説明

車両の燃料タンク配置構造

【課題】 燃料タンクの容量を大きくするとともに、燃料タンク内の燃料の残量による車体重量バランスの変化を抑えることにある。
【解決手段】 前輪用サスペンションを支持するとともにステアリングシャフト、ハンドルを備えるフロントフレームと、このフロントフレームの後方に配置したシート25,26を支持するシートフレーム41との間に、キャビン37のスペースの床となる床部32を設け、シートフレーム41の下方にエンジン22及び燃料タンク24を配置した車両において、燃料タンク24を、エンジン22の前方に且つシートフレーム41に沿って車幅方向に延ばして配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の燃料タンク配置構造の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両の燃料タンク配置構造として、ドライバーズシートよりも下方に燃料タンクを配置したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第2605671号公報
【0003】
特許文献1を以下に説明する。なお、符号については同公報に記載されているものを使用した。
特許文献1の第1図及び第2図には、車体フレーム1の車両前後方向の中央部よりやや後方にエンジン2を配置し、このエンジン2の車体前方側にトランスミッション3を配置し、このトランスミッション3の更に車体前方側にトランスファー4を配置し、トランスミッション3及びトランスファー4の側方であって、ドライバーズシート9が取付けられるクロスメンバ12,13の直下に燃料タンク11を配置したことが記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した燃料タンク11は、車幅方向にはトランスミッション3と車体フレーム1とに挟まれているため、燃料タンク11の容量を大きく確保しようとした場合、燃料タンク11の前後に比較的大きなスペースがあるので、燃料タンク11を車両前後方向に延ばすことが考えられる。しかし、燃料タンク11は、車体の中心より左側に配置されているため、燃料タンク11を車両前後方向に延ばして容量を大きくすると、燃料タンク11内の燃料の残量によって、車体の左右及び前後の重量バランスが変化し易くなる。従って、燃料タンクの容量拡大と車体重量バランスの変化抑制とを両立させることが望まれる。
【0005】
本発明の目的は、車両の燃料タンク配置構造を改良することで、燃料タンクの容量を大きくするとともに、燃料タンク内の燃料の残量による車体重量バランスの変化を抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、前輪用サスペンションを支持するとともに前輪操舵部材を備えるフロントフレームと、このフロントフレームの後方に配置したシートを支持するシートフレームとの間に、キャビンスペースの床となる床部を設け、シートフレームの下方にエンジン及び燃料タンクを配置した車両において、燃料タンクを、エンジンの前方で且つシートフレームに沿って車幅方向に延ばして配置したことを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、燃料タンクの車幅方向の中央を車両前方に膨出させたことを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、膨出部を、左右のシート間に配置したことを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、燃料タンクの給油口を、運転者用シートの車幅方向外側下方に位置させるとともに、開閉リッドで覆ったことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明では、燃料タンクを、エンジンの前方で且つシートフレームに沿って車幅方向に延ばして配置したので、エンジンと、このエンジンの前方に位置するキャビンとの間は、居住性を考慮した場合に前後幅を大きくとるには制限があるため、燃料タンクの前後幅は小さくなるが、燃料タンクをシートフレームに沿って車幅方向に長い形状とすることができ、燃料タンクの容量を拡大することができる。また、燃料タンクを車幅のほぼ中央に配置することができ、燃料タンク内の燃料の残量が変化しても、車体の左右及び前後の重量バランスの変化を抑えることができる。
【0011】
請求項2に係る発明では、燃料タンクの車幅方向の中央を車両前方に膨出させたので、燃料タンクの容量をより一層大きくすることができ、1回の給油での走行可能距離を伸ばすことができる。また、シートフレームで左右のシートを支持した場合には、左右のシート間に膨出部が位置することになり、膨出部が乗員の足下の邪魔にならない。
【0012】
請求項3に係る発明では、膨出部を左右のシート間に配置したので、膨出部が乗員の足下の邪魔にならない。
【0013】
請求項4に係る発明では、燃料タンクの給油口を、運転者用シートの車幅方向外側下方に位置させるとともに、開閉リッドで覆ったので、運転者が乗車した状態、あるいは降車した状態で容易にリッドを開閉することができ、車両の使い勝手を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る燃料タンク配置構造を採用した車両の側面図であり、車両10は、車体フレーム11をフロントフレーム12、センタフレーム13及びリヤフレーム14から構成し、フロントフレーム12に左右の前輪16を懸架する前輪用サスペンション(不図示)を取付けるとともに前輪16を操舵する操舵部材(ステアリングシャフト17、このステアリングシャフト17の上端に取付けたハンドル18等)を備え、センタフレーム13にパワーユニット21(エンジン22及びこのエンジン22に一体的に取付けた変速機23からなる。)、燃料タンク24、左右のシート25,26(手前側の符号25のみ示す。)を取付け、リヤフレーム14に左右の後輪27を懸架する後輪用サスペンション(不図示)を取付けるとともに傾斜可能とした荷台28を取付けた不整地走行車両である。
【0015】
センタフレーム13は、乗員が乗降する際に足を掛ける左右一対のステップ31,31(手前側の符号31のみ示す。)と、このステップ31よりも一段高くした床部32とを備える。なお、36はフロントフレーム12とセンタフレーム13とに取付けたロールバーである。37はフロントフレーム12と、床部32と、ロールバー36とで囲まれたキャビンであり、このキャビン37内にシート25,26を配置し、これらのシート25,26に乗員が着座し、キャビン37の床となる床部32に足を載せる。
【0016】
図2は本発明に係る車両の平面図(図中の矢印(FRONT)は車両前方を表す。以下同じ。)であり、車両10のセンタフレーム13にシートフレーム41を取付け、このシートフレーム41でシート25,26を支持し、これらのシート24,25の下方であって車両前後方向に延ばした左右一対のロアサイドフレーム42,42の間にパワーユニット21を配置し、このパワーユニット21の前方で且つシート25,26の下方に車幅方向に延びるように燃料タンク24を配置したことを示す。
【0017】
図3は本発明に係る車体フレームの要部を示す平面図であり、左右のステップ31,31及び床部32を斜線を施して示す。
図中の符号73,73(図1も参照)は、ロアサイドフレーム42,42(図2参照)のそれぞれの上方に配置したサブフレームであり、ロアサイドフレーム42,42及びサブフレーム73,73は、ステップ31及び床部32を支持する左右一対のステップフレーム90,90を取付けた部材である。
【0018】
ステップフレーム90は、ロアサイドフレーム42から車両側方へ延ばしたロア第1サイドフレーム91、ロア第2サイドフレーム92及びロア第3サイドフレーム93と、これらのロア第1サイドフレーム91、ロア第2サイドフレーム92、ロア第3サイドフレーム93のそれぞれの先端に取付けた側面視コ字状のサイドコ字フレーム94(図1も参照)と、ロア第3サイドフレーム93から立ちあげたサイド起立フレーム(不図示)と、サブフレーム73から車両側方へ延ばしそして車両後方へ延ばすとともに先端を上記のサイド起立フレームに連結したL字状のアッパサイドL字フレーム97と、サブフレーム73から車両側方へ延ばすとともに先端をアッパサイドL字フレーム97に連結したアッパサイドフレーム98と、ロア第1サイドフレーム91及びアッパサイドL字フレーム97のそれぞれに渡して取付けた第1支柱(不図示)と、ロア第2サイドフレーム92及びアッパサイドフレーム98のそれぞれに渡して取付けた第2支柱(不図示)とからなる。
【0019】
ロア第1サイドフレーム91、ロア第2サイドフレーム92、ロア第3サイドフレーム93及びサイドコ字フレーム94は、前述のステップ31を載せるステップ支持フレーム103を構成する部材である。
サブフレーム73,73、アッパサイドL字フレーム97,97、アッパサイドフレーム98,98は前述の床部32を載せる床部支持フレーム104を構成する部材である。
【0020】
ステップ31は、車幅方向ではアッパサイドL字フレーム97よりも外側でサイドコ字フレーム94までの範囲で、車両前後方向ではサイドコ字フレーム94の前後長の範囲の部分であり、ステップ31の後端31aはシート25,26よりも後方に位置する。
【0021】
床部32は、車幅方向では左右のアッパサイドL字フレーム97を含め、これらの内側の範囲であり、車両前後方向では燃料タンク24よりも車両前方で、フロントフレーム12(図1参照)のフロント第2起立フレーム54(図1参照)より車両後方に位置する図示せぬダッシュボードとの境界を前端とする範囲の部分である。燃料タンク24が中央で車両前方へ膨出しているために、床部32の後縁32aは、前方に突出しているが、シート25,26間なので、特に乗員の足元が狭くなる心配はない。
【0022】
図4は本発明に係る燃料タンクの正面図であり、燃料タンク24は、2つのタンク半体を前後に合わせて形成したタンク本体181と、このタンク本体181の底に取付けることでタンク本体181に内蔵した燃料ポンプ182と、給油口183と、この給油口183を塞ぐキャップ184と、サブフレーム73(図1参照)に取付けるためにタンク本体181の前面に補強板185を介して取付けた前部ブラケット186,186と、シートフレーム41(図2参照)に取付けるためにタンク本体181の上部に取付けた複数の上部ブラケット188とからなる横長の部品である。
【0023】
図5は本発明に係る燃料タンクの平面図であり、燃料タンク24のタンク本体181は、前部タンク半体181aと、後部タンク半体181bとからなり、前部タンク半体181a及び後部タンク半体181bにそれぞれフランジ181c,181dを形成し、これらのフランジ181c,181dを接合したものである。
【0024】
前部タンク半体181aは、長手方向の中央を車両前方に膨出させて膨出部181eを形成した部材であり、後部タンク半体181bはトレー(tray:盆)状とした部材である。
上部ブラケット188は、後部タンク半体181bの上面に補強板191を介して取付けた部材である。
【0025】
このように、燃料タンク24を車両前後方向に扁平で、車幅方向に延ばし、且つ前部タンク半体181aの中央を車両前方に膨出させることで、シート25,26(図3参照)下でエンジン22(図2参照)の前方の狭い空間でも大きな容量を確保することができる。
【0026】
また、図2に戻って、燃料タンク24は、パワーユニット21、詳しくは、エンジン22の前方に近接させて配置したものであるから、燃料タンク24からエンジン22までの燃料配管を短くすることができ、燃料配管による圧力損失を抑えることができて、燃料ポンプ182を小型にすることができる。
【0027】
以上の図1〜図3で説明したように、本発明は第1に、前輪用サスペンションを支持するとともに前輪操舵部材としてのステアリングシャフト17、ハンドル18を備えるフロントフレーム12と、このフロントフレーム12の後方に配置したシート25,26を支持するシートフレーム41との間に、キャビン37のスペースの床となる床部32を設け、シートフレーム41の下方にエンジン22及び燃料タンク24を配置した車両10において、燃料タンク24を、エンジン22の前方に且つシートフレーム41に沿って車幅方向に延ばして配置したことを特徴とする。
【0028】
燃料タンク24を、エンジン22の前方に且つシートフレーム41に沿って車幅方向に延ばして配置したので、エンジン22と、このエンジン22の前方に位置するキャビン37との間は、居住性を考慮した場合に前後幅を大きくとるには制限があるため、燃料タンク24の前後幅は小さくなるが、燃料タンク24をシートフレーム41に沿って車幅方向に長い形状とすることができ、燃料タンク24の容量を大きくすることができる。また、燃料タンク24を車幅のほぼ中央に配置することができ、燃料タンク24内の燃料の残量が変化しても、車体の左右の重量バランスの変化を抑えることができる。
【0029】
本発明は第2に、燃料タンク24に、その車幅方向の中央部を車両前方に膨出させた膨出部181eを形成したことを特徴とする。
燃料タンク24に膨出部181eを形成したので、燃料タンク24の容量をより一層大きくすることができ、1回の給油での走行可能距離を伸ばすことができる。また、シートフレーム41で左右のシート25,26を支持した場合、左右のシート25,26間に膨出部181eが位置することになり、膨出部181eが乗員の足下の邪魔にならない。
【0030】
本発明は第3に、膨出部181eを、左右のシート25,26間に配置したことを特徴とする。
膨出部181eを左右のシート25,26間に配置したので、膨出部181eが乗員の足下の邪魔にならない。
【0031】
本発明は第4に、燃料タンク24の給油口183を、運転者用シート25の車幅方向外側下方、即ち運転者の左側下方に位置させるとともに、開閉リッドとしてのキャップ184で覆ったことを特徴とする。
【0032】
燃料タンク24の給油口183を、運転者用シート25の車幅方向外側下方に位置させるとともに、キャップ184で覆ったので、運転者が乗車した状態、あるいは降車した状態で容易にキャップ184を開閉することができ、車両10の使い勝手を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の燃料タンク配置構造は、シート下にエンジンを搭載した車両に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る燃料タンク配置構造を採用した車両の側面図である。
【図2】本発明に係る車両の平面図である。
【図3】本発明に係る車体フレームの要部を示す平面図である。
【図4】本発明に係る燃料タンクの正面図である。
【図5】本発明に係る燃料タンクの平面図である。
【符号の説明】
【0035】
10…車両、12…フロントフレーム、16…前輪、17,18…前輪操舵部材(ステアリングシャフト、ハンドル)、22…エンジン、24…燃料タンク、25,26…シート、32…床部、37…キャビン、41…シートフレーム、181e…燃料タンクの膨出部、183…給油口、184…開閉リッド(キャップ)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪用サスペンションを支持するとともに前輪操舵部材を備えるフロントフレームと、このフロントフレームの後方に配置したシートを支持するシートフレームとの間に、キャビンスペースの床となる床部を設け、前記シートフレームの下方にエンジン及び燃料タンクを配置した車両において、
前記燃料タンクは、前記エンジンの前方で且つ前記シートフレームに沿って車幅方向に延ばして配置されたことを特徴とする車両の燃料タンク配置構造。
【請求項2】
前記燃料タンクは、車幅方向のほぼ中央部に車両前方に膨出する膨出部を備えることを特徴とする請求項1記載の車両の燃料タンク配置構造。
【請求項3】
前記膨出部は、左右のシート間に配置されることを特徴とする請求項2記載の車両の燃料タンク配置構造。
【請求項4】
前記燃料タンクの給油口は、運転者用シートの車幅方向外側下方に位置するとともに、開閉リッドに覆われることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3記載の車両の燃料タンク配置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−103371(P2006−103371A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−289178(P2004−289178)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】