車両制御装置
【課題】非線形特性を有する制御対象の振動に対しても、制御系設計を容易にし、かつ、制振効果を発揮することができる車両制御装置を提供する。
【解決手段】制御対象における運動または変形の動特性を模擬するモデル要素を含み、入力操作量の推定値および制御対象に入力される外乱入力の推定値の少なくとも一方に基づく制御対象のヒステリシス特性を模擬するとともに、制御対象の運動状態の制御目標指標を定義する動特性記述手段27と、動特性記述手段27において定義した制御目標指標のうちのヒステリシス特性に関与する制御目標指標が、所望の状態となるように入力操作量を調整する操作補正量を算出する補正値演算手段28と、補正値演算手段28により算出された操作補正量を用いて、入力操作量を補正した操作量指令値を制御対象に出力する入力操作量指令出力手段29と、が設けられていることを特徴とする。
【解決手段】制御対象における運動または変形の動特性を模擬するモデル要素を含み、入力操作量の推定値および制御対象に入力される外乱入力の推定値の少なくとも一方に基づく制御対象のヒステリシス特性を模擬するとともに、制御対象の運動状態の制御目標指標を定義する動特性記述手段27と、動特性記述手段27において定義した制御目標指標のうちのヒステリシス特性に関与する制御目標指標が、所望の状態となるように入力操作量を調整する操作補正量を算出する補正値演算手段28と、補正値演算手段28により算出された操作補正量を用いて、入力操作量を補正した操作量指令値を制御対象に出力する入力操作量指令出力手段29と、が設けられていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両には、バネ特性と減衰特性による防振機能を持つ懸架部品で連結された2つ以上の構成部品間で連成振動を引き起こす部位が多数存在している。例えば、サスペンション部品で連結された車体(バネ上の部分)と、バネ下系部品やエンジンマウントで連結された車体とエンジン・トランスアクスルの間で引き起こされる連成振動が知られている。この連成振動は、車両の乗り心地に影響を与えるだけでなく、車両の走行性能に多大な影響を及ぼすことが知られている。
【0003】
このような連成振動を抑制するために、従来から数々の工夫や発明が提案されている。例えば、対象とする系の連成振動を引き起こす力や、トルク反力の発生源である駆動トルクや、その他の操作力そのものを制御することにより、連成振動を発生させない、あるいは、速やかに減衰させる制御法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
特許文献1では、エンジンのロール振動モデルを用いた振動推定値の情報に基づき、エンジントルクを制御してエンジンの振動を抑制する方法を提案している。具体的には、走行状態に応じてエンジントルクを制御することにより、操舵角や横G推定値に基づいて算出されたエンジンロールの角度や角速度を、車両の安定化に適した量に制御する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−089474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のように従来から知られている方法では、制御対象となる系のモデリング、すなわち数学的記述方法の様式によっては、設計の自由度がなく、模擬したい実際の系の重要な特性を表現できない。その結果として、好適な車両性能を引き出すことができないという問題があった。
【0007】
特許文献1に記載された方法におけるエンジンマウントおよびサスペンションのバネ特性および減衰特性の数学的記述様式も一般的なバネ・ダンパ要素の並列モデルを使用しているに過ぎない。実際の車両において上記の様な連成振動を生じる部位は、懸架部品の物性値や3次元的な搭載上の形状要因等種々の要因により、運動や変形の際に生じるヒステリシス特性などの非線形な特性を持っている。これに対して、特許文献1の方法などで用いられている線形モデルでは、上述のヒステリシス特性などの非線形特性を模擬することは困難である。つまり、制振性能に関わる重要な動特性を精度良く同定することが極めて困難であるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、非線形特性を有する制御対象の振動に対しても、制御系設計を容易にし、かつ、制振効果を発揮することができる車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の車両制御装置は、外部から入力される入力操作量に応じて運動または変形する制御対象の運動状態を制御する車両制御装置であって、前記制御対象における運動または変形の動特性を模擬するモデル要素を含み、前記入力操作量の推定値および前記制御対象に入力される外乱入力の推定値の少なくとも一方に基づく前記制御対象の運動または変形の過程で生じるヒステリシス特性を模擬するとともに、前記制御対象の運動状態の制御目標指標を定義する動特性記述手段と、該動特性記述手段において定義した前記制御目標指標のうちの前記ヒステリシス特性に関与する前記制御目標指標が、所望の状態となるように前記入力操作量を調整する操作補正量を算出する補正値演算手段と、該補正値演算手段により算出された前記操作補正量を用いて、前記入力操作量を補正した操作量指令値を前記制御対象に出力する入力操作量指令出力手段と、が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明の車両制御装置によれば、制御対象の運動または変形の過程で生じるヒステリシス特性を模擬すると共に制御目標指標を定義し、ヒステリシス特性に関与する制御目標指標を所望の状態とする操作補正量を用いて入力操作量を補正する。そのため、ヒステリシス特性のような非線形特性を有する制御対象の振動に対しても、制御系設計を容易にし、かつ、制振効果を発揮することができる。
【0011】
上記発明において前記動特性記述手段における前記モデル要素は、第1のバネ要素および第1のダンパ要素を直列に接続した第1の線形要素と、第2のバネ要素および第2のダンパ要素の一方、または、両者の並列接続からなる第2の線形要素と、の並列接続で構成される基本モデル要素を少なくとも1つ以上備えるものであることが好ましい。
【0012】
このように、第1の線形要素および第2の線形要素を並列接続した基本モデル要素を少なくとも1つ以上備えるモデル要素を用いることにより、制御対象の運動や変形の過程で生じるヒステリシス特性を模擬することができる。
【0013】
上記発明において前記制御対象は、車両を構成する第1構成要素と、該第1構成要素以外の前記車両を構成する要素、または、路面で構成される第2構成要素と、を備え、前記第1構成要素および前記第2構成要素を連結する連結要素、または、前記第1構成要素および前記第2構成要素の少なくとも一方自体に内在するバネ特性および減衰特性により、前記第1構成要素および前記第2構成要素が連成振動するものであることが好ましい。
【0014】
このように、第1構成要素および第2構成要素が連成振動する制御対象とすることにより、車両を構成する要素を含む制御対象の運動や変形の過程で生じるヒステリシス特性を模擬することができる。例えば、連結要素が有する粘弾性や、第1構成要素または第2構成要素自体が有する粘弾性によるバネ特性と減衰特性によるヒステリシス特性を有する制御対象の連成振動を模擬することができる。
【0015】
上記発明において前記第1構成要素は前記車両の車体であり、前記第2構成要素は前記車両の原動機であり、前記車体および前記原動機は、前記連結要素である防振装置により連結され、前記操作入力量は、前記原動機に対して入力される要求駆動軸トルクであり、前記外乱入力は、路面から入力される外乱負荷とする。
【0016】
このように、第1構成要素を車両の車体とし、第2構成要素を車両の原動機とすることにより、原動機における駆動トルクの変動や、車両のタイヤを介して路面から入力される外乱負荷の変動に起因する制御対象の連成振動を制御することができる。具体的には、防振装置が有する粘弾性に起因する車体および原動機の連成振動の動特性を、ヒステリシス特性を有する動特性として模擬することができる。
【0017】
上記発明において前記防振装置には、前記車両の前方に配置された前側マウントと、後方に配置された後側マウントと、が少なくとも設けられ、前記制御目標指標は、前記前側マウントのストローク変位、ストローク速度、前記後側マウントのストローク変位、ストローク速度、前記原動機のロール角変位、ロール角速度、前記車体の上下方向変位、速度、および、前記車体のピッチ角変位、角速度の少なくとも1つ以上の線形結合式で記述され、前記補正値演算手段は、前記制御目標指標が最小値となるように前記入力補正値を算出する。
【0018】
このように、制御目標指標を、前側マウントのストローク変位、ストローク速度、後側マウントのストローク変位、ストローク速度、原動機のロール角変位、ロール角速度、車体の上下方向変位、速度、車体のピッチ角変位、角速度の少なくとも1つ以上の線形結合式で記述し、制御目標指標が最小値となるように入力補正値を算出することにより、制御対象における連成振動を抑制することができる。つまり、上述の入力補正値を用いて要求駆動軸トルクを補正した操作量指令値を原動機に出力することにより、原動機において発生する駆動トルクを制御し、制御対象における連成振動を抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の車両制御装置によれば、制御対象の運動または変形の過程で生じるヒステリシス特性を模擬すると共に制御目標指標を定義し、ヒステリシス特性に関与する制御目標指標を所望の状態とする操作補正量を用いて入力操作量を補正するため、非線形特性を有する振動に対しても、制御系設計を容易にし、かつ、制振効果を発揮することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両制御装置の構成を示す模式図である。
【図2】図1の演算装置における詳細構造を説明するブロック図である。
【図3】エンジン・車体連成振動モデルの諸元を説明する模式図である。
【図4】状態方程式における状態変数の位置や、入力の位置などを示す模式図である。
【図5】駆動軸回転中心の前後方向作用する並進力の変化率の導出を説明する図である。
【図6】並進力に関する出力方程式に対する連成振動系の周波数特性を示す図である。
【図7】並進力に関する出力方程式に対する連成振動系のステップ応答性を示す図である。
【図8】前側マウントの上下方向変位に関する出力方程式に対する連成振動系の周波数特性を示す図である。
【図9】前側マウントの上下方向変位に関する出力方程式に対する連成振動系のステップ応答性を示す図である。
【図10】後側マウントの上下方向変位に関する出力方程式に対する連成振動系の周波数特性を示す図である。
【図11】後側マウントの上下方向変位に関する出力方程式に対する連成振動系のステップ応答性を示す図である。
【図12】振動の抑制を図る場合の時間応答特性を説明する図である。
【図13】入力に対する応答性向上を図る場合の時間応答特性を説明する図である。
【図14】外乱入力に対する出力の乱れを抑制する場合の時間応答特性を説明する図である。
【図15】エンジン等のロール角速度に関する出力方程式に対する連成振動系の周波数特性を示す図である。
【図16】エンジン等のロール角速度に関する出力方程式に対する連成振動系のステップ応答性を示す図である。
【図17】車体のピッチ角速度に関する出力方程式に対する連成振動系の周波数特性を示す図である。
【図18】車体のピッチ角速度に関する出力方程式に対する連成振動系のステップ応答性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の一実施形態に係る車両制御装置ついて図1から図18を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る車両制御装置1の構成を示す模式図である。
【0022】
本実施形態の車両制御装置1は、図1に示すように、フロントエンジン・フロントドライブ方式の車両(以下、「FF車30」と表記する。)の原動機であるエンジン(第2構成要素)32における駆動軸のトルクを制御することにより、FF車30の車体(第1構成要素)31およびエンジン32のヒステリシス特性を有する連成振動を抑制するものである。エンジン32は、FF車30の前方の2ヶ所で前側マウント(連結要素)33A,33Bにより車体31に支持され、後方の2ヶ所で後側マウント(連結要素)34A,34Bにより車体31に支持されている。なお、上述のFF車30は、エンジン32が横置きに配置されたもの、言い換えると、エンジン32の駆動軸がFF車30の左右方向に延びて配置されるものである。
【0023】
車両制御装置1には、FF車30の各所に配置された各種のセンサ出力が入力され、入力されたセンサ出力に基づいてエンジン32を制御するエンジンECU10と、エンジンECU10からエンジン32に入力される制御信号のうち、エンジン32が発生する駆動軸トルクを制御する要求駆動軸トルクの補正を行う補正演算部20と、が主に設けられている。
【0024】
エンジンECU10は、CPU(中央演算処理ユニット)、ROM、RAM、入出力インタフェース等を有するマイクロコンピュータであり、ROM等の記憶装置に記憶している制御プログラムを実行することにより、エンジン32を制御する制御信号を生成する等の演算処理を実行するものである。
【0025】
エンジンECU10の入出力インタフェースには、アクセルペダル(図示せず。)に設けられた開度センサ35の出力であるアクセル開度信号や、ステアリング41による操舵角の検出信号である操舵角信号や、4つの車輪である前輪51FR,51FLおよび後輪51RR,51RLの近傍にそれぞれ設けられた車輪側センサ52FR,52FL,52RR,52RLの出力である4輪車輪速信号などが入力されている。
【0026】
なお、ステアリング41の操舵角を前輪51FR,51FLに伝達する経路には、操舵トルクを補助する電動パワーステアリングモータ42(以下、「EPSモータ42」と表記する。)が配置され、EPSモータ42を制御する電動パワーステアリングECU43(以下、「EPS ECU43」と表記する。)が設けられている。EPS ECU43は、ステアリング41の操舵を検知し、前輪51FR,51FLの操舵に必要なトルクの一部をEPSモータ42に発生させる制御を行い、FF車30の操舵を容易にするものである。
【0027】
本実施形態の補正演算部20は、エンジンECU10をROM等の記憶装置に記憶している演算プログラムを、エンジンECU10のCPUが実行することにより実現されるものである。補正演算部20における演算内容については後述する。なお、補正演算部20は、エンジンECU10と独立した他のECU、例えば、本発明の補正処理の専用ECUや、上述のEPS ECU43によって実現されてもよい。この場合、補正後の要求駆動軸トルクは、CAN(コントローラ・エリア・ネットワーク)等の通信手段によりエンジンECU10に入力される。
【0028】
図2は、図1の補正演算部20における詳細構造を説明するブロック図である。
補正演算部20には、図2に示すように、ドライバー要求駆動軸トルク演算部21と、基本要求駆動軸トルク演算部22と、推定エンジントルク演算部23と、ギヤ比演算部24と、推定駆動軸トルク演算部25と、車両負荷外乱推定演算部26と、状態量推定部(動特性記述手段)27と、補正量演算部(補正値演算手段)28と、補正後要求駆動軸トルク演算部(入力操作量指令出力手段)29と、が設けられている。
【0029】
ドライバー要求駆動軸トルク演算部21は、アクセル開度信号や車速信号など、ドライバーの要求であるFF車30の加速や減速に係る信号が入力されるものであり、これらの信号に基づいてドライバーの要求に応じたドライバー要求駆動軸トルクを算出するものである。基本要求駆動軸トルク演算部22は、算出されたドライバー要求駆動軸トルクに基づいて、エンジン32に要求するトルクである基本要求駆動軸トルク(操作入力量)を算出するものである。なお、基本要求駆動軸トルクは、本実施形態の特徴である補正処理が施される前のものである。
【0030】
推定エンジントルク演算部23は、エンジン32に吸入される吸気の流量を示すエアフローセンサ信号や、エンジン32の回転数を示すエンジン回転数信号などが入力されるものであり、これらの信号に基づいて、エンジン32において発生することが推定されるトルクである推定エンジントルクを算出するものである。
【0031】
ギヤ比演算部24は、エンジン回転数信号やタービン回転数信号などが入力されるものであり、これらの信号に基づいて、トランスアクスルにおけるギヤ比を算出するものである。
【0032】
推定駆動軸トルク演算部25は、算出された推定エンジントルクおよびトランスアクスルのギヤ比に基づいて、トランスアクスルから前輪51FR,51FLを駆動する駆動軸に伝達されると推定される駆動軸トルク(入力操作量の推定値)を算出するものである。
【0033】
車両負荷外乱推定演算部26は、前輪51FR,51FLおよび後輪51RR,51RLの回転速度を示す4輪車輪速信号や、ステアリング41の操作角度を示す操舵角信号などが入力されるものである。さらに、車両負荷外乱推定演算部26は、前輪51FR,51FLや後輪51RR,51RLを介して車体31に伝わる路面の凹凸などによる外力や、操舵により車体31やエンジン32に働く外力などの車両負荷外乱(外乱入力の推定値)を、上述の信号に基づいて推定する演算を行うものである。
【0034】
状態量推定部(動特性記述手段)27は、推定駆動軸トルク演算部25において推定された駆動軸トルク、および、車両負荷外乱推定演算部26において推定された車両負荷外乱が入力されるものである。さらに、状態量推定部27は、後述するエンジン・車体連成振動モデル(モデル要素)を用いて、トランスアクスルを含むエンジン32(以下、「エンジン32等」と表記する。)および車体31のヒステリシス特性を有する運動特性を模擬すると共に、エンジン32等および車体31の運動状態の制御目標指標であるパラメータを定義するものである。
【0035】
補正量演算部28は、定義されたパラメータのうちのヒステリシス特性に関与するパラメータが、所望の状態となるように基本要求駆動軸トルクを調整する駆動軸トルク補正量(操作補正量)を算出するものである。なお、所望の状態については後述する。
【0036】
補正後要求駆動軸トルク演算部29は、駆動軸トルク補正量に基づいて基本要求駆動軸トルクを補正し、補正後要求駆動軸トルクを算出するものである。補正後要求駆動軸トルクは、エンジン32を制御するエンジンECU10に入力され、エンジンECU10は補正後要求駆動軸トルクに基づいてエンジン32の制御を行う。
【0037】
次に、状態量推定部27におけるエンジン・車体連成振動モデルの導出について説明する。図3は、エンジン・車体連成振動モデルの諸元を説明する模式図である。
まず、図3に基づいてエンジン・車体連成振動モデルを導出する際に用いられる諸元について説明する。heは、ホイール中心高さを基準としたエンジン32等の重心位置高さ(m)であり、Leは、エンジン32等の重心位置から前輪51FR,51FLの軸位置までの水平距離(m)である。Lemfは、前側マウント33A,33Bの位置から前輪51FR,51FLの軸位置までの水平距離(m)であり、Lemrは、後側マウント34A,34Bの位置から前輪51FR,51FLの軸位置までの水平距離(m)である。Lfは、車体31の重心から前輪51FR,51FLの軸位置までの距離(m)であり、Lrは、車体31の重心から後輪51RR,51RLの軸位置までの距離(m)である。
【0038】
rは、タイヤ半径(m)であり、Ieは、エンジン32等の重心まわり回転慣性モーメント(kgm2)であり、I´eは、エンジン32等の前輪駆動軸まわり回転慣性モーメント(kgm2)である。Mは、車体31のバネ上質量(kg)であり、Ipは、車体31のピッチング慣性モーメント(kgm2)である。
【0039】
Ke1fは、前側マウント33A,33Bの第2の線形要素のバネ定数(N/m)であり、Ke2fは、前側マウント33A,33Bの第1の線形要素のバネ定数(N/m)である。Cefは、前側マウント33A,33Bの第1の線形要素のダンパ減衰係数(Ns/m)である。Ke1rは、後側マウント34A,34Bの第2の線形要素のバネ定数(N/m)であり、Ke2rは、後側マウント34A,34Bの第1の線形要素のバネ定数(N/m)である。Cerは、後側マウント34A,34Bの第1の線形要素のダンパ減衰係数(Ns/m)である。
【0040】
なお、前側マウント33AにおけるKe1fおよびKe2fの値の組合せと、前側マウント33BにおけるKe1fおよびKe2fの値の組合せとは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。同様に、後側マウント34AにおけるKe1rおよびKe2rの値の組合せと、後側マウント34BにおけるKe1rおよびKe2rの値の組合せとは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0041】
Ksfは、前輪51FR,51FLのサスペンションバネ定数(N/m)であり、Csfは、前輪51FR,51FLのサスペンションダンパ減衰係数(Ns/m)である。Ksrは、後輪51RR,51RLのサスペンションバネ定数(N/m)であり、Csrは、後輪51RR,51RLのサスペンションダンパ減衰係数(Ns/m)である。
【0042】
エンジン・車体連成振動モデルは、上述のようにFF車30の車体31に横置きのエンジン32等が配置された場合の、エンジン32等および車体31の連成振動系を制御対象としたモデルである。具体的には、駆動軸回転中心回りに作用する駆動トルクの反力によって、エンジン32等が車体31の前後方向にロール振動する。この際、エンジン32と車体31とを連結している前側マウント33A,33Bおよび後側マウント34A,34Bのバネ・ダンパ特性によってロール振動を抑える力が作用する。
【0043】
その一方で、車体31は、前側マウント33A,33Bおよび後側マウント34A,34Bから反力を受けてピッチ振動を引き起こす。この際、前輪51FR,51FLおよび後輪51RR,51RLのサスペンションのバネ・ダンパ特性によってピッチング振動を抑える力が作用する。上述のエンジン32等のロール振動、および、車体31のピッチ振動の連成振動系に対して、各部に働く力とモーメントの動的釣り合いの関係から以下の式(1)から式(5)までの基礎方程式が得られる。
【0044】
【数1】
【0045】
上述の式(1)から式(5)を変形することにより、下記の式(1’)から式(5’)までの連立微分方程式が得られる。
【0046】
【数2】
【0047】
さらに、上述の式(1’)から式(5’)までにおける独立変数を状態量として定義し、下記に示す状態方程式(6)の形式で表記することにより、線形状態空間モデルとして定式化できる。
【0048】
【数3】
【0049】
上述の状態方程式(6)において、状態変数(x1からx8まで)および入力uは、以下のように定義される。図4には、FF車30におけるx1からx8までの状態変数により表される変位等の位置や、入力uの位置などが示されている。
【0050】
【数4】
【0051】
また、状態方程式(6)の係数行列の中の各定数は、FF車30の諸元の値を用いて以下のように定義される。
【0052】
【数5】
【0053】
次に、状態量推定部(動特性記述手段)27における出力方程式の導出について説明する。図5は、駆動軸回転中心の前後方向に作用する並進力Fdsの変化率(dFds/dt)の導出に用いられる諸元を説明する図である。
【0054】
エンジン32等が駆動軸中心まわりにロール振動する際に、エンジン32等は、慣性主軸まわりに回転運動しようとする傾向がある。そのため、機械的に拘束された駆動軸中心には、慣性主軸まわりのモーメントによる偶力が作用する。このことから、エンジン32等のロール回転方向の慣性主軸の位置を、エンジン32等の重心位置と概ね一致するとみなし、図5に示す駆動軸中心に作用する前後方向への並進力Fdsが得られる。
【0055】
【数6】
【0056】
上述の並進力Fdsの変動成分(微分項)をとると、以下の式が得られる。
【0057】
【数7】
【0058】
ここで、上式の各係数k1からk8は、以下の通りに定義されている。
【0059】
【数8】
【0060】
以上より、駆動軸回転中心の前後方向に作用する並進力Fdsの変化率(dFds/dt)の出力方程式は以下の通りとなる。
【0061】
【数9】
【0062】
また、前側マウント33A,33Bの直列バネ・ダンパ接続点の上下方向変位xefおよび後側マウント34A,34Bの直列バネ・ダンパ接続点の上下方向変位xerの出力方程式は以下の通りとなる。
【0063】
【数10】
【0064】
【数11】
【0065】
なお、図5におけるF1およびF2は以下の通りに定義される力である。
【0066】
【数12】
【0067】
次に、上述の出力方程式(7)から(9)に対するエンジン32等および車体31の連成振動系の周波数特性およびステップ応答特性について、図6から図11を参照しながら説明する。なお、図6から図11における点線で示されたグラフが本実施形態の制御が行われなかった場合の動特性を示すものであり、実線で示されたグラフが本実施形態の制御が行われた場合の動特性を示すものである。
【0068】
並進力Fdsの変化率(dFds/dt)に関する出力方程式(7)に対する上述の連成振動系の周波数特性が図6(a)および図6(b)に示されている。図6(a)に示すように、本実施形態の制御がない場合には、3つの異なる周波数において共振の発生を意味するピークが確認できる。これに対して、本実施形態の制御がある場合には、各々の周波数帯において共振を抑制する効果があることが示されている。
【0069】
また、出力方程式(7)に対する上述の連成振動系のステップ応答性が図7(a)および図7(b)に示されている。図7(a)に示すように、本実施形態の制御がある場合と、制御がない場合とを比較すると、ステップ入力が補正されていることが判る。さらに、図7(b)に示すように、ステップ入力に対する応答(並進力Fdsの変化率)の乱れが抑制されていることが判る。具体的にはステップ入力の立ち上がりと、立ち下がりに対応する応答の乱れが抑制されている。
【0070】
前側マウント33A,33Bの直列バネ・ダンパ接続点の上下方向変位xefに関する出力方程式(8)に対する上述の連成振動系の周波数特性が図8(a)および図8(b)に示されている。また、出力方程式(8)に対する上述の連成振動系のステップ応答性が図9(a)および図9(b)に示されている。
【0071】
後側マウント34A,34Bの直列バネ・ダンパ接続点の上下方向変位xerに関する出力方程式(9)に対する上述の連成振動系の周波数特性が図10(a)および図10(b)に示されている。また、出力方程式(9)に対する上述の連成振動系のステップ応答性が図11(a)および図11(b)に示されている。
【0072】
図9(a)および図11(a)に示すように、本実施形態の制御がある場合と、制御がない場合とを比較すると、ステップ入力が大幅に補正されていることが判る。このように入力が大幅に補正されたことにより、図9(b)および図11(b)に示すように、ダンパ歪み量(xef,xer)の増大が大きく抑制されている。
【0073】
ここで、補正量演算部28における所望の状態について、言い換えると、補正量演算部28の設計について説明する。補正量演算部28の設計は、線形制御理論に基づいて、目標関数の時間応答波形(入力に対する出力の時間応答波形)が所望の特性となるように設計される。所望の状態とは、一般的に、ステップ応答波形における入力に対する出力が、図12から図14に示す時間応答特性を示すことである。なお、図12から図14における実線は本実施形態の制御がある場合の波形を示し、点線は制御がない場合の波形を示している。
【0074】
図12は、振動の抑制を図る場合の時間応答特性を説明する図である。図12(a)は入力を示す波形であり、図12(b)は出力を示す波形であり、図12(c)は補正量を示す波形である。
【0075】
本実施形態の制御がない場合に、図12(b)に示すように、ステップ入力に対して出力はオーバーシュートとアンダーシュートを繰り返しながら定常値に近づく波形を示すときがある。これに対して本実施形態の制御では、図12(c)に示すように、補正量を、ステップ入力の立ち上がり時に入力値を減少させるものとすることにより、図12(a)に示すように、ステップ入力の波形の補正を行う。これにより、ステップ入力に対する出力は、図12(b)に示すように速やかに定常値に収束する。
【0076】
図13は、入力に対する応答性向上を図る場合の時間応答特性を説明する図である。図13(a)は入力を示す波形であり、図13(b)は出力を示す波形であり、図13(c)は補正量を示す波形である。
【0077】
本実施形態の制御がない場合に、図13(b)に示すように、ステップ入力に対して出力が定常値に近づくまでに長時間を要するときがある。これに対して本実施形態の制御では、図13(c)に示すように、補正量を、ステップ入力の立ち上がり時に入力値を増加させるものとすることにより、図13(a)に示すように、ステップ入力の波形の補正を行う。これにより、ステップ入力に対する出力は、図13(b)に示すように速やかに定常値に収束する。
【0078】
図14は、外乱入力に対する出力の乱れを抑制する場合の時間応答特性を説明する図である。図14(a)は外乱入力を示す波形であり、図14(b)は出力を示す波形であり、図14(c)は補正量を示す波形である。
【0079】
本実施形態の制御がない場合に、図14(a)に示すような外乱入力があると、図14(b)に示すように、出力は外乱入力に応じた乱れた波形となる。これに対して本実施形態の制御では、図14(c)に示すように、外乱入力と逆位相の補正量とすることにより、外乱入力に対する出力は、図14(c)に示すように乱れが抑制されたものとなる。
【0080】
上記の構成によれば、車両制御装置1は、制御対象のエンジン32等および車体31の連成振動系で生じるヒステリシス特性を模擬すると共に制御目標指標であるパラメータを定義し、ヒステリシス特性に関与するパラメータを所望の状態とする駆動軸トルク補正量を用いて基本要求駆動軸トルクを補正する。そのため、ヒステリシス特性のような非線形特性を有するエンジン32等および車体31の連成振動系の振動に対しても、制御系設計を容易にし、かつ、制振効果を発揮することができる。
【0081】
状態量推定部27は、バネ要素とダンパ要素の直列結合である第1の線形要素、および、バネ要素である第2の線形要素を並列接続した基本モデル要素である前側マウント33A,33Bおよび後側マウント34A,34Bを備えるエンジン・車体連成振動モデルを用いることにより、エンジン32等および車体31の連成振動系で生じるヒステリシス特性を模擬することができる。
【0082】
なお、上述の実施形態のように、第2の線形要素としてバネ要素を用いてもよいし、第2の線形要素としてダンパ要素を用いてもよく、特にその種類を限定するものではない。
車体31およびエンジン32が連成振動する連成振動系を制御対象とすることにより、例えば、前側マウント33A,33Bおよび後側マウント34A,34Bが有する粘弾性や、車体31またはエンジン32自体が有する粘弾性によるバネ特性と減衰特性によるヒステリシス特性を有する連成振動系の連成振動を模擬することができる。
【0083】
エンジン32等および車体31の連成振動系を制御対象とすることにより、エンジン32等における駆動トルクの変動や、前輪51FR,51FLや後輪51RR,51RLを介して路面から入力される外乱負荷の変動に起因する連成振動系の連成振動を制御することができる。具体的には、防振装置である前側マウント33A,33Bおよび後側マウント34A,34Bが有する粘弾性に起因するエンジン32等および車体31の連成振動の動特性を、ヒステリシス特性を有する動特性として模擬することができる。
【0084】
パラメータを、前側マウント33A,33Bのストローク変位、後側マウント34A,34Bのストローク変位、エンジン32等のロール角速度、車体31の上下方向速度、車体31のピッチ角速度の少なくとも1つ以上の線形結合式で記述し、パラメータが最小値となるように駆動軸トルク補正量を算出することにより、連成振動系における連成振動を抑制することができる。つまり、上述の駆動軸トルク補正量を用いて基本要求駆動軸トルクを補正した要求駆動軸トルクをエンジン32等に出力することにより、エンジン32等において発生する駆動トルクを制御し、連成振動系における連成振動を抑制することができる。
【0085】
なお、上述の実施形態では、並進力Fdsの変化率(dFds/dt)の出力方程式(7)、前側マウント33A,33Bの直列バネ・ダンパ接続点の上下方向変位xefの出力方程式(8)、後側マウント34A,34Bの直列バネ・ダンパ接続点の上下方向変位xerの出力方程式(9)について適用して説明したが、その他にも、以下に示すエンジン32等のロール角速度(dθe/dt)の出力方程式(10)や、車体31のピッチ角速度(dθp/dt)の出力方程式(11)に適用することができる。
【0086】
【数13】
【0087】
【数14】
【0088】
次に、上述の出力方程式(10)および(11)に対するエンジン32等および車体31の連成振動系の周波数特性およびステップ応答特性について、図15から図18を参照しながら説明する。
【0089】
エンジン32等のロール角速度(dθe/dt)の出力方程式(10)に対する上述の連成振動系の周波数特性が図15(a)および図15(b)に示されている。図15(a)に示すように、本実施形態の制御がない場合には、2つの異なる周波数において共振の発生を意味するピークが確認できる。これに対して、本実施形態の制御がある場合には、2つのピークが緩やかになっていること確認できる。
【0090】
また、出力方程式(10)に対する上述の連成振動系のステップ応答性が図16(a)および図16(b)に示されている。図16(a)に示すように、本実施形態の制御がある場合と、制御がない場合とを比較すると、ステップ入力が補正されていることが判る。さらに、図16(b)に示すように、ステップ入力に対する応答(ロール角速度 dθe/dt)の乱れが抑制されていることが判る。具体的にはステップ入力の立ち上がりと、立ち下がりに対応する応答の乱れが抑制されている。
【0091】
車体31のピッチ角速度(dθp/dt)に関する出力方程式(11)に対する上述の連成振動系の周波数特性が図17(a)および図17(b)に示されている。また、出力方程式(11)に対する上述の連成振動系のステップ応答性が図18(a)および図18(b)に示されている。
【0092】
図18(a)に示すように、本実施形態の制御がない場合には、3つの異なる周波数において共振の発生を意味するピークが確認できる。これに対して、本実施形態の制御がある場合には、各々の周波数帯において共振を抑制する効果があることが示されている。
【0093】
図19(a)に示すように、本実施形態の制御がある場合と、制御がない場合とを比較すると、ステップ入力が補正されていることが判る。さらに、図19(b)に示すように、ステップ入力に対する応答(並進力Fdsの変化率)の乱れが抑制されていることが判る。具体的にはステップ入力の立ち上がりと、立ち下がりに対応する応答の乱れが抑制されている。
【0094】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。具体的には、本実施形態の制御が適用される対象は、車両の駆動方式に関わらず適用可能である。例えばFR車両の用に縦置きエンジンの場合でも、エンジン・トランスミッションのロール振動と車体のロール振動との連成振動系に適用できることは言うまでもない。また、上述のようなエンジン32等および車体31の連成振動系以外の連成振動系であってもよい。
【0095】
例えば、特許第4356305号におけるタイヤと車体の間に記載されたバネ・ダンパ系(特許第4356305号の図4参照)を、本実施形態で記載したバネ要素とダンパ要素の直列結合である第1の線形要素、および、バネ要素である第2の線形要素を並列接続した基本モデル要素に置き換えてもよい。
【0096】
同様に、特許第4161923号、特開2006−60936号公報におけるタイヤと車体の間に記載されたバネ・ダンパ系、および、車体とエンジンの間に記載されたバネ・ダンパ系(特許第4161923号の図3、特開2006−60936号公報の図12参照)を、本実施形態で記載したバネ要素とダンパ要素の直列結合である第1の線形要素、および、バネ要素である第2の線形要素を並列接続した基本モデル要素に置き換えてもよい。
【0097】
その他に、特許第4277915号や特許第4333767号における、路面とタイヤとの間に記載されたバネ・ダンパ系、転動輪軸と駆動輪軸の間に記載されたバネ・ダンパ系、前輪軸とシャーシフレームの間に記載されたバネ・ダンパ系および後輪軸とシャーシフレームの間に記載されたバネ・ダンパ系(特許第4277915号の図4、図9、図11、図15参照、特許第4333767号の図6、図11、図14、図20参照)を、本実施形態で記載したバネ要素とダンパ要素の直列結合である第1の線形要素、および、バネ要素である第2の線形要素を並列接続した基本モデル要素に置き換えてもよい。
【符号の説明】
【0098】
1…車両制御装置、27…状態量推定部(動特性記述手段)、28…補正量演算部(補正値演算手段)、29…補正後要求駆動軸トルク演算部(入力操作量指令出力手段)、31…車体(第1構成要素)、32…エンジン(第2構成要素)、33A,33B…前側マウント(連結要素)、34A,34B…後側マウント(連結要素)
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両には、バネ特性と減衰特性による防振機能を持つ懸架部品で連結された2つ以上の構成部品間で連成振動を引き起こす部位が多数存在している。例えば、サスペンション部品で連結された車体(バネ上の部分)と、バネ下系部品やエンジンマウントで連結された車体とエンジン・トランスアクスルの間で引き起こされる連成振動が知られている。この連成振動は、車両の乗り心地に影響を与えるだけでなく、車両の走行性能に多大な影響を及ぼすことが知られている。
【0003】
このような連成振動を抑制するために、従来から数々の工夫や発明が提案されている。例えば、対象とする系の連成振動を引き起こす力や、トルク反力の発生源である駆動トルクや、その他の操作力そのものを制御することにより、連成振動を発生させない、あるいは、速やかに減衰させる制御法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
特許文献1では、エンジンのロール振動モデルを用いた振動推定値の情報に基づき、エンジントルクを制御してエンジンの振動を抑制する方法を提案している。具体的には、走行状態に応じてエンジントルクを制御することにより、操舵角や横G推定値に基づいて算出されたエンジンロールの角度や角速度を、車両の安定化に適した量に制御する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−089474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のように従来から知られている方法では、制御対象となる系のモデリング、すなわち数学的記述方法の様式によっては、設計の自由度がなく、模擬したい実際の系の重要な特性を表現できない。その結果として、好適な車両性能を引き出すことができないという問題があった。
【0007】
特許文献1に記載された方法におけるエンジンマウントおよびサスペンションのバネ特性および減衰特性の数学的記述様式も一般的なバネ・ダンパ要素の並列モデルを使用しているに過ぎない。実際の車両において上記の様な連成振動を生じる部位は、懸架部品の物性値や3次元的な搭載上の形状要因等種々の要因により、運動や変形の際に生じるヒステリシス特性などの非線形な特性を持っている。これに対して、特許文献1の方法などで用いられている線形モデルでは、上述のヒステリシス特性などの非線形特性を模擬することは困難である。つまり、制振性能に関わる重要な動特性を精度良く同定することが極めて困難であるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、非線形特性を有する制御対象の振動に対しても、制御系設計を容易にし、かつ、制振効果を発揮することができる車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の車両制御装置は、外部から入力される入力操作量に応じて運動または変形する制御対象の運動状態を制御する車両制御装置であって、前記制御対象における運動または変形の動特性を模擬するモデル要素を含み、前記入力操作量の推定値および前記制御対象に入力される外乱入力の推定値の少なくとも一方に基づく前記制御対象の運動または変形の過程で生じるヒステリシス特性を模擬するとともに、前記制御対象の運動状態の制御目標指標を定義する動特性記述手段と、該動特性記述手段において定義した前記制御目標指標のうちの前記ヒステリシス特性に関与する前記制御目標指標が、所望の状態となるように前記入力操作量を調整する操作補正量を算出する補正値演算手段と、該補正値演算手段により算出された前記操作補正量を用いて、前記入力操作量を補正した操作量指令値を前記制御対象に出力する入力操作量指令出力手段と、が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明の車両制御装置によれば、制御対象の運動または変形の過程で生じるヒステリシス特性を模擬すると共に制御目標指標を定義し、ヒステリシス特性に関与する制御目標指標を所望の状態とする操作補正量を用いて入力操作量を補正する。そのため、ヒステリシス特性のような非線形特性を有する制御対象の振動に対しても、制御系設計を容易にし、かつ、制振効果を発揮することができる。
【0011】
上記発明において前記動特性記述手段における前記モデル要素は、第1のバネ要素および第1のダンパ要素を直列に接続した第1の線形要素と、第2のバネ要素および第2のダンパ要素の一方、または、両者の並列接続からなる第2の線形要素と、の並列接続で構成される基本モデル要素を少なくとも1つ以上備えるものであることが好ましい。
【0012】
このように、第1の線形要素および第2の線形要素を並列接続した基本モデル要素を少なくとも1つ以上備えるモデル要素を用いることにより、制御対象の運動や変形の過程で生じるヒステリシス特性を模擬することができる。
【0013】
上記発明において前記制御対象は、車両を構成する第1構成要素と、該第1構成要素以外の前記車両を構成する要素、または、路面で構成される第2構成要素と、を備え、前記第1構成要素および前記第2構成要素を連結する連結要素、または、前記第1構成要素および前記第2構成要素の少なくとも一方自体に内在するバネ特性および減衰特性により、前記第1構成要素および前記第2構成要素が連成振動するものであることが好ましい。
【0014】
このように、第1構成要素および第2構成要素が連成振動する制御対象とすることにより、車両を構成する要素を含む制御対象の運動や変形の過程で生じるヒステリシス特性を模擬することができる。例えば、連結要素が有する粘弾性や、第1構成要素または第2構成要素自体が有する粘弾性によるバネ特性と減衰特性によるヒステリシス特性を有する制御対象の連成振動を模擬することができる。
【0015】
上記発明において前記第1構成要素は前記車両の車体であり、前記第2構成要素は前記車両の原動機であり、前記車体および前記原動機は、前記連結要素である防振装置により連結され、前記操作入力量は、前記原動機に対して入力される要求駆動軸トルクであり、前記外乱入力は、路面から入力される外乱負荷とする。
【0016】
このように、第1構成要素を車両の車体とし、第2構成要素を車両の原動機とすることにより、原動機における駆動トルクの変動や、車両のタイヤを介して路面から入力される外乱負荷の変動に起因する制御対象の連成振動を制御することができる。具体的には、防振装置が有する粘弾性に起因する車体および原動機の連成振動の動特性を、ヒステリシス特性を有する動特性として模擬することができる。
【0017】
上記発明において前記防振装置には、前記車両の前方に配置された前側マウントと、後方に配置された後側マウントと、が少なくとも設けられ、前記制御目標指標は、前記前側マウントのストローク変位、ストローク速度、前記後側マウントのストローク変位、ストローク速度、前記原動機のロール角変位、ロール角速度、前記車体の上下方向変位、速度、および、前記車体のピッチ角変位、角速度の少なくとも1つ以上の線形結合式で記述され、前記補正値演算手段は、前記制御目標指標が最小値となるように前記入力補正値を算出する。
【0018】
このように、制御目標指標を、前側マウントのストローク変位、ストローク速度、後側マウントのストローク変位、ストローク速度、原動機のロール角変位、ロール角速度、車体の上下方向変位、速度、車体のピッチ角変位、角速度の少なくとも1つ以上の線形結合式で記述し、制御目標指標が最小値となるように入力補正値を算出することにより、制御対象における連成振動を抑制することができる。つまり、上述の入力補正値を用いて要求駆動軸トルクを補正した操作量指令値を原動機に出力することにより、原動機において発生する駆動トルクを制御し、制御対象における連成振動を抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の車両制御装置によれば、制御対象の運動または変形の過程で生じるヒステリシス特性を模擬すると共に制御目標指標を定義し、ヒステリシス特性に関与する制御目標指標を所望の状態とする操作補正量を用いて入力操作量を補正するため、非線形特性を有する振動に対しても、制御系設計を容易にし、かつ、制振効果を発揮することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両制御装置の構成を示す模式図である。
【図2】図1の演算装置における詳細構造を説明するブロック図である。
【図3】エンジン・車体連成振動モデルの諸元を説明する模式図である。
【図4】状態方程式における状態変数の位置や、入力の位置などを示す模式図である。
【図5】駆動軸回転中心の前後方向作用する並進力の変化率の導出を説明する図である。
【図6】並進力に関する出力方程式に対する連成振動系の周波数特性を示す図である。
【図7】並進力に関する出力方程式に対する連成振動系のステップ応答性を示す図である。
【図8】前側マウントの上下方向変位に関する出力方程式に対する連成振動系の周波数特性を示す図である。
【図9】前側マウントの上下方向変位に関する出力方程式に対する連成振動系のステップ応答性を示す図である。
【図10】後側マウントの上下方向変位に関する出力方程式に対する連成振動系の周波数特性を示す図である。
【図11】後側マウントの上下方向変位に関する出力方程式に対する連成振動系のステップ応答性を示す図である。
【図12】振動の抑制を図る場合の時間応答特性を説明する図である。
【図13】入力に対する応答性向上を図る場合の時間応答特性を説明する図である。
【図14】外乱入力に対する出力の乱れを抑制する場合の時間応答特性を説明する図である。
【図15】エンジン等のロール角速度に関する出力方程式に対する連成振動系の周波数特性を示す図である。
【図16】エンジン等のロール角速度に関する出力方程式に対する連成振動系のステップ応答性を示す図である。
【図17】車体のピッチ角速度に関する出力方程式に対する連成振動系の周波数特性を示す図である。
【図18】車体のピッチ角速度に関する出力方程式に対する連成振動系のステップ応答性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の一実施形態に係る車両制御装置ついて図1から図18を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る車両制御装置1の構成を示す模式図である。
【0022】
本実施形態の車両制御装置1は、図1に示すように、フロントエンジン・フロントドライブ方式の車両(以下、「FF車30」と表記する。)の原動機であるエンジン(第2構成要素)32における駆動軸のトルクを制御することにより、FF車30の車体(第1構成要素)31およびエンジン32のヒステリシス特性を有する連成振動を抑制するものである。エンジン32は、FF車30の前方の2ヶ所で前側マウント(連結要素)33A,33Bにより車体31に支持され、後方の2ヶ所で後側マウント(連結要素)34A,34Bにより車体31に支持されている。なお、上述のFF車30は、エンジン32が横置きに配置されたもの、言い換えると、エンジン32の駆動軸がFF車30の左右方向に延びて配置されるものである。
【0023】
車両制御装置1には、FF車30の各所に配置された各種のセンサ出力が入力され、入力されたセンサ出力に基づいてエンジン32を制御するエンジンECU10と、エンジンECU10からエンジン32に入力される制御信号のうち、エンジン32が発生する駆動軸トルクを制御する要求駆動軸トルクの補正を行う補正演算部20と、が主に設けられている。
【0024】
エンジンECU10は、CPU(中央演算処理ユニット)、ROM、RAM、入出力インタフェース等を有するマイクロコンピュータであり、ROM等の記憶装置に記憶している制御プログラムを実行することにより、エンジン32を制御する制御信号を生成する等の演算処理を実行するものである。
【0025】
エンジンECU10の入出力インタフェースには、アクセルペダル(図示せず。)に設けられた開度センサ35の出力であるアクセル開度信号や、ステアリング41による操舵角の検出信号である操舵角信号や、4つの車輪である前輪51FR,51FLおよび後輪51RR,51RLの近傍にそれぞれ設けられた車輪側センサ52FR,52FL,52RR,52RLの出力である4輪車輪速信号などが入力されている。
【0026】
なお、ステアリング41の操舵角を前輪51FR,51FLに伝達する経路には、操舵トルクを補助する電動パワーステアリングモータ42(以下、「EPSモータ42」と表記する。)が配置され、EPSモータ42を制御する電動パワーステアリングECU43(以下、「EPS ECU43」と表記する。)が設けられている。EPS ECU43は、ステアリング41の操舵を検知し、前輪51FR,51FLの操舵に必要なトルクの一部をEPSモータ42に発生させる制御を行い、FF車30の操舵を容易にするものである。
【0027】
本実施形態の補正演算部20は、エンジンECU10をROM等の記憶装置に記憶している演算プログラムを、エンジンECU10のCPUが実行することにより実現されるものである。補正演算部20における演算内容については後述する。なお、補正演算部20は、エンジンECU10と独立した他のECU、例えば、本発明の補正処理の専用ECUや、上述のEPS ECU43によって実現されてもよい。この場合、補正後の要求駆動軸トルクは、CAN(コントローラ・エリア・ネットワーク)等の通信手段によりエンジンECU10に入力される。
【0028】
図2は、図1の補正演算部20における詳細構造を説明するブロック図である。
補正演算部20には、図2に示すように、ドライバー要求駆動軸トルク演算部21と、基本要求駆動軸トルク演算部22と、推定エンジントルク演算部23と、ギヤ比演算部24と、推定駆動軸トルク演算部25と、車両負荷外乱推定演算部26と、状態量推定部(動特性記述手段)27と、補正量演算部(補正値演算手段)28と、補正後要求駆動軸トルク演算部(入力操作量指令出力手段)29と、が設けられている。
【0029】
ドライバー要求駆動軸トルク演算部21は、アクセル開度信号や車速信号など、ドライバーの要求であるFF車30の加速や減速に係る信号が入力されるものであり、これらの信号に基づいてドライバーの要求に応じたドライバー要求駆動軸トルクを算出するものである。基本要求駆動軸トルク演算部22は、算出されたドライバー要求駆動軸トルクに基づいて、エンジン32に要求するトルクである基本要求駆動軸トルク(操作入力量)を算出するものである。なお、基本要求駆動軸トルクは、本実施形態の特徴である補正処理が施される前のものである。
【0030】
推定エンジントルク演算部23は、エンジン32に吸入される吸気の流量を示すエアフローセンサ信号や、エンジン32の回転数を示すエンジン回転数信号などが入力されるものであり、これらの信号に基づいて、エンジン32において発生することが推定されるトルクである推定エンジントルクを算出するものである。
【0031】
ギヤ比演算部24は、エンジン回転数信号やタービン回転数信号などが入力されるものであり、これらの信号に基づいて、トランスアクスルにおけるギヤ比を算出するものである。
【0032】
推定駆動軸トルク演算部25は、算出された推定エンジントルクおよびトランスアクスルのギヤ比に基づいて、トランスアクスルから前輪51FR,51FLを駆動する駆動軸に伝達されると推定される駆動軸トルク(入力操作量の推定値)を算出するものである。
【0033】
車両負荷外乱推定演算部26は、前輪51FR,51FLおよび後輪51RR,51RLの回転速度を示す4輪車輪速信号や、ステアリング41の操作角度を示す操舵角信号などが入力されるものである。さらに、車両負荷外乱推定演算部26は、前輪51FR,51FLや後輪51RR,51RLを介して車体31に伝わる路面の凹凸などによる外力や、操舵により車体31やエンジン32に働く外力などの車両負荷外乱(外乱入力の推定値)を、上述の信号に基づいて推定する演算を行うものである。
【0034】
状態量推定部(動特性記述手段)27は、推定駆動軸トルク演算部25において推定された駆動軸トルク、および、車両負荷外乱推定演算部26において推定された車両負荷外乱が入力されるものである。さらに、状態量推定部27は、後述するエンジン・車体連成振動モデル(モデル要素)を用いて、トランスアクスルを含むエンジン32(以下、「エンジン32等」と表記する。)および車体31のヒステリシス特性を有する運動特性を模擬すると共に、エンジン32等および車体31の運動状態の制御目標指標であるパラメータを定義するものである。
【0035】
補正量演算部28は、定義されたパラメータのうちのヒステリシス特性に関与するパラメータが、所望の状態となるように基本要求駆動軸トルクを調整する駆動軸トルク補正量(操作補正量)を算出するものである。なお、所望の状態については後述する。
【0036】
補正後要求駆動軸トルク演算部29は、駆動軸トルク補正量に基づいて基本要求駆動軸トルクを補正し、補正後要求駆動軸トルクを算出するものである。補正後要求駆動軸トルクは、エンジン32を制御するエンジンECU10に入力され、エンジンECU10は補正後要求駆動軸トルクに基づいてエンジン32の制御を行う。
【0037】
次に、状態量推定部27におけるエンジン・車体連成振動モデルの導出について説明する。図3は、エンジン・車体連成振動モデルの諸元を説明する模式図である。
まず、図3に基づいてエンジン・車体連成振動モデルを導出する際に用いられる諸元について説明する。heは、ホイール中心高さを基準としたエンジン32等の重心位置高さ(m)であり、Leは、エンジン32等の重心位置から前輪51FR,51FLの軸位置までの水平距離(m)である。Lemfは、前側マウント33A,33Bの位置から前輪51FR,51FLの軸位置までの水平距離(m)であり、Lemrは、後側マウント34A,34Bの位置から前輪51FR,51FLの軸位置までの水平距離(m)である。Lfは、車体31の重心から前輪51FR,51FLの軸位置までの距離(m)であり、Lrは、車体31の重心から後輪51RR,51RLの軸位置までの距離(m)である。
【0038】
rは、タイヤ半径(m)であり、Ieは、エンジン32等の重心まわり回転慣性モーメント(kgm2)であり、I´eは、エンジン32等の前輪駆動軸まわり回転慣性モーメント(kgm2)である。Mは、車体31のバネ上質量(kg)であり、Ipは、車体31のピッチング慣性モーメント(kgm2)である。
【0039】
Ke1fは、前側マウント33A,33Bの第2の線形要素のバネ定数(N/m)であり、Ke2fは、前側マウント33A,33Bの第1の線形要素のバネ定数(N/m)である。Cefは、前側マウント33A,33Bの第1の線形要素のダンパ減衰係数(Ns/m)である。Ke1rは、後側マウント34A,34Bの第2の線形要素のバネ定数(N/m)であり、Ke2rは、後側マウント34A,34Bの第1の線形要素のバネ定数(N/m)である。Cerは、後側マウント34A,34Bの第1の線形要素のダンパ減衰係数(Ns/m)である。
【0040】
なお、前側マウント33AにおけるKe1fおよびKe2fの値の組合せと、前側マウント33BにおけるKe1fおよびKe2fの値の組合せとは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。同様に、後側マウント34AにおけるKe1rおよびKe2rの値の組合せと、後側マウント34BにおけるKe1rおよびKe2rの値の組合せとは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0041】
Ksfは、前輪51FR,51FLのサスペンションバネ定数(N/m)であり、Csfは、前輪51FR,51FLのサスペンションダンパ減衰係数(Ns/m)である。Ksrは、後輪51RR,51RLのサスペンションバネ定数(N/m)であり、Csrは、後輪51RR,51RLのサスペンションダンパ減衰係数(Ns/m)である。
【0042】
エンジン・車体連成振動モデルは、上述のようにFF車30の車体31に横置きのエンジン32等が配置された場合の、エンジン32等および車体31の連成振動系を制御対象としたモデルである。具体的には、駆動軸回転中心回りに作用する駆動トルクの反力によって、エンジン32等が車体31の前後方向にロール振動する。この際、エンジン32と車体31とを連結している前側マウント33A,33Bおよび後側マウント34A,34Bのバネ・ダンパ特性によってロール振動を抑える力が作用する。
【0043】
その一方で、車体31は、前側マウント33A,33Bおよび後側マウント34A,34Bから反力を受けてピッチ振動を引き起こす。この際、前輪51FR,51FLおよび後輪51RR,51RLのサスペンションのバネ・ダンパ特性によってピッチング振動を抑える力が作用する。上述のエンジン32等のロール振動、および、車体31のピッチ振動の連成振動系に対して、各部に働く力とモーメントの動的釣り合いの関係から以下の式(1)から式(5)までの基礎方程式が得られる。
【0044】
【数1】
【0045】
上述の式(1)から式(5)を変形することにより、下記の式(1’)から式(5’)までの連立微分方程式が得られる。
【0046】
【数2】
【0047】
さらに、上述の式(1’)から式(5’)までにおける独立変数を状態量として定義し、下記に示す状態方程式(6)の形式で表記することにより、線形状態空間モデルとして定式化できる。
【0048】
【数3】
【0049】
上述の状態方程式(6)において、状態変数(x1からx8まで)および入力uは、以下のように定義される。図4には、FF車30におけるx1からx8までの状態変数により表される変位等の位置や、入力uの位置などが示されている。
【0050】
【数4】
【0051】
また、状態方程式(6)の係数行列の中の各定数は、FF車30の諸元の値を用いて以下のように定義される。
【0052】
【数5】
【0053】
次に、状態量推定部(動特性記述手段)27における出力方程式の導出について説明する。図5は、駆動軸回転中心の前後方向に作用する並進力Fdsの変化率(dFds/dt)の導出に用いられる諸元を説明する図である。
【0054】
エンジン32等が駆動軸中心まわりにロール振動する際に、エンジン32等は、慣性主軸まわりに回転運動しようとする傾向がある。そのため、機械的に拘束された駆動軸中心には、慣性主軸まわりのモーメントによる偶力が作用する。このことから、エンジン32等のロール回転方向の慣性主軸の位置を、エンジン32等の重心位置と概ね一致するとみなし、図5に示す駆動軸中心に作用する前後方向への並進力Fdsが得られる。
【0055】
【数6】
【0056】
上述の並進力Fdsの変動成分(微分項)をとると、以下の式が得られる。
【0057】
【数7】
【0058】
ここで、上式の各係数k1からk8は、以下の通りに定義されている。
【0059】
【数8】
【0060】
以上より、駆動軸回転中心の前後方向に作用する並進力Fdsの変化率(dFds/dt)の出力方程式は以下の通りとなる。
【0061】
【数9】
【0062】
また、前側マウント33A,33Bの直列バネ・ダンパ接続点の上下方向変位xefおよび後側マウント34A,34Bの直列バネ・ダンパ接続点の上下方向変位xerの出力方程式は以下の通りとなる。
【0063】
【数10】
【0064】
【数11】
【0065】
なお、図5におけるF1およびF2は以下の通りに定義される力である。
【0066】
【数12】
【0067】
次に、上述の出力方程式(7)から(9)に対するエンジン32等および車体31の連成振動系の周波数特性およびステップ応答特性について、図6から図11を参照しながら説明する。なお、図6から図11における点線で示されたグラフが本実施形態の制御が行われなかった場合の動特性を示すものであり、実線で示されたグラフが本実施形態の制御が行われた場合の動特性を示すものである。
【0068】
並進力Fdsの変化率(dFds/dt)に関する出力方程式(7)に対する上述の連成振動系の周波数特性が図6(a)および図6(b)に示されている。図6(a)に示すように、本実施形態の制御がない場合には、3つの異なる周波数において共振の発生を意味するピークが確認できる。これに対して、本実施形態の制御がある場合には、各々の周波数帯において共振を抑制する効果があることが示されている。
【0069】
また、出力方程式(7)に対する上述の連成振動系のステップ応答性が図7(a)および図7(b)に示されている。図7(a)に示すように、本実施形態の制御がある場合と、制御がない場合とを比較すると、ステップ入力が補正されていることが判る。さらに、図7(b)に示すように、ステップ入力に対する応答(並進力Fdsの変化率)の乱れが抑制されていることが判る。具体的にはステップ入力の立ち上がりと、立ち下がりに対応する応答の乱れが抑制されている。
【0070】
前側マウント33A,33Bの直列バネ・ダンパ接続点の上下方向変位xefに関する出力方程式(8)に対する上述の連成振動系の周波数特性が図8(a)および図8(b)に示されている。また、出力方程式(8)に対する上述の連成振動系のステップ応答性が図9(a)および図9(b)に示されている。
【0071】
後側マウント34A,34Bの直列バネ・ダンパ接続点の上下方向変位xerに関する出力方程式(9)に対する上述の連成振動系の周波数特性が図10(a)および図10(b)に示されている。また、出力方程式(9)に対する上述の連成振動系のステップ応答性が図11(a)および図11(b)に示されている。
【0072】
図9(a)および図11(a)に示すように、本実施形態の制御がある場合と、制御がない場合とを比較すると、ステップ入力が大幅に補正されていることが判る。このように入力が大幅に補正されたことにより、図9(b)および図11(b)に示すように、ダンパ歪み量(xef,xer)の増大が大きく抑制されている。
【0073】
ここで、補正量演算部28における所望の状態について、言い換えると、補正量演算部28の設計について説明する。補正量演算部28の設計は、線形制御理論に基づいて、目標関数の時間応答波形(入力に対する出力の時間応答波形)が所望の特性となるように設計される。所望の状態とは、一般的に、ステップ応答波形における入力に対する出力が、図12から図14に示す時間応答特性を示すことである。なお、図12から図14における実線は本実施形態の制御がある場合の波形を示し、点線は制御がない場合の波形を示している。
【0074】
図12は、振動の抑制を図る場合の時間応答特性を説明する図である。図12(a)は入力を示す波形であり、図12(b)は出力を示す波形であり、図12(c)は補正量を示す波形である。
【0075】
本実施形態の制御がない場合に、図12(b)に示すように、ステップ入力に対して出力はオーバーシュートとアンダーシュートを繰り返しながら定常値に近づく波形を示すときがある。これに対して本実施形態の制御では、図12(c)に示すように、補正量を、ステップ入力の立ち上がり時に入力値を減少させるものとすることにより、図12(a)に示すように、ステップ入力の波形の補正を行う。これにより、ステップ入力に対する出力は、図12(b)に示すように速やかに定常値に収束する。
【0076】
図13は、入力に対する応答性向上を図る場合の時間応答特性を説明する図である。図13(a)は入力を示す波形であり、図13(b)は出力を示す波形であり、図13(c)は補正量を示す波形である。
【0077】
本実施形態の制御がない場合に、図13(b)に示すように、ステップ入力に対して出力が定常値に近づくまでに長時間を要するときがある。これに対して本実施形態の制御では、図13(c)に示すように、補正量を、ステップ入力の立ち上がり時に入力値を増加させるものとすることにより、図13(a)に示すように、ステップ入力の波形の補正を行う。これにより、ステップ入力に対する出力は、図13(b)に示すように速やかに定常値に収束する。
【0078】
図14は、外乱入力に対する出力の乱れを抑制する場合の時間応答特性を説明する図である。図14(a)は外乱入力を示す波形であり、図14(b)は出力を示す波形であり、図14(c)は補正量を示す波形である。
【0079】
本実施形態の制御がない場合に、図14(a)に示すような外乱入力があると、図14(b)に示すように、出力は外乱入力に応じた乱れた波形となる。これに対して本実施形態の制御では、図14(c)に示すように、外乱入力と逆位相の補正量とすることにより、外乱入力に対する出力は、図14(c)に示すように乱れが抑制されたものとなる。
【0080】
上記の構成によれば、車両制御装置1は、制御対象のエンジン32等および車体31の連成振動系で生じるヒステリシス特性を模擬すると共に制御目標指標であるパラメータを定義し、ヒステリシス特性に関与するパラメータを所望の状態とする駆動軸トルク補正量を用いて基本要求駆動軸トルクを補正する。そのため、ヒステリシス特性のような非線形特性を有するエンジン32等および車体31の連成振動系の振動に対しても、制御系設計を容易にし、かつ、制振効果を発揮することができる。
【0081】
状態量推定部27は、バネ要素とダンパ要素の直列結合である第1の線形要素、および、バネ要素である第2の線形要素を並列接続した基本モデル要素である前側マウント33A,33Bおよび後側マウント34A,34Bを備えるエンジン・車体連成振動モデルを用いることにより、エンジン32等および車体31の連成振動系で生じるヒステリシス特性を模擬することができる。
【0082】
なお、上述の実施形態のように、第2の線形要素としてバネ要素を用いてもよいし、第2の線形要素としてダンパ要素を用いてもよく、特にその種類を限定するものではない。
車体31およびエンジン32が連成振動する連成振動系を制御対象とすることにより、例えば、前側マウント33A,33Bおよび後側マウント34A,34Bが有する粘弾性や、車体31またはエンジン32自体が有する粘弾性によるバネ特性と減衰特性によるヒステリシス特性を有する連成振動系の連成振動を模擬することができる。
【0083】
エンジン32等および車体31の連成振動系を制御対象とすることにより、エンジン32等における駆動トルクの変動や、前輪51FR,51FLや後輪51RR,51RLを介して路面から入力される外乱負荷の変動に起因する連成振動系の連成振動を制御することができる。具体的には、防振装置である前側マウント33A,33Bおよび後側マウント34A,34Bが有する粘弾性に起因するエンジン32等および車体31の連成振動の動特性を、ヒステリシス特性を有する動特性として模擬することができる。
【0084】
パラメータを、前側マウント33A,33Bのストローク変位、後側マウント34A,34Bのストローク変位、エンジン32等のロール角速度、車体31の上下方向速度、車体31のピッチ角速度の少なくとも1つ以上の線形結合式で記述し、パラメータが最小値となるように駆動軸トルク補正量を算出することにより、連成振動系における連成振動を抑制することができる。つまり、上述の駆動軸トルク補正量を用いて基本要求駆動軸トルクを補正した要求駆動軸トルクをエンジン32等に出力することにより、エンジン32等において発生する駆動トルクを制御し、連成振動系における連成振動を抑制することができる。
【0085】
なお、上述の実施形態では、並進力Fdsの変化率(dFds/dt)の出力方程式(7)、前側マウント33A,33Bの直列バネ・ダンパ接続点の上下方向変位xefの出力方程式(8)、後側マウント34A,34Bの直列バネ・ダンパ接続点の上下方向変位xerの出力方程式(9)について適用して説明したが、その他にも、以下に示すエンジン32等のロール角速度(dθe/dt)の出力方程式(10)や、車体31のピッチ角速度(dθp/dt)の出力方程式(11)に適用することができる。
【0086】
【数13】
【0087】
【数14】
【0088】
次に、上述の出力方程式(10)および(11)に対するエンジン32等および車体31の連成振動系の周波数特性およびステップ応答特性について、図15から図18を参照しながら説明する。
【0089】
エンジン32等のロール角速度(dθe/dt)の出力方程式(10)に対する上述の連成振動系の周波数特性が図15(a)および図15(b)に示されている。図15(a)に示すように、本実施形態の制御がない場合には、2つの異なる周波数において共振の発生を意味するピークが確認できる。これに対して、本実施形態の制御がある場合には、2つのピークが緩やかになっていること確認できる。
【0090】
また、出力方程式(10)に対する上述の連成振動系のステップ応答性が図16(a)および図16(b)に示されている。図16(a)に示すように、本実施形態の制御がある場合と、制御がない場合とを比較すると、ステップ入力が補正されていることが判る。さらに、図16(b)に示すように、ステップ入力に対する応答(ロール角速度 dθe/dt)の乱れが抑制されていることが判る。具体的にはステップ入力の立ち上がりと、立ち下がりに対応する応答の乱れが抑制されている。
【0091】
車体31のピッチ角速度(dθp/dt)に関する出力方程式(11)に対する上述の連成振動系の周波数特性が図17(a)および図17(b)に示されている。また、出力方程式(11)に対する上述の連成振動系のステップ応答性が図18(a)および図18(b)に示されている。
【0092】
図18(a)に示すように、本実施形態の制御がない場合には、3つの異なる周波数において共振の発生を意味するピークが確認できる。これに対して、本実施形態の制御がある場合には、各々の周波数帯において共振を抑制する効果があることが示されている。
【0093】
図19(a)に示すように、本実施形態の制御がある場合と、制御がない場合とを比較すると、ステップ入力が補正されていることが判る。さらに、図19(b)に示すように、ステップ入力に対する応答(並進力Fdsの変化率)の乱れが抑制されていることが判る。具体的にはステップ入力の立ち上がりと、立ち下がりに対応する応答の乱れが抑制されている。
【0094】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。具体的には、本実施形態の制御が適用される対象は、車両の駆動方式に関わらず適用可能である。例えばFR車両の用に縦置きエンジンの場合でも、エンジン・トランスミッションのロール振動と車体のロール振動との連成振動系に適用できることは言うまでもない。また、上述のようなエンジン32等および車体31の連成振動系以外の連成振動系であってもよい。
【0095】
例えば、特許第4356305号におけるタイヤと車体の間に記載されたバネ・ダンパ系(特許第4356305号の図4参照)を、本実施形態で記載したバネ要素とダンパ要素の直列結合である第1の線形要素、および、バネ要素である第2の線形要素を並列接続した基本モデル要素に置き換えてもよい。
【0096】
同様に、特許第4161923号、特開2006−60936号公報におけるタイヤと車体の間に記載されたバネ・ダンパ系、および、車体とエンジンの間に記載されたバネ・ダンパ系(特許第4161923号の図3、特開2006−60936号公報の図12参照)を、本実施形態で記載したバネ要素とダンパ要素の直列結合である第1の線形要素、および、バネ要素である第2の線形要素を並列接続した基本モデル要素に置き換えてもよい。
【0097】
その他に、特許第4277915号や特許第4333767号における、路面とタイヤとの間に記載されたバネ・ダンパ系、転動輪軸と駆動輪軸の間に記載されたバネ・ダンパ系、前輪軸とシャーシフレームの間に記載されたバネ・ダンパ系および後輪軸とシャーシフレームの間に記載されたバネ・ダンパ系(特許第4277915号の図4、図9、図11、図15参照、特許第4333767号の図6、図11、図14、図20参照)を、本実施形態で記載したバネ要素とダンパ要素の直列結合である第1の線形要素、および、バネ要素である第2の線形要素を並列接続した基本モデル要素に置き換えてもよい。
【符号の説明】
【0098】
1…車両制御装置、27…状態量推定部(動特性記述手段)、28…補正量演算部(補正値演算手段)、29…補正後要求駆動軸トルク演算部(入力操作量指令出力手段)、31…車体(第1構成要素)、32…エンジン(第2構成要素)、33A,33B…前側マウント(連結要素)、34A,34B…後側マウント(連結要素)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から入力される入力操作量に応じて運動または変形する制御対象の運動状態を制御する車両制御装置であって、
前記制御対象における運動または変形の動特性を模擬するモデル要素を含み、前記入力操作量の推定値および前記制御対象に入力される外乱入力の推定値の少なくとも一方に基づく前記制御対象の運動または変形の過程で生じるヒステリシス特性を模擬するとともに、前記制御対象の運動状態の制御目標指標を定義する動特性記述手段と、
該動特性記述手段において定義した前記制御目標指標のうちの前記ヒステリシス特性に関与する前記制御目標指標が、所望の状態となるように前記入力操作量を調整する操作補正量を算出する補正値演算手段と、
該補正値演算手段により算出された前記操作補正量を用いて、前記入力操作量を補正した操作量指令値を前記制御対象に出力する入力操作量指令出力手段と、
が設けられていることを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記動特性記述手段における前記モデル要素は、
第1のバネ要素および第1のダンパ要素を直列に接続した第1の線形要素と、
第2のバネ要素および第2のダンパ要素の一方、または、両者の並列接続からなる第2の線形要素と、の並列接続で構成される基本モデル要素を少なくとも1つ以上備えるものであることを特徴とする請求項1記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記制御対象は、
車両を構成する第1構成要素と、
該第1構成要素以外の前記車両を構成する要素、または、路面で構成される第2構成要素と、を備え、
前記第1構成要素および前記第2構成要素を連結する連結要素、または、前記第1構成要素および前記第2構成要素の少なくとも一方自体に内在するバネ特性および減衰特性により、前記第1構成要素および前記第2構成要素が連成振動するものであることを特徴とする請求項2記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記第1構成要素は前記車両の車体であり、
前記第2構成要素は前記車両の原動機であり、
前記車体および前記原動機は、前記連結要素である防振装置により連結され、
前記操作入力量は、前記原動機に対して入力される要求駆動軸トルクであり、
前記外乱入力は、路面から入力される外乱負荷であることを特徴とする請求項3記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記防振装置には、前記車両の前方に配置された前側マウントと、後方に配置された後側マウントと、が少なくとも設けられ、
前記制御目標指標は、前記前側マウントのストローク変位、ストローク速度、前記後側マウントのストローク変位、ストローク速度、前記原動機のロール角変位、ロール角速度、前記車体の上下方向変位、速度、および、前記車体のピッチ角変位、角速度の少なくとも1つ以上の線形結合式で記述され、
前記補正値演算手段は、前記制御目標指標が最小値となるように前記入力補正値を算出することを特徴とする請求項4記載の車両制御装置。
【請求項1】
外部から入力される入力操作量に応じて運動または変形する制御対象の運動状態を制御する車両制御装置であって、
前記制御対象における運動または変形の動特性を模擬するモデル要素を含み、前記入力操作量の推定値および前記制御対象に入力される外乱入力の推定値の少なくとも一方に基づく前記制御対象の運動または変形の過程で生じるヒステリシス特性を模擬するとともに、前記制御対象の運動状態の制御目標指標を定義する動特性記述手段と、
該動特性記述手段において定義した前記制御目標指標のうちの前記ヒステリシス特性に関与する前記制御目標指標が、所望の状態となるように前記入力操作量を調整する操作補正量を算出する補正値演算手段と、
該補正値演算手段により算出された前記操作補正量を用いて、前記入力操作量を補正した操作量指令値を前記制御対象に出力する入力操作量指令出力手段と、
が設けられていることを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記動特性記述手段における前記モデル要素は、
第1のバネ要素および第1のダンパ要素を直列に接続した第1の線形要素と、
第2のバネ要素および第2のダンパ要素の一方、または、両者の並列接続からなる第2の線形要素と、の並列接続で構成される基本モデル要素を少なくとも1つ以上備えるものであることを特徴とする請求項1記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記制御対象は、
車両を構成する第1構成要素と、
該第1構成要素以外の前記車両を構成する要素、または、路面で構成される第2構成要素と、を備え、
前記第1構成要素および前記第2構成要素を連結する連結要素、または、前記第1構成要素および前記第2構成要素の少なくとも一方自体に内在するバネ特性および減衰特性により、前記第1構成要素および前記第2構成要素が連成振動するものであることを特徴とする請求項2記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記第1構成要素は前記車両の車体であり、
前記第2構成要素は前記車両の原動機であり、
前記車体および前記原動機は、前記連結要素である防振装置により連結され、
前記操作入力量は、前記原動機に対して入力される要求駆動軸トルクであり、
前記外乱入力は、路面から入力される外乱負荷であることを特徴とする請求項3記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記防振装置には、前記車両の前方に配置された前側マウントと、後方に配置された後側マウントと、が少なくとも設けられ、
前記制御目標指標は、前記前側マウントのストローク変位、ストローク速度、前記後側マウントのストローク変位、ストローク速度、前記原動機のロール角変位、ロール角速度、前記車体の上下方向変位、速度、および、前記車体のピッチ角変位、角速度の少なくとも1つ以上の線形結合式で記述され、
前記補正値演算手段は、前記制御目標指標が最小値となるように前記入力補正値を算出することを特徴とする請求項4記載の車両制御装置。
【図2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図1】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2013−72394(P2013−72394A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213003(P2011−213003)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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