説明

車両用エンジンの排気制御装置

【課題】彎曲部を有して排気弁口に連なる排気通路を形成する排気通路形成手段に、排気通路の開口面積を変化させ得る排気制御弁が配設される車両用エンジンの排気制御装置において、排気流速を良好に制御することを可能とする。
【解決手段】排気制御弁であるロータリバルブ71が、排気弁口に最も近い彎曲部65aでの排気通路67の通路断面積のうち彎曲外側の一部通路断面積を変化させ得るようにして排気通路形成手段70に配設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼室に臨んでシリンダヘッドに設けられる排気弁口を開閉可能な排気弁が、前記シリンダヘッドに開閉作動可能に配設され、彎曲部を有して前記排気弁口に連なる排気通路を形成する排気通路形成手段に、前記排気通路の開口面積を変化させ得る排気制御弁が配設される車両用エンジンの排気制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
彎曲部を有して排気弁口に連なる排気通路の前記彎曲部に、バタフライバルブである排気制御弁が配置された自動二輪車用エンジンの排気制御装置が、特許文献1で知られている。
【特許文献1】特開平2−049936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記特許文献1で開示されたものでは、排気通路の彎曲部の略中央にバタフライバルブが配置されており、バタフライバルブを全閉状態としたときには、彎曲部において彎曲外側の流速の速い部分で排気通路の内壁およびバタフライバルブ間を排気が流通するだけでなく、彎曲内側の流速の遅い部分で排気通路の内壁およびバタフライバルブ間を排気が流通するので、排気流速が一定ではなく、排気流速や流れを正確に制御することが難しい。
【0004】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、排気流速を良好に制御することを可能とした車両用エンジンの排気制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、燃焼室に臨んでシリンダヘッドに設けられる排気弁口を開閉可能な排気弁が、前記シリンダヘッドに開閉作動可能に配設され、彎曲部を有して前記排気弁口に連なる排気通路を形成する排気通路形成手段に、前記排気通路の開口面積を変化させ得る排気制御弁が配設される車両用エンジンの排気制御装置において、前記排気制御弁であるロータリバルブが、前記排気弁口に最も近い前記彎曲部での前記排気通路の通路断面積のうち彎曲外側の一部通路断面積を変化させ得るようにして前記排気通路形成手段に配設されることを特徴とする。
【0006】
また請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加えて、前記ロータリバルブを開閉駆動する動力を発揮するアクチュエータと、エンジン出力をスロットル操作量に比例して直線的に変化させるようにして前記アクチュエータの作動を制御する制御ユニットとを備えることを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加えて、 前記ロータリバルブを開閉駆動する動力を発揮するアクチュエータと、スロットル開度またはエンジン回転数ならびに変速機のギヤポジションに基づいて前記ロータリバルブを開閉すべく前記アクチュエータの作動を制御する制御ユニットとを備えることを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明の構成に加えて、前記制御ユニットが、エンジン始動時に前記ロータリバルブを閉弁状態から徐々に開弁するように前記アクチュエータの作動を制御することを特徴とする。
【0009】
さらに請求項5記載の発明は、請求項3記載の発明の構成に加えて、前記スロットル開度またはエンジン回転数ならびに前記変速機のギヤポジションとは無関係に前記ロータリバルブを強制的に閉弁させる信号を前記制御ユニットに入力する手動操作スイッチを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、排気制御弁は、排気弁口に最も近い彎曲部での排気通路の通路断面積のうち彎曲外側の一部通路断面積を変化させるロータリバルブであるので、燃焼室に近く排気流速の速い部分で排気の流れをロータリバルブで制御することになり、排気弁および吸気弁の開弁時期のオーバーラップによる新気の吹き抜けを抑制することができ、排気制御弁を大型化することなく、エンジンの最大出力を制御するようにしてスロットル操作による出力操作を良好なものとすることができる。また排気通路形成手段において彎曲部の彎曲外側にロータリバルブが配置されるので、ロータリバルブを燃焼室から極力離してロータリバルブの耐久性を高めることができ、排気通路形成手段へのロータリバルブの取付け性を良好とすることができる。
【0011】
また請求項2記載の発明によれば、エンジン出力がスロットル操作量に比例して直線的に変化するので、車両運転者の操作感の向上を図ることができる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、燃焼室の状態を表す指標すなわちスロットル開度またはエンジン回転数、ならびに変速機のギヤポジションに合わせて最適なロータリバルブの開閉制御を行うことができる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、エンジン始動時にスロットル開度が急激に増大してもエンジン出力を低くすることで車輪のグリップを良好なものとすることができる。
【0014】
さらに請求項5記載の発明によれば、手動操作スイッチの操作によって、スロットル開度またはエンジン回転数ならびに変速機のギヤポジションとは無関係にロータリバルブを強制的に閉弁させることにより、子供向け車両や練習用車両においてスロットル操作感を損なうことなくエンジン出力を低下させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の一実施例に基づいて説明する。
【0016】
図1〜図8は本発明の一実施例を示すものであり、図1は自動二輪車の要部右側面図、図2は4サイクルエンジンの縦断左側面図であって図3の2−2線に沿う縦断側面図、図3は図2の3−3線拡大断面図、図4は図3の4−4線断面図、図5はロータリバルブの全開時(a)および全閉時(b)の状態を図4の5−5線に沿って示す断面図、図6はロータリバルブの制御系を示すブロック図、図7はエンジン始動時のロータリバルブの開度変化を示す図、図8はロータリバルブの開度変化に伴う出力変化を示す図である。
【0017】
先ず図1において、小型の車両である自動二輪車の車体フレームFは、その前端のヘッドパイプ15と、該ヘッドパイプ15から後下がりに延びる左右一対のメインフレーム16…と、それらのメインフレーム16…の後部にそれぞれ連設されて下方に延びる左右一対のピボットプレート17…と、前記ヘッドパイプ15から下方に延びるダウンフレーム18と、ダウンフレーム18の下端および前記両ピボットプレート17…間を結ぶ左右一対のロアフレーム19…とを有し、4サイクルの水冷式である単気筒エンジンのエンジン本体24が、前記メインフレーム16…、前記ピボットプレート17…、前記ダウンフレーム18および前記ロアフレーム19…で囲まれる空間に配置されるようにして車体フレームFに支持される。またエンジン本体24の前方にはダウンフレーム18の左右に分かれたラジエータ25…が配置されており、それらのラジエータ25…が前記ダウンフレーム18で支持される。
【0018】
図2を併せて参照して、前記エンジン本体24は、自動二輪車の左右方向に延びる軸線を有するクランクシャフト26を回転自在に使用するクランクケース27と、シリンダボア28を有して前記クランクケース27の上部に結合されるシリンダブロック29と、該シリンダブロック29の上部に結合されるシリンダヘッド30と、該シリンダヘッド30の上部に結合されるヘッドカバー31とを備える。しかも前記シリンダブロック29は、エンジン本体24の車体フレームFへの搭載状態では、前記シリンダボア28の軸線CBをわずかに前上がりに傾斜させるようにして前記クランクケース27に結合される。
【0019】
前記シリンダボア28にはピストン32が摺動自在に嵌合されており、このピストン32はコネクティングロッド33を介して前記クランクシャフト26に連接される。また前記シリンダブロック29および前記シリンダヘッド30間には、前記ピストン32の頂部を臨ませる燃焼室34が形成される。
【0020】
ところで前記ピストン32のシリンダボア28内での往復摺動に応じて前記クランクシャフト26は矢印35で示す回転方向に回転するのであるが、前記シリンダボア28の軸線CBは、クランクシャフト26の軸線CCよりも前記回転方向35にオフセットするように設定されており、このようにシリンダボア28の軸線CBをクランクシャフト26の軸線CCに対してオフセットするように設定することにより、シリンダボア28の内面へのピストン32の摺接による摩耗を抑え、シリンダブロック29および燃焼室34が前記摩耗によって高温となることを防止することができる。
【0021】
前記シリンダヘッド30には、前記燃焼室34に臨む一対の吸気弁口36…および一対の排気弁口37…が設けられる。前記両吸気弁口36…を個別に開閉する一対の吸気弁38…ならびに前記両排気弁口37…を個別に開閉する一対の排気弁39…がシリンダヘッド30に開閉作動可能に配設されており、両吸気弁38…は弁ばね40…でそれぞれ閉弁方向に付勢され、両排気弁39…は弁ばね41…でそれぞれ閉弁方向に付勢される。
【0022】
図3をさらに併せて参照して、前記シリンダヘッド30および前記ヘッドカバー31間には、前記両吸気弁38…および前記両排気弁39…を開閉駆動する動弁装置44が収容されるものであり、この動弁装置44は、クランクシャフト26と平行な軸線を有して前記両吸気弁38…の上方に配置されるとともにシリンダヘッド30で回転自在に支承されるカムシャフト45と、該カムシャフト45に設けられる一対の吸気側カム48…および前記両吸気弁38…間にそれぞれ介在する一対のバルブリフタ46…と、前記カムシャフト45に設けられる一対の排気側カム49…に従動して揺動することで両排気弁39…を開閉駆動する一対のロッカアーム47…とを有してSOHC型に構成される。
【0023】
前記両バルブリフタ46…は、上端を閉塞端とした有底円筒状に形成されており、前記吸気弁38…の作動軸線と同軸の軸線方向に摺動するようにしてシリンダヘッド30に嵌合される。前記吸気弁38…のステム38a…の上端は前記バルブリフタ46…の閉塞端内面に当接され、両バルブリフタ46…の閉塞端外面に前記吸気側カム48…が当接する。また前記燃焼室34に先端部を臨ませるようにしてシリンダヘッド30に螺合される点火プラグ(図示せず)を挿入せしめプラグ挿入筒50がシリンダヘッド30に取付けられており、プラグ挿入筒50の両側に配置される前記両ロッカアーム47…は、前記カムシャフト45と平行な軸線を有してシリンダヘッド30に支持されるロッカシャフト51で回動可能に支承される。しかも前記両ロッカアーム47…の一端部には前記排気側カム49…に転がり接触するローラ52…がそれぞれ軸支され、前記両ロッカアーム47…の他端部が前記排気弁39…のステム39a…の上端にそれぞれ当接される。
【0024】
このようなSOHC型の動弁装置44では、クランクシャフト26の軸線に直交する平面への投影図上で吸気弁38…および排気弁39…の作動軸線がなす角度αを比較的小さく設定することが可能であり、吸気弁38…および排気弁39…をより近づけて配置してシリンダヘッド30の小型化を図ることができる。
【0025】
エンジン本体24の車体フレームFへの搭載状態で左端部となる前記カムシャフト45の一端部には、前記クランクシャフト26の回転動力が調時伝動機構53によって1/2の減速比で伝達されるものであり、該調時伝動機構53は、クランクシャフト26に設けられる駆動スプロケット(図示せず)と、前記カムシャフト45の一端部に固定される被動スプロケット55とに無端状のカムチェーン56が巻き掛けられて成る。しかもシリンダブロック29およびシリンダヘッド30には、前記カムチェーン56を走行させるカムチェーン室57が形成されており、このカムチェーン室57は、エンジン本体24の車体フレームFへの搭載状態で前記シリンダブロック29および前記シリンダヘッド30の左側端部に位置することになる。
【0026】
前記シリンダヘッド30には、前記両吸気弁口36…に共通に通じる単一の吸気ポート58が設けられており、この吸気ポート58の一部を形成してシリンダヘッド30の後部側面から後方に突出するようにしてシリンダヘッド30に一体に設けられる吸気側接続管部59には、前記吸気ポート58に通じる吸気路60を形成して前記シリンダヘッド30の後方に配置されるスロットルボディ61がインシュレータ62を介して接続される。このスロットルボディ61には、前記吸気路60の開口面積を変化させるスロットル弁63が回動可能に支承されるとともに、前記吸気ポート58に向けて燃料を噴射する燃料噴射弁64が取付けられる。
【0027】
またシリンダヘッド30には、前記両排気弁口37…に共通に通じる単一の排気ポート65が設けられており、この排気ポート65の一部を形成してシリンダヘッド30の前部側面から前方に突出する排気側接続管部66がシリンダヘッド30に一体に設けられる。この排気側接続管部66には、前記排気ポート65を含む排気通路67を形成するようにして排気ポート65に上流端を通じさせる排気管68が接続されており、この排気管68の下流端は排気マフラー69(図1参照)に接続される。而して排気側接続管部66を一体に有するシリンダヘッド30の一部および前記排気管68は排気通路67を協働して形成する排気通路形成手段70を構成する。
【0028】
前記排気側接続管部66は、彎曲部65aを排気ポート65の一部が形成するようにしてシリンダヘッド30に一体に連設されるものであり、前記彎曲部65aは、エンジン本体24の車体フレームFへの搭載状態では自動二輪車の左右方向の一方、この実施例では右方向に凸に膨らむようにして水平方向で彎曲するものであり、車体フレームFの一部を構成してシリンダヘッド30の前方に配置されるダウンフレーム18を避けるようにして、前記ダウンフレーム18の後方で左側に屈曲するように形成されてシリンダヘッド30に一体に連設される。
【0029】
前記排気管68の上流端は排気側接続管部66に接続されるものであり、この排気管68は、その長さを長くするために、図1で示すように前記排気側接続管部66の延長方向に左側にわずかに延びてから前記ダウンフレーム18の前方に回り込むようにして下方に延びる垂下管部68aと、該垂下管部68aの下端から右側に屈曲して右側斜め上方に延びる第1上昇管部68bと、第1上昇管部68bの後端から左側に屈曲して車体フレームFの幅方向中央側に寄りつつわずかに後上がりとして後方に延びる第2上昇管部68cとを有する。
【0030】
図4を併せて参照して、前記排気通路67のうち前記排気弁口37…に最も近い位置に配置される彎曲部すなわち排気ポート65の一部が形成する前記彎曲部65aの通路断面積は排気制御弁であるロータリバルブ71で変化せしめられる。
【0031】
このロータリバルブ71は、その閉弁時に排気通路67における排気ポート65の内壁から排気ポート65内に一部を突出させることで前記彎曲部65aの彎曲外側の一部通路断面積を変化させるようにして前記シリンダヘッド30の排気側接続管部66に配設されるものであり、前記彎曲部65aの中心CLから彎曲外側にオフセットした位置、この実施例では、排気ポート65の中心CLから前記カムチェーン室57とは反対側にオフセットした位置でシリンダボア28の軸線CBと略平行として上下方向に指向した回動軸線CRを有するロータリバルブ71が排気側接続管部66に配設される。
【0032】
前記ロータリバルブ71は、その回動軸線CRを中心とする円柱状の外面形状を有するバルブ主体72に、図4および図5(a)で示す全開時には前記排気通路67における排気ポート65の一部を構成する通路部73が前記バルブ主体72の一部を切欠くようにして形成されて成り、前記バルブ主体72の両端には、その回動軸線CRと同軸である回動軸部72a,72bが同軸にかつ一体に突設される。また前記ロータリバルブ71の閉弁時に、該ロータリバルブ71の外面すなわちバルブ主体72の外面の一部は、図5(b)で示すように、前記排気通路67における排気ポート65の内壁から突出する。しかもバルブ主体72は円柱状のものであるので、閉弁状態にあるロータリバルブ71のうち前記排気通路67内に突出して上流側を向く外面の少なくとも前記内壁からの突出先端側外面、この実施例ではロータリバルブ71の回動軸線CRが排気通路67を横切る位置にあるのでロータリバルブ71のうち前記排気通路67内に突出して上流側を向く外面の突出先端側外面が、前記内壁からの突出量を排気通路67の上流側から下流側に向かうにつれて次第に増加することになる。
【0033】
ロータリバルブ71は、シリンダヘッド30と一体である排気側接続管部66に一体に設けられるバルブハウジング74に収容される。このバルブハウジング74は、前記バルブ主体72を回動可能に収容する収容部74aと、該収容部74aの上部に一体に連なる函状部74bとから成るものであり、函状部74bは、収容部74aから前記カムチェーン室57とは反対側に延びて上部を開放した矩形状に形成される。
【0034】
前記収容部74aには、前記排気ポート65における彎曲部65aの彎曲外側を上下に横切る収容孔75と、該収容孔75よりも小径に形成されて該収容孔75に同軸に連なる有底の下部支持孔76とが設けられ、収容孔75および下部支持孔76間には上方に臨む環状の下部支持面77が形成される。前記収容孔75の上端は、前記函状部74b内に臨んで収容部74aの上端に形成される平坦な結合面78に開口されており、この結合面78には、ロータリバルブ71のバルブ主体72を前記下部支持面77との間に挟む押さえ部材79が複数たとえば一対のボルト80,80で結合される。
【0035】
すなわち前記バルブ主体72は、その回動軸部72aを下部支持孔76に回動可能に嵌合するようにして収容孔75に上方から挿入されるものであり、そのバルブ主体72を上方から押さえるようにして押さえ部材79が前記結合面78に締結される。しかも押さえ部材79には、前記バルブ主体72の回動軸部72bを回動可能に貫通せしめる上部支持孔81が設けられており、押さえ部材79および前記回動軸部72b間には環状のシール部材82が介装される。
【0036】
前記ロータリバルブ71の回動軸部72bおよび押さえ部材79間には戻しばね83が設けられており、回動軸部72bすなわちロータリバルブ71は、前記戻しばね83のばね力によって開弁側、すなわち図5で示すように通路部73が排気ポート65の内面に面一に連なる回動位置側に付勢される。
【0037】
前記バルブハウジング74の上端面すなわち函状部74bの上端面は、シリンダヘッド30のヘッドカバー31への結合面84と面一となるように形成されており、函状部74bの上端面には、バルブハウジング74との間に作動室85を形成する蓋部材86が締結される。
【0038】
前記作動室85内で前記ロータリバルブ71の回動軸部72bにはドラム87が固定されており、このドラム87には、牽引時に前記ロータリバルブ71を閉弁側に回動する閉じ側ケーブル88の一端部と、牽引時に前記ロータリバルブ71を開弁側に回動する開き側ケーブル89の一端部とが相互に反対側から巻き掛け、係合される。
【0039】
閉じ側ケーブル88および開き側ケーブル89は、アウターケーブル88a,89a内にインナーケーブル88b,89bが移動自在に挿通されて成るものであり、アウターケーブル88a,89aの一端部はドラム87から離隔した位置で前記函状部74bの側壁に固定され、アウターケーブル88a,89aの一端部から突出したインナーケーブル88b,89bの一端部が前記ドラム87に連結される。
【0040】
一方、閉じ側ケーブル88および開き側ケーブル89の他端部は、正逆可能な電動モータを有して車体フレームFに支持されるアクチュエータ90に連結されており、該アクチュエータ90によって、閉じ側ケーブル88を牽引することでロータリバルブ71が閉弁方向に回動し、開き側ケーシング89を牽引することでロータリバルブ71が開弁側に回動することになる。
【0041】
図6において、前記アクチュエータ90の作動は制御ユニット98で制御されるものであり、該制御ユニット98には、スロットル開度検出手段99で検出されるスロットル開度θ、ならびにギヤポジション検出手段100で検出される変速機のギヤポジションGPが入力され、制御ユニット98は、スロットル開度θおよびギヤポジションGPに基づいて前記ロータリバルブ71を開閉すべく前記アクチュエータ90の作動を制御する。なお前記スロットル開度θに代えてエンジン回転数を用いるようにしてもよい。
【0042】
また制御ユニット98には、手動操作スイッチ101からの信号が入力されるものであり、制御ユニット98は、前記手動操作スイッチ101の手動操作時には、スロットル開度検出手段99で検出されるスロットル開度θまたは前記エンジン回転数、ならびにギヤポジション検出器100で検出される変速機のギヤポジションGPとは無関係に前記ロータリバルブ71を強制的に閉弁させるように前記アクチュエータ90の作動を制御する。
【0043】
しかも制御ユニット98は、エンジン始動時には、図7で示すように前記ロータリバルブ71を閉弁状態から徐々に開弁するように前記アクチュエータ90の作動を制御するものであり、さらにエンジン始動後は、エンジン出力が、図8で示すように、スロットル操作量すなわちスロットル開度検出手段99で検出されるスロットル開度θに比例して直線的に変化させるようにして前記アクチュエータ90の作動を制御する。
【0044】
次にこの実施例の作用について説明すると、排気通路形成手段70で形成される排気通路67のうち排気弁口37…に最も近い彎曲部すなわち排気ポート65の彎曲部65aでの通路断面積のうち彎曲外側の一部通路断面積が、ロータリバルブ71で変化せしめられるので、燃焼室34に近く排気流速の速い部分で排気の流れをロータリバルブ71で制御することになり、排気弁38…および吸気弁39…の開弁時期のオーバーラップによる新気の吹き抜けを抑制することができ、彎曲内側に配置される場合に比べてロータリバルブ71の小型化を図ることができ、エンジンの最大出力を制御するようにしてスロットル操作による出力操作を良好なものとすることができる。また排気通路形成手段70において彎曲部65aの彎曲外側にロータリバルブ71が配置されるので、ロータリバルブ71を燃焼室34から極力離してロータリバルブ71の耐久性を高めることができ、排気通路形成手段70へのロータリバルブ71の取付け性を良好とすることができる。
【0045】
またロータリバルブ71は、その全開時には前記排気通路67における排気ポート65の内面に面一に連なるものであり、ロータリバルブ71の全開時に排気通路67における排気ポート65の断面積をロータリバルブ71が減少させることはない。しかも閉弁状態にあるロータリバルブ71のうち前記排気通路67内に突出して上流側を向く外面の少なくとも前記内壁からの突出先端側外面、この実施例では突出先端側外面の前記内壁からの突出量が排気通路67の上流側から下流側に向かうにつれて次第に増加しており、排気流速が速い場合でもロータリバルブ71の表面に沿って排気を滑らかに流通せしめ、ロータリバルブ71の表面での乱流の発生を防止し、ロータリバルブ71の開閉による良好な排気制御を実現することができる。
【0046】
またロータリバルブ71は、その回動軸線CRを中心とする円柱状の外面形状を有するバルブ主体72に、全開時に前記排気ポート65の一部を構成する通路部73がバルブ主体72の一部を切欠くようにして形成されて成るものであり、ロータリバルブ71の加工性を高めることができる。
【0047】
さらにロータリバルブ71は、シリンダヘッド30に設けられる排気ポート65の開口面積を変化させ得るものであり、排気ポート65の中心CLからカムチェーン室57とは反対側にオフセットした位置で前記シリンダヘッド30の排気側接続管部66に回動可能に配設されるので、調時伝動機構53の一部を構成してカムシャフト45に設けられる被動スプロケット55とのロータリバルブ71の干渉を回避するようにしてシリンダヘッド30の小型化を図ることができる。
【0048】
ところで吸気弁38…および排気弁39…を開閉駆動する動弁装置44では、吸気弁38…の上方に配置されるカムシャフト45に設けられる排気側カム49…が、該排気側カム49…に従動して揺動するロッカアーム47…を介して排気弁39…に連動、連結されており、このような動弁装置44は、クランクシャフト26の軸線に直交する平面への投影図上で吸気弁38…および排気弁39…の作動軸線がなす角度αを比較的小さく設定することが可能であり、吸気弁38…および排気弁39…をより近づけて配置してシリンダヘッド30の小型化を図ることができるのであるが、ロータリバルブ71の回動軸線CRがシリンダブロック29におけるシリンダボア28の軸線CBと略平行に設定されるので、シリンダボア28およびクランクシャフト26の軸線に直交する方向でエンジン本体24をコンパクト化することができる。
【0049】
しかも前記ロータリバルブ71は、シリンダヘッド30と一体の排気側接続管部66に一体に設けられるバルブハウジング74に回動可能に収容されるので、ロータリバルブ71を収容するバルブハウジングを特別に用意することが不要であり、部品点数を低減することができる。
【0050】
前記排気側接続管部66は、エンジン本体24の車体フレームFへの搭載状態では自動二輪車の右方向に凸に膨らんで水平方向に彎曲した彎曲部65aを排気ポート65の一部が形成するようにしてシリンダヘッド30に一体に連設されるものであり、ロータリバルブ71は、その回動軸線CRを上下方向に指向させて前記バルブハウジング74に収容されるので、バルブハウジング74のシリンダヘッド30との干渉を避けることが可能であり、ロータリバルブ71の回動軸部72a,72bを燃焼室34から離隔させて前記回動軸部72a,72bが高温になることを防止することができる。またロータリバルブ71を駆動する駆動機構であるドラム87や、閉じ側ケーブル88および開き側ケーブル89等をバルブハウジング74の上部に配設することによってドラム87や、閉じ側ケーブル88および開き側ケーブル89等を下方からの飛び石等から容易に保護することができる。
【0051】
またバルブハウジング74は、前記ロータリバルブ71を上方から組付けることを可能として上方に開放するようにしてシリンダヘッド30と一体の排気側接続管部66に一体に設けられ、バルブハウジング74の上端面が、前記シリンダヘッド30のヘッドカバー31への結合面84と面一に形成されているので、バルブハウジング74の加工性を良好にするとともにバルブハウジング74のロータリバルブ71の組付けを容易とすることができる。
【0052】
さらにエンジン本体24は、そのシリンダボア28の軸線CBが、クランクシャフト26の軸線CCから該クランクシャフト26の回転方向35にオフセットして配置されるように構成されるので、シリンダボア28の内面へのピストン32の摺接による摩擦を抑え、シリンダブロック29および燃焼室34がより高温となることを防止することができ、排気ポート65に配設されるロータリバルブ71への熱影響をより小さくすることができる。
【0053】
またロータリバルブ71を開閉作動せしめるアクチュエータ90を制御する制御ユニット98は、エンジン出力をスロットル操作量に比例して直線的に変化させるようにしてアクチュエータ90の作動を制御するので、自動二輪車の運転者の操作感の向上を図ることができる。
【0054】
また制御ユニット98は、スロットル開度θまたはエンジン回転数と、変速機のギヤポジションGPとに基づいて前記ロータリバルブ71を開閉するようにアクチュエータ90の作動を制御するので、燃焼室34の状態を表す指標すなわちスロットル開度θまたはエンジン回転数、ならびに変速機のギヤポジションGPに合わせて最適なロータリバルブ71の開閉制御を行うことができる。
【0055】
またエンジン始動時に制御ユニット98は、ロータリバルブ71を閉弁状態から徐々に開弁するように前記アクチュエータ90の作動を制御するので、エンジン始動時にスロットル開度θが急激に増大してもエンジン出力を低くすることで車輪のグリップを良好なものとすることができる。
【0056】
さらに手動操作スイッチ101の操作による信号が制御ユニット98に入力されたときに、該制御ユニット98は、スロットル開度θまたはエンジン回転数ならびに前記変速機のギヤポジションGPとは無関係にロータリバルブ71を強制的に閉弁させるようにアクチュエータ90の作動を制御するので、子供向け車両や練習用車両においてスロットル操作感を損なうことなくエンジン出力を低下させることができる。
【0057】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】自動二輪車の要部右側面図である。
【図2】4サイクルエンジンの縦断左側面図であって図3の2−2線に沿う縦断側面図である。
【図3】図2の3−3線拡大断面図である。
【図4】図3の4−4線断面図である。
【図5】ロータリバルブの全開時(a)および全閉時(b)の状態を図4の5−5線に沿って示す断面図である。
【図6】ロータリバルブの制御系を示すブロック図である。
【図7】エンジン始動時のロータリバルブの開度変化を示す図である。
【図8】ロータリバルブの開度変化に伴う出力変化を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
30・・・シリンダヘッド
34・・・燃焼室
37・・・排気弁口
39・・・排気弁
65a・・・彎曲部
67・・・排気通路
70・・・排気通路形成手段
71・・・ロータリバルブ
90・・・アクチュエータ
98・・・制御ユニット
101・・・手動操作スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室(34)に臨んでシリンダヘッド(30)に設けられる排気弁口(37)を開閉可能な排気弁(39)が、前記シリンダヘッド(30)に開閉作動可能に配設され、彎曲部(65a)を有して前記排気弁口(37)に連なる排気通路(67)を形成する排気通路形成手段(70)に、前記排気通路(67)の開口面積を変化させ得る排気制御弁(71)が配設される車両用エンジンの排気制御装置において、前記排気制御弁であるロータリバルブ(71)が、前記排気弁口(37)に最も近い前記彎曲部(65a)での前記排気通路(67)の通路断面積のうち彎曲外側の一部通路断面積を変化させ得るようにして前記排気通路形成手段(70)に配設されることを特徴とする車両用エンジンの排気制御装置。
【請求項2】
前記ロータリバルブ(71)を開閉駆動する動力を発揮するアクチュエータ(90)と、エンジン出力をスロットル操作量に比例して直線的に変化させるようにして前記アクチュエータ(90)の作動を制御する制御ユニット(98)とを備えることを特徴とする請求項1記載の車両用エンジンの排気制御装置。
【請求項3】
前記ロータリバルブ(71)を開閉駆動する動力を発揮するアクチュエータ(90)と、スロットル開度またはエンジン回転数ならびに変速機のギヤポジションに基づいて前記ロータリバルブ(71)を開閉すべく前記アクチュエータ(90)の作動を制御する制御ユニット(98)とを備えることを特徴とする請求項1記載の車両用エンジンの排気制御装置。
【請求項4】
前記制御ユニット(98)が、エンジン始動時に前記ロータリバルブ(71)を閉弁状態から徐々に開弁するように前記アクチュエータ(90)の作動を制御することを特徴とする請求項3記載の車両用エンジンの排気制御装置。
【請求項5】
前記スロットル開度またはエンジン回転数ならびに前記変速機のギヤポジションとは無関係に前記ロータリバルブ(71)を強制的に閉弁させる信号を前記制御ユニット(98)に入力する手動操作スイッチ(101)を含むことを特徴とする請求項3記載の車両用エンジンの排気制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−85101(P2009−85101A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−256535(P2007−256535)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】