説明

車両上部構造

【課題】構成を複雑化することなく、発電効率を向上することができる車両上部構造を提供すること。
【解決手段】車両上部構造10は、車両のフロントウインド2の上部6に設置される太陽電池セル12を備える。該太陽電池セル12は、車室外側及び車室内側の両側からの光を受光して電気エネルギーに変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の窓に設置される太陽電池セルを備える車両上部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両のサンルーフに設置され車室外側からの光を受光して電気エネルギーに変換する第1の太陽電池セルと、車両のサンルーフに設置され車室内側からの光を受光して電気エネルギーに変換する第2の太陽電池セルとを備える車両上部構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。第1及び第2の太陽電池セルには同軸的に複数の貫通孔が設けられ、複数の貫通孔を通過した光が反射材によって反射され、第2の太陽電池セルを照射している。
【0003】
また、車両のサンルーフのうち太陽電池セルの受光面以外の部分にマスキング層を形成し、太陽電池セルの配線接続を隠す技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−67472号公報
【特許文献2】実開平6−39935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載の車両上部構造において、第1及び第2の太陽電池セルが車両外側及び車両内側の両側から受光する光量は、貫通孔のない第1の太陽電池セルが車両外側から受光する光量と略等しい。従って、上記特許文献1記載の車両上部構造は、発電効率を向上することが困難である。また、上記特許文献1記載の車両上部構造は、第1及び第2の太陽電池セルを貫通する複数の貫通孔、及び反射材が必要になるので、構成が複雑化する。
【0005】
また、上記特許文献2記載の技術を上記特許文献1記載の車両上部構造に適用しても、発電効率を向上することは困難である。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、構成を複雑化することなく、発電効率を向上することができる車両上部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明の車両上部構造は、車両のフロントウインドの上部、及び/又は、リヤウインドの上部に設置される太陽電池セルを備える。該太陽電池セルは、車室外側及び車室内側の両側からの光を受光して電気エネルギーに変換する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、構成を複雑化することなく、発電効率を向上することができる車両上部構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。尚、各図中、矢印方向UPは車両上方方向、矢印方向FRは車両前方方向を示す。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明の実施例1の車両上部構造の構成を示す斜視図である。図2は、図1のA−A線に沿った断面図である。車両上部構造10は、フロントウインド2を備える。フロントウインド2は、太陽からの直射光を車両前方から車室内へ取り込むものであって、車両上下方向に対して斜めに傾斜する傾斜部4と、傾斜部4の上端から車両後方方向に延びる上部(水平部)6とを含み構成される。
【0011】
車両上部構造10は、フロントウインド上部6に設置される複数の太陽電池セル12と、複数の太陽電池セル12から電気を取り出す出力端子14と、封止層16と、保護層18と、サイドシール層20とを備える。
【0012】
太陽電池セル12は、フロントウインド上部6と対向するように、フロントウインド上部6に対して車室内側に設置されている。この場合、フロントウインド上部6は、太陽電池セル12を雨水や塵埃等から保護する保護層として機能する。
【0013】
太陽電池セル12は、車室外側及び車室内側の両側からの光を受光して電気エネルギーに変換する。太陽電池セル12は、周知の構成であってよく、例えば両面受光型の単結晶シリコン太陽電池セルを含み構成される。両面受光型の単結晶シリコン太陽電池セルは、チップの両面にpn接合を有し、チップの両面で光を受光して電気エネルギーに変換する。
【0014】
尚、実施例1の太陽電池セル12は、両面受光型の単結晶シリコン太陽電池セルとしたが、片面受光型の単結晶シリコン太陽電池セルを2枚貼り合わせた構成であってもよい。また、多結晶型やアモルファス型であってもよい。単結晶型は光電変換効率(発電率)に優れ、一方、アモルファス型は温度上昇による効率低下が小さい。また、GaAs等の無機化合物や有機色素等の有機化合物を用いた太陽電池セルであってもよく、太陽電池セル12の種類に制限はない。
【0015】
封止層16は、太陽電池セル12を封止し、太陽電池セル12を水分や酸素による劣化から保護する層である。封止層16には、透光性の材料が用いられ、例えばエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリエチレン(PE)が用いられる。
【0016】
保護層18は、封止層16の車室内側に設置され、太陽電池セル12を外力から保護する層である。保護層18には、透光性の材料が用いられ、例えばポリカーボネート基板が用いられる。ポリカーボネート基板は、車室外側にゾルゲル法によってハードコーティング加工(例えば、鉛筆硬度3H)が施され、封止層16側にコロナ放電処理によって表面官能基化処理が施される。表面官能基化処理によって、封止層16との密着性を高めることができる。
【0017】
サイドシール層20は、フロントウインド上部6と保護層18との間に介装され封止層16の外周を囲む層である。サイドシール層20は、封止層16と同様に、太陽電池セル12を水分や酸素による劣化から保護する。サイドシール層20には、例えばポリエーテルケトン(PEK)が用いられる。
【0018】
次に、車両上部構造10の製造方法の一例について説明する。先ず、フロントウインド上部6の車室内側に、順次、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム(例えば、厚さ400μm)、複数の太陽電池セル12及び出力端子14を電気的に接続したストリング、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム(例えば、厚さ400μm)、ポリカーボネート基板を配置する。次いで、真空ラミネート処理(例えば、温度140℃、圧力10kPa)によって、フロントウインド上部6の車室内側に、順次、封止層16、複数の太陽電池セル12、封止層16、保護層18を一体成形する。最後に、フロントウインド上部6と保護層18との間に、ポリエーテルケトンを充填し熱硬化してサイドシール層20を形成する。
【0019】
次に、車両上部構造10の作用・機能について図2を参照して説明する。車両上部構造10は、上述の如く、フロントウインド上部6に設置される太陽電池セル12を備える。太陽電池セル12は、車室外側及び車室内側の両側からの光を受光して電気エネルギーに変換する。太陽電池セル12の車室外側には、太陽からの直射光が入射する。一方、太陽電池セル12の車室内側には、フロントウインド傾斜部4から車室内へ入射しインストルメントパネル上部8等で反射された反射光が入射する。
【0020】
仮に、太陽電池セル12がサンルーフに設置される場合、太陽電池セル12の車室内側の入射光の光量が十分でなく、発電効率が低下する。また、仮に、従来例と同様に、太陽電池セル12を貫通する複数の貫通孔、及び、複数の貫通孔を通過した光を太陽電池セル12の車室内側へ反射する反射材を設けると、構成が複雑化する。
【0021】
一方で、実施例1の車両上部構造10は、太陽電池セル12がフロントウインド上部6に設置されるので、フロントウインド傾斜部4から車室内へ入射しインストルメントパネル上部8等で反射された反射光が太陽電池セル12の車室内側に入射する。従って、構成を複雑化することなく、発電効率を高めることができる。
【0022】
また、実施例1の車両上部構造10は、太陽電池セル12がフロントウインド上部6に設置されるので、太陽電池セル12において発生した熱がフロントウインド2へ拡散する。即ち、フロントウインド2が大面積の放熱板として機能する。これにより、太陽電池セル12の温度上昇を抑制することができ、温度上昇に伴う光電変換効率(発電率)の低下を抑制することができる。ひいては、太陽電池セル12として、光電変換効率(発電率)の高いが、熱に弱く、温度上昇によって効率低下を招き易い単結晶シリコン太陽電池セルを用いることができ、発電効率を高めることができる。
【実施例2】
【0023】
図3は、本発明の実施例2の車両上部構造の構成を示す断面図であり、図2に相当する断面図である。以下、車両上部構造10Aの構成について説明するが、図2の車両上部構造10と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0024】
車両上部構造10Aは、フロントウインド2Aを備える。フロントウインド2Aは、図2のフロントウインド2と異なり、2枚のガラス板2A−1、2A−2を貼り合わせた合わせガラスである。2枚のガラス板2A−1、2A−2の間にはスペーサ(図示せず)が介装され、中空部を気密に封止している。フロントウインド2Aは、図2のフロントウインド2と同様に、車両上下方向に対して斜めに傾斜する傾斜部4Aと、傾斜部4Aの上端から車両後方方向に延びる上部6Aとを備える。
【0025】
車両上部構造10Aは、図2の車両上部構造10と同様に、太陽電池セル12と、出力端子14と、封止層16とを備える。太陽電池セル12は、フロントウインド上部6Aに設置され、車室外側及び車室内側の両側からの光を受光して電気エネルギーに変換する。
【0026】
太陽電池セル12は、フロントウインド上部6Aと対向するように、フロントウインド上部6Aの中空部に設置されている。中空部は気密に封止されているので、図2のサイドシール層20が不要となる。また、中空部は、気密に封止されているので、太陽電池セル12を水分や酸素から確実に保護することができる。
【0027】
尚、2枚のガラス板2A−1、2A−2を接合する形態としては、この他にも太陽電池セル12を封止する封止層16と同じ樹脂材料を用いて中空部を充填してもよい。
【0028】
太陽電池セル12に対して車室外側のガラス板2A−1は、太陽電池セル12を雨水や塵埃等から保護する保護層として機能する。一方、太陽電池セル12に対して車室内側のガラス板2A−2は、太陽電池セル12を外力から保護する図2の保護層18として機能する。従って、図2の保護層18が不要となる。
【0029】
上述の如く、図2の保護層18の代わりに、水分や酸素透過性の比較的低いガラス板2A−2を用いることで、太陽電池セル12を水分や酸素から確実に保護することができる。
【0030】
また、図2の保護層18の代わりに、高熱伝導率、大面積のガラス板2A−2を用いることで、太陽電池セル12で発生した熱をガラス板2A−2に拡散することができる。これにより、実施例1と比較して更に太陽電池セル12の温度上昇を抑制することができ、温度上昇による光電変換効率(発電率)の低下を抑制することができる。ひいては、太陽電池セル12として、光電変換効率(発電率)の高い単結晶シリコン太陽電池セルを用いることができる。
【0031】
車両上部構造10Aは、図2の車両上部構造10と異なり、マスキング層30を備える。マスキング層30は、複数の太陽電池セル12に対応する部分の間を太陽電池セル12と識別困難な色でマスクする。尚、マスキング層30は、複数の太陽電池セル12に対応する部分に、太陽電池セル12への入射光を通過させる開口部32を備える。ここで、太陽電池セル12に対応する部分とは、太陽電池セル12をマスキングの対象物2A−2と直交する方向に沿ってマスキングの対象物2A−2に投影させた部分を意味する。マスキング層30は、例えばセラミックス印刷によって形成される。
【0032】
マスキング層30の色調は、太陽電池セル12の色調に近いことが好ましい。具体的には、L*a*b*表色系において、太陽電池セル12の色を(L1、a1、b1)とし、マスキング層30の色を(L2、a2、b2)とすると、|a1−a2|及び|b1−b2|がそれぞれ150以下、好ましくは100以下、更に好ましくは70以下である。
【0033】
マスキング層30によって複数の太陽電池セル12に対応する部分の間をマスクすることで、複数の太陽電池セル12の間を接続する配線等を外部視認困難とすることができ、デザイン性を高めることができる。
【0034】
また、配線等を外部視認困難とするため、太陽電池セル12を接続するインターコネクタにも黒色塗装を施した方が良い。
【0035】
このように、実施例2の車両上部構造10Aは、太陽電池セル12がフロントウインド2Aの中空部に設置されるので、太陽電池セル12を水分や酸素から確実に保護することができる。また、太陽電池セル12の温度上昇を抑制することができ、温度上昇に伴う光電変換効率(発電率)の低下を抑制することができる。ひいては、太陽電池セル12として、光電変換効率(発電率)の高い単結晶シリコン太陽電池セルを用いることができ、発電効率を高めることができる。
【0036】
また、実施例2の車両上部構造10Aは、複数の太陽電池セル12に対応する部分の間を太陽電池セル12と識別困難な色でマスクするマスキング層30を備えるので、太陽電池セル12の配線接続を隠すことができ、デザイン性を高めることができる。
【実施例3】
【0037】
図4は、本発明の実施例3の車両上部構造の構成を示す断面図であり、図2に相当する断面図である。以下、車両上部構造10Bの構成について説明するが、図2の車両上部構造10と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0038】
車両上部構造10Bは、図2の車両上部構造10と同様に、太陽電池セル12と、出力端子14と、封止層16と、保護層18と、サイドシール層20とを備える。太陽電池セル12は、フロントウインド上部6に設置され、車室外側及び車室内側の両側からの光を受光して電気エネルギーに変換する。
【0039】
また、車両上部構造10Bは、図2の車両上部構造10と異なり、太陽電池セル12と車両の金属製の天井板40とを接続する伝熱板50を備える。伝熱板50は、複数の太陽電池セル12に対応する部分のうち外周縁を除く部分に、太陽電池セル12への入射光を通過させる開口部52を備える。ここで、太陽電池セル12に対応する部分とは、太陽電池セル12を伝熱板50と直交する方向に沿って伝熱板50に投影させた部分を意味する。例えば、伝熱板50は、太陽電池セル12の車室内側と天井板40とを接続している。
【0040】
伝熱板50は、高熱伝導率の板状部材(例えば、厚さ0.1mm)であって、例えば銅板等の金属板、或いは窒化アルミニウム等のセラミックス板が用いられる。伝熱板50と天井板40とは、溶接やロウ付け等によって接合されている。
【0041】
伝熱板50を介して太陽電池セル12において発生した熱が天井板40へ拡散するので、太陽電池セル12の温度上昇を抑制することができ、温度上昇に伴う光電変換効率(発電率)の低下を実施例1と比較して更に抑制することができる。ひいては、太陽電池セル12として、光電変換効率(発電率)の高い単結晶シリコン太陽電池セルを用いることができる。
【0042】
伝熱板50の両面のうち外部視認可能な部分には、太陽電池セル12と識別困難な色のマスキング層30Bが形成されている。マスキング層30Bは、例えば不透明色(例えば黒色)の塗料を塗布し自然乾燥して形成される。この場合、セラミックス印刷によって形成する場合に比較して、加熱処理が不要となるので、コストの低減、歩留まりの向上を図ることができる。
【0043】
このように、実施例3の車両上部構造10Bは、太陽電池セル12と車両の金属製の天井板40とを接続する伝熱板50を備えるので、太陽電池セル12の温度上昇を抑制することができ、温度上昇に伴う光電変換効率(発電率)の低下を抑制することができる。ひいては、太陽電池セル12として、光電変換効率(発電率)の高い単結晶シリコン太陽電池セルを用いることができ、発電効率を高めることができる。
【0044】
また、実施例3の車両上部構造10Bは、伝熱板50の両面にマスキング層30Bを備えるので、太陽電池セル12の配線接続を隠すことができ、デザイン性を高めることができる。
【実施例4】
【0045】
図5は、本発明の実施例4の車両上部構造の構成を示す断面図であり、図2に相当する断面図である。以下、車両上部構造10Cの構成について説明するが、図2の車両上部構造10と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0046】
車両上部構造10Cは、図2の車両上部構造10と同様に、太陽電池セル12と、出力端子14と、封止層16と、保護層18と、サイドシール層20とを備える。太陽電池セル12は、フロントウインド上部6に設置され、車室外側及び車室内側の両側からの光を受光して電気エネルギーに変換する。
【0047】
また、車両上部構造10Cは、図2の車両上部構造10と異なり、フロントウインド2の外面(車室外側面)のうち太陽電池セル12に対応する部分64及び該部分64の周辺部分62が粗面である。ここで、太陽電池セル12に対応する部分64とは、太陽電池セル12をフロントウインド2と直交する方向に沿ってフロントウインド2に投影させた部分である。
【0048】
フロントウインド2の粗面加工には、品質の安定性の観点から、サンドブラスト加工が好適に用いられる。
【0049】
図6は、図5の一部拡大図である。フロントウインド2の外面のうち周辺部分62が粗面であるので、図6に示すように、前方散乱が起こり、太陽電池セル12の車室外側の入射光の光量を増やすことができる。従って、発電効率を高めることができる。
【0050】
また、フロントウインド2の外面のうち太陽電池セル12に対応する部分64が粗面であるので、アンチグレア効果によって誘電体反射を抑制することができ、太陽電池セル12の車室外側の入射光の光量を増やすことができる。従って、発電効率を高めることができる。
【0051】
このように、実施例4の車両上部構造10Cは、フロントウインド2の外面のうち太陽電池セル12に対応する部分64及び該部分64の周辺部分62が粗面であるので、太陽電池セル12の車室外側の入射光の光量を増やすことができ、発電効率を高めることができる。
【実施例5】
【0052】
図7は、本発明の実施例5の車両上部構造の構成を示す斜視図であり、図2に相当する断面図である。以下、車両上部構造10Dの構成について説明するが、図2の車両上部構造10と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0053】
車両上部構造10Dは、リヤウインド72を備える。リヤウインド72は、太陽からの直射光を車両後方から車室内へ取り込むものであって、車両上下方向に対して斜めに傾斜する傾斜部74と、傾斜部74の上端から車両前方方向FRに延びる上部(水平部)76とを備える。
【0054】
車両上部構造10Dは、図2の車両上部構造10と同様に、太陽電池セル12と、出力端子14と、封止層16と、保護層18と、サイドシール層20とを備える。太陽電池セル12は、リヤウインド上部76に設置され、車室外側及び車室内側の両側からの光を受光して電気エネルギーに変換する。
【0055】
太陽電池セル12は、リヤウインド上部76と対向するように、リヤウインド上部76に対して車室内側に設置されている。この場合、リヤウインド上部76は、太陽電池セル12を雨水や塵埃等から保護する保護層として機能している。
【0056】
次に、車両上部構造10Dの作用・機能について図7を参照して説明する。車両上部構造10Dは、上述の如く、リヤウインド上部76に設置される太陽電池セル12を備える。太陽電池セル12は、車室外側及び車室内側の両側からの光を受光して電気エネルギーに変換する。太陽電池セル12の車室外側には、太陽からの直射光が入射する。一方、太陽電池セル12の車室内側には、リヤウインド傾斜部74から車室内へ入射し後部座席とトランクとの仕切り78等で反射された反射光が入射する。
【0057】
仮に、太陽電池セル12がサンルーフに設置される場合、太陽電池セル12の車室内側の入射光の光量が十分でなく、発電効率が低下する。また、仮に、従来例と同様に、太陽電池セル12を貫通する複数の貫通孔、及び、複数の貫通孔を通過した光を太陽電池セル12の車室内側へ反射する反射材を設けると、構成が複雑化する。
【0058】
一方で、実施例5の車両上部構造10Dは、太陽電池セル12がリヤウインド上部76に設置されるので、リヤウインド傾斜部74から車室内へ入射し仕切り78等で反射された反射光が太陽電池セル12の車室内側に入射する。従って、構成を複雑化することなく、発電効率を高めることができる。
【0059】
また、実施例5の車両上部構造10Dは、太陽電池セル12がリヤウインド上部76に設置されるので、太陽電池セル12において発生した熱がリヤウインド72へ拡散する。即ち、リヤウインド72が大面積の放熱板として機能する。これにより、太陽電池セル12の温度上昇を抑制することができ、温度上昇に伴う光電変換効率(発電率)の低下を抑制することができる。ひいては、太陽電池セル12として、光電変換効率(発電率)の高い単結晶シリコン太陽電池セルを用いることができ、発電効率を高めることができる。
【0060】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0061】
例えば、上述した実施例1−5において、太陽電池セル12は、フロントウインド2(リヤウインド72)に対して車室内側又は中空部に設置されるとしたが、車室外側に設置されてもよい。いずれの場合であっても、フロントウインド傾斜部4(リヤウインド傾斜部74)から車室内へ入射しインストルメントパネル上部8(仕切り板78)等で反射された反射光が太陽電池セル12の車室内側に入射するので、構成を複雑化することなく、発電効率を高めることができる。
【0062】
また、上述した実施例1、3−5において、サイドシール層20に顔料を混ぜることで、サイドシール層20にマスキング層30としての機能をもたせてもよい。
【0063】
また、上述した実施例2において、合わせガラス2Aは2枚のガラス板を貼り合わせたものとしたが、合わせガラスを構成するガラス板の枚数に特段の制限はなく、例えば3枚であってもよい。
【0064】
また、上述した実施例2において、マスキング層30は、車室内側のガラス板2A−2の車室内側面(下面)に形成するとしたが、車室外側面(上面)に形成してもよいし、車室外側のガラス板2A−1の下面又は上面に形成してもよい。
【0065】
また、上述した実施例3において、伝熱板50と天井板40とは、溶接やロウ付け等によって接合されているとしたが、治具等によって密着されていてもよい。
【0066】
また、上述した実施例5において、実施例2と同様に、リヤウインド72を合わせガラスとし、該合わせガラスの中空部に太陽電池セル12を設置してもよい。これにより、太陽電池セル12を水分や酸素から確実に保護することができる。また、これにより、太陽電池セル12の温度上昇を抑制することができ、温度上昇に伴う光電変換効率(発電率)の低下を抑制することができる。
【0067】
また、上述した実施例5において、実施例3と同様に、太陽電池セル12と車両の金属製の天井板40とを接続する伝熱板50を設置してもよい。これにより、太陽電池セル12の温度上昇を抑制することができ、温度上昇に伴う光電変換効率(発電率)の低下を抑制することができる。
【0068】
また、上述した実施例5において、実施例4と同様に、リヤウインド72の外面のうち太陽電池セル12に対応する部分及び該部分の周辺部分が粗面であってもよい。ここで、太陽電池セル12に対応する部分とは、太陽電池セル12をリヤウインド72と直交する方向に沿ってリヤウインド72に投影させた部分である。これにより、太陽電池セル12の車室外側の入射光の光量を増やすことができ、発電効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施例1の車両上部構造の構成を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線に沿った断面図である。
【図3】本発明の実施例2の車両上部構造の構成を示す断面図である。
【図4】本発明の実施例3の車両上部構造の構成を示す断面図である。
【図5】本発明の実施例4の車両上部構造の構成を示す断面図である。
【図6】図5の一部拡大図である。
【図7】本発明の実施例5の車両上部構造の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0070】
2 フロントウインド
4 フロントウインド傾斜部
6 フロントウインド上部
8 インストルメントパネル上部
10 車両上部構造
12 太陽電池セル
40 天井板
50 伝熱板
72 リヤウインド
74 リヤウインド傾斜部
76 リヤウインド上部
78 仕切り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロントウインドの上部、及び/又は、リヤウインドの上部に設置され、車室外側及び車室内側の両側からの光を受光して電気エネルギーに変換する太陽電池セルを備える車両上部構造。
【請求項2】
前記フロントウインド及びリヤウインドの外面のうち前記太陽電池セルに対応する部分及び該部分の周辺部分が粗面である請求項1記載の車両上部構造。
【請求項3】
前記太陽電池セルと車両の金属製の天井板とを接続する伝熱板を更に備える請求項1又は2記載の車両上部構造。
【請求項4】
前記太陽電池セルの周囲にはセルを識別困難とするマスキング層が設けられ、
前記マスキング層の色調は、L*a*b*表色系において、太陽電池セルの色を(L1,a1,b1)とし、マスキング層の色を(L2,a2,b2)とすると、|a1−a2|及び|b1−b2|がそれぞれ150以下になる請求項1〜3いずれか一項記載の車両上部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−137809(P2010−137809A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318306(P2008−318306)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】