説明

車両制御装置およびこれを備える車両

【課題】例えばシフトバイワイヤ式のシフトスイッチを採用する場合にも、後続車両に対してレンジ位置を視覚的に伝達する。
【解決手段】車両制御装置は、パーキングレンジまたはリバースレンジ以外のレンジである他のレンジとパーキングレンジとの間でのレンジ切換がリバースレンジを経由することなく行われ得る車両において、リバースレンジの場合に点灯されると共に車両の後続車両から視認可能であるバックアップランプ(53)の点灯を制御するための車両制御装置である。そして、上述の他のレンジとパーキングレンジとの間でのレンジ切換である第1レンジ切換が行われるか否かを判定する切換判定手段(20、26、および30)と、この第1レンジ切換が行われると判定される場合には、バックアップランプを所定期間点灯させる点灯手段(30)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばシフトスイッチによりレンジ切替が行われる車両でバックアップランプの点灯制御を行う、車両制御装置およびこれを備える車両の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両制御装置においては、走行状態に応じてレンジ(例えばP(パーキング)−R(リバース)−N(ニュートラル)−D(ドライブ)−B(ブレーキ))が手動または自動で切換えられる。ここでレンジ切替を手動で行うための入力装置として、例えば操作レバーのスライド位置がP−R−N−D−Bの順で直線的にしか移動できないシフトレバーのほかに、レンジ切換を1段階のスイッチ操作で実現可能な所謂シフトバイワイヤ式のシフトスイッチが提案されている(例えば、特許文献1または2参照))。
【0003】
【特許文献1】特開平10−159966号公報
【特許文献2】特開2006−162022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば前述の特許文献1または2に開示されているシフトバイワイヤ式のシフトスイッチを採用する車両によると、レンジ切換が1段階で済んでしまうがゆえに、つまりパーキングレンジまたはリバースレンジ以外のレンジとパーキングレンジとの間でのレンジ切換がリバースレンジを経由することなく行われるがゆえに、後続車両からバックアップランプを見ていても、ブレーキが解除された後に、発進するのか又はパーキングするのかの区別が付かない。即ち、シフトスイッチにより発進とパーキングとのいずれに移行したのかを、後続車両に対してバックアップランプによって視覚的に伝達することができないという技術的問題点がある。
【0005】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みてなされたものであり、シフトバイワイヤ式のシフトスイッチを採用する場合にも、後続車両に対してシフトスイッチのレンジ位置を視覚的に伝達可能な車両制御装置およびこれを備える車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両制御装置は上記課題を解決するため、パーキングレンジまたはリバースレンジ以外のレンジである他のレンジと前記パーキングレンジとの間でのレンジ切換が前記リバースレンジを経由することなく行われ得る車両において、前記リバースレンジの場合に点灯されると共に前記車両の後続車両から視認可能であるバックアップランプの点灯を制御するための車両制御装置であって、前記他のレンジと前記パーキングレンジとの間での前記レンジ切換である第1レンジ切換が行われるか否かを判定する切換判定手段と、前記第1レンジ切換が行われると判定される場合には、前記バックアップランプを所定期間点灯させる点灯手段とを備える。
【0007】
本発明に係る車両制御装置は、パーキングレンジまたはリバースレンジ以外のレンジ(例えば、ニュートラル、ドライブ、ブレーキ)とパーキングレンジとの間でのレンジ切換(例えば、シフトバイワイヤ式のレンジ切換)がリバースレンジを経由することなく行われる車両を制御するための車両制御装置であって、以下のようにして、後続車両に対してシフトスイッチのレンジ位置を視覚的に伝達可能である。
【0008】
先ず、パーキングレンジまたはリバースレンジ以外のレンジとパーキングレンジとの間でのレンジ切換である第1レンジ切換が行われるか否かが、切換判定手段によって判定される。ここで「切換判定手段」は、例えばシフトスイッチ、パーキングスイッチ(以下、「Pスイッチ」ともいう)、トランスミッションコントロールコンピュータ(以下、「P−ECU」ともいう)、ハイブリッドコンピュータ(以下、「HV−ECU」ともいう)を含んで構成される。「第1レンジ切換」は、言い換えれば、スライド位置がP−R−N−D−Bの順で直線的にしか移動できないスライド式シフトレバーではリバースレンジを経由せざるを得ないようなレンジ切換を示す。
【0009】
このような第1レンジ切換が行われると、スライド式シフトレバーでは必然的にリバースレンジに対応するバックアップランプが一瞬点灯するのが通常である。しかしながら、例えばシフトバイワイヤ式のシフトスイッチなどによって第1レンジ切換が行われる場合には、必ずしもリバースレンジを経由する必要がないので、バックアップランプが一瞬点灯することがない。そのため、上記課題でも指摘したように、後続車両の運転者がパーキングレンジへのレンジ切換を、バックアップランプによって視覚的に伝達することができないという技術的問題点がある。
【0010】
然るに、本発明に係る車両制御装置によると、切換判定手段によって第1レンジ切換が行われると判定される場合には、当該車両制御装置が搭載された車両に後続する後続車両に対してバックアップランプが点灯手段(例えばHV−ECU)によって所定期間点灯させられる。ここに「所定時間」とは、スライド式シフトレバーを直線的に操作して、リバースレンジを経由してパーキングレンジに入れる際に、バックアップランプが点灯する時間の一般的な値として、あるいは後続車両の運転者が認識可能な点灯期間として、予め定められており、例えば、数ミリ秒から数秒間であればよい。
【0011】
このようにして、シフトバイワイヤ式で第1レンジ切換が行われる場合にもスライド式シフトレバーで第1レンジ切換が行われる場合と同様に、後続車両の運転者にレンジ切換を好適に報知できる。すなわち、後続車両に対してシフトスイッチのレンジ位置を視覚的に伝達可能であり、実践上非常に有効である。
【0012】
本発明に係る車両制御装置の一態様は、前記切換判定手段は、前記第1レンジ切換として、前記他のレンジ(例えばドライブレンジ)から前記パーキングレンジへのレンジ切換が行われるか否かを判定する。
【0013】
この態様によると、パーキングレンジへのレンジ切換が行われて運転者がブレーキから足を離すような場合に、ブレーキランプ(制動灯)が消灯したからといって発進するわけではないことが後続車両の運転者に伝えられる。
【0014】
本発明に係る車両制御装置の他の態様は、当該車両制御装置が搭載された車両の車間距離制御中(典型的にはブレーキがフェールし、あるいはドアが開けられて、停止制御が解除される際)にドライブレンジから前記パーキングレンジへのレンジ切換が行われる場合に、前記切換判定手段によって、前記第1レンジ切換が行われると判定される。
【0015】
この態様によると、車間距離制御中においても、スライド式シフトレバーによる操作があたかも行われているかのように、バックアップランプが所定期間点灯させられるので、後続車両に対してシフトスイッチのレンジ位置を視覚的に伝達可能である。
【0016】
本発明に係る車両制御装置の他の態様は、当該車両制御装置が搭載された車両の進行方向後方に存在する後続車両を検出する検出手段(例えば、後方レーダのような物体の所在や位置を認識可能なデバイス)を更に備え、前記後続車両が検出される場合に、前記切換判定手段が前記第1レンジ切換が行われるか否かを判定する。
【0017】
この態様によると、後続車両が検出されない場合には、切換判定手段による不要な判定処理が回避されるので、処理負荷軽減の観点からも好ましい。
【0018】
本発明に係る車両は、請求項1から4の何れか一項に記載の車両制御装置を備える。
【0019】
この態様によると、上述したような車両制御装置を備えるので、上述した車両制御装置の各種恩恵を同様に享受できる。
【0020】
本発明の作用及び他の利得は、次に説明する実施するための最良の形態から明らかにされよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、発明を実施するための最良の形態として本発明の一実施形態を、図面に基いて詳細に説明する。
【0022】
(1)第1実施形態
第1実施形態に係る車両制御装置の構成及び動作処理を、図1から図6を参照して説明する。
(1−1)構成
先ず、本実施形態に係る車両制御装置の基本構成について図1を参照して説明する。ここに、図1は、第1実施形態に係る車両制御装置10の構成を示すブロック図である。
【0023】
図1に示すように、車両制御装置10は、車両電源スイッチ28、シフトスイッチ26、Pスイッチ20、トランスアクスル60、アクチュエータ42、エンコーダ46、表示部50、メータ52、制御部11、およびバックアップランプ53を含む。この車両制御装置10は、例えばハイブリッド車のモータ駆動部分に対応し、電気制御によりレンジを切換えるいわゆるシフトバイワイヤシステムである。
【0024】
車両電源スイッチ28は、車両電源の電力供給状態を切換えるための押下式または接触式のスイッチである。具体的には、車載電源からの電力が車載電子機器に供給されないOFF(オフ)状態と、前記車載電子機器のうちラジオなどの特定電子機器のみに供給されて使用可能(ただし走行は不可)となるACC(Accessory:ACC)状態と、車載電源からの電力が前記特定電子機器を含めた他の車載電子機器に供給されてそれらが使用できるとともにエンジンのスタータも使用可能(ただし走行は不可)となるIG(igunition:IG)状態と、そのスタータを使って当該車両のハイブリッドシステムを起動させた(つまり走行可能な)HVS起動状態とが夫々切換られる(後述の図5参照)。
【0025】
シフトスイッチ26は、本発明に係る「切換判定手段」の一具体例であり、レンジを前進走行レンジ(D)、後進走行レンジ(R)、ニュートラルレンジ(N)、ブレーキレンジ(B)などのレンジに切換える指示を行うためのスイッチである。またPレンジに入れられているときには、Pレンジを解除する指示を行うためのスイッチでもある(後述の図3参照)。
【0026】
Pスイッチ20は、本発明に係る「切換判定手段」の一具体例であり、レンジをパーキングレンジ(以下、「Pレンジ」と呼ぶ)とパーキング以外のレンジ(以下、「非Pレンジ」と呼ぶ)との間で切換えるためのスイッチである。Pスイッチ20は、スイッチの状態を運転者に示すためのインジケータ22、および運転者からの指示を受付ける入力部24を含む。入力部24は、モーメンタリスイッチであってもよいし、またプッシュボタン式のスイッチであってもよい。入力部24が受付けた運転者からの指示は、制御部11に伝達される(後述の図3参照)。
【0027】
トランスアクスル60(後述の図2参照)は、トランスミッションにデファレンシャルギヤが組み込まれた機構を有す。トランスアクスル60は、ハイブリッドモータである場合を例として示しているが、無段変速機構から構成さてもよいし、あるいは有段変速機構から構成さてもよい。
【0028】
アクチュエータ42は、スイッチドリラクタンスモータ(以下、「SRモータ」ともいう)により構成され、制御部11からの指示を受けてトランスアクスル60に内蔵されるシフト制御機構を駆動する。具体的には、アクチュエータ42は、レンジをPレンジと非Pレンジとの間で切換えるために、トランスアクスル60に内蔵される図示しないシフト制御機構を駆動する。
【0029】
エンコーダ46は、アクチュエータ42と一体的に回転し、SRモータの回転状況を検知する。エンコーダ46は、A相、B相およびZ相の信号を出力するロータリーエンコーダである。
【0030】
表示部50は、制御部11からの指示や警告などを運転者に提示する。
【0031】
メータ52は、車両の機器の状態やレンジの状態などを運転者に提示する。
【0032】
制御部11は、本発明に係る「切換判定手段」および「点灯手段」の一具体例であり、電源制御装置(以下、「電源ECU」ともいう)34、ハイブリッドシステム制御用のハイブリッドコンピュータ(以下、「HV−ECU」ともいう)30、P−ECU40を含む。制御部11は、運転者がレンジを選択するシフトスイッチ26への入力などに応じて車両に搭載されるトランスアクスル60の動力伝達状態を電気的に制御する。
【0033】
電源ECU34は、車両電源スイッチ28が運転者から受付けた指示に基づいて、所定のタイミングでHV−ECU30に信号IGおよびスタート信号STを出力する。
【0034】
HV−ECU30は、車両制御装置10の動作を統括的に管理する装置であり、Pスイッチ20またはシフトスイッチ26を介した運転者からの指示に基づき、トランスアクスル60におけるレンジを切換える。より詳しくは、スタート信号STに応じて信号SMR1〜SMR3を所定のシーケンスで立上げてシステムメインリレー14を接続状態にし、バッテリー12からの高電圧を昇圧回路16に供給する。昇圧回路16に高電圧が供給され昇圧準備が完了すると車両の動力源の作動準備が完了となる準備完了状態が実現される。昇圧回路16の出力はインバータ18に供給され、インバータ18はトランスアクスル60に三相交流を供給可能となる。加えて、HV−ECU30は、Pスイッチ20またはシフトスイッチ26を介して選択されるレンジをメモリ32に記憶するとともに、現在のレンジの状態を提示するようにメータ52を制御する。
【0035】
P−ECU40は、エンコーダ46から出力される信号LSを取得してアクチュエータ42のSRモータの回転状況を把握し、SRモータを駆動するための信号LIを出力する。例えばレンジが非Pレンジであるときに運転者が入力部24を押下すると、その信号PがHV−ECU30を介してP−ECU40へ伝わり、P−ECU40は、アクチュエータ42を介してレンジをPレンジに切換えるとともに、インジケータ22に現在のレンジがPレンジである旨を表示させる。
【0036】
バックアップランプ53は、HV−ECU30によって点灯し又は消灯するように制御される。バックアップランプ53は通常レンジがRレンジに切換られる場合に点灯するが、本実施形態においては後述するようにその他の場合でも点灯する(図5参照)。
【0037】
続いて、図2を参照しながらレンジが非PレンジからPレンジへ切換られる際の機構について説明を加える。ここで、図2は、トランスアクスル60に内蔵されるシフト制御機構48の構成を示した斜視図である。
【0038】
図2に示すように、シフト制御機構48は、アクチュエータ42により回転されるシャフト102と、シャフト102の回転に伴って回転するディテントプレート100と、ディテントプレート100の回転に伴って動作するロッド104と、図示しない駆動軸に固定されているパーキングギア108と、パーキングギア108をロックするためのパーキングロックポール106と、ディテントプレート100の回転を制限して所定の位置に固定するディテントスプリング110と、ころ112とを含む。
【0039】
図2は、レンジが非Pレンジであるときの状態を示している。この状態では、パーキングロックポール106がパーキングギア108をロックしていないので、車両の駆動軸の回転は妨げられない。この状態からアクチュエータ42によりシャフト102を時計回り方向に回転させると、ディテントプレート100を介してロッド104が図2に示す矢印Aの方向に押され、ロッド104の先端に設けられるテーパ部によりパーキングロックポール106が図2に示す矢印Bの方向に押し上げられる。ディテントプレート100の回転に伴ってディテントプレート100の頂部に設けられる2つの谷のうちの一方、すなわち非Pレンジ位置120にあったディテントスプリング110のころ112は、山122を乗り越えて他方の谷、すなわちPレンジ位置124へ移る。ころ112は、その軸方向に回転可能にディテントスプリング110に設けられている。ころ112がPレンジ位置124に来るまでディテントプレート100が回転したとき、パーキングロックポール106は、パーキングギア108と嵌合する位置まで押し上げられる。これにより、車両の駆動軸が機械的に固定され、レンジがPレンジに切換わる。
【0040】
続いて、図3を参照しながらPスイッチ20及びシフトスイッチ26の詳細な構成並びにその操作について説明を加える。ここで、図3は、Pスイッチ20とシフトスイッチ26とをより詳細に説明するための正面図である。
【0041】
図3に示すように、Pスイッチ20は、レンジを「Pレンジ」とPレンジ以外の「非Pレンジ」との間で切換えるためのスイッチであり、スイッチの状態を運転者に示すためのインジケー22、および運転者からの指示を受付けるプッシュスイッチ型の入力部24を含む。運転者は、入力部24を押してレンジをPレンジに入れる指示を入力する。
【0042】
シフトスイッチ26は、モーメンタリ方式のシフトレバー1102と、シフトレバー1102が摺動される第1の溝1104、第2の溝1106、第3の溝1108、および第4の溝1110を含んで構成される。図3に示すシフトスイッチ26のシフトレバー1102は、運転者がシフトレバー1102から手を離している状態の中立位置にあることを示す。そして、この中立位置にあるシフトレバー1102を矢印1120のように動かすことによりトランスアクスル60がNレンジに設定される。あるいは、矢印1122のように動かすことによりRレンジに設定される。あるいは、矢印1124のように動かすことによりDレンジに設定される。あるいは、矢印1126のように動かすことによりBレンジに設定される。
(1−2)動作
上述の如く構成された本実施形態に係る車両制御装置10の動作処理について、図1から図3に加えて、図4から図6を用いて説明する。ここで、図4は、第1実施形態に係る車両制御装置10の動作処理を示すフローチャートである。
【0043】
図4において、運転者がシフトスイッチ26またはPスイッチ20によってレンジ切換を行う際に、車両制御装置10では以下のような処理が行われる。先ず、シフトスイッチ26またはPスイッチ20を介して、今回のレンジ(すなわちレンジ切換後のレンジ)がHV−ECU30に入力される(ステップS101)。
【0044】
この際、メモリ32に記憶されている前回のレンジ(すなわちレンジ切換前のレンジ)がHV−ECU30によって読み出される(ステップS102)。
【0045】
そして、この度のレンジ切換が所定の条件を満たすか否かがHV−ECU30によって判断される(ステップS103)。ここでいう所定の条件は、PレンジまたはRレンジ以外のレンジとPレンジとの間のレンジ切換であることである。具体的には、今回のレンジと前回のレンジとが図5に示す条件を満たすか否かが判断される。ここで、図5は、第1実施形態に係る車両制御装置10のレンジ切換と点灯の有無との関係を示す関係図である。
【0046】
図5は、所定の電源状態においてシフトスイッチ26またはPスイッチ20の操作によって行われるレンジ切換パターンと、各レンジ切換パターンに対応するスライド式シフトレバー(つまり、スライド位置がP−R−N−D−Bの順で直線的にしか移動できないシフトレバー)の動きを示す矢印と、各レンジ切換パターンが上記所定の条件を満たすか否か(つまり、バックアップランプ53を点灯させるか否か)を示す丸印とを図示している。図5に示すように、上記所定の条件を満たすレンジ切換パターンは、例えば(A)〜(H)の8パターンである。
(A)ACC状態かつNレンジのときにPスイッチ20によってPレンジに設定される場合
(B)IG状態かつPレンジのときにシフトスイッチ26によってNレンジに設定される場合
(C)IG状態かつNレンジのときにPスイッチ20によってPレンジに設定される場合
(D)HVS起動状態かつPレンジのときにシフトスイッチ26によってNレンジに設定される場合
(E)HVS起動状態かつPレンジのときにシフトスイッチ26によってDレンジに設定される場合
(F)HVS起動状態かつNレンジのときにPスイッチ20によってPレンジに設定される場合
(G)HVS起動状態かつDレンジのときにPスイッチ20によってPレンジに設定される場合
(H)HVS起動状態かつBレンジのときにPスイッチ20によってPレンジに設定される場合。
【0047】
再び図4に戻り、この度のレンジ切換が上記(A)〜(H)のいずれかの条件を満たさないと判断される場合(ステップS103:NO)、バックアップランプ53は点灯させずに、本処理は終了する。
【0048】
他方で、この度のレンジ切換が上記所定の条件を満たすと判断される場合(ステップS103:YES)、HV−ECU30はバックアップランプ53を一瞬(例えば、数十ミリ秒から数秒間)点灯させる(ステップS104)。この動作によって得られる利点について図6を参照しながら説明する。ここで、図6は、第1実施形態に係る車両制御装置10を備える車両と後続車両との走行状態を比較例と対比しながら示すための模式図である(a:比較例、b:第1実施形態)。
【0049】
先ず、図6(a)および図6(b)のいずれにおいても、自車両100のレンジはシフトバイワイヤシステムで切換えられる。そして、自車両100が停止するにあたり、自車両100の運転者がDレンジをPレンジへと切換るために、Pスイッチ20を押す。これに伴い、自車両100の運転者は不図示のブレーキペダルから足を離すので、ブレーキランプ110が消灯する。この際、バックアップランプ53が点灯されるか否かに応じて後続車両の動作が以下のように異なる。
【0050】
図6(a)の比較例に示すように、通常はステップS104の処理が行われないので、バックアップランプ53が点灯することなく、ブレーキランプ110が消灯する。これを見た後続車両200の運転者は、Pレンジへと切換えられたことを知る由もない。
【0051】
然るに、図6(b)の本実施形態によると、ステップS104の処理が行われるので、バックアップランプ53が一瞬点灯したうえで、ブレーキランプ110が消灯する。これを見た後続車両200の運転者は、一般的な自動変速機を有した車両に特有のスライド式シフトレバー操作、つまりRレンジを経由したPレンジへのシフトレバー操作であると考え、先行する自車両100は未だ動き出さないと予想して、後続車両200も停止させる。
【0052】
以上みてきたように、第1実施形態に係る車両制御装置10によれば、ブレーキランプ110を用いて後続車両200の運転者にレンジ切換を報知できる。すなわち、シフトスイッチ26またはPスイッチ20の操作により発進とパーキングとのいずれに移行したのかを、後続車両200に対してバックアップランプによって視覚的に伝達することができるので、実践上非常に有効である。
(2)第2実施形態
次に、第2実施形態に係る車両制御装置の構成及び動作処理を、図7および図8を用いて説明する。ここに、図7は、第2実施形態に係る車両制御装置10の構成を示すブロック図である。図8は、第2実施形態に係る車両制御装置10の動作処理を示すフローチャートである。なお、本実施形態において、上述の図1と同様の構成及び図4と同様の処理については同一の参照符号を付し、その詳細な説明を適宜省略する。
(2−1)構成
図7に示すように、第2実施形態に係る車両制御装置10は、DSS(Driver Support System:DSS)−ECU70を更に備える。
【0053】
DSS−ECU70は、運転者の走行支援制御、例えば全車速域での車間距離制御を実現するための装置であり、停止から高速域までの広範な車速域にわたり、頻繁な加減速操作から運転者を解放し運転負荷を軽減する。具体的には、カメラやレーダー等の周囲障害物情報、ナビゲーションシステムから得られる道路情報や周囲環境情報、ナビゲーションシステムのGPS測位装置から得られる自車位置情報、或いは、外部センタ施設との通信、車車間通信や路車間通信を介して得られる各種外部情報に基づいて、運転者意思に代わる適切な要求又は運転者意思結果に対する適切な補正要求を行う。これら要求として典型的な例は、オートクルーズ制御やその類の自動又は半自動走行制御実施時にDSSから出される要求や、障害物回避等のための介入減速制御や操舵補助制御実施時にDSSから出される要求である。
(2−2)動作
上述の如く構成された第2実施形態に係る車両制御装置10の動作処理について、図7に加えて、図8を用いて説明する。
【0054】
図7に示すように、DSS−ECU70の制御下で、全車速域での車間距離制御が行われる(ステップS201)。そして、とある車速域から停止へむかって車速が調整される停止制御が行われているとする(ステップS202)。この際、自車両100のブレーキがフェールしたり、自車両100の運転者がドアを開けたりするときのように、停止制御の解除要求があるか否かが判定される(ステップS203)。ここで、停止制御の解除要求がなく、停止制御が解除されない場合(ステップS203:NO)、かかる要求があるまで待機する(ステップS203)。
【0055】
他方で、停止制御の解除要求があり、停止制御が解除される場合(ステップS203:YES)、HV−ECU30によってDレンジからPレンジへのレンジ切換が行われる(ステップS204)。このレンジ切換は、上記所定の条件(すなわち、PレンジまたはRレンジ以外のレンジとPレンジとの間のレンジ切換であること)を満たす。したがって、HV−ECU30はバックアップランプ53を一瞬点灯させる(ステップS104)。これにより、後続車両200の運転者にレンジ切換を報知できる。
(3)第3実施形態 後方レーダあり
次に、第3実施形態に係る車両制御装置の構成及び動作処理を、図9および図10を用いて説明する。ここに、図9は、第3実施形態に係る車両制御装置10の構成を示すブロック図である。図10は、第3実施形態に係る車両制御装置10の動作処理を示すフローチャートである。なお、本実施形態において、上述の図1または図7と同様の構成及び図4または図8と同様の処理については同一の参照符号を付し、その詳細な説明を適宜省略する。
(3−1)構成
図9に示すように、第3実施形態に係る車両制御装置10は、後方レーダ80を更に備える。
【0056】
後方レーダ80は、本発明に係る「検出手段」の一具体例であり、レーザ光やミリ波帯の電波などを用いたレーダ システムや、CCDカメラなどで取得した画像から物体を認識する。具体的に例えば、後方レーダ80は、ミリ波帯の電波を水平方向にスキャンしながら車両の後方へ照射し、後続車両200などの物体表面で反射された電波を受信し、受信信号の周波数変化から後方車両の有無、および後続車両200と自車両100との距離、相対速度、並びに自車両100からの横変位(横位置)などのパラメータを求め、検出結果としてHV−ECU30に出力する。
(3−2)動作
上述の如く構成された第3実施形態に係る車両制御装置10の動作処理について、図9に加えて、図10を用いて説明する。
【0057】
図10に示すように、第3実施形態において特に、HV−ECU30によってDレンジからPレンジへのレンジ切換が行われると(ステップS204)、後方レーダ80の出力に基づいて後続車両200の有無が判定される(ステップS304)。ここで、後続車両200がいると判定される場合には(ステップS304:YES)、第2実施形態と同様にHV−ECU30はバックアップランプ53を一瞬点灯させる(ステップS104)。これにより、後続車両200の運転者にレンジ切換を報知できる。他方で、後続車両200がいないと判定される場合には(ステップS304:NO)、特にバックアップランプ53も点灯されない。
【0058】
以上説明した第3実施形態によれば、バックアップランプ53を不必要に点灯しないので、経済的である。
【0059】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う車両制御装置およびこれを備える車両も又、本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】第1実施形態に係る車両制御装置10の構成を示すブロック図である。
【図2】トランスアクスル60に内蔵されるシフト制御機構48の構成を示した斜視図である。
【図3】Pスイッチ20とシフトスイッチ26とをより詳細に説明するための正面図である。
【図4】第1実施形態に係る車両制御装置10の動作処理を示すフローチャートである。
【図5】第1実施形態に係る車両制御装置10のレンジ切換と点灯の有無との関係を示す関係図である。
【図6】第1実施形態に係る車両制御装置10を備える車両と後続車両との走行状態を比較例と対比しながら示すための模式図である。
【図7】第2実施形態に係る車両制御装置10の構成を示すブロック図である。
【図8】第2実施形態に係る車両制御装置10の動作処理を示すフローチャートである。
【図9】第3実施形態に係る車両制御装置10の構成を示すブロック図である。
【図10】第3実施形態に係る車両制御装置10の動作処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0061】
車両制御装置10…、28…車両電源スイッチ、26…シフトスイッチ、20…パーキングスイッチ、60…トランスアクスル、42…アクチュエータ、46…エンコーダ、50…表示部、52…メータ、11…制御部、53…バックアップランプ、70…DSS−ECU、80…後方レーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーキングレンジまたはリバースレンジ以外のレンジである他のレンジと前記パーキングレンジとの間でのレンジ切換が前記リバースレンジを経由することなく行われ得る車両において、前記リバースレンジの場合に点灯されると共に前記車両の後続車両から視認可能であるバックアップランプの点灯を制御するための車両制御装置であって、
前記他のレンジと前記パーキングレンジとの間での前記レンジ切換である第1レンジ切換が行われるか否かを判定する切換判定手段と、
前記第1レンジ切換が行われると判定される場合には、前記バックアップランプを所定期間点灯させる点灯手段と
を備えることを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記切換判定手段は、前記第1レンジ切換として、前記他のレンジから前記パーキングレンジへのレンジ切換が行われるか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
当該車両制御装置が搭載された車両の車間距離制御中にドライブレンジから前記パーキングレンジへのレンジ切換が行われる場合に、前記切換判定手段によって、前記第1レンジ切換が行われると判定される
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
当該車両制御装置が搭載された車両の進行方向後方に存在する後続車両を検出する検出手段を更に備え、
前記後続車両が検出される場合に、前記切換判定手段が前記第1レンジ切換が行われるか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の車両制御装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の車両制御装置を備える車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−189221(P2008−189221A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−27660(P2007−27660)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】