説明

車両用ブレーキ液圧制御装置

【課題】 二次回路内におけるエアの発生を防止することで、ドライバがブレーキ操作部材を操作する際のフィーリングの悪化を防止する。
【解決手段】 管路A3を通じて、二次回路を管路AにおけるM/C13と各増圧制御弁16、17の間に接続すると共に、この管路中に制御弁18、23を備えた構成とする。このような構成において、制御弁18、23を励磁状態と非励磁状態とを繰り返し行うことで、二次回路中に発生する負圧を解消することが可能となる。このため、二次回路中に負圧が発生した場合に生じえるエアに起因して、ブレーキ操作部材のストロークがエアの体積分だけ大きくなることを防止することが可能となる。このため、ドライバがブレーキ操作部材を操作する際のフィーリングの悪化を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ液圧発生手段と制動力発生手段の間に、増圧制御弁、減圧制御弁、リザーバおよびポンプを有してなる液圧回路が備えられ、この液圧回路に備えられた各制御弁やリザーバおよびポンプを用いて各車輪のホイールシリンダ圧を調整することで、各車輪がロック傾向に至ることを回避するアンチロックブレーキ(ABS)制御が実行できるように構成された車両用ブレーキ液圧制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ABS制御を行える車両用ブレーキ液圧制御装置が広く知られている(例えば、特許文献1参照)。この車両用ブレーキ液圧制御装置では、一般に、増圧制御弁として常開型の電磁弁を使用すると共に、減圧制御弁として常閉型の電磁弁を使用している。そして、これら増圧制御弁と減圧制御弁をそれぞれ開閉制御したりポンプを駆動することで、ホイールシリンダ圧を発生させているブレーキ液がリザーバに逃がされ、リザーバに逃がされたブレーキ液がポンプによって吸入・吐出されて再びマスタシリンダとホイールシリンダの間の管路に戻されるというABS制御等のブレーキ液圧制御が実行されるようになっている。
【0003】
このような車両用ブレーキ液圧制御装置において、ブレーキ液圧制御を実行することで消費されたブレーキ液、すなわち減圧制御弁を通じてリザーバに逃がされたブレーキ液が確実に再びマスタシリンダとホイールシリンダの間の管路、具体的には増圧制御弁よりも上流側の液圧回路(以下、一次回路と呼ぶ)に戻されるようにしなければならない。
【0004】
このため、従来では、一般にブレーキ液圧制御の開始時点からブレーキ液圧制御の終了時点までに亘ってポンプ駆動を実行すると共に、ブレーキ液圧制御の終了後も所定時間が経過するまで、増圧制御弁および減圧制御弁が非励磁状態となってからもポンプ駆動を実行し続けるようにしている。
【特許文献1】特開平7−89423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように減圧制御弁が非励磁状態、つまり閉状態となっている際にポンプ駆動を行う場合、リザーバに逃がされたブレーキ液がポンプに吸入され尽くされると、その後は減圧制御弁からリザーバまでの間およびリザーバからポンプの吸入ポートまでの間を接続する液圧回路(以下、これらを合せて二次回路と呼ぶ)内に負圧が発生することになる。
【0006】
このようにして二次回路内に発生した負圧は、減圧制御弁が非励磁状態(閉状態)とされている限りにおいて保持され得る。したがって、ブレーキ液圧制御が繰り返し実行されると、その度に負圧の程度が増大し得、その結果、二次回路内にキャビテーションによるエアが発生する場合がある。
【0007】
このように二次回路内にエアが発生した状態でブレーキ液圧制御が実行されると、ポンプ駆動によってそのエアが一次回路内に流入され、ブレーキ操作部材(4輪車両の場合にはブレーキペダル、2輪車両の場合にはブレーキレバー)のストロークがエアの体積に相当する分だけ大きくなる。その結果、ドライバがブレーキ操作部材を操作する際のフィーリングを悪化させるという問題がある。
【0008】
また、車両用ブレーキ液圧制御装置では、一般的に、イグニッションスイッチがオフ状態からオン状態に変更された直後に、いわゆるイニシャルチェックのため、各制御弁を非励磁状態としたままポンプを所定時間駆動するようになっている。
【0009】
このようなイニシャルチェックが実行される場合にも、上記のブレーキ液圧制御と同様に、減圧制御弁が非励磁状態、つまり閉状態となっている際にポンプ駆動を行われることから、同様の問題が発生し得る。
【0010】
本発明は上記点に鑑みて、二次回路内におけるエアの発生を防止することで、ドライバがブレーキ操作部材を操作する際のフィーリングの悪化を防止できるブレーキ液圧制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、減圧管路(B、E)における減圧制御弁(21、22、51)とリザーバ(20、50)の間および還流管路(C、F)におけるリザーバ(20、50)とポンプ(19、49)の間を二次回路として、この二次回路に負圧解消用管路(A3、D2、G)を接続すると共に、該負圧解消用管路(A3、D2、G)に、該負圧解消用管路(A3、D2、G)のブレーキ液の流動を制御する第1制御弁(23、53)を備え、負圧解消用管路(A3、D2、G)をブレーキ液が大気圧相当もしくは正圧となる部位に接続することを特徴としている。
【0012】
このように、負圧解消用管路(A3、D2、G)を通じて、二次回路を主管路(A、D)におけるブレーキ液圧発生手段(13、43)と増圧制御弁(16、17、46)の間に接続している。そして、負圧解消用管路(A3、D2、G)中に第1制御弁(23、53)を備えた構成としている。このため、負圧解消制御処理が実行される際に、第1制御弁(23、53)を連通状態にすることで、二次回路中に発生する負圧を解消することが可能となる。これにより、二次回路中に負圧が発生した場合に生じ得るエアに起因して、ブレーキ操作部材のストロークがエアの体積分だけ大きくなることを防止することが可能となり、ドライバがブレーキ操作部材(11、41)を操作する際のフィーリングの悪化を防止できる。
【0013】
例えば、請求項2に示されるように、負圧解消用管路は、主管路(A、D)におけるブレーキ液圧発生手段(13、43)と増圧制御弁(16、17、46)の間に接続される。
【0014】
この場合、請求項3に示されるように、負圧解消用管路のうち、第1制御弁(23、53)から主管路(A、D)に至るまでの間に、該負圧解消用管路のブレーキ液の流動を制御する第2制御弁(18、48)を備えると好ましい。
【0015】
すなわち、第1制御弁(23、53)に加えて第2制御弁(18、48)を備えるようにすれば、常にいずれか一方の制御弁が遮断状態となるようにすることで、負圧解消制御処理が実行されているか否かに関わらず、常に、ブレーキ液圧発生手段(13、43)と制動力発生手段(14、15、44)との間を遮断状態としておくことが可能となる。このため、仮に、負圧解消制御処理が実行されて間も無いとき、つまりまだ負圧が発生している最中に、ドライバによりブレーキ操作部材(11、41)が操作されたとしても、その負圧分だけブレーキ操作部材(11、41)が深くまで入り込んでしまうことを防止することが可能となる。
【0016】
例えば、請求項4に示されるように、第1制御弁(23、53)を非励磁状態の時には遮断状態となり励磁状態の時に連通状態に切替わる常閉型二位置電磁弁で構成し、第2制御弁(18、48)を非励磁状態の時には連通状態となり励磁状態の時に遮断状態に切替わる常開型二位置電磁弁で構成することができる。
【0017】
このような場合には、請求項5に示されるように、第1制御弁(23、53)と第2制御弁(18、48)は、二次回路に発生する負圧を解消する際には、第1制御弁(23、53)と第2制御弁(18、48)を励磁状態にするモードと、第1制御弁(23、53)と第2制御弁(18、48)を非励磁状態にするモードとが順に行われるようにすることで、請求項3に示した効果を得ることが可能となる。
【0018】
この場合、請求項6に示されるように、二次回路に発生する負圧を解消する際には、第1制御弁(23、53)と第2制御弁(18、48)を励磁状態にするモードと、第1制御弁(23、53)と第2制御弁(18、48)を非励磁状態にするモードが交互に繰り返し行われるようにすれば、より負圧を小さくすることが可能となる。
【0019】
以上請求項1ないし6に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置は、2輪車と4輪車のいずれに対しても適用可能であるが、2輪車に適用した場合には、既存の4輪車のブレーキ液圧制御用アクチュエータを使用することが可能となる。
【0020】
また、請求項8に示されるように、ブレーキ液圧発生手段が、ブレーキ液を貯留するマスタリザーバ(43a)を備えたマスタシリンダ(43)である場合において、負圧解消用管路を、マスタリザーバ(43a)に接続された形態とすることもできる。
【0021】
この場合には、負圧解消制御処理が実行されている場合にドライバがブレーキ操作部材(41)を操作したとしても、負圧解消用管路がマスタシリンダ(43)と制動力発生手段(44)との間の経路と分離されているため、請求項3で説明したような負圧分だけブレーキ操作部材(11、41)が深くまで入り込んでしまうということが発生しない。このため、負圧解消用管路に第1制御弁(53)を備えるだけで済む。
【0022】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0024】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置1の全体構成を示したものである。本実施形態で示す車両用ブレーキ液圧制御装置1は、4輪車両に搭載されるものである。この車両用ブレーキ液圧制御装置1は、左前輪FLと右後輪RRに対してブレーキ液圧を発生させる第1配管系統と右前輪FRと左後輪RLに対してブレーキ液圧を発生させる第2配管系統を有するX配管や、両前輪FL、FRに対してブレーキ液圧を発生させる第1配管系統と両後輪RL、RRに対してブレーキ液圧を発生させる第2配管系統を有する前後配管等、どのような配管系統に対しても適用可能であるが、ここではX配管とした場合を例に挙げて説明する。なお、図1では、第1配管系統のみを図示しているが、第2配管系統も第1配管系統と同様の構成となっている。以下、図1を参照して、本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置1について説明する。
【0025】
図1に示されるように、車両用ブレーキ液圧制御装置1には、ブレーキペダル11、倍力装置12、ブレーキ液圧発生手段に相当するM/C13、制動力発生手段に相当するW/C14、15、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ2およびブレーキECU3が備えられている。
【0026】
車両に制動力を加える際にドライバによって踏み込まれるブレーキ操作部材としてのブレーキペダル11は、倍力装置12およびM/C13に接続されており、ドライバがブレーキペダル11を踏み込むと、倍力装置12にて踏力が倍力され、M/C13に配設されたマスタピストン13a、13bを押圧する。これにより、これらマスタピストン13a、13bによって区画されるプライマリ室13cとセカンダリ室13dとに同圧のM/C圧が発生させられるようになっている。
【0027】
M/C13には、プライマリ室13cおよびセカンダリ室13dそれぞれと連通する通路を有するマスタリザーバ13eが備えられている。マスタリザーバ13eは、その通路を通じてM/C13内にブレーキ液を供給したり、M/C13内の余剰のブレーキ液を貯留したりする。なお、各通路は、プライマリ室13cおよびセカンダリ室13dから延びる各主管路の管路直径よりも非常に小さい直径に形成されるため、M/C13のプライマリ室13cおよびセカンダリ室13d側からマスタリザーバ13eへのブレーキ液の流入の際にはオリフィス効果を発揮するようになっている。
【0028】
M/C13に発生させられるM/C圧は、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ2を通じて各W/C14、15に伝えられるようになっている。
【0029】
ブレーキ液圧制御用アクチュエータ2は、左前輪FLと右後輪RRに対してブレーキ液圧を発生させる第1配管系統と右前輪FRと左後輪RLに対してブレーキ液圧を発生させる第2配管系統を有した構成となっており、上述したように、第1、第2配管系統は同様の構成とされている。
【0030】
第1配管系統には、上述したM/C圧を左前輪FLに備えられたW/C14及び右後輪RRに備えられたW/C15に伝達する主管路となる管路Aが備えられている。この管路Aを通じて、各W/C14、15それぞれに対してW/C圧が発生させられるようになっている。
【0031】
この管路Aは、3つの管路A1〜A3に分岐している。そのうちの1つの管路A1はW/C14に接続され、もう1つの管路A2はW/C15に接続され、残る1つの管路A3は負圧解消用管路として機能するもので後述する管路Bに接続されている。
【0032】
管路A1には、W/C14へのブレーキ液圧の増圧を制御する第1増圧制御弁16が備えられ、管路A2には、W/C15へのブレーキ液圧の増圧を制御する第2増圧制御弁17が備えられている。
【0033】
第1、第2増圧制御弁16、17は、管路A1、A2の連通・遮断状態を制御できる常開型2位置電磁弁により構成されている。これら第1、第2増圧制御弁16、17が連通状態に制御されているときには、M/C圧をW/C14、15に加えることができるようになっている。なお、ドライバが行うブレーキペダル11の操作による通常のブレーキ時においては、第1、第2増圧制御弁16、17は、非励磁状態であるため、常時連通状態に制御されている。
【0034】
また、第1、第2増圧制御弁16、17には、それぞれ安全弁16a、17aが並列に設けられている。各増圧制御弁16、17の安全弁16a、17aは、ABS制御時等で各増圧制御弁16、17が遮断状態に制御されている際に、ドライバによりブレーキペダル11が戻されたとき、この戻し操作に対応して左前輪FLおよび右後輪RRのW/C圧を減圧可能とするために設けられている。
【0035】
さらに、管路A3にも、第2制御弁に相当する制御弁18が備えられている。この制御弁18は、第1、第2増圧制御弁16、17と同様に、管路A3の連通・遮断状態を制御できる常開型2位置電磁弁により構成されている。この制御弁18は、二次回路に発生する負圧を解消するときに駆動されるもので、後述する負圧解消のための処理(負圧解消制御処理)が実行されていない時には常時連通状態に制御されている。
【0036】
管路A1、A2における第1、第2増圧制御弁16、17及び各W/C14、15の間とリザーバ20を結ぶ減圧管路としての管路Bには、第1減圧制御弁21と第2減圧制御弁22とがそれぞれ配設されている。これら第1、第2減圧制御弁21、22は、各W/C14、15とリザーバ20の間の連通・遮断状態を制御できる常閉型2位置電磁弁により構成されている。これら第1、第2減圧制御弁21、22は、通常ブレーキ時には、非励磁状態であるため、常時遮断状態とされている。
【0037】
リザーバ20と主管路である管路Aとの間を結ぶように還流管路となる管路Cが配設されている。この管路Cにはリザーバ20から管路Aにおける第1、第2増圧制御弁16、17および制御弁18よりも上流側に向けてブレーキ液を吸入吐出するように、モータ25によって駆動される自吸式のポンプ19が設けられている。
【0038】
なお、ポンプ19の吐出口側には、ポンプ19に対して高圧なM/C圧が加えられないように、安全弁19aが備えられている。また、ポンプ19が吐出したブレーキ液の脈動を緩和するために管路Cのうちポンプ19の吐出側にはオリフィス24が配設されている。
【0039】
リザーバ20は、所定容量までブレーキ液を流入させることができるように構成されている。このリザーバ20のリザーバ室20a内には、所定ストロークを有するピストン20bとリザーバ室20a内のブレーキ液を排出させる方向にピストン20bを付勢するスプリング20cが備えられている。
【0040】
このように構成されたリザーバ20は、各W/C14、15に対してW/C圧を発生させているブレーキ液を逃がし、ポンプ19での吸入が行われると収容したブレーキ液をポンプ19に向けて排出するようになっている。
【0041】
さらに、管路A3のうち制御弁18よりも管路B側には、第1制御弁に相当する制御弁23が備えられている。この制御弁23は、第1、第2減圧制御弁21、22と同様に、管路A3の連通・遮断状態を制御できる常閉型2位置電磁弁により構成されている。この制御弁23は、二次回路に発生する負圧を解消するときに駆動されるもので、後述する負圧解消のための処理(負圧解消制御処理)が実行されていない時には常時遮断状態に制御されている。
【0042】
このようにして、第1配管系統が構成されている。そして、第2配管系統にも、第1配管系統と同様に、上述した第1、第2増圧制御弁16、17、制御弁18、ポンプ19、リザーバ20、減圧制御弁21、22および制御弁23が備えられ、車両用ブレーキ液圧制御装置1におけるブレーキ液圧制御用アクチュエータ2が構成されている。
【0043】
また、図1に示したブレーキECU3は、電子制御手段に相当するもので、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えた周知のマイクロコンピュータによって構成され、ROMなどに記憶されたプログラムに従って各種演算や負圧解消制御処理などの各種処理を実行する。
【0044】
このブレーキECU3からの電気信号に基づいて、上記のように構成されたブレーキ液圧制御用アクチュエータ2における各制御弁16〜18、21〜23及びポンプ19を駆動するためのモータ25への電圧印加制御が実行されるようになっている。これにより、各W/C14、15に発生させられるW/C圧が制御されるようになっている。
【0045】
例えば、ABS制御時などにおいて、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ2では、ブレーキECU3からモータ25および電磁弁駆動用のソレノイドに対して制御電圧が印加されると、その印加電圧に応じてブレーキ液圧制御用アクチュエータ2内の各制御弁16〜18、21〜23が駆動され、液圧回路の経路が設定される。そして、設定された経路に応じたブレーキ液圧がW/C14、15に発生させられ、各車輪FL〜RRに発生させられる制動力を制御できるようになっている。
【0046】
また、車両用ブレーキ液圧制御装置1には、車輪速度センサ4、5も備えられている。車輪速度センサ4、5は、各車輪FL〜RRに対応して配設され、各車輪FL〜RRの回転速度、すなわち車輪速度に比例するパルス数のパルス信号をブレーキECU3に向けて出力する。このため、ブレーキECU3では、各車輪速度センサ4、5からの検出信号に基づいて、各車輪FL〜RRの車輪速度や車速(推定車体速度)を求め、これらに基づいてABS制御等のブレーキ液圧制御を実行するようになっている。なお、ブレーキECU3による車速演算手法に関しては、周知の事項であるため、ここでは説明を省略する。
【0047】
以上のようにして、本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置1が構成されている。続いて、この車両用ブレーキ液圧制御装置1により実行される負圧解消制御処理について説明する。
【0048】
まず、本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置1が実行する負圧解消制御処理の説明に先立ち、そのような処理を行う理由について、図2−a〜図2−cに負圧解消制御処理中における負圧の様子を示して説明する。
【0049】
車両用ブレーキ液圧制御装置1では、上記のように、ブレーキ液圧制御が終了した後、もしくは、イニシャルチェックの際に、第1、第2減圧制御弁21、22が非励磁状態、つまり閉状態であるにも関わらず、ポンプ19が所定時間駆動されることになる。このような場合、図2−aのハッチングで示した領域、具体的には管路Bおよび管路A3のうち、第2減圧制御弁21、22および制御弁23とリザーバ20の間を接続する部分と、管路Cのうちリザーバ20とポンプ19の吸入ポートの間を接続する部分とにより構成される二次回路中に負圧が発生することになる。
【0050】
このため、この負圧を解消するために、まず、図2−bに示されるように、制御弁18を励磁状態(つまり閉状態)にすると共に制御弁23を励磁状態(つまり開状態)とする。これにより、管路A3のうち、制御弁18および逆止弁18aと制御弁23の間を接続する部分も負圧になるため、負圧の範囲が広がる反面、その部分が元々は大気圧もしくは正圧であったことから、負圧が全体的になじむと、負圧の絶対値が小さくなる。
【0051】
次に、図2−cに示されるように、制御弁23を非励磁状態(つまり閉状態)に切替え、それと同時もしくはそれよりも若干後に制御弁18も非励磁状態(つまり開状態)に切替える。これにより、管路A3のうち、制御弁18および逆止弁18aと制御弁23の間を接続する部分が、再びM/C13に接続された状態となって大気圧もしくは正圧に戻る。そして、再び、二次回路中のみが負圧となった状態となるが、この時点で発生している負圧の絶対値は、上記のような制御弁18、23の開閉駆動を行う前と比べて小さなものとなる。
【0052】
したがって、以上のような作動を負圧解消駆動の1サイクルとし、これを複数サイクル繰り返すようにすれば、負圧の絶対値を小さくできる。そして、そのサイクル数を多くすれば多くするほど、二次回路中の負圧の絶対値を小さくでき、負圧を解消することが可能となる。
【0053】
このような知見に基づき、本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置1では、以下のような負圧解消制御処理を実行する。
【0054】
図3は、ブレーキECU3により実行される負圧解消制御処理のフローチャートである。この処理は、例えばイグニッションスイッチがOFF状態からON状態に切替えられたときのイニシャルチェック後や、ブレーキ液圧制御が実行された後に車両が停止しているとき等、様々なタイミングで実行され得る。
【0055】
なお、イニシャルチェック後に上記処理を実行する場合には、例えば、ブレーキECU3中のROMに予めイグニッションスイッチがON状態になってから所定時間後に上記処理が実行されるようにプログラムを設定しておけば良い。また、ブレーキ液圧制御が実行された後、車両が停止したときに上記処理を実行する場合には、例えば、ABS制御等が開始される際にセットされるABS制御開始フラグがセットされたことを確認し、その後、ブレーキECU3で元々演算されている車速がゼロになったことを確認したときに上記処理が実行されるようにプログラムを設定しておけば良い。
【0056】
まず、ステップ100では、負圧解消駆動が所定回数(所定サイクル)終了したか否かが判定される。ここでいう負圧解消駆動の回数は、ブレーキECU3内に備えられるカウンタのカウント値によって数えられる。そして、カウンタのカウント値が所定値になったときを負圧解消駆動が所定回数行われたときとして判定するようになっている。このステップで否定判定されるとステップ110に進む。
【0057】
ステップ110では、負圧解消駆動を行う必要があるものとして、制御弁18を励磁状態(つまり閉状態)にすると共に、制御弁23を励磁状態(つまり開状態)とするモードの指令信号が出力される。これにより、制御弁18および制御弁23が共に励磁状態とされ、上述した図2−bに示される状態となる。
【0058】
続いて、ステップ120に進み、所定時間待機される。これにより、図2−bに示される状態が所定時間継続されて負圧が全体的になじむため、管路A3のうち、制御弁18および逆止弁18aと制御弁23の間を接続する部分も負圧になり、負圧の絶対値が小さくなる。
【0059】
そして、ステップ130に進んで、制御弁18を非励磁状態(つまり開状態)にすると共に、制御弁23を非励磁状態(つまり閉状態)とするモードの指令信号が出力される。これにより、制御弁18および制御弁23が共に非励磁状態とされ、上述した図2−cに示される状態となる。このため、管路A3のうち、制御弁18および逆止弁18aと制御弁23の間を接続する部分が、再びM/C13に接続された状態となって大気圧もしくは正圧に戻る。
【0060】
この後、ステップ140に進み、負圧解消駆動が1サイクル分終了したものとして、カウンタのカウント値を1つインクリメントして、ステップ100に戻る。
【0061】
このような処理が所定回数繰り返されると、ステップ100で肯定判定され、ステップ150に進む。そして、ステップ150にて、カウンタのカウント値がクリアされて負圧解消制御処理が完了となる。
【0062】
続いて、以上説明した本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置1により得られる効果について説明する。
【0063】
まず、上述したように、管路A3を通じて、二次回路を管路AにおけるM/C13と各増圧制御弁16、17の間に接続すると共に、この管路中に制御弁18、23を備えた構成としている。このような構成において、繰り返し制御弁18、23を励磁状態と非励磁状態にすることで、二次回路中に発生する負圧を解消することが可能となる。このため、二次回路中に負圧が発生した場合に生じ得るエアに起因して、ブレーキ操作部材のストロークがエアの体積分だけ大きくなることを防止することが可能となる。このため、ドライバがブレーキ操作部材を操作する際のフィーリングの悪化を防止できる。
【0064】
また、上述したように、本実施形態では、二次回路中の負圧を解消するために制御弁18と制御弁23の2つの制御弁を備えた構成としている。二次回路中の負圧を解消するためだけであれば、二次回路を大気圧もしくは正圧となる部位に接続しておき、その接続状態を1つの制御弁(好ましくは常閉型電磁弁で構成された制御弁23)で切り替えれば済む。つまり、負圧解消制御処理が実行される場合のみ二次回路が大気圧もしくは正圧となる部位に接続し、それ以外の時にはその部位に接続されないようにすれば良い。
【0065】
しかしながら、2つの制御弁18、23を備えることで、負圧解消制御処理が実行されているか否かに関わらず、常に、M/C13とW/C14、15との間を、2つの制御弁18、23のうちのいずれか一方で遮断状態としておくことが可能となる。このため、仮に、負圧解消制御処理が実行されて間も無いとき、つまりまだ負圧が発生している最中に、ドライバによりブレーキペダル11が踏み込まれたとしても、その負圧分だけブレーキペダル11が深くまで入り込んでしまうことを防止することが可能となる。
【0066】
また、本実施形態では、二次回路中の負圧を解消するための管路A3と制御弁18、23を第1配管系統と第2配管系統それぞれに1つずつ設けた構成としている。基本的には、これらを各車輪FL〜RRのW/C14、15に接続される各配管A1、A2ごとに設けることが可能であるが、各配管系統に対して1つのみ設けた構成としている。このため、車両用ブレーキ液圧制御装置1の構成の簡略化を図ることが可能となる。
【0067】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、4輪車ではなく2輪車に対して適用される車両用ブレーキ液圧制御装置について説明する。
【0068】
図4は、本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置31の全体構成を示したものである。この図では、第1配管系統のみを図示しているが、第2配管系統も第1配管系統と同様の構成となっている。以下、図4を参照して、本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置31について説明する。なお、本実施形態の基本構成は第1実施形態と同様であるため、主に異なる部分について説明する。
【0069】
図4に示されるように、車両用ブレーキ液圧制御装置31には、ブレーキレバー41、倍力装置42、ブレーキ液圧発生手段に相当するM/C43、制動力発生手段に相当するW/C44、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ32およびブレーキECU33が備えられている。
【0070】
ブレーキレバー41は、車両に制動力を加える際にドライバによって操作されるブレーキ操作部材であり、第1実施形態におけるブレーキペダル11に対応するものである。倍力装置42、M/C43およびW/C44に関しては、第1実施形態における倍力装置12、M/C43およびW/C14に対応するものであり、同様の作動が行われる。
【0071】
M/C43に発生させられるM/C圧は、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ32を通じて各W/C44に伝えられるようになっている。
【0072】
ブレーキ液圧制御用アクチュエータ2は、前輪FWに対してブレーキ液圧を発生させる第1配管系統と後輪RWに対してブレーキ液圧を発生させる第2配管系統を有した構成となっており、上述したように、第1、第2配管系統は同様の構成とされている。
【0073】
第1配管系統には、前輪FWに備えられたW/C44に伝達する主管路となる管路Dが備えられている。この管路Dを通じて、W/C44に対してW/C圧が発生させられるようになっている。
【0074】
この管路Dは、2つの管路D1、D2に分岐している。そのうちの1つの管路D1はW/C44に接続され、もう1つの管路D2は負圧解消用管路として機能するもので後述する管路Eに接続されている。
【0075】
管路D1には、W/C44へのブレーキ液圧の増圧を制御する増圧制御弁46が備えられている。増圧制御弁46は、管路D1の連通・遮断状態を制御できる常開型2位置電磁弁により構成されており、第1実施形態で示した第1増圧制御弁16と同様の作動を行うようになっている。なお、この増圧制御弁46にも、第1実施形態における安全弁16aと同様の役割を果たす安全弁46aが並列に設けられている。
【0076】
さらに、管路D2には、第2制御弁に相当する制御弁48が備えられている。この制御弁48は、増圧制御弁46と同様に、管路D2の連通・遮断状態を制御できる常開型2位置電磁弁により構成されている。この制御弁48が、第1実施形態における制御弁18と同様の役割を果たすもので、二次回路に発生する負圧を解消するときに駆動され、負圧解消制御処理が実行されていない時には常時連通状態に制御されている。
【0077】
管路D1における増圧制御弁46及び各W/C44の間とリザーバ50を結ぶ減圧管路としての管路Eには、減圧制御弁51が配設されている。減圧制御弁51は、各W/C44とリザーバ50の間の連通・遮断状態を制御できる常閉型2位置電磁弁により構成されており、第1実施形態における第1減圧制御弁21と同様の作動を行うようになっている。
【0078】
リザーバ50と主管路である管路Dとの間を結ぶように還流管路となる管路Fが配設されている。この管路Fにはリザーバ50から管路Dにおける増圧制御弁46および制御弁48よりも上流側に向けてブレーキ液を吸入吐出するように、モータ55によって駆動される自吸式のポンプ49が設けられている。これらリザーバ50、モータ55およびポンプ49は、第1実施形態におけるリザーバ20、モータ25およびポンプ19と同様の作動を行う。
【0079】
さらに、管路D2のうち制御弁48よりも管路E側には、制御弁53が備えられている。この制御弁53は、減圧制御弁51と同様に、管路D2の連通・遮断状態を制御できる常閉型2位置電磁弁により構成されている。この制御弁53が、第1実施形態における制御弁23と同様の役割を果たすもので、二次回路に発生する負圧を解消するときに駆動され、負圧解消制御処理が実行されていない時には常時遮断状態に制御されている。
【0080】
このようにして、第1配管系統が構成されている。そして、第2配管系統にも、第1配管系統と同様に、上述した増圧制御弁46、制御弁48、ポンプ49、リザーバ50、減圧制御弁51および制御弁53が備えられ、車両用ブレーキ液圧制御装置31におけるブレーキ液圧制御用アクチュエータ32が構成されている。
【0081】
また、ブレーキECU33は、電子制御手段に相当するもので、第1実施形態で示したブレーキECU33と同様の作動を行う。さらに、車両用ブレーキ液圧制御装置31には、車輪速度センサ34も備えられている。車輪速度センサ34は、各車輪FW、RWに対応して配設され、各車輪FW、RWの回転速度、すなわち車輪速度に比例するパルス数のパルス信号をブレーキECU33に向けて出力する。この車輪速度センサ34の検出信号に基づいて、ブレーキECU33で各種演算が行われるようになっている。
【0082】
このように構成された2輪車における車両用ブレーキ液圧制御装置31では、第1実施形態と同様の負圧解消制御処理が実行される。
【0083】
すなわち、ブレーキ液圧制御が終了した後、もしくは、イニシャルチェックの際に、減圧制御弁51が非励磁状態、つまり閉状態であるにも関わらず、ポンプ49が所定時間駆動されることになる。このような場合、管路Eおよび管路D1、D2のうち、減圧制御弁51および制御弁53とリザーバ50の間を接続する部分と、管路Fのうちリザーバ50とポンプ49の吸入ポートの間を接続する部分とにより構成される二次回路中に負圧が発生することになる。
【0084】
このため、この負圧を解消するために、まず、制御弁48を励磁状態(つまり閉状態)にすると共に制御弁53を励磁状態(つまり開状態)とする。これにより、管路D2のうち、制御弁48および逆止弁48aと制御弁53の間を接続する部分も負圧になるため、負圧の範囲が広がる反面、その部分が元々は大気圧もしくは正圧であったことから、負圧が全体的になじむと、負圧の絶対値が小さくなる。
【0085】
次に、制御弁53を非励磁状態(つまり閉状態)に切替え、それと同時もしくはそれよりも若干後に制御弁48も非励磁状態(つまり開状態)に切替える。これにより、管路D2のうち、制御弁48および逆止弁48aと制御弁53の間を接続する部分が、再びM/C43に接続された状態となって大気圧もしくは正圧に戻る。そして、再び、二次回路中のみが負圧となった状態となるが、この時点で発生している負圧の絶対値は、上記のような制御弁48、53の開閉駆動を行う前と比べて小さなものとなる。
【0086】
以上のような作動を負圧解消駆動の1サイクルとし、これが複数サイクル繰り返されることで、負圧を解消することが可能となる。なお、ブレーキECU33で実行される具体的な負圧解消制御処理のフローチャートに関しては、第1実施形態に対して制御対象が制御弁18、23から制御弁48、53に変更されるのみで、全く変わらないため、ここでは説明を省略する。
【0087】
このように、本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置31によっても、第1実施形態と同様に、二次回路中に発生した負圧を解消することが可能となる。
【0088】
また、本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置31において、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ32、つまり2輪車用のブレーキ液圧制御装置に負圧解消制御処理を行うための管路D2および制御弁48、53を設けた構造が、一般的に4輪車用のブレーキ液圧制御用アクチュエータとして用いられている既存のものと同じ構造となる。このため、4輪車用のブレーキ液圧制御用アクチュエータをそのまま本実施形態のブレーキ液圧制御用アクチュエータ32として適用することが可能となる。
【0089】
なお、この場合、例えば、アルミなどの金属ブロックで構成されたブレーキ液圧制御用アクチュエータ32に4つの車輪に対応するポートが空けられることになるため、そのうちの2輪分のみを前輪FWと後輪RWに対するW/C44に接続されるポートとして用い、不要となるポートを蓋32aで閉じることで、図4に示されるブレーキ液圧制御用アクチュエータ32を構成できる。
【0090】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態も、4輪車ではなく2輪車に対して適用される車両用ブレーキ液圧制御装置について説明する。
【0091】
図5は、本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置31の全体構成を示したものである。以下、図5を参照して、本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置31について説明するが、本実施形態の基本構成は第2実施形態と同様であるため、同様の部分については同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0092】
図5に示されるように、本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置31では、M/C43とW/C44とを接続する管路Dを2つに分岐させない構成、つまり第2実施形態に示された管路D2や制御弁48および逆止弁48aを無くした構成としている。また、管路Eのうち減圧制御弁51とリザーバ50の間に接続される管路Gを備え、この管路Gに制御弁53を備えた構成としている。そして、管路Gがブレーキ液圧制御用アクチュエータ32に備えられたポート32bを通じて大気圧相当のブレーキ液を貯留しているマスタリザーバ43aに接続された構成となっている。なお、その他の構成に関しては、第1実施形態と同様である。
【0093】
このように構成された2輪車における車両用ブレーキ液圧制御装置31でも、第1、第2実施形態と同様の負圧解消制御処理が実行されるが、その制御形態が第1、第2実施形態とは異なったものとなる。この本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置31による負圧解消制御処理について具体的に説明する。
【0094】
まず、ブレーキ液圧制御が終了した後、もしくは、イニシャルチェックの際に、減圧制御弁51が非励磁状態、つまり閉状態であるにも関わらず、ポンプ49が所定時間駆動されることなる。これにより、管路D、EおよびGのうち、減圧制御弁51および制御弁53とリザーバ50の間を接続する部分と、管路Fのうちリザーバ50とポンプ49の吸入ポートの間を接続する部分とにより構成される二次回路中に負圧が発生することになる。
【0095】
このため、この負圧を解消するために負圧解消制御処理が開始され、制御弁53が励磁状態とされる。これにより、制御弁53が開状態となるため、管路Gを通じて二次回路が大気圧相当のブレーキ液が貯留されたマスタリザーバ43aと接続されることになる。したがって、マスタリザーバ43aに貯留されたブレーキ液が管路Gを通じて二次回路に供給されることになり、二次回路の負圧を解消することが可能となる。
【0096】
このように、本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置31によっても、二次回路の負圧を解消することが可能となり、第1、第2実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0097】
また、本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置31の場合、負圧を解消するために備えられた管路Gの接続される部位が大気圧相当のブレーキ液を貯留しているマスタリザーバ43aとされている。このため、負圧を解消するための管路Gが主管路となる管路Dと繋がっておらず、仮に負圧解消制御処理が行われている最中にドライバがブレーキレバー41を操作したとしても、M/C43で発生させられたM/C圧がそのままW/C44に伝えられることになり、通常のブレーキ動作と負圧解消制御のための動作が干渉しないという効果も得ることができる。
【0098】
(他の実施形態)
上記第1実施形態では、車両用ブレーキ液圧制御装置1として、二次回路中の負圧を解消するための制御弁18、23を除くと、第1、第2配管系統に合計8つの制御弁16、17、21、22が備えられたいわゆる8solタイプの基本的なブレーキ液圧制御用アクチュエータ2を例に挙げて説明したが、これに限るものではない。すなわち、減圧制御弁を通じてリザーバにブレーキ液を逃がし、そのブレーキ液をポンプで吸入するような構成を有しているブレーキ液圧制御用アクチュエータであれば、どのような構造のものであっても本発明を適用することが可能である。
【0099】
また、上記第3実施形態では、2輪車用の車両用ブレーキ液圧制御装置として説明したが、これと同様の構成を4輪用として適用することも可能である。すなわち、4輪それぞれのW/Cおよび増圧制御弁の間とリザーバを接続する管路中において、減圧制御弁よりも下流側(つまり減圧制御弁とリザーバの間)をマスタリザーバと接続し、その管路途中に制御弁を配置した構成とすれば良い。ただし、4輪車の場合、4輪それぞれのW/CがM/Cと接続されることになるため、勿論、第1、第2配管系統にそれぞれ2つのW/Cと対応する管路が備えられることになる。
【0100】
また、上記第2、第3実施形態では、第1、第2配管系統が同様の構成と説明したが、各配管系統のM/C圧を発生させるブレーキ操作部材は、必ずしも同様の構成でなくても構わない。すなわち、無断変速タイプの2輪車のようにハンドルの両側にブレーキレバーが備えられている場合には、それぞれのブレーキレバーがブレーキ操作部材となって第1、第2配管系統が同様の構成となるが、変速タイプの2輪車のようにハンドルの右側がブレーキレバーで左側がクラッチとなっており、右足側にブレーキペダルが備えられた構成の場合には、ブレーキレバーとブレーキペダルがブレーキ操作部材となる。
【0101】
なお、ここではブレーキ液圧発生手段に相当するM/C13、43がブレーキ操作部材に相当するブレーキペダル11やブレーキレバー41と直接連結された構造の車両用ブレーキ液圧制御装置1、31を例に挙げて説明した。しかしながら、これは単なる一例であり、ドライバによるブレーキ操作部材の操作に基づいてブレーキ液圧を発生させるブレーキ液圧制御手段がブレーキペダル11と分離された構成とされていても構わない。例えば、ブレーキ操作部材の操作量をセンサ等で読み取り、その操作量に応じてモータなどのアクチュエータを駆動することで液圧シリンダを駆動し、液圧シリンダで発生させられたブレーキ液圧がW/Cに伝えられるように構成されるような構造であっても構わない。この場合、モータなどのアクチュエータや液圧シリンダがブレーキ液圧発生手段として機能する。
【0102】
要するに、ABS制御等のブレーキ液圧制御を実行できるようなブレーキ液圧制御用アクチュエータ2、32が備えられるような車両用ブレーキ液圧制御装置であれば、どのようなものに対しても本発明を適用することが可能である。
【0103】
なお、上記実施形態では、第1、第2制御弁18、23、48、53が二位置電磁弁で構成される場合について説明したが、これらを三位置電磁弁で構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の第1実施形態における車両用ブレーキ液圧制御装置1の全体構成を示す図である。
【図2−a】図1に示す車両用ブレーキ液圧制御装置1による負圧解消制御中の負圧の様子を示した模式図である。
【図2−b】図1に示す車両用ブレーキ液圧制御装置1による負圧解消制御中の負圧の様子を示した模式図である。
【図2−c】図1に示す車両用ブレーキ液圧制御装置1による負圧解消制御中の負圧の様子を示した模式図である。
【図3】ブレーキECU3により実行される負圧解消制御処理のフローチャートである。
【図4】本発明の第2実施形態における車両用ブレーキ液圧制御装置1の全体構成を示す図である。
【図5】本発明の第3実施形態における車両用ブレーキ液圧制御装置1の全体構成を示す図である。
【符号の説明】
【0105】
1、31…車両用ブレーキ液圧制御装置、2、32…ブレーキ液圧制御用アクチュエータ、3、33…ブレーキECU、4、5、34…車輪速度センサ、11…ブレーキペダル、13、43…M/C、16、17、46…増圧制御弁、18、48…制御弁(第2制御弁)、19、49…ポンプ、20、50…リザーバ、21、22、52…減圧制御弁、23、53…制御弁(第1制御弁)、25、55…モータ、32a…蓋、41…ブレーキレバー、43a…マスタリザーバ、A、D…管路(主管路)、A3、D2、G…管路(負圧解消用管路)、B、E…管路(減圧管路)、C、F…管路(還流管路)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバによるブレーキ操作部材(11、41)の操作に基づいてブレーキ液圧を発生させるブレーキ液圧発生手段(13、43)と、
前記ブレーキ液圧発生手段(13、43)で発生させられたブレーキ液圧が伝えられることで車輪(FR〜RR、FW、RW)に制動力を発生させる制動力発生手段(14、15、44)と、
前記ブレーキ液圧発生手段(13、43)と前記制動力発生手段(14、15、44)を接続する主管路(A、D)と、
前記主管路(A、D)に備えられ、該主管路(A、D)のブレーキ液の流動を制御する増圧制御弁(16、17、46)と、
前記主管路(A、D)における前記増圧制御弁(16、17、46)と前記制動力発生手段(14、15、44)の間に接続された減圧管路(B、E)と、
前記減圧管路(B、E)に接続され、前記主管路(A、D)における前記増圧制御弁(16、17、46)と前記制動力発生手段(14、15、44)の間のブレーキ液を逃がすためのリザーバ(20、50)と、
前記減圧管路(B、E)のうち前記リザーバ(20、50)の上流側に配置され、該減圧管路(B、E)のブレーキ液の流動を制御する減圧制御弁(21、22、51)と、
前記主管路(A、D)における前記ブレーキ液圧発生手段(13、43)と前記増圧制御弁(16、17、46)の間と前記リザーバ(20、50)を接続する還流管路(C、F)と、
前記還流管路(C、F)に備えられ、前記リザーバ(20、50)に逃がされたブレーキ液を吸入し、前記主管路(A、D)に向けて吐出するポンプ(19、49)と、
前記減圧管路(B、E)における前記減圧制御弁(21、22、51)と前記リザーバ(20、50)の間および前記還流管路(C、F)における前記リザーバ(20、50)と前記ポンプ(19、49)の間を二次回路として、この二次回路に接続される負圧解消用管路(A3、D2、G)と、
前記負圧解消用管路(A3、D2、G)に備えられ、該負圧解消用管路(A3、D2、G)のブレーキ液の流動を制御する第1制御弁(23、53)とを備え、
前記負圧解消用管路(A3、D2、G)は、ブレーキ液が大気圧相当もしくは正圧となる部位に接続されていることを特徴とする車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項2】
前記負圧解消用管路は、前記主管路(A、D)における前記ブレーキ液圧発生手段(13、43)と前記増圧制御弁(16、17、46)の間に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項3】
前記負圧解消用管路のうち、前記第1制御弁(23、53)から前記主管路(A、D)に至るまでの間に、該負圧解消用管路のブレーキ液の流動を制御する第2制御弁(18、48)が備えられていることを特徴とする請求項2に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項4】
前記第1制御弁(23、53)は、非励磁状態の時には遮断状態となり励磁状態の時に連通状態に切替わる常閉型二位置電磁弁であり、
前記第2制御弁(18、48)は、非励磁状態の時には連通状態となり励磁状態の時に遮断状態に切替わる常開型二位置電磁弁であることを特徴とする請求項3に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項5】
前記第1制御弁(23、53)と前記第2制御弁(18、48)は、前記二次回路に発生する負圧を解消する際には、前記第1制御弁(23、53)と前記第2制御弁(18、48)を励磁状態にするモードと、前記第1制御弁(23、53)と前記第2制御弁(18、48)を非励磁状態にするモードとが順に行われることを特徴とする請求項4に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項6】
前記二次回路に発生する負圧を解消する際には、前記第1制御弁(23、53)と前記第2制御弁(18、48)を励磁状態にするモードと、前記第1制御弁(23、53)と前記第2制御弁(18、48)を非励磁状態にするモードとが交互に繰り返し行われることを特徴とする請求項4に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一つの車両用ブレーキ液圧制御装置は、2輪車に適用されるものであることを特徴とする2輪車用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項8】
前記ブレーキ液圧発生手段は、ブレーキ液を貯留するマスタリザーバ(43a)を備えたマスタシリンダ(43)であり、
前記負圧解消用管路は、前記マスタリザーバ(43a)に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項9】
前記第1制御弁(53)は、非励磁状態の時には遮断状態となり励磁状態の時に連通状態に切替わる常閉型二位置電磁弁であることを特徴とする請求項8に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。

【図1】
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【図2−a】
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【図2−b】
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【図2−c】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−315472(P2006−315472A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−138175(P2005−138175)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】