説明

車両用トリム部品の製造方法と車両用トリム部品

【課題】紐状片を予めカバーリップの裏面側に付帯させておくことを前提としつつ、シボ加工等の加飾を施す際に紐状片に相当する部分において加飾が不均一または不鮮明にならないように工夫された製造方法を提供する。
【解決手段】紐状片10をウエルト部2に対し狭窄部14を介してと一体に成形しておき、その状態でカバーリップ3の表面側の意匠面9にシボ付け加工を施す。続いて、加硫前にカバーリップ3を撓ませ、その裏面を紐状片10に当接させて接合した上で加硫を施す。加硫後にウエルト部2側の狭窄部14に剥がし治具を差し込んで切り離し、紐状片10をカバーリップ3の裏面に付帯させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体開口縁部等に装着されるカバーリップ付きの車両用トリム部品、例えば車体開口縁部のいわゆる縁飾りとして用いられるウエルトボデイサイドやサイドウインドウ等の車体開口縁部に装着されるウエザーストリップに代表される長尺なトリム部品の製造方法と車両用トリム部品に関する。
【0002】
より詳しくは、例えば正規取付状態でカバーリップが上側となるように内装材等の端縁と重なり合うべきところ、工順によってはカバーリップと内装材等の端縁との上下関係が逆にならざるを得ない場合に、事後的にカバーリップと内装材等の端縁との上下関係を反転させることができるように、予めカバーリップの裏面に紐状片を付帯させてあるタイプの車両用トリム部品の製造方法と車両用トリム部品に関するものである。
【背景技術】
【0003】
この種の技術としては、例えば特許文献1に記載されているように、取付基部として機能することになるウエルト部や中空シール部とともに一体成形されたカバーリップ(装飾リップあるいは覆いリップとも称される)の内側に紐状片を一体に成形したもののほか、特許文献2に記載されているように、ウエルト部のうちカバーリップと対面することになる一方の側壁外側面に紐状片を一体に成形したものが知られている。
【特許文献1】特開平11−78541号公報
【特許文献2】特開2004−114973号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に代表されるように、カバーリップの裏面に紐状片を付帯させたタイプのものでは、カバーリップそのものの機能よりしてその意匠面にシボ加工を施して加飾を施すことが行われるが、カバーリップの裏面に紐状片が付帯しているとシボ模様が均一に転写されないことがあり、その調整に多大な工数を要することになる。より具体的には、上記のようなシボ加工は、カバーリップの裏面を支えローラにてバックアップしつつそれとは反対側の意匠面にシボ付けローラを押し付けて、そのシボ付けローラ側のシボ模様をカバーリップ側に転写させることになるが、カバーリップの裏面の紐状片を避けるために支えローラにはその紐状片を受容する溝部を形成する必要がある。そして、支えローラ側に溝部があるとその部分ではシボ付けローラの押圧力がカバーリップに十分に及ばずに、シボ模様が不均一または不鮮明となることから、見栄えの向上が図れないだけでなく、シボ模様の均一化のための調整に多大な工数を要することになる。
【0005】
その一方、特許文献2に代表されるように、ウエルト部のうちカバーリップと対面することになる一方の側壁外側面に紐状片を一体に成形したタイプのものでは、上記のようなシボ加工時における不具合は解消されるもの、カバーリップを反転させるに際して紐状片を引き出す方向に著しい制限が生じ、作業に際して細心の注意を払う必要があることから、とかく熟練作業者に頼らざるを得なくなる。したがって、紐状片はウエルト部側ではなく、特許文献1に記載されているようにカバーリップの裏面側に付帯させておくことが望ましい。
【0006】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、紐状片を予めカバーリップの裏面側に付帯させておくことを前提としつつ、シボ加工等の加飾を施す際に紐状片に相当する部分において加飾が不均一または不鮮明にならないように工夫された車両用トリム部品の製造方法と車両用トリム部品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、断面略U字状のウエルト部から一体的に突出形成されたカバーリップの裏面側に紐状片を備えてなる長尺な車両用トリム部品を製造する方法として、一方の側壁外側面に紐状片が一体的に付帯した形状をもってウエルト部をカバーリップとともに押出成形してトリム成形体とする工程と、トリム成形体のうち予備成形カバーリップの裏面側を受け治具で支えた状態で、その裏面と反対側のカバーリップの意匠面を加飾治具で押圧して当該意匠面に加飾を施す工程と、加飾が施されたカバーリップをウエルト部のうち紐状片が付帯している側壁外側面側に撓ませて、カバーリップの裏面を紐状片に当接させて両者を接合する工程と、カバーリップの裏面と紐状片とが接合されている状態でトリム成形体に加硫または冷却を施す工程と、を含んでいることを特徴とする。
【0008】
ここに言うトリム部品には、いわゆるウエルトボデイサイドと称されるもののように、断面略U字状のウエルト部から一体的にカバーリップが突出形成されたタイプのもののほか、サイドウインドウ等の車体開口縁部に装着されるウエザーストリップのように、カバーリップに加えて中空状あるいは舌片状のシールリップが一体に突出形成されたタイプのものも含むものである。
【0009】
そして、トリム部品がゴム系材料製のものである場合には、カバーリップの裏面と紐状片とが接合されている状態でトリム成形体に加硫を施すことで、そのトリム成形体の断面形状をいわゆる凍結させることになるが、トリム部品が熱可塑性エラストマー等の樹脂製のものである場合には周知のように加硫は不要であり、代わって水槽等を通すことによる冷却を施して、トリム成形体の断面形状を凍結させればよい。
【0010】
また、加飾としては、後述するシボ加工のほか、例えば装飾のための布等の異材質の表皮材を圧着方式にて貼着する加工であっても良い。
【0011】
この場合において、請求項2に記載のように、カバーリップの裏面と紐状片とを一旦接合した後に、紐状片をウエルト部の一方の側壁外側面から切り離して、当該紐状片をカバーリップの裏面のみに付帯させる工程を含んでいることが望ましい。
【0012】
より望ましくは、請求項3に記載のように、加硫または冷却を施した後に、紐状片をウエルト部の一方の側壁外側面から切り離して、当該紐状片をカバーリップの裏面のみに付帯させる工程を含んでいるものとする。
【0013】
その理由は、加硫または冷却を施す前に紐状片をウエルト部の一方の側壁外側面から切り離してしまうと、紐状片がカバーリップの裏面から脱落しまう可能性があるからである。
【0014】
また、カバーリップの意匠面に対する加飾は、例えば請求項4に記載のようにシボ加工とし、トリム成形体自体が押出成形されるものであることを考慮すると、その加飾を司る受け治具および加飾治具を共にローラ状のものとし、押出成形に同期して連続的にシボ加工を施すものとする。
【0015】
カバーリップの裏面を紐状片に当接させて両者を接合するに際しては、請求項5に記載のように、加飾が施されたカバーリップをローラ式の圧着治具にてウエルト部のうち紐状片が付帯している側壁外側面側に撓ませるものとする。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の技術をトリム部品そのものとして捉えたものであって、一方の側壁外側面に紐状片が一体的に付帯した形状をもってウエルト部が成形されていて、そのウエルト部と一体的に成形されたカバーリップのうち意匠面として機能する表面にはシボ加工による加飾が施されているとともに、カバーリップの裏面が紐状片に接合されていることを特徴とする。
【0017】
さらに、請求項7に記載の発明は、請求項2または3に記載の技術をトリム部品そのものとして捉えたものであって、一方の側壁外側面に紐状片が一体的に付帯した形状をもってウエルト部が成形されていて、そのウエルト部と一体的に成形されたカバーリップのうち意匠面として機能する表面にはシボ加工による加飾が施されているとともに、カバーリップの裏面が紐状片に接合されていて、紐状片をウエルト部の一方の側壁外側面から事後的に切り離すことで、当該紐状片をカバーリップの裏面に付帯させてあることを特徴とする。
【0018】
したがって、少なくとも請求項1に記載の発明では、カバーリップに対してシボ加工等の加飾を施す際には、紐状片はカバーリップ側ではなくウエルト部の一方の側壁に付帯していて、カバーリップ側には加飾に際して障害となるものが付帯していないことになるので、カバーリップの意匠面全面に対して均等にシボ模様等の加飾を施すことが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1,6に記載の発明によれば、紐状片は最終的にはカバーリップの裏面側に付帯することになるものの、カバーリップに対して加飾を施す際には、紐状片はカバーリップ側ではなくウエルト部の一方の側壁に付帯していて、カバーリップ側には加飾に際して障害となるものが付帯していないことになるので、カバーリップの意匠面全面に対して均等に加飾を施すことが可能となる。したがって、加飾本来の見栄えが一段と向上するとともに、加飾のための作業をスムーズにしかも安定して行える。
【0020】
請求項2,7に記載の発明によれば、製造段階で紐状片をウエルト部の一方の側壁外側面から切り離しておくことにより、車体への組付作業時に切り離す必要がなく、組付作業性が向上する。また、加硫を施す前に紐状片をウエルト部の一方の側壁外側面から切り離してしまうと、紐状片がカバーリップの裏面から脱落しまう可能性があるが、請求項3に記載の発明によれば、そのような不具合も解消することができる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、加飾を司る受け治具および加飾治具を共にローラ状のものとしたことにより、押出成形に同期して連続的にシボ加工を施すことが可能であり、加飾のための作業をスムーズにしかも安定して行え、生産性の向上にも寄与できるようになる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、加飾が施されたカバーリップをローラ式の圧着治具にてウエルト部のうち紐状片が付帯している側壁外側面側に撓ませるようにしたので、この場合にもまた押出成形に同期して連続的に、カバーリップの裏面を紐状片に当接させることが可能であり、その作業をスムーズにしかも安定して行え、生産性の向上にも寄与できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1以下の図面は本発明のより具体的な実施の形態を示す図で、長尺なトリム部品としてサイドウインドウ等の車体開口縁部に装着されるウエザーストリップ1の例を示している。
【0024】
図1に示すように、ウエザーストリップ1は、取付基部として機能することになる断面略U字状のウエルト部2と、このウエルト部2の底部2a側から一体的に突出していて、ウエルト部2のうち一方の側壁2bの外側面と対面するように湾曲形成された舌片状のカバーリップ3と、同じくウエルト部2における底部2aの外側面と他方の側壁2cの外側面とにまたがるようにカバーリップ3とは反対側に向けて突出形成された中空シールリップ4とを備えている。
【0025】
ウエルト部2には金属製または非金属製の芯材5が埋設されているとともに、そのウエルト部2の内周面には斜状の複数の保持リップ7,8が突設されている。そして、ウエルト部2のうちその底部2aの外側面からカバーリップ3の表面側にまたがる部分が意匠面9となっていて、その意匠面9には後述するようにシボ加工をもってシボ模様による加飾が施されている。同時に、カバーリップ3の先端部側の裏面には、切り離しやすいように考慮された狭窄部10aを介して断面円形状の紐状片10が接合されて付帯している。なお、カバーリップ3を含むウエルト部2が例えばEPDM系ゴム材料のソリッド材または微発泡ソリッド材で形成されている場合には、意匠面9はウエルト部2側と同じ材質のものに着色を施した材料にて形成されている。
【0026】
紐状片10の詳細については後述するが、この紐状片10は当初はウエルト部2における一方の側壁2bの外側面に付帯した状態でウエルト部2と一体成形された上で、事後的にその一方の側壁2bの外側面から切り離されて成形されたものであり、それがためにその一方の側壁2bの外側面には紐状片10を切り離した痕跡Qが残存している。
【0027】
他方、中空シールリップ4はウエルト部2とは材質が異なっていて、例えばウエルト部2がEPDM系ゴム材料のソリッド材または微発泡ソリッド材で形成されている場合には、中空シールリップ4はウエルト部2よりも軟質の材料、例えばEPDM系ゴム材料のスポンジ材で形成されているとともに、その中空シールリップ4の内部には隔壁11が設けられている。これにより、中空シールリップ4の内部が二つの中空部11a,11bに隔離形成されている。
【0028】
図2は図1に示したウエザーストリップ1の製造工程の概略を示しており、一般的には、同図に示すように押出成形、加硫成形、ベンダー加工および裁断の各工程を備えているものであるが、本実施の形態では、押出成形工程の主要素である押出機12の口金13の出口側(直後)にシボ付けおよび圧着の各工程をそれぞれ設定してあるとともに、加硫成形工程の直後に切り離しの工程を設定してある。
【0029】
図2の押出成形工程では、押出機12の口金(ダイス)13から多重押出成形の形態で図3の(A)に示した断面形状をもって製品であるウエザーストリップ1の予備成形体としてトリム成形体1Aが押出成形される。すなわち、芯材5が埋設されたウエルト部2とカバーリップ3および中空シールリップ4とが一体化されたトリム成形体1Aが押出成形される。この場合において、ウエルト部2における一方の側壁2bの外側面に紐状片10が付帯した状態で一体的に押出成形される。紐状片10は事後的にその一方の側壁2bの外側面から切り離しやすいように狭窄部14を介して付帯している。そして、図1と図3の(A)とを比較すると明らかなように、トリム成形体1Aではウエルト部2が図1のものより開き加減気味に成形されるとともに、カバーリップ3も図1のように湾曲せずに比較的フラットな形状のものとして成形される。
【0030】
図2において、押出成形工程の後段のシボ付け工程には、図3の(A)に示すように受け治具としてのバックアップローラ15と加飾治具としてのシボ付けローラ16が対をなして用意されていて、これらのバックアップローラ15およびシボ付けローラ16は口金13に支持されている。なお、バックアップローラ15はウエルト部2やそれに付帯している紐状片10と干渉しないような傾斜姿勢となっている。バックアップローラ15の外周面が例えば単純な球状面であるのに対して、シボ付けローラ16のうちシボ加工面として機能することになる外周面には、例えばレザー、布目模様、木模様等の模様を付した微細な凹凸のある表面状態のシボ模様となっている。
【0031】
そして、押出成形直後のトリム成形体1Aをバックアップローラ15とシボ付けローラ16との間に通して双方のローラ15,16を転動させながら、シボ付けローラ16をウエルト部2とカバーリップ3とにまたがる意匠面9に押し付けると、シボ付けローラ16側のシボ模様が意匠面9側に転写されて、所定の加飾または意匠効果が付与される。この場合、ウエルト部2側には剛性のある芯材5が埋設されているので、シボ付けローラ16の押し付け力はその芯材5が負担することになるとともに、カバーリップ3側ではシボ付けローラ16の押し付け力は十分に剛性のあるバックアップローラ15が負担する。これにより、ウエルト部2の底部2aからカバーリップ3にまたがる意匠面9には、図4に示すようにいわゆる「むら」のない均一且つ鮮明なシボ模様が付与される。
【0032】
ここで、先の特許文献1にされた従来の技術のように、カバーリップ3の裏面に予め紐状片10Aが付帯していると、図5に示すようにバックアップローラ15には紐状片10Aを受容するための周溝15aを予め形成しておく必要がある。そして、この周溝15aがあるために、周溝15aに相当する部分ではシボ付けローラ16の押し付け力がカバーリップ3に十分に及ばず、先に述べたようにカバーリップ3側に転写されるシボ模様が不均一または不鮮明となってしまうことになる。
【0033】
図2のシボ加工工程の直後の圧着工程には、図3の(B)に示すようにトリム成形体1Aの長手方向において圧着治具として複数の圧着ローラ17が並設されていて、トリム成形体1Aの進行方向前方側に位置するものほどそのトリム成形体1Aとのなす距離が小さくなるように設定されている。これらの圧着ローラ17も押出機12の口金13に支持されている。
【0034】
そして、図3の(A)のような断面形状をもってシボ加工工程を通過したトリム成形体1Aが圧着工程に至ると、カバーリップ3が圧着ローラ17に接触して、同図(B)に示すようにカバーリップ3がウエルト部2の一方の側壁2b側に向けて湾曲せしめられる。このカバーリップ3の湾曲に伴いカバーリップ3の先端部の裏面が、ウエルト部2側に予め付帯している紐状片10に押し付けられて、ウエルト部2における一方の側壁2bの外側面に予め一体成形されている紐状片10は同時にカバーリップ3の裏面に対しても図1狭窄部10aを介して接合されることになり、以降はその状態(図6の状態)を自己保持することになる。
【0035】
この場合において、複数の圧着ローラ17は口金13に安定的に支持されているため、紐状片10に対するカバーリップ3の接合位置がばらつきを生じることなく、位置精度が安定したものとなる。
【0036】
こうして圧着工程を経たトリム成形体1Aは、その後段の図2の加硫成形工程において加硫槽を通過することにより加硫が施される。この加硫処理を終えた段階でもウエルト部2における一方の側壁2bの外側面に予め一体成形されている紐状片10は同時にカバーリップ3の裏面に対しても接合されたままであるが、加硫を施すことで全体としての断面形状が凍結されるとともに、紐状片10の接合がより強固なものとなる。
【0037】
図2の加硫工程を通過したトリム成形体1Aはその後段の切り離し工程に入ることになる。切り離し工程には図6に示すように例えばナイフエッジ状の剥がし治具18が用意されていて、移動中のトリム成形体1Aのうちウエルト部2における一方の側壁2bと紐状片10との間の狭窄部14(図3参照)にその剥がし治具18を差し込んで、長手方向での相対移動により紐状片10をウエルト部2の一方の側壁2bから切り離す。これにより、図1に示すようにウエルト部2における一方の側壁2b側に痕跡Qを残して、紐状片10は同図に示すようにカバーリップ3の裏面にのみ付帯することになる。
【0038】
こうして図2の切り離し工程を経たトリム成形体1Aはその後段のベンダー加工および裁断の各工程を経ることで所定の加工が施されて、図1の断面形状をもって製品としてのウエザーストリップ1に仕上げられることになる。
【0039】
このように本実施の形態によれば、加硫成形工程を経るまでは紐状片10がウエルト部2側に付帯しているために、カバーリップ3の表面側に相当する意匠面9には綺麗で且つ鮮明なシボ模様を転写成形することができるとともに、製品となった段階では紐状片10をカバーリップ3の裏面に付帯させることができる。
【0040】
ここで、上記実施の形態ではゴム系材料製のウエザーストリップ1を例にとって説明したが、例えば熱可塑性エラストマーに代表されるような樹脂製のウエザーストリップ1等のトリム部品にも本発明を適用することができる。
【0041】
例えば図1に示したウエザーストリップ1が樹脂製のものである場合、カバーリップ3を含むウエルト部2が例えばオレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系エラストマーのソリッド材または微発泡材にて形成されるのに対して、中空シールリップ4がオレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系エラストマーの発泡材または低硬度のソリッド材にて形成され、さらに意匠面9がオレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系エラストマーのソリッド材にて形成される。
【0042】
このような樹脂製のウエザーストリップ1を成形する場合にも基本的な製造工程は図2に示したものと同様であるものの、同図に示した加硫成形工程に代えて冷却工程を設けるものとする。そして、この冷却工程では、例えば冷却水を貯留した冷却槽を用意し、圧着工程を経たトリム成形体1Aがその冷却槽を通過することで冷却されて、その断面形状が凍結されるようにすれば良い。
【0043】
また、上記のように製造されたウエザーストリップ1の組み付けの際には、図7に示すように例えば相手側パネルPのフランジ部Fに対するウエザーストリップ1の取り付けを先に行い、その後からウエザーストリップ1に端部が隣接することになるガーニッシュ等の内装材Rの取り付けを行う場合、符号eで示すようにカバーリップ3が内装材Rの上のラップせずに本来の機能を発揮し得ないことになる。そこで、カバーリップ3の裏面に付帯している紐状片10(図1参照)の端部を掴んで、その紐状片を狭窄部10から切り離すようにして引き上げれば、カバーリップ3が順次反転して、実線で示すように内装材Rの上に乗り上げてラップし、その内装材Rの端部を、シボ模様をもって加飾が施された意匠面9にて隠蔽することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る長尺なトリム部品の一例としてウエザーストリップの形状を示す断面図。
【図2】図1に示したウエザーストリップの製造工程の概略を示す説明図。
【図3】(A)は図2のシボ付け工程における加工状態を示す断面説明図、(B)は図2の圧着工程における加工状態を示す断面説明図。
【図4】シボ付け加工後のウエザーストリップの状態を示す要部斜視図。
【図5】参考例として従来のシボ付け加工状態を示す断面説明図。
【図6】図2の切り離し工程における加工状態を示す断面説明図。
【図7】ウエザーストリップに付帯している紐状片の機能示す説明図。
【符号の説明】
【0045】
1…ウエザーストリップ(長尺なトリム部品)
1A…トリム成形体
2…ウエルト部
2b…一方の側壁
2c…他方の側壁
3…カバーリップ
4…中空シールリップ
5…芯材
9…意匠面
10…紐状片
10a…狭窄部
14…狭窄部
15…バックアップローラ(受け治具)
16…シボ付けローラ(加飾治具)
17…圧着ローラ(圧着治具)
18…剥がし治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面略U字状のウエルト部から一体的に突出形成されたカバーリップの裏面側に紐状片を備えてなる長尺な車両用トリム部品を製造する方法であって、
一方の側壁外側面に紐状片が一体的に付帯した形状をもってウエルト部をカバーリップとともに押出成形してトリム成形体とする工程と、
トリム成形体のうちカバーリップの裏面側を受け治具で支えた状態で、その裏面と反対側のカバーリップの意匠面を加飾治具で押圧して当該意匠面に加飾を施す工程と、
加飾が施されたカバーリップをウエルト部のうち紐状片が付帯している側壁外側面側に撓ませて、カバーリップの裏面を紐状片に当接させて両者を接合する工程と、
カバーリップの裏面と紐状片とが接合されている状態でトリム成形体に加硫または冷却を施す工程と、
を含むことを特徴とする車両用トリム部品の製造方法。
【請求項2】
カバーリップの裏面と紐状片とを一旦接合した後に、紐状片をウエルト部の一方の側壁外側面から切り離して、当該紐状片をカバーリップの裏面のみに付帯させる工程を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の車両用トリム部品の製造方法。
【請求項3】
加硫または冷却を施した後に、紐状片をウエルト部の一方の側壁外側面から切り離して、当該紐状片をカバーリップの裏面のみに付帯させる工程を含んでいることを特徴とする請求項2に記載の車両用トリム部品の製造方法。
【請求項4】
カバーリップの意匠面に対する加飾がシボ加工であって、その加飾を司る受け治具および加飾治具が共にローラ状のものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両用トリム部品の製造方法。
【請求項5】
カバーリップの裏面を紐状片に当接させて両者を接合するに際し、加飾が施されたカバーリップをローラ式の圧着治具にてウエルト部のうち紐状片が付帯している側壁外側面側に撓ませることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車両用トリム部品の製造方法。
【請求項6】
断面略U字状のウエルト部から一体的に突出形成されたカバーリップの裏面側に紐状片を備えてなる長尺な車両用トリム部品であって、
一方の側壁外側面に紐状片が一体的に付帯した形状をもってウエルト部が成形されていて、
そのウエルト部と一体的に成形されたカバーリップのうち意匠面として機能する表面にはシボ加工による加飾が施されているとともに、
カバーリップの裏面が紐状片に接合されていることを特徴とする車両用トリム部品。
【請求項7】
断面略U字状のウエルト部から一体的に突出形成されたカバーリップの裏面側に紐状片を備えてなる長尺な車両用トリム部品であって、
一方の側壁外側面に紐状片が一体的に付帯した形状をもってウエルト部が成形されていて、
そのウエルト部と一体的に成形されたカバーリップのうち意匠面として機能する表面にはシボ加工による加飾が施されているとともに、
カバーリップの裏面が紐状片に接合されていて、
紐状片をウエルト部の一方の側壁外側面から事後的に切り離すことで、当該紐状片をカバーリップの裏面に付帯させてあることを特徴とする車両用トリム部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−202798(P2009−202798A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48967(P2008−48967)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000158840)鬼怒川ゴム工業株式会社 (171)
【Fターム(参考)】