車両用ブレーキ液圧制御ユニット
【課題】車両用ブレーキ液圧制御ユニットについて、大気圧リザーバとポンプとの間に設けられる吸入通路や排出通路の直径(断面積)を小さくし、通路が占有するスペースの削減と液圧ブロック内空スペースの有効利用を図って同ユニットの小型化を実現することを課題としている。
【解決手段】液圧系統6−1,6−2の各々にモータ11−1,11−2に駆動されるポンプ10−1,10−2を組み込み、各液圧系からそれぞれの系に属する車輪のホイールシリンダ4F−1,4F−2,4R−1,4R−2にブレーキ液圧を供給する車両用ブレーキ液圧制御ユニットの液圧ブロック20内に、マスタシリンダ2を迂回してポンプに大気圧リザーバ3内のブレーキ液を吸い込ませる吸入通路7と、各ポンプの吐出口に通じた通路から電磁弁SRC1、SRC2経由で排出されるブレーキ液を大気圧リザーバ3に戻す排出通路8を形成し、その吸入通路と排出通路の少なくとも一方を液圧系統毎に独立して設けた。
【解決手段】液圧系統6−1,6−2の各々にモータ11−1,11−2に駆動されるポンプ10−1,10−2を組み込み、各液圧系からそれぞれの系に属する車輪のホイールシリンダ4F−1,4F−2,4R−1,4R−2にブレーキ液圧を供給する車両用ブレーキ液圧制御ユニットの液圧ブロック20内に、マスタシリンダ2を迂回してポンプに大気圧リザーバ3内のブレーキ液を吸い込ませる吸入通路7と、各ポンプの吐出口に通じた通路から電磁弁SRC1、SRC2経由で排出されるブレーキ液を大気圧リザーバ3に戻す排出通路8を形成し、その吸入通路と排出通路の少なくとも一方を液圧系統毎に独立して設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各々がモータ駆動のポンプを有する液圧系統を複数備え、それぞれの液圧系統から系統数に対応させて組分けされた車輪のホイールシリンダにブレーキ液圧を供給する車両用ブレーキ液圧制御ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
首記の車両用ブレーキ液圧制御ユニットの従来技術として、例えば、下記特許文献1に開示されたものがある。同文献に開示された車両用ブレーキ液圧制御ユニットは、液圧系を2系統備え、それぞれの液圧系統に、モータに駆動されるポンプが設置されている。
【0003】
車両用ブレーキ液圧制御ユニットは、内部に各液圧系の通路を形成した液圧ブロックを有し、その液圧ブロックにポンプを内蔵させ、さらに、液圧ブロックの一面にポンプを駆動するモータを取り付け、液圧ブロックのモータ取付面とは反対側に、各液圧系の回路の切り換えやホイールシリンダの液圧の調整を行う電磁弁、圧力センサ、モータや電磁弁の動きを制御する電子制御ユニットなどを組み付けて構成される。また、必要に応じて、ダンパや液溜め室なども液圧ブロックの内部に設けられる。特許文献1の車両用ブレーキ液圧制御ユニットも同様である。
【0004】
その特許文献1の車両用ブレーキ液圧制御ユニットは、モータを並列配置にして2個設け、各モータで各液圧系統のタンデムポンプ(2個のポンプ)をそれぞれ駆動するようにしている。また、大気圧リザーバに接続される吸入ポートを液圧ブロックのモータ取付面側に設け、その吸入ポートから各ポンプに至る吸入通路の縦通路部(車両搭載状態で垂直方向に延びる部分)を、液圧ブロックに挿入された2個のモータの回転軸間に配置している。
【0005】
各液圧系統に設置されたポンプは、それぞれのポンプの吸入口を単一の吸入通路につないでおり、全ポンプの吸入口が共通の吸入通路を介してブレーキ液の補給源である大気圧リザーバに接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−49743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1の車両用ブレーキ液圧制御ユニットでは、大気圧リザーバから供給されるブレーキ液が全て共通の吸入通路を通って各ポンプに流れる。また、各車輪ブレーキから排出されるブレーキ液も全量が排出弁を介してポンプの吐出口に接続された共通の排出通路を通って大気圧リザーバに戻される。
【0008】
そのために、共通の吸入通路や共通の排出通路の直径が大きくなりがちで、これが同ユニットの小型化を阻害する原因となっている。
【0009】
並列に配置されたモータの回転軸間に吸入通路を設ける特許文献1の構造で吸入通路の直径を小さくすることができれば、2個のモータの設置間隔を縮めてユニットの更なる小型化を図ることができる。
【0010】
ところが、運転者がブレーキを操作したときにマスタシリンダからの出力を遮断し、代わりに蓄圧器の含まれていない液圧源のポンプで発生させた液圧を運転者のブレーキ操作に応じた値に調圧してホイールシリンダに供給する所謂ブレーキバイワイヤー方式の液圧ブレーキ装置では特に、吸入通路の断面積はブレーキの応答性を左右するため、通路の直径を自由に縮小することができない。
【0011】
吸入通路や排出通路が大きいままでは、占有スペースの低減や空スペースの有効利用が制限され、ユニットの体格が大きくなって車両搭載性が悪化する。なお、特許文献1は、タンデムポンプから吐出される液圧を前輪系と後輪系のホイールシリンダに供給し、その供給量を前輪系と後輪系のホイールシリンダへの供給量に差をつけることで消費電力の低減とアクチュエータの小型化を図っているが、この方法で吸入通路の直径を小さくし得る効果は限られている。
【0012】
この発明は、大気圧リザーバとポンプとの間に設けられる吸入通路や排出通路の直径(断面積)を小さくし、それにより、通路が占有するスペースの削減と液圧ブロック内の空スペースの有効利用を図って車両用ブレーキ液圧制御ユニットの小型化を実現することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、この発明においては、複数の液圧系の各々にモータに駆動されるポンプを組み込み、各液圧系からそれぞれの系に属する車輪のホイールシリンダにブレーキ液圧を供給する車両用ブレーキ液圧制御ユニットを以下の通りに構成した。
即ち、ポンプを内蔵した液圧ブロック内に、液圧ブレーキ装置のマスタシリンダを迂回して前記ポンプに大気圧リザーバ内のブレーキ液を吸い込ませる吸入通路と、前記マスタシリンダを迂回して各ポンプの吐出口に通じた通路から電磁弁経由で排出されるブレーキ液を前記大気圧リザーバに戻す排出通路を形成し、その吸入通路と排出通路の少なくとも一方を液圧系統毎に独立させた。
【0014】
このブレーキ液圧制御ユニットは、一般に、排出通路に比べて吸入通路の方が大きな能力が要求されて外径が大きくなる傾向があるので、前記吸入通路を液圧系統毎に独立させると特に大きな効果を期待できる。
【0015】
その他の好ましい形態を以下に列挙する。
(1)吸入通路を液圧系統毎に独立させ、前記液圧ブロック内にポンプの吐出口に通じた通路から前記電磁弁経由で排出されるブレーキ液を前記ポンプの吸入口に還流させる循環通路を設け、前記吸入通路を前記排出通路として兼用するようにしたもの。
(2)前記モータを複数有し、そのモータを前記液圧ブロックに回転軸を挿入してその液圧ブロックの一面に並列配置にして取り付け、液圧系統毎に独立させた前記吸入通路に縦通路部を含ませてその縦通路部を、隣り合うモータの回転軸間に回転軸の軸線方向に並べて配置したもの。
(3)液圧系統毎に独立させた前記吸入通路に前記縦通路と異なる方向に延びる横通路部を含ませ、その横通路部を、前記モータの回転軸と平行方向に延ばして隣り合うモータの回転軸の軸線間に配置したもの。
(4)前記ポンプが、隣り合うモータの設置間隔よりも外径の小さい内接歯車式ポンプであるもの。
(5)前記液圧ブロックに、各吸入通路の吸入ポートを車両への搭載状態で上下に高さ位置を変えて設け、前記大気圧リザーバからの配管が接続されるその吸入ポートを前記液圧ブロックの横側面から突出させ、その突出量を下側に配置される吸入ポートほど大きくしたもの。
(6)前記ポンプを同一液圧系に複数個設け、前記液圧ブロック内に分岐路を設けてその分岐路経由で前記同一液圧系の複数のポンプの吸入口を液圧系統毎に独立させた吸入通路に接続したもの。
(7)各液圧系の複数のポンプを、各液圧系にそれぞれひとつ設けるモータで一括して駆動するようにしたもの。
【発明の効果】
【0016】
この発明では、従来、全ポンプの共通の通路として形成されていた吸入通路や排出通路を液圧系統毎に独立させたので、液圧系統が例えば2系統ある場合は、独立した通路に要求される性能が従来品に比べて半減し、その通路の直径を共通の通路の直径よりも小さくすることができる。
【0017】
これにより、液圧ブロック内での通路レイアウトの自由度が従来品に比べて高まり、液圧ブロック内の空スペースを有効に利用することで液圧ブロックの体格を縮小して液圧ユニットを小型化することができる。
【0018】
また、吸入通路や排出通路を液圧系統毎に独立させたことで、一部の系統の吸入通路や排出通路が何らかの原因で機能しなくなったときにも残りの系統の吸入通路や排出通路の機能が正常に維持されるため、ブレーキの信頼性も高まる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明のブレーキ液圧制御ユニットの一例を車両の液圧ブレーキ装置に組み込んだ状態にして示す回路図
【図2】この発明のブレーキ液圧制御ユニットの一例の概要を示す斜視図
【図3】図2のブレーキ液圧制御ユニットの電磁弁設置側のケースを外した状態の端面図
【図4】図3のIII−III線に沿った断面図
【図5】図3のIV−IV線に沿った断面図
【図6】図2のブレーキ液圧制御ユニットの液圧ブロック内に設けられたポンプと吸入通路のレイアウト状態を示す平面図
【図7】図2のブレーキ液圧制御ユニットの液圧ブロック内に設けられたポンプと吸入通路のレイアウト状態を図3のVII−VII線の位置で切断して示す平面図
【図8】図2のブレーキ液圧制御ユニットの液圧ブロック内に設けられたポンプと吸入通路のレイアウト状態を示す斜視図
【図9】この発明のブレーキ液圧制御ユニットの他の例を示す回路図
【図10】この発明のブレーキ液圧制御ユニットのさらに他の例を示す回路図
【図11】この発明のブレーキ液圧制御ユニットのさらに他の例を示す回路図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明のブレーキ液圧制御ユニットの実施の形態を、添付図面の図1〜図11に基づいてに説明する。図1に、車両用液圧ブレーキ装置の一例を示す。このブレーキ装置は、ブレーキペダル1と、タンデムタイプのマスタシリンダ2と、ブレーキ液の補給源である大気圧リザーバ3と、4輪車の左右の前輪F1,F2及び左右の後輪R1,R2のブレーキアクチュエータを作動させるホイールシリンダ4F−1、4F−2,4R−1,4R−2と、液圧を発生させ、さらに、その液圧をブレーキペダル1の操作量に応じた値に調圧して各ホイールシリンダに供給するブレーキ液圧制御ユニット5と、第1、第2の液圧系統6−1,6−2と、この発明を特徴づける、液圧系統毎に独立させて設けた吸入通路7−1,7−2を備えている。
【0021】
吸入通路7−1,7−2は、マスタシリンダ2を迂回して第1、第2の液圧系統6−1,6−2に連なっている。また、その通路の直径はそれぞれの液圧系統が要求する量のブレーキ液を流す大きさにしており、特許文献1が設けている共通の吸入通路に比べて(同一性能のブレーキでの比較)直径が小さい。
【0022】
このほかに、図示していないが、ブレーキペダル1の操作量を検出する踏力センサやストロークセンサ、マスタシリンダ2の操作ストロークを検出するストロークシミュレータ(図のマスタシリンダ2はそのストロークシミュレータを一体に形成したものと考える)、車の挙動を検出するための各種のセンサ(車輪速センサ、加速度センサ、ヨーセンサ等)が設けられる。
【0023】
ブレーキ液圧制御ユニット5は、ブレーキ装置が正常な状態のもとでブレーキペダル1が踏み込まれたときにマスタシリンダ2の第1の出力ポートから第1の液圧系統6−1に至る液圧通路9−1と、マスタシリンダ2の第2の出力ポートから第2の液圧系統6−2に至る液圧通路9−2をそれぞれ遮断する常開型の電磁弁SMC1,SMC2と、第1、第2の液圧系統6−1,6−2にそれぞれ設けられるタンデム型のポンプ10−1,10−2を有する。
【0024】
また、それぞれのポンプを駆動するモータ11−1,11−2と、各ポンプの吐出口からホイールシリンダに至る通路に設置する吐出弁12−1,12−2、ダンパ13−1,13−2、及びオリフィス14−1,14−2と、各ホイールシリンダの液圧をブレーキ操作量に応じた値に調圧するリニア弁SLF1,SLF2,SLR1,SLR2と、それらのリニア弁経由でポンプの余剰吐出液を各ポンプ10−1,10−2の吸入口に還流させる循環通路15−1,15−2と、その循環通路15−1,15−2を開閉する常閉型の電磁弁(排出弁)SRC1、SRC2を有する。
【0025】
さらに、液圧通路9−1、9−2の電磁弁SMC1,SMC2よりも上流(マスタシリンダ側を上流と考える)の液圧と、各ホイールシリンダの液圧を個別に検出する計6個の圧力センサ16と、第1、第2の液圧系統6−1,6−2のポンプ吸入側と吸入通路7−1,7−2との合流点に配置された拡張室17−1,17−2と、吸入通路7−1,7−2を、ホースなどを経由して大気圧リザーバに接続する吸入ポート18−1,18−2を有する。
【0026】
拡張室17−1,17−2は、吸入通路7−1,7−2内の液量を増大させる部屋であり、ポンプによるブレーキ液の汲み上げを円滑化するのに役立つ。
【0027】
なお、例示のブレーキ液圧制御ユニット5は、吸入通路7−1,7−2を排出通路8−1,8−2として兼用し、さらに、吸入ポート18−1,18−2を排出ポート19−1,19−2として兼用するものにしてポンプの吐出口に通じた通路から電磁弁SRC1、SRC2経由で排出されるブレーキ液をその通路に通して大気圧リザーバ3に戻すようにしている。
【0028】
上述した要素は、ブレーキ液圧制御ユニット5の液圧ブロック20(図2〜図5参照)に組み付けている。その液圧ブロック20の一面(モータ取付面20a)に2個のモータ11−1,11−2を並列配置にして取り付け、各モータの回転軸11a(図4参照)を液圧ブロック20の内部に平行に配置して各回転軸11aでポンプ10−1,10−2の対をなす2個をそれぞれ駆動するようにしている。
【0029】
ポンプ10−1,10−2は、インナーロータとアウターロータを組み合わせた内接歯車式ポンプであり、インナーロータの中心に回転軸11aを、その軸からのトルク伝達がなされるように挿通している。このポンプ10−1,10−2は、外径が隣り合うモータ11−1,11−2の設置間隔Wよりも小さく、このポンプを用いることで、2個のモータ間に生じるデッドスペースをポンプの設置スペースとして有効に活用してユニットの小型化を図ることができる。
【0030】
液圧系統毎に独立させた吸入通路7−1,7−2は、図5〜図8に示すように、第1横通路部7aと、縦通路部7bと、第2横通路部7cを有している。第1横通路部7aはユニットの車両搭載状態で、吸入ポート18−1,18−2の位置から水平方向、かつ、回転軸11aと平行方向に延び、縦通路部7bは車両搭載状態で上下方向に延びている。第2横通路部7cも、車両搭載状態で水平方向に延び、その第2横通路部7cが、縦通路部7bの下端側から分岐して同一液圧系の複数のポンプのそれぞれの吸入口に至っている。
【0031】
その吸入通路7−1,7−2の縦通路部7bを、隣り合うモータの回転軸11a間において回転軸11aの軸線方向に並べている。これにより、縦通路部7bの左右に配置する電磁弁の設置間隔を最小ピッチに縮めることが可能になり、このことと、吸入通路7−1,7−2を排出通路8−1,8−2として兼用したことで液圧ブロック20の内部スペースの利用効率が高まって液圧ブロック20の小型化が実現されている。
【0032】
吸入通路7−1,7−2の第1横通路部7aと第2横通路部7cも、隣り合うモータの回転軸の軸線間に配置している。これにより、モータ間の空スペースが無駄なく利用されて液圧ブロック20の小型化の効果がさらに高まる。
【0033】
液圧系統毎に独立させた2組の吸入通路7−1,7−2は、それぞれの通路の第1横通路部7aを、ユニットの車両搭載状態で高さ位置を異ならせて設けており、そのために、吸入ポート18−1,18−2も、車両への搭載状態で上下方向の位置(高さ位置)が異なったものになっている。
【0034】
その吸入ポート18−1,18−2は、図4,図5に示すように、液圧ブロック20のモータ取付面20a(横側面)側にモータの回転軸11aの軸線方向に突出させている。そして、上側の吸入ポート18−1よりも下側に配置される吸入ポート18−2の突出量を大きくしている。このように構成すると、作業者がユニットの上側から配管作業を行って下側の吸入ポート18−2にホースなどを接続する際に上側の吸入ポート18−1が邪魔にならず、作業が容易になる。
【0035】
図2,図4,図5の21は、液圧ブロック20の電磁弁組み付け側に取り付けた電子制御ユニットである。その電子制御ユニット21は、リニア弁を含む電磁弁やモータの制御回路などが形成された回路基板をケース21aの内部に収納して構成される。これは周知のユニットであるので、ここでは、詳細説明を省く。
【0036】
なお、例示のブレーキ液圧制御ユニット5は、同一液圧系に属する2個のポンプをひとつのモータで一括して駆動するようにしているが、この発明は、各ポンプをそれぞれ1個のモータで個別に駆動する形態や、同一ユニットに設ける全てのポンプを1つのモータで一括して駆動する形態のユニットにも適用することができる。
【0037】
また、図1のブレーキ装置に採用したブレーキ液圧制御ユニット5は、液圧系統毎に独立させた吸入通路を排出通路として兼用したが、図9に示すように、液圧系統毎に独立させた専用の排出通路8−1,8−2を別途設け、吸入通路7−1,7−2と排出通路8−1,8−2を互に独立させる構造にしても発明の効果が得られる。この構造は、図1の循環通路15−1,15−2が無く、排出通路8−1,8−2が大気圧リザーバ3に直接つながれる。
【0038】
さらに、図10、図11に示すように、吸入通路7−1,7−2と排出通路8−1,8−2のどちらか一方を液圧系統毎に独立させ、他方の通路は、共通の通路にしてその共通の通路経由で各液圧系のブレーキ液排出側に接続する構造でも発明の効果が得られる。
【0039】
このほか、液圧系統毎に独立させる吸入通路や排出通路は、液圧ブロック内(図1、図9、図10、図11の鎖線枠内)に設ける部分が液圧系統毎に独立していればよい。ブレーキ液圧制御ユニットの小型化の目的は、図1、図9、図10、図11の各図において、吸入ポート18や排出通路8に通じた排出ポート19から大気圧リザーバ3までの配管が途中から1本の径の太い管に集合され、その集合された管が大気圧リザーバ3につながれていても達成される。
【符号の説明】
【0040】
1 ブレーキペダル
2 マスタシリンダ
3 大気圧リザーバ
F1,F2 前輪
R1,R2 後輪
4F−1,4F−2,4R−1,4R−2 ホイールシリンダ
5 ブレーキ液圧制御ユニット
6−1 第1の液圧系統
6−2 第2の液圧系統
7−1,7−2 吸入通路
7a 第1横通路部
7b 縦通路部
7c 第2横通路部
8−1,8−2 排出通路
9−1,9−2 液圧通路
10−1,10−2 ポンプ
11−1,11−2 モータ
11a 回転軸
SMC1,SMC2 常開型の電磁弁
SLF1,SLF2,SLR1,SLR2 リニア弁
SRC1,SRC2 常閉型の電磁弁
12−1,12−2 吐出弁
13−1,13−2 ダンパ
14−1,14−2 オリフィス
15−1,15−2 循環通路
16 圧力センサ
17−1,17−2 拡張室
18−1,18−2 吸入ポート
19−1,19−2 排出ポート
20 液圧ブロック
20a モータ取付面
21 電子制御ユニット
21a ケース
W モータの設置間隔
【技術分野】
【0001】
この発明は、各々がモータ駆動のポンプを有する液圧系統を複数備え、それぞれの液圧系統から系統数に対応させて組分けされた車輪のホイールシリンダにブレーキ液圧を供給する車両用ブレーキ液圧制御ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
首記の車両用ブレーキ液圧制御ユニットの従来技術として、例えば、下記特許文献1に開示されたものがある。同文献に開示された車両用ブレーキ液圧制御ユニットは、液圧系を2系統備え、それぞれの液圧系統に、モータに駆動されるポンプが設置されている。
【0003】
車両用ブレーキ液圧制御ユニットは、内部に各液圧系の通路を形成した液圧ブロックを有し、その液圧ブロックにポンプを内蔵させ、さらに、液圧ブロックの一面にポンプを駆動するモータを取り付け、液圧ブロックのモータ取付面とは反対側に、各液圧系の回路の切り換えやホイールシリンダの液圧の調整を行う電磁弁、圧力センサ、モータや電磁弁の動きを制御する電子制御ユニットなどを組み付けて構成される。また、必要に応じて、ダンパや液溜め室なども液圧ブロックの内部に設けられる。特許文献1の車両用ブレーキ液圧制御ユニットも同様である。
【0004】
その特許文献1の車両用ブレーキ液圧制御ユニットは、モータを並列配置にして2個設け、各モータで各液圧系統のタンデムポンプ(2個のポンプ)をそれぞれ駆動するようにしている。また、大気圧リザーバに接続される吸入ポートを液圧ブロックのモータ取付面側に設け、その吸入ポートから各ポンプに至る吸入通路の縦通路部(車両搭載状態で垂直方向に延びる部分)を、液圧ブロックに挿入された2個のモータの回転軸間に配置している。
【0005】
各液圧系統に設置されたポンプは、それぞれのポンプの吸入口を単一の吸入通路につないでおり、全ポンプの吸入口が共通の吸入通路を介してブレーキ液の補給源である大気圧リザーバに接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−49743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1の車両用ブレーキ液圧制御ユニットでは、大気圧リザーバから供給されるブレーキ液が全て共通の吸入通路を通って各ポンプに流れる。また、各車輪ブレーキから排出されるブレーキ液も全量が排出弁を介してポンプの吐出口に接続された共通の排出通路を通って大気圧リザーバに戻される。
【0008】
そのために、共通の吸入通路や共通の排出通路の直径が大きくなりがちで、これが同ユニットの小型化を阻害する原因となっている。
【0009】
並列に配置されたモータの回転軸間に吸入通路を設ける特許文献1の構造で吸入通路の直径を小さくすることができれば、2個のモータの設置間隔を縮めてユニットの更なる小型化を図ることができる。
【0010】
ところが、運転者がブレーキを操作したときにマスタシリンダからの出力を遮断し、代わりに蓄圧器の含まれていない液圧源のポンプで発生させた液圧を運転者のブレーキ操作に応じた値に調圧してホイールシリンダに供給する所謂ブレーキバイワイヤー方式の液圧ブレーキ装置では特に、吸入通路の断面積はブレーキの応答性を左右するため、通路の直径を自由に縮小することができない。
【0011】
吸入通路や排出通路が大きいままでは、占有スペースの低減や空スペースの有効利用が制限され、ユニットの体格が大きくなって車両搭載性が悪化する。なお、特許文献1は、タンデムポンプから吐出される液圧を前輪系と後輪系のホイールシリンダに供給し、その供給量を前輪系と後輪系のホイールシリンダへの供給量に差をつけることで消費電力の低減とアクチュエータの小型化を図っているが、この方法で吸入通路の直径を小さくし得る効果は限られている。
【0012】
この発明は、大気圧リザーバとポンプとの間に設けられる吸入通路や排出通路の直径(断面積)を小さくし、それにより、通路が占有するスペースの削減と液圧ブロック内の空スペースの有効利用を図って車両用ブレーキ液圧制御ユニットの小型化を実現することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、この発明においては、複数の液圧系の各々にモータに駆動されるポンプを組み込み、各液圧系からそれぞれの系に属する車輪のホイールシリンダにブレーキ液圧を供給する車両用ブレーキ液圧制御ユニットを以下の通りに構成した。
即ち、ポンプを内蔵した液圧ブロック内に、液圧ブレーキ装置のマスタシリンダを迂回して前記ポンプに大気圧リザーバ内のブレーキ液を吸い込ませる吸入通路と、前記マスタシリンダを迂回して各ポンプの吐出口に通じた通路から電磁弁経由で排出されるブレーキ液を前記大気圧リザーバに戻す排出通路を形成し、その吸入通路と排出通路の少なくとも一方を液圧系統毎に独立させた。
【0014】
このブレーキ液圧制御ユニットは、一般に、排出通路に比べて吸入通路の方が大きな能力が要求されて外径が大きくなる傾向があるので、前記吸入通路を液圧系統毎に独立させると特に大きな効果を期待できる。
【0015】
その他の好ましい形態を以下に列挙する。
(1)吸入通路を液圧系統毎に独立させ、前記液圧ブロック内にポンプの吐出口に通じた通路から前記電磁弁経由で排出されるブレーキ液を前記ポンプの吸入口に還流させる循環通路を設け、前記吸入通路を前記排出通路として兼用するようにしたもの。
(2)前記モータを複数有し、そのモータを前記液圧ブロックに回転軸を挿入してその液圧ブロックの一面に並列配置にして取り付け、液圧系統毎に独立させた前記吸入通路に縦通路部を含ませてその縦通路部を、隣り合うモータの回転軸間に回転軸の軸線方向に並べて配置したもの。
(3)液圧系統毎に独立させた前記吸入通路に前記縦通路と異なる方向に延びる横通路部を含ませ、その横通路部を、前記モータの回転軸と平行方向に延ばして隣り合うモータの回転軸の軸線間に配置したもの。
(4)前記ポンプが、隣り合うモータの設置間隔よりも外径の小さい内接歯車式ポンプであるもの。
(5)前記液圧ブロックに、各吸入通路の吸入ポートを車両への搭載状態で上下に高さ位置を変えて設け、前記大気圧リザーバからの配管が接続されるその吸入ポートを前記液圧ブロックの横側面から突出させ、その突出量を下側に配置される吸入ポートほど大きくしたもの。
(6)前記ポンプを同一液圧系に複数個設け、前記液圧ブロック内に分岐路を設けてその分岐路経由で前記同一液圧系の複数のポンプの吸入口を液圧系統毎に独立させた吸入通路に接続したもの。
(7)各液圧系の複数のポンプを、各液圧系にそれぞれひとつ設けるモータで一括して駆動するようにしたもの。
【発明の効果】
【0016】
この発明では、従来、全ポンプの共通の通路として形成されていた吸入通路や排出通路を液圧系統毎に独立させたので、液圧系統が例えば2系統ある場合は、独立した通路に要求される性能が従来品に比べて半減し、その通路の直径を共通の通路の直径よりも小さくすることができる。
【0017】
これにより、液圧ブロック内での通路レイアウトの自由度が従来品に比べて高まり、液圧ブロック内の空スペースを有効に利用することで液圧ブロックの体格を縮小して液圧ユニットを小型化することができる。
【0018】
また、吸入通路や排出通路を液圧系統毎に独立させたことで、一部の系統の吸入通路や排出通路が何らかの原因で機能しなくなったときにも残りの系統の吸入通路や排出通路の機能が正常に維持されるため、ブレーキの信頼性も高まる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明のブレーキ液圧制御ユニットの一例を車両の液圧ブレーキ装置に組み込んだ状態にして示す回路図
【図2】この発明のブレーキ液圧制御ユニットの一例の概要を示す斜視図
【図3】図2のブレーキ液圧制御ユニットの電磁弁設置側のケースを外した状態の端面図
【図4】図3のIII−III線に沿った断面図
【図5】図3のIV−IV線に沿った断面図
【図6】図2のブレーキ液圧制御ユニットの液圧ブロック内に設けられたポンプと吸入通路のレイアウト状態を示す平面図
【図7】図2のブレーキ液圧制御ユニットの液圧ブロック内に設けられたポンプと吸入通路のレイアウト状態を図3のVII−VII線の位置で切断して示す平面図
【図8】図2のブレーキ液圧制御ユニットの液圧ブロック内に設けられたポンプと吸入通路のレイアウト状態を示す斜視図
【図9】この発明のブレーキ液圧制御ユニットの他の例を示す回路図
【図10】この発明のブレーキ液圧制御ユニットのさらに他の例を示す回路図
【図11】この発明のブレーキ液圧制御ユニットのさらに他の例を示す回路図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明のブレーキ液圧制御ユニットの実施の形態を、添付図面の図1〜図11に基づいてに説明する。図1に、車両用液圧ブレーキ装置の一例を示す。このブレーキ装置は、ブレーキペダル1と、タンデムタイプのマスタシリンダ2と、ブレーキ液の補給源である大気圧リザーバ3と、4輪車の左右の前輪F1,F2及び左右の後輪R1,R2のブレーキアクチュエータを作動させるホイールシリンダ4F−1、4F−2,4R−1,4R−2と、液圧を発生させ、さらに、その液圧をブレーキペダル1の操作量に応じた値に調圧して各ホイールシリンダに供給するブレーキ液圧制御ユニット5と、第1、第2の液圧系統6−1,6−2と、この発明を特徴づける、液圧系統毎に独立させて設けた吸入通路7−1,7−2を備えている。
【0021】
吸入通路7−1,7−2は、マスタシリンダ2を迂回して第1、第2の液圧系統6−1,6−2に連なっている。また、その通路の直径はそれぞれの液圧系統が要求する量のブレーキ液を流す大きさにしており、特許文献1が設けている共通の吸入通路に比べて(同一性能のブレーキでの比較)直径が小さい。
【0022】
このほかに、図示していないが、ブレーキペダル1の操作量を検出する踏力センサやストロークセンサ、マスタシリンダ2の操作ストロークを検出するストロークシミュレータ(図のマスタシリンダ2はそのストロークシミュレータを一体に形成したものと考える)、車の挙動を検出するための各種のセンサ(車輪速センサ、加速度センサ、ヨーセンサ等)が設けられる。
【0023】
ブレーキ液圧制御ユニット5は、ブレーキ装置が正常な状態のもとでブレーキペダル1が踏み込まれたときにマスタシリンダ2の第1の出力ポートから第1の液圧系統6−1に至る液圧通路9−1と、マスタシリンダ2の第2の出力ポートから第2の液圧系統6−2に至る液圧通路9−2をそれぞれ遮断する常開型の電磁弁SMC1,SMC2と、第1、第2の液圧系統6−1,6−2にそれぞれ設けられるタンデム型のポンプ10−1,10−2を有する。
【0024】
また、それぞれのポンプを駆動するモータ11−1,11−2と、各ポンプの吐出口からホイールシリンダに至る通路に設置する吐出弁12−1,12−2、ダンパ13−1,13−2、及びオリフィス14−1,14−2と、各ホイールシリンダの液圧をブレーキ操作量に応じた値に調圧するリニア弁SLF1,SLF2,SLR1,SLR2と、それらのリニア弁経由でポンプの余剰吐出液を各ポンプ10−1,10−2の吸入口に還流させる循環通路15−1,15−2と、その循環通路15−1,15−2を開閉する常閉型の電磁弁(排出弁)SRC1、SRC2を有する。
【0025】
さらに、液圧通路9−1、9−2の電磁弁SMC1,SMC2よりも上流(マスタシリンダ側を上流と考える)の液圧と、各ホイールシリンダの液圧を個別に検出する計6個の圧力センサ16と、第1、第2の液圧系統6−1,6−2のポンプ吸入側と吸入通路7−1,7−2との合流点に配置された拡張室17−1,17−2と、吸入通路7−1,7−2を、ホースなどを経由して大気圧リザーバに接続する吸入ポート18−1,18−2を有する。
【0026】
拡張室17−1,17−2は、吸入通路7−1,7−2内の液量を増大させる部屋であり、ポンプによるブレーキ液の汲み上げを円滑化するのに役立つ。
【0027】
なお、例示のブレーキ液圧制御ユニット5は、吸入通路7−1,7−2を排出通路8−1,8−2として兼用し、さらに、吸入ポート18−1,18−2を排出ポート19−1,19−2として兼用するものにしてポンプの吐出口に通じた通路から電磁弁SRC1、SRC2経由で排出されるブレーキ液をその通路に通して大気圧リザーバ3に戻すようにしている。
【0028】
上述した要素は、ブレーキ液圧制御ユニット5の液圧ブロック20(図2〜図5参照)に組み付けている。その液圧ブロック20の一面(モータ取付面20a)に2個のモータ11−1,11−2を並列配置にして取り付け、各モータの回転軸11a(図4参照)を液圧ブロック20の内部に平行に配置して各回転軸11aでポンプ10−1,10−2の対をなす2個をそれぞれ駆動するようにしている。
【0029】
ポンプ10−1,10−2は、インナーロータとアウターロータを組み合わせた内接歯車式ポンプであり、インナーロータの中心に回転軸11aを、その軸からのトルク伝達がなされるように挿通している。このポンプ10−1,10−2は、外径が隣り合うモータ11−1,11−2の設置間隔Wよりも小さく、このポンプを用いることで、2個のモータ間に生じるデッドスペースをポンプの設置スペースとして有効に活用してユニットの小型化を図ることができる。
【0030】
液圧系統毎に独立させた吸入通路7−1,7−2は、図5〜図8に示すように、第1横通路部7aと、縦通路部7bと、第2横通路部7cを有している。第1横通路部7aはユニットの車両搭載状態で、吸入ポート18−1,18−2の位置から水平方向、かつ、回転軸11aと平行方向に延び、縦通路部7bは車両搭載状態で上下方向に延びている。第2横通路部7cも、車両搭載状態で水平方向に延び、その第2横通路部7cが、縦通路部7bの下端側から分岐して同一液圧系の複数のポンプのそれぞれの吸入口に至っている。
【0031】
その吸入通路7−1,7−2の縦通路部7bを、隣り合うモータの回転軸11a間において回転軸11aの軸線方向に並べている。これにより、縦通路部7bの左右に配置する電磁弁の設置間隔を最小ピッチに縮めることが可能になり、このことと、吸入通路7−1,7−2を排出通路8−1,8−2として兼用したことで液圧ブロック20の内部スペースの利用効率が高まって液圧ブロック20の小型化が実現されている。
【0032】
吸入通路7−1,7−2の第1横通路部7aと第2横通路部7cも、隣り合うモータの回転軸の軸線間に配置している。これにより、モータ間の空スペースが無駄なく利用されて液圧ブロック20の小型化の効果がさらに高まる。
【0033】
液圧系統毎に独立させた2組の吸入通路7−1,7−2は、それぞれの通路の第1横通路部7aを、ユニットの車両搭載状態で高さ位置を異ならせて設けており、そのために、吸入ポート18−1,18−2も、車両への搭載状態で上下方向の位置(高さ位置)が異なったものになっている。
【0034】
その吸入ポート18−1,18−2は、図4,図5に示すように、液圧ブロック20のモータ取付面20a(横側面)側にモータの回転軸11aの軸線方向に突出させている。そして、上側の吸入ポート18−1よりも下側に配置される吸入ポート18−2の突出量を大きくしている。このように構成すると、作業者がユニットの上側から配管作業を行って下側の吸入ポート18−2にホースなどを接続する際に上側の吸入ポート18−1が邪魔にならず、作業が容易になる。
【0035】
図2,図4,図5の21は、液圧ブロック20の電磁弁組み付け側に取り付けた電子制御ユニットである。その電子制御ユニット21は、リニア弁を含む電磁弁やモータの制御回路などが形成された回路基板をケース21aの内部に収納して構成される。これは周知のユニットであるので、ここでは、詳細説明を省く。
【0036】
なお、例示のブレーキ液圧制御ユニット5は、同一液圧系に属する2個のポンプをひとつのモータで一括して駆動するようにしているが、この発明は、各ポンプをそれぞれ1個のモータで個別に駆動する形態や、同一ユニットに設ける全てのポンプを1つのモータで一括して駆動する形態のユニットにも適用することができる。
【0037】
また、図1のブレーキ装置に採用したブレーキ液圧制御ユニット5は、液圧系統毎に独立させた吸入通路を排出通路として兼用したが、図9に示すように、液圧系統毎に独立させた専用の排出通路8−1,8−2を別途設け、吸入通路7−1,7−2と排出通路8−1,8−2を互に独立させる構造にしても発明の効果が得られる。この構造は、図1の循環通路15−1,15−2が無く、排出通路8−1,8−2が大気圧リザーバ3に直接つながれる。
【0038】
さらに、図10、図11に示すように、吸入通路7−1,7−2と排出通路8−1,8−2のどちらか一方を液圧系統毎に独立させ、他方の通路は、共通の通路にしてその共通の通路経由で各液圧系のブレーキ液排出側に接続する構造でも発明の効果が得られる。
【0039】
このほか、液圧系統毎に独立させる吸入通路や排出通路は、液圧ブロック内(図1、図9、図10、図11の鎖線枠内)に設ける部分が液圧系統毎に独立していればよい。ブレーキ液圧制御ユニットの小型化の目的は、図1、図9、図10、図11の各図において、吸入ポート18や排出通路8に通じた排出ポート19から大気圧リザーバ3までの配管が途中から1本の径の太い管に集合され、その集合された管が大気圧リザーバ3につながれていても達成される。
【符号の説明】
【0040】
1 ブレーキペダル
2 マスタシリンダ
3 大気圧リザーバ
F1,F2 前輪
R1,R2 後輪
4F−1,4F−2,4R−1,4R−2 ホイールシリンダ
5 ブレーキ液圧制御ユニット
6−1 第1の液圧系統
6−2 第2の液圧系統
7−1,7−2 吸入通路
7a 第1横通路部
7b 縦通路部
7c 第2横通路部
8−1,8−2 排出通路
9−1,9−2 液圧通路
10−1,10−2 ポンプ
11−1,11−2 モータ
11a 回転軸
SMC1,SMC2 常開型の電磁弁
SLF1,SLF2,SLR1,SLR2 リニア弁
SRC1,SRC2 常閉型の電磁弁
12−1,12−2 吐出弁
13−1,13−2 ダンパ
14−1,14−2 オリフィス
15−1,15−2 循環通路
16 圧力センサ
17−1,17−2 拡張室
18−1,18−2 吸入ポート
19−1,19−2 排出ポート
20 液圧ブロック
20a モータ取付面
21 電子制御ユニット
21a ケース
W モータの設置間隔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータに駆動されるポンプが各々の系に組み込まれた液圧系を複数備え、各液圧系からそれぞれの系に属する車輪のホイールシリンダにブレーキ液圧を供給する車両用ブレーキ液圧制御ユニットにおいて、
前記ポンプを内蔵した液圧ブロック内に、液圧ブレーキ装置のマスタシリンダを迂回して前記ポンプに大気圧リザーバ内のブレーキ液を吸い込ませる吸入通路と、前記マスタシリンダを迂回して各ポンプの吐出口に通じた通路から電磁弁経由で排出されるブレーキ液を前記大気圧リザーバに戻す排出通路を形成し、その吸入通路と排出通路の少なくとも一方を液圧系統毎に独立して設けたことを特徴とする車両用ブレーキ液圧制御ユニット。
【請求項2】
前記吸入通路を液圧系統毎に独立させ、前記液圧ブロック内にポンプの吐出口に通じた通路から前記電磁弁経由で排出されるブレーキ液を前記ポンプの吸入口に還流させる循環通路を設けて、前記吸入通路を前記排出通路として兼用するようにした請求項1に記載の車両用ブレーキ液圧制御ユニット。
【請求項3】
前記モータを複数有し、そのモータを前記液圧ブロックに回転軸を挿入してその液圧ブロックの一面に並列配置にして取り付け、液圧系統毎に独立させた前記吸入通路に縦通路部を含ませてその縦通路部を、隣り合うモータの回転軸間に回転軸の軸線方向に並べて配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用ブレーキ液圧制御ユニット。
【請求項4】
液圧系統毎に独立させた前記吸入通路に前記縦通路と異なる方向に延びる横通路部を含ませ、その横通路部を、隣り合うモータの回転軸の軸線間に配置したことを特徴とする請求項3に記載の車両用ブレーキ液圧制御ユニット。
【請求項5】
前記ポンプが、隣り合うモータの設置間隔よりも外径の小さい内接歯車式ポンプであることを特徴
とする請求項3又は4に記載の車両用ブレーキ液圧制御ユニット。
【請求項6】
前記液圧ブロックに、各吸入通路の吸入ポートを車両への搭載状態で上下に高さ位置を変えて設け、前記大気圧リザーバからの配管が接続されるその吸入ポートを前記液圧ブロックの横側面から突出させ、その突出量を下側に配置される吸入ポートほど大きくしたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の車両用ブレーキ液圧制御ユニット。
【請求項7】
前記ポンプを同一液圧系に複数個設け、前記液圧ブロック内液圧系統毎に独立させた前記吸入通路を分岐させて同一液圧系の複数のポンプのそれぞれの吸入口に接続したことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の車両用ブレーキ液圧制御ユニット。
【請求項8】
各液圧系の複数のポンプを、各液圧系にそれぞれひとつ設けるモータで一括して駆動するようにした請求項7に記載の車両用ブレーキ液圧制御ユニット。
【請求項1】
モータに駆動されるポンプが各々の系に組み込まれた液圧系を複数備え、各液圧系からそれぞれの系に属する車輪のホイールシリンダにブレーキ液圧を供給する車両用ブレーキ液圧制御ユニットにおいて、
前記ポンプを内蔵した液圧ブロック内に、液圧ブレーキ装置のマスタシリンダを迂回して前記ポンプに大気圧リザーバ内のブレーキ液を吸い込ませる吸入通路と、前記マスタシリンダを迂回して各ポンプの吐出口に通じた通路から電磁弁経由で排出されるブレーキ液を前記大気圧リザーバに戻す排出通路を形成し、その吸入通路と排出通路の少なくとも一方を液圧系統毎に独立して設けたことを特徴とする車両用ブレーキ液圧制御ユニット。
【請求項2】
前記吸入通路を液圧系統毎に独立させ、前記液圧ブロック内にポンプの吐出口に通じた通路から前記電磁弁経由で排出されるブレーキ液を前記ポンプの吸入口に還流させる循環通路を設けて、前記吸入通路を前記排出通路として兼用するようにした請求項1に記載の車両用ブレーキ液圧制御ユニット。
【請求項3】
前記モータを複数有し、そのモータを前記液圧ブロックに回転軸を挿入してその液圧ブロックの一面に並列配置にして取り付け、液圧系統毎に独立させた前記吸入通路に縦通路部を含ませてその縦通路部を、隣り合うモータの回転軸間に回転軸の軸線方向に並べて配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用ブレーキ液圧制御ユニット。
【請求項4】
液圧系統毎に独立させた前記吸入通路に前記縦通路と異なる方向に延びる横通路部を含ませ、その横通路部を、隣り合うモータの回転軸の軸線間に配置したことを特徴とする請求項3に記載の車両用ブレーキ液圧制御ユニット。
【請求項5】
前記ポンプが、隣り合うモータの設置間隔よりも外径の小さい内接歯車式ポンプであることを特徴
とする請求項3又は4に記載の車両用ブレーキ液圧制御ユニット。
【請求項6】
前記液圧ブロックに、各吸入通路の吸入ポートを車両への搭載状態で上下に高さ位置を変えて設け、前記大気圧リザーバからの配管が接続されるその吸入ポートを前記液圧ブロックの横側面から突出させ、その突出量を下側に配置される吸入ポートほど大きくしたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の車両用ブレーキ液圧制御ユニット。
【請求項7】
前記ポンプを同一液圧系に複数個設け、前記液圧ブロック内液圧系統毎に独立させた前記吸入通路を分岐させて同一液圧系の複数のポンプのそれぞれの吸入口に接続したことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の車両用ブレーキ液圧制御ユニット。
【請求項8】
各液圧系の複数のポンプを、各液圧系にそれぞれひとつ設けるモータで一括して駆動するようにした請求項7に記載の車両用ブレーキ液圧制御ユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−1163(P2012−1163A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139807(P2010−139807)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】
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