説明

車両の駆動制御装置及び発進制御方法

【課題】車両発進時の車両安定性を向上する技術を課題としている。
【解決手段】エンジン2で駆動する前輪1Fとモータ3で駆動する後輪1Rとを備える。車両を発進させる前に第2の車輪の接地面が所定以上の低μ路面か否かを判定する。そして、上記接地面が低μ路面でないと判定した場合に、モータ3の駆動によって車両を発進し、上記接地面が低μ路面と判定した場合にはエンジン2の駆動で車両を発進する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両における発進制御に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
従来のハイブリッド車両の駆動制御としては、例えば特許文献1に記載の技術がある。
この従来技術では、発進時には、エンジンを駆動せず、モータの駆動トルクのみで車両を駆動して発進する。これは、低加速度域ではエンジンの燃焼効率が悪いためである。
【特許文献1】特許第3616053号公報(段落0018)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来技術では、モータで駆動する車輪の接地面が、氷結路などの極低μ路面である場合、発進時に、車両の尻振りやカント流れが発生する可能性がある。すなわち、従来技術は、車両発進時に、路面によっては車両安定性に影響がある場合がある。
本発明は、燃費の悪化を抑えつつ、車両発進時の車両安定性を向上する技術を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明は、内燃機関で駆動する第1の車輪とモータで駆動する第2の車輪とを備えて、車両を発進させる前に第2の車輪の接地面が所定以上の低μ路面か否かを判定する。そして、上記接地面が低μ路面でないと判定した場合に、モータの駆動によって車両を発進し、上記接地面が低μ路面と判定した場合には内燃機関の駆動で車両を発進する。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、モータで駆動する第2の車輪の接地面が所定以上の低μ路面でない場合には、モータ駆動で発進することで燃費の悪化を抑える。一方、モータで駆動する第2の車輪の接地面が所定以上の低μ路面で有るため、モータ駆動では発進安定性に影響があると判定すると内燃機関の駆動で発進する。
これによって、燃費の悪化を抑えつつ、車両発進時の車両安定性を向上することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
(第1実施形態)
次に、本発明の第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態の車両のシステム構成を示す概要図である。
(構成)
本実施形態の車両は、前輪1Fをエンジン2(内燃機関)で駆動し、後輪1Rをモータ3で駆動する構成を採用している。すなわち、エンジン2の出力軸に変速機4を介して前輪1Fが接続する。モータ3の出力軸に減速機を介して後輪1Rが接続する。
符号1はエンジンコントローラ5である。エンジンコントローラ5は、制駆動コントローラ9からの駆動指令に応じたエンジン出力となるように、スロットル開度などを調整する。
【0007】
符号2は、モータコントローラ7である。モータコントローラ7は、モータ3に供給する電圧や界磁電流を調整することで、制駆動コントローラ9からの駆動指令に応じたモータ3出力となるように制御する。符号10はインバータを示す。符号11はバッテリを示す。すなわち、バッテリ11の電力がインバータ10を介してモータ3に供給可能となっている。この例では、インバータ10を制御することでモータ3を制御する。もっともモータ3は直流モータであっても良い。
【0008】
また、上記例では、バッテリ11からモータ3に電力を供給する車両の例を示している。これに代えて、エンジン2で駆動する発電機によって発生した電力をモータ3に供給する構成のハイブリッド車両であっても、本実施形態は適用可能である。
また、各輪1F、1Rには、ディスクブレーキ等の制動装置12を装備する。各制動装置12は、制動コントローラ8からの指令によって各輪に制動力を付与する。
【0009】
制動コントローラ8は、制駆動コントローラ9からの制動要求値に基づき、各輪の制動トルクを演算する。そして、演算した制動トルクで各輪の制動装置12で制動トルクを発生させる。
符号13は、アクセルペダルのストローク量を検出するアクセルセンサである。アクセルセンサ13は、検出信号を制駆動コントローラ9に出力する。
【0010】
符号14は、ブレーキペダルのストローク量を検出するブレーキセンサである。ブレーキセンサ14は検出信号を制駆動コントローラ9に出力する。
また、符号15は、各輪に設けた車輪速センサである。車輪速センサ15は、検出した車輪速信号を制駆動コントローラ9に出力する。
制駆動コントローラ9は、図2に示すように、駆動制御本体部9A、発進走行処理部9B、通常走行処理部9C、及び制動処理部9Dを備える。なお、制駆動コントローラ9はイグニッションがオンとなることによって起動する。
【0011】
駆動制御本体部9Aは、車輪速センサ15等の信号に基づき車両が停止していると判定すると、発進走行処理部9Bに作動指令を出力する。また、車両が発進したと判定すると通常走行処理部9Cを作動する。
発進走行処理部9Bは、図3に示すように、路面μ判定手段9Ba、及び発進切換手段9Bbを備える。
路面μ判定手段9Baは、車両を発進させる前に、上記モータ3で駆動する車輪の接地面が所定以上の低μ路面か否かを判定する。
発進切換手段9Bbは、路面μ判定手段9Baに判定に基づき上記接地面が低μ路面でないと判定した場合に、モータ3の駆動によって車両を発進し、上記接地面が低μ路面と判定した場合には内燃機関の駆動で車両を発進する。
【0012】
通常走行処理部9Cは、アクセルセンサ13からの信号に基づき運転者の加速指示要求値を推定する。また、車輪速センサ15から車速を演算する。そして、加速指示要求値及び車速から駆動トルク指令値を演算する。そして、現在の車速に応じて、モータコントローラ7若しくはエンジンコントローラ5に駆動トルク指令値を出力する。具体的には、所定車速値以下の低速領域の場合には、モータコントローラ7に駆動トルク指令値を出力する。所定車速を越える場合には、エンジンコントローラ5に駆動トルク指令値を出力する。ただし、演算した駆動トルク指令値を、エンジン2若しくはモータ3だけでは出力出来無いと判定した場合には、駆動トルク指令値を前後輪1F、1Rへのトルク指令値に配分してエンジン2及びモータ3にトルク指令値を出力する。
また、制動処理部9Dは、ブレーキセンサ14からの信号に基づき制動要求値を演算する。演算した制動要求値を制動コントローラ8に出力する。
【0013】
次に、発進走行処理部9Bの処理を、図4を参照して説明する。
発進走行処理部9Bは、駆動制御本体部9Aからに起動により、まずステップS10にて、ブレーキセンサ14からの信号に基づき制動指示要求が解除したか否かを判定する。制動指示要求が解除したと判定した場合には、ステップS20に移行する。制動指示要求が解除してない場合には、ステップS10の処理を、所定の制御サイクルで繰り返す。
ステップS20では、モータコントローラ7に対し、クリープトルク相当の駆動トルク指令を出力する。
【0014】
次に、ステップS30では、モータ3でクリープトルク相当の駆動トルクが発生したか否かを判定し、クリープトルク相当の駆動トルクが発生した発生するとステップS40に移行する。クリープトルク相当の駆動トルクが発生したか否かは、モータ3の実電機子電流及び界磁電流値から判定可能である。
ステップS40では、前輪1Fに対する後輪1Rの車輪速差に基づき、後輪1Rに所定スリップ率以上のスリップが発生しているか判定する。所定スリップ率以上のスリップが発生していると判定すると、後輪1R接地面が所定以上の低μ路面と判定してステップS50に移行する。一方、所定スリップ率以上のスリップが発生していないと判定した場合には、ステップS60に移行する。
【0015】
ここで、極低μ路(例えばμ=0.05〜0.1)相当のスリップが発生しているか否かで判定する。すなわち、予めの実験等によって、上記極低μ路の場合でのモータ駆動トルクとスリップ率を求めておく。そして、そのスリップ率以上か否かで極低μ路か否かを判定する。
ステップS50では、アクセルセンサ13に基づきアクセルの踏み込みを検知すると、アクセルストロークに応じた発進用の駆動トルク指令値を演算する。続いて、モータコントローラ7への駆動トルク指令値の出力を停止すると共に、エンジンコントローラ5に対して、演算した駆動トルク指令値を出力する。その後ステップS70に移行する。
【0016】
一方、ステップS60では、アクセルセンサ13に基づきアクセルの踏み込みを検知すると、アクセルストロークに応じた発進用の駆動トルク指令値を演算する。続いて、モータコントローラ7に対して、演算した駆動トルク指令値を出力する。その後ステップS70に移行する。
ステップS70では、エンジン駆動で加速不足か否かを判定し、加速不足と判定した場合には、ステップS80に移行する。加速不足で無いと判定した場合にはステップS90に移行する。
ステップS80では、エンジン駆動と共にモータ3も駆動する。すなわち、4WD発進とする。その後、ステップS90に移行する。
ステップS90では、車両が所定車速になったことを検知すると、終了と判定して処理を終了する。
【0017】
(動作・作用)
本実施形態の車両では、主駆動輪である前輪1Fを内燃機関(エンジン2)で駆動し、従駆動輪である後輪1Rをモータ3で駆動する。すなわち、ハイブリッド車両である。
そして、原則として、発進は、モータ3で駆動する後輪1RでのEV発進を行う。これによって、車両の燃費向上と静粛性の向上を図っている。そして、車両の後輪1Rが極低μ路に乗っていた場合、発進時に不安定な車両挙動が発生することがあるが、これを回避することにより、ハイブリッド車両の燃費、静粛性、及び、低μ路での発進安定性の両立を図る。
【0018】
すなわち、ブレーキ解除により車両の発進を予測すると、後輪1Rをクリープ相当で駆動することで後輪1Rのスリップ発生状態を検知する。これによって、後輪1Rが極低μ路に乗っているかどうかを、モータ3によるEV発進駆動トルクを発生させる前に判別する。
そして、後輪1Rが極低μ路に乗っている場合にだけエンジン駆動で発進する。すなわち、車両の駆動状態を、燃費の悪化を最低限に抑え、安定性も良好である、エンジン駆動によるFF発進に切り替える。
【0019】
また、FF発進では加速が不可能と判定した場合には、4WD発進に切り替える。
ここで、モータ3で駆動する後輪1Rが、氷結路などの極めてμが低い路面にのっている場合、 後輪1RのみでのRRモータ3でのEV発進となる。このとき、車両の尻振りやカント流れが大きく発生して、安定性に影響が出る可能性がある。
なお、後輪1Rがスリップしてから、前輪1Fを駆動して4WD駆動とする制御を行う場合には、発進初期に後輪1Rのスリップが過大に発生する。この場合にも、車両の尻振りやカント流れが大きく発生して、安定性に影響が出る場合がある。
【0020】
上述のように、後輪1Rが極低μ路(例えばμ=0.05〜0.1)に乗っている状態で、RR発進(モータ3でのEV)をした場合、後輪1Rのスリップによりグリップを失い、大きなRr後輪1Rの横滑りやカント流れが発生する。例えば、寒冷地域に良く見られるような、冬季の交差点の道路や、踏み切りの一時停止線の前の路面を例に取ると、前輪1F勾配が4%、カントが3%の氷結路面と想定した場合、後輪1Rのみでの発進をしようと急激に駆動トルクを加えた場合、目安として、横滑り量50〜100cm発生し、運転者は急激な挙動に対処しようと修正舵90°以上も当てることになる。
【0021】
本実施形態では、このような現象を回避することができる。すなわち、後輪1Rが極低μ路(例えばμ=0.05〜0.1)に乗っている状態で、RR発進(モータ3でのEV)をした場合、後輪1Rのスリップによりグリップを失い、大きな車両挙動が発生する。しかし、前輪1FでのFF発進であれば、前輪1Fが高μ路にのっていれば挙動は殆ど発生しない。また、前輪1Fも低μ路に乗っていた場合でも、発生する挙動は非常に穏やかである。目安として、勾配が4%、カントが3%の氷結路面にて、前者では修正舵90°、横滑り量50〜100cm発生するが、後者では修正舵20°、横滑り量20cm程度に大幅に改善する。
【0022】
図5に、本実施形態を適用した場合のタイムチャート例を示す。
この例では、ブレーキがオフとなって、アクセルがオンとなる前にモータ3を駆動して後輪1Rが所定以上スリップするか否かを判定する。この例では、所定以上の後輪1Rのスリップが発生しているので、エンジン駆動で発進した場合の例である。
この場合には、車両挙動が小さいことが分かる。
比較例として、同じ場面を無条件でモータ駆動で発進した場合を図6に示す。この場合には、車両挙動が大きいことが分かる。
ここで、ステップS40は、路面μ判定手段9Baを構成する。ステップS40〜S80は、発進切換手段9Bbを構成する。ステップS20、S30は、モータクリープトルク発生手段を構成する。
前輪1Fは第1の車輪を構成する。後輪1Rは第2の車輪を構成する。
【0023】
(本実施形態の効果)
(1)路面μ判定手段9Baは、車両を発進させる前に、上記モータ3で駆動する車輪の接地面が所定以上の低μ路面か否かを判定する。発進切換手段9Bbは、路面μ判定手段9Baに判定に基づき上記接地面が低μ路面でないと判定した場合に、モータ3の駆動によって車両を発進し、上記接地面が低μ路面と判定した場合には内燃機関の駆動で車両を発進する。
【0024】
これによって、モータ3で駆動する第2の車輪の接地面が所定以上の低μ路面でない場合には、モータ駆動で発進することで燃費の悪化を抑える。一方、モータ3で駆動する第2の車輪の接地面が所定以上の低μ路面で有るため、モータ駆動では発進安定性に影響があると判定すると内燃機関の駆動で発進する。
これによって、燃費の悪化を抑えつつ、車両発進時の車両安定性を向上することが出来る。
特に、モータ駆動の車輪が後輪1Rであるときに効果が大きい。すなわち、極低μ路での、後輪1RでのEV発進時に車両の尻振りやカント流れが大きく発生することを改善出来る。しかも、エンジン2とモータ3の両方を駆動することによるエネルギーロスを防ぎ、ハイブリッドの本来の狙いである燃費についても、悪化を最小限に抑える。
【0025】
(2)モータクリープトルク発生手段は、運転者の制動指示要求による車両停止状態から当該制動指示要求の解除を検出すると、クリープトルク相当の駆動トルクをモータ3に発生させる。スリップ検出手段は、モータクリープトルク発生手段によるモータ3の駆動によって当該モータ3で駆動する車輪にスリップが発生したか否かを検出する。そして、スリップ検出手段の検出に基づき、上記接地面が所定以上の低μ路面と判定する。
【0026】
すなわち、運転者の発進加速要求操作によるモータ駆動の前に、後輪1Rの接地面が極低μ路に乗っているかどうかを判定する。その手段として、停止状態からのブレーキ解除時のモータトルクによるクリープ駆動トルクにより、後輪1Rのスリップが発生した場合は、極低μ路に後輪1Rがのっていると判定する。
比較的小さいクリープ駆動トルクによる、路面スリップを検知することで、確実に極低μ路であることを判定でき、かつ、この時点では大きなスリップは発生しないため、車両挙動も穏やかに出来る。
【0027】
(3)発進切換手段9Bbは、内燃機関の駆動による車両の発進では、加速不十分と判定すると、モータ3も駆動して4WD発進に切り換える。
すなわち、車両の安定性を優先した第2の発進モード(FF ENG発進)では加速が不十分と判定した場合には、加速優先の第3のモード、前輪1Fをエンジン2で、後輪1Rをモータ3で駆動する4WD発進に切り替える。
これによって、前後輪1F、1Rの4輪とも氷の上に乗っており、さらに勾配路であるような、稀な路面コンディションに遭遇した場合でも、脱出性を確保可能となる。すなわち、最終的には、燃費や、前後輪1F、1Rともスリップするような4輪空転の発生による車両挙動を犠牲にしても、加速優先にする4WDモードに移行することで、上記のような路面でも脱出性を確保できる。
【0028】
(変形例)
(1)上記実施形態では、モータクリープトルク発生制御手段は、クレープトルク相当のトルクのトルク指令値を一定の場合となっている。
これに代えて、モータクリープトルク発生制御手段は、クレープトルク相当のトルクのトルク指令値を連続的若しくは断続的に小さく制限しても良い。そして、モータ3の駆動トルクが所定値まで低下してもモータ3で駆動する車輪に所定以上のスリップが発生している場合に、上記接地面が所定以上の低μ路面と判定する。
【0029】
すなわち、運転者の発進加速要求操作によるモータ駆動の前に、後輪1Rの接地面が極低μ路に乗っているかどうかを判定する。その手段として、停止状態からのブレーキ解除時のモータトルクによるクリープ駆動トルクにより、後輪1Rのスリップが発生した場合に、モータクリープトルクを制限する。そして、モータクリープトルクが所定の閾値以下になってもスリップが収束しない、あるいは所定の閾値以上のスリップが発生する場合には、路面μが、非常に低いと判定する。
図7に、本変形例でのタイムチャート例を示す。
これによって、路面μが、Rr駆動を禁止するほど低いかどかの判定を確実に行える。
【0030】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図面を参照しつつ説明する。第1実施形態と同様な構成については同一の符号を付して説明する。
(構成)
本実施形態の基本構成は、上記第1実施形態と同様である。ただし、路面μ判定手段9Baでの処理が異なる。
本実施形態の路面μ判定手段9Baは、図8に示すように、テスト駆動制御手段9Ba-1、及びスリップ検出手段9Ba-2を備える。
テスト駆動制御手段9Ba-1は、運転者の制動指示要求による車両停止中に、内燃機関で駆動する車輪への制動を保持した状態で、モータ3を所定時間駆動する。
スリップ検出手段9Ba-2は、テスト駆動制御手段9Ba-1によるモータ3の駆動によって、当該モータ3で駆動する車輪にスリップが発生したか否かを検出する。
【0031】
そして、路面μ判定手段9Baは、スリップ検出手段9Ba-2の検出に基づき、上記接地面が所定以上の低μ路面と判定する。
すなわち、本実施形態の発進走行制御部9Bでは、ステップS20の処理が異なる。本実施形態のステップS20では、制動指示要求が出ているときに、後輪1Rブレーキだけに制動解除指令を制動コントローラ8に出力する。続いて、モータコントローラ7に、パルス状にモータトルク(テストパルス)を発生するトルク指令を出力する。
そして、ステップS40で、後輪1Rに所定以上のスリップが発生したか否かを検出する。
その他の構成は上記第1実施形態と同様である。
【0032】
(動作・作用)
運転者の発進加速要求操作によるモータ駆動の前に、後輪1Rの接地面が極低μ路に乗っているかどうかを判定する。その手段として、車両停止状態で且つブレーキ時に、前輪1Fブレーキの制動力は保持しつつ、後輪1Rブレーキの制動力を解除した状態で、後輪1R路面のμを推定するためのテストトルクをモータ3から出力し、スリップ状態を検知することにより極低μ路を判定する。
図9に本実施形態のタイムチャート例を示す。
この例では、パルス状のモータトルク(テストパルス)を2度発生する例である。そして、後輪1Rの接地面が極低μ路面と判定した場合の例である。この場合、本実施形態では、車両挙動は小さい。
ステップS20は、テスト駆動制御手段9Ba-1を構成する。
【0033】
(本実施形態の効果)
(1)テスト駆動制御手段9Ba-1は、運転者の制動指示要求による車両停止中に、内燃機関で駆動する車輪への制動を保持した状態で、モータ3を所定時間駆動する。スリップ検出手段9Ba-2は、テスト駆動制御手段9Ba-1によるモータ3の駆動によって当該モータ3で駆動する車輪にスリップが発生したか否かを検出する。そして、スリップ検出手段9Ba-2の検出に基づき、上記接地面が所定以上の低μ路面と判定する。
完全に停止している状態で、路面μが、Rr駆動を禁止するほど低いかどかの判定を確実に行える。このため、 ブレーキ解除時のモータクリープトルク発生前に、モータ駆動を禁止し、ENG 駆動に切り替えることができる。この結果、クリープトルクによるスリップ発生に伴う僅かな車両挙動すらも防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に基づく第1実施形態に係る車両のシステム構成を示す概要図である。
【図2】本発明に基づく第1実施形態に係る制駆動コントローラの処理を示す図である。
【図3】本発明に基づく第1実施形態に係る発進走行処理部の構成を示す図である。
【図4】本発明に基づく実施形態に係る発進走行処理部の処理を示す構成図である。
【図5】本発明に基づく第1実施形態に係る発進処理のタイムチャート例を示す図である。
【図6】比較例での発進処理のタイムチャート例を示す図である。
【図7】本発明に基づく第1実施形態の変形例に係る発進処理のタイムチャート例を示す図である。
【図8】本発明に基づく第2実施形態に係る路面μ判定手段の構成を示す図である。
【図9】本発明に基づく第2実施形態に係る発進処理のタイムチャート例を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1F 前輪(第1の車輪)
1R 後輪(第2の車輪)
2 エンジン
3 モータ
4 変速機
5 エンジンコントローラ
7 モータコントローラ
8 制動コントローラ
9 制駆動コントローラ
9A 駆動制御本体部
9B 発進走行処理部
9Ba 判定手段
9Bb 発進切換手段
9C 通常走行処理部
9D 制動処理部
12 制動装置
13 アクセルセンサ
14 ブレーキセンサ
15 車輪速センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも前後輪を備え、その前後輪の一方を内燃機関で駆動可能に構成すると共に、前後輪の他方をモータで駆動可能に構成し、上記内燃機関及びモータの少なくとも一方の駆動トルクによって車両を発進する車両の駆動制御装置であって、
車両を発進させる前に、上記モータで駆動する車輪の接地面が所定以上の低μ路面か否かを判定する路面μ判定手段と、
路面μ判定手段に判定に基づき上記接地面が低μ路面でないと判定した場合に、モータの駆動によって車両を発進し、上記接地面が低μ路面と判定した場合には内燃機関の駆動で車両を発進する発進切換手段と、
を備えることを特徴とする車両の駆動制御装置。
【請求項2】
上記路面μ判定手段は、
運転者の制動指示要求による車両停止状態から当該制動指示要求の解除を検出すると、クリープトルク相当の駆動トルクをモータに発生させるモータクリープトルク発生手段と、
モータクリープトルク発生手段によるモータの駆動によって当該モータで駆動する車輪にスリップが発生したか否かを検出するスリップ検出手段と、を備え、
スリップ検出手段の検出に基づき、上記接地面が所定以上の低μ路面と判定することを特徴とする請求項1に記載した車両の駆動制御装置。
【請求項3】
モータクリープトルク発生制御手段は、発生したモータの駆動トルクを連続的若しくは断続的に小さく制限し、
モータの駆動トルクが所定値まで低下してもモータで駆動する車輪に所定以上のスリップが発生している場合に、上記接地面が所定以上の低μ路面と判定することを特徴とする請求項2に記載した車両の駆動制御装置。
【請求項4】
上記路面μ判定手段は、
運転者の制動指示要求による車両停止中に、内燃機関で駆動する車輪への制動を保持した状態で、モータを所定時間駆動するテスト駆動制御手段と、
テスト駆動制御手段によるモータの駆動によって当該モータで駆動する車輪にスリップが発生したか否かを検出するスリップ検出手段と、を備え、
スリップ検出手段の検出に基づき、上記接地面が所定以上の低μ路面と判定することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した車両の駆動制御装置。
【請求項5】
発進切換手段は、内燃機関の駆動による車両の発進では、加速不十分と判定すると、モータも駆動して4WD発進に切り換えることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載した車両の駆動制御装置。
【請求項6】
内燃機関で駆動する第1の車輪とモータで駆動する第2の車輪とを備え、車両を発進させる前に第2の車輪の接地面が所定以上の低μ路面か否かを判定して、上記接地面が低μ路面でないと判定した場合にはモータの駆動によって車両を発進し、上記接地面が低μ路面と判定した場合には内燃機関の駆動で車両を発進することを特徴とする車両の発進制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−149627(P2010−149627A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328524(P2008−328524)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】