説明

車両の排水構造

【課題】ドレーンカバーに隣接して車両構成部材が配設される場合においても組付作業が効率的に行え且つドレーンカバーの水受け面積を大きくすることを課題とする。
【解決手段】車両の床部30に設けられた排水口へ水を導くように設けられたドレーンカバー41と、このドレーンカバー41に隣接した前記床部30に配設された車両構成部材21dとを有する車両の排水構造において、前記ドレーンカバー41の車両上方へ延出する縦壁41cに、前記車両構成部材21dに向かいその一部が車両構成部材21dに被さるように膨出する膨出部41gを形成し、この膨出部41gの側部から下部に亘ってスリット41hを切り欠く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の排水構造に関し、特に、車両の床部に設けられた排水口へ水を導くよう設けられるドレーンカバーと、このドレーンカバーに隣接した床部に配設される、例えばロールバーや電装品等の車両構成部材とを有する車両の排水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、オープントップ型式の車両として、車室を形成する屋根の少なくとも一部を車体に格納可能とし、屋根を格納することによりオープン形式とすることができる、開閉可能な屋根を備えるコンバーティブル型式の車両が知られている。
【0003】
このような型式の車両において、屋根と格納部周辺との間から雨水が車室内に侵入するのを防止するための排水構造が提案されている(特許文献1)。特許文献1に記載された排水構造は、屋根の下端部に位置するフォーミングバーに取り付けられたレインレールと、このレインレールに形成した排水口の下方でセンターピラーとタイヤハウスとの間に跨って排水受けパネルを設けて、この排水受けパネルから排水パイプを介して車外に雨水を排出する構造である。
【0004】
一方、近年、オープントップ型式の車両においては、その横転時等に乗員の頭部を保護するために、車両上方に延びるロールバーが設けられるようになっている。
【0005】
【特許文献1】実開昭62−64630号公報(第4図、第5図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載された排水構造においては、車室と幌の格納部との間には、前記ロールバーのユニットやあるいは電装品等の車両構成部材は現に存在しておらず、またそのような車両構成部材が車室近傍に取り付けられることを想定していない。したがって、前記のような車両構成部材が取り付けられる車両に、特許文献1に記載されたような排水構造をそのまま適用することは困難である。
【0007】
また、近年は、格納式の屋根の材料として、幌のような折り畳み可能な材料以外の堅牢な材料を用いた(ハードトップの)コンバーティブル型式の車両もいくつか提案されている。そのような車両で、例えば、リヤウインドウを有する屋根の一部を後端から車内側へ回転させつつ格納するようにすると、格納した屋根の端部が車室のシート(座席)近傍まで位置することとなり、その屋根の端部から落下する雨水や結露等の水を車外へ排出できるように排水受けを大きくする必要がある。
【0008】
さらに、屋根を格納可能とする車両の構造においては、その屋根の下縁部(換言すればリヤフェンダの上縁部)から車体内部に侵入してくる水を集めて車外へ排水する対策を取るのが一般的であるので、ロールバーユニット等の車両構成部材の近傍にそのための排水受け(ドレーンカバー)が好ましく設けられる。したがって、例えば、格納した屋根の端部から落下する水を受け入れ可能とするためには、ロールバーユニットに隣接して配置される前記ドレーンカバーを利用することが好ましい提案である。
【0009】
しかしながら、このようにドレーンカバーとロールバーユニットとを隣接して配置すると、ロールバーユニットを車体に組み付ける際に、ドレーンカバーの一部とロールバーユニットの組付け部(例えば脚部下端の取付フランジ等)とが干渉してしまい、ロールバーユニットの組付作業の効率低下を招いたり、ドレーンカバーの損傷が生じてしまう。
【0010】
本発明は以上のような現状に鑑みてなされたもので、ドレーンカバーに隣接して車両構成部材が配設される場合においても、車両構成部材の組付作業が効率的に行え、かつ、ドレーンカバーの水受け面積を大きくすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本願の請求項1に記載の発明は、車両の床部に設けられた排水口へ水を導くように設けられたドレーンカバーと、このドレーンカバーに隣接した前記床部に配設された車両構成部材とを有する車両の排水構造であって、前記ドレーンカバーの車両上方へ延出する縦壁には、前記車両構成部材に向かいその一部が車両構成部材に被さるように膨出する膨出部が形成され、この膨出部には、側部から下部に亘って切り欠かれたスリットが設けられていることを特徴とする。
【0012】
次に、本願の請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の車両の排水構造であって、前記膨出部の上面は、車両構成部材に近づくほど下方に低くなる傾斜面とされていることを特徴とする。
【0013】
次に、本願の請求項3に記載の発明は、前記請求項1又は2に記載の車両の排水構造であって、前記膨出部の反膨出側の面に、スリットの一部を覆う薄膜部材が備えられていることを特徴とする。
【0014】
次に、本願の請求項4に記載の発明は、前記請求項1又は2に記載の車両の排水構造であって、前記膨出部の反膨出側の面に、スリットの全部を覆う薄膜部材が備えられていることを特徴とする。
【0015】
次に、本願の請求項5に記載の発明は、前記請求項3又は4に記載の車両の排水構造であって、前記スリットの下の縁部は、幅方向の中央部が下方に低くなっていることを特徴とする。
【0016】
そして、本願の請求項6に記載の発明は、前記請求項1から5のいずれかに記載の車両の排水構造であって、車両は開閉式の屋根を備え、この屋根の少なくとも一部が車体内部に格納されたとき、屋根の端部が前記膨出部内に反膨出側から進入するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
まず、請求項1に記載の発明によれば、車両の床部に設けられた排水口へ水を導くように設けられたドレーンカバーと、このドレーンカバーに隣接した前記床部に配設された車両構成部材とを有する車両の排水構造において、前記ドレーンカバーの車両上方へ延出する縦壁に、前記車両構成部材に向かいその一部が車両構成部材に被さるように膨出する膨出部を形成したから、この膨出部により、ドレーンカバーの水受け面積を拡大することができる。しかも、この膨出部の側部から下部に亘ってスリットを切り欠いたから、車両構成部材の組付時に、この膨出部を車両構成部材で押圧して変位させることができ、車両構成部材の組付作業が効率的に行える。
【0018】
次に、請求項2に記載の発明によれば、前記膨出部の上面を車両構成部材に近づくほど下方に低くなる傾斜面としたから、車両構成部材を車外から投入する車両構成部材の組付時に、車両構成部材が前記傾斜面で組付位置に的確に案内される。
【0019】
次に、請求項3に記載の発明によれば、前記膨出部の反膨出側の面にスリットの一部を覆う薄膜部材を備えたから、膨出部ないしスリットがいかなる形状であっても、前記薄膜部材によって膨出部内部で受けた排水を確実にドレーンカバー内へ導き、ひいては排水口へ導くことができる。
【0020】
次に、請求項4に記載の発明によれば、前記膨出部の反膨出側の面にスリットの全部を覆う薄膜部材を備えたから、この薄膜部材とスリット縁部との接触長さが増し、摩擦抵抗が増すことになる。その結果、薄膜部材が膨出側へ押されたときに、薄膜部材がスリットから外へ飛び出して反膨出側の面に戻らなくなるという不具合を防止することができる。また、膨出部のスリットが内側から全面的に塞がれることになるから、例えばドレーンカバー内に水が溜まった状態で車両が傾斜しても、スリットから水が流出することが防止できる。
【0021】
次に、請求項5に記載の発明によれば、前記スリットの下の縁部を幅方向の中央部で下方に低くしたから、薄膜部材が膨出側へ押されたときには、薄膜部材の下部もまた幅方向の中央部で下方に低くなり、その結果、薄膜部材が膨出部内部で受けることのできる排水の水受け面積をより一層拡大することができる。
【0022】
そして、請求項6に記載の発明によれば、開閉式屋根の少なくとも一部を車体内部に格納したとき、屋根の端部が前記膨出部内に反膨出側から進入するように構成したから、格納した屋根の端部から落下する水を確実にドレーンカバー内へ導き、ひいては排水口へ導くことができる。また、車両構成部材の組付時に車両構成部材で押圧されて変位した膨出部が元に戻らなくなっても、格納した屋根の端部で膨出側へ押されるから、膨出部は確実にその一部が車両構成部材に被さる位置に戻ることとなる。以下、発明の最良の実施形態を通して本発明をさらに詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は、本実施形態に係る車両1を示す斜視図である。この車両は、2ドア2シーターのコンバーティブル型式の車両であって、開閉式屋根10は、車室を車外から区画する展開位置(クローズド状態)と、車体内部に設けられた格納スペースに格納される格納位置(オープン状態)とに選択自在に切り替えることができる。なお、図1はクローズド状態を示している。
【0024】
開閉式屋根10は、耐候性、遮音性、防盗性に優れるハードトップ方式のものであって、フロントウインド11より後方でベルトラインより上方のピラーやルーフ部分が車室内のシート20(図2、図3参照)より後方でトランクより前方の格納スペースに格納される。この格納作業につき図2を参照して説明する。図2(a)は、開閉式屋根10が閉じられたクローズド状態の車両1の上部側面図、図2(d)は、開閉式屋根10が開かれたオープン状態の車両1の上部側面図である。図2(a)に示すように、車両1はフロントウインド11を有し、このフロントウインド11より後方の部分がハードトップ方式の開閉式屋根10とされている。開閉式屋根10は、ルーフパネル部分に相当する合成樹脂製のフロントルーフ12と、リヤピラー部分に相当する合成樹脂製のミドルルーフ13とを備え、ミドルルーフ13にバックウインド14が回動自在に嵌め込まれている。
【0025】
一方、車体の側部外表は、前から順に、フロントフェンダ17、サイドドア18及びリヤフェンダ19で形成され、リヤフェンダ19の上縁部とミドルルーフ13及びバックウインド14の下縁部との間に、可動カバーとしてのデッキカバー15が前後移動可能に備えられている。このデッキカバー15は、車体後部に設けられた前記開閉式屋根10の格納スペース(図2(c)及び図2(d)参照)の上面を覆うものである。なお、デッキカバー15の後方には、図1に示したように、トランクリッド16が設けられている。
【0026】
このクローズド状態の車両1をオープン状態にする開閉式屋根10の格納時には、まず、図2(a)に矢印で示したように、デッキカバー15を所定距離だけ後方移動させる。これにより、ルーフ部分の立設範囲より大きな面積の開口(図示せず)がシート20より後方の車体上面に現れる。図2(b)はこの状態を示している。
【0027】
次に、前記開口を通過させることにより、フロントルーフ12、ミドルルーフ13及びバックウインド14を車体内部の格納スペースに格納する。すなわち、図2(c)に示すように、ミドルルーフ13を後方に回動させ、その上にバックウインド14を前方に回動させ、さらにその上にフロントルーフ12をリンク機構(図示せず)を介して下降移動させる。
【0028】
そして、図2(c)に矢印で示したように、デッキカバー15を元の位置まで前方移動させる。これにより、前記開口がデッキカバー15で塞がれて、図2(d)に示したオープン状態への移行が完了する。なお、これとは逆に、オープン状態の車両1をクローズド状態にする開閉式屋根10の展開時には、図2(d)の状態から、図2(c)、図2(b)、図2(a)の順に作業が進行する。
【0029】
図3は、図2のI−I線に沿う概略断面図であって、前記車両1の車両構成部材としてのロールバーユニット21の位置を示すものである。すなわち、ロールバーユニット21は、シート20の直後方においてキックアップ部近傍のフロアパネル30に組み付けられている。ロールバーユニット21は、乗員の頭部を保護するためにシート20より上方に位置するロールバー21aと、このロールバー21aを支持するクロスバー21bと、このクロスバー21bの両側下面から垂下する脚部21cと、この脚部21cの下端に設けられてフロアパネル30に対接する取付フランジ21dとを有する。
【0030】
図4は、図3の点線で囲んだ部分の拡大平面図であって、前記ロールバーユニット21の取付フランジ21dとドレーンカバー41との位置関係を示すものである。まず、ロールバーユニット21の取付フランジ21dは、複数の取付ボルト22…22によりフロアパネル30に締め付け固定されている。一方、ドレーンカバー41は、このロールバーユニット21ないし取付フランジ21dに近接して、同じくフロアパネル30に組み付けられている。ドレーンカバー41は、
フロアパネル30に形成された排水口41dへ水を導くためのもので、フロアパネル30に対接する底部41aと、底部41aの周囲の傾斜部41bと、傾斜部41bの上縁部から車両上方へ延出する縦壁41cと、前記底部41aに形成されて前記フロアパネル30の排水口41dに一致する排出孔(符号省略)と、この排出孔及び前記排水口41dを覆う排水口カバー41eとを基本的に有している。
【0031】
そして、前記ドレーンカバー41のロールバーユニット21に対向する部分の縦壁41cには、図5〜図7にも示すように、前記ロールバーユニット21に向かって膨出する第1膨出部41fが形成されると共に、この第1膨出部41fには、前記ロールバーユニット21に向かってその一部が平面視で取付フランジ21dに被さるように膨出する第2膨出部41gが形成されている。そして、この第2膨出部41gには、側部から下部に亘ってスリット41hが切り欠かれている[請求項1の構成]。
【0032】
なお、図4に明示したように、ドレーンカバー41の車両側部には、詳しくは図示しないが、上下に延びるサイドドレーンカバー42が配置されている。このサイドドレーンカバー42は、リヤフェンダ19の上縁部から車体内部に侵入してきた水を集めてドレーンカバー41の傾斜部41bに落下させ、ドレーンカバー41の底部41aに導き、排水口41dから車外へ排出するためのものである。
【0033】
また、図4には、格納スペースに格納されたミドルルーフ13の端部を鎖線で示してある。図示したように、ミドルルーフ13が車体内部に格納されたとき、その端部が矢印iのように反膨出側から第1膨出部41f及び第2膨出部41g内に進入する[請求項6の構成]。つまり、車体内部に格納されたミドルルーフ13の端部は、ロールバーユニット21の取付フランジ21dに平面視でオーバーラップする。
【0034】
次に、図5及び図6に示すように、ドレーンカバー41の第1膨出部41f及び第2膨出部41gの上面41xは、ロールバーユニット21に近づくほど下方に低くなる傾斜面に形成されている[請求項2の構成]。
【0035】
次に、図5〜図7に示すように、ドレーンカバー41の第1膨出部41f及び第2膨出部41gの反膨出側の面に、スリット41hを覆う弾性体薄膜シート41iが備えられている。その場合に、図8に示すように、弾性体薄膜シート41iは、第2膨出部41gの側部から下部に亘って切り欠かれたスリット41hを全面的に覆ってもよいし(第1の実施形態)[請求項4の構成]、また、図9に示すように、部分的に覆ってもよい(第2の実施形態)[請求項3の構成]。
【0036】
なお、弾性体薄膜シート41iは、図8及び図9に斜線を施して示したように、その上部がドレーンカバー41の縦壁41cの内面上部に適宜の結合剤(接着剤等)で固定されている。
【0037】
そして、同じく図8及び図9に示したように、スリット41hの下の縁部は、幅方向の中央部41yが下方に低くなるように形成されている[請求項5の構成]。
【0038】
次に、本実施形態の作用を説明する。図5に示すように、ロールバーユニット21をフロアパネル30に組み付ける際は、先にフロアパネル30上にドレーンカバー41が組み付けられてある(このドレーンカバー41の組付けは、例えば、該カバー41の底部41aの排出孔(符号無し)とフロアパネル30の排水口41dとを一致させてこれらを嵌合することにより行われる)。この状態で、ロールバーユニット21の脚部21cを上方から降下させる。ロールバーユニット21の脚部21cの下端の取付フランジ21dがドレーンカバー41の縦壁41cの第1膨出部41fとは当接しないが第2膨出部41gとは当接する。
【0039】
そのまま、ロールバーユニット21の脚部21cを降下させていくと、図6に示すように、脚部21cの下端の取付フランジ21dが第2膨出部41gを反膨出側に押圧し、その結果、第2膨出部41gはスリット41hにより第1膨出部41fに対して反膨出側に相対的に撓んで変位することができる。したがって、ロールバーユニット21の脚部21cを円滑に降下させ続けることができる。
【0040】
最後に、図7に示すように、ロールバーユニット21の取付フランジ21dはフロアパネル30上に着地し、フロアパネル30の下面に具備されたウエルドナット23と取付ボルト22とによってフロアパネル30に締め付け固定される。これにより、車両構成部材としてのロールバーユニット21の車体への組付けが完了する。ドレーンカバー41の第2膨出部41gは、ロールバーユニット21の取付フランジ21dが通過すると、押圧力が解除されて、自然に元の位置に戻る。
【0041】
なお、図7には、図4と同様、格納スペースに格納されたミドルルーフ13の端部を示してある。図示したように、ミドルルーフ13が車体内部に格納されたとき、その端部が反膨出側から第1膨出部41f及び第2膨出部41g内に進入する[請求項6の構成]。つまり、車体内部に格納されたミドルルーフ13の端部は、ロールバーユニット21の取付フランジ21dに平面視で被さることになる。
【0042】
以上のように、本実施形態では、車両1のフロアパネル30に設けられた排水口41dへ水を導くように設けられたドレーンカバー41と、このドレーンカバー41に隣接したフロアパネル30に配設されたロールバーユニット21とを有する車両1の排水構造において、ドレーンカバー41の車両上方へ延出する縦壁41cに、ロールバーユニット21に向かってその一部がロールバーユニット21の取付フランジ21dに平面視で被さるように膨出する第2膨出部41g及び被さらないように膨出する第1膨出部41fを形成したから、これらの第1、第2膨出部41f,41gにより、ドレーンカバー41の水受け面積を拡大することができる。しかも、第2膨出部41gの側部から下部に亘ってスリット41hを切り欠いたから、ロールバーユニット21の組付時に、第2膨出部41gをロールバーユニット21の取付フランジ21dで押圧して変位させることができ(図6参照)、ロールバーユニット21の組付作業が効率的に行える。
【0043】
次に、前記膨出部41f,41gの上面41xをロールバーユニット21に近づくほど下方に低くなる傾斜面としたから(図5及び図6参照)、ロールバーユニット21を車外から投入するロールバーユニット21の組付時に、ロールバーユニット21が前記傾斜面41xでフロアパネル30上の組付位置に的確に案内される(つまりロールバーユニット21の組付作業容易性に優れる)。
【0044】
次に、前記膨出部41f,41gの反膨出側の面にスリット41hの一部を覆う弾性体薄膜シート41iを備えたから(図9参照)、より具体的には、スリット41hの下部を覆う弾性体薄膜シート41iを備えたから、膨出部41f,41gないしスリット41hがいかなる形状であっても、前記弾性体薄膜シート41iによって膨出部41f,41g内部で受けた排水を確実にドレーンカバー41内へ導き、ひいては排水口41dへ導くことができる。
【0045】
次に、前記膨出部41f,41gの反膨出側の面にスリット41hの全部を覆う弾性体薄膜シート41iを備えたから(図8参照)、この薄膜シート41iとスリット41hの縁部との接触長さが増し、摩擦抵抗が増すことになる。その結果、薄膜シート41iが膨出側へ押されたときに、薄膜シート41iがスリット41hから外へ飛び出して反膨出側の面に戻らなくなるという不具合を防止することができる。また、膨出部41f,41gのスリット41hが内側から全面的に塞がれることになるから、例えばドレーンカバー41内に水が溜まった状態で車両1が傾斜しても、スリット41hから水が流出することが防止できる。
【0046】
次に、前記スリット41hの下の縁部を幅方向の中央部41yで下方に低くしたから(図8及び図9参照)、弾性体薄膜シート41iが膨出側へ押されたときには、薄膜シート41iの下部もまた幅方向の中央部で下方に低くなり、その結果、薄膜シート41iが膨出部41f,41g内部で受けることのできる排水の水受け面積をより一層拡大することができる。
【0047】
そして、開閉式屋根10のミドルルーフ13を車体内部に格納したとき、ミドルルーフ13の端部が前記膨出部41f,41g内に反膨出側から進入するように構成したから(図4及び図7参照)、格納したミドルルーフ13の端部から落下する水を確実にドレーンカバー41内へ導き、ひいては排水口41dへ導くことができる。また、ロールバーユニット21の組付時にロールバーユニット21の取付フランジ21dで押圧されて変位した第2膨出部41gが元に戻らなくなっても、格納したミドルルーフ13の端部で膨出側へ押されるから、第2膨出部41gは常に確実にその一部がロールバーユニット21の取付フランジ21dに平面視で被さる位置に戻ることとなる。
【0048】
なお、前記実施形態は、本発明の最良の実施形態ではあるが、特許請求の範囲を逸脱しない限り、種々の修正や変更を施してよいことはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上、具体例を挙げて詳しく説明したように、本発明は、ドレーンカバーに隣接して車両構成部材が配設される場合においても、車両構成部材の組付作業が効率的に行え、かつ、ドレーンカバーの水受け面積を大きくすることが可能な技術であるから、車両の排水構造の技術分野において広範な産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の最良の実施の形態に係る車両の斜視図である。
【図2】前記車両の開閉式屋根の格納作業を段階的に示す説明図である。
【図3】図2のI−I線に沿う概略断面図であって前記車両のロールバーユニットの位置を示すものである。
【図4】図3の点線で囲んだ部分の拡大平面図であってドレーンカバーとロールバーユニットの取付フランジとの位置関係を示すものである。
【図5】図4のII−II線に沿う断面図であってロールバーユニットの車体床部への組付作業の初期段階を示すものである。
【図6】同、中間段階を示すものである。
【図7】同、終了段階を示すものである。
【図8】ドレーンカバーの膨出部、スリット及び薄膜部材を示すため、ドレーンカバーの縦壁を内側から見た(図5の矢印参照)部分図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態を示す、図8と類似の部分図である。
【符号の説明】
【0051】
1 車両
10 開閉式屋根
13 ミドルルーフ(屋根の一部)
20 シート
21 ロールバーユニット(車両構成部材)
21c 脚部
21d 取付フランジ
30 フロアパネル(車両の床部)
41 ドレーンカバー
41c 縦壁
41d 排水口
41f 第1膨出部
41g 第2膨出部
41h スリット
41i 弾性体薄膜シート(薄膜部材)
41x 膨出部上面(傾斜面)
41y スリット下縁部幅方向中央部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の床部に設けられた排水口へ水を導くように設けられたドレーンカバーと、このドレーンカバーに隣接した前記床部に配設された車両構成部材とを有する車両の排水構造であって、
前記ドレーンカバーの車両上方へ延出する縦壁には、前記車両構成部材に向かいその一部が車両構成部材に被さるように膨出する膨出部が形成され、
この膨出部には、側部から下部に亘って切り欠かれたスリットが設けられていることを特徴とする車両の排水構造。
【請求項2】
前記請求項1に記載の車両の排水構造であって、
前記膨出部の上面は、車両構成部材に近づくほど下方に低くなる傾斜面とされていることを特徴とする車両の排水構造。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の車両の排水構造であって、
前記膨出部の反膨出側の面に、スリットの一部を覆う薄膜部材が備えられていることを特徴とする車両の排水構造。
【請求項4】
前記請求項1又は2に記載の車両の排水構造であって、
前記膨出部の反膨出側の面に、スリットの全部を覆う薄膜部材が備えられていることを特徴とする車両の排水構造。
【請求項5】
前記請求項3又は4に記載の車両の排水構造であって、
前記スリットの下の縁部は、幅方向の中央部が下方に低くなっていることを特徴とする車両の排水構造。
【請求項6】
前記請求項1から5のいずれかに記載の車両の排水構造であって、
車両は開閉式の屋根を備え、この屋根の少なくとも一部が車体内部に格納されたとき、屋根の端部が前記膨出部内に反膨出側から進入するように構成されていることを特徴とする車両の排水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−296904(P2007−296904A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−124860(P2006−124860)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】