説明

車両用バッテリユニットの取付構造

【課題】車両用バッテリユニットの取付構造に関し、簡素な構成で、車両の操縦安定性を確保しつつバッテリケースの保護性を向上させる。
【解決手段】
ブラケット2を介してバッテリケース1を車体フレーム3に固定する車両用バッテリユニットの取付構造において、バッテリケース1の周面10に、水平方向に延びて設けられるブラケット2を固定する。また、ブラケット2に、その上面をなす第一上面部2a及び第二上面部2bと、その下面をなす下面部2cと、固定面部2dとを設ける。第二上面部2bは第一上面部2aよりもバッテリケース1側の上面をなす部位とする。
第二上面部2bと下面部2cとを固定面部2dで接続し、バッテリケース1に対して面接触させる。また、第一上面部2aと第二上面部2bとの間に脆弱部4を設け、荷重作用時に第一上面部2aを第二上面部2bに対して水平方向へ移動変形させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用バッテリユニットを車体に取り付けるための取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車やハイブリッドカーといった電気エネルギーを利用した走行が可能な車両において、車体フレームの下方から走行用バッテリユニットを取り付ける構造が知られている。すなわち、レイアウトの制限の少ない車体フレームの下面側に大型のバッテリユニットを固定して、バッテリ体積を確保したものである。
例えば特許文献1には、図7に示すように、バッテリケース21の左右両側方から桁部材22を水平に突出させ、その上面23をサイドメンバ24の下面25に固定する構造が示されている。ここでは、バッテリケース21がその上端面よりも低い位置でサイドメンバ24に固定され、一対のサイドメンバ24間に配置される。また、桁部材22は一対のサイドメンバ24間にわたって設けられ、クロスメンバに相当する剛性部材として機能する。このような構成により車体剛性が向上し、操縦安定性を向上させることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−83597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の取付構造では、サイドメンバ24に対して固定される桁部材22の上面23が車幅方向に水平であるため、車両側方から入力される荷重が直接的にバッテリケース21に入力されやすい。そのため、高剛性,高強度の樹脂や金属等でバッテリケース21の全体を補強する必要があり、コストダウンが困難であるという課題がある。
一方、サイドメンバ24とバッテリケース21とを構造的に剛に結合しなければ、車体剛性が低下し、操縦安定性が低下するおそれがある。特に、電気エネルギーのみを利用して走行する電気自動車や燃料電池車には、質量が数百kg以上のバッテリを搭載するものもあり、バッテリケース21のぐらつきが操縦安定性に大きな影響を与える可能性がある。
【0005】
このように、従来の車両用バッテリユニットの取付構造では、車体とバッテリユニットとの間の剛性設定が難しいという課題がある。
本件の目的の一つは、このような課題に鑑み創案されたもので、簡素な構成で、車両の操縦安定性を確保しつつバッテリケースの保護性を向上させることである。
なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的として位置づけることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の車両用バッテリユニットの取付構造は、車両に搭載されるバッテリケースと、該バッテリケースの周面に固定され、水平方向に延びて設けられるブラケットと、該ブラケットを固定する車体フレームとを備え、該ブラケットが、該ブラケットの上面をなし、該車体フレームの下面に固定される第一上面部と、該第一上面部よりも該バッテリケース側において該ブラケットの上面をなす第二上面部と、該ブラケットの下面をなす下面部と、該第二上面部及び該下面部間を接続して設けられ、該バッテリケースに対して面接触した状態で固定される固定面部と、該第一上面部及び該第二上面部間に設けられるとともに、荷重作用時における該第一上面部の該第二上面部に対する水平方向への移動変形を許容する脆弱部とを有することを特徴としている。
【0007】
また、開示の車両用バッテリユニットの取付構造は、該第一上面部と該第二上面部とが上下方向にオフセットして設けられることを特徴としている。
また、開示の車両用バッテリユニットの取付構造は、該第二上面部が、該第一上面部よりも下方に配置されていることを特徴としている。
また、開示の車両用バッテリユニットの取付構造は、該第二上面部における該バッテリケース側の端部において上方へ向けて屈曲形成され、該第二上面部よりも上方で該バッテリケースに固定される屈曲面部をさらに備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
開示の車両用バッテリユニットの取付構造によれば、バッテリケースをブラケットの固定面部の全体に面接触させることにより水平方向の安定性を向上させつつ、脆弱部を設けることにより過大な水平荷重の入力時にブラケット上面を水平方向に移動変形させて、バッテリケース側へ伝達される荷重を減少させることができる。これにより、車両の操縦安定性を確保しつつバッテリケースの保護性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施形態に係る車両用バッテリユニットの取付構造を示す斜視図である。
【図2】図1のバッテリユニットの構造を示す分解斜視図である。
【図3】図2のバッテリユニットに固定されるブラケットの斜視図である。
【図4】図2のバッテリユニットにおけるブラケットの断面図であり、(a)はブラケットの突出方向に沿った切断面での縦断面図〔図3のA−A断面図〕であり、(b)はブラケットの突出方向に垂直な平面で切断した縦断面図〔図3のB−B断面図〕である。
【図5】図3のブラケットに水平荷重が作用した場合の変形状態を模式的に示す縦断面図である。
【図6】ブラケットの変形例を示す斜視図であり、(a)はブラケットに凹み部を形成したもの、(b)は屈曲面部を設けたもの、(c)は図3に示すブラケットにおける傾斜面部の勾配を変更したものである。
【図7】従来技術に係る車両用バッテリユニットの取付構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して車両用バッテリユニットの取付構造の実施形態を説明する。ただし、以下に示す実施形態は、あくまでも例示に過ぎず、以下に示す実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。
[1.全体構成]
図1は、一実施形態に係る取付構造が適用されたバッテリユニット6及び車体フレーム8を示している。車体フレーム8はモノコックボデーのサブフレームであり、車両の車長方向(前後方向)に延びる左右一対のサイドメンバ3と、左右のサイドメンバ3間を車幅方向に架け渡される複数のクロスメンバ7とを備えている。一対のサイドメンバ3は車幅方向に離間して配置される。また、クロスメンバ7は左右のサイドメンバ3に対して両端部を溶接固定され、梯子状の構造を形成する。これらのサイドメンバ3及びクロスメンバ7の下面には、締結穴14が穿孔されている。バッテリユニット6は、これらのサイドメンバ3,クロスメンバ7の下面に対して、ボルト,ナット等の締結具で固定される。
【0011】
[2.バッテリユニット]
バッテリユニット6は、バッテリケース1,ブラケット2及びバッテリフレーム5を備えている。バッテリケース1は、強化樹脂や補強用金属プレート等からなる高剛性ケースである。図2に示すように、バッテリケース1は上下方向に二分割形成されており、下側に位置するトレイ部材1aと、上側に位置するカバー部材1bとから構成される。
【0012】
[2−1.バッテリケース]
トレイ部材1aは、上方が開放された容器状にモールド成型された部材である。トレイ部材1aにおける最外周には、その上面が水平に形成された周壁1cが形成されている。周壁1cの上面は、カバー部材1bの下端部に固定される。また、トレイ部材1aの底面には、バッテリケース1の内部に収納されるバッテリモジュールの形状に応じて内部を小部屋に区分けする複数の隔壁1eが設けられている。これらの隔壁1eは、バッテリケース1の剛性を高めるように機能する。
【0013】
カバー部材1bは、下方が開放された容器状にモールド成型された部材である。カバー部材1bの最外周から垂れ下がって設けられた周壁1dの下端面は水平であり、トレイ部材1aの周壁1cの上面と面接触した状態で固定される。これらの周壁1c,1d間には図示しないシール材が介装される。これにより、バッテリケース1の内部の気密性,水密性が確保される。
【0014】
[2−2.バッテリフレーム]
バッテリフレーム5は、トレイ部材1aの下面に固定された強度部材である。図2に示す例では、車長方向に延びるように配置された縦方向バッテリフレーム5aと、車幅方向に延びるように配置された横方向バッテリフレーム5bとがそれぞれ複数本設けられ、これらがトレイ部材1aの下面において格子状に接合されている。縦方向バッテリフレーム5aは車幅方向に切断したときの断面が閉断面であり、横方向バッテリフレーム5bは車長方向に切断したときに断面が閉断面である。また、これらの縦方向バッテリフレーム5a及び横方向バッテリフレーム5bは、トレイ部材1aの周壁1cから突出して設けられる。したがって、バッテリケース1の上面視においてこれらのバッテリフレーム5a,5bの端部はその前後左右にはみ出ている。
【0015】
[2−3.ブラケット]
ブラケット2は、周壁1c,1dから突出した縦方向バッテリフレーム5a及び横方向バッテリフレーム5bの上に固定される部材である。図3では、横方向バッテリフレーム5b上に固定されたブラケット2を例示する。このブラケット2は、五方を閉塞された箱形に形成されており、上面をなす第一上面部2a及び第二上面部2b,下面をなす下面部2c,バッテリケース1に固定される側面をなす固定面部2d,その他の側面をなす一対の側面部2gを有する。
【0016】
第一上面部2aは、サイドメンバ3の下面3aに締結固定される面である。この第一上面部2aには、ボルト等の締結具を通すための締結穴11が形成されている。また、第二上面部2bは、第一上面部2aよりもバッテリケース1側でブラケット2の上面をなす面である。
ここでは、第一上面部2a及び第二上面部2bが上下方向にオフセットして設けられており、ともにほぼ水平に配置されている。第一上面部2a及び第二上面部2bの上下方向の位置のずれ量のことをオフセット量Lと呼ぶ。図4(a)に示すように、第二上面部2bは、側面視において第一上面部2aよりも下方に設けられる。第二上面部2bを第一上面部2aよりも下方に配置することで、第二上面部2bの上方の空間が拡大する。この空間はバッテリケース1に接続されるケーブルや冷却装置などの配置スペースとしての利用が可能である。
【0017】
第一上面部2aにおける第二上面部2b側の辺9aは、第二上面部2bにおける第一上面部2a側の辺9bよりも外側に設けられており、上面視において第一上面部2aと第二上面部2bとが重複しない配置となっている。以下、これらの辺9a,9bのことを屈曲辺9a,9bとも呼ぶ。
第一上面部2aと第二上面部2bとの間(すなわち、二つの屈曲辺9a,9bに挟まれた部位)には、これらを接続する傾斜面部4aが設けられる。傾斜面部4aの面勾配は水平よりも大きく、垂直よりも小さい傾斜である。言い換えると、傾斜面部4aの法線が水平面に対して傾斜している。この傾斜面部4aは、水平方向への荷重作用時における第一上面部2aの第二上面部2bに対する水平方向の移動変形を許容する脆弱部4として機能する。オフセット量Lが大きいほど、水平方向への荷重作用時に屈曲辺9a,9bの近傍での曲げモーメントが増大し、脆弱部4に変形が生じやすくなる。
【0018】
下面部2cは、横方向バッテリフレーム5bの上面に対して面接触した状態で固定された部位である。図4(a),(b)に示すように、下面部2c及び横方向バッテリフレーム5bには、第一上面部2aに形成された締結穴11との対向位置に開口部12が形成されている。この開口部12は、ブラケット2とサイドメンバ3とを締結固定する際の工具挿入口として利用される。
【0019】
固定面部2dは、第二上面部2b及び下面部2c間を鉛直に接続する面である。図4(a)に示すように、固定面部2dはその全体がトレイ部材1aの周面10(周壁1cにおける外部側の側面)と面接触した状態でバッテリケース1に固定されている。また、固定面部2dは第二上面部2bよりもさらに上方へ延長されており、上方に折り曲げられた第二上面部2bの端辺2hがこの延長された固定面部2dに対して固定されている。また、固定面部2dの下端の位置は、横方向バッテリフレーム5bまで達している。
【0020】
一対の側面部2gはブラケット2の他の側面をなす部位であり、第一上面部2a及び第二上面部2bと下面部2cとの間を鉛直に接続する。これらの側面部2gは固定面部2dに対して垂直に配置される。図4(b)に示すように、一対の側面部2g間の距離W1(すなわち、ブラケット2の幅)は、横方向バッテリフレーム5bの幅W2と同一である。
一対の側面部2gの下端には、下面部2cに沿って水平方向に折り曲げられたフランジ部2fが設けられる。フランジ部2fは下面部2cに面接触した状態で固定される。また、図3に示すように、一対の側面部2gの固定面部2d側の端辺2iも、第二上面部2bの端辺2hと同様に固定面部2dに沿って折り曲げられており、固定面部2dに対して面接触した状態で固定される。
【0021】
なお、ブラケット2は縦方向バッテリフレーム5a上にも同様に固定されている。縦方向バッテリフレーム5a上では、ブラケット2の第一上面部2aがクロスメンバ7の下面に対して締結固定される。
【0022】
[3.作用,効果]
上記の構成により、バッテリケース1はブラケット2を介してサイドメンバ3及びクロスメンバ7の双方に対して固定される。ブラケット2の第一上面部2a及び第二上面部2bは傾斜面部4aで接続されるため、各々のブラケット2の突出方向への剛性が確保され、車長方向及び車幅方向の何れの方向に対しても、バッテリケース1が安定して固定される。
【0023】
一方、図4(a)中に黒矢印で示すように、サイドメンバ3からバッテリケース1側へ水平方向の荷重が作用すると、荷重がブラケット2の第一上面部2aへ伝達され、第一上面部2aがバッテリケース1側へ移動しようとする。このとき、第一上面部2aと第二上面部2bとが傾斜面部4aで接続されているため、傾斜面部4aを介して荷重が第二上面部2bから固定面部2dへ伝達され、横方向バッテリフレーム5bへと入力される。また、サイドメンバ3から入力された荷重は、一対の側面部2gを介して下面部2c及び横方向バッテリフレーム5bへと入力される。したがって、例えば第一上面部2aと第二上面部2bとの間が垂直に接続された図7に記載の構造と比較して、バッテリケース1のぐらつきを減少させることができ、車両の操縦安定性を向上させることができる。
【0024】
また、サイドメンバ3からブラケット2へと入力される水平荷重が過大である場合には、図5に示すように、第一上面部2aと傾斜面部4aとの間の屈曲辺9a及び傾斜面部4aと第二上面部2bとの間の屈曲辺9bが折れ曲がり、第一上面部2aが第二上面部2bに対して水平方向に移動する変形がブラケット2に生じる。なお、変形前のブラケット2の輪郭を図5中に破線で示す。この変形により水平方向の荷重が緩和され、サイドメンバ3から入力された荷重よりも小さい荷重がバッテリケース1側へ伝達される。
【0025】
また、この水平荷重は横方向バッテリフレーム5bとトレイ部材1aの反対側の周面10に固定されたブラケット2とを介して、他方のサイドメンバ3へも伝達される。
このように、第一上面部2aと第二上面部2bとの間に脆弱部4を設けることにより、過大な水平荷重の入力時にブラケット2の上面を変形させることができ、バッテリケース1側へ入力される荷重を減少させることができる。特に本実施形態では、第一上面部2aと第二上面部2bとを上下方向にオフセットさせているため、ブラケット2の上面に変形を生じやすくすることができる。
【0026】
また、ブラケット2の固定面部2dの全体にトレイ部材1aの周面10が面接触しているため、バッテリケース1の水平方向の安定性を向上させることができる。
また、ブラケット2の第二上面部2bを第一上面部2aよりも下方に配置することで、ブラケット2の第二上面部2bよりも上方の空間を拡大することができる。これにより、バッテリケース1に接続されるケーブルや冷却装置などの配置スペースをバッテリケース1の周囲に確保することができる。
【0027】
なお、図4(a),(b)に示すように、ブラケット2が閉断面構造の箱形に形成されているため、ブラケット2の剛性及び強度バランスをさらに向上させることができ、ブラケット2の全体の剛性及び強度を確保しつつその上面側における水平変位を許容することができる。
【0028】
[4.変形例等]
変形例としての車両用バッテリユニットの取付構造に係るブラケットを図6(a)〜(c)に示す。なお、上述の実施形態で説明された各構成に対応するものには同一の符号を付して説明を省略する。
【0029】
図6(a)では、ブラケット2の第一上面部2aと第二上面部2bとが同一平面上に配置され、それらの間に一対の凹み部4bが設けられる。凹み部4bとは、第一上面部2a及び第二上面部2bと一対の側面部2gとの間の角部13a,13bをブラケット2の内側に凹ませて形成された部位である。
凹み部4bは、荷重作用時に第一上面部2aの第二上面部2bに対する水平方向への移動変形を許容する脆弱部4として機能する。つまり、上述の実施形態における傾斜面部4aの代わりに凹み部4bが設けられている。これにより、過大な水平荷重の入力時には一対の凹み部4bで挟まれたブラケット2の上面が変形し、第一上面部2aが第二上面部2bに近づく方向へ変形する。したがって、バッテリケース1の固定状態を保持しつつ、バッテリケース1側へ入力される荷重を減少させることができる。
【0030】
図6(b)は、第二上面部2bにおけるバッテリケース1側の端部を上方へ屈曲させて屈曲面部4cを形成し、第二上面部2bよりも上方で固定面部2dに固定させたものである。屈曲面部4cの面勾配は、傾斜面部4aと同様に、水平よりも大きく、垂直よりも小さい傾斜である。言い換えると、屈曲面部4cの法線が水平面に対して傾斜している。屈曲面部4cは、水平方向への荷重作用時に第二上面部2bのバッテリケース1に対する水平方向の移動変形を許容する第二の脆弱部として機能する。
【0031】
このような構成により、バッテリケース1の周面10に対するブラケット2の基端面の高さ寸法Hを増大させることができ、ブラケット2の剛性,強度を高めることができる。また、ブラケット2の上面において脆弱部4が複数箇所に設けられるため、水平荷重に対する変形をさらに生じやすくすることができ、バッテリケース1の保護性を向上させることができる。この場合、オフセット量L1が大きいほど、水平方向への荷重作用時における水平方向への変形のしやすさを高めることができる。
【0032】
図6(c)は、側面視において第二上面部2bを第一上面部2aよりも上方にオフセットさせたものである。このような構成においても、バッテリケース1を確実に保持しつつ、傾斜面部4a及び屈曲面部4cで水平方向の過大な荷重を吸収することができる。この場合、オフセット量L2が大きいほど、水平方向への荷重作用時における水平方向への変形のしやすさを高めることができる。なお、オフセット量L1,L2は、第一上面部2a及び第二上面部2b間に要求される荷重伝達量等に応じて設定することができる。
【0033】
[5.その他]
上述した実施形態の一例及び変形例に関わらず、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。本実施形態及び変形例の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせてもよい。
上述の実施形態では、横方向バッテリフレーム5bの上に固定されるブラケット2を例示したが、縦方向バッテリフレーム5aの上に固定されるブラケット2に同様の構造を適用してもよい。この場合、車両前方から入力される過大な水平荷重のバッテリケース1への伝達量を減少させることができる。なお、縦方向バッテリフレーム5a及び横方向バッテリフレーム5bを持たないバッテリケース1に対する適用も可能である。
【0034】
また、上述の実施形態では、傾斜面部4aが屈曲辺9a,9b間を接続する平面として形成されたものを示したが、傾斜面部4aを曲面として形成してもよい。ブラケット2の各部の具体的な形状は、ブラケット2に要求される剛性,強度等に応じて適宜設定することができる。
また、上述の実施形態及び変形例における傾斜面部4a及び凹み部4bは、ともに第一上面部2a及び第二上面部2bを相対移動させる機能を持つ部位であるが、このような機能を持つ脆弱部4の具体的な形状はこれに限定されない。例えば、板厚を減少させることにより脆弱部4を形成してもよい。
【0035】
また、上述の実施形態では、モノコックボデーのサブフレームにバッテリケース1を取り付ける構造を示したが、例えばラダーフレームにバッテリケース1を固定する構造としてもよい。少なくとも、車体の下面から固定されるブラケット2を介してバッテリケース1を取り付ける車両全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 バッテリケース
1a トレイ部材
1b カバー部材
1c,1d 周壁
1e 隔壁
2 ブラケット
2a 第一上面部
2b 第二上面部
2c 下面部
2d 固定面部
2f フランジ部
2g 側面部
2h,2i 端辺
3 サイドメンバ
3a 下面
4 脆弱部
4a 傾斜面部
4b 凹み部
4c 屈曲面部
5 バッテリフレーム
5a 縦方向バッテリフレーム
5b 横方向バッテリフレーム
6 バッテリユニット
7 クロスメンバ
8 車体フレーム
9a,9b 辺(屈曲辺)
10 周面
11 締結穴
12 開口部
13a,13b 角部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるバッテリケースと、
該バッテリケースの周面に固定され、水平方向に延びて設けられるブラケットと、
該ブラケットを固定する車体フレームとを備え、
該ブラケットが、
該ブラケットの上面をなし、該車体フレームの下面に固定される第一上面部と、
該第一上面部よりも該バッテリケース側において該ブラケットの上面をなす第二上面部と、
該ブラケットの下面をなす下面部と、
該第二上面部及び該下面部間を接続して設けられ、該バッテリケースに対して面接触した状態で固定される固定面部と、
該第一上面部及び該第二上面部間に設けられるとともに、荷重作用時における該第一上面部の該第二上面部に対する水平方向への移動変形を許容する脆弱部とを有する
ことを特徴とする、車両用バッテリユニットの取付構造。
【請求項2】
該第一上面部と該第二上面部とが上下方向にオフセットして設けられる
ことを特徴とする、請求項1記載の車両用バッテリユニットの取付構造。
【請求項3】
該第二上面部が、該第一上面部よりも下方に配置されている
ことを特徴とする、請求項2記載の車両用バッテリユニットの取付構造。
【請求項4】
該第二上面部における該バッテリケース側の端部において上方へ向けて屈曲形成され、該第二上面部よりも上方で該バッテリケースに固定される屈曲面部をさらに備えた
ことを特徴とする、請求項3記載の車両用バッテリユニットの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−168242(P2011−168242A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36109(P2010−36109)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】