイロンインゴッドからなり、比較的低い硬度を有している。このため、車両の側方から大きな荷重が掛かり、車両側面部材2が車両の内側に向けて移動すると、内側軟部12がパイプ部材4に食い込むようになっている。こうして、内側軟部12がパイプ部材4に食い込むことにより、車両側面部材2とパイプ部材4とが一体化する構造となっている。
【0020】
さらに、図2に示すように、車両側面部材2は、シート部材3を前後方向に移動させることによってパイプ部材4が移動可能な範囲の車両前後方向に延びて配置される、正面視した形状が板状をなしている。このため、乗員がシート部材3を自分の体格等に合わせて前後方向に移動させ、シート位置を調整した場合でも、パイプ部材4の側方位置に必ず車両側面部材2が配置された状態となっている。
【0021】
以上の構成を有する本実施形態に係る車両の側部構造の作用について説明する。
【0022】
本実施形態に係る車両の側部構造においては、他の車両などの物体が側面から衝突してくると、車両が側面から荷重を受け、車両の側面からの荷重によって車両側面部材2が移動する。このように、車両側面部材2が移動すると、車両側面部材2における内側軟部12がパイプ部材4に食い込み、車両側面部材2とパイプ部材4とが一体化する。
【0023】
ここで、バンパが高い位置に取り付けられた車両が、側面から衝突してきた物体である場合について考える。たとえば、車両側面部材として内側軟部が設けられていない硬性の部材で硬性されている場合、図5に示すように、側面から衝突してきた車両Mの衝撃により、車両側面部材15が下方に押し付けられる。車両側面部材15が下方に押し付けられると、車両側面部材15がパイプ部材4を押し下げてしまい、荷重を支持部材に効率よく伝達できなくなってしまう。
【0024】
これに対して、本実施形態に係る車両の側部構造では、車両側面部材2に、内側軟部12が設けられている。このため、側面から衝突してきた車両Mの衝撃により、車両側面部材15が下方に押し付けられると、図4に示すように、車両側面部材2は、車室内の内側に移動し、パイプ部材4に当接する。このとき、車両側面部材2の内側軟部12がパイプ部材4に食い込んで車両側面部材2とパイプ部材4とが一体化するので、パイプ部材4が下方に押し下げられず、ほぼ水平状態を維持することができる。このため、車両側面部材2に掛かった荷重は、パイプ部材4を介して支持部材5に伝達される。したがって、車両の中央に向けて効率よく衝突荷重を伝達することができ、もって車両の破損を小さくすることができる。
【0025】
また、本実施形態に係る車両の側面構造における車両側面部材2は、シート部材3を前後方向に移動させることによってパイプ部材4が移動可能な範囲の車両前後方向に延びて配置されている。このため、乗員がシート部材3の前後位置を自分の好みに応じた調整した場合でも、必ずパイプ部材4の側方に車両側面部材2が配置されていることになる。したがって、シート部材3の前後方向の位置によらず、車両の側方から物体が衝突した場合に、車両側面部材2は、シート部材3に食い込むことになり、車両の中央に向けて効率よく衝突荷重を伝達することができ、もって車両の破損を小さくすることができる。
【0026】
次に、本発明の第二の実施形態について説明する。本実施形態は、上記第一の実施形態と比較して、車両側面部材に外側硬部と内側軟部とが設けられている点に対して、噛み込み構造が設けられている点において異なる。図6は、本実施形態に係る車両の側部構造の要部正面図である。
【0027】
図6に示すように、本実施形態に係る車両の側部構造においては、センターピラー1における車両内側に車両側面部材20が設けられている。車両側面部材20は、金属塊からなる側面部材本体21と、側面部材本体21における車両内側に突出する嵌合部22を備えている。嵌合部22は、側面部材本体21の上下位置にそれぞれ設けられた上フランジ23と下フランジ24とを備えている。上フランジ23と下フランジ24との間の距離は、パイプ部材4の径とほぼ同じ長さに設定されている。また、これらの側面部材本体21および嵌合部22は、同一の素材によって一体的に形成されている。その他の構成については、上記第一の実施形態と同様である。
【0028】
次に、本実施形態に係る車両の側部構造の作用について説明する。
【0029】
本実施形態に係る車両の側部構造においては、他の車両などの物体が側面から衝突してくると、車両が側面から荷重を受け、車両の側面からの荷重によって車両側面部材20が移動する。このように、車両側面部材20が移動すると、図7に示すように、車両側面部材20における上下フランジ23,24がパイプ部材4の端部を噛み込み車両側面部材20とパイプ部材4とが一体化する。
【0030】
車両側面部材20とパイプ部材4とが一体化すると、上記第一の実施形態と同様、パイプ部材4が下方に押し下げられず、ほぼ水平状態を維持することができる。このため、車両側面部材20に掛かった荷重は、パイプ部材4を介して支持部材5に伝達される。したがって、車両の中央に向けて効率よく衝突荷重を伝達することができ、もって車両の破損を小さくすることができる。
【0031】
続いて、本発明の第三の実施形態について説明する。本実施形態では、上記第二の実施形態と同様に噛み込み構造が設けられているが、その噛み込み構造が上記第二の実施形態とは異なる。図8は、第三の実施形態に係る車両の側部構造の要部正面図である。
【0032】
図8に示すように、本実施形態に係る車両の側部構造においては、センターピラー1における車両内側に車両側面部材30が設けられている。車両側面部材30は、金属塊からなる側面部材本体31と、側面部材本体31における車両内側に突出する嵌合部32を備えている。嵌合部32は、側面部材本体31の上下位置にそれぞれ設けられた上フランジ33と下フランジ34とを備えている。上フランジ33と下フランジ34との間の距離は、パイプ部材4の径よりも大きく設定されている。また、これらの側面部材本体31およびフランジ33,34は、同一の素材によって一体的に形成されている。
【0033】
また、パイプ部材4における車両外方の端部には、噛合部材35が取り付けられている。噛合部材35は、噛合本体部36と、結合部37とを有している。噛合本体部36は、金属塊からなり、結合部37は、噛合本体部36の上下位置において、車両の内側に突出して設けられている。噛合本体部36の高さは、車両側面部材30における上フランジ33と下フランジ34との間の幅とほぼ同一に設定されており、結合部37は、パイプ部材4における車両外方端部に結合されて固定されている。その他の構成については、上記第一の実施形態と同様である。
【0034】
次に、本実施形態に係る車両の側部構造の作用について説明する。
【0035】
本実施形態に係る車両の側部構造においては、他の車両などの物体が側面から衝突してくると、車両が側面から荷重を受け、車両の側面からの荷重によって車両側面部材30が移動する。このように、車両側面部材30が移動すると、図9に示すように、車両側面部材30における上下フランジ33,34が噛合部材35を噛み込み、車両側面部材30と噛合部材35、さらにはパイプ部材4が一体化する。
【0036】
車両側面部材30、噛合部材35、およびパイプ部材4が一体化すると、上記第一の実施形態と同様、パイプ部材4が下方に押し下げられず、ほぼ水平状態を維持することができる。このため、車両側面部材30に掛かった荷重は、パイプ部材4を介して支持部材5に伝達される。したがって、車両の中央に向けて効率よく衝突荷重を伝達することができ、もって車両の破損を小さくすることができる。
【0037】
また、このような噛合部材35を設けることにより、パイプ部材4が細径などである場合でも、車両側面部材30は噛合部材35に良好に噛み合う。したがって、車両側面部材30とパイプ部材4とを確実に一体化させることができる。
【0038】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記第一の実施形態において、車両側面部材の内側軟部としてナイロンインゴットを用いているが、ウレタン樹脂などを用いることができる。また、内側軟部の形状をハニカム形状として、軟性を有する材料とすることもできる。さらに、上記実施形態では、対向部材となる支持部材にパイプ部材4を固定しているが、パイプ部材4に離間した位置に対向部材を設ける態様とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】第一実施形態に係る車両の側部構造の要部斜視図である。
【図2】第一実施形態に係る車両の側部構造の要部側面図である。
【図3】第一実施形態に係る車両の側部構造の要部正面図である。
【図4】第一実施形態に係る車両の側面から他の車両が衝突した状態の図である。
【図5】従来の車両の側面から他の車両が衝突した状態の図である。
【図6】第二実施形態に係る車両の側部構造の要部正面図である。
【図7】第二実施形態に係る車両の側面から他の車両が衝突した状態の図である。
【図8】第三実施形態に係る車両の側部構造の要部正面図である。
【図9】第三実施形態に係る車両の側面から他の車両が衝突した状態の図である。
【符号の説明】
【0040】
1…センターピラー、2,20,30…車両側面部材、3…シート部材、4…パイプ部材、5…支持部材、11…外側硬部、12…内側軟部、22,32…嵌合部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両におけるシートに設けられ、車幅方向に延在する棒状の車幅方向部材と、
前記車幅方向部材と対向し、車幅方向内側に位置する対向部材と、
前記車幅方向部材と対向し、車幅方向外側の車両側面部に位置する車両側面部材と、を備え、
前記車両側面部材は、前記車両の側面からの荷重によって移動することにより、前記車幅方向部材と一体化する構造とされていることを特徴とする車両の側部構造。
【請求項2】
前記車両側面部材は、外側に配置された硬性部材と、前記硬性部材における前記車幅方向部材側に配置された易変形性部材と、を有する請求項1に記載の車両の側部構造。
【請求項3】
前記車両側面部材は、前記車幅方向部材の側面に嵌合する嵌合部を有する請求項1に記載の車両の側部構造。
【請求項4】
前記嵌合部は、前記車幅方向部材の高さ位置の上下にそれぞれ配置された上部フランジおよび下部フランジを有する請求項3に記載の車両の側部構造。
【請求項5】
前記車幅方向部材がシートに取り付けられており、前記車両側面部材は、前記車幅方向部材が移動する範囲の車両前後方向に延びて配置されている請求項1〜請求項4のうちのいずれか1項に記載の車両の側部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−347491(P2006−347491A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−179289(P2005−179289)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】