説明

車両用エアベルト装置

【課題】エアベルト装置の重量減少及びコスト低減をはかると共に装着空間の不足問題を解決する車両用エアベルト装置を提供する。
【解決手段】一端は、車体に設置されたベルトリトラクター53に、巻取り及び巻解の動作ができるように連結され、他端は、車体に固定され、車体に結合されたベルト掛け具51とバックルタング52とを順次通過したシートベルト54と、一端がバックルタング52に結合されて、シートベルト54と一緒に移動しないようにシートベルト54を取り囲んでシートベルト54に備えられ、バックルタング52を通じてエアバッグガスを受けることができるエアバッグクッション55と、を含むことを特徴とする車両用エアベルト装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用エアベルト装置に係り、より詳しくはリトラクターの部品数節減によって重量減少及びコスト低減を図った車両用エアベルト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両には、車両事故(衝突または追突の事故)の際、シート着席者の上体を拘束して保護することができるシートベルトが備えられている。
ところが、シートベルトは、場合によってはシート着席者の胸部を強く圧迫し、着席者を負傷させるという問題が発生することがある。これを予防するために、シートベルトにエアバッグクッションが装着されたエアベルト装置が開発された。
【0003】
図1は、従来のエアベルト装置の斜視図である。図1に示すように、従来のエアベルト装置は、ショルダーベルト4と、ラップベルト6と、エアバッグクッション7と、インフレータ8と、エアバッグコントロールユニット(ACU)9と、を有する。
【0004】
ここで、ショルダーベルト4は、一端がバックルタング2に結合され、そこからセンターフィラートリムに設置されたベルト掛け具1を通して他端はショルダーベルトリトラクター3に連結されることによってシート着席者の肩部及び胸部を拘束し、ラップベルト6は、バックルタング2に一端が結合され、他端はラップベルトリトラクター5に連結されることによってシート着席者の骨盤及び下体を拘束し、エアバッグクッション7は、ショルダーベルト4内に備えられ、インフレータ8は、エアバッグガスを発生させ、エアバッグコントロールユニット9は、インフレータ8の作動を制御する。
【0005】
図2は、図1のII−II線に沿った断面図である。図2に示すように、エアバッグクッション7の一端はショルダーベルト4を貫通してバックルタング2に結合され、バックルタング2とバックル10にはエアバッグクッション7と連通するガス通路11が連結され、ガス通路11はインフレータ8に連結されているので、インフレータ8の爆発時に発生したエアバッグガスはバックル10とバックルタング2を通じてエアバッグクッション7に供給される。
【0006】
図3は、図1のI−I線に沿った断面図である。図3に示すように、従来のエアベルト装置は、エアバッグクッション7がショルダーベルト4内に備えられた構造である。
ここで、エアバッグクッション7のうち、ショルダーベルト4を貫通してバックルタング2に結合される部位は、クッションカバー12で取り囲まれた構造になっている。このため、ショルダーベルト4がショルダーベルトリトラクター3に巻き取られるとき、ラップベルト6がバックルタング2を通過することができないという状況が発生した。
【0007】
ラップベルト6がバックルタング2を通過することができないという状況に鑑みて、従来のエアベルト装置には、ラップベルト6を巻き取るためのラップベルトリトラクター5が更に必要となった。従来のエアベルト装置は、ラップベルトリトラクター5の追加装備によって重量及び製造コストが増大し、ラップベルトリトラクター5を装着する空間が必要となるという問題点があった。

【0008】
このために、ショルダーベルトのみにエアバッグクッションを設けたエアベルトが報告されている(例えば特許文献1を参照)。しかし、ショルダーベルトのみにエアバッグクッションを設けたエアベルトは、乗員の安全を充分に保護することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−165604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記のような問題を解決するためになされたものであって、ラップベルトリトラクター5を必要とせず、エアベルト装置の重量減少及びコスト低減をはかると共に、ラップベルトリトラクター5を装着する空間の不足を解決する車両用エアベルト装置を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記のような目的を達成するための本発明による車両用エアベルト装置は、一端が、車体に設置されたベルトリトラクター53に、巻取り及び巻解の動作ができるように連結され、他端が、車体に固定され、車体に結合されたベルト掛け具51とバックルタング52とを順次通過したシートベルト54と、一端が、バックルタング52に結合されてシートベルト54と一緒に移動しないように、シートベルト54を取り囲んでシートベルト54に備えられ、バックルタング52を通じてエアバッグガスを受けることができるエアバッグクッション55と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、エアバッグクッション55を取り囲むようにバックルタング52の一端に結合されたクッションカバー56と、バックルタング52が分離可能に結合されるように車体に固定設置され、バックルタング52との結合の際、バックルタング52と共にエアバッグクッション55に連結されるガス通路57を形成するバックル58と、ガス通路57を通じてエアバッグクッション55にエアバッグガスを供給するようにエアバッグガスを発生させるインフレータ59と、インフレータ59の作動を制御するエアバッグコントロールユニット60と、を更に含む。
【0013】
また本発明は、シートベルト54の他端はアンカー61によって車体に固定される。
また本発明は、エアバッグクッション55はベルト掛け具51とバックルタング52の間の区間に備えられる。
また本発明は、エアバッグクッション55が、シートベルト54の長手方向に沿ってシートベルト55が移動できるように、ベルト移動路62が備えられる。
【0014】
また、本発明は、ベルト移動路62の両端のうち、ベルト掛け具51側に向かう一端は開口するように形成され、バックルタング52側に向かう他端は密閉するように形成され、ベルト移動路62の密閉された他端にはシートベルト54が通過するベルト貫通孔63が形成される。
また本発明は、ベルト移動路62が、エアバッグクッション55の縫着作業によって形成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明による車両用エアベルト装置は、シート着席者を拘束するシートベルトが一本のベルトからなる構成であるので、シートベルトの巻取り及び巻解動作が単一ベルトリトラクターで可能であり、従来の構造において使ったラップベルトリトラクターを設置する必要がなくなるので、部品数節減によって重量減少及びコスト低減を成すと共に、ラップベルトリトラクターを装着する空間の不足問題を解決することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来のエアベルト装置の斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿った断面図である。
【図3】図1のI−I線に沿った断面図である。
【図4】本発明によるエアベルト装置の斜視図である。
【図5】図4のIV−IV線に沿った断面図である。
【図6】図4のIII−III線に沿った断面図である。
【図7】シートベルトが通過するエアバッグクッションを展開して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施例について添付図面を参照して詳細に説明する。
図4は、本発明によるエアベルト装置の斜視図であり、図5は図4のIV−IV線に沿った断面図である。図4、5に示すように本発明による車両用エアベルト装置は、シートベルト54と、エアバッグクッション55と、クッションカバー56と、バックル58と、インフレータ59と、インフレータ59の作動を制御するエアバッグコントロールユニット60と、を含んでなる構成である。
【0018】
ここで、シートベルト54は、図4に示すように、一端が車体に設置されたベルトリトラクター53に、巻取り及び巻解の動作ができるように連結され、他端が車体に固定されるように設置され、車体に結合されたベルト掛け具51とバックルタング52とを順次通過し、エアバッグクッション55は、図5に示すように、一端がバックルタング52に結合されて、シートベルト54と一緒に移動しないように、シートベルト54を取り囲んでシートベルト54に備えられ、バックルタング52を通じてエアバッグガスを受けることができる。
【0019】
図6は、図4のIII−III線に沿った断面図である。図6に示すように、クッションカバー56は、エアバッグクッション55を取り囲むようにバックルタング52の一端に結合される。
【0020】
バックル58は、バックルタング52が分離可能に結合されるように車体に固定設置され、バックルタング52との結合の際、バックルタング52と共にエアバッグクッション55に連結されるガス通路57を形成し、
インフレータ59は、ガス通路57を通じてエアバッグクッション55にエアバッグガスを供給するようにエアバッグガスを発生させる。
エアバッグコントロールユニット60は、インフレータ59の作動を制御する。
【0021】
ここで、ベルト掛け具51は、センターフィラートリムの上端部で車室内に突出する構造に設置され、ベルトリトラクター53は、センターフィラートリムの内側空間で車体に固定設置される。シートベルト54の上端は、ベルト掛け具51を通過してからセンターフィラートリムの内側空間に挿入された後、ベルトリトラクター53に巻取り及び巻解の動作ができるように結合される。
そして、シートベルト54の下端はバックルタング52を貫通した後、アンカー61によって車体(フロアパネル)に固定設置される。
【0022】
エアバッグクッション55は、シートベルト54の全区間のうち、ベルト掛け具51とバックルタング52の間の区間に備えられ、シート着席者の胸部を保護する。
一方、エアバッグクッション55には、シートベルト54の長手方向に沿ってシートベルト54が移動できるように、ベルト移動路62が備えられる。ベルト移動路62はエアバッグクッション55の縫着(sawing)作業によって形成される。
【0023】
図7は、シートベルトが通過するエアバッグクッションを展開して示す図である。図7に示すように、縫着作業は、エアバッグクッションに使われる布地をエアバッグクッション55の形状に作るときに用いる比較的簡便な作業であり、参照符号L1が縫着ラインに当たる。
【0024】
ベルト移動路62の両端のうち、ベルト掛け具51側に向かう一端は開口するように形成され、バックルタング52側に向かう他端は密閉されるように形成される。ベルト移動路62の密閉した他端にはシートベルト54が通過できるようにベルト貫通孔63が形成される。
【0025】
すなわち、シートベルト54は、他端がベルト貫通孔63を通過し、バックルタング52を通過した後、アンカー61によって車体に固定設置される構造のものである。
このように構成された本発明によるエアベルト装置は、シートベルト54がエアバッグクッション55内に形成されたベルト移動路62に沿って自由に移動できる構造となり、更にシートベルト54が移動するときにエアバッグクッション55は一緒に移動しない構造となることにより、シートベルト54はベルト掛け具51を円滑に通過してベルトリトラクター53に巻き取られるか、あるいはベルトリトラクター53から円滑に巻解される動作を確実に遂行できる。
【0026】
従って、本発明によるエアベルト装置は、一つのベルトリトラクター53だけでシートベルト54の巻取り及び巻解の動作が可能であり、従来の構造において必要であったラップベルトリトラクターを設置する必要がなくなるので、部品数節減及びこれによる重量減少とコスト低減をはかると共に、ラップベルトリトラクターを装着する空間の不足問題を解決することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明のエアベルト装置は、リトラクターの部品数節減によって重量減少及びコスト低減をはかることができるので、車両用エアベルト装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0028】
51 ベルト掛け具
52 バックルタング
53 ベルトリトラクター
54 シートベルト
55 エアバッグクッション
56 クッションカバー
57 ガス通路
58 バックル
59 インフレータ
60 エアバッグコントロールユニット
61 アンカー
62 ベルト移動路
63 ベルト貫通孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端は、車体に設置されたベルトリトラクター(53)に、巻取り及び巻解の動作ができるように連結され、他端は、車体に固定され車体に結合されたベルト掛け具(51)とバックルタング(52)とを順次通過するシートベルト(54)と、
一端が前記バックルタング(52)に結合されて、前記シートベルト(54)と一緒に移動しないように、前記シートベルト(54)を取り囲んで前記シートベルト(54)に備えられ、前記バックルタング(52)を通じてエアバッグガスを受けることができるエアバッグクッション(55)と、
を含むことを特徴とする車両用エアベルト装置。
【請求項2】
前記エアバッグクッション(55)を取り囲むように前記バックルタング(52)の一端に結合されたクッションカバー(56)を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の車両用エアベルト装置。
【請求項3】
前記バックルタング(52)が分離可能に結合されるように車体に固定設置され、前記バックルタング(52)との結合の際、前記バックルタング(52)と共に前記エアバッグクッション(55)に連結されるガス通路(57)を形成するバックル(58)と、
前記ガス通路(57)を通じて前記エアバッグクッション(55)にエアバッグガスを供給するようにエアバッグガスを発生させるインフレータ(59)と、
前記インフレータ(59)の作動を制御するエアバッグコントロールユニット(60)と、
を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の車両用エアベルト装置。
【請求項4】
前記シートベルト(54)の他端はアンカー(61)によって車体に固定されることを特徴とする請求項1に記載の車両用エアベルト装置。
【請求項5】
前記エアバッグクッション(55)は前記ベルト掛け具(51)と前記バックルタング(52)の間の区間に備えられることを特徴とする請求項1に記載の車両用エアベルト装置。
【請求項6】
前記エアバッグクッション(55)には、前記シートベルト(54)の長手方向に沿って前記シートベルト(54)が移動できるように、ベルト移動路(62)が備えられることを特徴とする請求項1に記載の車両用エアベルト装置。
【請求項7】
前記ベルト移動路(62)の両端のうち、前記ベルト掛け具(51)側に向かう一端は開口するように形成され、前記バックルタング(52)側に向かう他端は密閉するように形成され、
前記ベルト移動路(62)の密閉された他端には前記シートベルト(54)が通過できるようにベルト貫通孔(63)が形成されることを特徴とする請求項6に記載の車両用エアベルト装置。
【請求項8】
前記ベルト移動路(62)は前記エアバッグクッション(55)の縫着作業によって形成されることを特徴とする請求項6に記載の車両用エアベルト装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−250699(P2012−250699A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210765(P2011−210765)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【Fターム(参考)】