説明

車両用ロック制御装置およびロック制御方法

【課題】ユーザーが車両に乗り込む際の煩雑な操作を不要とする。
【解決手段】車両の外表面に開閉可能に設けられた開閉体が閉じられ、かつロックされた開閉体のロック状態を検出するロック検出手段23,24と、開閉体を操作可能な所定範囲内にユーザーが存在するか否かを検出するユーザー検出手段22と、開閉体のロックをアンロックするアンロック手段32と、開閉体を開放する開閉体開放手段31と、ロック検出手段23,24により開閉体のロック状態が検出された状態で、ユーザー検出手段22により所定範囲内におけるユーザーの存在が検出されると、開閉体のロックをアンロックし、かつ開閉体を開放するようにアンロック手段32および開閉体開放手段31を制御する制御手段10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ドアなどの開閉体を電動でロック/アンロックする車両用ロック制御装置およびロック制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドアロックがロック状態で、ドアが閉じている状態の車両に乗り込む場合に、ユーザーの所有する携帯機からのアンロック信号を受信し、ドアロックをアンロックさせた後、ユーザーがドア近傍に設けられたドアオープナースイッチを操作すると、ドアのラッチをリリースさせることで、ドアがユーザー側に向かって開くようにした技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−262054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上述した技術では、ドアロックがロック状態で、ドアが閉じている車両にユーザーが乗り込む場合に、ドアロックを解除するための操作とドアを開くための操作を別々に行わなければならず、煩わしかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による車両用ロック制御装置は、車両に設けられた開閉体が閉じられ、かつ開閉体のロック状態をロック検出手段により検出し、かつ開閉体を操作可能な所定範囲内にユーザーが存在するか否かをユーザー検出手段により検出すると、開閉体のロックをアンロックし、かつ開閉体を開放するようにアンロック手段および開閉体開放手段を制御手段により制御する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、開閉体が閉じられ、かつロックされた状態で、車両から所定範囲内にユーザーが存在することが検出されると、開閉体のロックをアンロックし、かつ開閉体を開放するようにしたので、ユーザーが車両に乗り込む際に煩雑な操作が不要となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
−第1の実施の形態−
図1は、本発明の実施形態による車両用ロック制御装置の構成例を示すブロック図であり、スイング式の車両ドアに適用したものである。このロック制御装置100は車両に備えられたものであり、コントローラ10に、アンテナ21、オープナスイッチ22、ロックセンサ23、ドア開スイッチ24、ラッチ駆動モータ31、ロック駆動モータ32が、それぞれ接続されて構成されている。そして、以下で詳細に説明するように、本実施の形態による車両用ロック装置では、オープナスイッチ22の操作時にドアロックの解除が許可されるとドアロックを解除するとともに、ドアを所定量開放する。
【0008】
コントローラ10は、CPU11、ROM12、RAM13を備えたコンピュータ装置であり、CPU11はコントローラ10による各種処理を司るものである。ROM12はCPU11にて実行される各種プログラムや、キー照合に用いるキーID等を格納している。RAM13はCPU11による処理結果を一時的に格納する動作領域として機能する。
【0009】
アンテナ21は、ユーザーが携帯するリモコン200からの電波信号(ロック指令又はアンロック指令)を受信してコントローラ10に送るとともに、コントローラ10からの指令によりリモコン200に対してリクエスト信号を出力する。なお、このリモコン200は、電波送信用のアンテナ210と、操作部であるLOCKボタン220及びUNLOCKボタン230とを備えている。
【0010】
ユーザーが例えば車両外部からLOCKボタン220またはUNLOCKボタン230を操作すると、キーIDを含む電波信号(ロック指令又はアンロック指令)を、アンテナ210を介して発信する。アンテナ21から送信されたリクエスト信号を受信したときも、キーIDを含む電波信号を発信する。車両から発せられたリクエスト信号は、リモコン200を携帯したユーザーがドア操作可能な範囲内に存在するときに受信可能であり、リクエスト信号の通信範囲はリモコン200からの電波信号の通信範囲よりも狭い。
【0011】
オープナスイッチ22は、各車両ドア外面のノブ付近にそれぞれ設けられた図示しないスイッチボタンによって操作される。ユーザーによりオープナスイッチ22が操作されると、操作されたドアのドア開き入力信号およびキーIDを含む電波信号をコントローラ10に送信する。
【0012】
ロックセンサ23は、車両ドアのロック機構に設けられており、ロック機構によってドアがロックされているときはON状態となり、アンロックのときはOFF状態となる。ロックセンサ23のON/OFF状態はコントローラ10から読み取り可能になっている。なお、ラッチ機構により車両ドアをロックするように構成することもでき、この場合には車両ドアのラッチ状態を検出するラッチスイッチからの信号によりドアのロック/アンロックを検出する。
【0013】
ラッチ駆動モータ31は、車両ドアのラッチ機構に設けられている。このラッチ駆動モータ31は、コントローラ10からの指令に基づき、ラッチ機構をラッチ状態(周知のようにストライカがラッチの切り欠きに係合した状態)からラッチリリース状態(ストライカが切り欠きから離脱した状態)へ駆動制御する。ラッチ状態においてはドアが閉鎖され、ラッチリリース状態でドアがユーザー側に所定量(数センチ程度)開放する。
【0014】
ロック駆動モータ32は、車両ドアのロック機構に設けられている。このロック駆動モータ32は、コントローラ10からの指令に基づき、ロック機構をロックされている状態からアンロック状態へ、アンロックされている状態からロック状態へ、それぞれ駆動制御する。ドア開スイッチ26は、ドアの開閉に応じてドア開信号またはドア閉信号をコントローラ10へ出力する。
【0015】
図2は、図1の車両ロック制御装置のコントローラ10により実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは例えばドア開スイッチ26からドア閉信号が出力され、かつ、ロックセンサ23がON状態(ドアロック)のときにスタートする。
【0016】
まず、ステップS101でオープナスイッチ22が操作されたか否かを判定する。非操作と判定されるとステップS106に進み、リモコン200のUNLOCKボタン230の操作により発信されるアンロック指令を受信したか否かを判定する。アンロック指令の受信がないときはステップS101に戻る。
【0017】
アンロック指令を受信するとステップS107に進み、ROM12が記憶しているキーIDを読み出し、受信したアンロック指令に含まれるキーIDとの照合を実行する。次いでステップS108で照合が成功したか否かを判定し、成功しない場合はステップS101に戻る。照合が成功するとステップS109に進み、ロック駆動モータ32によりロック機構を駆動し、全てのドアのドアロックを解除する。
【0018】
次にステップS110でオープナスイッチ22が操作されたか否かを判定し、非操作と判定されるとステップS115に進み、リモコン200のLOCKボタン220の操作により発信されるロック指令を受信したか否かを判定する。ロック指令の受信がないときはステップS110に戻る。ロック指令を受信するとステップS116に進み、ロック駆動モータ32によりロック機構を駆動し、全てのドアをロックする。
【0019】
ステップS110でオープナスイッチ22の操作と判定されるとステップS111に進み、アンテナ21からリクエスト信号を出力する。このリクエスト信号をアンテナ210が受信すると、リモコン200からキーIDを含む電波信号が発信される。ステップS112では、この電波信号をアンテナ21で受信するとともに、ROM12が記憶しているキーIDとアンテナ21が受信したキーIDとの照合を実行する。ステップS113では照合が成功したか否かを判定し、成功しない場合はステップS110に戻る。照合が成功するとステップS114に進み、ラッチ駆動モータ31によりラッチ機構を駆動し、スイッチ22が操作されたドアをラッチリリーフ状態として所定量開放する。
【0020】
一方、ステップS101でオープナスイッチ22が操作と判定されるとステップS102に進み、アンテナ21からリクエスト信号を出力する。このリクエスト信号をアンテナ210が受信すると、リモコン200からキーIDを含む電波信号が発信される。ステップS103では、この電波信号をアンテナ21で受信するとともに、ROM12が記憶しているキーIDとアンテナ21が受信したキーIDとの照合を実行する。ステップS104では照合が成功したか否かを判定し、成功しない場合はステップS101に戻る。照合が成功するとステップS105に進み、ロック駆動モータ32およびラッチ駆動モータ31によりそれぞれロック機構とラッチ機構を駆動し、全てのドアのドアロックを解除するとともに、スイッチ22が操作されたドアをラッチリリーフ状態として所定量開放する。
【0021】
第1の実施の形態に係る車両用ロック制御装置の動作をまとめると次のようになる。ユーザーが車両外部からリモコン200のUNLOCKボタン230を操作すると、キーIDの照合後にドアロックが解除され(ステップS109)、LOCKボタン220を操作するとドアロックが作動する(ステップS116)。ドアロックが解除された状態でオープナスイッチ22を操作すると、キーIDの照合後にドアがユーザー側に所定量開放する。
【0022】
一方、ドアがロックされた状態、すなわちリモコン200からアンロック指令が送信さない状態で、オープナスイッチ22が操作されると、キーIDの照合後にドアロックが解除され、かつ、ドアがユーザーが所定量開放する(ステップS105)。これによりユーザーが車両近傍に存在する場合には、1回の操作によりドアがアンロックかつ開放されるので、ユーザーが車両に乗車する際に煩雑な操作が不要であり、利便性が高まる。
【0023】
以上の第1の実施の形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)車両外表面に設けられたオープナスイッチ22の操作が検出されると、ドアロックを解除するとともにドアを所定量開放するようにしたので、車両近傍にユーザーが存在する場合に、ドアのロック解除操作と開放操作を別々に行う必要がなく、煩雑な操作が不要である。
(2)ドア開放指令入力用のオープナスイッチ22の操作を検出してドアを解除および開放するので、別途スイッチ等を追加する必要がなく、構成を簡素化できる。
(3)ユーザーが携帯するリモコン200の操作によりロック解除指令が発信されたときは、ドアロックの解除のみを行い、ドアを開放しないので、ユーザーが車両から離れた場所にいるときにドアが開放することがなく、安全性も高い。
【0024】
−第2の実施の形態−
以下では第1の実施の形態との相違点を主に説明する。第2の実施の形態が第1の実施の形態と異なるのはコントローラ10における処理であり、第2の実施の形態に係るコントローラ10における処理の一例を図3に示す。なお、図2と同様の処理には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0025】
処理がスタートすると、まず、ステップS201でアンテナ21から所定時間間隔でリクエスト信号を出力する。このときリモコン200を携帯したユーザーが、リクエスト信号を受信可能な車両から所定範囲内に位置し、アンテナ210がリクエスト信号を受信すると、リモコン200からキーIDを含む電波信号が発信される。ステップS112ではこの電波信号をアンテナ21が受信したか否か、すなわち車両近傍にユーザーが存在するか否かを判定する。
【0026】
所定範囲内にユーザーが存在しないと判定されるとステップS106に進み、以降、ステップS106〜ステップS116において第1の実施の形態と同様の処理を行う。これに対しステップS202で所定範囲内にユーザーが存在と判定されるとステップS103に進み、ROM12が記憶しているキーIDとアンテナ21が受信したキーIDとの照合を実行する。そしてステップS104で照合が成功したか否かを判定し、成功した場合はステップS105に進み、ラッチ駆動モータ31によりラッチ機構を駆動し、スイッチ22が操作されたドアをラッチリリーフ状態として所定量開放する。
【0027】
このように第2の実施の形態によれば、車両からのリクエスト信号に対応した電波信号をリモコン200が発信した場合、すなわちリモコン200を携帯したユーザーが車両近傍に存在する場合に、ドアロックを解除するとともにドアを開放するようにしたので、ドアの解除操作と開放操作を行う必要がなく、煩雑な操作が一切不要である。また、ユーザーが携帯するリモコン200の操作によってドアロックの解除のみを行い、ドアを開放しないので、ユーザーが車両から離れた場所にいるときにドアが開放することがなく、安全性も高い。
【0028】
なお、上記実施の形態ではロック制御装置をスイング式の車両ドアに適用したが、スライド式のドアにも適用することができ、また車両の外表面に開閉可能に設けられた他の開閉体にも同様に適用することができる。ドア開スイッチ24とロックセンサ23からの信号によりドアが閉じられかつロックされた状態を検出したが、ロック検出手段はこれに限らない。
【0029】
オープナスイッチ22の操作、あるいはリクエスト信号に応答して発信されたリモコン200からの信号を受信して所定範囲内のユーザーの存在を検出したが、ドアを操作可能な所定範囲内にユーザーが存在するか否かを検出するのであれば、ユーザー検出手段はこれに限らない。車両外表面に設けられた開放指令入力用の他の操作部材の操作により所定範囲内のユーザーの存在を検出してもよく、ユーザー信号受信手段としてのアンテナ21が他の携帯機からの信号を受信して所定範囲内のユーザーの存在を検出してもよい。リモコン200のUNLOCKボタン230の操作により発信されたロック解除指令を受信するロック解除指令受信手段としてのアンテナ21を別に設けてもよい。所定範囲内でのUNLOCKボタン230の操作を検出したときはドアロック解除とドア開閉の両方を行い、所定範囲外でのUNLOCKボタン230の操作が検出されたときはドアロック解除のみを行うようにしてもよい。
【0030】
ロック駆動モータ32によりドアロックを解除し、ラッチ駆動モータ31によりラッチリリースをし、それに伴ってドアを開放するようにしたが、ロック解除手段と開閉体開放手段の構成はこれに限らない。例えばロック解除とドアの開放を単一のアクチュエータにより行うようにしてもよい。ドアのロック状態が検出された状態で車両の所定範囲内におけるユーザーの存在が検出されるとドアロックを解除し、かつドアを開放するのであれば、制御手段としてのコントローラ10における処理は図示したものに限らない。また、ラッチリリース用のアクチュエータとは別に開閉体を開駆動するアクチュエータを備えるようにしてもよい。
【0031】
すなわち、本発明の特徴、機能を実現できる限り、本発明は実施の形態の車両用ロック制御装置に限定されない。なお、以上の説明はあくまで一例であり、発明を解釈する際、上記実施形態の記載事項と特許請求の範囲の記載事項の対応関係になんら限定も拘束もされない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施形態による車両用ロック制御装置の制御構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施の形態による車両用ロック制御装置における処理動作を説明するフローチャートである。
【図3】本発明の第2実施の形態による車両用ロック制御装置における処理動作を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0033】
10 コントローラ
21 アンテナ
22 オープナスイッチ
23 ロックセンサ
24 ドア開スイッチ
31 ラッチ駆動モータ
32 ロック駆動モータ
200 リモコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた開閉体が閉じられ、かつ開閉体のロック状態を検出するロック検出手段と、
前記開閉体を操作可能な所定範囲内にユーザーが存在するか否かを検出するユーザー検出手段と、
前記開閉体のロックをアンロックするアンロック手段と、
前記開閉体を開放する開閉体開放手段と、
前記ロック検出手段により開閉体のロック状態が検出された状態で、前記ユーザー検出手段により前記所定範囲内におけるユーザーの存在が検出されると、前記開閉体のロックをアンロックし、かつ開閉体を開放するように前記アンロック手段および開閉体開放手段を制御する制御手段とを備えることを特徴とする車両用ロック制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用ロック制御装置において、
前記ユーザー検出手段は、車両の外表面に設けられた開放指令入力用の操作部材の操作を検出する操作検出手段を有し、前記操作検出手段により操作部材の操作が検出されると所定範囲内のユーザーの存在を検出することを特徴とする車両用ロック制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用ロック制御装置において、
前記ユーザー検出手段は、ユーザーにより携帯される携帯機が前記所定範囲内にあるときに携帯機から発せられる信号を受信するユーザー信号受信手段を有し、前記ユーザー信号受信手段により前記携帯機からの信号を受信すると所定範囲内のユーザーの存在を検出することを特徴とする車両用ロック制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用ロック制御装置において、
ユーザーの遠隔操作により発信されたアンロック指令を受信するアンロック指令受信手段を有し、
前記制御手段は、前記ロック検出手段により開閉体のロック状態が検出された状態で、前記ユーザー検出手段により前記所定範囲内におけるユーザーの存在が検出されない場合に、前記アンロック指令受信手段がアンロック指令を受信すると、前記開閉体のロックをアンロックし、かつ開閉体を開放しないよう前記ロック解除手段および開閉体開放手段を制御することを特徴とする車両用ロック制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用ロック制御装置において、
前記開閉体は車両ドアであることを特徴とする車両用ロック制御装置。
【請求項6】
車両の開閉体が閉じられ、かつロックされた状態で、前記開閉体を操作可能な所定範囲内にユーザーが存在するか否かを検出し、
前記所定範囲内におけるユーザーの存在が検出されると、前記開閉体のロックをアンロックし、かつ開閉体を開放することを特徴とする車両用ロック制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−9624(P2007−9624A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−194806(P2005−194806)
【出願日】平成17年7月4日(2005.7.4)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】