車両の制動力保持装置、及び車両の制動力保持方法
【課題】ヒルホールド制御に基づき各車輪がロックした状態での車両の予期せぬ移動に基づき車両が偏向した場合に、その車両の偏向の補正をアシストすることができる車両の制動力保持装置及び車両の制動力保持方法を提供する。
【解決手段】CPUは、ヒルホールド制御の実行中に検出した車両の車体加速度DVSが「0(零)」以上であると共に、車両のヨーレイトYRが閾値KYR以上であった場合、車両が偏向しているものと判断する。そして、CPUは、各車輪に付与されている各ホイールシリンダからの制動力を低下させる。すると、各車輪のロック状態が解除され、転舵輪である前輪の転舵による車両の偏向の補正が可能となる。
【解決手段】CPUは、ヒルホールド制御の実行中に検出した車両の車体加速度DVSが「0(零)」以上であると共に、車両のヨーレイトYRが閾値KYR以上であった場合、車両が偏向しているものと判断する。そして、CPUは、各車輪に付与されている各ホイールシリンダからの制動力を低下させる。すると、各車輪のロック状態が解除され、転舵輪である前輪の転舵による車両の偏向の補正が可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキペダルの操作により停止車両の各車輪に付与されている制動力を前記ブレーキペダルの操作解消後においても保持させる車両の制動力保持装置、及び車両の制動力保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、坂路などの斜面上に車両が停止した場合に、搭乗者がブレーキペダルの踏込み操作を解消すると、各車輪に対する制動力が急激に低下するため、斜面の傾斜方向下側への車両の予期せぬ移動(すなわち、車両のずり下がり)が発生する。こうした車両の予期せぬ移動が発生した場合には、坂道発進操作等の車両操作に対する搭乗者の余裕を低下させてしまうおそれがあった。そこで、従来から、ブレーキペダルの踏込み操作の解消後においても停止車両の車輪に付与されている制動力を保持させて車両の予期せぬ移動の発生を抑制する所謂ヒルホールド制御を実行する車両の制動力保持装置、及び車両の制動力保持方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
すなわち、特許文献1に記載の車両の制動力保持装置では、車両の走行時に搭乗者によるブレーキペダルの踏込み操作がなされ、その踏込み操作に基づき車両が停止した場合において、その後にブレーキペダルの踏込み操作が解消されたときでも、ヒルホールド制御により車両の各車輪がロックされるようになっている。そのため、ブレーキペダルの踏込み操作により車両が坂路などの斜面に停止している場合において、そのブレーキペダルの踏込み操作が解消された場合でも、ヒルホールド制御が実行されることにより停止車両の各車輪に付与されている制動力が保持される結果、車両の予期せぬ移動の発生が抑制されるようになっている。なお、ヒルホールド制御は、車両を発進させるためにアクセルぺダルが操作された場合に終了するようになっている。
【特許文献1】特開昭59−179439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両が低μ路(例えば雪道)の斜面上に停止している場合、その斜面の傾斜度合いによっては、車両の予期せぬ移動が発生して車両を偏向させてしまうことがある。こうした場合、ヒルホールド制御を実行する制動力保持装置を搭載していない車両にあっては、ブレーキペダルの踏込み操作を緩和させることにより、車両を停止させていた各車輪のロック状態が解除される結果、ステアリングホイールを操作して車両の偏向状態を補正することができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の制動力保持装置を搭載した車両では、上述したヒルホールド制御が実行される結果、停止している車両の各車輪がロック状態にあることから、車両の偏向をステアリングホイールの操作によって補正することができず、結果として、車両操作に対する搭乗者の余裕を低下させてしまうおそれがあった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。その目的は、ヒルホールド制御に基づき各車輪がロックした状態での車両の予期せぬ移動に基づき車両が偏向した場合に、その車両の偏向の補正をアシストすることができる車両の制動力保持装置及び車両の制動力保持方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、車両の制動力保持装置にかかる請求項1に記載の発明は、ブレーキペダル(37)の操作により停止した車両(C)の各車輪(FR,FL,RR,RL)に制動手段(36a,36b,36c,36d)から付与されている制動力を前記ブレーキペダル(37)の操作が解消された後においても保持させるヒルホールド制御を実行する車両の制動力保持装置(11)において、前記車両(C)のヨーレイト(YR)を検出するヨーレイト検出手段(SE8,60)と、該ヨーレイト検出手段(SE8,60)により検出された車両(C)のヨーレイト(YR)が予め設定された閾値(KYR)以上であるか否かを判定するヨーレイト判定手段(60)と、前記制動手段(36a,36b,36c,36d)から制動力が付与されることにより前記各車輪(FR,FL,RR,RL)がロック状態となっているか否かを判定する車輪ロック判定手段(60)と、該車輪ロック判定手段(60)による判定結果が肯定判定であると共に、前記ヨーレイト判定手段(60)による判定結果が肯定判定である場合に、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち外輪側の転舵輪(FR,FL)を含む複数の車輪に付与される制動力を前記ヒルホールド制御開始時から低下させるように前記制動手段(36a,36b,36c,36d)を制御する制御手段(60)とを備えたことを要旨とする。
【0008】
上記構成では、ヒルホールド制御が実行された状態で停止している車両のヨーレイトが閾値以上となったときに、車両が偏向したと判断される。そして、各車輪のうち外輪側の転舵輪を含む複数の車輪に付与する制動力を低下させるように制動手段が制御され、ステアリングホイールの操舵によって車両の偏向が補正可能な状態になる。すなわち、ヒルホールド制御に基づき各車輪がロックした状態での車両の予期せぬ移動に基づき車両が偏向した場合に、その車両の偏向の補正をアシストすることができるようになる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両の制動力保持装置において、前記制御手段(60)は、前記車輪ロック判定手段(60)による判定結果が肯定判定であると共に、前記ヨーレイト判定手段(60)による判定結果が肯定判定である場合に、全ての車輪(FR,FL,RR,RL)に付与する制動力を前記ヒルホールド制御開始時から低下させるように前記制動手段(36a,36b,36c,36d)を制御することを要旨とする。
【0010】
上記構成では、各車輪がロックした状態で車両の予期せぬ移動が発生した場合に、全ての車輪に対する制動手段からの制動力が低下するため、各車輪のロック状態が解除される。したがって、搭乗者は、車両の偏向を容易に補正することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の車両の制動力保持装置において、前記制御手段(60)は、前記車輪ロック判定手段(60)による判定結果が肯定判定であると共に、前記ヨーレイト判定手段(60)による判定結果が肯定判定である場合に、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち全ての転舵輪(FR,FL)に付与する制動力を前記ヒルホールド制御開始時から低下させるように前記制動手段(36a,36b,36c,36d)を制御することを要旨とする。
【0012】
上記構成では、各車輪がロックした状態で車両の予期せぬ移動が発生した場合に、転舵輪に対する制動力のみを低下させる。そのため、搭乗者は、車両の制動力を維持しつつ、車両の偏向を補正することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の車両の制動力保持装置において、前記制御手段(60)は、前記車輪ロック判定手段(60)による判定結果が肯定判定であると共に、前記ヨーレイト判定手段(60)による判定結果が肯定判定である場合に、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち車両(C)の偏向を補正するときに外輪側となる車輪に付与する制動力を、前記ヒルホールド制御開始時から低下させるように前記制動手段(36a,36b,36c,36d)を制御することを要旨とする。
【0014】
上記構成では、各車輪がロックした状態で車両の予期せぬ移動が発生した場合に、車両の偏向を補正するときに外輪側となる車輪に対する制動力のみを低下させる。そのため、搭乗者は、車両の制動力を維持しつつ、車両の偏向を補正することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は請求項4に記載の車両の制動力保持装置において、前記制御手段(60)は、前記ヨーレイト判定手段(60)による判定結果が肯定判定から否定判定に切り替わった場合に、前記制動手段(36a,36b,36c,36d)によって付与される制動力が前記ヒルホールド制御開始時から変更されていない車輪(FR,FL,RR,RL)に対する制動力を、前記判定結果の切り替わり時点から低下させるように前記制動手段(36a,36b,36c,36d)を制御することを要旨とする。
【0016】
上記構成では、車両の偏向の補正後にはヒルホールド制御開始時から制動力が低下させられていない車輪に対する制動手段からの制動力も低下した状態となるため、車両の速やかな発進に貢献できる。
【0017】
一方、車両の制動力保持方法にかかる請求項6に記載の発明は、ブレーキペダル(37)の操作により停止した車両(C)の各車輪(FR,FL,RR,RL)に制動手段(36a,36b,36c,36d)から付与されている制動力を前記ブレーキペダル(37)の操作が解消された後においても保持させるヒルホールド制御を実行する車両の制動力保持方法において、前記制動手段(36a,36b,36c,36d)から付与される制動力により前記各車輪(FR,FL,RR,RL)がロック状態となっている場合において、車両(C)のヨーレイト(YR)が予め設定された閾値(KYR)以上であるときに、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち外輪側の転舵輪(FR,FL)を含む複数の車輪に付与する制動力を前記ヒルホールド制御開始時から低下させるようにしたことを要旨とする。
【0018】
上記構成では、請求項1に記載の発明の場合と同様の作用効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1〜図7に従って説明する。なお、以下における本明細書中の説明においては、車両の進行方向(前進方向)を前方(車両前方)として説明する。また、特に説明がない限り、以下の記載における左右方向は、車両進行方向における左右方向と一致するものとする。
【0020】
図1に示すように、本実施形態における車両の制動力保持装置11は、複数(本実施形態では4つ)ある車輪(右前輪FR、左前輪FL、右後輪RR及び左後輪RL)のうち、前輪FR,FLが駆動輪として機能する車両(いわゆる前輪駆動車)に搭載されている。この制動力保持装置11は、駆動源となるエンジン12で発生した駆動力を前輪FR,FLに伝達する駆動力伝達機構13と、前輪FR,FLを転舵輪(「操舵輪」ともいう。)として転舵させるための前輪転舵機構14と、各車輪FR,FL,RR,RLに制動力を付与するための制動力付与機構15とを備えている。また、この制動力保持装置11は、上記各機構13,14,15を車両の走行状態に応じて適宜に制御するための電子制御装置(「ECU」ともいう。)16を備えている。なお、エンジン12は、車両の搭乗者によるアクセルぺダル17の踏込み操作に対応した駆動力を発生させる。
【0021】
駆動力伝達機構13には、吸気管18内の吸気通路18aの開口断面積を可変させるスロットル弁19の開度を制御するためのスロットル弁アクチュエータ(例えばDCモータ)20と、エンジン12の吸気ポート(図示略)近傍に燃料を噴射するインジェクタを有する燃料噴射装置21とが設けられている。また、駆動力伝達機構13には、エンジン12の出力軸に接続されたトランスミッション22と、このトランスミッション22から伝達された駆動力を適宜配分して前輪FL,FRに伝達するディファレンシャルギヤ23とが設けられている。さらに、駆動力伝達機構13には、アクセルぺダル17の踏込み量(開度)を検出するためのアクセル開度センサSE1が設けられている。
【0022】
前輪転舵機構14には、ステアリングホイール24と、ステアリングホイール24が固定されたステアリングシャフト25と、ステアリングシャフト25に連結された転舵アクチュエータ26とが設けられている。また、前輪転舵機構14には、転舵アクチュエータ26により車両の左右方向に移動自在なタイロッドと、このタイロッドの移動により前輪FL,FRを転舵させるリンクとを含んだリンク機構部27が設けられている。さらに、前輪転舵機構14には、ステアリングホイール24の操舵角を検出するための操舵角センサSE2が設けられている。
【0023】
次に、制動力付与機構15について図2に基づき以下説明する。
図2に示すように、本実施形態の制動力付与機構15は、マスタシリンダ30及びブースタ31を有する液圧発生装置32と、2つの液圧回路33,34を有する液圧制御装置(図2では二点鎖線で示す。)35とを備えている。各液圧回路33,34は、液圧発生装置32に接続されると共に、各車輪FR,FL,RR,RLに対応して設けられたホイールシリンダ(制動手段)36a,36b,36c,36dに接続されている。すなわち、右前輪FRにはホイールシリンダ36aが対応すると共に、左前輪FLにはホイールシリンダ36bが対応している。また、右後輪RRにはホイールシリンダ36cが対応すると共に、左後輪RLにはホイールシリンダ36dが対応している。
【0024】
液圧発生装置32には、ブレーキペダル37が設けられており、このブレーキペダル37が車両の搭乗者によって踏込み操作されたことに基づき、液圧発生装置32のマスタシリンダ30及びブースタ31が駆動するようになっている。また、マスタシリンダ30には、2つの出力ポート30a,30bが設けられており、各出力ポート30a,30bのうち一方の出力ポート30aには第1液圧回路33が接続されると共に、他方の出力ポート30bには第2液圧回路34が接続されている。さらに、液圧発生装置32には、ブレーキペダル37が操作された際に電子制御装置16に向けて信号を送信するブレーキスイッチSW1が設けられている。
【0025】
液圧制御装置35には、第1液圧回路33内のブレーキ液圧を昇圧するためのポンプ38と、第2液圧回路34内のブレーキ液圧を昇圧するためのポンプ39と、各ポンプ38,39を同時に駆動させるモータMとが設けられている。また、各液圧回路33,34上にはブレーキオイルが貯留されるリザーバ40,41が設けられており、各リザーバ40,41内のブレーキオイルは、ポンプ38,39の駆動に基づき液圧回路33,34内に供給されるようになっている。さらに、各液圧回路33,34には、マスタシリンダ30内のブレーキ液圧を検出するための液圧センサPS1,PS2が設けられている。
【0026】
第1液圧回路33には、右前輪FRに対応するホイールシリンダ36aに接続されるホイールシリンダ36a用(右前輪FR用)の右前輪用経路33aと、左後輪RLに対応するホイールシリンダ36dに接続されるホイールシリンダ36d用(左後輪RL用)の左後輪用経路33bとが形成されている。そして、これら各経路33a,33b上には、常開型の電磁弁42,43と常閉型の電磁弁44,45とがそれぞれ設けられている。
【0027】
同様に、第2液圧回路34には、左前輪FLに対応するホイールシリンダ36bに接続されるホイールシリンダ36b用(左前輪FL用)の左前輪用経路34aと、右後輪RRに対応するホイールシリンダ36cに接続されるホイールシリンダ36c用(右後輪RR用)の右後輪用経路34bとが形成されている。そして、これら各経路34a,34b上には、常開型の電磁弁46,47と常閉型の電磁弁48,49とがそれぞれ設けられている。
【0028】
また、第1液圧回路33において各経路33a,33bに分岐された部位よりもマスタシリンダ30側には、常開型の比例電磁弁50が接続されると共に、この比例電磁弁50と並列関係をなすリリーフ弁51が接続されている。そして、比例電磁弁50とリリーフ弁51とにより比例差圧弁52が構成されている。比例差圧弁52は、電子制御装置16による制御に基づき、比例差圧弁52よりもマスタシリンダ30側とホイールシリンダ36a,36d側とで液圧差(ブレーキ液圧の差)を発生させることができる。なお、この液圧差の最大値は、リリーフ弁51を構成するばね51aの付勢力に基づく値となる。また、第1液圧回路33には、リザーバ40とポンプ38との間からマスタシリンダ30側に向けて分岐された分岐液圧路33cが形成されており、この分岐液圧路33c上には常閉型の電磁弁53が接続されている。
【0029】
同様に、第2液圧回路34において各経路34a,34bに分岐された部位よりもマスタシリンダ30側には、常開型の比例電磁弁54が接続されると共に、この比例電磁弁54と並列関係をなすリリーフ弁55が接続されている。そして、比例電磁弁54とリリーフ弁55とにより比例差圧弁56が構成されている。比例差圧弁56は、電子制御装置16による制御に基づき、比例差圧弁56よりもマスタシリンダ30側とホイールシリンダ36b,36c側とで液圧差(ブレーキ液圧の差)を発生させることができる。なお、この液圧差の最大値は、リリーフ弁55を構成するばね55aの付勢力に基づく値となる。また、第2液圧回路34には、リザーバ41とポンプ39との間からマスタシリンダ30側に向けて分岐された分岐液圧路34cが形成されており、この分岐液圧路34c上には常閉型の電磁弁57が接続されている。
【0030】
ここで、上記各電磁弁42〜49のソレノイドコイルが通電状態にある場合及び非通電状態にある場合における各ホイールシリンダ36a〜36d内のブレーキ液圧の変化について説明する。なお、以下の説明においては、各比例電磁弁50,54が閉じ状態であると共に、分岐液圧路33c,34c上の電磁弁53,57が閉じ状態であるものとする。
【0031】
まず、各電磁弁42〜49のソレノイドコイルが全て非通電状態にある場合には、常開型の電磁弁42,43,46,47は開き状態のままであると共に、常閉型の電磁弁44,45,48,49は閉じ状態のままである。そのため、上記ポンプ38,39が駆動している場合には、リザーバ40,41内のブレーキオイルが各経路33a,33b,34a,34bを介して各ホイールシリンダ36a〜36d内に流入し、各ホイールシリンダ36a〜36d内のブレーキ液圧は上昇することになる。
【0032】
一方、各電磁弁42〜49のソレノイドコイルが全て通電状態にある場合には、常開型の電磁弁42,43,46,47が閉じ状態となると共に、常閉型の電磁弁44,45,48,49が開き状態となる。そのため、各ホイールシリンダ36a〜36d内からブレーキオイルが各経路33a,33b,34a,34bを介してリザーバ40,41へと流出し、各ホイールシリンダ36a〜36d内のブレーキ液圧は降下することになる。
【0033】
そして、各電磁弁42〜49のうち常開型の電磁弁42,43,46,47のソレノイドコイルのみが通電状態にある場合には、全ての電磁弁42〜49が閉じ状態となる。そのため、各経路33a,33b,34a,34bを介したブレーキオイルの流動が規制される結果、各ホイールシリンダ36a〜36d内のブレーキ液圧はその液圧レベルが保持されることになる。
【0034】
図1に示すように、電子制御装置16は、制御手段としてのCPU60、ROM61、及びRAM62などを備えたデジタルコンピュータと、各装置を駆動させるための駆動回路(図示略)とを主体として構成されている。ROM61には、液圧制御装置35(モータM、各電磁弁42〜49,53,57及び比例電磁弁50,54の駆動)を制御するための制御プログラム、及び閾値などが記憶されている。また、RAM62には、車両の制動力保持装置11の駆動中に適宜書き換えられる各種の情報が記憶されるようになっている。
【0035】
また、電子制御装置16の入力側インターフェース(図示略)には、上記ブレーキスイッチSW1、液圧センサPS1,PS2、アクセル開度センサSE1、及び操舵角センサSE2がそれぞれ接続されている。また、入力側インターフェースには、各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度を検出するための車輪速度センサSE3,SE4,SE5,SE6、及び実際に車両に働く横方向加速度(いわゆる「横G」)を検出するための横GセンサSE7がそれぞれ接続されている。さらに、入力側インターフェースには、実際に車両に働くヨーレイト(Yaw Rate)を検出するためのヨーレイトセンサSE8、及び車両の車体加速度を検出するための車体加速度センサ(「前後Gセンサ」ともいう。)SE9が接続されている。すなわち、CPU60は、ブレーキスイッチSW1、液圧センサPS1,PS2、及び上記各種センサSE1〜SE9からの各信号を受信するようになっている。
【0036】
一方、電子制御装置16の出力側インターフェース(図示略)には、各ポンプ38,39を駆動させるためのモータM、各電磁弁42〜49,53,57及び比例電磁弁50,54が接続されている。そして、CPU60は、上記スイッチSW1及び各センサPS1,PS2,SE1〜SE9からの入力信号に基づき、モータM、各電磁弁42〜49,53,57及び比例電磁弁50,54の動作を個別に制御するようになっている。
【0037】
次に、本実施形態のCPU60が実行する制御処理ルーチンについて、図3及び図4に示すフローチャートに基づき以下説明する。図3には後述するヒルホールド制御の実行の有無を設定するためのヒルホールド制御処理ルーチンが示されると共に、図4には後述する車両偏向回避制御の実行の有無を設定するための車両偏向回避処理ルーチンが示されている。
【0038】
最初に図3に示すヒルホールド制御処理ルーチンについて説明する。
さて、CPU60は、所定周期毎にヒルホールド制御処理ルーチンを実行する。そして、このヒルホールド制御処理ルーチンにおいて、CPU60は、ブレーキスイッチSW1からの信号を受信したか否かを判定する(ステップS10)。すなわち、CPU60は、搭乗者がブレーキペダル37を踏み込み操作しているか否かを判定する。そして、ステップS10の判定結果が否定判定である場合、CPU60は、その処理を後述するステップS14に移行する。一方、ステップS10の判定結果が肯定判定である場合、CPU60は、車体加速度センサSE9から受信した信号に基づき、車両の車体加速度DVSを検出すると共に、各車輪速度センサSE3〜SE6から受信した信号に基づき、各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度VWをそれぞれ検出する(ステップS11)。
【0039】
続いて、CPU60は、ステップS11にて検出した車両の車体加速度DVSの値、及びステップS11にて検出した各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度VWの値がそれぞれ「0(零)」であるか否かを判定する(ステップS12)。すなわち、CPU60は、搭乗者によるブレーキペダル37の踏込み操作に基づき、各車輪FR,FL,RR,RLに対して各ホイールシリンダ36a〜36dから制動力が付与されることにより、各車輪FR,FL,RR,RLがロック状態となる結果、車両が停止したか否かを判定する。この点で、本実施形態では、CPU60が、車輪ロック判定手段としても機能する。
【0040】
そして、ステップS12の判定結果が否定判定である場合、CPU60は、車両が走行中である(すなわち、車両がまだ停止していない)ものと判断し、ヒルホールド制御処理ルーチンを終了する。一方、ステップS12の判定結果が肯定判定である場合、CPU60は、車両が停止したものと判断し、ヒルホールド制御を実行する(ステップS13)。なお、CPU60は、ヒルホールド制御を実行する際に、図示しないヒルホールドフラグを「ON」にセットする。
【0041】
ここで、ヒルホールド制御とは、ブレーキペダル37の踏込み操作に基づいて車両が停止した場合に、そのブレーキペダル37の踏込み操作が解消されたとしても各車輪FR,FL,RR,RLのロック状態が保持されるように、各車輪FR,FL,RR,RLに各ホイールシリンダ36a〜36dが付与している制動力を保持する制御である。すなわち、ヒルホールド制御が実行された場合、CPU60は、各液圧回路33,34上の常開型の電磁弁42,43,46,47を通電状態とすることにより、各ホイールシリンダ36a〜36d内のブレーキ液圧を保持するようになっている。
【0042】
また、ヒルホールド制御は、ブレーキペダル37の踏込み操作が解消されてから予め設定された所定時間(例えば2秒程度)の間実行されるようになっている。すなわち、ブレーキペダル37の踏込み操作が解消されてから所定時間が経過した場合には、ヒルホールド制御が自動的に終了し、常開型の電磁弁42,43,46,47が非通電状態になると共に、常閉型の電磁弁44,45,48,49を通電状態になる結果、各ホイールシリンダ36a〜36d内のブレーキ液圧が減圧されるようになっている。換言すると、CPU60は、各ホイールシリンダ36a〜36dにより各車輪FR,FL,RR,RLに付与される制動力を低下させることにより、各車輪FR,FL,RR,RLのロック状態を解除するようになっている。なお、CPU60は、ヒルホールド制御が終了した際に、ヒルホールドフラグを「OFF」にセットする。その後、CPU60は、ヒルホールド制御処理ルーチンを終了する。
【0043】
また、ステップS14において、CPU60は、アクセル開度センサSE1から受信した信号に基づき、アクセルぺダル17が操作されているか否かを判定する。そして、ステップS14の判定結果が否定判定である場合、CPU60は、ヒルホールド制御処理ルーチンを終了する(ステップS15)。一方、ステップS14の判定結果が肯定判定である場合、CPU60は、搭乗者に車両を走行させる意思があるものと判断し、ヒルホールド制御を終了すると共に、ヒルホールドフラグを「OFF」にセットする。すなわち、CPU60は、アクセルぺダル17が操作された場合、ブレーキペダル37の踏込み操作が解消されてからの経過時間が所定時間未満であっても、ヒルホールド制御を終了する。その後、CPU60は、ヒルホールド制御処理ルーチンを終了する。
【0044】
次に図4に示す車両偏向回避処理ルーチンについて説明する。
さて、CPU60は、所定周期毎に車両偏向回避処理ルーチンを実行する。そして、この車両偏向回避処理ルーチンにおいて、CPU60は、前述したヒルホールド制御が実行中であるか否かを判定する(ステップS20)。すなわち、CPU60は、ヒルホールドフラグが「ON」にセットされているか否かを判定する。そして、ステップS20の判定結果が否定判定である場合、CPU60は、ヒルホールド制御が実行されていない(ヒルホールドフラグ=「OFF」)と判断し、車両偏向回避処理ルーチンを終了する。
【0045】
一方、ステップS20の判定結果が肯定判定である場合、CPU60は、ヒルホールド制御が実行されている(ヒルホールドフラグ=「ON」)と判断し、車体加速度センサSE9から受信した信号に基づき、車両の車体加速度DVSを検出する(ステップS21)。続いて、CPU60は、ステップS21にて検出した車両の車体加速度DVSの値が「0(零)」でないか否かを判定する(ステップS22)。すなわち、CPU60は、ヒルホールド制御の実行に基づき各車輪FR,FL,RR,RLがロックした状態において、車両が移動(いわゆる「予期せぬ移動」)しているか否かを判断する。そして、ステップS22の判定結果が否定判定(DVS=「0(零)」)であった場合、CPU60は、ヒルホールド制御に基づき車両が停止しているものと判断し、車両偏向回避処理ルーチンを終了する。
【0046】
一方、ステップS22の判定結果が肯定判定(DVS≠「0(零)」)である場合、CPU60は、ヨーレイトセンサSE8から受信した信号に基づき、車両のヨーレイトYRを検出する(ステップS23)。この点で、本実施形態では、ヨーレイトセンサSE8及びCPU60が、ヨーレイト検出手段として機能する。続いて、CPU60は、ステップS23にて検出した車両のヨーレイトYRが予め設定された閾値KYR以上であるか否かを判定する(ステップS24)。この点で、本実施形態では、CPU60が、ヨーレイト判定手段としても機能する。なお、閾値KYRは、車両が偏向しているか否かを判断するための値であり、実験やシミュレーションなどによって設定される。
【0047】
そして、ステップS24の判定結果が否定判定(YR<KYR)であった場合、CPU60は、車両が偏向していない又は車両の偏向が許容範囲であるものと判断し、車両偏向回避処理ルーチンを終了する。一方、ステップS24の判定結果が肯定判定(YR≧KYR)であった場合、CPU60は、車両の予期せぬ移動に基づく車両の偏向が許容範囲を超えてしまったと判断し、車両偏向回避制御を実行する(ステップS25)。なお、以降の記載において、ヨーレイトYRが閾値KYR以上となった場合のことを、「車両が偏向した」と示すものとする。
【0048】
ここで、車両偏向回避制御とは、ヒルホールド制御の実行中に、車両が偏向してしまった場合に、その車両の偏向の補正をアシストするために、各車輪FR,FL,RR,RLに付与されている各ホイールシリンダ36a〜36dからの制動力を低下させる制御である。すなわち、車両偏向回避制御が実行された場合、CPU60は、常開型の電磁弁42,43,46,47を非通電状態とすると共に、常閉型の電磁弁44,45,48,49を通電状態とすることにより、各ホイールシリンダ36a〜36d内のブレーキ液圧を減圧させる。そのため、各車輪FR,FL,RR,RLのロック状態が解除される結果、搭乗者によるステアリングホイール24の操舵に基づき、車両の偏向の補正が可能になる。
【0049】
その後、CPU60は、車両偏向回避処理ルーチンを終了する。
次に、本実施形態における車両の制動力保持方法について図5〜図7に基づき以下説明する。
【0050】
さて、車両が低μ路(車輪との摩擦係数(μ値)が低い路面)を有する坂道を斜面上側に向けて走行している際に、搭乗者がブレーキペダル37を踏込んで車両を停止させると、この車両の停止に基づきヒルホールド制御が実行される。そのため、その後に、ブレーキペダル37の踏込み操作が解消されても、所定時間の間は各車輪FR,FL,RR,RLに対する各ホイールシリンダ36a〜36dからの制動力が保持される。この際に、車両は低μ路上に停止しているため、図5(a)(b)に示すように、車両Cにおける車両後方への予期せぬ移動(いわゆる「ずり下がり」)が発生することがある。特に、路面状況によっては、車両Cが偏向してしまう(すなわち、車両Cの向きが変わってしまう)ことがある。
【0051】
そこで、本実施形態では、ヒルホールド制御の実行中において、車両Cの予期せぬ移動(すなわち、車両の車体加速度DVS≠「0(零)」)が検知されると共に、閾値KYR以上の車両のヨーレイトYRを検知した場合、車両偏向回避制御が実行される。すなわち、図6(a)に示すように、ホイールシリンダ36a〜36d内のブレーキ液圧を減圧させることにより、各車輪FR,FL,RR,RLに対するホイールシリンダ36a〜36dからの制動力が低下する。そのため、図6(b)(c)に示すように、各車輪FR,FL,RR,RLのロック状態が解除されるため、搭乗者によるステアリングホイール24の操作に基づく各前輪(転舵輪)FR,FLの転舵によって車両Cの偏向が補正される。すなわち、車両Cは、図6(b)に示す矢印方向に旋回する。
【0052】
その後、搭乗者がアクセルぺダル17を踏込んだ際に、各車輪FR,FL,RR,RLに対する各ホイールシリンダ36a〜36dからの制動力が低下した状態であるため、車両Cは速やかに発進することになる。
【0053】
次に、車両Cが低μ路を有する坂道を斜面下側に向けて走行している際に、搭乗者がブレーキペダル37を踏込んで車両Cを停止させると、この車両Cの停止に基づきヒルホールド制御が実行される。この場合に、車両Cにおける車両前方への予期せぬ移動が発生し、路面状況によっては、車両Cが偏向してしまうことがある。ところが、本実施形態では、ヒルホールド制御の実行中において、車両Cの予期せぬ移動(すなわち、車両の車体加速度DVS≠「0(零)」)が検知されると共に、閾値KYR以上の車両のヨーレイトYRを検知した場合、車両偏向回避制御が実行される。
【0054】
すなわち、図7(a)に示すように、ホイールシリンダ36a〜36d内のブレーキ液圧を減圧させることにより、各車輪FR,FL,RR,RLに対するホイールシリンダ36a〜36dからの制動力が低下する。そのため、図7(b)(c)に示すように、各車輪FR,FL,RR,RLのロック状態が解除されるため、搭乗者によるステアリングホイール24の操作に基づく各前輪(転舵輪)FR,FLの転舵によって車両Cの偏向が補正される。すなわち、車両Cは、図7(b)に示す矢印方向に旋回する。
【0055】
したがって、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)各車輪FR,FL,RR,RLに制動力を付与することによる車両Cの停止に基づいてヒルホールド制御が実行される場合において、車両のヨーレイトYRが閾値KYR以上となったときに、車両Cが偏向したと判断される。そして、各車輪FR,FL,RR,RLのうち外輪側の転舵輪(図6(a)では左前輪FLであると共に、図7(a)では右前輪FR)を含む複数の車輪FR,FL,RR,RLに付与する制動力を低下させるように各ホイールシリンダ(制動手段)36a〜36dが制御される。すると、ステアリングホイール24の操舵によって車両Cの偏向が補正可能な状態になる。すなわち、ヒルホールド制御に基づき各車輪FR,FL,RR,RLがロックした状態での車両Cの予期せぬ移動に基づき車両Cが偏向した場合に、その車両Cの偏向の補正をアシストすることができる。
【0056】
(2)各車輪FR,FL,RR,RLがロックした状態で車両Cの予期せぬ移動が発生した場合に、全ての車輪FR,FL,RR,RLに対する各ホイールシリンダ36a〜36dからの制動力が低下するため、各車輪FR,FL,RR,RLのロックが解除される。したがって、搭乗者は、ステアリングホイール24を操舵することにより、車両Cの偏向を容易に補正することができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図8〜図10に従って説明する。なお、第2の実施形態は、車両偏向回避処理ルーチンの処理内容が第1の実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第1の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1の実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0057】
本実施形態における車両の制動力保持装置11は、電子制御装置16を備えている。この電子制御装置16は、CPU60、ROM61、及びRAM62などを備えたデジタルコンピュータと、各装置を駆動させるための駆動回路(図示略)とを主体として構成されている。ROM61には、液圧制御装置35(モータM、各電磁弁42〜49,53,57及び比例電磁弁50,54の駆動)を制御するための制御プログラム、及び閾値などが記憶されている。また、RAM62には、車両の制動力保持装置11の駆動中に適宜書き換えられる各種の情報が記憶されるようになっている。
【0058】
次に、本実施形態のCPU60が実行する制御処理ルーチンのうち、車両偏向回避処理ルーチンについて図8に基づき以下説明する。
さて、CPU60は、所定周期毎に車両偏向回避処理ルーチンを実行する。そして、この車両偏向回避処理ルーチンにおいて、CPU60は、ヒルホールド制御が実行中であるか否かを判定する(ステップS30)。そして、ステップS30の判定結果が否定判定である場合、CPU60は、ヒルホールド制御が実行されていないと判断し、車両偏向回避処理ルーチンを終了する。一方、ステップS30の判定結果が肯定判定である場合、CPU60は、ヒルホールド制御が実行されていると判断し、車体加速度センサSE9から受信した信号に基づき、車両の車体加速度DVSを検出する(ステップS31)。
【0059】
続いて、CPU60は、ステップS31にて検出した車両の車体加速度DVSの値が「0(零)」でないか否かを判定する(ステップS32)。そして、ステップS22の判定結果が否定判定(DVS=「0(零)」)であった場合、CPU60は、車両偏向回避処理ルーチンを終了する。一方、ステップS32の判定結果が肯定判定(DVS≠「0(零)」)である場合、CPU60は、ヨーレイトセンサSE8から受信した信号に基づき、車両のヨーレイトYRを検出する(ステップS33)。続いて、CPU60は、ステップS33にて検出した車両のヨーレイトYRが予め設定された閾値KYR以上であるか否かを判定する(ステップS34)。
【0060】
そして、ステップS34の判定結果が否定判定(YR<KYR)であった場合、CPU60は、車両偏向回避処理ルーチンを終了する。一方、ステップS34の判定結果が肯定判定(YR≧KYR)であった場合、CPU60は、第1車両偏向回避制御を実行する(ステップS35)。すなわち、CPU60は、各車輪FR,FL,RR,RLのうち転舵輪である前輪FR,FLに対応するホイールシリンダ36a,36b内のブレーキ液圧を減圧させるために、常開型の電磁弁42,46及び常閉型の電磁弁44,48を通電状態とする。
【0061】
続いて、CPU60は、ヨーレイトセンサSE8から受信した信号に基づき、車両のヨーレイトYRを検出し、このヨーレイトYRが閾値KYR未満になったか否かを判定する(ステップS36)。この判定結果が否定判定(YR≧KYR)である場合、CPU60は、判定結果が肯定判定となるまで、ステップS36の判定処理を繰り返し実行する。そして、ステップS36の判定結果が肯定判定(YR<KYR)となった場合、CPU60は、車両Cの偏向が補正されたものと判断し、第2車両偏向回避制御を実行する(ステップS37)。すなわち、CPU60は、各車輪FR,FL,RR,RLのうち非転舵輪である後輪RR,RLに対応するホイールシリンダ36c,36d内のブレーキ液圧を減圧させるために、常開型の電磁弁43,47及び常閉型の電磁弁45,49を通電状態とする。その後、CPU60は、車両偏向回避処理ルーチンを終了する。
【0062】
次に、本実施形態における車両の制動力保持方法について図9及び図10に基づき以下説明する。
さて、車両Cが低μ路を有する坂道を斜面上側に向けて走行している際に、搭乗者がブレーキペダル37を踏込んで車両Cを停止させると、この車両Cの停止に基づきヒルホールド制御が実行される。この場合に、車両Cにおける車両後方への予期せぬ移動が発生し、路面状況によっては、車両Cが偏向してしまう(すなわち、車両Cの向きが変わってしまう)ことがある。ところが、本実施形態では、ヒルホールド制御の実行中において、車両Cの予期せぬ移動(すなわち、車両の車体加速度DVS≠「0(零)」)が検知されると共に、閾値KYR以上の車両のヨーレイトYRを検知した場合、第1車両偏向回避制御が実行される。
【0063】
すなわち、図9(a)に示すように、転舵輪である前輪FR,FLに対応するホイールシリンダ36a,36b内のブレーキ液圧を減圧させることにより、前輪FR,FLに対するホイールシリンダ36a,36bからの制動力が低下する。そのため、図9(b)(c)に示すように、前輪FR,FLのロック状態が解除されるため、搭乗者によるステアリングホイール24の操舵に基づく各前輪FR,FLの転舵によって車両Cの偏向が補正される。すなわち、車両Cは、図9(b)に示す矢印方向に旋回する。
【0064】
そして、車両のヨーレイトYRが閾値KYR未満となると、車両Cの偏向の補正が完了したものとし、第2車両偏向回避制御が実行される。すなわち、図9(d)に示すように、非転舵輪である後輪RR,RLに対応するホイールシリンダ36c,36d内のブレーキ液圧を減圧させることにより、後輪RR,RLに対するホイールシリンダ36c、36dからの制動力が低下する。すると、後輪RR,RLのロック状態が解除される。
【0065】
次に、車両Cが低μ路を有する坂道を斜面下側に向けて走行している際に、搭乗者がブレーキペダル37を踏込んで車両Cを停止させると、この車両Cの停止に基づきヒルホールド制御が実行される。この場合に、車両Cにおける車両前方への予期せぬ移動が発生し、路面状況によっては、車両Cが偏向してしまうことがある。ところが、本実施形態では、ヒルホールド制御の実行中において、車両Cの予期せぬ移動(すなわち、車両の車体加速度DVS≠「0(零)」)が検知されると共に、閾値KYR以上の車両のヨーレイトYRを検知した場合、第1車両偏向回避制御が実行される。
【0066】
すなわち、図10(a)に示すように、転舵輪である前輪FR,FLに対応するホイールシリンダ36a,36b内のブレーキ液圧を減圧させることにより、前輪FR,FLに対するホイールシリンダ36a,36bからの制動力が低下する。そのため、図10(b)(c)に示すように、前輪FR,FLのロック状態が解除されるため、搭乗者によるステアリングホイール24の操舵に基づく各前輪FR,FLの転舵によって車両Cの偏向が補正される。すなわち、車両Cは、図10(b)に示す矢印方向に旋回する。
【0067】
そして、車両のヨーレイトYRが閾値KYR未満となると、車両Cの偏向の補正が完了したものとし、第2車両偏向回避制御が実行される。すなわち、図10(d)に示すように、非転舵輪である後輪RR,RLに対応するホイールシリンダ36c,36d内のブレーキ液圧を減圧させることにより、後輪RR,RLに対するホイールシリンダ36c、36dからの制動力が低下する。すると、後輪RR,RLのロック状態が解除される。
【0068】
本実施形態では、上記第1の実施形態の効果(1)に加え、さらに以下に示す効果をも得ることができる。
(3)各車輪FR,FL,RR,RLがロックした状態で車両Cの予期せぬ移動が発生した場合に、前輪(転舵輪)FR,FLに対する制動力のみを低下させる。そのため、搭乗者は、車両Cの制動力を維持しつつ、車両Cの偏向を補正することができる。
【0069】
(4)車両Cの偏向の補正後には全ての車輪FR,FL,RR,RLに対する各ホイールシリンダ(制動手段)36a〜36dからの制動力が低下した状態となるため、車両Cの速やかな発進に貢献できる。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を図11及び図12に従って説明する。なお、第3の実施形態は、車両偏向回避処理ルーチンにおける第1車両偏向回避制御及び第2車両偏向回避制御の処理内容が第2の実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第2の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第2の実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0070】
本実施形態における車両の制動力保持装置11は、電子制御装置16を備えている。この電子制御装置16は、CPU60、ROM61、及びRAM62などを備えたデジタルコンピュータと、各装置を駆動させるための駆動回路(図示略)とを主体として構成されている。ROM61には、液圧制御装置35(モータM、各電磁弁42〜49,53,57及び比例電磁弁50,54の駆動)を制御するための制御プログラム、及び閾値などが記憶されている。また、RAM62には、車両の制動力保持装置11の駆動中に適宜書き換えられる各種の情報が記憶されるようになっている。
【0071】
そして、CPU60は、所定周期毎に車両偏向回避処理ルーチンを実行する。この車両偏向回避処理ルーチンにおいて、CPU60は、ヒルホールド制御の実行中に、車両Cの予期せぬ移動に基づいて車両Cが偏向した(車両のヨーレイトYR≧閾値KYRになった)と判定した場合、第1車両偏向回避制御を実行する。すなわち、CPU60は、ヨーレイトセンサSE8からの信号に基づき検出した車両のヨーレイトYRから、車両Cが偏向した向きを特定し、右側の車輪FR,RR及び左側の車輪FL,RLのうちどちらが外輪となるか否かを判断する。そして、CPU60は、外輪と判断した車輪(例えば、右側の車輪FR,RR)に対応するホイールシリンダ(例えば、ホイールシリンダ36a,36c)内のブレーキ液圧を減圧させるために、常開型の電磁弁(例えば、電磁弁42,47)及び常閉型の電磁弁(例えば、電磁弁44,49)を通電状態とする。
【0072】
また、CPU60は、上述した第1車両偏向回避制御の実行後に検出された車両のヨーレイトYRが閾値KYR未満になったと判定した場合に、第2車両偏向回避制御を実行する。すなわち、CPU60は、内輪(例えば、左側の車輪FL,RL)に対応するホイールシリンダ(例えば、ホイールシリンダ36b,36d)内のブレーキ液圧を減圧させるために、常開型の電磁弁(例えば、電磁弁43,46)及び常閉型の電磁弁(例えば、電磁弁45,48)を通電状態とする。
【0073】
次に、本実施形態における車両の制動力保持方法について図11及び図12に基づき以下説明する。
さて、車両Cが低μ路を有する坂道を斜面上側に向けて走行している際に、搭乗者がブレーキペダル37を踏込んで車両Cを停止させると、この車両Cの停止に基づきヒルホールド制御が実行される。この場合に、車両Cにおける車両後方への予期せぬ移動が発生し、路面状況によっては、車両Cが偏向してしまう(例えば、車両Cの向きが右方に変わってしまう)ことがある。ところが、本実施形態では、ヒルホールド制御の実行中において、車両Cの予期せぬ移動(すなわち、車両の車体加速度DVS≠「0(零)」)が検知されると共に、閾値KYR以上の車両のヨーレイトYRを検知した場合、第1車両偏向回避制御が実行される。
【0074】
すなわち、図11(a)に示すように、車両Cの偏向を補正するときに外輪側となる左側の車輪FL,RLに対応するホイールシリンダ36b,36d内のブレーキ液圧を減圧させることにより、左側の車輪FL,RLに対するホイールシリンダ36b,36dからの制動力が低下する。そのため、図11(b)(c)に示すように、左前輪FLのロック状態が解除されるため、搭乗者によるステアリングホイール24の操舵に基づく左前輪FLの転舵によって車両Cの偏向が補正される。すなわち、車両Cは、図11(b)に示す矢印方向に旋回する。
【0075】
そして、車両のヨーレイトYRが閾値KYR未満となると、車両Cの偏向の補正が完了したものとし、第2車両偏向回避制御が実行される。すなわち、図11(d)に示すように、ホイールシリンダ36a,36cからの制動力がヒルホールド制御の開始時(実行時)から変更されていない右側の車輪FR,RRに対応するホイールシリンダ36a,36c内のブレーキ液圧が減圧される。すると、右側の車輪FR,RRに対するホイールシリンダ36a、36cからの制動力が低下し、右側の車輪FR,RRのロック状態が解除される。
【0076】
次に、車両Cが低μ路を有する坂道を斜面下側に向けて走行している際に、搭乗者がブレーキペダル37を踏込んで車両Cを停止させると、この車両Cの停止に基づきヒルホールド制御が実行される。この場合に、車両Cにおける車両前方への予期せぬ移動が発生し、路面状況によっては、車両Cが偏向してしまう(例えば、車両Cの向きが右方に変わってしまう)ことがある。ところが、本実施形態では、ヒルホールド制御の実行中において、車両Cの予期せぬ移動(すなわち、車両の車体加速度DVS≠「0(零)」)が検知されると共に、閾値KYR以上の車両のヨーレイトYRを検知した場合、第1車両偏向回避制御が実行される。
【0077】
すなわち、図12(a)に示すように、車両Cの偏向を補正するときに外輪側となる右側の車輪FR,RRに対応するホイールシリンダ36a,36c内のブレーキ液圧を減圧させることにより、右側の車輪FR,RRに対するホイールシリンダ36a,36cからの制動力が低下する。そのため、図12(b)(c)に示すように、転舵輪である右前輪FRのロック状態が解除されるため、搭乗者によるステアリングホイール24の操舵に基づく右前輪FRの転舵によって車両Cの偏向が補正される。すなわち、車両Cは、図12(b)に示す矢印方向に旋回する。
【0078】
そして、車両のヨーレイトYRが閾値KYR未満となると、車両Cの偏向の補正が完了したものとし、第2車両偏向回避制御が実行される。すなわち、図12(d)に示すように、ホイールシリンダ36a,36cからの制動力がヒルホールド制御の開始時(実行時)から変更されていない左側の車輪FL,RLに対応するホイールシリンダ36b,36d内のブレーキ液圧が減圧される。すると、左側の車輪FL,RLに対するホイールシリンダ36b、36dからの制動力が低下し、左側の車輪FL,RLのロック状態が解除される。
【0079】
本実施形態では、上記各実施形態の効果(1)(4)に加え、さらに以下に示す効果をも得ることができる。
(5)各車輪FR,FL,RR,RLがロックした状態で車両Cの予期せぬ移動が発生した場合に、車両Cの偏向を補正するときに外輪側となる車輪(例えば、右側の車輪FR,RR)に対する制動力のみを低下させる。そのため、搭乗者は、車両Cの制動力を維持しつつ、車両Cの偏向を補正することができる。
【0080】
なお、各実施形態は以下のような別の実施形態(別例)に変更してもよい。
・第2及び第3の実施形態において、第2車両偏向回避制御が実行されなくてもよい。
・各実施形態において、車両のヨーレイトYRは、車体加速度センサSE9からの信号に基づき検出された車両の車体加速度DVS、操舵角センサSE2からの信号に基づき検出されたステアリングホイール24の操舵角、及び横GセンサSE7からの信号に基づき検出された車両の横G(横方向への加速度)から算出されたものであってもよい。この場合、ヨーレイト検出手段は、車体加速度センサSE9、操舵角センサSE2、横GセンサSE7及びCPU60から構成されることになる。
【0081】
・各実施形態において、ブレーキペダルは、搭乗者の足で操作するいわゆるフットペダル式のブレーキペダル37ではなく、手動で操作可能なブレーキペダルであってもよい。
・各実施形態において、車両の制動力保持装置11は、車両前方に位置する他物(例えば、他の車両)との間隔(車間距離)を検出するためのレーダ(例えば、前方監視レーダや近距離レーダ)を備えた構成であってもよい。この場合、ヒルホールド制御中にレーダが車両前方に位置する他物との間隔が変化した(例えば、広くなった)ことを検知したときに、CPU60は車両の予期せぬ移動が発生したと判断する。
【0082】
・各実施形態において、前輪駆動車に搭載された車両の制動力保持装置11ではなく、後輪駆動車に搭載される車両の制動力保持装置に具体化してもよい。また、四輪駆動車に搭載される車両の制動力保持装置に具体化してもよい。
【0083】
・実施形態において、第1液圧回路33には右前輪FR用のホイールシリンダ36aと左前輪FL用のホイールシリンダ36bとが接続されると共に、第2液圧回路34には右後輪RR用のホイールシリンダ36cと左後輪RL用のホイールシリンダ36dとが接続されるような回路構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】第1の実施形態における車両の制動力保持装置のブロック図。
【図2】第1の実施形態における制動力付与機構のブロック図。
【図3】第1の実施形態におけるヒルホールド制御処理ルーチンを示すフローチャート。
【図4】第1の実施形態における車両偏向回避処理ルーチンを示すフローチャート。
【図5】(a)は車両の偏向が開始した様子を示す模式図、(b)は車両が偏向した状態を示す模式図。
【図6】(a)は第1の実施形態において車両が車両後方に移動した際に車両偏向回避制御が実行された状態を示す模式図、(b)は前輪が転舵している様子を示す模式図、(c)は車両の偏向が補正された状態を示す模式図。
【図7】(a)は第1の実施形態において車両が車両前方に移動した際に車両偏向回避制御が実行された状態を示す模式図、(b)は前輪が転舵している様子を示す模式図、(c)は車両の偏向が補正された状態を示す模式図。
【図8】第2の実施形態における車両偏向回避処理ルーチンを示すフローチャート。
【図9】(a)は第2の実施形態において車両が車両後方に移動した際に第1車両偏向回避制御が実行された状態を示す模式図、(b)は前輪が転舵している様子を示す模式図、(c)は車両の偏向が補正された状態を示す模式図、(d)は第2車両偏向回避制御が実行された状態を示す模式図。
【図10】(a)は第2の実施形態において車両が車両前方に移動した際に第1車両偏向回避制御が実行された状態を示す模式図、(b)は前輪が転舵している様子を示す模式図、(c)は車両の偏向が補正された状態を示す模式図、(d)は第2車両偏向回避制御が実行された状態を示す模式図。
【図11】(a)は第3の実施形態において車両が車両後方に移動した際に第1車両偏向回避制御が実行された状態を示す模式図、(b)は前輪が転舵している様子を示す模式図、(c)は車両の偏向が補正された状態を示す模式図、(d)は第2車両偏向回避制御が実行された状態を示す模式図。
【図12】(a)は第3の実施形態において車両が車両前方に移動した際に第1車両偏向回避制御が実行された状態を示す模式図、(b)は前輪が転舵している様子を示す模式図、(c)は車両の偏向が補正された状態を示す模式図、(d)は第2車両偏向回避制御が実行された状態を示す模式図。
【符号の説明】
【0085】
11…車両の制動力保持装置、36a〜36d…ホイールシリンダ(制動手段)、37…ブレーキペダル、60…CPU(ヨーレイト検出手段、ヨーレイト判定手段、車輪ロック判定手段、制御手段)、C…車両、FR,FL…前輪(転舵輪)、KYR…閾値、RR,RL…後輪、SE2〜SE6…車輪速度センサ(車輪ロック判定手段)、SE8…ヨーレイトセンサ(ヨーレイト検出手段)、YR…車両のヨーレイト。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキペダルの操作により停止車両の各車輪に付与されている制動力を前記ブレーキペダルの操作解消後においても保持させる車両の制動力保持装置、及び車両の制動力保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、坂路などの斜面上に車両が停止した場合に、搭乗者がブレーキペダルの踏込み操作を解消すると、各車輪に対する制動力が急激に低下するため、斜面の傾斜方向下側への車両の予期せぬ移動(すなわち、車両のずり下がり)が発生する。こうした車両の予期せぬ移動が発生した場合には、坂道発進操作等の車両操作に対する搭乗者の余裕を低下させてしまうおそれがあった。そこで、従来から、ブレーキペダルの踏込み操作の解消後においても停止車両の車輪に付与されている制動力を保持させて車両の予期せぬ移動の発生を抑制する所謂ヒルホールド制御を実行する車両の制動力保持装置、及び車両の制動力保持方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
すなわち、特許文献1に記載の車両の制動力保持装置では、車両の走行時に搭乗者によるブレーキペダルの踏込み操作がなされ、その踏込み操作に基づき車両が停止した場合において、その後にブレーキペダルの踏込み操作が解消されたときでも、ヒルホールド制御により車両の各車輪がロックされるようになっている。そのため、ブレーキペダルの踏込み操作により車両が坂路などの斜面に停止している場合において、そのブレーキペダルの踏込み操作が解消された場合でも、ヒルホールド制御が実行されることにより停止車両の各車輪に付与されている制動力が保持される結果、車両の予期せぬ移動の発生が抑制されるようになっている。なお、ヒルホールド制御は、車両を発進させるためにアクセルぺダルが操作された場合に終了するようになっている。
【特許文献1】特開昭59−179439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両が低μ路(例えば雪道)の斜面上に停止している場合、その斜面の傾斜度合いによっては、車両の予期せぬ移動が発生して車両を偏向させてしまうことがある。こうした場合、ヒルホールド制御を実行する制動力保持装置を搭載していない車両にあっては、ブレーキペダルの踏込み操作を緩和させることにより、車両を停止させていた各車輪のロック状態が解除される結果、ステアリングホイールを操作して車両の偏向状態を補正することができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の制動力保持装置を搭載した車両では、上述したヒルホールド制御が実行される結果、停止している車両の各車輪がロック状態にあることから、車両の偏向をステアリングホイールの操作によって補正することができず、結果として、車両操作に対する搭乗者の余裕を低下させてしまうおそれがあった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。その目的は、ヒルホールド制御に基づき各車輪がロックした状態での車両の予期せぬ移動に基づき車両が偏向した場合に、その車両の偏向の補正をアシストすることができる車両の制動力保持装置及び車両の制動力保持方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、車両の制動力保持装置にかかる請求項1に記載の発明は、ブレーキペダル(37)の操作により停止した車両(C)の各車輪(FR,FL,RR,RL)に制動手段(36a,36b,36c,36d)から付与されている制動力を前記ブレーキペダル(37)の操作が解消された後においても保持させるヒルホールド制御を実行する車両の制動力保持装置(11)において、前記車両(C)のヨーレイト(YR)を検出するヨーレイト検出手段(SE8,60)と、該ヨーレイト検出手段(SE8,60)により検出された車両(C)のヨーレイト(YR)が予め設定された閾値(KYR)以上であるか否かを判定するヨーレイト判定手段(60)と、前記制動手段(36a,36b,36c,36d)から制動力が付与されることにより前記各車輪(FR,FL,RR,RL)がロック状態となっているか否かを判定する車輪ロック判定手段(60)と、該車輪ロック判定手段(60)による判定結果が肯定判定であると共に、前記ヨーレイト判定手段(60)による判定結果が肯定判定である場合に、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち外輪側の転舵輪(FR,FL)を含む複数の車輪に付与される制動力を前記ヒルホールド制御開始時から低下させるように前記制動手段(36a,36b,36c,36d)を制御する制御手段(60)とを備えたことを要旨とする。
【0008】
上記構成では、ヒルホールド制御が実行された状態で停止している車両のヨーレイトが閾値以上となったときに、車両が偏向したと判断される。そして、各車輪のうち外輪側の転舵輪を含む複数の車輪に付与する制動力を低下させるように制動手段が制御され、ステアリングホイールの操舵によって車両の偏向が補正可能な状態になる。すなわち、ヒルホールド制御に基づき各車輪がロックした状態での車両の予期せぬ移動に基づき車両が偏向した場合に、その車両の偏向の補正をアシストすることができるようになる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両の制動力保持装置において、前記制御手段(60)は、前記車輪ロック判定手段(60)による判定結果が肯定判定であると共に、前記ヨーレイト判定手段(60)による判定結果が肯定判定である場合に、全ての車輪(FR,FL,RR,RL)に付与する制動力を前記ヒルホールド制御開始時から低下させるように前記制動手段(36a,36b,36c,36d)を制御することを要旨とする。
【0010】
上記構成では、各車輪がロックした状態で車両の予期せぬ移動が発生した場合に、全ての車輪に対する制動手段からの制動力が低下するため、各車輪のロック状態が解除される。したがって、搭乗者は、車両の偏向を容易に補正することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の車両の制動力保持装置において、前記制御手段(60)は、前記車輪ロック判定手段(60)による判定結果が肯定判定であると共に、前記ヨーレイト判定手段(60)による判定結果が肯定判定である場合に、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち全ての転舵輪(FR,FL)に付与する制動力を前記ヒルホールド制御開始時から低下させるように前記制動手段(36a,36b,36c,36d)を制御することを要旨とする。
【0012】
上記構成では、各車輪がロックした状態で車両の予期せぬ移動が発生した場合に、転舵輪に対する制動力のみを低下させる。そのため、搭乗者は、車両の制動力を維持しつつ、車両の偏向を補正することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の車両の制動力保持装置において、前記制御手段(60)は、前記車輪ロック判定手段(60)による判定結果が肯定判定であると共に、前記ヨーレイト判定手段(60)による判定結果が肯定判定である場合に、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち車両(C)の偏向を補正するときに外輪側となる車輪に付与する制動力を、前記ヒルホールド制御開始時から低下させるように前記制動手段(36a,36b,36c,36d)を制御することを要旨とする。
【0014】
上記構成では、各車輪がロックした状態で車両の予期せぬ移動が発生した場合に、車両の偏向を補正するときに外輪側となる車輪に対する制動力のみを低下させる。そのため、搭乗者は、車両の制動力を維持しつつ、車両の偏向を補正することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は請求項4に記載の車両の制動力保持装置において、前記制御手段(60)は、前記ヨーレイト判定手段(60)による判定結果が肯定判定から否定判定に切り替わった場合に、前記制動手段(36a,36b,36c,36d)によって付与される制動力が前記ヒルホールド制御開始時から変更されていない車輪(FR,FL,RR,RL)に対する制動力を、前記判定結果の切り替わり時点から低下させるように前記制動手段(36a,36b,36c,36d)を制御することを要旨とする。
【0016】
上記構成では、車両の偏向の補正後にはヒルホールド制御開始時から制動力が低下させられていない車輪に対する制動手段からの制動力も低下した状態となるため、車両の速やかな発進に貢献できる。
【0017】
一方、車両の制動力保持方法にかかる請求項6に記載の発明は、ブレーキペダル(37)の操作により停止した車両(C)の各車輪(FR,FL,RR,RL)に制動手段(36a,36b,36c,36d)から付与されている制動力を前記ブレーキペダル(37)の操作が解消された後においても保持させるヒルホールド制御を実行する車両の制動力保持方法において、前記制動手段(36a,36b,36c,36d)から付与される制動力により前記各車輪(FR,FL,RR,RL)がロック状態となっている場合において、車両(C)のヨーレイト(YR)が予め設定された閾値(KYR)以上であるときに、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち外輪側の転舵輪(FR,FL)を含む複数の車輪に付与する制動力を前記ヒルホールド制御開始時から低下させるようにしたことを要旨とする。
【0018】
上記構成では、請求項1に記載の発明の場合と同様の作用効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1〜図7に従って説明する。なお、以下における本明細書中の説明においては、車両の進行方向(前進方向)を前方(車両前方)として説明する。また、特に説明がない限り、以下の記載における左右方向は、車両進行方向における左右方向と一致するものとする。
【0020】
図1に示すように、本実施形態における車両の制動力保持装置11は、複数(本実施形態では4つ)ある車輪(右前輪FR、左前輪FL、右後輪RR及び左後輪RL)のうち、前輪FR,FLが駆動輪として機能する車両(いわゆる前輪駆動車)に搭載されている。この制動力保持装置11は、駆動源となるエンジン12で発生した駆動力を前輪FR,FLに伝達する駆動力伝達機構13と、前輪FR,FLを転舵輪(「操舵輪」ともいう。)として転舵させるための前輪転舵機構14と、各車輪FR,FL,RR,RLに制動力を付与するための制動力付与機構15とを備えている。また、この制動力保持装置11は、上記各機構13,14,15を車両の走行状態に応じて適宜に制御するための電子制御装置(「ECU」ともいう。)16を備えている。なお、エンジン12は、車両の搭乗者によるアクセルぺダル17の踏込み操作に対応した駆動力を発生させる。
【0021】
駆動力伝達機構13には、吸気管18内の吸気通路18aの開口断面積を可変させるスロットル弁19の開度を制御するためのスロットル弁アクチュエータ(例えばDCモータ)20と、エンジン12の吸気ポート(図示略)近傍に燃料を噴射するインジェクタを有する燃料噴射装置21とが設けられている。また、駆動力伝達機構13には、エンジン12の出力軸に接続されたトランスミッション22と、このトランスミッション22から伝達された駆動力を適宜配分して前輪FL,FRに伝達するディファレンシャルギヤ23とが設けられている。さらに、駆動力伝達機構13には、アクセルぺダル17の踏込み量(開度)を検出するためのアクセル開度センサSE1が設けられている。
【0022】
前輪転舵機構14には、ステアリングホイール24と、ステアリングホイール24が固定されたステアリングシャフト25と、ステアリングシャフト25に連結された転舵アクチュエータ26とが設けられている。また、前輪転舵機構14には、転舵アクチュエータ26により車両の左右方向に移動自在なタイロッドと、このタイロッドの移動により前輪FL,FRを転舵させるリンクとを含んだリンク機構部27が設けられている。さらに、前輪転舵機構14には、ステアリングホイール24の操舵角を検出するための操舵角センサSE2が設けられている。
【0023】
次に、制動力付与機構15について図2に基づき以下説明する。
図2に示すように、本実施形態の制動力付与機構15は、マスタシリンダ30及びブースタ31を有する液圧発生装置32と、2つの液圧回路33,34を有する液圧制御装置(図2では二点鎖線で示す。)35とを備えている。各液圧回路33,34は、液圧発生装置32に接続されると共に、各車輪FR,FL,RR,RLに対応して設けられたホイールシリンダ(制動手段)36a,36b,36c,36dに接続されている。すなわち、右前輪FRにはホイールシリンダ36aが対応すると共に、左前輪FLにはホイールシリンダ36bが対応している。また、右後輪RRにはホイールシリンダ36cが対応すると共に、左後輪RLにはホイールシリンダ36dが対応している。
【0024】
液圧発生装置32には、ブレーキペダル37が設けられており、このブレーキペダル37が車両の搭乗者によって踏込み操作されたことに基づき、液圧発生装置32のマスタシリンダ30及びブースタ31が駆動するようになっている。また、マスタシリンダ30には、2つの出力ポート30a,30bが設けられており、各出力ポート30a,30bのうち一方の出力ポート30aには第1液圧回路33が接続されると共に、他方の出力ポート30bには第2液圧回路34が接続されている。さらに、液圧発生装置32には、ブレーキペダル37が操作された際に電子制御装置16に向けて信号を送信するブレーキスイッチSW1が設けられている。
【0025】
液圧制御装置35には、第1液圧回路33内のブレーキ液圧を昇圧するためのポンプ38と、第2液圧回路34内のブレーキ液圧を昇圧するためのポンプ39と、各ポンプ38,39を同時に駆動させるモータMとが設けられている。また、各液圧回路33,34上にはブレーキオイルが貯留されるリザーバ40,41が設けられており、各リザーバ40,41内のブレーキオイルは、ポンプ38,39の駆動に基づき液圧回路33,34内に供給されるようになっている。さらに、各液圧回路33,34には、マスタシリンダ30内のブレーキ液圧を検出するための液圧センサPS1,PS2が設けられている。
【0026】
第1液圧回路33には、右前輪FRに対応するホイールシリンダ36aに接続されるホイールシリンダ36a用(右前輪FR用)の右前輪用経路33aと、左後輪RLに対応するホイールシリンダ36dに接続されるホイールシリンダ36d用(左後輪RL用)の左後輪用経路33bとが形成されている。そして、これら各経路33a,33b上には、常開型の電磁弁42,43と常閉型の電磁弁44,45とがそれぞれ設けられている。
【0027】
同様に、第2液圧回路34には、左前輪FLに対応するホイールシリンダ36bに接続されるホイールシリンダ36b用(左前輪FL用)の左前輪用経路34aと、右後輪RRに対応するホイールシリンダ36cに接続されるホイールシリンダ36c用(右後輪RR用)の右後輪用経路34bとが形成されている。そして、これら各経路34a,34b上には、常開型の電磁弁46,47と常閉型の電磁弁48,49とがそれぞれ設けられている。
【0028】
また、第1液圧回路33において各経路33a,33bに分岐された部位よりもマスタシリンダ30側には、常開型の比例電磁弁50が接続されると共に、この比例電磁弁50と並列関係をなすリリーフ弁51が接続されている。そして、比例電磁弁50とリリーフ弁51とにより比例差圧弁52が構成されている。比例差圧弁52は、電子制御装置16による制御に基づき、比例差圧弁52よりもマスタシリンダ30側とホイールシリンダ36a,36d側とで液圧差(ブレーキ液圧の差)を発生させることができる。なお、この液圧差の最大値は、リリーフ弁51を構成するばね51aの付勢力に基づく値となる。また、第1液圧回路33には、リザーバ40とポンプ38との間からマスタシリンダ30側に向けて分岐された分岐液圧路33cが形成されており、この分岐液圧路33c上には常閉型の電磁弁53が接続されている。
【0029】
同様に、第2液圧回路34において各経路34a,34bに分岐された部位よりもマスタシリンダ30側には、常開型の比例電磁弁54が接続されると共に、この比例電磁弁54と並列関係をなすリリーフ弁55が接続されている。そして、比例電磁弁54とリリーフ弁55とにより比例差圧弁56が構成されている。比例差圧弁56は、電子制御装置16による制御に基づき、比例差圧弁56よりもマスタシリンダ30側とホイールシリンダ36b,36c側とで液圧差(ブレーキ液圧の差)を発生させることができる。なお、この液圧差の最大値は、リリーフ弁55を構成するばね55aの付勢力に基づく値となる。また、第2液圧回路34には、リザーバ41とポンプ39との間からマスタシリンダ30側に向けて分岐された分岐液圧路34cが形成されており、この分岐液圧路34c上には常閉型の電磁弁57が接続されている。
【0030】
ここで、上記各電磁弁42〜49のソレノイドコイルが通電状態にある場合及び非通電状態にある場合における各ホイールシリンダ36a〜36d内のブレーキ液圧の変化について説明する。なお、以下の説明においては、各比例電磁弁50,54が閉じ状態であると共に、分岐液圧路33c,34c上の電磁弁53,57が閉じ状態であるものとする。
【0031】
まず、各電磁弁42〜49のソレノイドコイルが全て非通電状態にある場合には、常開型の電磁弁42,43,46,47は開き状態のままであると共に、常閉型の電磁弁44,45,48,49は閉じ状態のままである。そのため、上記ポンプ38,39が駆動している場合には、リザーバ40,41内のブレーキオイルが各経路33a,33b,34a,34bを介して各ホイールシリンダ36a〜36d内に流入し、各ホイールシリンダ36a〜36d内のブレーキ液圧は上昇することになる。
【0032】
一方、各電磁弁42〜49のソレノイドコイルが全て通電状態にある場合には、常開型の電磁弁42,43,46,47が閉じ状態となると共に、常閉型の電磁弁44,45,48,49が開き状態となる。そのため、各ホイールシリンダ36a〜36d内からブレーキオイルが各経路33a,33b,34a,34bを介してリザーバ40,41へと流出し、各ホイールシリンダ36a〜36d内のブレーキ液圧は降下することになる。
【0033】
そして、各電磁弁42〜49のうち常開型の電磁弁42,43,46,47のソレノイドコイルのみが通電状態にある場合には、全ての電磁弁42〜49が閉じ状態となる。そのため、各経路33a,33b,34a,34bを介したブレーキオイルの流動が規制される結果、各ホイールシリンダ36a〜36d内のブレーキ液圧はその液圧レベルが保持されることになる。
【0034】
図1に示すように、電子制御装置16は、制御手段としてのCPU60、ROM61、及びRAM62などを備えたデジタルコンピュータと、各装置を駆動させるための駆動回路(図示略)とを主体として構成されている。ROM61には、液圧制御装置35(モータM、各電磁弁42〜49,53,57及び比例電磁弁50,54の駆動)を制御するための制御プログラム、及び閾値などが記憶されている。また、RAM62には、車両の制動力保持装置11の駆動中に適宜書き換えられる各種の情報が記憶されるようになっている。
【0035】
また、電子制御装置16の入力側インターフェース(図示略)には、上記ブレーキスイッチSW1、液圧センサPS1,PS2、アクセル開度センサSE1、及び操舵角センサSE2がそれぞれ接続されている。また、入力側インターフェースには、各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度を検出するための車輪速度センサSE3,SE4,SE5,SE6、及び実際に車両に働く横方向加速度(いわゆる「横G」)を検出するための横GセンサSE7がそれぞれ接続されている。さらに、入力側インターフェースには、実際に車両に働くヨーレイト(Yaw Rate)を検出するためのヨーレイトセンサSE8、及び車両の車体加速度を検出するための車体加速度センサ(「前後Gセンサ」ともいう。)SE9が接続されている。すなわち、CPU60は、ブレーキスイッチSW1、液圧センサPS1,PS2、及び上記各種センサSE1〜SE9からの各信号を受信するようになっている。
【0036】
一方、電子制御装置16の出力側インターフェース(図示略)には、各ポンプ38,39を駆動させるためのモータM、各電磁弁42〜49,53,57及び比例電磁弁50,54が接続されている。そして、CPU60は、上記スイッチSW1及び各センサPS1,PS2,SE1〜SE9からの入力信号に基づき、モータM、各電磁弁42〜49,53,57及び比例電磁弁50,54の動作を個別に制御するようになっている。
【0037】
次に、本実施形態のCPU60が実行する制御処理ルーチンについて、図3及び図4に示すフローチャートに基づき以下説明する。図3には後述するヒルホールド制御の実行の有無を設定するためのヒルホールド制御処理ルーチンが示されると共に、図4には後述する車両偏向回避制御の実行の有無を設定するための車両偏向回避処理ルーチンが示されている。
【0038】
最初に図3に示すヒルホールド制御処理ルーチンについて説明する。
さて、CPU60は、所定周期毎にヒルホールド制御処理ルーチンを実行する。そして、このヒルホールド制御処理ルーチンにおいて、CPU60は、ブレーキスイッチSW1からの信号を受信したか否かを判定する(ステップS10)。すなわち、CPU60は、搭乗者がブレーキペダル37を踏み込み操作しているか否かを判定する。そして、ステップS10の判定結果が否定判定である場合、CPU60は、その処理を後述するステップS14に移行する。一方、ステップS10の判定結果が肯定判定である場合、CPU60は、車体加速度センサSE9から受信した信号に基づき、車両の車体加速度DVSを検出すると共に、各車輪速度センサSE3〜SE6から受信した信号に基づき、各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度VWをそれぞれ検出する(ステップS11)。
【0039】
続いて、CPU60は、ステップS11にて検出した車両の車体加速度DVSの値、及びステップS11にて検出した各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度VWの値がそれぞれ「0(零)」であるか否かを判定する(ステップS12)。すなわち、CPU60は、搭乗者によるブレーキペダル37の踏込み操作に基づき、各車輪FR,FL,RR,RLに対して各ホイールシリンダ36a〜36dから制動力が付与されることにより、各車輪FR,FL,RR,RLがロック状態となる結果、車両が停止したか否かを判定する。この点で、本実施形態では、CPU60が、車輪ロック判定手段としても機能する。
【0040】
そして、ステップS12の判定結果が否定判定である場合、CPU60は、車両が走行中である(すなわち、車両がまだ停止していない)ものと判断し、ヒルホールド制御処理ルーチンを終了する。一方、ステップS12の判定結果が肯定判定である場合、CPU60は、車両が停止したものと判断し、ヒルホールド制御を実行する(ステップS13)。なお、CPU60は、ヒルホールド制御を実行する際に、図示しないヒルホールドフラグを「ON」にセットする。
【0041】
ここで、ヒルホールド制御とは、ブレーキペダル37の踏込み操作に基づいて車両が停止した場合に、そのブレーキペダル37の踏込み操作が解消されたとしても各車輪FR,FL,RR,RLのロック状態が保持されるように、各車輪FR,FL,RR,RLに各ホイールシリンダ36a〜36dが付与している制動力を保持する制御である。すなわち、ヒルホールド制御が実行された場合、CPU60は、各液圧回路33,34上の常開型の電磁弁42,43,46,47を通電状態とすることにより、各ホイールシリンダ36a〜36d内のブレーキ液圧を保持するようになっている。
【0042】
また、ヒルホールド制御は、ブレーキペダル37の踏込み操作が解消されてから予め設定された所定時間(例えば2秒程度)の間実行されるようになっている。すなわち、ブレーキペダル37の踏込み操作が解消されてから所定時間が経過した場合には、ヒルホールド制御が自動的に終了し、常開型の電磁弁42,43,46,47が非通電状態になると共に、常閉型の電磁弁44,45,48,49を通電状態になる結果、各ホイールシリンダ36a〜36d内のブレーキ液圧が減圧されるようになっている。換言すると、CPU60は、各ホイールシリンダ36a〜36dにより各車輪FR,FL,RR,RLに付与される制動力を低下させることにより、各車輪FR,FL,RR,RLのロック状態を解除するようになっている。なお、CPU60は、ヒルホールド制御が終了した際に、ヒルホールドフラグを「OFF」にセットする。その後、CPU60は、ヒルホールド制御処理ルーチンを終了する。
【0043】
また、ステップS14において、CPU60は、アクセル開度センサSE1から受信した信号に基づき、アクセルぺダル17が操作されているか否かを判定する。そして、ステップS14の判定結果が否定判定である場合、CPU60は、ヒルホールド制御処理ルーチンを終了する(ステップS15)。一方、ステップS14の判定結果が肯定判定である場合、CPU60は、搭乗者に車両を走行させる意思があるものと判断し、ヒルホールド制御を終了すると共に、ヒルホールドフラグを「OFF」にセットする。すなわち、CPU60は、アクセルぺダル17が操作された場合、ブレーキペダル37の踏込み操作が解消されてからの経過時間が所定時間未満であっても、ヒルホールド制御を終了する。その後、CPU60は、ヒルホールド制御処理ルーチンを終了する。
【0044】
次に図4に示す車両偏向回避処理ルーチンについて説明する。
さて、CPU60は、所定周期毎に車両偏向回避処理ルーチンを実行する。そして、この車両偏向回避処理ルーチンにおいて、CPU60は、前述したヒルホールド制御が実行中であるか否かを判定する(ステップS20)。すなわち、CPU60は、ヒルホールドフラグが「ON」にセットされているか否かを判定する。そして、ステップS20の判定結果が否定判定である場合、CPU60は、ヒルホールド制御が実行されていない(ヒルホールドフラグ=「OFF」)と判断し、車両偏向回避処理ルーチンを終了する。
【0045】
一方、ステップS20の判定結果が肯定判定である場合、CPU60は、ヒルホールド制御が実行されている(ヒルホールドフラグ=「ON」)と判断し、車体加速度センサSE9から受信した信号に基づき、車両の車体加速度DVSを検出する(ステップS21)。続いて、CPU60は、ステップS21にて検出した車両の車体加速度DVSの値が「0(零)」でないか否かを判定する(ステップS22)。すなわち、CPU60は、ヒルホールド制御の実行に基づき各車輪FR,FL,RR,RLがロックした状態において、車両が移動(いわゆる「予期せぬ移動」)しているか否かを判断する。そして、ステップS22の判定結果が否定判定(DVS=「0(零)」)であった場合、CPU60は、ヒルホールド制御に基づき車両が停止しているものと判断し、車両偏向回避処理ルーチンを終了する。
【0046】
一方、ステップS22の判定結果が肯定判定(DVS≠「0(零)」)である場合、CPU60は、ヨーレイトセンサSE8から受信した信号に基づき、車両のヨーレイトYRを検出する(ステップS23)。この点で、本実施形態では、ヨーレイトセンサSE8及びCPU60が、ヨーレイト検出手段として機能する。続いて、CPU60は、ステップS23にて検出した車両のヨーレイトYRが予め設定された閾値KYR以上であるか否かを判定する(ステップS24)。この点で、本実施形態では、CPU60が、ヨーレイト判定手段としても機能する。なお、閾値KYRは、車両が偏向しているか否かを判断するための値であり、実験やシミュレーションなどによって設定される。
【0047】
そして、ステップS24の判定結果が否定判定(YR<KYR)であった場合、CPU60は、車両が偏向していない又は車両の偏向が許容範囲であるものと判断し、車両偏向回避処理ルーチンを終了する。一方、ステップS24の判定結果が肯定判定(YR≧KYR)であった場合、CPU60は、車両の予期せぬ移動に基づく車両の偏向が許容範囲を超えてしまったと判断し、車両偏向回避制御を実行する(ステップS25)。なお、以降の記載において、ヨーレイトYRが閾値KYR以上となった場合のことを、「車両が偏向した」と示すものとする。
【0048】
ここで、車両偏向回避制御とは、ヒルホールド制御の実行中に、車両が偏向してしまった場合に、その車両の偏向の補正をアシストするために、各車輪FR,FL,RR,RLに付与されている各ホイールシリンダ36a〜36dからの制動力を低下させる制御である。すなわち、車両偏向回避制御が実行された場合、CPU60は、常開型の電磁弁42,43,46,47を非通電状態とすると共に、常閉型の電磁弁44,45,48,49を通電状態とすることにより、各ホイールシリンダ36a〜36d内のブレーキ液圧を減圧させる。そのため、各車輪FR,FL,RR,RLのロック状態が解除される結果、搭乗者によるステアリングホイール24の操舵に基づき、車両の偏向の補正が可能になる。
【0049】
その後、CPU60は、車両偏向回避処理ルーチンを終了する。
次に、本実施形態における車両の制動力保持方法について図5〜図7に基づき以下説明する。
【0050】
さて、車両が低μ路(車輪との摩擦係数(μ値)が低い路面)を有する坂道を斜面上側に向けて走行している際に、搭乗者がブレーキペダル37を踏込んで車両を停止させると、この車両の停止に基づきヒルホールド制御が実行される。そのため、その後に、ブレーキペダル37の踏込み操作が解消されても、所定時間の間は各車輪FR,FL,RR,RLに対する各ホイールシリンダ36a〜36dからの制動力が保持される。この際に、車両は低μ路上に停止しているため、図5(a)(b)に示すように、車両Cにおける車両後方への予期せぬ移動(いわゆる「ずり下がり」)が発生することがある。特に、路面状況によっては、車両Cが偏向してしまう(すなわち、車両Cの向きが変わってしまう)ことがある。
【0051】
そこで、本実施形態では、ヒルホールド制御の実行中において、車両Cの予期せぬ移動(すなわち、車両の車体加速度DVS≠「0(零)」)が検知されると共に、閾値KYR以上の車両のヨーレイトYRを検知した場合、車両偏向回避制御が実行される。すなわち、図6(a)に示すように、ホイールシリンダ36a〜36d内のブレーキ液圧を減圧させることにより、各車輪FR,FL,RR,RLに対するホイールシリンダ36a〜36dからの制動力が低下する。そのため、図6(b)(c)に示すように、各車輪FR,FL,RR,RLのロック状態が解除されるため、搭乗者によるステアリングホイール24の操作に基づく各前輪(転舵輪)FR,FLの転舵によって車両Cの偏向が補正される。すなわち、車両Cは、図6(b)に示す矢印方向に旋回する。
【0052】
その後、搭乗者がアクセルぺダル17を踏込んだ際に、各車輪FR,FL,RR,RLに対する各ホイールシリンダ36a〜36dからの制動力が低下した状態であるため、車両Cは速やかに発進することになる。
【0053】
次に、車両Cが低μ路を有する坂道を斜面下側に向けて走行している際に、搭乗者がブレーキペダル37を踏込んで車両Cを停止させると、この車両Cの停止に基づきヒルホールド制御が実行される。この場合に、車両Cにおける車両前方への予期せぬ移動が発生し、路面状況によっては、車両Cが偏向してしまうことがある。ところが、本実施形態では、ヒルホールド制御の実行中において、車両Cの予期せぬ移動(すなわち、車両の車体加速度DVS≠「0(零)」)が検知されると共に、閾値KYR以上の車両のヨーレイトYRを検知した場合、車両偏向回避制御が実行される。
【0054】
すなわち、図7(a)に示すように、ホイールシリンダ36a〜36d内のブレーキ液圧を減圧させることにより、各車輪FR,FL,RR,RLに対するホイールシリンダ36a〜36dからの制動力が低下する。そのため、図7(b)(c)に示すように、各車輪FR,FL,RR,RLのロック状態が解除されるため、搭乗者によるステアリングホイール24の操作に基づく各前輪(転舵輪)FR,FLの転舵によって車両Cの偏向が補正される。すなわち、車両Cは、図7(b)に示す矢印方向に旋回する。
【0055】
したがって、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)各車輪FR,FL,RR,RLに制動力を付与することによる車両Cの停止に基づいてヒルホールド制御が実行される場合において、車両のヨーレイトYRが閾値KYR以上となったときに、車両Cが偏向したと判断される。そして、各車輪FR,FL,RR,RLのうち外輪側の転舵輪(図6(a)では左前輪FLであると共に、図7(a)では右前輪FR)を含む複数の車輪FR,FL,RR,RLに付与する制動力を低下させるように各ホイールシリンダ(制動手段)36a〜36dが制御される。すると、ステアリングホイール24の操舵によって車両Cの偏向が補正可能な状態になる。すなわち、ヒルホールド制御に基づき各車輪FR,FL,RR,RLがロックした状態での車両Cの予期せぬ移動に基づき車両Cが偏向した場合に、その車両Cの偏向の補正をアシストすることができる。
【0056】
(2)各車輪FR,FL,RR,RLがロックした状態で車両Cの予期せぬ移動が発生した場合に、全ての車輪FR,FL,RR,RLに対する各ホイールシリンダ36a〜36dからの制動力が低下するため、各車輪FR,FL,RR,RLのロックが解除される。したがって、搭乗者は、ステアリングホイール24を操舵することにより、車両Cの偏向を容易に補正することができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図8〜図10に従って説明する。なお、第2の実施形態は、車両偏向回避処理ルーチンの処理内容が第1の実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第1の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1の実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0057】
本実施形態における車両の制動力保持装置11は、電子制御装置16を備えている。この電子制御装置16は、CPU60、ROM61、及びRAM62などを備えたデジタルコンピュータと、各装置を駆動させるための駆動回路(図示略)とを主体として構成されている。ROM61には、液圧制御装置35(モータM、各電磁弁42〜49,53,57及び比例電磁弁50,54の駆動)を制御するための制御プログラム、及び閾値などが記憶されている。また、RAM62には、車両の制動力保持装置11の駆動中に適宜書き換えられる各種の情報が記憶されるようになっている。
【0058】
次に、本実施形態のCPU60が実行する制御処理ルーチンのうち、車両偏向回避処理ルーチンについて図8に基づき以下説明する。
さて、CPU60は、所定周期毎に車両偏向回避処理ルーチンを実行する。そして、この車両偏向回避処理ルーチンにおいて、CPU60は、ヒルホールド制御が実行中であるか否かを判定する(ステップS30)。そして、ステップS30の判定結果が否定判定である場合、CPU60は、ヒルホールド制御が実行されていないと判断し、車両偏向回避処理ルーチンを終了する。一方、ステップS30の判定結果が肯定判定である場合、CPU60は、ヒルホールド制御が実行されていると判断し、車体加速度センサSE9から受信した信号に基づき、車両の車体加速度DVSを検出する(ステップS31)。
【0059】
続いて、CPU60は、ステップS31にて検出した車両の車体加速度DVSの値が「0(零)」でないか否かを判定する(ステップS32)。そして、ステップS22の判定結果が否定判定(DVS=「0(零)」)であった場合、CPU60は、車両偏向回避処理ルーチンを終了する。一方、ステップS32の判定結果が肯定判定(DVS≠「0(零)」)である場合、CPU60は、ヨーレイトセンサSE8から受信した信号に基づき、車両のヨーレイトYRを検出する(ステップS33)。続いて、CPU60は、ステップS33にて検出した車両のヨーレイトYRが予め設定された閾値KYR以上であるか否かを判定する(ステップS34)。
【0060】
そして、ステップS34の判定結果が否定判定(YR<KYR)であった場合、CPU60は、車両偏向回避処理ルーチンを終了する。一方、ステップS34の判定結果が肯定判定(YR≧KYR)であった場合、CPU60は、第1車両偏向回避制御を実行する(ステップS35)。すなわち、CPU60は、各車輪FR,FL,RR,RLのうち転舵輪である前輪FR,FLに対応するホイールシリンダ36a,36b内のブレーキ液圧を減圧させるために、常開型の電磁弁42,46及び常閉型の電磁弁44,48を通電状態とする。
【0061】
続いて、CPU60は、ヨーレイトセンサSE8から受信した信号に基づき、車両のヨーレイトYRを検出し、このヨーレイトYRが閾値KYR未満になったか否かを判定する(ステップS36)。この判定結果が否定判定(YR≧KYR)である場合、CPU60は、判定結果が肯定判定となるまで、ステップS36の判定処理を繰り返し実行する。そして、ステップS36の判定結果が肯定判定(YR<KYR)となった場合、CPU60は、車両Cの偏向が補正されたものと判断し、第2車両偏向回避制御を実行する(ステップS37)。すなわち、CPU60は、各車輪FR,FL,RR,RLのうち非転舵輪である後輪RR,RLに対応するホイールシリンダ36c,36d内のブレーキ液圧を減圧させるために、常開型の電磁弁43,47及び常閉型の電磁弁45,49を通電状態とする。その後、CPU60は、車両偏向回避処理ルーチンを終了する。
【0062】
次に、本実施形態における車両の制動力保持方法について図9及び図10に基づき以下説明する。
さて、車両Cが低μ路を有する坂道を斜面上側に向けて走行している際に、搭乗者がブレーキペダル37を踏込んで車両Cを停止させると、この車両Cの停止に基づきヒルホールド制御が実行される。この場合に、車両Cにおける車両後方への予期せぬ移動が発生し、路面状況によっては、車両Cが偏向してしまう(すなわち、車両Cの向きが変わってしまう)ことがある。ところが、本実施形態では、ヒルホールド制御の実行中において、車両Cの予期せぬ移動(すなわち、車両の車体加速度DVS≠「0(零)」)が検知されると共に、閾値KYR以上の車両のヨーレイトYRを検知した場合、第1車両偏向回避制御が実行される。
【0063】
すなわち、図9(a)に示すように、転舵輪である前輪FR,FLに対応するホイールシリンダ36a,36b内のブレーキ液圧を減圧させることにより、前輪FR,FLに対するホイールシリンダ36a,36bからの制動力が低下する。そのため、図9(b)(c)に示すように、前輪FR,FLのロック状態が解除されるため、搭乗者によるステアリングホイール24の操舵に基づく各前輪FR,FLの転舵によって車両Cの偏向が補正される。すなわち、車両Cは、図9(b)に示す矢印方向に旋回する。
【0064】
そして、車両のヨーレイトYRが閾値KYR未満となると、車両Cの偏向の補正が完了したものとし、第2車両偏向回避制御が実行される。すなわち、図9(d)に示すように、非転舵輪である後輪RR,RLに対応するホイールシリンダ36c,36d内のブレーキ液圧を減圧させることにより、後輪RR,RLに対するホイールシリンダ36c、36dからの制動力が低下する。すると、後輪RR,RLのロック状態が解除される。
【0065】
次に、車両Cが低μ路を有する坂道を斜面下側に向けて走行している際に、搭乗者がブレーキペダル37を踏込んで車両Cを停止させると、この車両Cの停止に基づきヒルホールド制御が実行される。この場合に、車両Cにおける車両前方への予期せぬ移動が発生し、路面状況によっては、車両Cが偏向してしまうことがある。ところが、本実施形態では、ヒルホールド制御の実行中において、車両Cの予期せぬ移動(すなわち、車両の車体加速度DVS≠「0(零)」)が検知されると共に、閾値KYR以上の車両のヨーレイトYRを検知した場合、第1車両偏向回避制御が実行される。
【0066】
すなわち、図10(a)に示すように、転舵輪である前輪FR,FLに対応するホイールシリンダ36a,36b内のブレーキ液圧を減圧させることにより、前輪FR,FLに対するホイールシリンダ36a,36bからの制動力が低下する。そのため、図10(b)(c)に示すように、前輪FR,FLのロック状態が解除されるため、搭乗者によるステアリングホイール24の操舵に基づく各前輪FR,FLの転舵によって車両Cの偏向が補正される。すなわち、車両Cは、図10(b)に示す矢印方向に旋回する。
【0067】
そして、車両のヨーレイトYRが閾値KYR未満となると、車両Cの偏向の補正が完了したものとし、第2車両偏向回避制御が実行される。すなわち、図10(d)に示すように、非転舵輪である後輪RR,RLに対応するホイールシリンダ36c,36d内のブレーキ液圧を減圧させることにより、後輪RR,RLに対するホイールシリンダ36c、36dからの制動力が低下する。すると、後輪RR,RLのロック状態が解除される。
【0068】
本実施形態では、上記第1の実施形態の効果(1)に加え、さらに以下に示す効果をも得ることができる。
(3)各車輪FR,FL,RR,RLがロックした状態で車両Cの予期せぬ移動が発生した場合に、前輪(転舵輪)FR,FLに対する制動力のみを低下させる。そのため、搭乗者は、車両Cの制動力を維持しつつ、車両Cの偏向を補正することができる。
【0069】
(4)車両Cの偏向の補正後には全ての車輪FR,FL,RR,RLに対する各ホイールシリンダ(制動手段)36a〜36dからの制動力が低下した状態となるため、車両Cの速やかな発進に貢献できる。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を図11及び図12に従って説明する。なお、第3の実施形態は、車両偏向回避処理ルーチンにおける第1車両偏向回避制御及び第2車両偏向回避制御の処理内容が第2の実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第2の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第2の実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0070】
本実施形態における車両の制動力保持装置11は、電子制御装置16を備えている。この電子制御装置16は、CPU60、ROM61、及びRAM62などを備えたデジタルコンピュータと、各装置を駆動させるための駆動回路(図示略)とを主体として構成されている。ROM61には、液圧制御装置35(モータM、各電磁弁42〜49,53,57及び比例電磁弁50,54の駆動)を制御するための制御プログラム、及び閾値などが記憶されている。また、RAM62には、車両の制動力保持装置11の駆動中に適宜書き換えられる各種の情報が記憶されるようになっている。
【0071】
そして、CPU60は、所定周期毎に車両偏向回避処理ルーチンを実行する。この車両偏向回避処理ルーチンにおいて、CPU60は、ヒルホールド制御の実行中に、車両Cの予期せぬ移動に基づいて車両Cが偏向した(車両のヨーレイトYR≧閾値KYRになった)と判定した場合、第1車両偏向回避制御を実行する。すなわち、CPU60は、ヨーレイトセンサSE8からの信号に基づき検出した車両のヨーレイトYRから、車両Cが偏向した向きを特定し、右側の車輪FR,RR及び左側の車輪FL,RLのうちどちらが外輪となるか否かを判断する。そして、CPU60は、外輪と判断した車輪(例えば、右側の車輪FR,RR)に対応するホイールシリンダ(例えば、ホイールシリンダ36a,36c)内のブレーキ液圧を減圧させるために、常開型の電磁弁(例えば、電磁弁42,47)及び常閉型の電磁弁(例えば、電磁弁44,49)を通電状態とする。
【0072】
また、CPU60は、上述した第1車両偏向回避制御の実行後に検出された車両のヨーレイトYRが閾値KYR未満になったと判定した場合に、第2車両偏向回避制御を実行する。すなわち、CPU60は、内輪(例えば、左側の車輪FL,RL)に対応するホイールシリンダ(例えば、ホイールシリンダ36b,36d)内のブレーキ液圧を減圧させるために、常開型の電磁弁(例えば、電磁弁43,46)及び常閉型の電磁弁(例えば、電磁弁45,48)を通電状態とする。
【0073】
次に、本実施形態における車両の制動力保持方法について図11及び図12に基づき以下説明する。
さて、車両Cが低μ路を有する坂道を斜面上側に向けて走行している際に、搭乗者がブレーキペダル37を踏込んで車両Cを停止させると、この車両Cの停止に基づきヒルホールド制御が実行される。この場合に、車両Cにおける車両後方への予期せぬ移動が発生し、路面状況によっては、車両Cが偏向してしまう(例えば、車両Cの向きが右方に変わってしまう)ことがある。ところが、本実施形態では、ヒルホールド制御の実行中において、車両Cの予期せぬ移動(すなわち、車両の車体加速度DVS≠「0(零)」)が検知されると共に、閾値KYR以上の車両のヨーレイトYRを検知した場合、第1車両偏向回避制御が実行される。
【0074】
すなわち、図11(a)に示すように、車両Cの偏向を補正するときに外輪側となる左側の車輪FL,RLに対応するホイールシリンダ36b,36d内のブレーキ液圧を減圧させることにより、左側の車輪FL,RLに対するホイールシリンダ36b,36dからの制動力が低下する。そのため、図11(b)(c)に示すように、左前輪FLのロック状態が解除されるため、搭乗者によるステアリングホイール24の操舵に基づく左前輪FLの転舵によって車両Cの偏向が補正される。すなわち、車両Cは、図11(b)に示す矢印方向に旋回する。
【0075】
そして、車両のヨーレイトYRが閾値KYR未満となると、車両Cの偏向の補正が完了したものとし、第2車両偏向回避制御が実行される。すなわち、図11(d)に示すように、ホイールシリンダ36a,36cからの制動力がヒルホールド制御の開始時(実行時)から変更されていない右側の車輪FR,RRに対応するホイールシリンダ36a,36c内のブレーキ液圧が減圧される。すると、右側の車輪FR,RRに対するホイールシリンダ36a、36cからの制動力が低下し、右側の車輪FR,RRのロック状態が解除される。
【0076】
次に、車両Cが低μ路を有する坂道を斜面下側に向けて走行している際に、搭乗者がブレーキペダル37を踏込んで車両Cを停止させると、この車両Cの停止に基づきヒルホールド制御が実行される。この場合に、車両Cにおける車両前方への予期せぬ移動が発生し、路面状況によっては、車両Cが偏向してしまう(例えば、車両Cの向きが右方に変わってしまう)ことがある。ところが、本実施形態では、ヒルホールド制御の実行中において、車両Cの予期せぬ移動(すなわち、車両の車体加速度DVS≠「0(零)」)が検知されると共に、閾値KYR以上の車両のヨーレイトYRを検知した場合、第1車両偏向回避制御が実行される。
【0077】
すなわち、図12(a)に示すように、車両Cの偏向を補正するときに外輪側となる右側の車輪FR,RRに対応するホイールシリンダ36a,36c内のブレーキ液圧を減圧させることにより、右側の車輪FR,RRに対するホイールシリンダ36a,36cからの制動力が低下する。そのため、図12(b)(c)に示すように、転舵輪である右前輪FRのロック状態が解除されるため、搭乗者によるステアリングホイール24の操舵に基づく右前輪FRの転舵によって車両Cの偏向が補正される。すなわち、車両Cは、図12(b)に示す矢印方向に旋回する。
【0078】
そして、車両のヨーレイトYRが閾値KYR未満となると、車両Cの偏向の補正が完了したものとし、第2車両偏向回避制御が実行される。すなわち、図12(d)に示すように、ホイールシリンダ36a,36cからの制動力がヒルホールド制御の開始時(実行時)から変更されていない左側の車輪FL,RLに対応するホイールシリンダ36b,36d内のブレーキ液圧が減圧される。すると、左側の車輪FL,RLに対するホイールシリンダ36b、36dからの制動力が低下し、左側の車輪FL,RLのロック状態が解除される。
【0079】
本実施形態では、上記各実施形態の効果(1)(4)に加え、さらに以下に示す効果をも得ることができる。
(5)各車輪FR,FL,RR,RLがロックした状態で車両Cの予期せぬ移動が発生した場合に、車両Cの偏向を補正するときに外輪側となる車輪(例えば、右側の車輪FR,RR)に対する制動力のみを低下させる。そのため、搭乗者は、車両Cの制動力を維持しつつ、車両Cの偏向を補正することができる。
【0080】
なお、各実施形態は以下のような別の実施形態(別例)に変更してもよい。
・第2及び第3の実施形態において、第2車両偏向回避制御が実行されなくてもよい。
・各実施形態において、車両のヨーレイトYRは、車体加速度センサSE9からの信号に基づき検出された車両の車体加速度DVS、操舵角センサSE2からの信号に基づき検出されたステアリングホイール24の操舵角、及び横GセンサSE7からの信号に基づき検出された車両の横G(横方向への加速度)から算出されたものであってもよい。この場合、ヨーレイト検出手段は、車体加速度センサSE9、操舵角センサSE2、横GセンサSE7及びCPU60から構成されることになる。
【0081】
・各実施形態において、ブレーキペダルは、搭乗者の足で操作するいわゆるフットペダル式のブレーキペダル37ではなく、手動で操作可能なブレーキペダルであってもよい。
・各実施形態において、車両の制動力保持装置11は、車両前方に位置する他物(例えば、他の車両)との間隔(車間距離)を検出するためのレーダ(例えば、前方監視レーダや近距離レーダ)を備えた構成であってもよい。この場合、ヒルホールド制御中にレーダが車両前方に位置する他物との間隔が変化した(例えば、広くなった)ことを検知したときに、CPU60は車両の予期せぬ移動が発生したと判断する。
【0082】
・各実施形態において、前輪駆動車に搭載された車両の制動力保持装置11ではなく、後輪駆動車に搭載される車両の制動力保持装置に具体化してもよい。また、四輪駆動車に搭載される車両の制動力保持装置に具体化してもよい。
【0083】
・実施形態において、第1液圧回路33には右前輪FR用のホイールシリンダ36aと左前輪FL用のホイールシリンダ36bとが接続されると共に、第2液圧回路34には右後輪RR用のホイールシリンダ36cと左後輪RL用のホイールシリンダ36dとが接続されるような回路構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】第1の実施形態における車両の制動力保持装置のブロック図。
【図2】第1の実施形態における制動力付与機構のブロック図。
【図3】第1の実施形態におけるヒルホールド制御処理ルーチンを示すフローチャート。
【図4】第1の実施形態における車両偏向回避処理ルーチンを示すフローチャート。
【図5】(a)は車両の偏向が開始した様子を示す模式図、(b)は車両が偏向した状態を示す模式図。
【図6】(a)は第1の実施形態において車両が車両後方に移動した際に車両偏向回避制御が実行された状態を示す模式図、(b)は前輪が転舵している様子を示す模式図、(c)は車両の偏向が補正された状態を示す模式図。
【図7】(a)は第1の実施形態において車両が車両前方に移動した際に車両偏向回避制御が実行された状態を示す模式図、(b)は前輪が転舵している様子を示す模式図、(c)は車両の偏向が補正された状態を示す模式図。
【図8】第2の実施形態における車両偏向回避処理ルーチンを示すフローチャート。
【図9】(a)は第2の実施形態において車両が車両後方に移動した際に第1車両偏向回避制御が実行された状態を示す模式図、(b)は前輪が転舵している様子を示す模式図、(c)は車両の偏向が補正された状態を示す模式図、(d)は第2車両偏向回避制御が実行された状態を示す模式図。
【図10】(a)は第2の実施形態において車両が車両前方に移動した際に第1車両偏向回避制御が実行された状態を示す模式図、(b)は前輪が転舵している様子を示す模式図、(c)は車両の偏向が補正された状態を示す模式図、(d)は第2車両偏向回避制御が実行された状態を示す模式図。
【図11】(a)は第3の実施形態において車両が車両後方に移動した際に第1車両偏向回避制御が実行された状態を示す模式図、(b)は前輪が転舵している様子を示す模式図、(c)は車両の偏向が補正された状態を示す模式図、(d)は第2車両偏向回避制御が実行された状態を示す模式図。
【図12】(a)は第3の実施形態において車両が車両前方に移動した際に第1車両偏向回避制御が実行された状態を示す模式図、(b)は前輪が転舵している様子を示す模式図、(c)は車両の偏向が補正された状態を示す模式図、(d)は第2車両偏向回避制御が実行された状態を示す模式図。
【符号の説明】
【0085】
11…車両の制動力保持装置、36a〜36d…ホイールシリンダ(制動手段)、37…ブレーキペダル、60…CPU(ヨーレイト検出手段、ヨーレイト判定手段、車輪ロック判定手段、制御手段)、C…車両、FR,FL…前輪(転舵輪)、KYR…閾値、RR,RL…後輪、SE2〜SE6…車輪速度センサ(車輪ロック判定手段)、SE8…ヨーレイトセンサ(ヨーレイト検出手段)、YR…車両のヨーレイト。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキペダル(37)の操作により停止した車両(C)の各車輪(FR,FL,RR,RL)に制動手段(36a,36b,36c,36d)から付与されている制動力を前記ブレーキペダル(37)の操作が解消された後においても保持させるヒルホールド制御を実行する車両の制動力保持装置(11)において、
前記車両(C)のヨーレイト(YR)を検出するヨーレイト検出手段(SE8,60)と、
該ヨーレイト検出手段(SE8,60)により検出された車両(C)のヨーレイト(YR)が予め設定された閾値(KYR)以上であるか否かを判定するヨーレイト判定手段(60)と、
前記制動手段(36a,36b,36c,36d)から制動力が付与されることにより前記各車輪(FR,FL,RR,RL)がロック状態となっているか否かを判定する車輪ロック判定手段(60)と、
該車輪ロック判定手段(60)による判定結果が肯定判定であると共に、前記ヨーレイト判定手段(60)による判定結果が肯定判定である場合に、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち外輪側の転舵輪(FR,FL)を含む複数の車輪に付与される制動力を前記ヒルホールド制御開始時から低下させるように前記制動手段(36a,36b,36c,36d)を制御する制御手段(60)とを備えた車両の制動力保持装置。
【請求項2】
前記制御手段(60)は、前記車輪ロック判定手段(60)による判定結果が肯定判定であると共に、前記ヨーレイト判定手段(60)による判定結果が肯定判定である場合に、全ての車輪(FR,FL,RR,RL)に付与する制動力を前記ヒルホールド制御開始時から低下させるように前記制動手段(36a,36b,36c,36d)を制御する請求項1に記載の車両の制動力保持装置。
【請求項3】
前記制御手段(60)は、前記車輪ロック判定手段(60)による判定結果が肯定判定であると共に、前記ヨーレイト判定手段(60)による判定結果が肯定判定である場合に、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち全ての転舵輪(FR,FL)に付与する制動力を前記ヒルホールド制御開始時から低下させるように前記制動手段(36a,36b,36c,36d)を制御する請求項1に記載の車両の制動力保持装置。
【請求項4】
前記制御手段(60)は、前記車輪ロック判定手段(60)による判定結果が肯定判定であると共に、前記ヨーレイト判定手段(60)による判定結果が肯定判定である場合に、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち車両(C)の偏向を補正するときに外輪側となる車輪に付与する制動力を、前記ヒルホールド制御開始時から低下させるように前記制動手段(36a,36b,36c,36d)を制御する請求項1に記載の車両の制動力保持装置。
【請求項5】
前記制御手段(60)は、前記ヨーレイト判定手段(60)による判定結果が肯定判定から否定判定に切り替わった場合に、前記制動手段(36a,36b,36c,36d)によって付与される制動力が前記ヒルホールド制御開始時から変更されていない車輪(FR,FL,RR,RL)に対する制動力を、前記判定結果の切り替わり時点から低下させるように前記制動手段(36a,36b,36c,36d)を制御する請求項3又は請求項4に記載の車両の制動力保持装置。
【請求項6】
ブレーキペダル(37)の操作により停止した車両(C)の各車輪(FR,FL,RR,RL)に制動手段(36a,36b,36c,36d)から付与されている制動力を前記ブレーキペダル(37)の操作が解消された後においても保持させるヒルホールド制御を実行する車両の制動力保持方法において、
前記制動手段(36a,36b,36c,36d)から付与される制動力により前記各車輪(FR,FL,RR,RL)がロック状態となっている場合において、車両(C)のヨーレイト(YR)が予め設定された閾値(KYR)以上であるときに、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち外輪側の転舵輪(FR,FL)を含む複数の車輪に付与する制動力を前記ヒルホールド制御開始時から低下させるようにした車両の制動力保持方法。
【請求項1】
ブレーキペダル(37)の操作により停止した車両(C)の各車輪(FR,FL,RR,RL)に制動手段(36a,36b,36c,36d)から付与されている制動力を前記ブレーキペダル(37)の操作が解消された後においても保持させるヒルホールド制御を実行する車両の制動力保持装置(11)において、
前記車両(C)のヨーレイト(YR)を検出するヨーレイト検出手段(SE8,60)と、
該ヨーレイト検出手段(SE8,60)により検出された車両(C)のヨーレイト(YR)が予め設定された閾値(KYR)以上であるか否かを判定するヨーレイト判定手段(60)と、
前記制動手段(36a,36b,36c,36d)から制動力が付与されることにより前記各車輪(FR,FL,RR,RL)がロック状態となっているか否かを判定する車輪ロック判定手段(60)と、
該車輪ロック判定手段(60)による判定結果が肯定判定であると共に、前記ヨーレイト判定手段(60)による判定結果が肯定判定である場合に、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち外輪側の転舵輪(FR,FL)を含む複数の車輪に付与される制動力を前記ヒルホールド制御開始時から低下させるように前記制動手段(36a,36b,36c,36d)を制御する制御手段(60)とを備えた車両の制動力保持装置。
【請求項2】
前記制御手段(60)は、前記車輪ロック判定手段(60)による判定結果が肯定判定であると共に、前記ヨーレイト判定手段(60)による判定結果が肯定判定である場合に、全ての車輪(FR,FL,RR,RL)に付与する制動力を前記ヒルホールド制御開始時から低下させるように前記制動手段(36a,36b,36c,36d)を制御する請求項1に記載の車両の制動力保持装置。
【請求項3】
前記制御手段(60)は、前記車輪ロック判定手段(60)による判定結果が肯定判定であると共に、前記ヨーレイト判定手段(60)による判定結果が肯定判定である場合に、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち全ての転舵輪(FR,FL)に付与する制動力を前記ヒルホールド制御開始時から低下させるように前記制動手段(36a,36b,36c,36d)を制御する請求項1に記載の車両の制動力保持装置。
【請求項4】
前記制御手段(60)は、前記車輪ロック判定手段(60)による判定結果が肯定判定であると共に、前記ヨーレイト判定手段(60)による判定結果が肯定判定である場合に、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち車両(C)の偏向を補正するときに外輪側となる車輪に付与する制動力を、前記ヒルホールド制御開始時から低下させるように前記制動手段(36a,36b,36c,36d)を制御する請求項1に記載の車両の制動力保持装置。
【請求項5】
前記制御手段(60)は、前記ヨーレイト判定手段(60)による判定結果が肯定判定から否定判定に切り替わった場合に、前記制動手段(36a,36b,36c,36d)によって付与される制動力が前記ヒルホールド制御開始時から変更されていない車輪(FR,FL,RR,RL)に対する制動力を、前記判定結果の切り替わり時点から低下させるように前記制動手段(36a,36b,36c,36d)を制御する請求項3又は請求項4に記載の車両の制動力保持装置。
【請求項6】
ブレーキペダル(37)の操作により停止した車両(C)の各車輪(FR,FL,RR,RL)に制動手段(36a,36b,36c,36d)から付与されている制動力を前記ブレーキペダル(37)の操作が解消された後においても保持させるヒルホールド制御を実行する車両の制動力保持方法において、
前記制動手段(36a,36b,36c,36d)から付与される制動力により前記各車輪(FR,FL,RR,RL)がロック状態となっている場合において、車両(C)のヨーレイト(YR)が予め設定された閾値(KYR)以上であるときに、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち外輪側の転舵輪(FR,FL)を含む複数の車輪に付与する制動力を前記ヒルホールド制御開始時から低下させるようにした車両の制動力保持方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−112294(P2007−112294A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−305742(P2005−305742)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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