説明

車両の制御装置

【課題】電磁弁を正常に駆動できないことに起因する自動変速機の作動不良が発生し得る状況下で、自動始動が行われてしまうことを回避することのできる車両の制御装置を提供すること。
【解決手段】ECU32は、自動停止及び自動停止を繰り返し実行する自動停止始動制御を実行可能に構成されている。そして、ECU32は、油温センサ40によって検出した作動油温に基づいて電磁弁33,34,52,53のコイル抵抗値を同定し、電磁弁33,34,52,53を正常に駆動できるか否か判定する。そして、ECU32は、電磁弁33,34,52,53のコイル抵抗値がそれら電磁弁33,34,52,53を正常に駆動可能な最大抵抗値未満であると同定し、他の自動停止条件が成立した場合に、内燃機関11の自動停止を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧制御用の電磁弁を有する油圧制御機構を通じてその作動状態が制御される自動変速機を搭載する車両にあって、内燃機関の自動停止及び自動始動を行う車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料の節約、エミッションの低減、騒音の低減等を目的として、所定の自動停止条件に基づいて内燃機関を自動停止させるとともに、所定の自動始動条件に基づいて内燃機関を自動始動して運転状態に復帰させる制御装置を備える車両が実用化されている。そして、このような車両の制御装置として、特許文献1には、自動変速機の作動油温が所定温度範囲内にあるという条件を自動停止条件として含む制御装置が記載されている。すなわち、この制御装置では、作動油温が上限値より高いときには、作動油自身の劣化やロックアップクラッチの摩擦材の劣化が生じるとして自動停止を行わない一方、作動油温が下限値よりも低いときには、同作動油の粘性が高く、車両の発進性能が低下するとして自動停止を行わないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−104587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、単一のバッテリしか搭載されていない車両、すなわち2個以上のバッテリが搭載されていない車両や、バッテリの他に電圧補償装置が搭載されていない車両においては、内燃機関を自動始動して運転状態に復帰させるために電動機を駆動する際、バッテリから電動機に電力を供給する必要が生じるため、バッテリの負荷が増大する。そのため、内燃機関の自動始動時には、バッテリ電圧が低下することになり、自動変速機の油圧制御機構に設けられている電磁弁に対して印加される電圧も低下するようになる。そしてこのように電磁弁の印加電圧が低下しているときに、油圧制御機構の作動油温の影響等により電磁弁のコイル温度が高い状態にあると、電磁弁のコイル抵抗も大きくなるため、それに伴って電磁弁のコイルに通電される励磁電流が小さくなり、電磁弁を正常に駆動できなくなることがある。その結果、従来の制御装置では、内燃機関の自動始動が行われる際に、電磁弁を正常に駆動することができず、自動変速機の油圧制御機構により油圧を適正に制御できなくなるおそれがある。それに加えて、内燃機関の自動始動時、電磁弁には、内燃機関の始動操作に伴う振動が伝達されるため、コイルに流れる励磁電流が小さくなると、その弁体を適正な位置に保持する力も不足気味になり、上述したように油圧を適正に制御できないといった不都合もより顕著なものとなる。
【0005】
この点、特許文献1に記載の制御装置は、自動変速機の作動油が所定温度範囲にないときには自動停止を行わない点のみを開示するものであり、上述した自動始動時に電磁弁に対する励磁電流が不足した場合の問題について何ら考慮していない。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、電磁弁を正常に駆動できないことに起因する自動変速機の作動不良が発生し得る状況下で、自動始動が行われてしまうことを回避することのできる車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、油圧制御用の電磁弁を有する油圧制御機構を通じてその作動状態が制御される自動変速機を搭載し、自動停止条件が成立した場合には内燃機関を自動停止させ、自動始動条件が成立した場合には前記内燃機関を自動始動する車両の制御装置において、前記電磁弁のコイル抵抗値を同定する同定手段を備え、前記自動停止条件として、前記同定されるコイル抵抗値が前記電磁弁を正常に駆動可能な最大抵抗値未満であることを含むことを要旨とする。
【0008】
この発明では、コイル抵抗値が最大抵抗値以上であり、同電磁弁を正常に駆動できない状況、換言すれば油圧制御機構を通じて適正な作動油圧を確保することができず自動変速機の作動不良が発生する可能性の高い状況にあるときには、他の自動停止条件が成立していたとしても内燃機関を自動停止しない。そして、コイル抵抗値が電磁弁を正常に駆動可能な最大抵抗値未満になると、他の自動停止条件が成立していることを条件に内燃機関を自動停止する。その結果、自動変速機の作動不良が発生し得る状況下で、自動始動が行われてしまうことを回避することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記同定手段は前記自動変速機の作動油温を検出する検出手段を含み、その検出される作動油温が所定の自動停止許可上限温度以上になってから作動油温が低下して前記自動停止許可上限温度未満にあるときには作動油温が同自動停止許可上限温度となったときからの経過時間を計時しその経過時間が所定の規定時間に達することで前記コイル抵抗値が前記最大抵抗値未満であるものとしてこれを同定することを要旨とする。
【0010】
電磁弁と自動変速機の作動油との間では熱交換が行われるため、電磁弁の温度、ひいてはそのコイル温度と作動油温との間には正の相関関係がある。また、コイル抵抗値はその温度によって変化し、同温度が高いときほどコイル抵抗値も高くなる。したがって、コイル抵抗値は作動油温と相関関係があることになり、作動油温が高いときほどコイル抵抗値は大きくなる。また、コイル温度は作動油温に対して遅れて変化するため、一旦、自動停止許可上限温度以上になってから作動油温が低下して自動停止許可上限温度未満になった場合でも、コイル温度が充分に低下しておらず、コイル抵抗値が最大抵抗値以上となる状況が発生し得る。このため、上記構成では、こうした作動油温に対するコイル温度の追従遅れを考慮するようにしている。すなわち、作動油温が低下して自動停止許可上限温度となったときからの経過時間を計時し、その経過時間が所定の規定時間に達したときに、コイル抵抗値が最大抵抗値未満であるものとしてこれを同定するようにしている。したがって、作動油温が所定の自動停止許可上限温度未満になっても上記経過時間が規定時間に達していないときには自動停止を行わず、経過時間が所定の規定時間に達してから自動停止を行う。このように上記構成によれば、電磁弁のコイル抵抗値をより正確に同定したうえで内燃機関の自動停止を行うことができるようになる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記同定手段は、前記作動油温が前記自動停止許可上限温度以上であるときに同作動油温の推移における最高油温を記憶する記憶手段と、前記最高油温が高いときほど前記規定時間が長くなるようにこれを設定する設定手段と、を備えることを要旨とする。
【0012】
上述したように、コイル温度は作動油温に対して遅れて変化するため、作動油温が低下して自動停止許可上限温度未満になった場合でも、コイル温度が充分に低下しておらず、その抵抗値が最大抵抗値以上となる状況が発生し得る。すなわち、コイル温度は作動油温に対して追従遅れを有して変化する。そして、この場合、作動油温の最高温度が高い状態から同作動油温が低下するときほど、こうした追従遅れも大きくなる。
【0013】
この点、上記構成では、作動油温の最高温度が高いときほど上記規定時間を長くなるようにこれを設定するようにしている。したがって、コイル温度が低下して、確実にコイル抵抗値が正常に電磁弁を駆動可能な最大抵抗値未満になってから内燃機関の自動停止を行うことができるようになる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記同定手段は前記内燃機関の運転中に前記電磁弁に印加される電圧を検出し、同電圧が高いときほど前記規定時間が長くなるようにこれを補正することを要旨とする。
【0015】
内燃機関の運転中に電磁弁に印加される電圧が高いときほど、電磁弁における発熱量が大きくなり、同電磁弁はより高い温度に維持されるようになる。このため、作動油温が最高温度から自動停止許可上限温度にまで低下する場合、電磁弁が高温であるため、その温度が電磁弁を正常に駆動し得る温度にまで低下するのに要する時間は長くなる。すなわち、作動油温に対するコイル温度の追従遅れはより大きなものとなる。
【0016】
この点、上記構成によれば、内燃機関の運転中に電磁弁に印加される電圧が高いときほど規定時間が長くなるようにしているため、電磁弁を正常に駆動し得る温度にまでコイル温度が低下したことを正確に把握することができ、自動変速機の作動不良が発生し得る状況下で、自動始動が行われてしまうことを好適に回避することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明にかかる車両の制御装置の一実施形態について、これが適用される車両の構成を示す概略図。
【図2】本実施形態の油圧制御機構における油圧回路を示すブロック図。
【図3】本実施形態における自動停止始動制御の実行手順を示すフローチャート。
【図4】本実施形態における自動停止可否処理の実行手順を示すフローチャート。
【図5】無段変速機の作動油の最高油温に基づいて規定時間を設定するためのマップ。
【図6】(a)は作動油温の変化の推移を示すグラフ、(b)は(a)の作動油温の変化に伴うコイル温度の変化の推移を示すグラフ。
【図7】作動油温が自動停止許可上限温度に達しない場合及び作動油温が自動停止許可上限温度よりも高くなった場合における、自動停止制御の実行状態を示すタイミングチャート。
【図8】作動油温が自動停止許可上限温度未満である期間が規定時間よりも短い場合における自動停止制御の実行状態を示すタイミングチャート。
【図9】別の実施形態において、(a)は作動油温を変化させたときの推移を示すグラフ、(b)は内燃機関運転中における電磁弁の印加電圧に応じたコイル温度の推移を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した一実施形態について、図1〜図8を参照して説明する。
図1に示すように、内燃機関11のクランクシャフト12には、ベルト13を介して、エンジン冷却用ウォータポンプ、パワーステアリングポンプ、エアコン用コンプレッサ等の補機類14が連結されている。また、クランクシャフト12には、ベルト13を介して、発電機又は電動機として機能するモータジェネレータ15が連結されている。このモータジェネレータ15は、クランクシャフト12から回転が伝達されるときには発電機としてバッテリ16を充電する一方、内燃機関11の始動時には電動機として始動操作、すなわちクランキングを行う。さらに、内燃機関11のクランクシャフト12には、モータジェネレータ15及び補機類14が連結されている部分とは反対側に、内燃機関11の出力を変速して車両の駆動輪26に伝達する動力伝達機構17が連結されている。
【0019】
動力伝達機構17は、自動変速機、具体的には変速比を連続的に変更可能な無段変速機18、トルクコンバータ19、前後進切り替え機構20、リダクションギア21及びディファレンシャルギア22を備えている。無段変速機18は、入力用プーリ23、出力用プーリ24、及びそれら一対のプーリ23,24に巻き掛けられたベルト25によって構成されている。この無段変速機18の入力用プーリ23は、前後進切り替え機構20及びトルクコンバータ19を介して内燃機関11のクランクシャフト12に連結されている。また、出力用プーリ24は、リダクションギア21及びディファレンシャルギア22を介して駆動輪26に連結されている。したがって、内燃機関11の駆動力は、クランクシャフト12から、トルクコンバータ19、前後進切り替え機構20、無段変速機18、リダクションギア21、ディファレンシャルギア22を介して車両の駆動輪26に伝達される。なお、前後進切り替え機構20は、内燃機関11のクランクシャフト12から無段変速機18に伝達される駆動力の方向を反転させるための遊星歯車機構(図示略)、無段変速機18に伝達する駆動力の大きさを調節するクラッチ28を備えている。
【0020】
入力用プーリ23及び出力用プーリ24には、その内部に無段変速機18の油圧制御機構29によって作動油の圧力が調圧される油圧室30,31がそれぞれ設けられている。そして、各プーリ23,24の溝幅Win,Woutは各油圧室30,31の油圧Pin、Poutに応じて変更されるとともに、それに伴って各プーリ23,24におけるベルト25の巻き掛け半径が変更される。
【0021】
油圧制御機構29内には、電子制御装置(以下、ECUという)32からの印加電圧に基づいて動作する一対の変速制御用電磁弁33、及びベルト挟圧力制御用電磁弁34が設けられている。変速制御用電磁弁33は、入力用プーリ23の油圧室30内のオイル量を増減して同油圧室30の油圧を制御するために動作する。一方、ベルト挟圧力制御用電磁弁34は、出力用プーリ24の油圧室31内のオイル量を増減してその同油圧室31の油圧を制御するために動作する。各電磁弁33,34では、コイルに対して通電される励磁電流に応じた吸引力が弁体に作用する。また、各電磁弁33,34は、ECU32から各電磁弁33,34のコイルに対して電圧が印加されなければ、閉弁状態となる。
【0022】
また、図2に示すように、油圧制御機構29内には、オイルポンプOP又は電動オイルポンプEOPにより汲み上げられた作動油をライン圧に調圧するライン圧制御弁50と、ライン圧制御弁50の圧力を元圧とした減圧弁51と、同減圧弁51を元圧源として油圧を制御する電磁弁52及び電磁弁53と、が設けられている。また、油圧制御機構29内には、電磁弁53によって油路の経路が切り替えられるガレージ切替弁54と、運転席のシフト切替にリンクするマニュアルバルブ55と、が設けられている。電磁弁52及び電磁弁53は、ECU32(図1参照)から各電磁弁52、53のコイルに対して電圧が印加されなければ、閉弁状態となる。
【0023】
そして、キー始動を通じて内燃機関11が始動操作された後に、シフトポジションがパーキングポジション若しくはニュートラルポジションからドライブポジション若しくはリバースポジションに切り替わった時、内燃機関11の回転数はアイドル回転数以上であるので、十分なバッテリ電圧を確保できる。そこで、このときに電磁弁53に電圧が印加されるとガレージ切替弁54がガレージシフト状態、いわゆる前進クラッチ若しくは後退用ブレーキを少しづつ係合させることが可能な状態になるようにガレージ切替弁54が動作して油路が切り替えられる。そして、前進クラッチ若しくは後退用ブレーキの圧力は電磁弁52にて制御されて、前進クラッチ若しくは後退用ブレーキは徐々に係合する。このときの油路は図2で示す太い実線のようになる。そして、前進クラッチ若しくは後退用ブレーキの係合完了後、ECU32は電磁弁53に対する電圧の印加を止めて、ガレージ切替弁54のバルブの位置を切り替える。このときの油路は図2で示す破線のようになり、前進クラッチ若しくは後退用ブレーキには減圧弁51から圧力が作用する。
【0024】
また、図1に示すように、ECU32には、車両の状態を検出する各種センサとして、ブレーキペダルの踏み込みの有無を検出するためのブレーキセンサ36、車両の車速を検出する車速センサ37、シフトセレクタレバーの操作位置を検出するシフトポジションセンサ38が電気的に接続されている。さらに、ECU32には、運転者によるアクセルペダルの踏み込み量であるアクセル操作量を検出するアクセルセンサ39、無段変速機18の油圧制御機構29内に充填されている作動油の油温を検出する検出手段としての油温センサ40、電力供給源としてのバッテリ16が電気的に接続されている。そして、ECU32は各種センサ等からの検出信号に基づいて、油圧制御機構29、具体的には各電磁弁33,34,52,53の制御を含め、無段変速機18の各種動作を機関運転状態に応じて制御する。なお、ECU32は各種データを保存するメモリ32aを備えている。
【0025】
ここで、変速制御用電磁弁33、ベルト挟圧力制御用電磁弁34、及び電磁弁52,53は、作動油の流路が形成されたバルブボディに取り付けられている。そして、変速制御用電磁弁33、ベルト挟圧力制御用電磁弁34、及び電磁弁52,53はこのようにしてバルブボディに取り付けられた状態で少なくとも一部が無段変速機18の作動油と接触している。そのため、各電磁弁33,34,52,53のコイルは無段変速機18の作動油と熱交換が行われるため、そのコイル温度は作動油温の影響を受けて変化する。具体的には、各電磁弁33,34,52,53のコイル温度は、作動油温の上昇に追従して上昇し、作動油温の低下に追従して低下する。すなわち、コイル温度と作動油温との間には、正の相関関係がある。また、各電磁弁33,34,52,53のコイル抵抗は、コイル温度に応じて変化する。具体的には、各電磁弁33,34,52,53のコイル温度が上昇した場合にはコイル抵抗値は増大する一方、各電磁弁33,34,52,53のコイル温度が低下した場合にはコイル抵抗値は減少する。したがって、各電磁弁33,34,52,53のコイル抵抗値と無段変速機18の作動油温TEとの間にも、正の相関関係があり、作動油温が高いときほど、コイル抵抗値は大きくなる。そのため、ECU32は、油温センサ40から得られる作動油温に基づいて各電磁弁33,34,52,53のコイル抵抗値を同定している。すなわち、ECU32と油温センサ40とは、電磁弁33,34,52,53のコイル抵抗値を同定する同定手段として機能する。ECU32は、作動油温が自動停止許可上限温度TH以上になった場合には、自動停止を行わない。この自動停止許可上限温度THは、これを一定に維持したときに、コイル抵抗値が電磁弁33,34,52,53を正常に駆動可能な最大抵抗値未満の所定値に収束する温度に設定されている。
【0026】
また、ECU32は、車両の運転中、燃料の節約、エミッションの低減、騒音の低減等を目的として自動停止始動制御を実行する。
次に、図3及び図4のフローチャートに基づいて、自動停止始動制御の処理手順を説明する。なお、図3及び図4では、自動停止許可上限温度THを上限温度として示す。
【0027】
車両の運転中において、ステップS10では、油温センサ40による作動油温TEの測定を開始する。その後、ステップS11に移行し、ステップS11では、自動停止条件の一つとして、作動油温TEが自動停止許可上限温度TH以上であるか否かを判定する処理を行う。
【0028】
そして、ステップS11において、作動油温TEが自動停止許可上限温度TH未満の場合には、コイル抵抗値が最大抵抗値未満であると同定して、各電磁弁33,34,52,53を正常に駆動できる旨判定し、ステップS12に移行する。そして、ステップS12では、その他の自動停止条件を満たすか否か判定する。この際、例えば以下に示す(a)〜(e)の各条件が成立しているか否かに応じて、その他の自動停止条件を満たすか否かが判定される。
【0029】
(a)シフトポジションがニュートラルポジション又はドライブポジション
(b)車速が所定値未満
(c)アクセル踏込量が「0」
(d)ブレーキペダルが踏み込まれている
(e)バッテリ電圧が許容レベルに達している
ステップS12では、(a)〜(e)の条件が全て成立していれば、その他の自動停止条件を満たしている旨判定されて、ステップS13に移行する一方、ステップS12において、(a)〜(e)の条件のいずれか一つでも不成立であると、ステップS11に移行する。ステップS13では、内燃機関11を自動停止して、後述するステップS18に移行する。
【0030】
一方、ステップS11において、作動油温TEが自動停止許可上限温度TH以上である場合には、ステップS14に移行する。ステップS14では、内燃機関11の自動停止の実行を許可してもよいか否か判定するための自動停止可否処理を実行する。そして、ステップS14において自動停止が許可されると、ステップS15に移行して、内燃機関11の自動停止を行う。その後、ステップS16に移行し、ステップS16では、ステップS15の自動停止可否処理の際に記録される後述の最高油温TMAX、規定時間、経過時間を消去し、ステップS17に移行する。
【0031】
ステップS17では、内燃機関11の自動始動条件を満たすか否かを判定する。ステップS17では、上記条件(a)〜(e)の全てが成立していれば、内燃機関11の自動始動条件を満たさないとして、ステップS18に移行する。ステップS18では、内燃機関11の停止状態を維持し、ステップS17に移行する。一方、ステップS17において、上記(a)〜(e)のいずれか一つの条件でも不成立であれば、内燃機関11の自動始動条件が成立したとして、ステップS19に移行する。
【0032】
ステップS19では、ECU32は、モータジェネレータ15を通じてクランキングを行い、内燃機関11を始動する。具体的には、バッテリ16からモータジェネレータ15に電力を供給してモータジェネレータ15を駆動させ、クランキングを実行するとともに、燃料噴射制御や点火時期制御を実行して、内燃機関11を始動する。そして、ステップS19の処理が終了すると、ステップS10に戻り、繰り返し上述した処理を行う。なお、ECU32は、イグニッションスイッチがONになったことを契機として自動停止始動制御を開始し、イグニッションスイッチがOFFになったことを契機として自動停止始動制御を終了させる。自動停止始動制御において、ステップS11の判定処理及びステップS14の自動停止可否処理は、同定手段が行う処理に相当する。
【0033】
次に、図4を参照して、図3のステップS14における自動停止可否処理について更に詳細に説明する。
自動停止可否処理が開始されると、まず、ステップS20において、自動停止許可上限温度THを最高油温TMAXとして設定しメモリ32aに記憶する。次に、ステップS21に移行して、現在の作動油温TEが最高油温TMAXよりも高いか否か判定する。そして、現在の作動油温TEが最高油温TMAXよりも高い旨判定した場合、ステップS22に移行して、現在の作動油温TEを最高油温TMAXとして更新してメモリ32aに記憶する。その後、ステップS23に移行して、最高油温TMAXに応じた規定時間を設定し、設定した規定時間を記憶する。具体的には、設定手段及び記憶手段としてのECU32がそのメモリ32aに予め記憶している図5に示すマップを参照して、最高油温TMAXに応じた規定時間を設定して、その規定時間をメモリ32aに記憶する。その後、ECU32は、ステップS24に移行する。なお、図5に示すように、規定時間は最高油温TMAXが高くなる程、長い時間に設定される。
【0034】
一方、図4に示すように、ステップS21において作動油温TEが最高油温TMAX以下である旨判定すると、ステップS22及びステップS23の処理を行わずに、ステップS24に移行する。すなわち、以前に記憶した最高油温TMAXの方が現在の作動油温TEよりも高いため、最高油温TMAXの更新を行わない。
【0035】
ステップS24では、作動油温TEが低下しているか否か判定する処理を行う。具体的には、現在の作動油温TEと直前の作動油温TE(例えば、数ms前の作動油温TE)とを比較し、現在の作動油温TEが直前の作動油温TEよりも高ければ、作動油温TEが上昇している旨判定して、ステップS21に戻る。また、ステップS24において、現在の作動油温TEが直前の作動油温TE以下であれば、作動油温TEが低下している旨判定して、ステップS25に移行する。なお、ステップS24において、作動油温TEが上昇している旨を判定した場合にステップS21に戻るのは、あくまでも最高油温TMAXを更新すべきか否かの判定を継続して行うためである。
【0036】
ステップS25では、現在の作動油温TEが自動停止許可上限温度THまで低下したか否か判定する。ステップS25でECU32が否定判定すると、ステップS21に戻る。一方、ステップS25において、肯定判定されると、ステップS26に移行する。
【0037】
ステップS26では、作動油温TEが自動停止許可上限温度THに低下したときからの経過時間を計時する。そして、ステップS27に移行して、作動油温TEが自動停止許可上限温度TH以下の状態であるか否か判定する。ステップS27において、否定判定されると、ステップS28に移行して、経過時間の計測結果を消去し、その後、ステップS21に戻る。一方、ステップS27において、肯定判定されると、ステップS29に移行する。
【0038】
ステップS29では、経過時間が規定時間以上であるか否かを判定し、ここで否定判定されると、再び、ステップS27に戻る。ステップS29において、ECU32は、経過時間が規定時間に達するまでは、作動油温TEが自動停止許可上限温度TH以下になっても、正常に電磁弁33,34,52,53を駆動可能な最大抵抗値以上のコイル抵抗値であるものと判断する。そのため、ステップS29では、作動油温TEが自動停止許可上限温度TH以下であっても、経過時間が規定時間に達するまで、次の処理に移行しない。そして、ステップS29においてECU32が肯定判定すると、コイル抵抗値が正常に電磁弁33,34,52,53を駆動可能な最大抵抗値にまで低下したと判断し、ステップS30に移行して、更に上述した他の自動停止条件を満たすか否か判定する。
【0039】
ステップS30においてECU32が否定判定すると、ステップS31に移行して、作動油温TEが自動停止許可上限温度TH以下になっているか否か判定する。ステップS31において、否定判定がなされると、経過時間を消去してステップS21に戻る。ステップS31において、肯定判定がなされると、ステップS30に戻る。一方、ステップS30において肯定判定がなされると、自動停止可否処理を終了して、図3のステップS15に移行する。
【0040】
次に、上述の規定時間を求める方法の一例について説明する。
まず、クランキング時において各電磁弁33,34,52,53に対する印加電圧が最も低下した場合の値を把握する。そして、その印加電圧の最も低下した場合で、かつ内燃機関11の始動操作に伴う振動が各電磁弁33,34,52,53に伝達される場合であっても各電磁弁33,34,52,53が正常に駆動できるコイル温度としての所定温度TCを求める。すなわち印加電圧が最も低下した場合であっても、十分な吸引力を電磁弁33,34,52,53の弁体に作用させることが可能な所定温度TCを求める。さらに、所定温度TCに基づいて、正常に各電磁弁33,34,52,53が駆動可能な無段変速機18の作動油温の上限温度TQを求める。具体的には、無段変速機18の作動油温TEを上限温度TQに維持したときに、コイル温度の収束する温度が上記所定温度TCとなるように、上限温度TQを設定する。次に、所定の最高油温TMAXが上限温度TQまで低下するのに要する時間、及びそれに伴ってコイル温度が所定温度TCまで低下するのに要する時間を算出し、それらの時間に基づいて規定時間を求める。
【0041】
具体的には、図6(a)に示すように、作動油温の最高油温TMAXが温度T1であるときの規定時間を求める際には、その車両において想定される最大の速度で、温度T1から各電磁弁33,34,52,53が正常に駆動可能な上限温度TQに低下させる。すなわち、作動油温TEに対するコイル温度の追従遅れが最も大きくなる状況を想定する。そして、作動油温の温度T1から上限温度TQまで低下させた場合に要する時間KT1を求める。さらに、この際、図6(b)に示すように、作動油温が温度T1であるときに収束して一定となるコイル温度としての温度TX1から正常に各電磁弁33,34,52,53が駆動可能な作動油温の上限温度TQに対応する上記所定温度TCに低下するまでに要する時間LT1を求める。そして、作動油温TEの最高油温TMAXが温度T1である場合の規定時間は、下式(A)のとおり、時間LT1から時間KT1を減算することで求める。そして、このようにして規定時間を設定すれば、規定時間は、コイル温度の追従遅れが最も大きくなった場合を想定した時間となる。そのため、規定時間は、作動油温が自動停止許可上限温度TH未満になった後の作動油温の推移態様に拘らず確実にコイル温度が所定温度TC未満になることができる時間に設定される。なお、自動停止許可上限温度THは、上記上限温度TQ以下の温度である。
【0042】
規定時間=LT1―KT1・・・(A)
また、温度T1よりも高い温度T11を最高油温TMAXとした場合にも、同様に、図6(a)に示すように、作動油温を温度T11から自動停止許可上限温度THまで最大の速度で低下させたときに要する時間KT2を求める。さらに、図6(b)に示すように、作動油温がT11であるときに収束して一定となるコイル温度としての温度TX11から作動油温が自動停止許可上限温度THに対応する上記所定温度TCまで低下する際に要する時間LT2を求める。そして、時間LT2から時間KT2を減算することで、作動油温TEの最高油温TMAXが温度T11である場合の規定時間を求める。そして、このようにして最高油温TMAXを順次変更し、最高油温TMAX毎に最高油温TMAXに対応する規定時間を求めることで、図5に示すような最高油温TMAXと規定時間との関係を規定するマップを作成することができる。
【0043】
なお、各電磁弁33,34,52,53のコイルと各電磁弁33,34,52,53周りの作動油との間の熱伝達率は、作動油の対流状態によって変化するものであり、作動油の対流が大きい方が熱伝達率は大きく、作動油温の変化に対するコイル温度の追従遅れも小さくなる。そこで、上述した方法で規定時間を求める際には、これを作動油の対流状態に拘らず確実にコイル温度が所定温度TCまで低下できる時間に設定するため、最も顕著にコイル温度の追従遅れが生じやすい状況下を想定して規定時間を求めた方が好ましい。そのため、規定時間を求める際には、内燃機関11及び無段変速機18を停止状態にして各電磁弁33,34,52,53の周りの作動油に流れが生じていない状況を想定している。
【0044】
次に、上述した自動停止始動制御の制御態様について、図7及び図8を参照して説明する。図7及び図8は、無段変速機18の作動油温TE、作動油温TEから推定される電磁弁33,34,52,53のコイル温度、自動停止条件の成立状況、自動停止制御の実行状態についてそれらの時間的推移を示すタイムチャートである。
【0045】
内燃機関11が運転されている状態から、図7に示すように、時刻t1において、作動油温TEが自動停止許可上限温度TH以下で、かつその他の自動停止条件を満たすと、自動停止条件が成立して、内燃機関11の自動停止が行われる。そして、自動停止条件が成立している期間、すなわち時刻t1から時刻t2の間、ECU32は、内燃機関11を停止させる。時刻t2において、自動始動条件が満たされ、内燃機関11が自動始動されると、同時刻t2から時刻t3の間、作動油温TEは上昇し続け、時刻t3において作動油温TEは、自動停止許可上限温度THよりも高い温度D1に達する。ここで、温度D1が最高油温TMAXとしてメモリ32aに記憶される。その後、作動油温TEは低下するが、所定時間経過した後、再び、上昇するようになり、時刻t4において、作動油温TEは、温度D1よりも高い温度D2に達する。そして、温度D2が新たに最高油温TMAXとしてメモリ32aに記憶される。すなわち、最高油温TMAXの更新がなされる。そして、時刻t5において、作動油温TEは自動停止許可上限温度THまで低下するが、このときコイル温度はまだ所定温度TCまで低下していないため、ECU32は、自動停止を実行しない。ECU32は時刻t5からの経過時間を計測し、時刻t6において、経過時間が温度D2、すなわち最高油温TMAXに基づいて設定された規定時間に達すると、ECU32は、コイル温度が所定温度TCまで低下したとして内燃機関11の自動停止を実行する。
【0046】
また、図8に示すように、時刻t7では、作動油温TEが自動停止許可上限温度THよりも高くなっているため、内燃機関11の自動停止は実行されない。そして、時刻t8では作動油温TEは温度D3に達し、その後、低下する。なお、時刻t8において、温度D3が最高油温TMAXとしてメモリ32aに記憶される。時刻t9になると、作動油温TEは自動停止許可上限温度THまで低下して、ECU32は、経過時間の計測を開始する。ところが、作動油温TEは、その後、上昇するようになり、経過時間が規定時間に達する前に時刻t10で、再び、自動停止許可上限温度THに達する。そのため、時刻t9から時刻t10の間において、自動停止条件は成立せず、ECU32による内燃機関11の自動停止が実行されることはない。時刻t11になると、作動油温TEは、温度D3に達し、その後、低下する。そして、時刻t12になったとき、作動油温TEは自動停止許可上限温度TH未満となり、ECU32は経過時間の計測を開始して、時刻t13において経過時間が温度D3、すなわち、最高油温TMAXに基づいて設定された規定時間に達すると、ECU32は、内燃機関11の自動停止を実行する。
【0047】
ところで、このような無段変速機18では、内燃機関11の再始動時、ECU32から各電磁弁33,34,52,53に対して所定の電圧が印加されると、各油圧室30,31が所定の油圧で保持されたり、前進クラッチ若しくは後退用ブレーキが徐々に係合するように制御されたりする。ところが、内燃機関11の再始動時、ECU32はモータジェネレータ15を駆動してクランキングを行うため、ECU32から油圧制御機構29の各電磁弁33,34,52,53に対して印加する電圧が低下する。そのため、内燃機関11の再始動時に無段変速機18の作動油温TEの温度が高く、それに伴って各電磁弁33,34,52,53のコイル温度も高くなると、各電磁弁33,34,52,53のコイルに通電される励磁電流が低下して、各電磁弁33,34,52,53の弁体に作用する吸引力が不足気味になる。すると、各電磁弁33,34,52,53を正常に駆動できなくなる懸念がある。とくに、内燃機関11の再始動が行われる際には、クランキングによる振動が、油圧制御機構29の各種電磁弁33,34,52,53に伝達されるため、弁体に作用する吸引力が不足気味であると弁体が振動して、正常に各電磁弁33,34,52,53を駆動できなくなる可能性が高くなる。そのため、自動停止及び自動始動が行われる車両では、再始動時において、各電磁弁33,34,52,53が正常に駆動できない状態であると、電磁弁53を通じてガレージ切替弁54をガレージシフト状態に切り替えることができず、減圧弁51の油圧が急激に前進クラッチ若しくは後退用ブレーキに作用する。すると、前進クラッチ若しくは後退用ブレーキが急係合してショックが発生したり、急係合によるイナーシャトルク入力がベルト25に伝達されるためにベルト25や前進クラッチ若しくは後退用ブレーキが滑って損傷が発生したりする可能性がある。
【0048】
また、電磁弁53を通じてガレージ切替弁54をガレージシフト状態に切り替えることができても、電磁弁52が正常に駆動できない状態であると、電磁弁52を通じた前進クラッチ若しくは後退用ブレーキの油圧制御を正常に行えない。すると、前進クラッチ若しくは後退用ブレーキが急係合してショックが発生したり、急係合によるイナーシャトルク入力がベルト25に伝達されることによってベルト25や前進クラッチ若しくは後退用ブレーキが滑って損傷したりする可能性がある。
【0049】
しかし、本実施形態では、無段変速機18の作動油温が自動停止許可上限温度THを超えた場合には、作動油温が低下して自動停止許可上限温度TH以下になってから規定時間経過したことを契機として、内燃機関11を自動停止する。そして、その後、アクセルペダルが踏み込まれたこと等を契機として、内燃機関11のクランキングが行われる。この際、電磁弁33,34,52,53のコイル抵抗値は、正常に各電磁弁33,34,52,53が駆動可能な最大抵抗値未満になっているため、電磁弁33,34,52,53は正常に駆動される。したがって、無段変速機18における各プーリ23,24の油圧室30,31の油圧Pin,Pouは適正に保持され、かつ前進クラッチ若しくは後退用ブレーキは適正に制御されて係合された状態で内燃機関11は始動する。そのため、内燃機関11の自動始動時であってもベルト25の張力は適正に保たれ、また前進クラッチ若しくは後退用ブレーキの係合も適正に制御される。したがって、内燃機関11の自動始動時にベルト25の滑りが発生したり、前進用クラッチ若しくは後退用ブレーキが損傷したりすることがない。
【0050】
この実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)ECU32は、無段変速機18の作動油温TEに基づいて、油圧制御機構29に設けられた各電磁弁33,34,52,53のコイル抵抗値を同定する。そして、同定したコイル抵抗値が電磁弁33,34,52,53を正常に駆動できる最大抵抗値以上の場合、自動停止条件は成立しないため、ECU32は、内燃機関11の自動停止を行わない。したがって、各電磁弁33,34,52,53を正常に駆動できない状況、換言すれば油圧制御機構29を通じて各プーリ23,24の油圧室30,31の油圧を適正に制御できない状況や電磁弁52,53によって前進用クラッチ若しくは後退用ブレーキを適正に制御できない状況にあるときには、他の自動停止条件が成立していても内燃機関11の自動停止が行われない。その結果、各プーリ23,24の油圧室30,31の油圧を適正に制御できない状況や前進用クラッチ若しくは後退用ブレーキを適正に制御できない状況、すなわちベルト25が滑ったり、前進用クラッチ若しくは後退用ブレーキが損傷したりする状況下で自動始動が行われることを回避できる。
【0051】
(2)ECU32は、作動油温TEが一旦、自動停止許可上限温度THを超えてから、再び自動停止許可上限温度TH未満になった場合には、経過時間が規定時間に達することで、電磁弁33,34,52,53のコイル抵抗値が、正常に電磁弁33,34,52,53を駆動可能な最大抵抗値未満になったものとして同定する。そのため、ECU32は、作動油温に対するコイル温度の追従遅れを考慮して、各電磁弁33,34,52,53のコイル抵抗値をより正確に同定したうえで内燃機関11の自動停止を行うことができる。
【0052】
(3)ECU32は、自動停止許可上限温度TH以上であるときに達した作動油温TEの最高温度を最高油温TMAXとしてメモリ32aに記憶する。そして、ECU32は、最高油温TMAXが高いときほど、規定時間を長く設定する。したがって、ECU32は、作動油温TEの低下に追従してコイル温度が低下し、コイル抵抗値が、確実に、電磁弁33,34,52,53を正常に駆動可能な最大抵抗値未満になってから内燃機関11の自動停止を行うことができる。
【0053】
(4)本実施形態において、ECU32は、始動時に各電磁弁33,34,52,53に印加される電圧が低下しても各電磁弁33,34,52,53が正常に駆動することの可能な状況下でしか、内燃機関11の自動停止を行わない。そのため、クランキング時における各電磁弁33,34,52,53の作動を確保することを目的として、例えばサブバッテリや電圧補償機器を車両に別途搭載しておく必要がなく、構成の簡略化を図ることができる。
【0054】
上述した実施の形態は、以下のようにこれを適宜変更した形態にて実施することもできる。
・内燃機関11及び無段変速機18の運転中に電磁弁33,34,52,53に印加される電圧が高ければ、電磁弁33,34,52,53における発熱量も大きくなり、電磁弁33,34,52,53はより高い温度に維持される。そのため、例えば、図9(a)に示すように、作動油温TEを温度TS1から温度TS2に変化させた際、電磁弁33,34,52,53に印加される電圧が低ければ、図9(b)に実線にて示すように、コイル温度は、温度TVX1から温度TVX2に推移する一方、電磁弁33,34,52,53に印加される電圧が高ければ、同図9(b)に一点鎖線にて示すように、温度TVX11から温度TVX2に推移する。そして、この際、温度TVX11は温度TVX1よりも高温であるため、その分、温度TVX11から温度TVX2に推移するまでの時間Y2は、温度TVX1から温度TVX2に推移するまでの時間Y1よりも長くなる。すなわち、内燃機関11及び無段変速機18の運転中に電磁弁33,34,52,53に印加される電圧が高い場合、作動油温に対するコイル温度の追従遅れは大きくなる。そこで、この変形例では、内燃機関11及び無段変速機18の運転中、電磁弁33,34,52,53に印加される電圧が高いときほど、規定時間が長くなるように補正する。例えば、内燃機関11の運転中に電磁弁33,34,52,53に印加される電圧を検出し、検出した電圧が高いときほど、補正係数(≧1.0)が大きくなるように算出する。そして、その後、ECU32のメモリ32aに予め記憶されたマップを参照して、最高油温TMAXに応じた規定時間を算出し、その算出した規定時間に対して補正係数を乗算して、その結果得られた値を新たな規定時間とする。この構成によれば、最高油温TMAXの他に、内燃機関11及び無段変速機18の運転中において電磁弁33,34,52,53に印加される電圧を併せて考慮したかたちで規定時間を設定することができる。そのため、より適切な規定時間を設定することができ、無段変速機18の作動不良が発生し得る状況下で、自動始動が行われることを好適に回避できる。
【0055】
・自動停止許可上限温度THは、少なくとも作動油温の上限温度TQ以下の温度であればよく、上限温度TQと等しくてもよいし、上限温度TQより低くてもよい。
・電磁弁33,34,52,53の種類についてはとくに限定しない。例えば、デューティソレノイドでもよいし、リニアソレノイドでもよい。
【0056】
・規定時間を最高油温TMAX等に基づいて可変設定するようにしたが、この時間を固定値としてもよい。ただしこの場合には、最高油温TMAXが想定される最も高い温度から急激に自動停止許可上限温度THまで低下した場合であっても、電磁弁33,34,52,53を正常に駆動できる温度にまでコイル温度が低下することのできる時間として規定時間を設定する。
【0057】
・本発明を有段式の自動変速機を搭載した車両に用いてもよい。なお、自動変速機としてはトルクコンバータを有する一般的なものの他、トルクコンバータに代えて自動クラッチを有するもの、いわゆる自動制御式マニュアルトランスミッションも含む。そしてこの場合、内燃機関11の始動時において油圧制御機構に設けられた電磁弁に対して印加する電圧が低下しても、このときコイル抵抗値は最大抵抗値未満になっているため、電磁弁を正常に駆動することができ、油圧制御機構を通じた適正な油圧制御を行うことができる。したがって、本発明を有段式の自動変速機を搭載した車両に用いた場合、内燃機関11の自動始動時に、摩擦係合要素の係合ショックが生じることを抑制できる。
【符号の説明】
【0058】
11…内燃機関、18…自動変速機としての無段変速機、29…油圧制御機構、32…同定手段としての電子制御装置、33,34,52,53…電磁弁、40…油温センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧制御用の電磁弁を有する油圧制御機構を通じてその作動状態が制御される自動変速機を搭載し、自動停止条件が成立した場合には内燃機関を自動停止させ、自動始動条件が成立した場合には前記内燃機関を自動始動する車両の制御装置において、
前記電磁弁のコイル抵抗値を同定する同定手段を備え、
前記自動停止条件として、前記同定されるコイル抵抗値が前記電磁弁を正常に駆動可能な最大抵抗値未満であることを含む
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記同定手段は前記自動変速機の作動油温を検出する検出手段を含み、その検出される作動油温が所定の自動停止許可上限温度以上になってから作動油温が低下して前記自動停止許可上限温度未満にあるときには作動油温が同自動停止許可上限温度となったときからの経過時間を計時しその経過時間が所定の規定時間に達することで前記コイル抵抗値が前記最大抵抗値未満であるものとしてこれを同定する
請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記同定手段は、
前記作動油温が前記自動停止許可上限温度以上であるときに同作動油温の推移における最高油温を記憶する記憶手段と、
前記最高油温が高いときほど前記規定時間が長くなるようにこれを設定する設定手段と、
を備える
請求項2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記同定手段は前記内燃機関の運転中に前記電磁弁に印加される電圧を検出し、同電圧が高いときほど前記規定時間が長くなるようにこれを補正する
請求項3に記載の車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−27172(P2011−27172A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173290(P2009−173290)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】