車両用ブレーキ液圧制御装置
【課題】カムの小型化や出力軸の小型化を図ることができ、装置全体の小型化や低コスト化を図る。
【解決手段】第1液圧系と第2液圧系とに区画された液圧系統を有し、電動モータにより駆動されるカム軸と、カム軸により回転駆動される偏心カム211a、211bと、偏心カム211a、211bにより位相差をもたせて第1、第2液圧系に液圧をそれぞれ発生させる、少なくとも四以上の偶数個のプランジャポンプ6A〜6Fと、を備え、プランジャポンプは、複数の第一のプランジャポンプ6A,6C,6Eと、これと同数の第二のプランジャポンプ6B,6D,6Fとからなり、偏心カム211a、211bは複数個であり、これらが1回転駆動される毎に全てのプランジャポンプ6A〜6Fが駆動されて、第1液圧系と第2液圧系とに均等に液圧を発生させる構成とした。
【解決手段】第1液圧系と第2液圧系とに区画された液圧系統を有し、電動モータにより駆動されるカム軸と、カム軸により回転駆動される偏心カム211a、211bと、偏心カム211a、211bにより位相差をもたせて第1、第2液圧系に液圧をそれぞれ発生させる、少なくとも四以上の偶数個のプランジャポンプ6A〜6Fと、を備え、プランジャポンプは、複数の第一のプランジャポンプ6A,6C,6Eと、これと同数の第二のプランジャポンプ6B,6D,6Fとからなり、偏心カム211a、211bは複数個であり、これらが1回転駆動される毎に全てのプランジャポンプ6A〜6Fが駆動されて、第1液圧系と第2液圧系とに均等に液圧を発生させる構成とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ブレーキ液圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車両用ブレーキ液圧制御装置では、液圧回路に設けられたプランジャポンプを作動させることによってブレーキ液圧を増圧させる等の制御が行われている。
従来、このようなプランジャポンプにおける脈動の安定化を図るものとして、複数のプランジャポンプを昇圧装置として有する車両用ブレーキ液圧制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特表2002−517354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の車両用ブレーキ液圧制御装置では、一つの偏心カムで六つのプランジャポンプを駆動するように構成されていた。このため、この車両用ブレーキ液圧制御装置では、偏心カムへの負荷が大きくなり、偏心カムの小型化やカム軸の小型化を図ることが難しくなっていた。
【0005】
これにより、従来の車両用ブレーキ液圧制御装置では、装置全体の小型化や低コスト化が阻まれるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、偏心カムの小型化や出力軸の小型化を図ることができ、装置全体の小型化や低コスト化を図ることができる車両用ブレーキ液圧制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために創案された本発明は、第一液圧系と第二液圧系とに区画された液圧系統を有し、電動モータにより駆動されるカム軸と、前記カム軸により回転駆動される偏心カムと、前記偏心カムにより位相差をもたせて前記第一、第二液圧系に液圧をそれぞれ発生させる、少なくとも四以上の偶数個のプランジャポンプと、を備えた車両用ブレーキ液圧制御装置であって、前記プランジャポンプは、複数の第一のプランジャポンプと、前記第一のプランジャポンプと同数の第二のプランジャポンプとからなり、前記偏心カムは複数個であり、これらが1回転駆動される毎に全ての前記第一、第二のプランジャポンプがそれぞれ駆動されて、前記第一液圧系と前記第二液圧系とに均等に液圧を発生させることを特徴とする。
【0008】
かかる車両用ブレーキ液圧制御装置によると、複数個の偏心カムによって複数個のプランジャポンプを駆動するように構成されているので、複数個のプランジャポンプからの応力を複数個の偏心カムに分散させることができ、偏心カム一つ当りの負荷を低減することができる。
これにより、一つの偏心カムで全てのプランジャポンプを駆動した場合に比べて、一つあたりの偏心カムへの負荷が小さくなり、その分、偏心カムの小型化や低コスト化を図ることができる。
したがって、装置全体の小型化や低コスト化を図ることができる車両用ブレーキ液圧制御装が得られる。
【0009】
また、プランジャポンプは、複数の第一のプランジャポンプと、この第一のプランジャポンプと同数の第二のプランジャポンプとからなり、複数個の偏心カムが1回転駆動される毎に全ての第一、第二のプランジャポンプがそれぞれ駆動されて、第一液圧系と第二液圧系とに均等に液圧を発生させるようになっているので、第一、第二のプランジャポンプの吐出により生じ易い脈動を、第一、第二のプランジャポンプ毎に、さらにはこれらを全体として効果的に低減することができる。
【0010】
また、本発明は、前記第一、第二のプランジャポンプは、前記カム軸の軸方向から見たときに、周方向に等間隔を置いて配置されている構成とするのがよい。
【0011】
かかる車両用ブレーキ液圧制御装置によると、第一、第二のプランジャポンプにおける複数個のプランジャポンプをカム軸の周りに等間隔に配置することができ、第一液圧系および第二液圧系への液路の配索を簡単化することができる。これによって、液路が形成される基体等の配索スペースに自由度が増すようになり、第一、第二のプランジャポンプが少なくとも四以上の偶数個のプランジャポンプを備える構成でありながら、スペースの有効利用を図って装置全体の小型化が可能となる。また、配索スペースの効率化等により空いたスペースを形成し、この空いたスペースを有効に利用して、例えば、車両用ブレーキ液圧制御装置に必要となる機能部品を配置したり、第一、第二のプランジャポンプの吸入側や吐出側の液路においてダンパ室を設置したりすることが容易となる。
【0012】
また、本発明は、前記第一、第二のプランジャポンプは、交互に、かつ等時間間隔を置いてそれぞれの前記偏心カムによって駆動される構成とするのがよい。
【0013】
かかる車両用ブレーキ液圧制御装置によると、第一、第二のプランジャポンプが、交互に、かつ等時間間隔で吐出動作を行うこととなるので、これらのプランジャポンプの吐出により生じ易い脈動を、効果的に低減することができる。
【0014】
また、本発明は、前記偏心カムは、前記カム軸の軸方向に二つ並設されており、前記第一、第二のプランジャポンプは、六つの前記プランジャポンプからなり、一方の前記偏心カムには、このうちの二つの前記プランジャポンプが対応して配置され、他方の前記偏心カムには、四つの前記プランジャポンプが対応して配置されているとともに、一方の前記偏心カムに対応して配置された前記二つのプランジャポンプは、一方の前記偏心カムの周りに180度間隔で配置されており、他方の前記偏心カムに対応して配置された前記四つのプランジャポンプは、他方の前記偏心カムの周りに、順に60度、120度、60度、120度の間隔で配置されている構成とするのがよい。
【0015】
かかる車両用ブレーキ液圧制御装置によると、二つのプランジャポンプが、一方の偏心カムの周りに、180度間隔で配置されており、また、四つのプランジャポンプが、他方の偏心カムの周りに、順に60度、120度、60度、120度の間隔で配置されているので、カム軸の周方向に第一,第二のプランジャポンプをスペース効率よく配置することができ、レイアウト性が高まる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、偏心カムの小型化やカム軸の小型化を図ることができ、装置全体の小型化や低コスト化を図ることができる車両用ブレーキ液圧制御装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、添付した図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、説明において、同一の要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。
参照する図面において、図1は本発明の一実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置を示す分解斜視図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置(以下、「ブレーキ液圧制御装置」という。)Uは、4輪自動車等に用いられるものであり、基体(プランジャポンプボディ)100と、基体100の後面に組み付けられるモータ200(電動モータ)と、基体100の前面に組み付けられるコントロールハウジング300と、コントロールハウジング300に収容される制御装置400とを備えて構成されている。
【0019】
ブレーキ液圧制御装置Uは、図12に示す液圧回路を具現化したものであり、四つの車輪ブレーキFR,RL,FL,RRのうちの二つの車輪ブレーキFR,RLを制動するためのブレーキ出力系統K1(第一液圧系)および残り二つの車輪ブレーキFL,RRを制動するためのブレーキ出力系統K2(第二液圧系)を備えていて、車輪ブレーキFR,RL,FL,RRごとに(すなわち、一つのブレーキ出力系統につき二つ)設けられた制御弁手段Vによって各車輪の独立したアンチロックブレーキ制御が可能となっており、さらに、各ブレーキ出力系統K1,K2に設けられたレギュレータRと吸入弁4と三つのプランジャポンプ6A〜6Fとが協働することによって挙動安定化制御が可能になっている。
【0020】
このようにブレーキ液圧制御装置Uは、1つのブレーキ出力系統につき三つのプランジャポンプ6A,6C,6E(6B,6D,6F)を有しており、両方のブレーキ出力系統K1,K2で、計六つのプランジャポンプ6A〜6Fを具備している。以下では、ブレーキ出力系統K1に配置されるプランジャポンプを第一のプランジャポンプ6A,6C,6Eと称し、ブレーキ出力系統K2に配置されるプランジャポンプを第二のプランジャポンプ6B,6D,6Fと称する。
【0021】
なお、第一のプランジャポンプ6A,6C,6E、第二のプランジャポンプ6B,6D,6Fについての詳細は後記する。
また、図12において、ブレーキ出力系統K1,K2は、実質的に略同一の構成であるので、以下においては主としてブレーキ出力系統K1について説明し、適宜ブレーキ出力系統K2について説明する。
【0022】
ブレーキ出力系統K1は、右前および左後の車輪を制動するためのものであり、入口ポート21から出口ポート22R,22Lに至る系統である。なお、入口ポート21には、液圧源であるマスタシリンダMの出力ポートM2に至る配管H1が接続され、出口ポート22R,22Lには、それぞれ車輪ブレーキFR,RLに至る配管H2,H2が接続される。
【0023】
ブレーキ出力系統K2は、左前および右後の車輪を制動するためのものであり、入口ポート23から出口ポート24L,24Rに至る系統である。なお、入口ポート23には、ブレーキ出力系統K1と同一の液圧源であるマスタシリンダMの出力ポートM1に至る配管H3が接続され、出口ポート24L,24Rには、それぞれ車輪ブレーキFL,RRに至る配管H4,H4が接続される。
【0024】
なお、マスタシリンダMはタンデム型であって、このマスタシリンダMには、ブレーキ操作子であるブレーキペダルBPが接続されている。すなわち、1つのブレーキペダルBPに踏力を加えるだけで、4つの車輪ブレーキFR,RL,FL,RRを制動することができる。
【0025】
ブレーキ出力系統K1には、レギュレータR、制御弁手段V,V、吸入弁4、リザーバ5、第一のプランジャポンプ6A,6C,6E、吸入側ダンパ室7、吐出側ダンパ室8、オリフィス6a,6c,6e、液圧源側ブレーキ液圧センサ9aおよび車輪側ブレーキ液圧センサ9bが設けられている。
また、ブレーキ出力系統K2には、第二のプランジャポンプ6B,6D,6Fが設けられている。
【0026】
なお、以下では、入口ポート21からレギュレータRに至る流路(液路)を「出力液圧路A」と称し、レギュレータRから出口ポート22R,22Lに至る流路を「車輪液圧路B」と称する。また、出力液圧路Aからプランジャポンプ6A,6C,6Eに至る流路を「吸入液圧路C」と称し、プランジャポンプ6A,6C,6Eから車輪液圧路Bに至る流路を「吐出液圧路D」と称し、さらに、車輪液圧路Bから吸入液圧路Cに至る流路を「開放路E」と称する。また、「上流側」とは、マスタシリンダM側のことを意味し、「下流側」とは、車輪ブレーキFR,RL(FL,RR)側のことを意味する。
【0027】
レギュレータRは、出力液圧路Aにおけるブレーキ液の通流を許容する状態および遮断する状態を切り換える機能と、出力液圧路Aにおけるブレーキ液の通流が遮断されているときに車輪液圧路Bのブレーキ液圧を所定値以下に調節する機能とを有しており、カット弁1およびチェック弁1aを備えて構成されている。
【0028】
カット弁1は、出力液圧路Aと車輪液圧路Bとの間に介設された常開型のリニアソレノイド弁であり、出力液圧路Aから車輪液圧路Bへのブレーキ液の通流を許容する状態および遮断する状態を切り換えるものである。すなわち、カット弁1は、ソレノイドへの通電を制御することによって開弁圧を調節することが可能な構成(リリーフ弁としての機能を併せ備えた構成)となっている。カット弁1は、通常時に開いていることで、第一のプランジャポンプ6A,6C,6Eから吐出液圧路Dへ吐出して車輪液圧路Bへ流入したブレーキ液が、吸入液圧路Cへ戻ること(循環すること)を許容している。また、カット弁1は、ブレーキペダルBPが操作されたときに、言い換えれば、車輪ブレーキFR,RLへブレーキ液圧を作用させるときに、制御装置400(図1参照、以下同じ)の制御により閉塞され、出力液圧路AからレギュレータRにかかるブレーキ液圧と、ソレノイドへの通電によって制御される、弁を閉じようとする力とのバランスによって、車輪液圧路Bのブレーキ液圧を適宜吸入液圧路Cへ開放して調節することができる。
【0029】
チェック弁1aは、カット弁1に並列に接続されている。このチェック弁1aは、出力液圧路Aから車輪液圧路Bへのブレーキ液の流れを許容する一方向弁である。
【0030】
制御弁手段Vは、車輪ブレーキFR,RLにそれぞれ1つずつ設けられている。制御弁手段Vは、車輪液圧路Bを開放しつつ開放路Eを遮断する状態、車輪液圧路Bを遮断しつつ開放路Eを開放する状態および車輪液圧路Bおよび開放路Eを遮断する状態を切り換える機能を有しており、入口弁2、チェック弁2aおよび出口弁3を備えて構成されている。
【0031】
入口弁2は、車輪液圧路Bに設けられた常開型の電磁弁であり、開弁状態にあるときに上流側から下流側へのブレーキ液の流入を許容し、閉弁状態にあるときに遮断する。常開型の電磁弁は、その弁体を駆動させるための電磁コイルが制御装置400と電気的に接続されており、制御装置400からの指令に基づいて電磁コイルを励磁すると閉弁し、電磁コイルを消磁すると開弁する。本実施形態では、各入口弁2としてリニアソレノイド型の電磁弁が採用されており、ソレノイドへの駆動電流が制御装置400によって制御されることによって開弁量を調節することが可能な構成となっている。
【0032】
チェック弁2aは、その下流側から上流側へのブレーキ液の流入のみを許容する弁であり、各入口弁2と並列に接続されている。
【0033】
出口弁3は、車輪液圧路Bと開放路Eとの間に介設された常閉型の電磁弁からなり、閉弁状態にあるときに車輪ブレーキFR,RL(FL,RR)側からリザーバ5側へのブレーキ液の流入を遮断し、開弁状態にあるときに許容する。出口弁3を構成する常閉型の電磁弁は、その弁体を駆動させるための電磁コイルが制御装置400と電気的に接続されており、制御装置400からの指令に基づいて電磁コイルを励磁すると開弁し、電磁コイルを消磁すると閉弁する。本実施形態では、各出口弁3としてリニアソレノイド型の電磁弁が採用されており、ソレノイドへの駆動電流が制御装置400によって制御されることによって開弁量を調節することが可能な構成となっている。
【0034】
吸入弁4は、吸入液圧路Cを開放する状態および遮断する状態を切り換えるものであり、吸入液圧路Cに設けられた常閉型の電磁弁からなる。吸入弁4を構成する常閉型の電磁弁は、その弁体を駆動させるための電磁コイルが制御装置400と電気的に接続されており、制御装置400からの指令に基づいて電磁コイルを励磁すると開弁し、電磁コイルを消磁すると閉弁する。
【0035】
リザーバ5は、開放路Eに設けられており、各出口弁3が開放されることによって逃がされるブレーキ液を一時的に貯留する機能を有している。また、リザーバ5とプランジャポンプ6A,6C,6Eとの間には、リザーバ5側からプランジャポンプ6A,6C,6E側へのブレーキ液の流入のみを許容するチェック弁5aが介設されている。
【0036】
プランジャポンプ6A,6C,6Eは、出力液圧路Aに通じる吸入液圧路Cと車輪液圧路Bに通じる吐出液圧路Dとの間に介設されており、モータ200の回転力によって駆動され、リザーバ5に一時的に貯留されたブレーキ液を吸入して吐出液圧路Dに吐出する。また、カット弁1が閉弁状態にあり、吸入弁4が開弁状態にあるときには、プランジャポンプ6A,6C,6Eは、マスタシリンダM、出力液圧路A、吸入液圧路Cおよびリザーバ5に貯留されているブレーキ液を吸入して吐出液圧路Dに吐出する。これにより、ブレーキペダルBPの操作によって発生したブレーキ液圧を増圧することが可能となり、さらには、ブレーキペダルBPを操作していない状態でも車輪ブレーキFR,RL(FL,RR)にブレーキ液圧を作用させることが可能となる。
ブレーキ出力系統K1,K2におけるプランジャポンプ6A〜6Fの構造およびその作用についての詳細は後記する。
【0037】
吸入側ダンパ室7は、昇圧性能を確保する役割をなし、また、吐出側ダンパ室8、およびオリフィス6a,6c,6eは、その協働作用によってプランジャポンプ6A,6C,6Eから吐出されたブレーキ液の脈動を減衰する役割をなす。
【0038】
液圧源側ブレーキ液圧センサ9aは、出力液圧路Aのブレーキ液圧、すなわち、マスタシリンダMにおけるブレーキ液圧の大きさを計測するものである。液圧源側ブレーキ液圧センサ9aは、一方のブレーキ出力系統(本実施形態ではブレーキ出力系統K1)に一つのみ配置されている。つまり、マスタシリンダMが前記したようにタンデム型であり、ブレーキ出力系統K1,K2におけるブレーキ液圧の大きさは同様であるので、代表して一方のブレーキ出力系統にのみ配置されている。液圧源側ブレーキ液圧センサ9aで計測されたブレーキ液圧の値は、制御装置400に随時取り込まれ、制御装置400によりマスタシリンダMからブレーキ液圧が出力されているか否か、すなわち、ブレーキペダルBPが踏まれているか否かが判定され、さらに、液圧源側ブレーキ液圧センサ9aで計測されたブレーキ液圧の大きさに基づいて、後記する挙動安定化制御が行われる。
【0039】
車輪側ブレーキ液圧センサ9bは、車輪ブレーキFR(RL)に作用するブレーキ液圧の大きさを計測するものである。車輪側ブレーキ液圧センサ9bで計測されたブレーキ液圧の値は、制御装置400に随時取り込まれ、この計測されたブレーキ液圧の大きさに基づいてアンチロックブレーキ制御や挙動安定化制御などが行われる。
【0040】
モータ200は、ブレーキ出力系統K1にあるプランジャポンプ6A,6C,6Eおよびブレーキ出力系統K2にあるプランジャポンプ6B,6D,6Fの共通の動力源であり、制御装置400からの指令に基づいて作動する。
【0041】
制御装置400は、液圧源側ブレーキ液圧センサ9a、車輪側ブレーキ液圧センサ9b、車輪速度を検出する図示しない車輪速度センサからの出力に基づいて、レギュレータRのカット弁1、制御弁手段Vの入口弁2および出口弁3および吸入弁4の開閉、並びに、モータ200の作動を制御する。
【0042】
次に、図12の液圧回路を参照しつつ、制御装置400によって実現される通常のブレーキ制御、アンチロックブレーキ制御および挙動安定化制御について説明する。なお、以下に記載する本実施形態では、前輪を駆動輪とする前輪駆動の車両を例に挙げて説明する。
【0043】
(通常のブレーキ制御)
各車輪がロックする可能性のない通常のブレーキ制御時においては、前記した複数の電磁弁を駆動させる複数の電磁コイルは、いずれも制御装置400によって消磁させられる。つまり、通常のブレーキ制御においては、カット弁1と入口弁2とが開弁状態になっており、出口弁3と吸入弁4とが閉弁状態になっている。
【0044】
このような状態のときに運転者がブレーキペダルBPを踏み込むと、その踏力に起因して発生したブレーキ液圧は、そのまま車輪ブレーキFR,RL,FL,RRに伝達され、各輪が制動されることとなる。
【0045】
以上のような通常のブレーキ制御を実行する際に、車輪側ブレーキ液圧センサ9bで右前および左前の車輪ブレーキFR,FLに繋がる車輪液圧路B内のブレーキ液圧を実測しているので、車輪ブレーキFR,FLに好適なブレーキ液圧がかかっていることを確認できる。
【0046】
(アンチロックブレーキ制御)
アンチロックブレーキ制御は、車輪がロック状態に陥りそうになったときに実行されるものであり、ロック状態に陥りそうな車輪の車輪ブレーキFR,RL,FL,RRに対応する制御弁手段Vを制御して、車輪ブレーキFR,RL,FL,RRに作用するブレーキ液圧を減圧、増圧あるいは一定に保持する状態を適宜選択することによって実現される。なお、減圧、増圧および保持のいずれを選択するかは、図示しない車輪速度センサから得られた車輪速度に基づいて、制御装置400によって判断される。
【0047】
ブレーキペダルBPを踏み込んでいる最中に、車輪がロック状態に入りそうになると、制御装置400によりアンチロックブレーキ制御が開始される。
【0048】
なお、以下では、右前にある車輪(車輪ブレーキFRより制動される車輪)がロック状態に入りそうになっていると想定してアンチロックブレーキ制御時の動作を説明する。
【0049】
制御装置400によって、車輪ブレーキFRに作用するブレーキ液圧を減圧すべきであると判断された場合には、車輪ブレーキFRに対応する制御弁手段Vにより車輪液圧路Bが遮断され、開放路Eが開放される。具体的には、制御装置400により入口弁2を励磁して閉弁状態にするとともに、出口弁3を励磁して開弁状態にする。このようにすると、車輪ブレーキFRに通じる車輪液圧路Bのブレーキ液が開放路Eを通ってリザーバ5に流入し、その結果、車輪ブレーキFRに作用していたブレーキ液圧が減圧される。このとき、車輪側ブレーキ液圧センサ9bによって車輪液圧路B内のブレーキ液圧が計測され、その計測値は制御装置400に随時取り込まれる。
【0050】
なお、アンチロックブレーキ制御を実行する場合には、制御装置400によりモータ200を駆動させてプランジャポンプ6A,6C,6Eを作動させ、リザーバ5に貯留されたブレーキ液を、吐出液圧路Dを介して車輪液圧路Bに還流する。
【0051】
また、制御装置400によって、車輪ブレーキFRに作用するブレーキ液圧を一定に保持すべきであると判断された場合は、車輪ブレーキFRに対応する制御弁手段Vにより車輪液圧路Bおよび開放路Eがそれぞれ遮断される。具体的には、制御装置400により入口弁2を励磁して閉弁状態にするとともに、出口弁3を消磁して閉弁状態にする。このようにすると、車輪ブレーキFR、入口弁2および出口弁3で閉じられた流路内にブレーキ液が閉じ込められることになり、その結果、車輪ブレーキFRに作用していたブレーキ液圧が一定に保持される。
【0052】
さらに、制御装置400によって、車輪ブレーキFRに作用するブレーキ液圧を増圧すべきであると判断された場合には、車輪ブレーキFRに対応する制御弁手段Vにより車輪液圧路Bが開放され、開放路Eが遮断される。具体的には、制御装置400により入口弁2を消磁して開弁状態にするとともに、出口弁3を消磁して閉弁状態にする。このようにすると、ブレーキペダルBPの踏力に起因して発生したブレーキ液圧が車輪ブレーキFRに直接作用することになり、その結果、車輪ブレーキFRに作用するブレーキ液圧が増圧される。
【0053】
以上のようなアンチロックブレーキ制御を実行する際に、車輪側ブレーキ液圧センサ9bで右前の車輪ブレーキFRに繋がる車輪液圧路B内のブレーキ液圧を実測しているので、制御装置400では、計測されたブレーキ液圧に応じて細かい液圧制御を行うことができる。具体的には、車輪液圧路B内のブレーキ液圧をセンシングしながらその液圧が減圧され過ぎないように出口弁3を開閉する。また、ブレーキ液圧が減圧され過ぎないように出口弁3の開度および開弁時間を設定するようにしてもよい。このようにすれば、車輪側ブレーキ液圧センサ9bで計測されたブレーキ液圧の大きさに基づいた精度の高いブレーキ制御を行うことができ、車輪がロックしそうな状態を脱して車輪ブレーキFRに作用するブレーキ液圧を増圧すべきであると判断された場合に、即座にブレーキ液圧を所望の圧力に戻すことができる。また、車輪ブレーキFRに作用するブレーキ液圧を一定に保持すべきであると判断された場合にも、車輪ブレーキFRに作用するブレーキ液圧を実測しながら、入口弁2および出口弁3の開閉を制御することで、車輪ブレーキFRに最も適したブレーキ液圧を確実且つ容易に保持することができる。
【0054】
(挙動安定化制御)
挙動安定化制御は、特に雨天時や雪道のコーナリング等の走行時に起こる走行状況等の変化によって起こる挙動の乱れを防止するためのものである。
【0055】
車両の状態に応じて、制御装置400により、横滑り制御やトラクション制御などの挙動安定化制御が開始される。なお、以下では、ブレーキペダルBP(図12参照)を操作していないときに右前の車輪(車輪ブレーキFRにより制動される車輪)を制動させて車両の挙動を安定化させる場合を想定する。
【0056】
ブレーキペダルBPを操作していない場合において制御装置400により右前の車輪を制動すべきと判断された場合には、制御装置400により、カット弁1を励磁して閉弁状態にするとともに、吸入弁4を励磁して開弁状態にし、さらに、制動したい右前の車輪に対応する制御弁手段V以外の制御弁手段Vにおいて入口弁2を励磁して閉弁状態にし、かかる状態において、第一のプランジャポンプ6A,6C,6Eを駆動させるべくモータ200を作動させる。このようにすると、マスタシリンダM、出力液圧路Aおよび吸入液圧路Cに貯留されているブレーキ液が、第一のプランジャポンプ6A,6C,6Eと吐出液圧路Dとを経由して車輪ブレーキFRに通じる車輪液圧路Bのみに流入し、その結果、車輪ブレーキFRにブレーキ液圧が作用し、右前の車輪が制動されることになる。
【0057】
なお、出力液圧路Aのブレーキ液圧と車輪液圧路Bのブレーキ液圧との差が設定値以上になった場合には、カット弁1がリリーフ弁として働き、車輪液圧路B内のブレーキ液が出力液圧路Aに逃がされる。
【0058】
また、レギュレータRが作動することによって吐出液圧路D等に発生する脈動は、吸入側ダンパ室7、吐出側ダンパ室8およびオリフィス6a,6b,6cの協働作用によって吸収され抑制されるので、当該脈動に起因する作動音も小さくなる。
【0059】
以上のような挙動安定化制御を実行する際に、車輪側ブレーキ液圧センサ9bで右前の車輪ブレーキFRに繋がる車輪液圧路B内のブレーキ液圧を実測しているので、制御装置400では、車輪液圧路B内のブレーキ液圧が所望の値になるように細かい液圧制御を行うことができ、精度の高いブレーキ制御を行うことができる。
【0060】
次に、ブレーキ液圧制御装置Uの具体的な構造を、図1ないし図6を参照して詳細に説明する。
【0061】
ブレーキ液圧制御装置Uは、前記したように、基体(ボディ)100と、モータ200と、コントロールハウジング300と、制御装置400とを備えて構成されている。
【0062】
基体100は、略直方体を呈するアルミニウム合金製の押出材または鋳造品からなり、その前面11が実質的に凹凸のない平面に成形されている。基体100には、二つのブレーキ出力系統K1,K2(図12参照)に対応する二つの流路構成部100A,100Bが形成されている。具体的には、図1に示すように、前面11側から見て基体100の右半分(図中に付した中心線Xよりも紙面右側にある領域)にブレーキ出力系統K1に対応する流路構成部100Aが形成されており、基体100の左半分(図中に付した中心線Xより紙面左側にある領域)にブレーキ出力系統K2に対応する流路構成部100Bが形成されている。流路構成部100A,100Bは、本実施形態では、実質的に左右対称に形成されており、その内部構成等も同一である。
【0063】
流路構成部100Aは、図2に示すように、上面15に開口する入口ポート21および二つの出口ポート22R,22Lのほか、図1に示すモータ200の出力軸210(カム軸)が挿入される軸受穴43(図3(a)参照)とおおよそ同じ高さに設けられた中央装着穴31と、入口ポート21から始まり、図4(b)に示すように、下方に降りて前方へ折曲し、さらに、図4(a)に示すように、下方へ降りて中央装着穴31を上下方向に貫通する中央流路51と、中央装着穴31よりも上流側にある中央流路51を互いに挟むように配置された第一内側装着穴32および第一外側装着穴33と、中央装着穴31よりも下流側にある中央流路51を互いに挟むように配置された第二内側装着穴34および第二外側装着穴35と、第二外側装着穴35の下方に配置された第三装着穴36と、を備えており、さらに、図3(b)に示すように、下面16に開口するリザーバ穴37を備えている。
また、流路構成部100Aは、図2に示すように、基体100の後部の上部傾斜面15a、側面14および基体100の後部の下部傾斜面16aにそれぞれ開口するポンプ穴38a,38b,38cを備えており、さらに、図3(a)に示すように、後面12に開口する吸入側ダンパ室7(図12参照)となる吸入側ダンパ穴7aおよび吐出側ダンパ室8(図12参照)となる吐出側ダンパ穴8aを備えている。
【0064】
さらに、流路構成部100Aは、図4(a)に示すように、第一内側装着穴32と第二内側装着穴34との間で、一つの出口ポート22Rの延長線上に配置され、一つ(本実施形態では右前)の車輪ブレーキFRに出力されるブレーキ液圧を計測する車輪側ブレーキ液圧センサ9b(図1および図12参照)が装着される車輪側センサ装着穴46を備えている。
【0065】
なお、図1および図2に示すように、中央装着穴31、第一内側装着穴32、第一外側装着穴33、第二内側装着穴34、第二外側装着穴35および第三装着穴36は、流路構成部100Aの前面11の同一面に開口している。また、本実施形態においては、中央装着穴31、第一内側装着穴32、第一外側装着穴33、第二内側装着穴34、第二外側装着穴35および第三装着穴36の口径が総て同一になっている。
【0066】
なお、本実施形態では、内側(図4(a)において左側)にある出口ポート22Rに、車輪ブレーキFRに至る配管H12(図12参照)が接続され、外側(図4(a)において右側)にある出口ポート22Lに、車輪ブレーキRLに至る配管H12(図12参照)が接続されるものとする。
【0067】
図4(a)(b)に示すように、入口ポート21は、有底円筒状の穴であり、中央流路(以下、「第一流路」という。)51を介して中央装着穴31と連通している。第一流路51は、図4(b)に示すように、入口ポート21の底面から流路構成部100Aの下面16に向かって穿設された縦孔51aと、流路構成部100Aの前面11から後方に向かって穿設された横孔51bと、流路構成部100Aの上面15から下面16に向かって穿設された縦孔51cとからなる。横孔51bは、その後部が縦孔51aと交差し、かつ、その前部が縦孔51cと交差して中央装着穴31の側壁を上下方向に貫通している(図4(a)参照)。
【0068】
図4(a)に示すように、内側にある出口ポート22Rは、有底円筒状の穴であり、第二流路52を介して第一内側装着穴32と連通している。第二流路52は、内側にある出口ポート22Rの底面から流路構成部100Aの下面16に向かって穿設された縦孔からなり、第一内側装着穴32の側壁と車輪側センサ装着穴46の側壁を上下方向に貫通して第二内側装着穴34にまで達している。
【0069】
図4(a)(b)に示すように、外側にある出口ポート22Lは、有底円筒状の穴であり、第四流路54を介して第一外側装着穴33と連通している。第四流路54は、外側にある出口ポート22Rの底面から流路構成部100Aの下面16に向かって穿設された縦孔からなり、第一外側装着穴33の側壁を上下方向に貫通して第二外側装着穴35にまで達している。
【0070】
中央装着穴31は、吸入弁4(図12参照)となる常閉型の電磁弁4s(図1参照)が装着される有底の段付き円筒状の穴であり、図4(b)に示すように、その底部が横孔31aおよび吸入側ダンパ穴7aの前端部を通じてポンプ穴38bの側部に連通している。横孔31aは、中央装着穴31の底面から流路構成部100Aの後面12に向かって穿設され、吸入側ダンパ穴7aの前端部に達している。
ここで、中央装着穴31の底部から横孔31a、吸入側ダンパ穴7aの前端部、ポンプ穴38bの側部に至る流路が図12に示す吸入液圧路Cに相当する。
なお、ポンプ穴38bの側部には、後記する第九流路59が連通している。
【0071】
第一内側装着穴32は、車輪ブレーキFRに対応する制御弁手段Vの入口弁2(図12参照)となる常開型の電磁弁2s(図1参照)が装着される有底の段付き円筒状の穴であり、図4(a)に示すように、第二流路52を介して第二内側装着穴34と連通しており、図6(b)に示すように、第三流路53を介して第一外側装着穴33と連通している。第三流路53は、第一内側装着穴32の底面から流路構成部100Aの後面12(図4(b)参照)に向かって穿設された横孔53aと、この横孔53aに達するように流路構成部100Aの側面14(図4(a)参照)から穿設された横孔53bと、この横孔53bに達するように第一外側装着穴33の底面から流路構成部100Aの後面12に向かって穿設された横孔53cとからなる。横孔53bの開口部は、図示せぬ栓部材によって密封される。なお、第二流路52および第三流路53が、図12に示す車輪液圧路Bに相当する。
【0072】
第一外側装着穴33は、車輪ブレーキRLに対応する制御弁手段Vの入口弁2(図12参照)となる常開型の電磁弁2s(図1参照)が装着される有底の段付き円筒状の穴であり、図4(a)に示すように、第四流路54を介して第二外側装着穴35と連通している。なお、第四流路54は、図12に示す車輪液圧路Bに相当する。
【0073】
第二内側装着穴34は、車輪ブレーキFRに対応する制御弁手段Vの出口弁3(図12参照)となる常閉型の電磁弁3sが装着される有底の段付き円筒状の穴であり、図4(a)に示すように、その底部(不図示)から始まる第五流路55を介してリザーバ穴37と連通している。第五流路55は、リザーバ穴37の底面から第二内側装着穴34の底部に達するように流路構成部100Aの上面15へ向けて穿設された縦孔からなる。
【0074】
第二外側装着穴35は、車輪ブレーキRLに対応する制御弁手段Vの出口弁3(図12参照)が装着される有底の段付き円筒状の穴であり、図6(a)(b)に示すように、第六流路56によって第二内側装着穴34の底部(不図示)と連通し、さらに、第五流路55を介してリザーバ穴37と連通している。第六流路56は、流路構成部100Aの側面14から第二外側装着穴35の底部を通じて第五流路55へ達するように穿設された横孔からなる。なお、第六流路56の開口部は、図示せぬ栓部材によって密封される。
【0075】
第三装着穴36は、カット弁1(図12参照)となる常開型の電磁弁1s(図1参照)が装着される有底の段付き円筒状の穴であり、図4(a)(b)に示すように、その上側壁が第七流路57および第一流路51を介して入口ポート21と連通しており、さらに、図6(b)に示すように、底部が第八流路58、吐出側ダンパ穴8a、第九流路59、第十流路60および第三流路53を介して第一内側装着穴32および第一外側装着穴33と連通している。
第七流路57は、第三装着穴36の上側壁を左右方向に貫通し、かつ、第一流路51と交差するように流路構成部100Aの側面14から穿設された横孔からなる。なお、第七流路57は、図4(a)に示すように、後記する液圧源側センサ装着穴45に達している。
第八流路58は、図6(b)に示すように、第三装着穴36の底部から流路構成部100Aの後面12(図3(a)参照)へ向けて穿設され、後記する吐出側ダンパ穴8aの底部側壁に達する横孔である。第九流路59は、流路構成部100Aの下部傾斜面16a(図2、図3(b)参照)から上面15へ向けて穿設された縦孔からなり、ポンプ穴38bの吐出側の側面を上下方向に貫通して上端が第十流路60に達している。
第十流路60は、図5に示すように、流路構成部100Aの側面14からポンプ穴38aに向けて上り傾斜状に穿設された傾斜孔であり、図6(b)に示すように、第三流路53の横孔53cの後端に連通してポンプ穴38aの吐出側の側面に達している。なお、第九流路59および第十流路60の開口部は、図示せぬ栓部材によって密封される。
ここで、第一流路51および第七流路57が図12に示す出力液圧路Aに相当し、第八流路58、吐出側ダンパ穴8aの底部、第九流路59、第十流路60、第三流路53、第二流路52および第四流路54が図12に示す車輪液圧路Bに相当する。
【0076】
リザーバ穴37は、リザーバ5(図1、図12参照)が装着される有底円筒状の穴であり、図4(b)に示すように、第十一流路61および吸入側ダンパ穴7aの底部を通じてポンプ穴38bの吸入側と連通している。第十一流路61は、リザーバ穴37の底面から流路構成部100Aの上面15へ向けて穿設された縦孔からなり、その上端が吸入側ダンパ穴7aの底部に達している。第十一流路61には、図12に示すチェック弁5a(一方向弁、図5参照)が装着される。
なお、第五流路55、第十一流路61が図12に示す開放路Eに相当する。
【0077】
次に、ポンプ穴38a〜38cについて説明する。前記したように、本実施形態のブレーキ液圧制御装置Uは、ブレーキ出力系統K1に第一のプランジャポンプ6E,6A,6Cを有し、ブレーキ出力系統K2に第二のプランジャポンプ6F,6D,6Bを有しており、両方の流路構成部100A,100Bで、これらが装着される計六つのポンプ穴38a〜38cを具備している。
【0078】
図1に示すように、流路構成部100Aに設けられたポンプ穴38a〜38cには、第一のプランジャポンプ6E,6A,6Cが対応して装着されるようになっており、また、流路構成部100Bに設けられたポンプ穴38a〜38cには、第二のプランジャポンプ6F,6D,6Bが対応して装着されるようになっている。
【0079】
各ポンプ穴38a〜38cは、段付き円筒状の穴であり、各中心軸(J1等、図5参照)が軸受穴43の中心を通るように形成されている(図5参照)。ポンプ穴38a〜38cのうち、ポンプ穴38bは、基体100の側面14の前後方向(モータ200の出力軸210の軸線方向)において、略中央に設けられており、また、残りのポンプ穴38a,38cは、ポンプ穴38bよりも基体100の後部側に設けられている。
【0080】
ここで、後記するように、モータ200の出力軸210には、その軸方向に前後して二つの偏心カム211a,211b(図1参照)が取り付けられており、このうち、前側の偏心カム211aが、図7に示すように、ポンプ穴38bに装着された第一のプランジャポンプ6Aと第二のプランジャポンプ6Dとに対応してこれらを駆動するようになっている。一方、後側の偏心カム211bが、ポンプ穴38a、38aに装着された第一のプランジャポンプ6Eと第二のプランジャポンプ6Fとに対応してこれらを駆動するようになっており、また、ポンプ穴38c、38cに装着された第一のプランジャポンプ6Cと第二のプランジャポンプ6Bとに対応してこれらを駆動するようになっている。つまり、前側の偏心カム211aで周方向に計二つの第一,第二のプランジャポンプ6A,6Dが駆動されるようになっており、また、後側の偏心カム211bで周方向に計四つの第一のプランジャポンプ6E,6Cおよび第二のプランジャポンプ6F,6Bが駆動されるようになっている。
【0081】
本実施形態では、左右の流路構成部100A、100Bにおけるこれらのポンプ穴38a〜38cが、図8に示すように、出力軸210の軸方向から見たときに、出力軸210の周方向に等間隔をおいて形成されている。具体的に、前記した中心線Xとポンプ穴38aの中心軸線J1とのなす角度θ1は30度となっており、ポンプ穴38aの中心軸線J1とポンプ穴38bの中心軸線J2とのなす角度θ2、およびこの中心軸線J2とポンプ穴38cの中心軸線J3とのなす角度θ3は、それぞれ60度となっており、この中心軸線J3と中心線Xとのなす角度θ4は30度となっている。したがって、周方向に隣り合う中心軸線J1同士のなす角度θ1’、および周方向に隣り合う中心軸線J3同士のなす角度θ4’は、それぞれ60度となっている。
すなわち、本実施形態では、出力軸210の軸方向から見たときに、ポンプ穴38a〜38cが、出力軸210の周方向に60度間隔で形成されていることとなる。
【0082】
これを偏心カム211a,211bごとに見てみると、偏心カム211aに対応する第一のプランジャポンプ6Aおよび第二のプランジャポンプ6Dは、図9(a)に示すように、偏心カム211aの周りに、180度間隔で配置されることとなり、また、偏心カム211bに対応する第一のプランジャポンプ6E,6Cおよび第二のプランジャポンプ6F,6Bは、図9(b)に示すように、偏心カム211bの周りに、例えば第一のプランジャポンプ6Eを起点として左回りに、順に60度、120度、60度、120度の間隔で配置されることとなる。
【0083】
このように、各ポンプ穴38a〜38cに収納される第一のプランジャポンプ6A,6C,6Eおよび第二のプランジャポンプ6B,6D,6Fは、後記するように、偏心カム211a,211bにより位相差をもたせてブレーキ出力系統K1,K2に液圧をそれぞれ発生させるようになっており、ブレーキ出力系統K1,K2に対して交互に、かつ等時間間隔を置いて均等に液圧を発生させるようになっている。第一のプランジャポンプ6A,6C,6Eおよび第二のプランジャポンプ6B,6D,6Fの駆動についての詳細は後記する。
【0084】
ここで、ポンプ穴38aとポンプ穴38bは、図5、図6(a)(b)に示すように、第十二流路62および吸入側ダンパ穴7aを通じて、プランジャポンプ装着時に吸入側となる部位同士が連通している。また、ポンプ穴38bとポンプ穴38cは、吸入側ダンパ穴7aおよび第十三流路63を通じて、プランジャポンプ装着時に吸入側となる部位同士が連通している。つまり、ポンプ穴38a、ポンプ穴38bおよびポンプ穴38cは、第十二流路62、および第十三流路63を介して吸入側が吸入側ダンパ穴7aに連通している。
第十二流路62は、図2に示すように、流路構成部100Bの後部上面15bから、図5、図6(b)に示すように、流路構成部100Aの吸入側ダンパ穴7aへ向けて下り傾斜状に穿設された傾斜孔であり、下端部が吸入側ダンパ穴7aに達している。また、第十三流路63は、流路構成部100Bの後部下面16b(図3(b)参照)から、図5、図6(b)に示すように、流路構成部100Aの吸入側ダンパ穴7aへ向けて上り傾斜状に穿設された傾斜孔であり、上端部が吸入側ダンパ穴7aに達している。
【0085】
また、ポンプ穴38aとポンプ穴38bは、図5、図6(a)(b)に示すように、第十流路60および第九流路59を介してプランジャポンプ装着時に吐出側となる部位同士が連通している。また、ポンプ穴38bとポンプ穴38cは、第九流路59、第十四流路64を通じて吐出側ダンパ穴8aに連通している。
つまり、ポンプ穴38a、ポンプ穴38bおよびポンプ穴38cは、第十流路60、第九流路59、および第十四流路64を介して吐出側が吐出側ダンパ穴8aに連通している。
【0086】
ここで、図5に示すように、流路構成部100Aにおけるポンプ穴38aの中心軸線J1(J3)と、第十三流路63、および流路構成部100Bの第十二流路62とは、基体100の後面12側から見たときに、相互に平行となるように配置されている。同様に、流路構成部100Bにおけるポンプ穴38aの中心軸線J1(J3)と、第十三流路63、および流路構成部100Aの第十二流路62とは、基体100の後面12側から見たときに、相互に平行となるように配置されている。したがって、流路構成部100Aのポンプ穴38aの形成時に、流路構成部100Bの第十二流路62を同じ側から形成することができ、流路構成部100Aのポンプ穴38cの形成時に、流路構成部100Bの第十三流路63を同じ側から形成することができる。
同様に、流路構成部100Bのポンプ穴38a、38cを形成するときに、流路構成部100Aの第十二流路62、第十三流路63を同じ側から形成することができる。したがって、形成時には、これらのポンプ穴38a、38cや第十二流路62、第十三流路63を作業効率よく形成することができ、これらの穴や流路の配置関係が相互に平行とされていない場合と比べて、形成工数の削減やコストダウンを図ることができる。
【0087】
次に、吸入側ダンパ穴7aは、吸入側ダンパ室7(図12参照)となる円筒状の穴であり、その開口部は、図示せぬ蓋部材によって密封される。この吸入側ダンパ穴7aは、図4(b)、図5に示すように、その底部がポンプ穴38bの吸入側となる部位を貫通してポンプ穴38bに連通しているとともに、第十二流路62および第十三流路63を介して、ポンプ穴38a、38cの吸入側となる部位に連通している。これにより、ポンプ穴38a〜38cの吸入側となる部位は、吸入側ダンパ穴7aに相互に連通している。
【0088】
また、吐出側ダンパ穴8aは、吐出側ダンパ室8(図12参照)となる円筒状の穴であり、その開口部は、図示せぬ蓋部材によって密封される。この吐出側ダンパ穴8aは、その中央部を貫通する第十四流路64、第九流路59、第十流路60を通じて、ポンプ穴38c、38b、38aの吐出側となる部位に連通している。これにより、ポンプ穴38a〜38cの吐出側となる部位は、吐出側ダンパ穴8aに相互に連通している。
【0089】
車輪側センサ装着穴46は、図4(a)に示すように、車輪側ブレーキ液圧センサ9b(図1および図12参照)を装着するための穴であって、有底円筒状を呈している。そして、車輪側センサ装着穴46は、第一内側装着穴32と第二内側装着穴34との間で、一つの(本実施形態では内側に位置する側の)出口ポート22Rの下方の延長線上に配置されている。具体的には、車輪側センサ装着穴46は、その底部が出口ポート22Rの下方で連通する第二流路52に接続されており、出口ポート22Rと連通されている。
【0090】
図1に示すように、基体100の中央部分(すなわち、流路構成部100A,100Bの境界部分)で、前面側下方には、液圧源側ブレーキ液圧センサ9aが装着される液圧源側センサ装着穴45が、各流路構成部100A,100Bを跨ぐように形成されている。液圧源側センサ装着穴45は、有底円筒状を呈しており、中心線X(図1参照)上に中心部が位置するように配置され、基体100の前面11に開口している。また、図4(a)に示すように、液圧源側センサ装着穴45の側壁には、第七流路57が連通しており、第七流路57と第一流路51とを介して入口ポート21と連通している。
【0091】
また、基体100の後部中央部分(すなわち、流路構成部100A,100Bの境界部分)には、図3(a)、図5に示すように、モータ200(図1参照、以下同じ)の出力軸210(図1参照)が挿入される軸受穴43が形成されている。軸受穴43は、有底の段付き円筒状を呈しており、基体100の後面12に開口している。また、軸受穴43の側壁には、各ポンプ穴38a〜38c(図5、図6(a)(b)参照)が開口しており、各ポンプ穴38a〜38cの開口部近傍には、出力軸210に嵌め込まれて後記する第一のプランジャポンプ6Aのプランジャ162を押圧するための偏心カム211a,211bが収容されている。
【0092】
図1に示すように、基体100に装着されるリザーバ5は、リザーバ穴37に装着される略有底円筒状のリザーバピストン151と、このリザーバピストン151をリザーバ穴37の底面側(上側)に付勢するリザーバばね152と、リザーバ穴37の開口部を塞ぐ略有底円筒状のばね受け部材153と、蓋部材154を備えて構成されている。リザーバピストン151は、その外周面がリザーバ穴37の内周面に沿って摺動自在となっており、第五流路55(図4(a)参照)を介してブレーキ液が流入したときに、ばね受け部材153側に移動してこのブレーキ液を貯留する。
【0093】
次に、各ポンプ穴38a〜38cに装着される第一、第二のプランジャポンプ6A〜6Fについて説明する。第一、第二のプランジャポンプ6A〜6Fは、同様の構成を備えているので、ここでは、第一のプランジャポンプ6Aについて説明する。
図10に示すように、第一のプランジャポンプ6Aは、シリンダ161と、プランジャ162と、戻しばね163と、シールストッパー164と、吸入弁手段165と、キャップ166と、吐出弁手段167と、吐出側フィルタ168とを備えて構成されている。
【0094】
シリンダ161は、内周面が円筒面状に成形された有底円筒状の金属製部材からなり、吸入弁手段165を収容する吸入弁室S1を形成する。シリンダ161には、ポンプ穴38aと隙間をあけて対向する小径部161aと、ポンプ穴38aに圧入(嵌入)される圧入部161bと、この圧入部161bよりも大径でポンプ穴38aの段差部分に係止される係止部161cと、この係止部161cよりも小径でキャップ166の大径凹部166aに嵌め込まれる底部161d(以下、「シリンダ底部161d」という。)と、を備えて構成されている。なお、シリンダ底部161dの中央部には、吸入弁室S1に吸入したブレーキ液をキャップ166側に吐出させるための吐出路161eとなる貫通孔が形成されている。また、シリンダ161の下端部(小径部161aの先端部)の外周面には、後記するシールストッパー164を保持するための係止凹部161fが形成されている。
【0095】
プランジャ162は、モータ200の出力軸210に設けられた偏心カム211b(図1参照)の回転運動に伴ってシリンダ161の内空部を往復運動するものであり、偏心カム211bのカム面に当接する接触部162aと、ブレーキ液の吸入口となる吸入部162bと、シリンダ161の内空部を摺動しつつ往復する摺動部162cと、後記する吸入弁手段165の弁座となる弁座部162dと、を備えている。また、プランジャ162の内部には、吸入路162eが形成されている。吸入路162hは、吸入部162bの周囲に形成された環状空間S2と吸入弁室S1とを連通するものであり、吸入部162bの外周面(プランジャ162の外周面)と弁座部162dの端面(プランジャ162の上端面)とに開口している。
【0096】
接触部162aは、ポンプ穴38aに遊挿されており、かつ、その先端部がモータ200の軸受穴43に突出している。なお、接触部162aには、ポンプ穴38aに当接する環状のシール部材162kとブッシュ162fとが摺動自在に装着されている。吸入部162bは、接触部162aと摺動部162cとの間に形成され、かつ、その少なくとも一部がシリンダ161の開口部から突出している。摺動部162cは、シリンダ161の小径部161aの内空部を摺動する部位であり、摺動部162cの外径は、これに隣接する吸入部162bおよび弁座部162dの外径よりも大きく、かつ、シリンダ161の小径部161aの内径よりも僅かに小さくなっている。弁座部162dは、摺動部162cよりも吸入弁室S1側に形成されており、その周囲には、環状のシールリング162gが環装されている。シールリング162gは、シリンダ161の内周部を摺動しながら吸入弁室S1内を液密にシールしている。
【0097】
戻しばね163は、吸入弁室S1に圧縮状態で配置され、その復元力によりプランジャ162を軸受穴43側に押圧する。本実施形態に係る戻しばね163は、シリンダ161のシリンダ底部161dとプランジャ162に環装されたシールリング162gとの間に配置されており、シールリング162gを介してプランジャ162を押圧している。
【0098】
シールストッパー164は、シール部材162kの抜け出しを防止するための枠状の部材であり、プランジャ162の吸入部162bを囲繞するように配置される枠体164aと、この枠体164aからシリンダ161側に向かって延出する係止片164bとを備えており、この係止片164bをシリンダ161の係止凹部161fに係止することで、シリンダ161に保持されている。
【0099】
吸入弁手段165は、吸入路162hを開閉するものであり、吸入弁室S1に収容されている。より詳細には、吸入弁手段165は、吸入路162hの開口部を塞ぐように配置された球状の吸入弁体165aと、この吸入弁体165aを覆うように配置されたリテーナ165bと、吸入弁体165aとリテーナ165bとの間に圧縮状態で配置された吸入弁ばね165cとを備えて構成されている。吸入弁体165aは、吸入弁ばね165cの復元力によって、プランジャ162側に付勢されている。なお、リテーナ165bは、その下端部がプランジャ162の弁座部162dに外嵌されており、かつ、戻しばね163の復元力によってシールリング162gに押え付けられている。
【0100】
キャップ166は、シリンダ161のシリンダ底部161dに外側から覆設されるものであり、シリンダ161とは別体の有底円筒状の金属製部材からなる。キャップ166の内側には、シリンダ底部161dが圧入される大径凹部166aと、この大径凹部166aよりも小径の小径凹部166bとが形成されている。小径凹部166bは、シリンダ底部161dとともに、吐出弁手段167および吐出側フィルタ168を収容する吐出弁室S3を形成する。
【0101】
キャップ166の外周面には、その周方向に沿って、環状の係止溝166cが凹設されている。係止溝166cには、ポンプ穴38aの穴壁に形成される塑性変形部が入り込む。本実施形態においては、係止溝166cの上側に隣接する上蓋部166eの外径が、係止溝166cの下側に隣接する下蓋部166dの外径よりも小さくなっている。下蓋部166dは、ポンプ穴38aの入口部分の段差部より内側の内径と略同一であり、その部分に挿入される。上蓋部166eは、ポンプ穴38aの入口部分の段差部の底面から突出しており、かつ、突出部分の周縁部166fが面取りされている。
【0102】
なお、キャップ166のうち、下蓋部166dの下側に位置する流路構成部166gの外径は、下蓋部166dの外径よりも小さくなっていて、流路構成部166gの外周面とポンプ穴38aとにより、第十流路60と連通する環状空間S4が形成される。なお、流路構成部166gには、吐出弁室S3と環状空間S4とを連通する出口孔166hが形成されている。出口孔166hは、プランジャ162の往復動に伴う脈動を緩和するオリフィス6a(図12参照)として機能する。
【0103】
吐出弁手段167は、シリンダ161のシリンダ底部161dに形成された吐出路161eを開閉するものであり、吐出弁室S3に収容されている。より詳細に、吐出弁手段167は、シリンダ161の吐出路161eを塞ぐように配置された球状の吐出弁体167aと、吐出弁室S3に圧縮状態で配置された吐出弁ばね167bとを備えて構成されている。吐出弁体167aは、吐出弁ばね167bの復元力によって、吐出路161e側に付勢されている。
【0104】
吐出側フィルタ168は、吐出路161eから吐出されたブレーキ液を濾過するものであり、吐出弁室S3内において吐出弁手段167を取り囲むように配置されていて、かつ、その少なくとも一部が軸方向に圧縮された状態で、シリンダ161とキャップ166とに挟持されている。より詳細に、吐出側フィルタ168は、吐出路161eから吐出されたブレーキ液を濾過するフィルタ本体168Bと、このフィルタ本体168Bを保持する保持部材168Aとを備えて構成されている。
【0105】
続いて、基体100に組み付けられるモータ200およびコントロールハウジング300について詳細に説明する。
【0106】
図1に示すモータ200は、第一、第二のプランジャポンプ6A〜6Fの動力源となるものであり、基体100の後面12(図3(a)参照)に一体的に取り付けられる。図1に示すように、モータ200の出力軸210には、前記したように、偏心カム211a,211bが設けられている。また、モータ200のボディの側面には、ロータに電流を供給するためのコネクタ部220が突設されている。コネクタ部220には、コントロールハウジング300から配索された図示しない電源コードに設けられたコネクタが接続されるようになっている。
【0107】
コントロールハウジング300は、図1に示すように、電磁弁1s〜4s、液圧源側ブレーキ液圧センサ9aおよび車輪側ブレーキ液圧センサ9bを覆うように基体100の前面11に一体的に固着されるコントロールケース310と、このコントロールケース310の開口部を密閉するコントロールカバー320とを備えている。なお、コントロールケース310には、基体100の前面11を覆う取付部311と、図示せぬバッテリや車輪速度センサとの接続端子が形成されたコネクタ部312とを備えていて、取付部311には、図示しない無端状のシール部材が装着される。このようなコントロールケース310は、内部に設けられた図示しない支持板部に、基体100に設置された電磁弁1s〜4sを駆動させるための図示しない電磁コイルが取り付けられている。
【0108】
なお、コントロールハウジング300の内部は、図4(a)に示す凹部41と通気孔42とを介して外部と連通することになるので、コントロールハウジング300の内部の圧力は大気圧と同程度に保たれている。つまり、コントロールハウジング300の内圧変化によって外部からの水等の浸入が発生するのを防止することができる。ここで、基体100の凹部41には、図示せぬ透湿防水素材が装着されており、これによって、コントロールハウジング300内に水等が浸入することが防止されている。
【0109】
図1に示す制御装置400は、電子回路がプリントされた基板に半導体チップ等が搭載されてなるものであり、液圧源側ブレーキ液圧センサ9aおよび車輪側ブレーキ液圧センサ9bや図示しない車輪速度センサといった各種センサから得られた情報やあらかじめ記憶させておいたプログラム等に基づいて、電磁弁1s〜4sの開閉やモータ200の作動を制御する。
【0110】
続いて、通常のブレーキ制御、アンチロックブレーキ制御および挙動安定化制御を行った場合のブレーキ液の実際の流れを詳細に説明する。
【0111】
(通常のブレーキ制御)
通常のブレーキ制御においては、前記したように、吸入弁4となる常閉型の電磁弁4s(図1参照)が閉弁状態にあり、カット弁1となる常開型の電磁弁1s(図1参照)が開弁状態にあるので、図4(b)に示すように、入口ポート21から流入したブレーキ液は、第一流路51を通って、図4(a)に示すように、第七流路57から第三装着穴36に流入し、開弁状態にある電磁弁1s(図1参照、カット弁1(図12参照)の内部を通って、図6(b)に示すように、第八流路58から吐出側ダンパ穴8aに流入する。吐出側ダンパ穴8aに流入したブレーキ液は、第九流路59を通って上方へ流れた後、第十流路60から横孔53c、53bを通って第一内側装着穴32の底部および第一外側装着穴33の底部に流入する。そして、第一内側装着穴32の底部に流入したブレーキ液は、開弁状態にある電磁弁2s(図1参照、入口弁2(図12参照))の内部を通って第二流路52に流入し、出口ポート22Rを通って車輪ブレーキFRに至り、同様に、第一外側装着穴33の底部に流入したブレーキ液は、開弁状態にある電磁弁2s(図1参照)の内部を通って第四流路54に流入し、出口ポート22Lを通って車輪ブレーキRLに至る。
【0112】
ここで、右前の車輪ブレーキFRに至る第二流路52に流入したブレーキ液は、車輪側センサ装着穴46に流入する(図4(a)参照)。そして、車輪側ブレーキ液圧センサ9bによって車輪液圧路B内のブレーキ液圧が計測され、その計測値は制御装置400に随時取り込まれる。
【0113】
(アンチロックブレーキ制御)
アンチロックブレーキ制御によって例えば車輪ブレーキFRに作用するブレーキ液圧を減圧する場合には、前記したように、制御装置400(図12参照)によって車輪ブレーキFRに対応する入口弁2が閉弁状態にされ、出口弁3が開弁状態にされる。そうすると、車輪ブレーキFRに作用していたブレーキ液は、図4(a)に示すように、出口ポート22Rおよび第二流路52を通って第二内側装着穴34の側部に流入し、さらに、開弁状態にある電磁弁3s(図1参照)の内部を通って第五流路55に流入し、リザーバ穴37に流入する。なお、第一内側装着穴32に流入したブレーキ液は、電磁弁2sが閉弁状態にあることから、第三流路53(図6(b)参照)に流入することはなく、第一内側装着穴32の側壁と電磁弁2s(図1参照)の外周面との間にある空間を通って第二内側装着穴34側へ流出する。
なお、アンチロックブレーキ制御を実行する場合には、制御装置400によってモータ200が駆動されて第一のプランジャポンプ6A,6C,6Eが作動され、その結果、リザーバ穴37に貯留されていたブレーキ液が第十一流路61を介して吸入側ダンパ穴7aに吸入され、吸入側ダンパ室7を介してポンプ穴38bに吸入される。そして第一のプランジャポンプ6Aにより第九流路59にブレーキ液が吐出される。また、吸入側ダンパ室7から第十二流路62を介してポンプ穴38aに吸入されたブレーキ液は、第一のプランジャポンプ6Eによって第十流路60から第九流路59に吐出される。また、吸入側ダンパ室7から第十三流路63を介してポンプ穴38cに吸入されたブレーキ液は、プランジャポンプ6Cによって第十四流路64から第九流路59に吐出される。
【0114】
また、アンチロックブレーキ制御によって車輪ブレーキFR(図12参照)に作用するブレーキ液圧を減圧する場合には、図4(a)に示すように、ブレーキ液は、出口ポート22Rおよび第四流路54を通って第二外側装着穴35の側部に流入し、さらに、開弁状態にある電磁弁3s(図1参照)の内部を通って第六流路56に流入し、第五流路55を通ってリザーバ穴37に流入する。
【0115】
また、車輪ブレーキFRに作用するブレーキ液圧を一定に保持する場合には、前記したように、制御装置400によって入口弁2および出口弁3が閉弁状態にされるので(図12参照)、第二流路52へのブレーキ液の流入も第二流路52からのブレーキ液の流出も起こらない。
【0116】
また、車輪ブレーキFRに作用するブレーキ液圧を増圧する場合には、前記したように、制御装置400によって入口弁2が開弁状態にされ、出口弁3が閉弁状態にされるので、ブレーキ液の流れは、通常のブレーキ制御の場合と同じになる。
【0117】
(挙動安定化制御)
挙動安定化制御において、例えば、車輪ブレーキFRを制動する場合には、前記したように、制御装置400によってカット弁1が閉弁状態にされ、吸入弁4が開弁状態にされたうえで、モータ200が作動して第一のプランジャポンプ6A,6C,6Eが駆動される。第一のプランジャポンプ6A,6C,6Eが駆動されると、図5に示すように、ポンプ穴38bの内部にあるブレーキ液が第九流路59へ吐出され、ポンプ穴38aの内部にあるブレーキ液が第十流路60へ吐出され、また、ポンプ穴38cの内部にあるブレーキ液が第十四流路64へ吐出される。第九流路59、第十流路60および第十四流路64は、相互に連通しているので、これらの流路に吐出されたブレーキ液は、第三流路53(図6(b)参照)の横孔53c、53bを通って第一内側装着穴32に流入し、さらに、開弁状態にある電磁弁2s(図1参照)の内部を通って第二流路52に流入し、出口ポート22Rを通って車輪ブレーキFRに至る。
なお、第一のプランジャポンプ6A,6C,6Eが駆動されると、中央装着穴31に装着された吸入弁4(電磁弁4s(図1参照))が開弁状態にあるので、第一流路51側にあるブレーキ液(マスタシリンダMにあるブレーキ液を含む)が、電磁弁4sの内部を通って吸入側ダンパ穴7aに流入する(図4(b)参照)。
【0118】
本実施形態では、車輪側ブレーキ液圧センサ9bを、右前の車輪ブレーキFRに繋がる出口ポート22Rと第二流路52を介して連通する車輪側センサ装着穴46に装着しているので、車輪ブレーキFRに繋がる車輪液圧路B内のブレーキ液圧を実測することができる。そして、挙動安定化制御やトラクション制御において、第一のプランジャポンプ6A,6C,6Eよりも下流側のブレーキ液圧、つまり、第一のプランジャポンプ6A,6C,6Eが駆動されることにより車輪ブレーキFRに作用している実際のブレーキ液圧を、推定によらずに、車輪側ブレーキ液圧センサ9bで実測することができる。したがって、計測されたブレーキ液圧に応じて精度の高いブレーキ制御を制御装置400で的確に行うことができる。
【0119】
特に、本実施形態では、ブレーキ負荷が多くかかる前輪の車輪ブレーキFR,FLに作用するブレーキ液圧を測定することで、制動力制御に重点を置いたブレーキ液圧制御が行えるとともに、さらに、前輪は駆動輪でもあるので、トラクション制御にも重点を置いたブレーキ液圧制御が行える。
【0120】
ここで、第一のプランジャポンプ6A〜6Fの駆動時における作用を説明する。
前記したように、本実施形態では、偏心カム112aと偏心カム112bとの位相差が180度に設定されており、前記のように一方の偏心カム112aによって計二つの、第一のプランジャポンプ6Aおよび第二のプランジャポンプ6Dが駆動され、他方の偏心カム112bによって計四つの、第一のプランジャポンプ6C,6Eおよび第二のプランジャポンプ6B,6Fが駆動されるようになっており、ブレーキ出力系統K1、K2のこれらの第一、第二のプランジャポンプ6A〜6Fは、交互に、かつ等時間間隔を置いてそれぞれの偏心カム211a,211bによって駆動される構成となっている。これによって、次に説明するような順番でブレーキ液の吐出が行われることとなる。
【0121】
すなわち、前記した第一、第二のプランジャポンプ6A〜6Fの配置(出力軸210の軸線方向から見て60度間隔)と、前記した位相差を有する偏心カム211a,211bとの組み合わせから、例えば、第一のプランジャポンプ6Aから吐出が開始されるとすると、出力軸210が1回転する毎に、第一のプランジャポンプ6A→第二のプランジャポンプ6B→第一のプランジャポンプ6C→第二のプランジャポンプ6D→第一のプランジャポンプ6E→第二のプランジャポンプ6Fの順に、ブレーキ出力系統K1,K2において交互に吐出が行われることとなる。
【0122】
このことを、ブレーキ出力系統K1,K2のそれぞれにおける第一のプランジャポンプ6A,6C,6Eと第二のプランジャポンプ6B,6D,6Fとのまとまりで見てみると、出力軸210が1回転する毎に、ブレーキ出力系統K1,K2のそれぞれにおいて等間隔で吐出が行われるようになっている。その吐出の間隔は、ブレーキ出力系統K1,K2のいずれにおいても、120度の等間隔となっている。つまり、ブレーキ出力系統K1においては、偏心カム211aにより第一のプランジャポンプ6Aが駆動された後、出力軸120が120度回転したところで、偏心カム211bにより第一のプランジャポンプ6Cが駆動され、その後、さらに出力軸120が120度回転したところで、偏心カム211bにより第一のプランジャポンプ6Eが駆動されるようになっており、吐出間隔が120度となっている。このように、吐出間隔が120度で一定となっているので、第一のプランジャポンプ6A,6C,6Eのまとまりにおいて、吐出脈動の低減効果が得られるようになっている。このことは、ブレーキ出力系統K2においても同様である。
【0123】
ところで、本実施形態では、ブレーキ出力系統K1,K2のそれぞれに対して前記のようにプランジャポンプを3気筒ずつ(第一、第二のプランジャポンプ6A〜6F)、計6気筒配置した構成としたが、仮にこれが従来のように片側1気筒で、両側で2気筒配置されたブレーキ出力系統であるときには、プランジャポンプの吐出圧は、図11(a)に示すように、凹凸の大きい不連続な二つの山で表されることとなる。
これに対して、片側3気筒で、両側で6気筒配置したときの吐出圧は、図11(b)に示すように、凹凸の小さい六つの山の連続で表されることとなる。
【0124】
本実施形態では、ブレーキ出力系統K1,K2のそれぞれに対して第一のプランジャポンプ6A,6C,6Eと第二のプランジャポンプ6B,6D,6Fとを3気筒ずつ、両側で6気筒配置し、これらがそれぞれ等間隔でブレーキ液を吐出するように構成したので、6気筒の吐出波形を合成すると、図11(c)に示すように、もとの波形よりも振幅の小さい6つの山の合成波形となる。したがって、本実施形態では、図11(a)に示した両側2気筒の場合に比べて、吐出脈動の著しい低減効果が得られることとなる。
【0125】
次に、モータ200の出力軸210にかかる負荷について説明する。
前記した図9(a)に示すように、両側に第一、第二のプランジャポンプ6A、6Bを2気筒(片側1気筒)設けたときにかかる荷重F1を基準の荷重として、図9(b)に示すように、120度、60度間隔で4気筒配置したときの合成荷重F2を考えると、合成荷重F2は、前記した荷重F1の約1.7倍(√3倍)となる。
これに対して、例えば、従来のように、6気筒のプランジャポンプを一つの偏心カムで駆動したときに、隣合う三つのプランジャポンプの合成荷重F3(不図示)を考えると、合成荷重F3は、荷重F1の約2倍となる。
したがって、従来のように6気筒のプランジャポンプを一つの偏心カムで駆動したときの合成荷重F3に比べて、図9(b)に示すように、本実施形態のような120度、60度間隔で4気筒配置したときの合成荷重F2の方が、小さな値となり、モータ200の出力軸210にかかる負荷がその分小さくなることが分かる。
【0126】
以上説明した本実施形態のブレーキ液圧制御装置Uによると、二つの偏心カム211a,211bによって第一、第二のプランジャポンプ6A〜6Fを駆動するように構成されているので、第一、第二のプランジャポンプ6A〜6Fからの応力を二つの偏心カム211a,211bに分散させることができ、一つの偏心カム211a(211b)当りの負荷を低減することができる。
これにより、従来のように、一つの偏心カムで六つ全てのプランジャポンプを駆動した場合に比べて、一つ当りの偏心カム211a(211b)への負荷が小さくなり、その分、偏心カム211a(211b)の小型化や低コスト化を図ることができる。
したがって、ブレーキ液圧制御装置U全体の小型化や低コスト化を図ることができる。
【0127】
また、第一のプランジャポンプ6A,6C,6Eと、第二のプランジャポンプ6B,6D,6Fとが同数であり、複数個の偏心カム211a,211bが1回転駆動される毎に全ての第一、第二のプランジャポンプ6A〜6Fがそれぞれ駆動されて、ブレーキ出力系統K1とブレーキ出力系統K2とに均等に液圧を発生させるようになっているので、第一、第二のプランジャポンプ6A〜6Fの吐出により生じ易い脈動を、第一のプランジャポンプ6A,6C,6E、第二のプランジャポンプ6B,6D,6F毎に低減することができるとともに、これら全体としても効果的に低減することができる。
【0128】
また、第一、第二のプランジャポンプ6A〜6Fが、出力軸210の軸方向から見たときに、周方向に等間隔を置いて配置されているので、ブレーキ出力系統K1(流路構成部100A)およびブレーキ出力系統K2(流路構成部100B)における液路の配索を簡単化することができる。これによって、液路が形成される基体100等の配索スペースに自由度が増すようになり、6気筒からなる第一、第二のプランジャポンプ6A〜6Fを備える構成でありながら、スペースの有効利用を図って装置全体の小型化が可能となる。また、配索スペースの効率化等により空いたスペースを形成し、この空いたスペースを有効に利用して、例えば、ブレーキ液圧制御装置Uに必要となる機能部品を配置したり、本実施形態のように吸入側ダンパ室7や吐出側ダンパ室8を設置したりすることが容易となる。
【0129】
また、ブレーキ出力系統K1の第一のプランジャポンプ6A,6C,6Eとブレーキ出力系統K2の第二のプランジャポンプ6B,6D,6Fとが、交互に、かつ等時間間隔で吐出動作を行うようになっているので、第一、第二のプランジャポンプ6A〜6Fの吐出により生じ易い脈動を、効果的に低減することができる。
【0130】
また、計二つの第一のプランジャポンプ6Aおよび第二のプランジャポンプ6Dが、一方の偏心カム211aの周りに180度間隔で配置されているとともに、計四つの第一のプランジャポンプ6C,6Eおよび第二のプランジャポンプ6B,6Fが、他方の偏心カム211bの周りに、順に60度、120度、60度、120度の間隔で配置されているので、出力軸210の周方向に第一、第二のプランジャポンプ6A〜6Fをスペース効率よく配置することができ、レイアウト性が高まる。
【0131】
本実施形態では、二つの偏心カム211a,211bで計六つの第一、第二のプランジャポンプ6A〜6Fを駆動するように構成したが、これに限られることはなく、三つ以上の偏心カムを設けて駆動するように構成してもよい。
【0132】
また、本実施の形態では、前輪駆動の車両を例に挙げて説明したが、本発明は、後輪駆動の車両や4輪駆動の車両であっても適用できるのは勿論である。
また、車輪側ブレーキ液圧センサ9bは、駆動輪のみでなく、全ての車輪に付いていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置の分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置の基体の斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置の基体を示す図であり、(a)は後面図、(b)は底面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置の流路構成部の透視図であって、(a)は前面からみた透視図、(b)は側面からみた透視図である。
【図5】本発明の実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置の流路構成部の後面からみた透視図である。
【図6】本発明の実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置の流路構成部に形成された各装着穴および流路の内面を可視化した斜視図であって、(a)は前面側からみた斜視図、(b)は後面側からみた斜視図である。
【図7】本発明の実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置のプランジャポンプの配置を説明するための説明図である。
【図8】本発明の実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置のプランジャポンプの配置を説明するための説明図である。
【図9】(a)は一方の偏心カムにより駆動されるプランジャポンプの配置を説明するための説明図、(b)は他方の偏心カムにより駆動されるプランジャポンプの配置を説明するための説明図である。
【図10】プランジャポンプの断面図である。
【図11】(a)は片側1気筒のプランジャポンを備えたブレーキ液圧制御装置における吐出圧の様子を示す説明図、(b)は片側3気筒とした場合の吐出圧の様子を示す説明図、(c)は本発明の実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置における吐出圧の様子を示す説明図である。
【図12】本発明の実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置の液圧回路図である。
【符号の説明】
【0134】
U 車両用ブレーキ液圧制御装置(ブレーキ液圧制御装置)
1 カット弁
2 入口弁
3 出口弁
4 吸入弁
5 リザーバ
6A〜6F プランジャポンプ
7 吸入側ダンパ室
8 吐出側ダンパ室
38a〜38c ポンプ穴
100 基体
100A 流路構成部
100B 流路構成部
200 モータ(電動モータ)
210 出力軸(カム軸)
300 コントロールハウジング
400 制御装置
K1,K2 ブレーキ出力系統(第一液圧系、第二液圧系)
FR,FL (前輪の)車輪ブレーキ
RL,RR (後輪の)車輪ブレーキ
M マスタシリンダ(液圧源)
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ブレーキ液圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車両用ブレーキ液圧制御装置では、液圧回路に設けられたプランジャポンプを作動させることによってブレーキ液圧を増圧させる等の制御が行われている。
従来、このようなプランジャポンプにおける脈動の安定化を図るものとして、複数のプランジャポンプを昇圧装置として有する車両用ブレーキ液圧制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特表2002−517354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の車両用ブレーキ液圧制御装置では、一つの偏心カムで六つのプランジャポンプを駆動するように構成されていた。このため、この車両用ブレーキ液圧制御装置では、偏心カムへの負荷が大きくなり、偏心カムの小型化やカム軸の小型化を図ることが難しくなっていた。
【0005】
これにより、従来の車両用ブレーキ液圧制御装置では、装置全体の小型化や低コスト化が阻まれるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、偏心カムの小型化や出力軸の小型化を図ることができ、装置全体の小型化や低コスト化を図ることができる車両用ブレーキ液圧制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために創案された本発明は、第一液圧系と第二液圧系とに区画された液圧系統を有し、電動モータにより駆動されるカム軸と、前記カム軸により回転駆動される偏心カムと、前記偏心カムにより位相差をもたせて前記第一、第二液圧系に液圧をそれぞれ発生させる、少なくとも四以上の偶数個のプランジャポンプと、を備えた車両用ブレーキ液圧制御装置であって、前記プランジャポンプは、複数の第一のプランジャポンプと、前記第一のプランジャポンプと同数の第二のプランジャポンプとからなり、前記偏心カムは複数個であり、これらが1回転駆動される毎に全ての前記第一、第二のプランジャポンプがそれぞれ駆動されて、前記第一液圧系と前記第二液圧系とに均等に液圧を発生させることを特徴とする。
【0008】
かかる車両用ブレーキ液圧制御装置によると、複数個の偏心カムによって複数個のプランジャポンプを駆動するように構成されているので、複数個のプランジャポンプからの応力を複数個の偏心カムに分散させることができ、偏心カム一つ当りの負荷を低減することができる。
これにより、一つの偏心カムで全てのプランジャポンプを駆動した場合に比べて、一つあたりの偏心カムへの負荷が小さくなり、その分、偏心カムの小型化や低コスト化を図ることができる。
したがって、装置全体の小型化や低コスト化を図ることができる車両用ブレーキ液圧制御装が得られる。
【0009】
また、プランジャポンプは、複数の第一のプランジャポンプと、この第一のプランジャポンプと同数の第二のプランジャポンプとからなり、複数個の偏心カムが1回転駆動される毎に全ての第一、第二のプランジャポンプがそれぞれ駆動されて、第一液圧系と第二液圧系とに均等に液圧を発生させるようになっているので、第一、第二のプランジャポンプの吐出により生じ易い脈動を、第一、第二のプランジャポンプ毎に、さらにはこれらを全体として効果的に低減することができる。
【0010】
また、本発明は、前記第一、第二のプランジャポンプは、前記カム軸の軸方向から見たときに、周方向に等間隔を置いて配置されている構成とするのがよい。
【0011】
かかる車両用ブレーキ液圧制御装置によると、第一、第二のプランジャポンプにおける複数個のプランジャポンプをカム軸の周りに等間隔に配置することができ、第一液圧系および第二液圧系への液路の配索を簡単化することができる。これによって、液路が形成される基体等の配索スペースに自由度が増すようになり、第一、第二のプランジャポンプが少なくとも四以上の偶数個のプランジャポンプを備える構成でありながら、スペースの有効利用を図って装置全体の小型化が可能となる。また、配索スペースの効率化等により空いたスペースを形成し、この空いたスペースを有効に利用して、例えば、車両用ブレーキ液圧制御装置に必要となる機能部品を配置したり、第一、第二のプランジャポンプの吸入側や吐出側の液路においてダンパ室を設置したりすることが容易となる。
【0012】
また、本発明は、前記第一、第二のプランジャポンプは、交互に、かつ等時間間隔を置いてそれぞれの前記偏心カムによって駆動される構成とするのがよい。
【0013】
かかる車両用ブレーキ液圧制御装置によると、第一、第二のプランジャポンプが、交互に、かつ等時間間隔で吐出動作を行うこととなるので、これらのプランジャポンプの吐出により生じ易い脈動を、効果的に低減することができる。
【0014】
また、本発明は、前記偏心カムは、前記カム軸の軸方向に二つ並設されており、前記第一、第二のプランジャポンプは、六つの前記プランジャポンプからなり、一方の前記偏心カムには、このうちの二つの前記プランジャポンプが対応して配置され、他方の前記偏心カムには、四つの前記プランジャポンプが対応して配置されているとともに、一方の前記偏心カムに対応して配置された前記二つのプランジャポンプは、一方の前記偏心カムの周りに180度間隔で配置されており、他方の前記偏心カムに対応して配置された前記四つのプランジャポンプは、他方の前記偏心カムの周りに、順に60度、120度、60度、120度の間隔で配置されている構成とするのがよい。
【0015】
かかる車両用ブレーキ液圧制御装置によると、二つのプランジャポンプが、一方の偏心カムの周りに、180度間隔で配置されており、また、四つのプランジャポンプが、他方の偏心カムの周りに、順に60度、120度、60度、120度の間隔で配置されているので、カム軸の周方向に第一,第二のプランジャポンプをスペース効率よく配置することができ、レイアウト性が高まる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、偏心カムの小型化やカム軸の小型化を図ることができ、装置全体の小型化や低コスト化を図ることができる車両用ブレーキ液圧制御装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、添付した図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、説明において、同一の要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。
参照する図面において、図1は本発明の一実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置を示す分解斜視図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置(以下、「ブレーキ液圧制御装置」という。)Uは、4輪自動車等に用いられるものであり、基体(プランジャポンプボディ)100と、基体100の後面に組み付けられるモータ200(電動モータ)と、基体100の前面に組み付けられるコントロールハウジング300と、コントロールハウジング300に収容される制御装置400とを備えて構成されている。
【0019】
ブレーキ液圧制御装置Uは、図12に示す液圧回路を具現化したものであり、四つの車輪ブレーキFR,RL,FL,RRのうちの二つの車輪ブレーキFR,RLを制動するためのブレーキ出力系統K1(第一液圧系)および残り二つの車輪ブレーキFL,RRを制動するためのブレーキ出力系統K2(第二液圧系)を備えていて、車輪ブレーキFR,RL,FL,RRごとに(すなわち、一つのブレーキ出力系統につき二つ)設けられた制御弁手段Vによって各車輪の独立したアンチロックブレーキ制御が可能となっており、さらに、各ブレーキ出力系統K1,K2に設けられたレギュレータRと吸入弁4と三つのプランジャポンプ6A〜6Fとが協働することによって挙動安定化制御が可能になっている。
【0020】
このようにブレーキ液圧制御装置Uは、1つのブレーキ出力系統につき三つのプランジャポンプ6A,6C,6E(6B,6D,6F)を有しており、両方のブレーキ出力系統K1,K2で、計六つのプランジャポンプ6A〜6Fを具備している。以下では、ブレーキ出力系統K1に配置されるプランジャポンプを第一のプランジャポンプ6A,6C,6Eと称し、ブレーキ出力系統K2に配置されるプランジャポンプを第二のプランジャポンプ6B,6D,6Fと称する。
【0021】
なお、第一のプランジャポンプ6A,6C,6E、第二のプランジャポンプ6B,6D,6Fについての詳細は後記する。
また、図12において、ブレーキ出力系統K1,K2は、実質的に略同一の構成であるので、以下においては主としてブレーキ出力系統K1について説明し、適宜ブレーキ出力系統K2について説明する。
【0022】
ブレーキ出力系統K1は、右前および左後の車輪を制動するためのものであり、入口ポート21から出口ポート22R,22Lに至る系統である。なお、入口ポート21には、液圧源であるマスタシリンダMの出力ポートM2に至る配管H1が接続され、出口ポート22R,22Lには、それぞれ車輪ブレーキFR,RLに至る配管H2,H2が接続される。
【0023】
ブレーキ出力系統K2は、左前および右後の車輪を制動するためのものであり、入口ポート23から出口ポート24L,24Rに至る系統である。なお、入口ポート23には、ブレーキ出力系統K1と同一の液圧源であるマスタシリンダMの出力ポートM1に至る配管H3が接続され、出口ポート24L,24Rには、それぞれ車輪ブレーキFL,RRに至る配管H4,H4が接続される。
【0024】
なお、マスタシリンダMはタンデム型であって、このマスタシリンダMには、ブレーキ操作子であるブレーキペダルBPが接続されている。すなわち、1つのブレーキペダルBPに踏力を加えるだけで、4つの車輪ブレーキFR,RL,FL,RRを制動することができる。
【0025】
ブレーキ出力系統K1には、レギュレータR、制御弁手段V,V、吸入弁4、リザーバ5、第一のプランジャポンプ6A,6C,6E、吸入側ダンパ室7、吐出側ダンパ室8、オリフィス6a,6c,6e、液圧源側ブレーキ液圧センサ9aおよび車輪側ブレーキ液圧センサ9bが設けられている。
また、ブレーキ出力系統K2には、第二のプランジャポンプ6B,6D,6Fが設けられている。
【0026】
なお、以下では、入口ポート21からレギュレータRに至る流路(液路)を「出力液圧路A」と称し、レギュレータRから出口ポート22R,22Lに至る流路を「車輪液圧路B」と称する。また、出力液圧路Aからプランジャポンプ6A,6C,6Eに至る流路を「吸入液圧路C」と称し、プランジャポンプ6A,6C,6Eから車輪液圧路Bに至る流路を「吐出液圧路D」と称し、さらに、車輪液圧路Bから吸入液圧路Cに至る流路を「開放路E」と称する。また、「上流側」とは、マスタシリンダM側のことを意味し、「下流側」とは、車輪ブレーキFR,RL(FL,RR)側のことを意味する。
【0027】
レギュレータRは、出力液圧路Aにおけるブレーキ液の通流を許容する状態および遮断する状態を切り換える機能と、出力液圧路Aにおけるブレーキ液の通流が遮断されているときに車輪液圧路Bのブレーキ液圧を所定値以下に調節する機能とを有しており、カット弁1およびチェック弁1aを備えて構成されている。
【0028】
カット弁1は、出力液圧路Aと車輪液圧路Bとの間に介設された常開型のリニアソレノイド弁であり、出力液圧路Aから車輪液圧路Bへのブレーキ液の通流を許容する状態および遮断する状態を切り換えるものである。すなわち、カット弁1は、ソレノイドへの通電を制御することによって開弁圧を調節することが可能な構成(リリーフ弁としての機能を併せ備えた構成)となっている。カット弁1は、通常時に開いていることで、第一のプランジャポンプ6A,6C,6Eから吐出液圧路Dへ吐出して車輪液圧路Bへ流入したブレーキ液が、吸入液圧路Cへ戻ること(循環すること)を許容している。また、カット弁1は、ブレーキペダルBPが操作されたときに、言い換えれば、車輪ブレーキFR,RLへブレーキ液圧を作用させるときに、制御装置400(図1参照、以下同じ)の制御により閉塞され、出力液圧路AからレギュレータRにかかるブレーキ液圧と、ソレノイドへの通電によって制御される、弁を閉じようとする力とのバランスによって、車輪液圧路Bのブレーキ液圧を適宜吸入液圧路Cへ開放して調節することができる。
【0029】
チェック弁1aは、カット弁1に並列に接続されている。このチェック弁1aは、出力液圧路Aから車輪液圧路Bへのブレーキ液の流れを許容する一方向弁である。
【0030】
制御弁手段Vは、車輪ブレーキFR,RLにそれぞれ1つずつ設けられている。制御弁手段Vは、車輪液圧路Bを開放しつつ開放路Eを遮断する状態、車輪液圧路Bを遮断しつつ開放路Eを開放する状態および車輪液圧路Bおよび開放路Eを遮断する状態を切り換える機能を有しており、入口弁2、チェック弁2aおよび出口弁3を備えて構成されている。
【0031】
入口弁2は、車輪液圧路Bに設けられた常開型の電磁弁であり、開弁状態にあるときに上流側から下流側へのブレーキ液の流入を許容し、閉弁状態にあるときに遮断する。常開型の電磁弁は、その弁体を駆動させるための電磁コイルが制御装置400と電気的に接続されており、制御装置400からの指令に基づいて電磁コイルを励磁すると閉弁し、電磁コイルを消磁すると開弁する。本実施形態では、各入口弁2としてリニアソレノイド型の電磁弁が採用されており、ソレノイドへの駆動電流が制御装置400によって制御されることによって開弁量を調節することが可能な構成となっている。
【0032】
チェック弁2aは、その下流側から上流側へのブレーキ液の流入のみを許容する弁であり、各入口弁2と並列に接続されている。
【0033】
出口弁3は、車輪液圧路Bと開放路Eとの間に介設された常閉型の電磁弁からなり、閉弁状態にあるときに車輪ブレーキFR,RL(FL,RR)側からリザーバ5側へのブレーキ液の流入を遮断し、開弁状態にあるときに許容する。出口弁3を構成する常閉型の電磁弁は、その弁体を駆動させるための電磁コイルが制御装置400と電気的に接続されており、制御装置400からの指令に基づいて電磁コイルを励磁すると開弁し、電磁コイルを消磁すると閉弁する。本実施形態では、各出口弁3としてリニアソレノイド型の電磁弁が採用されており、ソレノイドへの駆動電流が制御装置400によって制御されることによって開弁量を調節することが可能な構成となっている。
【0034】
吸入弁4は、吸入液圧路Cを開放する状態および遮断する状態を切り換えるものであり、吸入液圧路Cに設けられた常閉型の電磁弁からなる。吸入弁4を構成する常閉型の電磁弁は、その弁体を駆動させるための電磁コイルが制御装置400と電気的に接続されており、制御装置400からの指令に基づいて電磁コイルを励磁すると開弁し、電磁コイルを消磁すると閉弁する。
【0035】
リザーバ5は、開放路Eに設けられており、各出口弁3が開放されることによって逃がされるブレーキ液を一時的に貯留する機能を有している。また、リザーバ5とプランジャポンプ6A,6C,6Eとの間には、リザーバ5側からプランジャポンプ6A,6C,6E側へのブレーキ液の流入のみを許容するチェック弁5aが介設されている。
【0036】
プランジャポンプ6A,6C,6Eは、出力液圧路Aに通じる吸入液圧路Cと車輪液圧路Bに通じる吐出液圧路Dとの間に介設されており、モータ200の回転力によって駆動され、リザーバ5に一時的に貯留されたブレーキ液を吸入して吐出液圧路Dに吐出する。また、カット弁1が閉弁状態にあり、吸入弁4が開弁状態にあるときには、プランジャポンプ6A,6C,6Eは、マスタシリンダM、出力液圧路A、吸入液圧路Cおよびリザーバ5に貯留されているブレーキ液を吸入して吐出液圧路Dに吐出する。これにより、ブレーキペダルBPの操作によって発生したブレーキ液圧を増圧することが可能となり、さらには、ブレーキペダルBPを操作していない状態でも車輪ブレーキFR,RL(FL,RR)にブレーキ液圧を作用させることが可能となる。
ブレーキ出力系統K1,K2におけるプランジャポンプ6A〜6Fの構造およびその作用についての詳細は後記する。
【0037】
吸入側ダンパ室7は、昇圧性能を確保する役割をなし、また、吐出側ダンパ室8、およびオリフィス6a,6c,6eは、その協働作用によってプランジャポンプ6A,6C,6Eから吐出されたブレーキ液の脈動を減衰する役割をなす。
【0038】
液圧源側ブレーキ液圧センサ9aは、出力液圧路Aのブレーキ液圧、すなわち、マスタシリンダMにおけるブレーキ液圧の大きさを計測するものである。液圧源側ブレーキ液圧センサ9aは、一方のブレーキ出力系統(本実施形態ではブレーキ出力系統K1)に一つのみ配置されている。つまり、マスタシリンダMが前記したようにタンデム型であり、ブレーキ出力系統K1,K2におけるブレーキ液圧の大きさは同様であるので、代表して一方のブレーキ出力系統にのみ配置されている。液圧源側ブレーキ液圧センサ9aで計測されたブレーキ液圧の値は、制御装置400に随時取り込まれ、制御装置400によりマスタシリンダMからブレーキ液圧が出力されているか否か、すなわち、ブレーキペダルBPが踏まれているか否かが判定され、さらに、液圧源側ブレーキ液圧センサ9aで計測されたブレーキ液圧の大きさに基づいて、後記する挙動安定化制御が行われる。
【0039】
車輪側ブレーキ液圧センサ9bは、車輪ブレーキFR(RL)に作用するブレーキ液圧の大きさを計測するものである。車輪側ブレーキ液圧センサ9bで計測されたブレーキ液圧の値は、制御装置400に随時取り込まれ、この計測されたブレーキ液圧の大きさに基づいてアンチロックブレーキ制御や挙動安定化制御などが行われる。
【0040】
モータ200は、ブレーキ出力系統K1にあるプランジャポンプ6A,6C,6Eおよびブレーキ出力系統K2にあるプランジャポンプ6B,6D,6Fの共通の動力源であり、制御装置400からの指令に基づいて作動する。
【0041】
制御装置400は、液圧源側ブレーキ液圧センサ9a、車輪側ブレーキ液圧センサ9b、車輪速度を検出する図示しない車輪速度センサからの出力に基づいて、レギュレータRのカット弁1、制御弁手段Vの入口弁2および出口弁3および吸入弁4の開閉、並びに、モータ200の作動を制御する。
【0042】
次に、図12の液圧回路を参照しつつ、制御装置400によって実現される通常のブレーキ制御、アンチロックブレーキ制御および挙動安定化制御について説明する。なお、以下に記載する本実施形態では、前輪を駆動輪とする前輪駆動の車両を例に挙げて説明する。
【0043】
(通常のブレーキ制御)
各車輪がロックする可能性のない通常のブレーキ制御時においては、前記した複数の電磁弁を駆動させる複数の電磁コイルは、いずれも制御装置400によって消磁させられる。つまり、通常のブレーキ制御においては、カット弁1と入口弁2とが開弁状態になっており、出口弁3と吸入弁4とが閉弁状態になっている。
【0044】
このような状態のときに運転者がブレーキペダルBPを踏み込むと、その踏力に起因して発生したブレーキ液圧は、そのまま車輪ブレーキFR,RL,FL,RRに伝達され、各輪が制動されることとなる。
【0045】
以上のような通常のブレーキ制御を実行する際に、車輪側ブレーキ液圧センサ9bで右前および左前の車輪ブレーキFR,FLに繋がる車輪液圧路B内のブレーキ液圧を実測しているので、車輪ブレーキFR,FLに好適なブレーキ液圧がかかっていることを確認できる。
【0046】
(アンチロックブレーキ制御)
アンチロックブレーキ制御は、車輪がロック状態に陥りそうになったときに実行されるものであり、ロック状態に陥りそうな車輪の車輪ブレーキFR,RL,FL,RRに対応する制御弁手段Vを制御して、車輪ブレーキFR,RL,FL,RRに作用するブレーキ液圧を減圧、増圧あるいは一定に保持する状態を適宜選択することによって実現される。なお、減圧、増圧および保持のいずれを選択するかは、図示しない車輪速度センサから得られた車輪速度に基づいて、制御装置400によって判断される。
【0047】
ブレーキペダルBPを踏み込んでいる最中に、車輪がロック状態に入りそうになると、制御装置400によりアンチロックブレーキ制御が開始される。
【0048】
なお、以下では、右前にある車輪(車輪ブレーキFRより制動される車輪)がロック状態に入りそうになっていると想定してアンチロックブレーキ制御時の動作を説明する。
【0049】
制御装置400によって、車輪ブレーキFRに作用するブレーキ液圧を減圧すべきであると判断された場合には、車輪ブレーキFRに対応する制御弁手段Vにより車輪液圧路Bが遮断され、開放路Eが開放される。具体的には、制御装置400により入口弁2を励磁して閉弁状態にするとともに、出口弁3を励磁して開弁状態にする。このようにすると、車輪ブレーキFRに通じる車輪液圧路Bのブレーキ液が開放路Eを通ってリザーバ5に流入し、その結果、車輪ブレーキFRに作用していたブレーキ液圧が減圧される。このとき、車輪側ブレーキ液圧センサ9bによって車輪液圧路B内のブレーキ液圧が計測され、その計測値は制御装置400に随時取り込まれる。
【0050】
なお、アンチロックブレーキ制御を実行する場合には、制御装置400によりモータ200を駆動させてプランジャポンプ6A,6C,6Eを作動させ、リザーバ5に貯留されたブレーキ液を、吐出液圧路Dを介して車輪液圧路Bに還流する。
【0051】
また、制御装置400によって、車輪ブレーキFRに作用するブレーキ液圧を一定に保持すべきであると判断された場合は、車輪ブレーキFRに対応する制御弁手段Vにより車輪液圧路Bおよび開放路Eがそれぞれ遮断される。具体的には、制御装置400により入口弁2を励磁して閉弁状態にするとともに、出口弁3を消磁して閉弁状態にする。このようにすると、車輪ブレーキFR、入口弁2および出口弁3で閉じられた流路内にブレーキ液が閉じ込められることになり、その結果、車輪ブレーキFRに作用していたブレーキ液圧が一定に保持される。
【0052】
さらに、制御装置400によって、車輪ブレーキFRに作用するブレーキ液圧を増圧すべきであると判断された場合には、車輪ブレーキFRに対応する制御弁手段Vにより車輪液圧路Bが開放され、開放路Eが遮断される。具体的には、制御装置400により入口弁2を消磁して開弁状態にするとともに、出口弁3を消磁して閉弁状態にする。このようにすると、ブレーキペダルBPの踏力に起因して発生したブレーキ液圧が車輪ブレーキFRに直接作用することになり、その結果、車輪ブレーキFRに作用するブレーキ液圧が増圧される。
【0053】
以上のようなアンチロックブレーキ制御を実行する際に、車輪側ブレーキ液圧センサ9bで右前の車輪ブレーキFRに繋がる車輪液圧路B内のブレーキ液圧を実測しているので、制御装置400では、計測されたブレーキ液圧に応じて細かい液圧制御を行うことができる。具体的には、車輪液圧路B内のブレーキ液圧をセンシングしながらその液圧が減圧され過ぎないように出口弁3を開閉する。また、ブレーキ液圧が減圧され過ぎないように出口弁3の開度および開弁時間を設定するようにしてもよい。このようにすれば、車輪側ブレーキ液圧センサ9bで計測されたブレーキ液圧の大きさに基づいた精度の高いブレーキ制御を行うことができ、車輪がロックしそうな状態を脱して車輪ブレーキFRに作用するブレーキ液圧を増圧すべきであると判断された場合に、即座にブレーキ液圧を所望の圧力に戻すことができる。また、車輪ブレーキFRに作用するブレーキ液圧を一定に保持すべきであると判断された場合にも、車輪ブレーキFRに作用するブレーキ液圧を実測しながら、入口弁2および出口弁3の開閉を制御することで、車輪ブレーキFRに最も適したブレーキ液圧を確実且つ容易に保持することができる。
【0054】
(挙動安定化制御)
挙動安定化制御は、特に雨天時や雪道のコーナリング等の走行時に起こる走行状況等の変化によって起こる挙動の乱れを防止するためのものである。
【0055】
車両の状態に応じて、制御装置400により、横滑り制御やトラクション制御などの挙動安定化制御が開始される。なお、以下では、ブレーキペダルBP(図12参照)を操作していないときに右前の車輪(車輪ブレーキFRにより制動される車輪)を制動させて車両の挙動を安定化させる場合を想定する。
【0056】
ブレーキペダルBPを操作していない場合において制御装置400により右前の車輪を制動すべきと判断された場合には、制御装置400により、カット弁1を励磁して閉弁状態にするとともに、吸入弁4を励磁して開弁状態にし、さらに、制動したい右前の車輪に対応する制御弁手段V以外の制御弁手段Vにおいて入口弁2を励磁して閉弁状態にし、かかる状態において、第一のプランジャポンプ6A,6C,6Eを駆動させるべくモータ200を作動させる。このようにすると、マスタシリンダM、出力液圧路Aおよび吸入液圧路Cに貯留されているブレーキ液が、第一のプランジャポンプ6A,6C,6Eと吐出液圧路Dとを経由して車輪ブレーキFRに通じる車輪液圧路Bのみに流入し、その結果、車輪ブレーキFRにブレーキ液圧が作用し、右前の車輪が制動されることになる。
【0057】
なお、出力液圧路Aのブレーキ液圧と車輪液圧路Bのブレーキ液圧との差が設定値以上になった場合には、カット弁1がリリーフ弁として働き、車輪液圧路B内のブレーキ液が出力液圧路Aに逃がされる。
【0058】
また、レギュレータRが作動することによって吐出液圧路D等に発生する脈動は、吸入側ダンパ室7、吐出側ダンパ室8およびオリフィス6a,6b,6cの協働作用によって吸収され抑制されるので、当該脈動に起因する作動音も小さくなる。
【0059】
以上のような挙動安定化制御を実行する際に、車輪側ブレーキ液圧センサ9bで右前の車輪ブレーキFRに繋がる車輪液圧路B内のブレーキ液圧を実測しているので、制御装置400では、車輪液圧路B内のブレーキ液圧が所望の値になるように細かい液圧制御を行うことができ、精度の高いブレーキ制御を行うことができる。
【0060】
次に、ブレーキ液圧制御装置Uの具体的な構造を、図1ないし図6を参照して詳細に説明する。
【0061】
ブレーキ液圧制御装置Uは、前記したように、基体(ボディ)100と、モータ200と、コントロールハウジング300と、制御装置400とを備えて構成されている。
【0062】
基体100は、略直方体を呈するアルミニウム合金製の押出材または鋳造品からなり、その前面11が実質的に凹凸のない平面に成形されている。基体100には、二つのブレーキ出力系統K1,K2(図12参照)に対応する二つの流路構成部100A,100Bが形成されている。具体的には、図1に示すように、前面11側から見て基体100の右半分(図中に付した中心線Xよりも紙面右側にある領域)にブレーキ出力系統K1に対応する流路構成部100Aが形成されており、基体100の左半分(図中に付した中心線Xより紙面左側にある領域)にブレーキ出力系統K2に対応する流路構成部100Bが形成されている。流路構成部100A,100Bは、本実施形態では、実質的に左右対称に形成されており、その内部構成等も同一である。
【0063】
流路構成部100Aは、図2に示すように、上面15に開口する入口ポート21および二つの出口ポート22R,22Lのほか、図1に示すモータ200の出力軸210(カム軸)が挿入される軸受穴43(図3(a)参照)とおおよそ同じ高さに設けられた中央装着穴31と、入口ポート21から始まり、図4(b)に示すように、下方に降りて前方へ折曲し、さらに、図4(a)に示すように、下方へ降りて中央装着穴31を上下方向に貫通する中央流路51と、中央装着穴31よりも上流側にある中央流路51を互いに挟むように配置された第一内側装着穴32および第一外側装着穴33と、中央装着穴31よりも下流側にある中央流路51を互いに挟むように配置された第二内側装着穴34および第二外側装着穴35と、第二外側装着穴35の下方に配置された第三装着穴36と、を備えており、さらに、図3(b)に示すように、下面16に開口するリザーバ穴37を備えている。
また、流路構成部100Aは、図2に示すように、基体100の後部の上部傾斜面15a、側面14および基体100の後部の下部傾斜面16aにそれぞれ開口するポンプ穴38a,38b,38cを備えており、さらに、図3(a)に示すように、後面12に開口する吸入側ダンパ室7(図12参照)となる吸入側ダンパ穴7aおよび吐出側ダンパ室8(図12参照)となる吐出側ダンパ穴8aを備えている。
【0064】
さらに、流路構成部100Aは、図4(a)に示すように、第一内側装着穴32と第二内側装着穴34との間で、一つの出口ポート22Rの延長線上に配置され、一つ(本実施形態では右前)の車輪ブレーキFRに出力されるブレーキ液圧を計測する車輪側ブレーキ液圧センサ9b(図1および図12参照)が装着される車輪側センサ装着穴46を備えている。
【0065】
なお、図1および図2に示すように、中央装着穴31、第一内側装着穴32、第一外側装着穴33、第二内側装着穴34、第二外側装着穴35および第三装着穴36は、流路構成部100Aの前面11の同一面に開口している。また、本実施形態においては、中央装着穴31、第一内側装着穴32、第一外側装着穴33、第二内側装着穴34、第二外側装着穴35および第三装着穴36の口径が総て同一になっている。
【0066】
なお、本実施形態では、内側(図4(a)において左側)にある出口ポート22Rに、車輪ブレーキFRに至る配管H12(図12参照)が接続され、外側(図4(a)において右側)にある出口ポート22Lに、車輪ブレーキRLに至る配管H12(図12参照)が接続されるものとする。
【0067】
図4(a)(b)に示すように、入口ポート21は、有底円筒状の穴であり、中央流路(以下、「第一流路」という。)51を介して中央装着穴31と連通している。第一流路51は、図4(b)に示すように、入口ポート21の底面から流路構成部100Aの下面16に向かって穿設された縦孔51aと、流路構成部100Aの前面11から後方に向かって穿設された横孔51bと、流路構成部100Aの上面15から下面16に向かって穿設された縦孔51cとからなる。横孔51bは、その後部が縦孔51aと交差し、かつ、その前部が縦孔51cと交差して中央装着穴31の側壁を上下方向に貫通している(図4(a)参照)。
【0068】
図4(a)に示すように、内側にある出口ポート22Rは、有底円筒状の穴であり、第二流路52を介して第一内側装着穴32と連通している。第二流路52は、内側にある出口ポート22Rの底面から流路構成部100Aの下面16に向かって穿設された縦孔からなり、第一内側装着穴32の側壁と車輪側センサ装着穴46の側壁を上下方向に貫通して第二内側装着穴34にまで達している。
【0069】
図4(a)(b)に示すように、外側にある出口ポート22Lは、有底円筒状の穴であり、第四流路54を介して第一外側装着穴33と連通している。第四流路54は、外側にある出口ポート22Rの底面から流路構成部100Aの下面16に向かって穿設された縦孔からなり、第一外側装着穴33の側壁を上下方向に貫通して第二外側装着穴35にまで達している。
【0070】
中央装着穴31は、吸入弁4(図12参照)となる常閉型の電磁弁4s(図1参照)が装着される有底の段付き円筒状の穴であり、図4(b)に示すように、その底部が横孔31aおよび吸入側ダンパ穴7aの前端部を通じてポンプ穴38bの側部に連通している。横孔31aは、中央装着穴31の底面から流路構成部100Aの後面12に向かって穿設され、吸入側ダンパ穴7aの前端部に達している。
ここで、中央装着穴31の底部から横孔31a、吸入側ダンパ穴7aの前端部、ポンプ穴38bの側部に至る流路が図12に示す吸入液圧路Cに相当する。
なお、ポンプ穴38bの側部には、後記する第九流路59が連通している。
【0071】
第一内側装着穴32は、車輪ブレーキFRに対応する制御弁手段Vの入口弁2(図12参照)となる常開型の電磁弁2s(図1参照)が装着される有底の段付き円筒状の穴であり、図4(a)に示すように、第二流路52を介して第二内側装着穴34と連通しており、図6(b)に示すように、第三流路53を介して第一外側装着穴33と連通している。第三流路53は、第一内側装着穴32の底面から流路構成部100Aの後面12(図4(b)参照)に向かって穿設された横孔53aと、この横孔53aに達するように流路構成部100Aの側面14(図4(a)参照)から穿設された横孔53bと、この横孔53bに達するように第一外側装着穴33の底面から流路構成部100Aの後面12に向かって穿設された横孔53cとからなる。横孔53bの開口部は、図示せぬ栓部材によって密封される。なお、第二流路52および第三流路53が、図12に示す車輪液圧路Bに相当する。
【0072】
第一外側装着穴33は、車輪ブレーキRLに対応する制御弁手段Vの入口弁2(図12参照)となる常開型の電磁弁2s(図1参照)が装着される有底の段付き円筒状の穴であり、図4(a)に示すように、第四流路54を介して第二外側装着穴35と連通している。なお、第四流路54は、図12に示す車輪液圧路Bに相当する。
【0073】
第二内側装着穴34は、車輪ブレーキFRに対応する制御弁手段Vの出口弁3(図12参照)となる常閉型の電磁弁3sが装着される有底の段付き円筒状の穴であり、図4(a)に示すように、その底部(不図示)から始まる第五流路55を介してリザーバ穴37と連通している。第五流路55は、リザーバ穴37の底面から第二内側装着穴34の底部に達するように流路構成部100Aの上面15へ向けて穿設された縦孔からなる。
【0074】
第二外側装着穴35は、車輪ブレーキRLに対応する制御弁手段Vの出口弁3(図12参照)が装着される有底の段付き円筒状の穴であり、図6(a)(b)に示すように、第六流路56によって第二内側装着穴34の底部(不図示)と連通し、さらに、第五流路55を介してリザーバ穴37と連通している。第六流路56は、流路構成部100Aの側面14から第二外側装着穴35の底部を通じて第五流路55へ達するように穿設された横孔からなる。なお、第六流路56の開口部は、図示せぬ栓部材によって密封される。
【0075】
第三装着穴36は、カット弁1(図12参照)となる常開型の電磁弁1s(図1参照)が装着される有底の段付き円筒状の穴であり、図4(a)(b)に示すように、その上側壁が第七流路57および第一流路51を介して入口ポート21と連通しており、さらに、図6(b)に示すように、底部が第八流路58、吐出側ダンパ穴8a、第九流路59、第十流路60および第三流路53を介して第一内側装着穴32および第一外側装着穴33と連通している。
第七流路57は、第三装着穴36の上側壁を左右方向に貫通し、かつ、第一流路51と交差するように流路構成部100Aの側面14から穿設された横孔からなる。なお、第七流路57は、図4(a)に示すように、後記する液圧源側センサ装着穴45に達している。
第八流路58は、図6(b)に示すように、第三装着穴36の底部から流路構成部100Aの後面12(図3(a)参照)へ向けて穿設され、後記する吐出側ダンパ穴8aの底部側壁に達する横孔である。第九流路59は、流路構成部100Aの下部傾斜面16a(図2、図3(b)参照)から上面15へ向けて穿設された縦孔からなり、ポンプ穴38bの吐出側の側面を上下方向に貫通して上端が第十流路60に達している。
第十流路60は、図5に示すように、流路構成部100Aの側面14からポンプ穴38aに向けて上り傾斜状に穿設された傾斜孔であり、図6(b)に示すように、第三流路53の横孔53cの後端に連通してポンプ穴38aの吐出側の側面に達している。なお、第九流路59および第十流路60の開口部は、図示せぬ栓部材によって密封される。
ここで、第一流路51および第七流路57が図12に示す出力液圧路Aに相当し、第八流路58、吐出側ダンパ穴8aの底部、第九流路59、第十流路60、第三流路53、第二流路52および第四流路54が図12に示す車輪液圧路Bに相当する。
【0076】
リザーバ穴37は、リザーバ5(図1、図12参照)が装着される有底円筒状の穴であり、図4(b)に示すように、第十一流路61および吸入側ダンパ穴7aの底部を通じてポンプ穴38bの吸入側と連通している。第十一流路61は、リザーバ穴37の底面から流路構成部100Aの上面15へ向けて穿設された縦孔からなり、その上端が吸入側ダンパ穴7aの底部に達している。第十一流路61には、図12に示すチェック弁5a(一方向弁、図5参照)が装着される。
なお、第五流路55、第十一流路61が図12に示す開放路Eに相当する。
【0077】
次に、ポンプ穴38a〜38cについて説明する。前記したように、本実施形態のブレーキ液圧制御装置Uは、ブレーキ出力系統K1に第一のプランジャポンプ6E,6A,6Cを有し、ブレーキ出力系統K2に第二のプランジャポンプ6F,6D,6Bを有しており、両方の流路構成部100A,100Bで、これらが装着される計六つのポンプ穴38a〜38cを具備している。
【0078】
図1に示すように、流路構成部100Aに設けられたポンプ穴38a〜38cには、第一のプランジャポンプ6E,6A,6Cが対応して装着されるようになっており、また、流路構成部100Bに設けられたポンプ穴38a〜38cには、第二のプランジャポンプ6F,6D,6Bが対応して装着されるようになっている。
【0079】
各ポンプ穴38a〜38cは、段付き円筒状の穴であり、各中心軸(J1等、図5参照)が軸受穴43の中心を通るように形成されている(図5参照)。ポンプ穴38a〜38cのうち、ポンプ穴38bは、基体100の側面14の前後方向(モータ200の出力軸210の軸線方向)において、略中央に設けられており、また、残りのポンプ穴38a,38cは、ポンプ穴38bよりも基体100の後部側に設けられている。
【0080】
ここで、後記するように、モータ200の出力軸210には、その軸方向に前後して二つの偏心カム211a,211b(図1参照)が取り付けられており、このうち、前側の偏心カム211aが、図7に示すように、ポンプ穴38bに装着された第一のプランジャポンプ6Aと第二のプランジャポンプ6Dとに対応してこれらを駆動するようになっている。一方、後側の偏心カム211bが、ポンプ穴38a、38aに装着された第一のプランジャポンプ6Eと第二のプランジャポンプ6Fとに対応してこれらを駆動するようになっており、また、ポンプ穴38c、38cに装着された第一のプランジャポンプ6Cと第二のプランジャポンプ6Bとに対応してこれらを駆動するようになっている。つまり、前側の偏心カム211aで周方向に計二つの第一,第二のプランジャポンプ6A,6Dが駆動されるようになっており、また、後側の偏心カム211bで周方向に計四つの第一のプランジャポンプ6E,6Cおよび第二のプランジャポンプ6F,6Bが駆動されるようになっている。
【0081】
本実施形態では、左右の流路構成部100A、100Bにおけるこれらのポンプ穴38a〜38cが、図8に示すように、出力軸210の軸方向から見たときに、出力軸210の周方向に等間隔をおいて形成されている。具体的に、前記した中心線Xとポンプ穴38aの中心軸線J1とのなす角度θ1は30度となっており、ポンプ穴38aの中心軸線J1とポンプ穴38bの中心軸線J2とのなす角度θ2、およびこの中心軸線J2とポンプ穴38cの中心軸線J3とのなす角度θ3は、それぞれ60度となっており、この中心軸線J3と中心線Xとのなす角度θ4は30度となっている。したがって、周方向に隣り合う中心軸線J1同士のなす角度θ1’、および周方向に隣り合う中心軸線J3同士のなす角度θ4’は、それぞれ60度となっている。
すなわち、本実施形態では、出力軸210の軸方向から見たときに、ポンプ穴38a〜38cが、出力軸210の周方向に60度間隔で形成されていることとなる。
【0082】
これを偏心カム211a,211bごとに見てみると、偏心カム211aに対応する第一のプランジャポンプ6Aおよび第二のプランジャポンプ6Dは、図9(a)に示すように、偏心カム211aの周りに、180度間隔で配置されることとなり、また、偏心カム211bに対応する第一のプランジャポンプ6E,6Cおよび第二のプランジャポンプ6F,6Bは、図9(b)に示すように、偏心カム211bの周りに、例えば第一のプランジャポンプ6Eを起点として左回りに、順に60度、120度、60度、120度の間隔で配置されることとなる。
【0083】
このように、各ポンプ穴38a〜38cに収納される第一のプランジャポンプ6A,6C,6Eおよび第二のプランジャポンプ6B,6D,6Fは、後記するように、偏心カム211a,211bにより位相差をもたせてブレーキ出力系統K1,K2に液圧をそれぞれ発生させるようになっており、ブレーキ出力系統K1,K2に対して交互に、かつ等時間間隔を置いて均等に液圧を発生させるようになっている。第一のプランジャポンプ6A,6C,6Eおよび第二のプランジャポンプ6B,6D,6Fの駆動についての詳細は後記する。
【0084】
ここで、ポンプ穴38aとポンプ穴38bは、図5、図6(a)(b)に示すように、第十二流路62および吸入側ダンパ穴7aを通じて、プランジャポンプ装着時に吸入側となる部位同士が連通している。また、ポンプ穴38bとポンプ穴38cは、吸入側ダンパ穴7aおよび第十三流路63を通じて、プランジャポンプ装着時に吸入側となる部位同士が連通している。つまり、ポンプ穴38a、ポンプ穴38bおよびポンプ穴38cは、第十二流路62、および第十三流路63を介して吸入側が吸入側ダンパ穴7aに連通している。
第十二流路62は、図2に示すように、流路構成部100Bの後部上面15bから、図5、図6(b)に示すように、流路構成部100Aの吸入側ダンパ穴7aへ向けて下り傾斜状に穿設された傾斜孔であり、下端部が吸入側ダンパ穴7aに達している。また、第十三流路63は、流路構成部100Bの後部下面16b(図3(b)参照)から、図5、図6(b)に示すように、流路構成部100Aの吸入側ダンパ穴7aへ向けて上り傾斜状に穿設された傾斜孔であり、上端部が吸入側ダンパ穴7aに達している。
【0085】
また、ポンプ穴38aとポンプ穴38bは、図5、図6(a)(b)に示すように、第十流路60および第九流路59を介してプランジャポンプ装着時に吐出側となる部位同士が連通している。また、ポンプ穴38bとポンプ穴38cは、第九流路59、第十四流路64を通じて吐出側ダンパ穴8aに連通している。
つまり、ポンプ穴38a、ポンプ穴38bおよびポンプ穴38cは、第十流路60、第九流路59、および第十四流路64を介して吐出側が吐出側ダンパ穴8aに連通している。
【0086】
ここで、図5に示すように、流路構成部100Aにおけるポンプ穴38aの中心軸線J1(J3)と、第十三流路63、および流路構成部100Bの第十二流路62とは、基体100の後面12側から見たときに、相互に平行となるように配置されている。同様に、流路構成部100Bにおけるポンプ穴38aの中心軸線J1(J3)と、第十三流路63、および流路構成部100Aの第十二流路62とは、基体100の後面12側から見たときに、相互に平行となるように配置されている。したがって、流路構成部100Aのポンプ穴38aの形成時に、流路構成部100Bの第十二流路62を同じ側から形成することができ、流路構成部100Aのポンプ穴38cの形成時に、流路構成部100Bの第十三流路63を同じ側から形成することができる。
同様に、流路構成部100Bのポンプ穴38a、38cを形成するときに、流路構成部100Aの第十二流路62、第十三流路63を同じ側から形成することができる。したがって、形成時には、これらのポンプ穴38a、38cや第十二流路62、第十三流路63を作業効率よく形成することができ、これらの穴や流路の配置関係が相互に平行とされていない場合と比べて、形成工数の削減やコストダウンを図ることができる。
【0087】
次に、吸入側ダンパ穴7aは、吸入側ダンパ室7(図12参照)となる円筒状の穴であり、その開口部は、図示せぬ蓋部材によって密封される。この吸入側ダンパ穴7aは、図4(b)、図5に示すように、その底部がポンプ穴38bの吸入側となる部位を貫通してポンプ穴38bに連通しているとともに、第十二流路62および第十三流路63を介して、ポンプ穴38a、38cの吸入側となる部位に連通している。これにより、ポンプ穴38a〜38cの吸入側となる部位は、吸入側ダンパ穴7aに相互に連通している。
【0088】
また、吐出側ダンパ穴8aは、吐出側ダンパ室8(図12参照)となる円筒状の穴であり、その開口部は、図示せぬ蓋部材によって密封される。この吐出側ダンパ穴8aは、その中央部を貫通する第十四流路64、第九流路59、第十流路60を通じて、ポンプ穴38c、38b、38aの吐出側となる部位に連通している。これにより、ポンプ穴38a〜38cの吐出側となる部位は、吐出側ダンパ穴8aに相互に連通している。
【0089】
車輪側センサ装着穴46は、図4(a)に示すように、車輪側ブレーキ液圧センサ9b(図1および図12参照)を装着するための穴であって、有底円筒状を呈している。そして、車輪側センサ装着穴46は、第一内側装着穴32と第二内側装着穴34との間で、一つの(本実施形態では内側に位置する側の)出口ポート22Rの下方の延長線上に配置されている。具体的には、車輪側センサ装着穴46は、その底部が出口ポート22Rの下方で連通する第二流路52に接続されており、出口ポート22Rと連通されている。
【0090】
図1に示すように、基体100の中央部分(すなわち、流路構成部100A,100Bの境界部分)で、前面側下方には、液圧源側ブレーキ液圧センサ9aが装着される液圧源側センサ装着穴45が、各流路構成部100A,100Bを跨ぐように形成されている。液圧源側センサ装着穴45は、有底円筒状を呈しており、中心線X(図1参照)上に中心部が位置するように配置され、基体100の前面11に開口している。また、図4(a)に示すように、液圧源側センサ装着穴45の側壁には、第七流路57が連通しており、第七流路57と第一流路51とを介して入口ポート21と連通している。
【0091】
また、基体100の後部中央部分(すなわち、流路構成部100A,100Bの境界部分)には、図3(a)、図5に示すように、モータ200(図1参照、以下同じ)の出力軸210(図1参照)が挿入される軸受穴43が形成されている。軸受穴43は、有底の段付き円筒状を呈しており、基体100の後面12に開口している。また、軸受穴43の側壁には、各ポンプ穴38a〜38c(図5、図6(a)(b)参照)が開口しており、各ポンプ穴38a〜38cの開口部近傍には、出力軸210に嵌め込まれて後記する第一のプランジャポンプ6Aのプランジャ162を押圧するための偏心カム211a,211bが収容されている。
【0092】
図1に示すように、基体100に装着されるリザーバ5は、リザーバ穴37に装着される略有底円筒状のリザーバピストン151と、このリザーバピストン151をリザーバ穴37の底面側(上側)に付勢するリザーバばね152と、リザーバ穴37の開口部を塞ぐ略有底円筒状のばね受け部材153と、蓋部材154を備えて構成されている。リザーバピストン151は、その外周面がリザーバ穴37の内周面に沿って摺動自在となっており、第五流路55(図4(a)参照)を介してブレーキ液が流入したときに、ばね受け部材153側に移動してこのブレーキ液を貯留する。
【0093】
次に、各ポンプ穴38a〜38cに装着される第一、第二のプランジャポンプ6A〜6Fについて説明する。第一、第二のプランジャポンプ6A〜6Fは、同様の構成を備えているので、ここでは、第一のプランジャポンプ6Aについて説明する。
図10に示すように、第一のプランジャポンプ6Aは、シリンダ161と、プランジャ162と、戻しばね163と、シールストッパー164と、吸入弁手段165と、キャップ166と、吐出弁手段167と、吐出側フィルタ168とを備えて構成されている。
【0094】
シリンダ161は、内周面が円筒面状に成形された有底円筒状の金属製部材からなり、吸入弁手段165を収容する吸入弁室S1を形成する。シリンダ161には、ポンプ穴38aと隙間をあけて対向する小径部161aと、ポンプ穴38aに圧入(嵌入)される圧入部161bと、この圧入部161bよりも大径でポンプ穴38aの段差部分に係止される係止部161cと、この係止部161cよりも小径でキャップ166の大径凹部166aに嵌め込まれる底部161d(以下、「シリンダ底部161d」という。)と、を備えて構成されている。なお、シリンダ底部161dの中央部には、吸入弁室S1に吸入したブレーキ液をキャップ166側に吐出させるための吐出路161eとなる貫通孔が形成されている。また、シリンダ161の下端部(小径部161aの先端部)の外周面には、後記するシールストッパー164を保持するための係止凹部161fが形成されている。
【0095】
プランジャ162は、モータ200の出力軸210に設けられた偏心カム211b(図1参照)の回転運動に伴ってシリンダ161の内空部を往復運動するものであり、偏心カム211bのカム面に当接する接触部162aと、ブレーキ液の吸入口となる吸入部162bと、シリンダ161の内空部を摺動しつつ往復する摺動部162cと、後記する吸入弁手段165の弁座となる弁座部162dと、を備えている。また、プランジャ162の内部には、吸入路162eが形成されている。吸入路162hは、吸入部162bの周囲に形成された環状空間S2と吸入弁室S1とを連通するものであり、吸入部162bの外周面(プランジャ162の外周面)と弁座部162dの端面(プランジャ162の上端面)とに開口している。
【0096】
接触部162aは、ポンプ穴38aに遊挿されており、かつ、その先端部がモータ200の軸受穴43に突出している。なお、接触部162aには、ポンプ穴38aに当接する環状のシール部材162kとブッシュ162fとが摺動自在に装着されている。吸入部162bは、接触部162aと摺動部162cとの間に形成され、かつ、その少なくとも一部がシリンダ161の開口部から突出している。摺動部162cは、シリンダ161の小径部161aの内空部を摺動する部位であり、摺動部162cの外径は、これに隣接する吸入部162bおよび弁座部162dの外径よりも大きく、かつ、シリンダ161の小径部161aの内径よりも僅かに小さくなっている。弁座部162dは、摺動部162cよりも吸入弁室S1側に形成されており、その周囲には、環状のシールリング162gが環装されている。シールリング162gは、シリンダ161の内周部を摺動しながら吸入弁室S1内を液密にシールしている。
【0097】
戻しばね163は、吸入弁室S1に圧縮状態で配置され、その復元力によりプランジャ162を軸受穴43側に押圧する。本実施形態に係る戻しばね163は、シリンダ161のシリンダ底部161dとプランジャ162に環装されたシールリング162gとの間に配置されており、シールリング162gを介してプランジャ162を押圧している。
【0098】
シールストッパー164は、シール部材162kの抜け出しを防止するための枠状の部材であり、プランジャ162の吸入部162bを囲繞するように配置される枠体164aと、この枠体164aからシリンダ161側に向かって延出する係止片164bとを備えており、この係止片164bをシリンダ161の係止凹部161fに係止することで、シリンダ161に保持されている。
【0099】
吸入弁手段165は、吸入路162hを開閉するものであり、吸入弁室S1に収容されている。より詳細には、吸入弁手段165は、吸入路162hの開口部を塞ぐように配置された球状の吸入弁体165aと、この吸入弁体165aを覆うように配置されたリテーナ165bと、吸入弁体165aとリテーナ165bとの間に圧縮状態で配置された吸入弁ばね165cとを備えて構成されている。吸入弁体165aは、吸入弁ばね165cの復元力によって、プランジャ162側に付勢されている。なお、リテーナ165bは、その下端部がプランジャ162の弁座部162dに外嵌されており、かつ、戻しばね163の復元力によってシールリング162gに押え付けられている。
【0100】
キャップ166は、シリンダ161のシリンダ底部161dに外側から覆設されるものであり、シリンダ161とは別体の有底円筒状の金属製部材からなる。キャップ166の内側には、シリンダ底部161dが圧入される大径凹部166aと、この大径凹部166aよりも小径の小径凹部166bとが形成されている。小径凹部166bは、シリンダ底部161dとともに、吐出弁手段167および吐出側フィルタ168を収容する吐出弁室S3を形成する。
【0101】
キャップ166の外周面には、その周方向に沿って、環状の係止溝166cが凹設されている。係止溝166cには、ポンプ穴38aの穴壁に形成される塑性変形部が入り込む。本実施形態においては、係止溝166cの上側に隣接する上蓋部166eの外径が、係止溝166cの下側に隣接する下蓋部166dの外径よりも小さくなっている。下蓋部166dは、ポンプ穴38aの入口部分の段差部より内側の内径と略同一であり、その部分に挿入される。上蓋部166eは、ポンプ穴38aの入口部分の段差部の底面から突出しており、かつ、突出部分の周縁部166fが面取りされている。
【0102】
なお、キャップ166のうち、下蓋部166dの下側に位置する流路構成部166gの外径は、下蓋部166dの外径よりも小さくなっていて、流路構成部166gの外周面とポンプ穴38aとにより、第十流路60と連通する環状空間S4が形成される。なお、流路構成部166gには、吐出弁室S3と環状空間S4とを連通する出口孔166hが形成されている。出口孔166hは、プランジャ162の往復動に伴う脈動を緩和するオリフィス6a(図12参照)として機能する。
【0103】
吐出弁手段167は、シリンダ161のシリンダ底部161dに形成された吐出路161eを開閉するものであり、吐出弁室S3に収容されている。より詳細に、吐出弁手段167は、シリンダ161の吐出路161eを塞ぐように配置された球状の吐出弁体167aと、吐出弁室S3に圧縮状態で配置された吐出弁ばね167bとを備えて構成されている。吐出弁体167aは、吐出弁ばね167bの復元力によって、吐出路161e側に付勢されている。
【0104】
吐出側フィルタ168は、吐出路161eから吐出されたブレーキ液を濾過するものであり、吐出弁室S3内において吐出弁手段167を取り囲むように配置されていて、かつ、その少なくとも一部が軸方向に圧縮された状態で、シリンダ161とキャップ166とに挟持されている。より詳細に、吐出側フィルタ168は、吐出路161eから吐出されたブレーキ液を濾過するフィルタ本体168Bと、このフィルタ本体168Bを保持する保持部材168Aとを備えて構成されている。
【0105】
続いて、基体100に組み付けられるモータ200およびコントロールハウジング300について詳細に説明する。
【0106】
図1に示すモータ200は、第一、第二のプランジャポンプ6A〜6Fの動力源となるものであり、基体100の後面12(図3(a)参照)に一体的に取り付けられる。図1に示すように、モータ200の出力軸210には、前記したように、偏心カム211a,211bが設けられている。また、モータ200のボディの側面には、ロータに電流を供給するためのコネクタ部220が突設されている。コネクタ部220には、コントロールハウジング300から配索された図示しない電源コードに設けられたコネクタが接続されるようになっている。
【0107】
コントロールハウジング300は、図1に示すように、電磁弁1s〜4s、液圧源側ブレーキ液圧センサ9aおよび車輪側ブレーキ液圧センサ9bを覆うように基体100の前面11に一体的に固着されるコントロールケース310と、このコントロールケース310の開口部を密閉するコントロールカバー320とを備えている。なお、コントロールケース310には、基体100の前面11を覆う取付部311と、図示せぬバッテリや車輪速度センサとの接続端子が形成されたコネクタ部312とを備えていて、取付部311には、図示しない無端状のシール部材が装着される。このようなコントロールケース310は、内部に設けられた図示しない支持板部に、基体100に設置された電磁弁1s〜4sを駆動させるための図示しない電磁コイルが取り付けられている。
【0108】
なお、コントロールハウジング300の内部は、図4(a)に示す凹部41と通気孔42とを介して外部と連通することになるので、コントロールハウジング300の内部の圧力は大気圧と同程度に保たれている。つまり、コントロールハウジング300の内圧変化によって外部からの水等の浸入が発生するのを防止することができる。ここで、基体100の凹部41には、図示せぬ透湿防水素材が装着されており、これによって、コントロールハウジング300内に水等が浸入することが防止されている。
【0109】
図1に示す制御装置400は、電子回路がプリントされた基板に半導体チップ等が搭載されてなるものであり、液圧源側ブレーキ液圧センサ9aおよび車輪側ブレーキ液圧センサ9bや図示しない車輪速度センサといった各種センサから得られた情報やあらかじめ記憶させておいたプログラム等に基づいて、電磁弁1s〜4sの開閉やモータ200の作動を制御する。
【0110】
続いて、通常のブレーキ制御、アンチロックブレーキ制御および挙動安定化制御を行った場合のブレーキ液の実際の流れを詳細に説明する。
【0111】
(通常のブレーキ制御)
通常のブレーキ制御においては、前記したように、吸入弁4となる常閉型の電磁弁4s(図1参照)が閉弁状態にあり、カット弁1となる常開型の電磁弁1s(図1参照)が開弁状態にあるので、図4(b)に示すように、入口ポート21から流入したブレーキ液は、第一流路51を通って、図4(a)に示すように、第七流路57から第三装着穴36に流入し、開弁状態にある電磁弁1s(図1参照、カット弁1(図12参照)の内部を通って、図6(b)に示すように、第八流路58から吐出側ダンパ穴8aに流入する。吐出側ダンパ穴8aに流入したブレーキ液は、第九流路59を通って上方へ流れた後、第十流路60から横孔53c、53bを通って第一内側装着穴32の底部および第一外側装着穴33の底部に流入する。そして、第一内側装着穴32の底部に流入したブレーキ液は、開弁状態にある電磁弁2s(図1参照、入口弁2(図12参照))の内部を通って第二流路52に流入し、出口ポート22Rを通って車輪ブレーキFRに至り、同様に、第一外側装着穴33の底部に流入したブレーキ液は、開弁状態にある電磁弁2s(図1参照)の内部を通って第四流路54に流入し、出口ポート22Lを通って車輪ブレーキRLに至る。
【0112】
ここで、右前の車輪ブレーキFRに至る第二流路52に流入したブレーキ液は、車輪側センサ装着穴46に流入する(図4(a)参照)。そして、車輪側ブレーキ液圧センサ9bによって車輪液圧路B内のブレーキ液圧が計測され、その計測値は制御装置400に随時取り込まれる。
【0113】
(アンチロックブレーキ制御)
アンチロックブレーキ制御によって例えば車輪ブレーキFRに作用するブレーキ液圧を減圧する場合には、前記したように、制御装置400(図12参照)によって車輪ブレーキFRに対応する入口弁2が閉弁状態にされ、出口弁3が開弁状態にされる。そうすると、車輪ブレーキFRに作用していたブレーキ液は、図4(a)に示すように、出口ポート22Rおよび第二流路52を通って第二内側装着穴34の側部に流入し、さらに、開弁状態にある電磁弁3s(図1参照)の内部を通って第五流路55に流入し、リザーバ穴37に流入する。なお、第一内側装着穴32に流入したブレーキ液は、電磁弁2sが閉弁状態にあることから、第三流路53(図6(b)参照)に流入することはなく、第一内側装着穴32の側壁と電磁弁2s(図1参照)の外周面との間にある空間を通って第二内側装着穴34側へ流出する。
なお、アンチロックブレーキ制御を実行する場合には、制御装置400によってモータ200が駆動されて第一のプランジャポンプ6A,6C,6Eが作動され、その結果、リザーバ穴37に貯留されていたブレーキ液が第十一流路61を介して吸入側ダンパ穴7aに吸入され、吸入側ダンパ室7を介してポンプ穴38bに吸入される。そして第一のプランジャポンプ6Aにより第九流路59にブレーキ液が吐出される。また、吸入側ダンパ室7から第十二流路62を介してポンプ穴38aに吸入されたブレーキ液は、第一のプランジャポンプ6Eによって第十流路60から第九流路59に吐出される。また、吸入側ダンパ室7から第十三流路63を介してポンプ穴38cに吸入されたブレーキ液は、プランジャポンプ6Cによって第十四流路64から第九流路59に吐出される。
【0114】
また、アンチロックブレーキ制御によって車輪ブレーキFR(図12参照)に作用するブレーキ液圧を減圧する場合には、図4(a)に示すように、ブレーキ液は、出口ポート22Rおよび第四流路54を通って第二外側装着穴35の側部に流入し、さらに、開弁状態にある電磁弁3s(図1参照)の内部を通って第六流路56に流入し、第五流路55を通ってリザーバ穴37に流入する。
【0115】
また、車輪ブレーキFRに作用するブレーキ液圧を一定に保持する場合には、前記したように、制御装置400によって入口弁2および出口弁3が閉弁状態にされるので(図12参照)、第二流路52へのブレーキ液の流入も第二流路52からのブレーキ液の流出も起こらない。
【0116】
また、車輪ブレーキFRに作用するブレーキ液圧を増圧する場合には、前記したように、制御装置400によって入口弁2が開弁状態にされ、出口弁3が閉弁状態にされるので、ブレーキ液の流れは、通常のブレーキ制御の場合と同じになる。
【0117】
(挙動安定化制御)
挙動安定化制御において、例えば、車輪ブレーキFRを制動する場合には、前記したように、制御装置400によってカット弁1が閉弁状態にされ、吸入弁4が開弁状態にされたうえで、モータ200が作動して第一のプランジャポンプ6A,6C,6Eが駆動される。第一のプランジャポンプ6A,6C,6Eが駆動されると、図5に示すように、ポンプ穴38bの内部にあるブレーキ液が第九流路59へ吐出され、ポンプ穴38aの内部にあるブレーキ液が第十流路60へ吐出され、また、ポンプ穴38cの内部にあるブレーキ液が第十四流路64へ吐出される。第九流路59、第十流路60および第十四流路64は、相互に連通しているので、これらの流路に吐出されたブレーキ液は、第三流路53(図6(b)参照)の横孔53c、53bを通って第一内側装着穴32に流入し、さらに、開弁状態にある電磁弁2s(図1参照)の内部を通って第二流路52に流入し、出口ポート22Rを通って車輪ブレーキFRに至る。
なお、第一のプランジャポンプ6A,6C,6Eが駆動されると、中央装着穴31に装着された吸入弁4(電磁弁4s(図1参照))が開弁状態にあるので、第一流路51側にあるブレーキ液(マスタシリンダMにあるブレーキ液を含む)が、電磁弁4sの内部を通って吸入側ダンパ穴7aに流入する(図4(b)参照)。
【0118】
本実施形態では、車輪側ブレーキ液圧センサ9bを、右前の車輪ブレーキFRに繋がる出口ポート22Rと第二流路52を介して連通する車輪側センサ装着穴46に装着しているので、車輪ブレーキFRに繋がる車輪液圧路B内のブレーキ液圧を実測することができる。そして、挙動安定化制御やトラクション制御において、第一のプランジャポンプ6A,6C,6Eよりも下流側のブレーキ液圧、つまり、第一のプランジャポンプ6A,6C,6Eが駆動されることにより車輪ブレーキFRに作用している実際のブレーキ液圧を、推定によらずに、車輪側ブレーキ液圧センサ9bで実測することができる。したがって、計測されたブレーキ液圧に応じて精度の高いブレーキ制御を制御装置400で的確に行うことができる。
【0119】
特に、本実施形態では、ブレーキ負荷が多くかかる前輪の車輪ブレーキFR,FLに作用するブレーキ液圧を測定することで、制動力制御に重点を置いたブレーキ液圧制御が行えるとともに、さらに、前輪は駆動輪でもあるので、トラクション制御にも重点を置いたブレーキ液圧制御が行える。
【0120】
ここで、第一のプランジャポンプ6A〜6Fの駆動時における作用を説明する。
前記したように、本実施形態では、偏心カム112aと偏心カム112bとの位相差が180度に設定されており、前記のように一方の偏心カム112aによって計二つの、第一のプランジャポンプ6Aおよび第二のプランジャポンプ6Dが駆動され、他方の偏心カム112bによって計四つの、第一のプランジャポンプ6C,6Eおよび第二のプランジャポンプ6B,6Fが駆動されるようになっており、ブレーキ出力系統K1、K2のこれらの第一、第二のプランジャポンプ6A〜6Fは、交互に、かつ等時間間隔を置いてそれぞれの偏心カム211a,211bによって駆動される構成となっている。これによって、次に説明するような順番でブレーキ液の吐出が行われることとなる。
【0121】
すなわち、前記した第一、第二のプランジャポンプ6A〜6Fの配置(出力軸210の軸線方向から見て60度間隔)と、前記した位相差を有する偏心カム211a,211bとの組み合わせから、例えば、第一のプランジャポンプ6Aから吐出が開始されるとすると、出力軸210が1回転する毎に、第一のプランジャポンプ6A→第二のプランジャポンプ6B→第一のプランジャポンプ6C→第二のプランジャポンプ6D→第一のプランジャポンプ6E→第二のプランジャポンプ6Fの順に、ブレーキ出力系統K1,K2において交互に吐出が行われることとなる。
【0122】
このことを、ブレーキ出力系統K1,K2のそれぞれにおける第一のプランジャポンプ6A,6C,6Eと第二のプランジャポンプ6B,6D,6Fとのまとまりで見てみると、出力軸210が1回転する毎に、ブレーキ出力系統K1,K2のそれぞれにおいて等間隔で吐出が行われるようになっている。その吐出の間隔は、ブレーキ出力系統K1,K2のいずれにおいても、120度の等間隔となっている。つまり、ブレーキ出力系統K1においては、偏心カム211aにより第一のプランジャポンプ6Aが駆動された後、出力軸120が120度回転したところで、偏心カム211bにより第一のプランジャポンプ6Cが駆動され、その後、さらに出力軸120が120度回転したところで、偏心カム211bにより第一のプランジャポンプ6Eが駆動されるようになっており、吐出間隔が120度となっている。このように、吐出間隔が120度で一定となっているので、第一のプランジャポンプ6A,6C,6Eのまとまりにおいて、吐出脈動の低減効果が得られるようになっている。このことは、ブレーキ出力系統K2においても同様である。
【0123】
ところで、本実施形態では、ブレーキ出力系統K1,K2のそれぞれに対して前記のようにプランジャポンプを3気筒ずつ(第一、第二のプランジャポンプ6A〜6F)、計6気筒配置した構成としたが、仮にこれが従来のように片側1気筒で、両側で2気筒配置されたブレーキ出力系統であるときには、プランジャポンプの吐出圧は、図11(a)に示すように、凹凸の大きい不連続な二つの山で表されることとなる。
これに対して、片側3気筒で、両側で6気筒配置したときの吐出圧は、図11(b)に示すように、凹凸の小さい六つの山の連続で表されることとなる。
【0124】
本実施形態では、ブレーキ出力系統K1,K2のそれぞれに対して第一のプランジャポンプ6A,6C,6Eと第二のプランジャポンプ6B,6D,6Fとを3気筒ずつ、両側で6気筒配置し、これらがそれぞれ等間隔でブレーキ液を吐出するように構成したので、6気筒の吐出波形を合成すると、図11(c)に示すように、もとの波形よりも振幅の小さい6つの山の合成波形となる。したがって、本実施形態では、図11(a)に示した両側2気筒の場合に比べて、吐出脈動の著しい低減効果が得られることとなる。
【0125】
次に、モータ200の出力軸210にかかる負荷について説明する。
前記した図9(a)に示すように、両側に第一、第二のプランジャポンプ6A、6Bを2気筒(片側1気筒)設けたときにかかる荷重F1を基準の荷重として、図9(b)に示すように、120度、60度間隔で4気筒配置したときの合成荷重F2を考えると、合成荷重F2は、前記した荷重F1の約1.7倍(√3倍)となる。
これに対して、例えば、従来のように、6気筒のプランジャポンプを一つの偏心カムで駆動したときに、隣合う三つのプランジャポンプの合成荷重F3(不図示)を考えると、合成荷重F3は、荷重F1の約2倍となる。
したがって、従来のように6気筒のプランジャポンプを一つの偏心カムで駆動したときの合成荷重F3に比べて、図9(b)に示すように、本実施形態のような120度、60度間隔で4気筒配置したときの合成荷重F2の方が、小さな値となり、モータ200の出力軸210にかかる負荷がその分小さくなることが分かる。
【0126】
以上説明した本実施形態のブレーキ液圧制御装置Uによると、二つの偏心カム211a,211bによって第一、第二のプランジャポンプ6A〜6Fを駆動するように構成されているので、第一、第二のプランジャポンプ6A〜6Fからの応力を二つの偏心カム211a,211bに分散させることができ、一つの偏心カム211a(211b)当りの負荷を低減することができる。
これにより、従来のように、一つの偏心カムで六つ全てのプランジャポンプを駆動した場合に比べて、一つ当りの偏心カム211a(211b)への負荷が小さくなり、その分、偏心カム211a(211b)の小型化や低コスト化を図ることができる。
したがって、ブレーキ液圧制御装置U全体の小型化や低コスト化を図ることができる。
【0127】
また、第一のプランジャポンプ6A,6C,6Eと、第二のプランジャポンプ6B,6D,6Fとが同数であり、複数個の偏心カム211a,211bが1回転駆動される毎に全ての第一、第二のプランジャポンプ6A〜6Fがそれぞれ駆動されて、ブレーキ出力系統K1とブレーキ出力系統K2とに均等に液圧を発生させるようになっているので、第一、第二のプランジャポンプ6A〜6Fの吐出により生じ易い脈動を、第一のプランジャポンプ6A,6C,6E、第二のプランジャポンプ6B,6D,6F毎に低減することができるとともに、これら全体としても効果的に低減することができる。
【0128】
また、第一、第二のプランジャポンプ6A〜6Fが、出力軸210の軸方向から見たときに、周方向に等間隔を置いて配置されているので、ブレーキ出力系統K1(流路構成部100A)およびブレーキ出力系統K2(流路構成部100B)における液路の配索を簡単化することができる。これによって、液路が形成される基体100等の配索スペースに自由度が増すようになり、6気筒からなる第一、第二のプランジャポンプ6A〜6Fを備える構成でありながら、スペースの有効利用を図って装置全体の小型化が可能となる。また、配索スペースの効率化等により空いたスペースを形成し、この空いたスペースを有効に利用して、例えば、ブレーキ液圧制御装置Uに必要となる機能部品を配置したり、本実施形態のように吸入側ダンパ室7や吐出側ダンパ室8を設置したりすることが容易となる。
【0129】
また、ブレーキ出力系統K1の第一のプランジャポンプ6A,6C,6Eとブレーキ出力系統K2の第二のプランジャポンプ6B,6D,6Fとが、交互に、かつ等時間間隔で吐出動作を行うようになっているので、第一、第二のプランジャポンプ6A〜6Fの吐出により生じ易い脈動を、効果的に低減することができる。
【0130】
また、計二つの第一のプランジャポンプ6Aおよび第二のプランジャポンプ6Dが、一方の偏心カム211aの周りに180度間隔で配置されているとともに、計四つの第一のプランジャポンプ6C,6Eおよび第二のプランジャポンプ6B,6Fが、他方の偏心カム211bの周りに、順に60度、120度、60度、120度の間隔で配置されているので、出力軸210の周方向に第一、第二のプランジャポンプ6A〜6Fをスペース効率よく配置することができ、レイアウト性が高まる。
【0131】
本実施形態では、二つの偏心カム211a,211bで計六つの第一、第二のプランジャポンプ6A〜6Fを駆動するように構成したが、これに限られることはなく、三つ以上の偏心カムを設けて駆動するように構成してもよい。
【0132】
また、本実施の形態では、前輪駆動の車両を例に挙げて説明したが、本発明は、後輪駆動の車両や4輪駆動の車両であっても適用できるのは勿論である。
また、車輪側ブレーキ液圧センサ9bは、駆動輪のみでなく、全ての車輪に付いていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置の分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置の基体の斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置の基体を示す図であり、(a)は後面図、(b)は底面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置の流路構成部の透視図であって、(a)は前面からみた透視図、(b)は側面からみた透視図である。
【図5】本発明の実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置の流路構成部の後面からみた透視図である。
【図6】本発明の実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置の流路構成部に形成された各装着穴および流路の内面を可視化した斜視図であって、(a)は前面側からみた斜視図、(b)は後面側からみた斜視図である。
【図7】本発明の実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置のプランジャポンプの配置を説明するための説明図である。
【図8】本発明の実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置のプランジャポンプの配置を説明するための説明図である。
【図9】(a)は一方の偏心カムにより駆動されるプランジャポンプの配置を説明するための説明図、(b)は他方の偏心カムにより駆動されるプランジャポンプの配置を説明するための説明図である。
【図10】プランジャポンプの断面図である。
【図11】(a)は片側1気筒のプランジャポンを備えたブレーキ液圧制御装置における吐出圧の様子を示す説明図、(b)は片側3気筒とした場合の吐出圧の様子を示す説明図、(c)は本発明の実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置における吐出圧の様子を示す説明図である。
【図12】本発明の実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置の液圧回路図である。
【符号の説明】
【0134】
U 車両用ブレーキ液圧制御装置(ブレーキ液圧制御装置)
1 カット弁
2 入口弁
3 出口弁
4 吸入弁
5 リザーバ
6A〜6F プランジャポンプ
7 吸入側ダンパ室
8 吐出側ダンパ室
38a〜38c ポンプ穴
100 基体
100A 流路構成部
100B 流路構成部
200 モータ(電動モータ)
210 出力軸(カム軸)
300 コントロールハウジング
400 制御装置
K1,K2 ブレーキ出力系統(第一液圧系、第二液圧系)
FR,FL (前輪の)車輪ブレーキ
RL,RR (後輪の)車輪ブレーキ
M マスタシリンダ(液圧源)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一液圧系と第二液圧系とに区画された液圧系統を有し、
電動モータにより駆動されるカム軸と、
前記カム軸により回転駆動される偏心カムと、
前記偏心カムにより位相差をもたせて前記第一、第二液圧系に液圧をそれぞれ発生させる、少なくとも四以上の偶数個のプランジャポンプと、を備えた車両用ブレーキ液圧制御装置であって、
前記プランジャポンプは、複数の第一のプランジャポンプと、前記第一のプランジャポンプと同数の第二のプランジャポンプとからなり、
前記偏心カムは複数個であり、
これらが1回転駆動される毎に全ての前記第一、第二のプランジャポンプがそれぞれ駆動されて、前記第一液圧系と前記第二液圧系とに均等に液圧を発生させることを特徴とする車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項2】
前記第一、第二のプランジャポンプは、前記カム軸の軸方向から見たときに、周方向に等間隔を置いて配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項3】
前記第一、第二のプランジャポンプは、交互に、かつ等時間間隔を置いてそれぞれの前記偏心カムによって駆動されることを特徴とする請求項2に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項4】
前記偏心カムは、前記カム軸の軸方向に二つ並設されており、
前記第一、第二のプランジャポンプは、六つの前記プランジャポンプからなり、
一方の前記偏心カムには、このうちの二つの前記プランジャポンプが対応して配置され、他方の前記偏心カムには、四つの前記プランジャポンプが対応して配置されているとともに、
一方の前記偏心カムに対応して配置された前記二つのプランジャポンプは、一方の前記偏心カムの周りに180度間隔で配置されており、
他方の前記偏心カムに対応して配置された前記四つのプランジャポンプは、他方の前記偏心カムの周りに、順に60度、120度、60度、120度の間隔で配置されていることを特徴とする請求項3に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項1】
第一液圧系と第二液圧系とに区画された液圧系統を有し、
電動モータにより駆動されるカム軸と、
前記カム軸により回転駆動される偏心カムと、
前記偏心カムにより位相差をもたせて前記第一、第二液圧系に液圧をそれぞれ発生させる、少なくとも四以上の偶数個のプランジャポンプと、を備えた車両用ブレーキ液圧制御装置であって、
前記プランジャポンプは、複数の第一のプランジャポンプと、前記第一のプランジャポンプと同数の第二のプランジャポンプとからなり、
前記偏心カムは複数個であり、
これらが1回転駆動される毎に全ての前記第一、第二のプランジャポンプがそれぞれ駆動されて、前記第一液圧系と前記第二液圧系とに均等に液圧を発生させることを特徴とする車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項2】
前記第一、第二のプランジャポンプは、前記カム軸の軸方向から見たときに、周方向に等間隔を置いて配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項3】
前記第一、第二のプランジャポンプは、交互に、かつ等時間間隔を置いてそれぞれの前記偏心カムによって駆動されることを特徴とする請求項2に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項4】
前記偏心カムは、前記カム軸の軸方向に二つ並設されており、
前記第一、第二のプランジャポンプは、六つの前記プランジャポンプからなり、
一方の前記偏心カムには、このうちの二つの前記プランジャポンプが対応して配置され、他方の前記偏心カムには、四つの前記プランジャポンプが対応して配置されているとともに、
一方の前記偏心カムに対応して配置された前記二つのプランジャポンプは、一方の前記偏心カムの周りに180度間隔で配置されており、
他方の前記偏心カムに対応して配置された前記四つのプランジャポンプは、他方の前記偏心カムの周りに、順に60度、120度、60度、120度の間隔で配置されていることを特徴とする請求項3に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−149562(P2010−149562A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327180(P2008−327180)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】
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