説明

車両後部構造

【課題】 車体を軽量化しつつ、製造コストの上昇を抑制できる車両後部構造を提供する。
【解決手段】車両後部2aを構成するリヤフロアパネル5に、車幅方向に沿って長手方向を延設するリヤクロスメンバ部材8を固着して、車両後方からの荷重入力を、このリヤクロスメンバ部材8で、受け止める車両後部構造である。
リヤクロスメンバ部材8が、固着されている位置よりも、車両前方側のリヤフロアパネル5には、リヤクロスメンバ部材8の長手方向に沿う延設方向を有するビード部10が、長尺ビード11及び短尺ビード12,12によって、形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の後部に設けられたフロアパネルを含む車両後部構造に関するもので、特に、スペアタイヤ収納空間を、車両後部に有するものに用いて好適な車両後部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両後部構造としては、車両後部に設けられたトランクルームの床部に、タイヤ収納凹部が、車室内上面側を、凹状とするように形成されていると共に、このタイヤ収納凹部には、スペアタイヤが、固定されて収納された車両後部構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
まず、構成から説明すると、このようなものでは、前記トランクルームのリヤフロアパネルの後縁部に沿って、平行に長手方向を有するリヤクロスメンバ部材が、このリヤフロアパネルの上面側で、前記タイヤ収納凹部よりも車両前方位置に、固設されている。
【0004】
このリヤクロスメンバ部材は、レインフォース部材又は、ボルト部材,ナット部材等によって、前記リヤフロアパネルへの取付部位若しくは、このリヤクロスメンバ部材本体が、補強されて、強度が向上するように構成されている。
【0005】
次に、この従来例の車両後部構造の作用効果について説明する。
【0006】
この従来の車両後部構造では、車両の後方から、衝突等により、荷重が、この車両後部に、車両前方方向へ向けて入力すると、前記スペアタイヤの車両前方方向への移動が、前記リヤクロスメンバ部材によって、受け止められて、阻止される。
【0007】
前記リヤクロスメンバ部材は、所定の荷重の入力に対して、受け止める強度を得るため、前記レインフォース部材又は、ボルト部材,ナット部材等によって、充分な補強が行われている。
【0008】
そして、この荷重入力の方向によっては、前記スペアタイヤの移動方向が、上向き等、別の方向となることもあり、この場合、前記スペアタイヤが、前記リヤクロスメンバ部材の上方へ回避して、このリヤクロスメンバ部材への荷重入力が伝達されない。
【特許文献1】特開2007−91005号公報(第0016段落乃至第0042段落、図1,図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような従来の車両後部構造においては、前記リヤクロスメンバ部材とは、別途設けられた前記レインフォース部材又は、ボルト部材,ナット部材等によって、前記リヤクロスメンバ部材が、補強されて、想定される範囲内での荷重入力による前記スペアタイヤの移動が、阻止されるように構成されている。
【0010】
また、前記リヤクロスメンバ部材への荷重入力が伝達されない場合には、レインフォース部材又は、前記ボルト部材,ナット部材等を、別部品として追加しなければならず、製造コスト及び車体重量が増大してしまう虞があった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、車体を軽量化しつつ、製造コストの上昇を抑制できる車両後部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載されたものは、車両後部を構成するフロアパネルに、車幅方向に沿って長手方向を延設するクロスメンバ部材を固着して、車両後方からの荷重入力を、該クロスメンバ部材で、受け止める車両後部構造であって、前記クロスメンバ部材が、固着されている位置よりも、車両前方側の前記フロアパネルには、前記クロスメンバ部材の長手方向に沿う延設方向を有し、潰れ変形する際の頭頂部が、前記クロスメンバ部材の高さ方向へ変位するビード部を形成する車両後部構造を特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に記載されたものによれば、前記ビード部が、車両後方からの荷重入力で、車両前後方向へ押し潰されながら、頭頂部が、前記クロスメンバ部材の高さ方向へ変位して、前記クロスメンバ部材の移動を阻止する阻害壁となる。
【0014】
このため、前記クロスメンバ部材は、前倒れや、離脱が抑制され、前記ビード部によって形成された阻害壁と共に、車両後方からの荷重入力を、受け止めることが出来る。
【0015】
従って、別途設ける補強部材が少なくて済む、或いは、必要無くなり、車体を軽量化しつつ、製造コストの上昇を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の最良の実施の形態の車両後部構造を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1乃至図8は、この発明の実施の形態の車両後部構造を示すものである。
【0018】
まず、全体の構成から説明すると、この実施の形態の車両後部構造では、図3に示すように、自動車1の車体2の後部2aには、トランクルーム3が設けられている。
【0019】
このトランクルーム3の後壁部には、リッド開口部3aが、開口形成されていて、リヤトランクリッド部材4が、左右一対のヒンジ部材等により、このリッド開口部3aの周縁に軸支されることによって、このリッド開口部3aが、開閉塞可能となるように構成されている。
【0020】
また、図1に示すように、このトランクルーム3の床部3bには、面延設方向を略水平とするように、平板状のリヤフロアパネル5が設けられている。
【0021】
そして、このリヤフロアパネル5のうち、前記リッド開口部3a側に位置する後側辺近傍には、車両下方側を凸とするタイヤ収納凹部としてのスペアタイヤ収納凹部6が、凹設形成されている。
【0022】
このスペアタイヤ収納凹部6の床部上面側には、車両収納物としてのスペアタイヤTを収納するスペアタイヤパン部6aが設けられている。
【0023】
このリヤフロアパネル5のスペアタイヤパン部6aの車両前方位置には、左右リヤホイールハウス7,7に一体となるように、各々膨出形成されたストラットタワー部7a,7aが設けられていて、これらのストラットタワー部7a,7a間が、クロスメンバ部材としてのリヤクロスメンバ部材8によって、連結されている。
【0024】
このリヤクロスメンバ部材8は、前記リヤフロアパネル5の上面部5a側に、車幅方向に長手方向を沿わせて延設されて、図1に示すように、車両前後方向断面形状が、略ハット状となるように形成されて、前記リヤフロアパネル5の上面部5aから上方へ凸状となるように固着されている。
【0025】
また、この実施の形態では、このリヤクロスメンバ部材8の左右車幅方向中央の頭頂部8aの上下方向位置が、前記スペアタイヤパン部6a及びこのスペアタイヤパン部6aに収納されたスペアタイヤTの上縁部T1位置よりも、一定寸法h1、高くなるように、前記リヤフロアパネル5の上面部5a上面から、車両上方への寸法h2が、設定されている。 このため、車両後方から、このスペアタイヤT及びリヤフロアパネル5を介して加わる荷重入力が、このリヤクロスメンバ部材8で、受け止められるように構成されている。
【0026】
また、このリヤクロスメンバ部材8が、固定されている位置よりも、車両前方側の前記リヤフロアパネル5には、ビード部10が、上方に向けて凸となるように一体に、形成されている。
【0027】
このビード部10は、図2に示すように、前記リヤクロスメンバ部材8の長手方向に沿って、平行に長手方向を有する長尺ビード11及び、この長尺ビード11の車両前後位置に、略等間隔で、平行となるように並設される短尺ビード12,12を有して、車室内膨出側から見た上面視で、外周縁を多角形形状とする略亀の甲羅状を呈するように構成されている。
【0028】
この実施の形態の短尺ビード12,12の車幅方向寸法W3は、前記長尺ビード11の車幅方向寸法W2に比して、短くなるように構成されている。
【0029】
また、この実施の形態の前記ビード部10の設けられた前記リヤフロアパネル5の下側には、燃料タンク15が設けられている。
【0030】
そして、この燃料タンク15のパイプ類等が、挿通される略円形形状の燃料タンク開口部5b,5bが、このリヤフロアパネル5の車幅方向左右位置に一対、開口形成されていて、前記長尺ビード11の長手方向延長線C上に、これらの燃料タンク開口部5b,5bが位置するように構成されている。
【0031】
更に、この実施の形態では、これらの前記ビード部10の各長尺ビード11及び、短尺ビード12,12が、前記リヤクロスメンバ部材8の車両前方に、所定の間隔を置いて、平行となるように、長尺方向を車幅方向に沿わせて、形成されるリヤシート下クロスメンバ部13のリヤシート下アッパクロスメンバ13a,リヤシート下ロアクロスメンバ13b及び、パネル下クロスメンバ部材14とによって、図1及び図2に示すように、前後方向から挟まれるように膨出形成されている。
【0032】
これらのリヤシート下クロスメンバ部13のリヤシート下ロアクロスメンバ13b及び、パネル下クロスメンバ部材14とは、下方に凸となるように、前記リヤフロアパネル5の下面部5cに、固着されていて、図1に示すように、このリヤフロアパネル5と共に、中空閉断面を各々形成することにより、車両前後方向寸法L1,L2の高剛性部位が、構成されている。
【0033】
そして、前記ビード部10は、図4に示すように、車両前後方向に圧縮されて、潰れ変形した際の頭頂部11aの車両上下方向位置が、前記リヤクロスメンバ部材8の頭頂部8aの車両上下方向位置の中央部S1(リヤフロアパネル5の上面部5a上面から、車両上方への寸法h2の1/2)よりも高く、前記リヤクロスメンバ部材8の高さ方向へ変位するように、図1に示す荷重入力が加わる前の高さ方向寸法h3及び各長尺ビード11及び、短尺ビード12,12間の間隔及び曲げ角度が、設定されている。
【0034】
しかも、この実施の形態では、図4に示すように、車両前後方向に圧縮されて、潰れ変形した際の頭頂部11aの車両上下方向位置が、前記スペアタイヤTの車両上下方向位置の中央部S2(車両上下方向への寸法の1/2部分)よりも高くなるように、変形後の高さ方向寸法h4が、設定されている。
【0035】
更に、この実施の形態では、前記リヤシート下ロアクロスメンバ13b及び、パネル下クロスメンバ部材14の凸設方向である車両下方とは、逆方向である車両上方方向に、凸状となるように、前記ビード部10の各長尺ビード11及び、短尺ビード12,12が、膨出形成されている。
【0036】
また、この実施の形態では、これらの前記リヤシート下ロアクロスメンバ13b及び、パネル下クロスメンバ部材14によって、高剛性を有するリヤフロアパネル5の車両前後部分L1,L2の間には、これらの部分L1,L2よりも、車両前後方向に、充分長い寸法L3(約2〜10倍)を有するように、前記ビード部10が形成されることにより、図4に示す圧縮変形時の上方への変形寸法h4が、高剛性の阻害壁となった状態で、前記中央部S1,S2を超えるように設定されている。
【0037】
次に、この実施の形態の車両後部構造の作用効果について説明する。
【0038】
この実施の形態では、図3に示すような自動車1の車体2後部2aに、荷重入力が、車両前方へ向けて加わると、図1に示すように、前記トランクルーム3内に収納された前記スペアタイヤTの前端縁が、前記左,右リヤホイールハウス7,7間に設けられたリヤクロスメンバ部材8に当設して受け止められる。
【0039】
そして、図4に示すように、更に、前記パネル下クロスメンバ部材14が、前記ビード部10を、車両後方からの荷重入力で、車両前後方向へ押し潰されながら、上下方向へ、このビード部10の長尺ビード11を中心として、車両上方方向へ向けて、伸張するように変形させる。
【0040】
この実施の形態では、この潰れ変形により、前記ビード部10が、前記リヤクロスメンバ部材8の高さ方向へ変位する。
【0041】
このため、図1に示潰れ変形した後の前記ビード部10の頭頂部11aの車両上下方向位置が、前記リヤクロスメンバ部材8の頭頂部8aの車両上下方向位置の中央部S1よりも高くなる。
【0042】
しかも、前記潰れ変形した後のこの頭頂部11aの車両上下方向位置が、前記スペアタイヤTの車両上下方向位置の中央部S2よりも高くなるように、変形後の高さ方向寸法h4が、設定されている。
【0043】
このため、図4に示すように、この変形した状態のビード部の各長尺ビード11及び、短尺ビード12,12間は、車両前後方向で、複数山、重複した状態となり、前記リヤクロスメンバ部材8及びスペアタイヤTの車両前方への移動を阻止する為に、有効な剛性を有する阻害壁16となる。
【0044】
しかも、この実施の形態では、図4に示すように、潰れ変形した後のビード部10の前後で、上方へ向けて立ち上がる外縁部基端部10b,10cが、高剛性を有する前記リヤシート下クロスメンバ部13及び、パネル下クロスメンバ部材14によって、固着された部分L1,L2が、車両前後方向近接位置から挟持されるように、構成されている。
【0045】
従って、更に、前記ビード部10によって形成された阻害壁16の剛性を、更に高剛性とすることが出来る。
【0046】
このため、前記リヤクロスメンバ部材8は、前倒れや、離脱等をすることなく、前記ビード部10によって形成された阻害壁16と共に、車両後方から、前記スペアタイヤT或いは、リヤフロアパネル5のオーバーハング部分から伝わる荷重入力を、確実に受け止めることが出来る。
【0047】
従って、別途、従来のように、レインフォース部材や、ボルトナット部材等の取付部材を含む補強部材を設ける必要が無く、車両後部2aのリヤオーバーハングを延長する設定も不要である。
【0048】
よって、この実施の形態の自動車1では、車体2を軽量化しつつ、部品点数を削減して、製造コストの上昇を抑制できる。
【0049】
また、前記リヤクロスメンバ部材8の車両前方位置に、同じ車両上方向へ向けて凸設されるビード部10が、前記リヤクロスメンバ部材8の移動を阻止する阻害壁16となる。
【0050】
このため、前記リヤクロスメンバ部材8は、前記リヤフロアパネル5の上面部5aで、前倒れや、離脱等をすることなく、前記ビード部10によって形成された阻害壁16と共に、車両後方からの荷重入力を、確実に受け止めることが出来る。
【0051】
しかも、この実施の形態では、前記リヤシート下クロスメンバ部13のリヤシート下ロアクロスメンバ13b及び、パネル下クロスメンバ部材14の凸設方向である車両下方とは、逆方向である車両上方方向に、凸状となるように、前記ビード部10の各長尺ビード11及び、短尺ビード12,12が、膨出形成されている。
【0052】
このため、リヤフロアパネル5の前記ビード部10に、車両前後方向の圧縮力が加わると、車両下側に向けて凸状の前記リヤシート下ロアクロスメンバ13b及び、パネル下クロスメンバ部材14によって、このビード部10は、車両下方に向けて凸状に変形しにくく、遊動されて、車両上方に向けて突出するように圧縮変形される。
【0053】
圧縮変形後、前記ビード部10の各尺ビード11及び、短尺ビード12,12が、図4に示すように、車両前後方向で一つのビードにつき、2枚の板状パネルを蛇行させながら重ねて、複数枚の積層形状となる。
【0054】
従って、更に、確実に、阻害壁16を、リヤクロスメンバ部材8の移動防止に用いることができる。
【0055】
このため、この実施の形態では、別途、前記補強部材等を設ける必要が無く、リヤオーバーハングを延長する設定も不要であるので、車体を軽量化しつつ、製造コストの上昇を抑制できる。
【0056】
更に、この実施の形態では、前記ビード部10が、図2に示すように、前記リヤクロスメンバ部材8の長手方向に沿って、平行に長手方向を有する長尺ビード11及び、この長尺ビード11の車両前後位置に、略等間隔で、平行となるように並設される短尺ビード12,12を有して、略亀の甲羅状の上面視多角形形状を呈するように構成されている。
【0057】
また、前記長尺ビード11の車幅方向寸法W2が、短尺ビード12,12の車幅方向寸法W3,W3よりも長く設定されて、長尺ビード11の長尺方向延長線C上に、前記燃料タンク開口部5b,5bが、位置しているので、この長尺ビード11の車幅方向左右端部は、前記各短尺ビード12,12の車幅方向左右端部よりも、脆弱となり易く、変形しやすい。
【0058】
しかも、前記短尺ビード12,12に比して、長尺ビード11が、車幅方向で長く設定されているので、車両上方へ湾曲変形する際の曲率半径も大きく取ることが出来る。
【0059】
このため、前記短尺ビード12,12に比して、前記長尺ビード11が、前記車両前方への加入入力によって、容易に圧縮曲げ変形されて、図4に示すように、前記中央部S1,S2を超える所望の高さ方向寸法h4まで、突出させやすい。
【0060】
よって、更に、衝突のモードに依存せず、任意の方向の荷重入力に対応出来、確実に、前記阻害壁16を、リヤクロスメンバ部材8の移動防止に用いることができる。
【実施例1】
【0061】
図5乃至図8は、この発明の実施の形態の実施例1の車両後部構造を示すものである。
【0062】
なお、前記実施の形態と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0063】
この実施例1の車両後部構造では、前記実施の形態の構成に加えて、更に、図5及び図6に示すように、前記リヤフロアパネル5の上面部5aには、車両前後方向で、前記ビード部10と、前記リヤクロスメンバ部材8との間に、剛体部材としてのテレビチューナーボックス20が、設けられている。
【0064】
このテレビチューナーボックス20は、略直方体形状を呈して、外側面部が、金属製の筐体20aによって構成されていて、前記リヤクロスメンバ部材8よりも、大きな強度を有するように構成されている。
【0065】
更に、この実施例1では、図6,図7に示すように、前記テレビチューナーボックス20が、前記ビード部10の車幅方向右側後方部位10aに当接するように、車幅方向で、中心線Mから、一定寸法W1右側方に、オフセットされて固着されている。
【0066】
また、前記リヤクロスメンバ部材8の前側側面8bには、このテレビチューナーボックス20が、配設された位置に対向するように、車幅方向に長手方向を沿わせて、メンバビード部8cが、車両前方に向けて凸設されている。
【0067】
そして、この実施例1では、前記ビード部10の車両前方方向で、前記リヤフロアパネル5の下面側には、リヤシート下クロスメンバ部13のリヤシート下ロアクロスメンバ13bが、凸設されている。
【0068】
この前記リヤフロアパネル5のリヤシート下ロアクロスメンバ13bに対応する上方位置には、上面部5a側から、上方に凸設されて、リヤシート下アッパクロスメンバ13aが、長手方向を車幅方向に沿わせて、固着されて、図8に示すように、上,下略二段の中空断面形状を呈するように構成されている。
【0069】
次に、この実施例1の車両後部構造の作用効果について説明する。
【0070】
この実施例1の車両後部構造では、前記実施の形態の作用効果に加えて、更に、図5及び図6に示すように、前記リヤクロスメンバ部材8よりも、大きな強度を有する前記テレビチューナーボックス20が、車両前後方向で、前記ビード部10と、前記リヤクロスメンバ部材8との間に、設けられている。
【0071】
このため、図7及び図8に示すように、車両後方からの荷重入力が、前記リヤクロスメンバ部材8に受け止められて、前記テレビチューナーボックス20を介して、前記ビード部10に伝達される。
【0072】
このため、前記リヤクロスメンバ部材8と、前記ビード部10とが、離間している場合でも、前記テレビチューナーボックス20によって、前記ビード部10を車両前後方向へ圧壊させながら、車両上方向へ向けて、伸張させて変形させることが出来る。
【0073】
従って、前記リヤクロスメンバ部材8の前倒れや、離脱等が、防止されて、前記ビード部10によって形成された阻害壁16が、車両後方からの荷重入力を、確実に受け止める。
【0074】
更に、この実施例1では、図7に示すように、前記テレビチューナーボックス20が、車幅方向で、中心線Mから、右側方に、一定寸法W1、オフセットされて固着されている。 このため、比較的高剛性を有する前記リヤクロスメンバ部材8のメンバビード部8cが、前記テレビチューナーボックス20を車両前方に押圧すると、前記ビード部10の比較的高剛性を有する車幅方向右側後方部位10aに、このテレビチューナーボックス20の前縁部20cが、当接する。
【0075】
このリヤクロスメンバ部材8の前側側面8bに設けられたメンバビード部8cは、このテレビチューナーボックス20が、配設された位置に対向するように、メンバビード部8cが、車両前方に向けて凸設されて、図8に示すように、前記テレビチューナーボックス20の後端部20bの上方に位置する。
【0076】
従って、前記テレビチューナーボックス20の車両上,下方向への移動のうち、後端部20bが上方へ移動して、前記リヤフロアパネル5から離脱しようとしても、このメンバビード部8cによって干渉されて、上方へは移動しにくい。
【0077】
そして、この実施例1では、前記ビード部10の車両前方方向で、前記リヤフロアパネル5の下面側に凸設されたリヤシート下ロアクロスメンバ13bに対応する位置に、リヤシート下アッパクロスメンバ13aが、固着されて、前記リヤシート下クロスメンバ部13が構成されている。
【0078】
このため、前記リヤシート下ロアクロスメンバ13bの車両上下方向寸法に、このリヤシート下アッパクロスメンバ13aの車両上下方向寸法が加えられて、リヤシート下クロスメンバ部13の車両上下方向寸法が増大することにより、上,下二段の中空断面形状を呈して、車幅方向に高剛性を呈している。
【0079】
従って、このリヤシート下クロスメンバ部13の車幅方向中央部によって受け止められる前記ビード部10の潰れ変形を、効率よく促進させて、容易に車両上下方向へ突設変形させることにより、前記阻害壁16に、所望の突設寸法h5を与えることが出来る。
【0080】
また、前記ビード10の車幅方向左,右両側に設けられている比較的剛性の高い部分が、ビード10全体が、車両上方方向へ変形移動しても、圧縮を逃れるように踏ん張って、リヤフロアパネル5の下面部5cに、装着される燃料タンク15を保護することができる。
【0081】
特に、この実施の形態では、前記燃料タンク開口部5b,5bに近接して、前記ビード10の車幅方向左,右両側に設けられている比較的剛性の高い部分が位置しているので、この燃料タンク開口部5bに、挿通される燃料パイプ等を、有効に保護出来る。
【0082】
更に、この実施例1では、図8に示すように、リヤフロアパネル5の下側に装着される燃料タンク15が、前記パネル下クロスメンバ部材14及び、このテレビチューナーボックス20によって、前記リヤフロアパネル5が、変形を抑制される部分に配置されることにより、前記ビード10の変形によっても、潰されることなく保護される。
【0083】
従って、前記テレビチューナーボックス20の設置により、二点鎖線に示す位置から、燃料タンク15を、一点鎖線に示す車両後方に移動させて設定することも出来、設計の自由度を向上させることができる。
【0084】
また、このリヤシート下アッパクロスメンバ部13aによって、前記リヤシート下ロアクロスメンバ13bと共に、車幅方向略全域に渡り、延設されるリヤシート下クロスメンバ部13が、構成されている。
【0085】
このため、前記ビード部10の車幅方向右側後方部位10aの一部に、前記テレビチューナーボックス20が当設しても、荷重入力が、車幅方向に分散して、前記リヤクロスメンバ部材8に略平行な前記阻害壁16を形成することができる。
【0086】
従って、更に安定して、車両後方からの荷重入力を、確実に受け止めることが出来る。
【0087】
他の構成、及び作用効果については、前記実施の形態と同一乃至均等であるので、説明を省略する。
【0088】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態及び実施例1を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0089】
即ち、前記実施の形態及び実施例1では、前記ビード部は、長手方向を前記クロスメンバ部材の長手方向と平行となるように設けられた複数のビードを並設して構成されているが、特にこれに限らず、単数、2本若しくは、4本以上の複数のビードを設けたビード部であれば、どのような形状、数量及び材質であってもよい。
【0090】
また、前記実施の形態では、スペアタイヤ収納凹部6の車両前方方向に設けられたリヤクロスメンバ部材8によって、前記ビード部10を押し潰して変形させる構成のものを示して説明してきたが、特にこれに限らず、例えば、前記スペアタイヤ収納凹部6又は、スペアタイヤTが無くても、前記リヤクロスメンバ部材8が、固着されている位置よりも、車両前方側の前記フロアパネルに、前記リヤクロスメンバ部材8の長手方向に沿う延設方向を有するビード部10が形成されるものであれば、どのような構成であってもよい。
【0091】
更に、前記実施例1では、剛体部材としてテレビチューナーボックス20を例示して説明してきたが、特に、これに限らず、アンプボックスや、CPU収納のボックス等の電子回路を収納する筐体等、どのようなものであっても、前記リヤフロアパネル5のうち、車両前後方向で、前記ビード部10と、前記リヤクロスメンバ部材8との間に、このクロスメンバ部材8よりも、大きな強度を有する剛体部材で、構成されるものであれば、形状、数量、材質、及び車幅方向の配設位置が、オフセットされているか否か等に拘わらず、どのようなものであってもよい。
【0092】
また、前記リヤクロスメンバ部材8が、リヤフロアパネル5の上面部5aに固着されているものを示して説明してきたが、特にこれに限らず、リヤフロアパネル5の上面,下面の何れに、クロスメンバ部材が固着されていても良く、クロスメンバ部材の種類も、前記リヤクロスメンバ部材8である必要は無く、車両前後端部から、何番目のクロスメンバ部材であっても、形状、数量及び材質が、特に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の実施の形態の車両後部構造で、図2中のA−A線に沿った位置での断面図である。
【図2】実施の形態の車両後部構造で、リヤフロアパネルの構成を説明する分解斜視図である。
【図3】実施の形態の車両後部構造で、車両を斜め後方から見た全体の構成を示す斜視図である。
【図4】実施の形態の車両後部構造で、図2に相当する部分のビード部が変形した様子を説明する断面図である。
【図5】実施の形態の実施例1の車両後部構造で、リヤフロアパネルの構成を説明する分解斜視図である。
【図6】実施例1の車両後部構造で、リヤフロアパネルの構成を説明する要部の拡大斜視図である。
【図7】実施例1の車両後部構造で、リヤフロアパネルのビード部が潰れ変形する様子を説明する模式的な斜視図である。
【図8】実施例1の車両後部構造で、図7中のB−B線に沿った位置での断面図である。
【符号の説明】
【0094】
5 リヤフロアパネル(フロアパネル)
6 スペアタイヤ収納凹部
8 リヤクロスメンバ部材(クロスメンバ部材)
10 ビード部
11 長尺ビード
12,12 短尺ビード
16 阻害壁
20 テレビチューナーボックス(剛体部材)
T スペアタイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後部を構成するフロアパネルに、車幅方向に沿って長手方向を延設するクロスメンバ部材を固着して、車両後方からの荷重入力を、該クロスメンバ部材で、受け止める車両後部構造であって、
前記クロスメンバ部材が、固着されている位置よりも、車両前方側の前記フロアパネルには、前記クロスメンバ部材の長手方向に沿う延設方向を有し、潰れ変形する際の頭頂部が、前記クロスメンバ部材の高さ方向へ変位するビード部を形成することを特徴とした車両後部構造。
【請求項2】
前記ビード部は、車両前後方向に圧縮されて、潰れ変形した際の頭頂部の車両上下方向位置が、前記クロスメンバ部材の車両上下方向位置の中央部よりも高くなるように設定されていることを特徴とする請求項1記載の車両後部構造。
【請求項3】
前記ビード部は、車両前後方向に圧縮されて、潰れ変形した際の頭頂部の車両上下方向位置が、前記クロスメンバ部材の車両後方に収納される車両収納物の車両上下方向位置の中央部よりも高くなるように設定されていることを特徴とする請求項1又は2記載の車両後部構造。
【請求項4】
前記フロアパネルには、車両前後方向で、前記ビード部と、前記クロスメンバ部材との間に、該クロスメンバ部材よりも、大きな強度を有する剛体部材を配置することを特徴とする請求項1乃至3のうち、何れか一項記載の車両後部構造。
【請求項5】
前記ビード部は、長手方向を前記クロスメンバ部材の長手方向と平行となるように設けられた複数のビードを並設して構成されていることを特徴とする請求項1乃至4のうち、何れか一項記載の車両後部構造。
【請求項6】
前記ビード部は、前記クロスメンバ部材と、該クロスメンバ部材の前方に配置される他のクロスメンバ部材との間に位置していることを特徴とする請求項1乃至5のうち、何れか一項記載の車両後部構造。
【請求項7】
前記ビード部は、前記フロアパネル部材に形成された燃料タンク開口部に、比較的高剛性を有する車幅方向左右端部を近接させて、形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のうち、何れか一項記載の車両後部構造。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−76728(P2010−76728A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−250500(P2008−250500)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】