説明

車両用サスペンション装置

【課題】コイルスプリングの反力軸線の位置をストラットの全ストローク領域にて制御すること。
【解決手段】車両用サスペンション装置は、車輪63を回転可能に支持しショックアブソーバー21を備えるストラット20が上端部にてアッパーサポート10を介して車体60に支持されていて、ストラット20の中間部外周に設けられたロアスプリングシート31と、ストラット20の上端部外周に設けられたアッパースプリングシート32との間にてストラット20の外周にコイルスプリング33が組付けられている。この車両用サスペンション装置には、ストラット20のストローク量に応じてロアスプリングシート31、アッパースプリングシート32の位置の少なくとも一方を、ストラット20に対してショックアブソーバー21の径方向、軸方向、周方向の少なくとも一方向にて調整可能な位置調整装置40,50が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用サスペンション装置に係り、特に、車輪を回転可能に支持しショックアブソーバーを備えるストラットが上端部にてアッパーサポートを介して車体に支持されていて、前記ストラットの中間部外周に設けられたロアスプリングシートと、前記ストラットの上端部外周に設けられたアッパースプリングシートとの間にて前記ストラットの外周にコイルスプリングが組付けられている車両用サスペンション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用サスペンション装置においては、ショックアブソーバーの軸線とキングピン軸線(車輪の接地点とストラットのアッパーサポートによる支持中心を結んだ軸線)との間のずれが不可避であるため、ショックアブソーバーに曲げモーメントが発生し、これに起因してショックアブソーバーに作用する横力によって、ショックアブソーバーの円滑な摺動作動が阻害される。これを防止するため、例えばコイルスプリングの反力軸線をショックアブソーバーの軸線に対してオフセットさせてショックアブソーバーに生ずる曲げモーメントを小さく(望ましくはゼロに)する手法が、例えば下記特許文献1に示されている車両用サスペンション装置において採用されている。
【特許文献1】特開2000−103216号公報
【0003】
上記した車両用サスペンション装置においては、アッパースプリングシートの中心を通るコイルスプリングの軸線が、自由状態において所定の曲率で湾曲するようにコイルスプリングを形成すると共に、コイルスプリングの車体外側の軸方向長さが短くなる方向にロアスプリングシートを所定角度傾斜させて支持し、及び/又はコイルスプリングの車体内側の軸方向長さが短くなる方向にアッパースプリングシートを所定角度傾斜させて支持し、コイルスプリングの軸線の湾曲方向が車体外側となるようにコイルスプリングを保持している。
【発明の開示】
【0004】
上記した車両用サスペンション装置においては、ストラットの特定のストローク領域においては、ショックアブソーバーにより所期の減衰力特性を得ることが可能であるものの、ショックアブソーバーの軸線とコイルスプリングの反力軸線との関係がストラットのストローク量に応じて逐次変化するため、ストラットの全ストローク領域において、ショックアブソーバーの減衰力特性を逐次最適に得ることができないおそれがある。
【0005】
本発明は、上記した問題に対処すべくなされたものであり、車輪を回転可能に支持しショックアブソーバーを備えるストラットが上端部にてアッパーサポートを介して車体に支持されていて、前記ストラットの中間部外周に設けられたロアスプリングシートと、前記ストラットの上端部外周に設けられたアッパースプリングシートとの間にて前記ストラットの外周にコイルスプリングが組付けられている車両用サスペンション装置において、前記ストラットのストローク量に応じて前記ロアスプリングシート、前記アッパースプリングシートの位置の少なくとも一方を、前記ストラットに対して前記ショックアブソーバーの径方向、前記ショックアブソーバーの軸方向、前記ショックアブソーバーの周方向の少なくとも一方向にて調整可能な位置調整装置を設け、この位置調整装置により前記コイルスプリングの反力軸線を所定反力軸線位置に移動調整可能としたことに特徴がある。この場合において、前記位置調整装置は、ねじ軸を有して同ねじ軸の回転により前記ストラットに対して前記ロアスプリングシート、前記アッパースプリングシートの少なくとも一方を移動可能なねじ送り機構と、前記ねじ軸を正逆回転可能なモーターを備えていて、前記モーターは、センサにより検出される前記ストラットのストローク量に応じて電気制御装置により駆動を制御されるように構成されていることも可能である。
【0006】
本発明による車両用サスペンション装置においては、前記位置調整装置が、前記ストラットのストローク量に応じて、前記ロアスプリングシート、前記アッパースプリングシートの位置の少なくとも一方を、前記ストラットに対して前記ショックアブソーバーの径方向、前記ショックアブソーバーの軸方向、前記ショックアブソーバーの周方向の少なくとも一方向にて調整可能であるため、前記コイルスプリングの反力軸線を所定反力軸線の位置(ショックアブソーバーに生ずる曲げモーメントを小さく(望ましくはゼロに)する位置)とすることが可能である。このため、前記ストラットの全ストローク領域において、前記コイルスプリングの反力軸線の位置を所定反力軸線の位置に調整することが可能であり、前記ショックアブソーバーに発生する横力を小さく(望ましくはゼロに)することが可能である。したがって、前記ストラットの全ストローク領域にて上記した横力に起因して前記ショックアブソーバーにて生ずる摩擦力を低減させることができて、前記ショックアブソーバーの減衰力特性を逐次最適に得ることが可能である。
【0007】
また、本発明の実施に際して、前記アッパーサポートが前記アッパースプリングシートを前記ストラットの周方向にて回転可能に支持する軸受を備えていて、前記位置調整装置により前記コイルスプリングの反力軸線が前記軸受の回動中心近傍を通る位置に移動調整されることも可能である。この場合には、上記した作用効果に加えて、車両の上下動に伴うキングピン軸線回りのモーメントの変動を小さくすることができて、車両上下動による操舵力変化を抑制することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図4は本発明による車両用サスペンション装置の第1実施形態を示していて、この実施形態のサスペンション装置は、転舵車輪に適用されるものであり、車体60に組付けられるアッパーサポート10と、このアッパーサポート10に上端部を支持されナックル22等とによりストラット20を構成するショックアブソーバー21と、このショックアブソーバー21の外周に設けられたロアスプリングシート31とアッパースプリングシート32とコイルスプリング33を備えるとともに、ロアスプリングシート31、アッパースプリングシート32の位置をそれぞれ調整可能な位置調整装置40、50を備えている。
【0009】
アッパーサポート10は、図1及び図2に示したように、車体60にボルト結合される上側ブラケット11及び下側ブラケット12と、下側ブラケット12に固着されているホルダー13と、このホルダー13に支持されている軸受14と、上側ブラケット11と下側ブラケット12の間に収容されている防振ゴム15を備えている。軸受14は、アッパースプリングシート32をストラット20の周方向にて回転可能に支持するためのものであり、防振ゴム15は、ショックアブソーバー21のロッド21bの上端部に固定された円板23の外周縁部を包囲していて、ロッド21bの上端部を弾性的に支持している。
【0010】
ショックアブソーバー21は、それ自体周知のツインチューブ式ガス入りショックアブソーバーであり、作動油を封入した内筒(図示省略)と、この内筒の外周に設けられて作動油と高圧ガスを収容する外筒21aと、内筒内を上室と下室に区画するピストン(図示省略)と、このピストンに組付けられて上室と下室間に作動油の流れを制御して減衰力を発生させる絞り弁(図示省略)と、ピストンに固着されて内筒及び外筒21aの上端部に組付けられたロッドガイド及びパッキンを貫通して外部に突出するロッド21bを備えている。また、ショックアブソーバー21は、ロッド21bの上端部にてアッパーサポート10を介して車体60に組付けられていて、外筒21aの下端部にてナックル22の上端部に組付けられている。
【0011】
ナックル22は、図1に示したように、上端部にて外筒21aの下端部を支持していて、下端部にてロアアーム70を介して車体60に組付けられており、中央部にて車輪Wを軸支している。これにより、ナックル22に軸支された車輪Wは、ショックアブソーバー21及びアッパーサポート10を介して車体60に組付けられていると共に、ロアアーム62を介して車体60に組付けられている。
【0012】
ロアスプリングシート31は、図1及び図3に示したように、コイルスプリング33の下端を受承するものであり、上方に開口したカップ形状に形成されていて、外筒21aを挿通可能な挿通孔31aを有している。また、ロアスプリングシート31は、ストラット20の中間部外周、すなわち、外筒21aの上方部外周に固着したリテーナ41の上面に内周縁部下面を摺動可能に係合されていて、ストラット20に対してショックアブソーバー20の径方向に移動可能に設けられている。
【0013】
アッパースプリングシート32は、図1及び図2に示したように、コイルスプリング33の上端を受承するものであり、下方に開口したカップ形状に形成されていて、ロッド21bを挿通可能な挿通孔32aを有している。また、アッパースプリングシート32は、軸受14に固着されたリテーナ51の下面に内周縁部上面を摺動可能に係合されていて、ストラット20に対してショックアブソーバー21の径方向に移動可能に設けられている。
【0014】
コイルスプリング33は、図1に示したように、ロアスプリングシート31とアッパースプリングシート32の間にてストラット20、すなわち、ショックアブソーバー21の外周に組付けられている。また、コイルスプリング33は、図1に示した標準車高時において、コイルスプリング33の反力軸線RAが、ロアアーム70の軸線LAと車輪Wの軸重の作用線WAとの交点O1及び軸受14の回動中心O2を通る位置、すなわち、ショックアブソーバー21に生ずる曲げモーメントを小さく(望ましくはゼロに)する位置(所定反力軸線の位置)にて、ロアスプリングシート31とアッパースプリングシート32に支持されている。なお、コイルスプリング33の反力軸線RAが、上記した交点O1と回動中心O2を結ぶ線と等しいときにショックアブソーバー21に生じる曲げモーメントはゼロとなる。
【0015】
位置調整装置40は、ロアスプリングシート31の位置をストラット20に対してショックアブソーバー21の径方向にて調整可能であり、図1及び図3に示したように、ロアスプリングシート31の下方に配設されていて、外筒21aの上方部外周に固着したリテーナ41と、このリテーナ41に固着されているボールねじナット42と、このボールねじナット42の図示右方側に設けたゴム43と、ボールねじナット42に螺合されて同ボールねじナット42とによりねじ送り機構を構成するねじ軸44と、このねじ軸44を正逆回転可能なモーター45を備えている。
【0016】
リテーナ41は、環状に形成されていて、ボールねじナット42に対応した部位にショックアブソーバー21の径方向に延びる貫通孔41aが形成されている。ボールねじナット42は、図示左方側にてリテーナ41の外周に固着されており、このリテーナ41と共に、ストラット20に対してショックアブソーバー21の径方向に移動可能なロアスプリングシート31を支持している。
【0017】
ゴム43は、筒状に形成されていて、ボールねじナット42の図示右方側の面とロアスプリングシート31の下面に一体的に設けた突片31bの図示左方側の面の間に介装されており、ロアスプリングシート31の移動時には、ねじ軸44の軸方向にて伸縮可能である。なお、突片31bには、ねじ軸44を挿通するための挿通孔31cが設けられている。
【0018】
ねじ軸44は、その軸心がショックアブソーバー21の径方向となるように配置されていて、ボールねじナット42にボール42aを介して螺進、螺退可能に組付けられており、一端にてモーター45の回転軸に一体的に回転可能かつ一体的に軸方向へ移動可能に連結されている。モーター45は、ねじ軸44を正逆回転させるものであり、ロアスプリングシート31の下面に固着されていて、電気制御装置80により駆動を制御されている。
【0019】
位置調整装置50は、アッパースプリングシート32の位置をストラット20に対してショックアブソーバー20の径方向にて調整可能であり、図2に示したように、アッパースプリングシート32の上方に配設されていて、軸受14に支持されているリテーナ51と、このリテーナ51に固着されているボールねじナット52と、このボールねじナット52の図示右方側に設けたゴム53と、ボールねじナット52に螺合されて同ボールねじナット52とによりねじ送り機構を構成するねじ軸54と、ねじ軸54を正逆回転可能なモーター55を備えている。
【0020】
リテーナ51は、上部側の円柱の径が下部側の円柱の径よりも小さく中空状に形成されていて、ロッド21bが移動可能に挿通されており、ボールねじナット52に対応した部位にショックアブソーバー21の径方向に延びる貫通孔51aが形成されている。ボールねじナット52は、図示左方側にてリテーナ51の外周に固着されており、このリテーナ51と共に、ストラット20に対してショックアブソーバー21の径方向に移動可能なアッパースプリングシート32を支持している。
【0021】
ゴム53は、筒状に形成されていて、ボールねじナット52の図示右方側の面とアッパースプリングシート32の上面に一体的に設けた突片32bの図示左方側の面の間に介装されており、アッパースプリングシート32の移動時には、ねじ軸54の軸方向にて伸縮可能である。なお、突片32bには、ねじ軸54を挿通するための挿通孔32cが設けられている。
【0022】
ねじ軸55は、その軸心がショックアブソーバー21の径方向となるように配置されていて、ボールねじナット52にボール52aを介して螺進、螺退可能に組付けられており、一端にてモーター54の回転軸に一体的に回転可能かつ一体的に軸方向へ移動可能に連結されている。モーター55は、ねじ軸54を正逆回転させるものであり、アッパースプリングシート32の上面に固着されていて、電気制御装置80により駆動を制御されている。
【0023】
電気制御装置80は、図1に示したように、センサ90により検出されるショックアブソーバー21すなわちストラット20のストローク量に応じて、位置調整装置40、50における各モーター45、55の駆動をそれぞれ制御するものであり、かかる制御により、ストラット20のストローク量に拘わらず、常に、コイルスプリング33の反力軸線RAを所定反力軸線の位置、すなわち、ロアアーム70の軸線LAと車輪Wの軸重の作用線WAとの交点O1を通る位置に移動調整すると共にコイルスプリング33の反力軸線RAを軸受14の回動中心O2近傍を通る位置に移動調整するようにプログラミングされている。なお、センサ90は、車体60に組付けられたロアアーム70の一端部に設けられていて、ロアアーム70の上下動によりストラット20のストローク量を検出するものである。
【0024】
上記のように構成した第1実施形態においては、図1に示した状態から、図4に示したように、ショックアブソーバー21が収縮動作する場合、センサ90により検出されたストラット20のストローク量に応じて、電気制御装置80がモーター45、55を駆動させる。これにより、モーター45,55が、ロアスプリングシート31、アッパースプリングシート32の位置をストラット20に対してショックアブソーバー21の径方向に移動させて、コイルスプリング33の反力軸線RAが、ロアアーム70の軸線LAと車輪Wの軸重の作用線WAとの交点O1を通ると共に、軸受14の回動中心O2近傍を通るように移動調整される。なお、ショックアブソーバー21が図4に示した状態から伸張動作する場合にも同様の作動が得られる。
【0025】
このため、この第1実施形態においては、ストラット20のストローク量に応じて、コイルスプリング33の反力軸線RAの位置を所定反力軸線の位置に調整することが可能であり、ショックアブソーバー21に発生する横力を小さく(望ましくはゼロに)することが可能である。したがって、ストラット20の全ストローク領域にて上記した横力に起因してショックアブソーバー21にて生ずる摩擦力を低減させることができて、ショックアブソーバー21の減衰力特性を逐次最適に得ることが可能である。
【0026】
また、この第1実施形態においては、ストラット20の全ストローク領域にて、コイルスプリング33の反力軸線RAと軸受14の回動中心O2との最短距離の変化を小さくすることが可能である。このため、車両の上下動に伴うキングピン軸KA回りのモーメントの変動が小さく、車両上下動による操舵力変化を抑制することが可能である。
【0027】
上記した第1実施形態においては、車両用サスペンション装置が、ストラット20のストローク量に応じてロアスプリングシート31、アッパースプリングシート32の位置を、ストラット20に対してショックアブソーバー21の径方向にて調整可能な位置調整装置40、50を備えるように構成して、上記した作用効果を得ることができるようにしたが、図5に示した第2実施形態又は図6に示した第3実施形態のように構成して、上記した第1実施形態と同様の作用効果を得ることも可能である。
【0028】
図5に示した第2実施形態においては、車両用サスペンション装置が、ロアスプリングシート131の位置をストラット20に対してショックアブソーバー21の軸方向にて調整可能でショックアブソーバー21の外周に周方向にて等間隔に配設されている複数の下方の位置調整装置140と、アッパースプリングシート(図示省略)の位置をストラット20に対してショックアブソーバー21の軸方向にて調整可能でショックアブソーバー21の外周に周方向にて等間隔に配設されている複数の上方の位置調整装置(図示省略)を備えている。
【0029】
下方の各位置調整装置140は、ストラット20の中間部外周、すなわち、ショックアブソーバー21における外筒21aの上方部外周に固着したリテーナ141と、このリテーナ141に固着されているボールねじナット142と、このボールねじナット142の下方に設けたゴム143と、ボールねじナット142に螺合されて同ボールねじナット142とによりねじ送り機構を構成するねじ軸144と、このねじ軸144を正逆回転可能なモーター145を備えている。
【0030】
リテーナ141は、環状に形成されていて、ボールねじナット142に対応した部位にショックアブソーバー21の軸方向に延びる貫通孔141aが形成されており、外周にはロアスプリングシート131の下端面に一体的に設けた筒部131aがショックアブソーバー21の軸方向に移動可能に組付けられている。ゴム143は、筒状に形成されていて、ボールねじナット142の下面とロアスプリングシート131の筒部131a内周に一体的に設けた突片131bの上面間に介装されており、ロアスプリングシート131の移動時には、ねじ軸144の軸方向にて伸縮可能である。なお、突片131bには、ねじ軸144を挿通するための挿通孔131cが設けられている。
【0031】
ねじ軸144は、その軸心がショックアブソーバー21の軸方向となるように配置されていて、ボールねじナット142にボール142aを介して螺進、螺退可能に組付けられており、一端にてモーター145の回転軸に一体的に回転可能かつ一体的に軸方向へ移動可能に連結されている。モーター145は、ねじ軸144を正逆回転させるものであり、ロアスプリングシート131の筒部131aの内周面に固着されていて、電気制御装置(図示省略)により駆動を制御されている。なお、アッパースプリングシート(図示省略)の位置をストラット20に対してショックアブソーバー21の軸方向にて調整可能な上方の各位置調整装置(図示省略)の構成は、下方の各位置調整装置140の構成と上下逆で実質的に同じ構成であるため、詳細な説明は省略する。
【0032】
上記のように構成した第2実施形態においては、ショックアブソーバー21の収縮動作又は伸張動作に伴って、ロアスプリングシート131の位置を調整する下方の各位置調整装置140のモーター145が、電気制御装置(図示省略)により駆動を制御される。このため、ねじ軸144がモーター145によって回転されて、ロアスプリングシート131がストラット20に対してショックアブソーバー21の軸方向に移動する。
【0033】
また、これと同時に、アッパースプリングシート(図示省略)の位置を調整する上方の各位置調整装置のモーター(図示省略)が、ショックアブソーバー21の収縮動作又は伸張動作に伴って、電気制御装置(図示省略)により駆動を制御される。このため、ロアスプリングシート131と同様に、アッパースプリングシート(図示省略)がストラット20に対してショックアブソーバー21の軸方向に移動する。
【0034】
これにより、この第2実施形態においても、上記した第1実施形態と同様に、コイルスプリング33の反力軸線RAが、ストラット20のストローク量に応じて、ロアアーム70の軸線LAと車輪Wの軸重の作用線WAとの交点O1を通ると共に、軸受14の回動中心近傍を通るように移動調整することが可能である。したがって、この第2実施形態においても、上記した第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0035】
図6に示した第3実施形態においては、車両用サスペンション装置が、ロアスプリングシート231の位置をストラット20に対してショックアブソーバー21の周方向にて調整可能でロアスプリングシート231の下方に配設されている下方の位置調整装置240と、アッパースプリングシート(図示省略)の位置をストラット20に対してショックアブソーバー21の周方向にて調整可能でアッパースプリングシート(図示省略)の上方に配設されている上方の位置調整装置(図示省略)を備えている。
【0036】
下方の位置調整装置240は、ストラット20の中間部外周、すなわち、ショックアブソーバー21における外筒21bの上方部外周に固着したリテーナ241と、このリテーナ241の外周に固着されてショックアブソーバー21の径方向に延びているサポート242と、このサポート242に組付けられているボールねじナット243と、ボールねじナット243に螺合されて同ボールねじナット243とによりねじ機構を構成するねじ軸244と、このねじ軸244を正逆回転可能なモーター245を備えている。
【0037】
リテーナ241は、環状に形成されていて、上端面にはロアスプリングシート231の下端面がショックアブソーバー21の周方向に移動可能に組付けられている。サポート242は、ボールねじナット243をねじ軸244回りに回転不能かつ図6の点O3を中心として回動可能(傾動可能)に組付けるためのものであり、一対の円弧形状部を備えて図6の左右方向にて二分割可能な取付孔242aを有していて、この取付孔242aにてボールねじナット243を支持している。
【0038】
ねじ軸244は、その軸心がショックアブソーバー21の周方向となるように配置されていて、ボールねじナット243にボール243aを介して螺進、螺退可能に組付けられており、一端にてモーター245の回転軸に一体的に回転可能かつ一体的に軸方向へ移動可能に連結されている。モーター245は、ねじ軸245を正逆回転させるものであり、電気制御装置(図示省略)により駆動を制御されていて、一端にて連結ピン245aを介してロアスプリングシート231の下面に連結ピン245aを中心として回動可能(傾動可能)に組付けられている。なお、アッパープリングシート(図示省略)の位置をストラット20に対してショックアブソーバー21の周方向にて調整可能な上方の位置調整装置(図示省略)の構成は、下方の位置調整装置240の構成と上下逆で実質的に同じ構成であるため、詳細な説明は省略する。
【0039】
上記のように構成した第3実施形態においては、ショックアブソーバー21の収縮動作又は伸張動作に伴って、ロアスプリングシート231の位置を調整する下方の位置調整装置240のモーター244が、電気制御装置(図示省略)により駆動を制御される。このため、ねじ軸244は、モーター245によって回転されてボールねじナット243に対して軸方向へ移動し、モーター245及び連結ピン245aを介してロアスプリングシート231をストラット20に対してショックアブソーバー21の周方向に回転させる。このとき、ロアスプリングシート231の回転に伴って、ボールねじナット233は図6の点O3を中心として回動(傾動)して、ねじ軸244、モーター245は連結ピン245aを中心として回動(傾動)する。
【0040】
また、これと同時に、アッパースプリングシート(図示省略)の位置を調整する上方の位置調整装置のモーター(図示省略)が、ショックアブソーバー21の収縮動作又は伸張動作に伴って、電気制御装置(図示省略)により駆動を制御される。このため、ロアスプリングシート231と同様に、アッパースプリングシート(図示省略)がストラット20に対してショックアブソーバー21の周方向に移動する。
【0041】
これにより、この第3実施形態においても、上記した第1実施形態と同様に、コイルスプリング33の反力軸線RAが、ストラット20のストローク量に応じて、ロアアーム70の軸線LAと車輪Wの軸重の作用線WAとの交点を通ると共に、軸受14の回動中心近傍を通るように移動調整することが可能である。したがって、この第3実施形態においても、上記した第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0042】
また、上記した各実施形態においては、車両用サスペンション装置が、ストラット20のストローク量に応じてロアスプリングシート、アッパースプリングシートの位置を、ストラット20に対してショックアブソーバー21の径方向、軸方向、周方向の一方向にて調整可能な位置調整装置を備える構成として実施したが、ショックアブソーバー20の径方向、軸方向、周方向の一方向にて調整可能な位置調整装置をいずれか二つを組み合わせて(径方向と軸方向、径方向と周方向、軸方向と周方向)、又は三つ全てを組み合わせて(径方向と軸方向と周方向)、すなわち、ロアスプリングシート、アッパースプリングシートの位置を、ストラット20に対してショックアブソーバー21の径方向、軸方向、周方向の二又は三方向にて調整可能な位置調整装置を備える構成として実施することも可能である。
【0043】
また、上記した各実施形態においては、車両用サスペンション装置が、ロアスプリングシートの位置を調整可能な下方の位置調整装置とアッパースプリングシートの位置を調整可能な上方の位置調整装置を備える構成として実施したが、下方の位置調整装置のみ又は上方の位置調整装置のみを備える構成として実施することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明による車両用サスペンション装置の第1実施形態を示した正面図である。
【図2】図1に示したアッパーサポートとアッパースプリングシートと位置調整装置の関係を示した部分縦断拡大断面図である。
【図3】図1に示したロアスプリングシートと位置調整装置の関係を示した部分縦断拡大断面図である。
【図4】図1に示した第1実施形態の車両用サスペンション装置のショックアブソーバーが収縮動作する場合の作動説明図である。
【図5】本発明による車両用サスペンション装置の第2実施形態を示した図3相当の部分縦断拡大断面図である。
【図6】本発明による車両用サスペンション装置の第3実施形態を示したロアスプリングシートと位置調整装置の関係を示す部分破断拡大底面図である。
【符号の説明】
【0045】
10…アッパーサポート、11…上側ブラケット、12…下側ブラケット、13…ホルダー、14…軸受、15…防振ゴム、20…ストラット、21…ショックアブソーバー、21a…外筒、21b…ロッド、22…ナックル、23…円板、31…ロアスプリングシート、32…アッパースプリングシート、33…コイルスプリング、40,50…位置調整装置、41,51…リテーナ、42,52…ボールねじナット、43,53…ゴム、44,54…ねじ軸、45,55…モーター、60…車体、70…ロアアーム、80…電気制御装置、90…センサ、W…車輪、KA…キングピン軸、RA…コイルスプリングの反力軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を回転可能に支持しショックアブソーバーを備えるストラットが上端部にてアッパーサポートを介して車体に支持されていて、前記ストラットの中間部外周に設けられたロアスプリングシートと、前記ストラットの上端部外周に設けられたアッパースプリングシートとの間にて前記ストラットの外周にコイルスプリングが組付けられている車両用サスペンション装置において、前記ストラットのストローク量に応じて前記ロアスプリングシート、前記アッパースプリングシートの位置の少なくとも一方を、前記ストラットに対して前記ショックアブソーバーの径方向、前記ショックアブソーバーの軸方向、前記ショックアブソーバーの周方向の少なくとも一方向にて調整可能な位置調整装置を設け、この位置調整装置により前記コイルスプリングの反力軸線を所定反力軸線位置に移動調整可能としたことを特徴とする車両用サスペンション装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用サスペンション装置において、前記アッパーサポートが前記アッパースプリングシートを前記ストラットの周方向にて回転可能に支持する軸受を備えていて、前記位置調整装置により前記コイルスプリングの反力軸線が前記軸受の回動中心近傍を通る位置に移動調整可能であることを特徴とする車両用サスペンション装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用サスペンション装置において、前記位置調整装置は、ねじ軸を有して同ねじ軸の回転により前記ストラットに対して前記ロアスプリングシート、前記アッパースプリングシートの少なくとも一方を移動可能なねじ送り機構と、前記ねじ軸を正逆回転可能なモーターを備えていて、前記モーターは、センサにより検出される前記ストラットのストローク量に応じて電気制御装置により駆動を制御されるように構成されていることを特徴とする車両用サスペンション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−247184(P2008−247184A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−90615(P2007−90615)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】