説明

車両の表示制御装置

【課題】本発明は、運転手に燃費の良い走行や燃費の良い運転を促す点灯制御を提供することを目的としている。
【解決手段】このため、燃費の良い走行状態の場合にインジケータを点灯表示する車両の表示制御装置において、タイマと車速検出手段と空調動作検出手段を設け、平均燃費の良否を判定する閾値と、空調用装置ON状態の瞬間燃費の良否を判定する閾値と、空調用装置OFF状態の瞬間燃費の良否を判定する閾値と、車両が所定の走行状態にあることを判定する閾値および走行状態が継続する経過時間を判定する閾値と、を予め設定し、実走行の平均燃費と瞬間燃費とを算出し、平均燃費が所定の閾値以上、かつ瞬間燃費が空調用装置のON/OFF状態に対応するいずれかの所定の閾値以上、かつ車速が所定の閾値以上となって所定の経過時間が経過して点灯条件が成立する場合にインジケータを点灯する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両の表示制御装置に係り、特に自動車の運転において燃費が良い場合に点灯することで、運転手に燃費の良い走行を促すインジケータの点灯制御(「エコランプ点灯制御」とも換言できる。)を行う車両の表示制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エコランプ点灯制御としては、以下の制御が知られている。
(1)特許文献1
インジェクタ信号から演算した燃料消費量と車速信号から演算した走行距離とにより燃料消費率を求め、その状態によってエコランプ点灯判定を行う。
(2)特許文献2
燃費向上に適したかどうかの運転操作状態判定をエンジン回転数と吸入吸気量とに基づく判定マップ、及び、車速とアクセルペダル開度とに基づく判定マップで行う。
(3)特許文献3
走行距離と燃料消費量とに基づいて瞬間燃費と平均燃費とを演算し、その偏差を燃費情報としてエコランプ点灯判定を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−42000号公報
【特許文献2】特開2003−220851号公報
【特許文献3】特開2007−298491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した特許文献1〜3の従来の制御においては、エアコン、つまり空調用装置の動作状態が考慮されていないため、空調用装置のON状態の場合に、全くエコランプであるインジケータが点灯しなくなる状態が想定されるという不都合がある。
【0005】
この発明は、運転手に燃費の良い走行や燃費の良い運転を促す点灯制御を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、この発明は、上述不都合を除去するために、走行距離と燃料消費量を含む車両の走行状態を示す各種パラメータを入力して燃費の良い走行状態と判定した場合にインジケータを点灯表示する車両の表示制御装置において、経過時間を計るタイマと、車速を検出する車速検出手段と、空調用装置のON/OFF検出する空調動作検出手段を設け、車両の比較的長時間にわたる走行履歴における燃料消費を反映する平均燃費の良否を判定するための閾値と、前記空調用装置がON状態の場合に比較的短時間の燃料消費を反映する瞬間燃費の良否を判定するための閾値と、前記空調用装置がOFF状態の場合に比較的短時間の燃料消費を反映する瞬間燃費の良否を判定するための閾値と、車両が所定の走行状態にあることを判定するための閾値およびその走行状態が継続している経過時間を判定する閾値と、を予め設定し、車両の実走行における平均燃費と瞬間燃費とを算出し、算出された平均燃費が所定の閾値以上、かつ、算出された瞬間燃費が検出された前記空調用装置のON/OFF状態に対応するいずれかの所定の閾値以上、かつ、検出された車速が所定の閾値以上となって所定の経過時間が経過している点灯条件が成立する場合に前記インジケータを点灯することを特徴とする車両の表示制御装置。
【発明の効果】
【0007】
以上詳細に説明した如くこの発明によれば、走行距離と燃料消費量を含む車両の走行状態を示す各種パラメータを入力して燃費の良い走行状態と判定した場合にインジケータを点灯表示する車両の表示制御装置において、経過時間を計るタイマと、車速を検出する車速検出手段と、空調用装置のON/OFF検出する空調動作検出手段を設け、車両の比較的長時間にわたる走行履歴における燃料消費を反映する平均燃費の良否を判定するための閾値と、空調用装置がON状態の場合に比較的短時間の燃料消費を反映する瞬間燃費の良否を判定するための閾値と、空調用装置がOFF状態の場合に比較的短時間の燃料消費を反映する瞬間燃費の良否を判定するための閾値と、車両が所定の走行状態にあることを判定するための閾値およびその走行状態が継続している経過時間を判定する閾値と、を予め設定し、車両の実走行における平均燃費と瞬間燃費とを算出し、算出された平均燃費が所定の閾値以上、かつ、算出された瞬間燃費が検出された空調用装置のON/OFF状態に対応するいずれかの所定の閾値以上、かつ、検出された車速が所定の閾値以上となって所定の経過時間が経過している点灯条件が成立する場合に前記インジケータを点灯する。
従って、空調用装置の駆動・停止のように運転方法とは異なる燃費悪化要素の影響を抑制できるので、運転の評価を安定して行うことができる。
また、安定した判断によって点灯するので、良い運転を促すことができる。特に、トータル的に燃費の悪い運転状態の下で一時的に燃費が良くなったとしてインジケータを点灯する不都合をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1はこの発明の実施例を示す車両の表示制御装置の条件判定用ロジック図である。(実施例)
【図2】図2は車両の表示制御装置の概略構成図である。(実施例)
【図3】図3は車両の表示制御装置の制御用タイムチャートである。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図面に基づいてこの発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例】
【0010】
図1〜図3はこの発明の実施例を示すものである。
図2において、1は車両の表示制御装置である。
この表示制御装置1は、走行距離と燃料消費量を含む車両の走行状態を示す各種パラメータを入力して燃費の良い走行状態と判定した場合にインジケータ2を点灯表示するエコランプ制御用の制御手段3を備えている。
そして、前記表示制御装置1は、経過時間を計るタイマ4と、車速を検出する車速検出手段5と、空調用装置(図示せず)のON/OFF検出する空調動作検出手段6とを備えている。
このとき、前記表示制御装置1の制御手段3は、図2に示す如く、例えば前記タイマ4を内蔵する。
また、前記制御手段3の入力側には、図2に示す如く、燃料消費検出手段7と、走行距離検出手段8と、エンジン回転数検出手段9と、前記車速検出手段5と、イグニションスイッチ10と、ブレーキスイッチ11と、シフト検出手段12と、前記空調動作検出手段6と、MIL(ミル)検出手段13とを接続する一方、前記制御手段3の出力側には、前記インジケータ2を接続している。
そして、前記燃料消費検出手段7は、エンジン(図示せず)への燃料噴射量から燃料消費を検出し、この検出信号を前記制御手段3に出力している。
前記走行距離検出手段8は、車両の走行距離を検出し、この検出信号を前記制御手段3に出力している。
前記エンジン回転数検出手段9は、エンジン回転数を検出し、この検出信号を前記制御手段3に出力している。
前記イグニションスイッチ10及びブレーキスイッチ11を前記制御手段3に接続して、各スイッチ10、11のON/OFF検出を行っている。
前記シフト検出手段12は、変速機(図示せず)のシフト状態を検出し、この検出信号を前記制御手段3に出力している。
前記空調動作検出手段6は、例えばA/Cコンプレッサ状態を検出して空調用装置のON/OFF検出を行うために、検出信号を前記制御手段3に出力している。
前記MIL(ミル)検出手段13は、図2に開示されるアンドの論理素子からなる前記表示制御装置1の条件判定用ロジック図からの判定信号を前記制御手段3に出力している。
【0011】
また、前記表示制御装置1は、車両の比較的長時間にわたる走行履歴における燃料消費を反映する平均燃費の良否を判定するための閾値A[km/L]と、前記空調用装置がON状態の場合に比較的短時間の燃料消費を反映する瞬間燃費の良否を判定するための閾値E[km/L]と、前記空調用装置がOFF状態の場合に比較的短時間の燃料消費を反映する瞬間燃費の良否を判定するための閾値F[km/L]と、車両が所定の走行状態にあることを判定するための閾値C[km/h]およびその走行状態が継続している経過時間を判定する閾値D[秒]と、を予め設定し、車両の実走行における平均燃費と瞬間燃費とを算出し、
算出された平均燃費が所定の閾値A[km/L]以上、かつ、算出された瞬間燃費が検出された前記空調用装置のON/OFF状態に対応するいずれかの所定の閾値E[km/L]、あるいは、閾値F[km/L]以上、かつ、検出された車速が所定の閾値C[km/h]以上となって所定の経過時間である閾値D[秒]が経過している点灯条件が成立する場合に前記インジケータ2を点灯する構成とする。
詳述すれば、この制御では瞬間燃費判定用マップを前記空調用装置のON/OFF状態で分け、空調用装置がON状態でも経済的な運転ができている場合は、インジケータ2を点灯するように閾値を別設定とするものである。
また、前記空調用装置のON/OFF状態で閾値が急激に変化すると、インジケータ2の点灯のハンチングに繋がるため、閾値切替のフィルタ処理を行う。
まず、前記インジケータ2の点灯条件は、前記イグニションスイッチ10のONからの平均燃費が閾値A[km/L]以上、かつ、瞬間燃費が閾値B[km/L]以上、かつ、車速が閾値C[km/h]以上で、閾値D[秒]以上継続、とする。
このとき、瞬間燃費の閾値B[km/L]は、図1のロジックに示す如く、車速のテーブルとし、前記空調動作検出手段6からの検出信号によって、A/Cコンプレッサ状態を検出して空調用装置のON/OFF検出を行い、前記空調用装置がON状態の場合に比較的短時間の燃料消費を反映する瞬間燃費の良否を判定するための閾値E[km/L]とする一方、前記空調用装置がOFF状態の場合に比較的短時間の燃料消費を反映する瞬間燃費の良否を判定するための閾値F[km/L]とし、ヒステリシスを設ける。
従って、空調用装置の駆動・停止のように運転方法とは異なる燃費悪化要素の影響を抑制できるので、運転の評価を安定して行うことができる。
また、安定した判断によって点灯するので、良い運転を促すことができる。特に、トータル的に燃費の悪い運転状態の下で一時的に燃費が良くなったとして前記インジケータ2を点灯する不都合をなくすことができる。
【0012】
追記すれば、ある程度長い時間、あるいは、ある程度長い距離の走行での燃費を示す平均燃費を判定する閾値A[km/L]は、単純に高い値に設定すると、それだけで絶対的な点灯時間が短くなり、燃費の良い運転を指示する点灯の機会を奪うことになる。
また、停車中のアイドル運転時間や暖機運転等の運転者の運転とは異なる不可抗力的な要因も平均燃費の低下に繋がることと、逆に、減速時フューエルカットに基づく一時的な燃費改善効果があり、その影響を低減することとを踏まえて、平均燃費を判定する閾値A[km/L]を最適な値、なるべくなら低い値にすることが望ましい。
例えば、決められたモード走行燃費を考慮して、所定の割合で決めても良い。
平均燃費は、加速から減速に転じれば間も無く改善される瞬間燃費とは異なり、頻繁な加減速に基づく変動を鈍らせるだけでなく、加速における燃費の悪化度合い(深度)を反映するので、累積する走行範囲を変更することによって反映の大きさを変更することができる。
【0013】
前記瞬間燃費を判定する閾値B[km/L]は、非常に短時間の燃費、短時間の運転状態を示すものなので、運転状態の良否を逐次判定するのに都合が良い。
しかし、長距離走行後のトータル的な燃費の良否の影響が大きいので、標準的な燃費を考慮して決めるのが望ましい。
ある程度高い値にする方が好ましい。
しかし、再考速段(対応する変速比)の定速走行でしか出ないような燃費に据えることは、前記インジケータ2の点灯の意味をなさないので、それよりも十分小さい値とする。
【0014】
走行中の車速が所望の走行状態であることを判定する閾値C[km/h]は、一般的な経済速度(60〜80km/h)に近い値に設定すれば、長距離走行後のトータル的な燃費は良くなるものの、安易に高い値設定することは、閾値A[km/L]と同様に、燃費の良い運転を指示する前記インジケータ2の点灯の機会を奪うことになる。
閾値A[km/L]とのバランスを考慮しながら、なるべくなら経済速度より十分に低い値にすることが望ましい。
【0015】
閾値C[km/h]の状態が継続している経過時間を判定する閾値D[秒]も、同様の理由から、なるべくなら低い値にすることが望ましい。
【0016】
減速度の大きさを判定する閾値E[km/L]は、減速時間をできるだけ長く採る方がフューエルカットを実施する時間を長くして燃費改善効果を得ることができる観点から、緩やかな減速を推奨するように値を低く設定するのが良い。
値を高くすると、急減速しか前記インジケータ2が消灯しなくなり、燃費を向上する運転を指示する点灯が果たせなくなる。
【0017】
また、前記表示制御装置1の制御手段3によって前記空調用装置のON/OFFが切り替えられた際に、この空調用装置がON状態の場合に比較的短時間の燃料消費を反映する瞬間燃費の良否を判定するための閾値E[km/L]と、前記空調用装置がOFF状態の場合に比較的短時間の燃料消費を反映する瞬間燃費の良否を判定するための閾値F[km/L]と、を切り替える緩和制御として、切替直後の所定時間は閾値E[km/L](あるいは、閾値F[km/L])を保持し、その後所定の更新量ずつ段階的に閾値E[km/L]、あるいは、閾値F[km/L]を更新し、その更新された閾値E[km/L]、あるいは、閾値F[km/L]を瞬間燃費を判定する閾値E[km/L]、あるいは、閾値F[km/L]として用いる。
つまり、瞬間燃費の閾値B[km/L]を以下の式、
B = E X G + F X (1−G)
によって算出する際に、なまし係数Gを使用する。
このなまし係数Gについて、図3に沿って説明する。
(1)空調用装置がON状態の場合、かつ、ディレイH、傾きIのときに、なまし係数Gは以下の式によって算出される。
G(n) = G(n−1)+ I
n:制御周期
(2)空調用装置がOFF状態の場合、かつ、ディレイJ、傾きKのときに、なまし係数Gは以下の式によって算出される。
G(n) = G(n−1)− K
従って、燃費運転を判断する閾値が急変しないようにでき、点灯制御の信頼性を確保できる。特に、運転者の運転の変動が比較的小さい場合に、相対的に閾値が大きく変動することによって、点灯消灯状態が切り替わり、違和感を与えるような不都合をなくすことができる。
【0018】
なお、平均燃費の閾値A[km/L]は、前記イグニションスイッチ10のOFF動作でリセットする。
これは、エンジン冷機走行時(燃費悪化)に運転終了したときのことを考慮するためである。
この平均燃費の閾値A[km/L]については、前記空調用装置のON/OFF状態は考慮しない。
【符号の説明】
【0019】
1 車両の表示制御装置
2 インジケータ
3 制御手段
4 タイマ
5 車速検出手段
6 空調動作検出手段
7 燃料消費検出手段
8 走行距離検出手段
9 エンジン回転数検出手段
10 イグニションスイッチ
11 ブレーキスイッチ
12 シフト検出手段
13 MIL検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行距離と燃料消費量を含む車両の走行状態を示す各種パラメータを入力して燃費の良い走行状態と判定した場合にインジケータを点灯表示する車両の表示制御装置において、経過時間を計るタイマと、車速を検出する車速検出手段と、空調用装置のON/OFF検出する空調動作検出手段を設け、車両の比較的長時間にわたる走行履歴における燃料消費を反映する平均燃費の良否を判定するための閾値と、前記空調用装置がON状態の場合に比較的短時間の燃料消費を反映する瞬間燃費の良否を判定するための閾値と、前記空調用装置がOFF状態の場合に比較的短時間の燃料消費を反映する瞬間燃費の良否を判定するための閾値と、車両が所定の走行状態にあることを判定するための閾値およびその走行状態が継続している経過時間を判定する閾値と、を予め設定し、車両の実走行における平均燃費と瞬間燃費とを算出し、算出された平均燃費が所定の閾値以上、かつ、算出された瞬間燃費が検出された前記空調用装置のON/OFF状態に対応するいずれかの所定の閾値以上、かつ、検出された車速が所定の閾値以上となって所定の経過時間が経過している点灯条件が成立する場合に前記インジケータを点灯することを特徴とする車両の表示制御装置。
【請求項2】
前記空調用装置のON/OFFが切り替えられた際に、この空調用装置がON状態の場合に比較的短時間の燃料消費を反映する瞬間燃費の良否を判定するための閾値と、前記空調用装置がOFF状態の場合に比較的短時間の燃料消費を反映する瞬間燃費の良否を判定するための閾値と、を切り替える緩和制御として、切替直後の所定時間は閾値を保持し、その後所定の更新量ずつ段階的に閾値を更新し、その更新された閾値を瞬間燃費を判定する閾値として用いることを特徴とする請求項1に記載の車両の表示制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−31732(P2012−31732A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169220(P2010−169220)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】