説明

車両キャブに接続する装置

本発明は、車両のキャブに接続する装置に関し、この装置は運転者の作業領域を区画するキャブ構造体(2)を備えている。この装置は、キャブ構造体が車両のフレーム(4)に対して大きく傾いたときにキャブ構造体(2)を支持するように設けられた支持構造体(3)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両キャブに接続する装置に関し、この装置は運転手の作業区域を区画するキャブ(運転室)構造体を有する。本発明は、主として、例えば、車輪付きローダやダンパー(トレーラトラック)などの建設車両のような作業用車両に使用することを意図したものである。したがって、本発明は、車輪付きローダについて以下に説明されている。しかしながら、本発明は、これらの本発明の応用分野に限られるものではない。
【背景技術】
【0002】
車輪付きローダは、時として、かなり不規則な表面をもつ地形で使用され、これは強い振動とショックを引き起こすことになる。運転者の作業環境を快適にするために、キャブは、振動やショックが軽減又は除去され、それらが車両のフレームからキャブに直接的に伝達されないようにしてキャブがサスペンドされる必要がある。安全性のために、キャブは、更に、車両がキャブ上に転覆しても人が生存可能なスペースを運転者に確保することができるように十分に強度を持たす必要がある。この点に関して、Roll Over Protection Structureを意味するROPS のROPS規準がしばしば述べられる。このROPS規準は、車両の重量に依存し、即ち、重い機械はより頑丈で、従って時として重いキャブが要請される。
【発明の開示】
【0003】
本発明の目的は、既に知られている技術のものと比較して、全体の重量を減らした車両キャブに接続する装置を達成し、ROPS規準に合致した十分に安定した設計を提供することにある。
【0004】
この目的は、キャブ構造体が傾斜した場合にも、キャブ構造体を支えることができる支持構造を有する装置によって達成される。支持構造体の好適な設計によって、通常は支持構造体が存在する後方への運転者の視界が影響されることはない。
【0005】
他の好ましい実施例によれば、この装置は、キャブが水平面に対して傾斜した場合にも支持構造体がキャブ構造体を支持するように、キャブ構造体を支持構造体に結合するための手段を有する。より詳しくは、上記結合手段は、作動モードでは、キャブ構造体と支持構造体との間で力が伝達するようにし、不作動モードでは、キャブ構造体が、支持構造体からの力の伝達を伴うことなく、少なくとも本質的に自由に運動ができるようにしている。この手段により、キャブの通常の減衰システムは、正常の作動の間は通常に機能する、即ち、連結手段は不作動モードとなる。しかしながら、キャブが非常に大きく傾いた場合、支持構造体は目的に応じた支持を提供する、即ち、連結手段が、ここでは作動モードとなる。
【0006】
本発明の他の有利な実施例とその利点は、他のクレームと以下の記載から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、添付図面を参照とした実施例に従って、以下により詳細に説明される。
図1は、車輪付きローダの形態の作業車両のキャブ(運転室)に関する装置1の後方斜視図である。この装置は、運転者の作業領域を区画するキャブ構造体2及びキャブ構造体をキャブが水平面に対して大きく傾いたとき及びここでは底板4によって示されている車両のフレームに対してキャブ構造体2が傾斜したとき、キャブ構造体2を支持するように設けられた支持構造体3を有している。この支持構造体3は、したがって力を吸収し、また、キャブ構造体2との関連において、ROPS規準を満たすように十分な強度の構造を形成する。
【0008】
キャブ構造体2は、長方形の箱形を形成するように互いに組み合わせられる複数の長尺構成要素、又は桁により構成される。即ち、キャブ構造体2は、垂直姿勢のブロック形状をしている。より詳細には、4本の垂直な長尺構成要素7が垂直状ブロックのコーナを区画するように配置されている。追加的な長尺構成要素が水平上部面8と下部面9を区画している。キャブ構造体2は、更に、車両のフレーム4からのショック及び/又はノイズ等を減衰するための要素5を備えている。ダンピング要素5はキャブ構造体2の床レベルで下部面9より下に設けられるゴム製絶縁体からなる。
【0009】
支持構造体3は、キャブ構造体の後部に所定の距離を離れて配置される。支持構造体3は複数の長尺部材と、フレーム又はアーチを形成するように互いに組み合わされる桁とから成る。2本の垂直な長尺構成要素10は支持構造体の側縁を形成する。2本の水平な長尺構成要素11は垂直な長尺構成要素の間に配置され、これらを互いに結合している。支持構造体3はキャブ構造体2の背面と平行な平面内に延びている。支持構造体3は、更に、それを車両のフレーム4に確実に連結する手段6を備えている。この連結手段6は、互いに離れて置かれた二つの連結装置6a,6bを有し、夫々はボルト連結からなる。
【0010】
装置1は、更に、支持構造体は、車両が使用され、ショック吸収システム5が吸収できる横方向の力を超えたとき、キャブ構造体に作用する横方向の力を吸収するように、キャブ構造体2を、支持構造体3に連結する手段12を有している。
【0011】
動作モードにおいては、前記連結手段12は、キャブ構造体2と支持構造体3との間で力の伝達連結手段を与えるように配設されている。動作モードとは、キャブ構造体の所定の傾斜を超えるような状態で、車両が運転されることを意味する。また、不作動モードでは、前記連結手段12はキャブ構造体2を、支持構造体3からの力の伝達なしに、少なくとも本質的に自由運動ができるようにされている。この不作動モードは、したがって、所定の傾斜を超えない、車両の正常な運転における正常なモードを意味する。
【0012】
連結手段12は、したがって、キャブ構造体2を支持構造体3に対して、これらの構造体が互いに連結される前には、ある程度の動きを許容するタイプの連結手段を形成する。しかしながら、「互いに連結される」モードにおいては、それらは単一のユニットとして作用する。
【0013】
連結手段12は図2に示されるように、二つの鉤爪の形状の雄要素12aを有し、これらはキャブ構造体2の背面から下方に突出している。鉤爪12aは、ここでは、キャブ構造体2に溶接(図示せず)により固定されている。連結手段12は、更に、支持構造体3に頂部に開口する開口12bの形をした雌要素12bを有している。より詳しくは、開口12bは、垂直の長尺構成要素10が中空であるため、各長尺構成要素の頂部に形成されている。この連結手段12は、したがって、支持構造体3の上部に設けられる。
【0014】
本装置を車両のフレーム4上に設けたとき、支持構造体3は、先ず、フレームに好適に取り付けられ、次いで、キャブ構造体2が、上部から目的の位置に降ろされる。鉤爪12aは、支持構造体3の開口12b内に入れられる。
【0015】
支持構造体3はキャブ構造体2の垂直方向の高さより本質的に低い高さに延びている。より詳しくは、支持構造体3はキャブ構造体2の高さの75%より低い高さ、好ましくはキャブ構造体の約50%の高さまで延びている。ここで、高さとは、車両が正常の位置にある、即ち、平坦な面にあるときの垂直方向の範囲を意味する。
【0016】
図2に基づく上記説明では、鉤爪要素12aはキャブ構造体2に溶接により固定されている。この代替として、ボルトによる固定や蝋付けなど、他の固定手段が使用できることはもちろんである。
【0017】
図3は本発明の第2の実施例を示す。本実施例は図1及び図2の第1の実施例とはキャブ構造体2と支持構造体3の連結手段112において異なる。連結手段112は、ここでは、ねじ連結13からなる。孔が設けられた構造要素14が支持構造体の垂直の長尺構成要素110の開口内に設けられ、これに固定される。更に、構造要素14の孔15にはねじ溝が切られている。孔がもうけられた板状要素16がキャブ構造体の垂直長尺構造構成要素107に溶接により固定されている。板状要素16は孔が設けられた構造要素14の丁度上のレベルに孔と一致させるように設けられる。ねじ17が孔内を板状要素16を通して設けられ、構造要素14の孔15内のねじ溝と係合する。
【0018】
この第2の実施例では、支持構造体に、更に、支持構造体の底部に車両のフレームに対してダンピング用の減衰装置(図示せず)が設けられている。このようにして、キャブ構造体と支持構造体は、完全に傾いて互いに機械的に力が伝達するように結合する前に個別に減衰され、これによって単一の力伝達ユニットを形成する。
【0019】
この装置は、例えば、垂直方向の連結手段の雄要素と雌要素の少なくとも一方の位置を調節するための要素を備えることができる。
【0020】
本発明は、上述の実施例に限定されるものでなく、以下の特許クレームの枠の範囲内において、多くの変形や改良が可能である。
【0021】
例えば、連結手段12は、鉤爪の形状に代えてピン又はフォーク状要素とすることができる。このフォーク状要素とした場合、フォーク状要素をキャブ構造体から水平方向に突出させ、支持構造体から垂直方向に突出する対応する形状の係合要素と係合させるようにすることができる。これについての多くの変形が可能である。
【0022】
他の例としては、連結手段12の開口12bに、例えばゴム要素のような減衰要素を設けることが可能である。この減衰要素はキャブ構造体の動きに対する減衰効果を与え、キャブ構造体の他の減衰装置5に対する補助減衰効果を与える。減衰要素は、例えば、開口内に挿入される雄要素を部分的、或いは好ましくは完全に取り囲むようにして設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本装置の第1の実施例の後部からの斜視図である。
【図2】図1の装置の部分断面を持つ側面図である。
【図3】本発明の第2の実施例の部分断面を持つ斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者の作業区域を区画するキャブ構造体(2)と、キャブ構造体が水平面に対して大きく傾斜したとき、及びキャブ構造体(2)が車両のフレーム(4)に対して傾斜したとき、前記キャブ構造体(2)を支持するように設けられる支持構造体(3)を備え、
前記支持構造体(3)は、車両の進行方向において前記キャブ構造体(2)の後部に設けられることを特徴とする車両キャブに接続する装置。
【請求項2】
キャブ構造体(2)と支持構造体(3)は、キャブ構造体の水平面とフレームに対する傾斜が前記傾斜より小さいとき、力の伝達が本質的に相互に影響を受けず、キャブ構造体の水平面とフレームに対する傾斜が前記傾斜より大きいとき、力の伝達が連結するように設けられることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記支持構造体(3)は、キャブ構造体(2)の高さより本質的に低い高さに延びていることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記支持構造体(3)は、キャブ構造体(2)の高さの75%より低い高さに延びていることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項5】
前記支持構造体(3)は、キャブ構造体(2)の高さの約50%の高さに延びていることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項6】
前記支持構造体(3)は、前記支持構造体をフレーム(4)に連結するための互いに離れて位置する二つの装置(6a,6b)を有し、前記支持構造体は前記連結装置の間に延びるフレーム又はアーチの形状をしていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記連結装置(6a,6b)は、前記支持構造体(3)をフレームに固定するための手段(6)を形成することを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記支持構造体(3)は、互いに離れて位置する二つの縦長の長尺支持要素(10,110)と、前記二つの縦長の長尺支持要素を連結する少なくとも一つの横方向の長尺支持要素(11)を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
前記支持構造体(3)はキャブ構造体(2)の一側部と本質的に平行に延びることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
前記装置は、前記支持構造体がキャブ構造体を、前記キャブの水平面と車両のフレームに対して傾斜したとき、前記支持構造体がキャブ構造体を支持するように、前記キャブ構造体(2)を支持構造体(3)に連結するための手段(12,112)を有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
操作モードにおいては、前記連結手段(12)は、前記キャブ構造体(2)と前記支持構造体(3)との間で力の伝達を与え、不作動モードにおいては、前記キャブ構造体(2)に前記支持構造体(3)からの力の伝達なしに少なくとも本質的に自由運動を与えるようにされていることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記連結手段(12,112)は前記支持構造体(3)の上部に設けられていることを特徴とする請求項10又は11に記載の装置。
【請求項13】
前記連結手段(12,112)は雄要素(12a,17)と雌要素(12b,15)を有し、前記雄要素(12a,17)は前記キャブ構造体(2)に取り付けられ、前記雌要素(12b,15)は前記支持構造体(3)に取り付けられ、又は、これに代えて、前記雄要素(12a,17)は前記支持構造体(3)に取り付けられ、前記雌要素(12b,15)は前記キャブ構造体(2)に取り付けられることを特徴とする請求項10乃至12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
前記雌要素(12b,15)は前記支持構造体(3)に設けられ、キャブ構造体(2)が支持構造体(3)に対して、垂直方向に移動したとき、前記雄要素(12a,17)を受け入れるために開口している開口部を上部に有していることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記雄要素(12a)は鉤爪の形状をした要素から成ることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記キャブ構造体(2)は、車両のフレーム(4)からの衝撃及び/又はノイズを減衰するための手段(5)を有することを特徴とする請求項1乃至15のいずれかに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−503541(P2007−503541A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524601(P2006−524601)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【国際出願番号】PCT/SE2004/001222
【国際公開番号】WO2005/023628
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(502032378)ボルボ コンストラクション イクイップメント アーベー (156)
【Fターム(参考)】