説明

車両の内燃機関を診断する方法

【課題】車両の構成要素、特に内燃機関およびその構成要素を診断する可能性を広げることが可能な、車両の内燃機関を診断する方法、装置、コンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】本発明は、音波を電気信号へ変換する少なくとも1つの音波受信器(7)を含む、少なくとも1つのセンサユニット(5)を備えた車両(1)の内燃機関(2)を診断する方法であって、内燃機関(2)の音波は、センサユニット(5)の音波受信器(7)で受信され、電気信号に変換され、電気信号は内燃機関(2)の駆動状態の診断に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音波送信器および音波受信器を有する少なくとも1つのセンサユニットを備えた車両の内燃機関を診断する方法であって、音波受信器が音波を電気信号へ変換する、車両の内燃機関を診断する方法に関する。さらに、本発明は、本発明の方法を実行するために設けられている装置、特に制御装置、および本発明の方法の全処理を実行するためのプログラムコードを含むコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
比較的古い車両モデルにおいて、運転者は、自分で知覚したエンジンの騒音に基づいて、起こり得る問題、欠陥または破損を推測することが出来る。例えば、Vベルトの異音(Pfeife)が知覚され、知覚に基づいてVベルトの張力が非常に弱い等、可能性のある欠陥が推測される。また、ターボチャージャーの騒音等も知覚される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
今日の車両においては、エンジン室または客室の防音効果が非常に高いので、知覚によって欠陥を推測する可能性が無くなり、運転者は、個々の車両構成要素またはエンジン構成要素についての診断または警告灯を信頼せざるをえない。
【0004】
本発明の課題は、車両の構成要素、特に内燃機関およびその構成要素を診断する可能性を広げることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の課題は、特許請求の範囲に記載の独立請求項に基づく方法、装置およびコンピュータプログラムによって解決される。特に、本発明の課題は、少なくとも1つの音波受信器を含む少なくとも1つのセンサユニットを備えた車両の内燃機関を診断する方法によって解決される。その際、音波受信器は音波を電気信号に変換しており、内燃機関の音波はセンサユニットの音波受信器で受信され、電気信号に変換され、電気信号は内燃機関の駆動状態の診断に使用される。駆動状態の診断には、内燃機関の破損したユニット等の欠陥診断、および、噴射時点、噴射量、点火時点、バルブ開閉時点、振動等の駆動パラメタの監視が含まれる。音波受信器は、通常マイクロフォンである。
【0006】
音波は、空気伝播音および/または固体伝播音を含んでもよい。空気伝播音は、周囲空気を媒体とし、内燃機関または内燃機関に配置されたユニットと受信器との間で伝達される音波である。また、固体伝播音は、車両ボディ等の固体を媒体とし、内燃機関または内燃機関に配置されたユニットと受信器との間で伝達される。音波は、超音波領域の音波を含んでもよい。
【0007】
センサユニットは、音波送信器および音波受信器を含んでもよい。センサユニットは、通常は駐車補助、駐車スペース測定等として機能するための超音波センサでもよい。超音波センサは、超音波送信器および超音波受信器を備えている。超音波センサは超音波周波数の信号を放射し、超音波信号は近くにある対象物で反射され、受信器によって受信される。信号の送信から受信に要する往復時間に基づいて、対象物との間の間隔が測定される。本発明に基づいて、受信器は単体で、すなわち、送受信装置として送信器に繋がった状態ではなく、独立して駆動される。
【0008】
音波送信器および音波受信器は、超音波の送信または受信のために設けられてもよい。センサユニットは、閉ループモジュールとして構成されることが可能であるが、送信器および受信器は車両内で分かれて配置されることも可能である。通常、車両には前部領域に2つおよび後部領域に2つ等、複数の間隔測定のためのセンサユニットが配置されている。従って、車両の左右の前端部または後端部の領域で、間隔を測定することが可能である。本発明に基づく方法において、車両に配置された全センサ、(複数の)センサの一部または単一のセンサのみが音波測定のために使用される。1つのセンサまたは(複数の)センサの一部のみが本発明に基づく方法を実行するために使用される場合、内燃機関の空気伝播音または固体伝播音の伝播に関連して、特に車両に配置されている、例えば内燃機関の付近に配置されているセンサの受信器等、1つまたは複数のセンサを選択することが可能である。
【0009】
内燃機関の駆動状態を診断するための電気信号の使用に、所定の周波数スペクトルにおける信号成分の算定が含まれてもよい。内燃機関または内燃機関に配置されたユニットの特定のエラー(Stoerung)、欠陥および破損によって、振動が追加的に生成され、さらにそれに伴って特定の周波数の空気伝播音または固体伝播音が追加的に生成される。センサユニットまたはセンサユニットの受信器に受信された特定の周波数の音波スペクトルが最大振幅を超えた場合、対応する割り当てられた欠陥が示唆されている。周波数の代わりに周波数スペクトルも、パターン照合等の比較方法を用いて、または、比較スペクトルとの相互相関を用いて、内燃機関の欠陥に割り当てられた比較スペクトルと比較することが可能である。スペクトルの最大振幅を超えた際には、スペクトルに割り当てられた欠陥が出力されてもよい。周波数スペクトルと比較スペクトルとの相互相関の最大値を超えた際には、比較スペクトルに割り当てられた欠陥が出力される。
【0010】
車両の最小速度を超えた際に、内燃機関の音波がセンサユニットの受信器に受信されてもよい。すなわち、本発明に基づく方法は、最小速度を超えた際にはじめて用いられ、最小速度を超えない際には用いられない。
【0011】
冒頭で述べた課題は、本発明に基づく方法を実行するために設けられた装置、特に内燃機関のための制御装置、および、コンピュータで実行される場合に本発明に基づく方法の全処理(aller Schritt)を実行するためのプログラムコードを含むコンピュータプログラムによって解決される。
【0012】
冒頭で述べた課題は、本発明に基づく方法を実行するために、車両においてセンサユニット、特に超音波間隔センサを使用することによって解決される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車両の構成要素、特に内燃機関およびその構成要素を診断する可能性を広げることが可能な、車両の内燃機関を診断する方法、装置、コンピュータプログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、添付した図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
図1には、内燃機関2を備えた車両1の説明図が示されている。ここでは、ガソリンエンジン(火花点火機関)、ディーゼルエンジン、ロータリーエンジン等が関連する。さらに、詳細に示されていないが、トランスミッション、例えば、内燃機関のクラッチと接続されているマニュアル・トランスミッションまたはオートマチック・トランスミッション等が関連する。トランスミッションは、動輪3を駆動する。車両1は、全機能、特に内燃機関の全機能も制御する制御装置4を備えている。制御装置4は、様々な機能を担う単一の制御装置に分割することが可能である。例えば、内燃機関自体のための制御装置、客室での機能を制御するための制御装置、並びに、聴覚的および視覚的出力並びにオペレータ入力(Bedienereingabe)の受信(Entgegennahme)のための制御装置が存在する。車両は、それぞれに音波送信器6および音波受信器7を含む複数のセンサユニット5を備えている。音波送信器6および音波受信器7は、例えば、公知の技術で駐車補助として用いられることが知られる、超音波送信器または超音波受信器である。音波受信器7のうちの少なくとも1つは、超音波の周波数未満の周波数を伴う音波を受信するために追加的に配置される。センサユニット5はそれぞれ、電気的ライン8またはCANバス等のバスシステムを経由して、制御装置4と接続されている。センサユニット5は、従来の方法において、例えば駐車補助等のために、障害物と車両との間の間隔の測定を行う。駆動中、内燃機関2は、空気伝播音および固体伝播音として、車両ボディを媒体として広がる音波を生成する。特に、駆動中の内燃機関の空気伝播音は、また、センサユニットの実施形態によっては固体伝播音も、センサユニット5の音波受信器7によって受信される。場合によっては、内燃機関2が配置されているエンジン室から、センサユニット5の少なくとも1つの音波受信器へ音波を伝えるための開口部(Oeffnung)等を介して、音波の伝播が追加的に生じる。
【0016】
内燃機関の駆動中、センサユニット5のうちの少なくとも1つは、音波受信器7によって電気信号に変換されて制御装置4に供給される音波を受信する。電気信号は、時間領域または周波数領域等で、例えばフーリエ変換または高速フーリエ変換を施され、評価される。電気信号の周波数スペクトルおよび測定された音波の周波数スペクトルは、比較スペクトル等と比較される。比較周波数スペクトルは、構成要素または個々のユニットが欠陥を伴う内燃機関において受信される。その際、内燃機関のうち、欠陥を伴う構成要素または部分ユニットは、本来の周波数スペクトルとは異なる周波数スペクトルを生成する。
【0017】
Vベルト、例えば、内燃機関の発電機を駆動するためのVベルトは、張力が非常に弱くなり磨耗し始めると、例えば、特徴的な高周波の異音を生成する。Vベルトの異音に基づいて、異音の周波数に対応する信号成分は明らかに高くなるが、これは、センサユニット5の音波受信器7を用いて測定することが可能である。このスペクトル成分の振幅が最大振幅を超えると、制御装置4によって、対応する欠陥、すなわち張力が非常に弱いVベルトに関する欠陥が出力される。この欠陥は、欠陥ビット等として制御装置に設定され、同時にまたは任意に、視覚的および/または聴覚的信号によって車両の運転者に通知される。この状態、すなわち、振幅が最大振幅を超えた状態が所定の期間Δtに亘って続く場合、診断ユニットが起動される。診断ユニットは、センサユニット5の受信器の信号を分析し、場合によっては、センサの感度を複数回切り替える。診断ユニットは、内燃機関のエラー(Stoerung)の種類について、すなわち、張力が非常に弱いVベルトについての評価を送信する。その際に、エンジントルクに基づいて、例えばターボチャージャーの回転数が上がらず、ターボチャージャーの回転数アップが信号成分の要素として含まれていない場合に、エラー信号(Stoersignal)も発生することが確認される。結果として、Vベルトの張力に問題が生じている可能性がある、という警告が運転者に伝達される。
【0018】
本発明の一実施形態に基づく方法を用いるための更なる別の実施形態として、ターボチャージャーの監視が挙げられる。例えば、ターボチャージャーのベアリングが、耐用年数の経過により磨耗し始めたとする。エンジントルクの必要性が高まると、ターボチャージャーは始動するが、その際に高周波の異音を生成する。ターボチャージャーの異音に基づいて、異音の周波数に対応する信号成分は明らかに高くなる。所定の期間Δtに亘って異音が続く場合、すなわち、所定の期間Δtに亘って対応する周波数の振幅が最大振幅より大きい場合、診断ユニットが起動される。診断ユニットは信号を分析し、場合によってセンサの感度を複数回切り替え、エラー(Stoerung)または破損の種類、および場合によっては程度に関する評価を送信する。エンジントルクに基づいて、ターボチャージャーの回転数が上がらない場合には、エラー信号(Stoersignal)が発生することが確認される。
【0019】
時速約50km以上から、センサユニットの音波受信器7は、エンジン騒音が正常な場合には、超音波領域でごくわずかな信号のみが生成されるように、その感度が切り替えられる。更に、音波受信器7の感度が、間隔警告器としての駆動に比べて、適切に下げられる。
【0020】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】センサユニットを備えた車両を示す説明図である。
【符号の説明】
【0022】
1 車両
2 内燃機関
3 動輪
4 制御装置
5 センサユニット
6 音波送信器
7 音波受信器
8 電気的ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音波を電気信号へ変換する少なくとも1つの音波受信器を含む、少なくとも1つのセンサユニットを備えた車両の内燃機関を診断する方法であって、
前記内燃機関の音波が、前記センサユニットの前記音波受信器で受信され、電気信号に変換され、前記電気信号が前記内燃機関の駆動状態の診断に使用されることを特徴とする、車両の内燃機関を診断する方法。
【請求項2】
前記音波が、空気伝播音および/または固体伝播音を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記センサユニットが、音波送信器および音波受信器を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
音波送信器および音波受信器が、超音波の送信または受信のために設けられていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記内燃機関の駆動状態を診断するための前記電気信号の使用に、所定の周波数スペクトルにおける信号成分の算定が含まれることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記周波数スペクトルが、前記内燃機関の欠陥に割り当てられた比較スペクトルと比較されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
スペクトルの最大振幅を超えた際に、前記スペクトルに割り当てられた欠陥が出力されることを特徴とする、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
周波数スペクトルと比較スペクトルとの相互相関の最大値を超えた際に、前記比較スペクトルに割り当てられた欠陥が出力されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記車両の最小速度を超えた際に、前記内燃機関の音波が前記センサユニットの前記音波受信器に受信されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記センサユニットは、前記内燃機関の診断以外の目的で前記車両に設けられたセンサユニット、特に超音波間隔センサであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の方法を実行するために設けられている装置、特に内燃機関のための制御装置。
【請求項12】
コンピュータで実行される場合に、請求項1〜9のいずれかに記載の全処理を実行するためのプログラムコードを含むコンピュータプログラム。

【図1】
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【公開番号】特開2008−129023(P2008−129023A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−301993(P2007−301993)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(501125231)ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (329)
【Fターム(参考)】