説明

車両用乗員保護装置

【課題】側面衝突時の乗員保護性能をより向上させることを目的とする。
【解決手段】側面衝突時に、車両用シート12に着座した乗員14の腰部14Wを拘束し該腰部14Wへの衝撃エネルギーを吸収する腰部用エアバッグ袋体16(腰部エネルギー吸収手段)と、該腰部用エアバッグ袋体16と異なるエネルギー吸収特性(例えば剛性)を有し、側面衝突時に、乗員14の大腿部14Tを拘束し該大腿部14Tへの衝撃エネルギーを吸収する大腿部用エアバッグ袋体18(大腿部エネルギー吸収手段)と、を有している。乗員拘束時の大腿部用エアバッグ袋体18の剛性を、腰部用エアバッグ袋体16の剛性よりも高くすることで、大腿部14Tに対する拘束性をより高めることができ、これによって腰部14Wにおける恥骨荷重を、少ないエネルギー吸収ストロークで有効に低減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側面衝突を考慮した車両用乗員保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の外部側方からの荷重によって乗員を移動させ、乗員の胸部や肩部、頭部が車体部分と干渉することを防止するために、乗員の腰部及び腹部に対応する衝撃吸収材をドア内に配置した構成が開示されている(特許文献1参照)。また車両用シートにおけるシートバックに配設したサイドエアバッグを、胸部チャンバと腰部チャンバとに分離し、かつ胸部チャンバの内圧を腰部チャンバの内圧よりも大きく設定した構成が開示されている(特許文献2参照)。更にサイドエアバッグを、車両用シートにおけるシートクッション側部に配設した構成が開示されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平10−44896号公報
【特許文献2】特開2000−177527号公報
【特許文献3】特開2004−210181号公報
【特許文献4】特許第3214247号公報
【特許文献5】特開2004−210214号公報
【特許文献6】特開2005−22466号公報
【特許文献7】特開2004−276677号公報
【特許文献8】特開2004−291785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した従来例は、何れも側面衝突時における乗員の胸部や腰部に対する衝撃の吸収を考慮した内容となっている。しかしながら、側面衝突時の乗員保護性能については、未だ改善の余地がある。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、側面衝突時の乗員保護性能をより向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、側面衝突時に、車両用シートに着座した乗員の腰部を拘束し該腰部への衝撃エネルギーを吸収する腰部エネルギー吸収手段と、該腰部エネルギー吸収手段と異なるエネルギー吸収特性を有し、側面衝突時に、前記車両用シートに着座した前記乗員の大腿部を拘束し該大腿部への衝撃エネルギーを吸収する大腿部エネルギー吸収手段と、を有することを特徴としている。
【0006】
請求項1に記載の車両用乗員保護装置では、側面衝突時に乗員の腰部への衝撃エネルギーを吸収する腰部エネルギー吸収手段と、側面衝突時に乗員の大腿部への衝撃エネルギーを吸収する大腿部エネルギー吸収手段とを有しており、該大腿部エネルギー吸収手段が腰部エネルギー吸収手段と異なるエネルギー吸収特性を有しているので、同一のエネルギー吸収特性とした乗員保護装置と比較して、側面衝突時における衝撃エネルギーをより適切に吸収することができ、これにより乗員保護性能をより向上させることができる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の車両用乗員保護装置において、前記大腿部エネルギー吸収手段の剛性は、前記腰部エネルギー吸収手段の剛性よりも高く設定されていることを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の車両用乗員保護装置では、大腿部エネルギー吸収手段の剛性が、腰部エネルギー吸収手段の剛性よりも高く設定されているので、側面衝突時に乗員の腰部のうち特に恥骨部位に入力される恥骨荷重を、少ないエネルギー吸収ストロークで有効に低減させることが可能である。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載の車両用乗員保護装置において、前記腰部エネルギー吸収手段及び前記大腿部エネルギー吸収手段は、前記車両用シート又は該車両用シート側方のドアに配設され側面衝突時に展開するエアバッグ袋体であり、該エアバッグ袋体のうち展開時に前記大腿部に対応する領域の内圧が、前記エアバッグ袋体のうち展開時に前記腰部に対応する領域の内圧よりも高く設定されていることを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の車両用乗員保護装置では、腰部エネルギー吸収手段及び大腿部エネルギー吸収手段が、側面衝突時に展開するエアバッグ袋体であり、該エアバッグ袋体の展開時に、大腿部に対応する領域の内圧が、腰部に対応する領域の内圧よりも高くなるので、側面衝突時における大腿部の拘束性をより高めることができ、これによって腰部における恥骨荷重を、少ないエネルギー吸収ストロークで有効に低減させることができる。
【0011】
請求項4の発明は、請求項3に記載の車両用乗員保護装置において、前記エアバッグ袋体として、互いに独立した腰部用エアバッグ袋体と、大腿部用エアバッグ袋体とを有することを特徴としている。
【0012】
請求項4に記載の車両用乗員保護装置では、エアバッグ袋体として、互いに独立した腰部用エアバッグ袋体と、大腿部用エアバッグ袋体とを有しており、側面衝突時には、腰部用エアバッグ袋体が乗員の腰部に対応して展開して該腰部を拘束すると共に、大腿部用エアバッグ袋体が大腿部に対応して展開して該大腿部を拘束する。このときの大腿部用エアバッグ袋体の内圧は、腰部用エアバッグ袋体の内圧よりも高いので、側面衝突時における大腿部の拘束性をより高めることができ、これによって腰部における恥骨荷重を、少ないエネルギー吸収ストロークで有効に低減させることができる。
【0013】
請求項5の発明は、請求項3に記載の車両用乗員保護装置において、前記エアバッグ袋体は、腰部用チャンバと大腿部用チャンバとを有する単一のエアバッグ袋体であることを特徴としている。
【0014】
請求項5に記載の車両用乗員保護装置では、エアバッグ袋体が、腰部用チャンバと大腿部用チャンバとを有する単一のエアバッグ袋体として構成されており、側面衝突時には、腰部用チャンバが乗員の腰部に対応して展開して該腰部を拘束すると共に、大腿部用チャンバが大腿部に対応して展開して該大腿部を拘束する。このときの大腿部用チャンバの内圧は、腰部用チャンバの内圧よりも高いので、側面衝突時における大腿部の拘束性をより高めることができ、これによって腰部における恥骨荷重を、少ないエネルギー吸収ストロークで有効に低減させることができる。
【0015】
請求項6の発明は、請求項4に記載の車両用乗員保護装置において、前記大腿部用エアバッグ袋体の内部は、車両前後方向に沿って複数のエリアに分割されており、かつ展開時における前記大腿部用エアバッグ袋体には、車両前方ほど剛性が高くなるように剛性差が与えられていることを特徴としている。
【0016】
請求項6に記載の車両用乗員保護装置では、大腿部用エアバッグ袋体の内部が、車両前後方向に沿って複数のエリアに分割されており、かつ展開時における大腿部用エアバッグ袋体には、車両前方ほど剛性が高くなるように剛性差が与えられているので、側面衝突時における大腿部の車両前方部位に対する拘束性を、より高めることができる。
【0017】
請求項7の発明は、請求項5に記載の車両用乗員保護装置において、前記大腿部用チャンバは、車両前後方向に沿って複数のエリアに分割されており、かつ展開時における前記大腿部用チャンバには、車両前方ほど剛性が高くなるように剛性差が与えられていることを特徴としている。
【0018】
請求項7に記載の車両用乗員保護装置では、大腿部用チャンバが、車両前後方向に沿って複数のエリアに分割されており、かつ展開時における大腿部用チャンバには、車両前方ほど剛性が高くなるように剛性差が与えられているので、乗員拘束時における大腿部用チャンバの変形を抑制して拘束性を高めることができると共に、大腿部の車両前方部位に対する拘束性をより高めることができる。
【0019】
請求項8の発明は、請求項3に記載の車両用乗員保護装置において、前記エアバッグ袋体は、単一のチャンバを有しており、前記エアバッグ袋体の展開時には、前記チャンバにおける前記大腿部に対応する領域の下方から上方に向けて展開用のガスが供給されるように構成したことを特徴としている。
【0020】
請求項8に記載の車両用乗員保護装置では、エアバッグ袋体が単一のチャンバを有しており、該エアバッグ袋体の展開時には、チャンバにおける大腿部に対応する領域の下方から上方に向けて展開用のガスが供給されるので、エアバッグ袋体のうち大腿部に対応する領域の内圧が、腰部に対応する領域の内圧よりも高くなる。このため、側面衝突時における大腿部の拘束性をより高めることができ、これによって腰部における恥骨荷重を、少ないエネルギー吸収ストロークで有効に低減させることができる。
【0021】
請求項9の発明は、請求項3に記載の車両用乗員保護装置において、前記エアバッグ袋体は、単一のチャンバを有しており、前記エアバッグ袋体の展開時には、前記チャンバにおける車両後方端部から車両前方に向けて展開用のガスが供給されるように構成したことを特徴としている。
【0022】
請求項9に記載の車両用乗員保護装置では、エアバッグ袋体が単一のチャンバを有しており、該エアバッグ袋体の展開時には、該エアバッグ袋体のうち大腿部に対応する領域の内圧が、腰部に対応する領域の内圧よりも高くなるように、チャンバにおける車両後方端部から車両前方に向けて展開用のガスが供給される。このため、側面衝突時における大腿部の拘束性をより高めることができ、これによって腰部における恥骨荷重を、少ないエネルギー吸収ストロークで有効に低減させることができる。
【0023】
請求項10の発明は、請求項2に記載の車両用乗員保護装置において、前記腰部エネルギー吸収手段は、車両用シート側方のドアに配設された腰部エネルギー吸収パッド又は腰部エネルギー吸収リブであり、前記大腿部エネルギー吸収手段は、前記ドアに配設された大腿部エネルギー吸収パッド又は大腿部エネルギー吸収リブであり、前記大腿部エネルギー吸収パッド又は前記大腿部エネルギー吸収リブの硬度は、前記腰部エネルギー吸収パッド又は前記腰部エネルギー吸収リブの硬度よりも高く設定されていることを特徴としている。
【0024】
請求項10に記載の車両用乗員保護装置では、車両用シート側方のドアに、腰部エネルギー吸収手段としての腰部エネルギー吸収パッド又は腰部エネルギー吸収リブと、大腿部エネルギー吸収手段としての大腿部エネルギー吸収パッド又は大腿部エネルギー吸収リブとが配設されている。この大腿部エネルギー吸収パッド又は大腿部エネルギー吸収リブの硬度は、腰部エネルギー吸収パッド又は腰部エネルギー吸収リブの硬度よりも高く設定されているので、側面衝突時における大腿部の拘束性をより高めることができ、これによって腰部における恥骨荷重を、少ないエネルギー吸収ストロークで有効に低減させることができる。
【0025】
請求項11の発明は、請求項2に記載の車両用乗員保護装置において、前記腰部エネルギー吸収手段は、車両用シート側方のドアに配設された腰部エネルギー吸収リブであり、前記大腿部エネルギー吸収手段は、前記ドアに配設された大腿部エネルギー吸収リブであり、該大腿部エネルギー吸収リブの板厚は、前記腰部エネルギー吸収リブの板厚よりも厚く設定されていることを特徴としている。
【0026】
請求項11に記載の車両用乗員保護装置では、車両用シート側方のドアに、腰部エネルギー吸収手段及び大腿部エネルギー吸収手段としての腰部エネルギー吸収リブ及び大腿部エネルギー吸収手リブが配設されており、該大腿部エネルギー吸収リブの板厚が腰部エネルギー吸収リブの板厚よりも厚く設定され、これにより大腿部エネルギー吸収リブの剛性が腰部エネルギー吸収リブよりも高く設定されている。このため、側面衝突時における大腿部の拘束性をより高めることができ、これによって腰部における恥骨荷重を、少ないエネルギー吸収ストロークで有効に低減させることができる。
【0027】
請求項12の発明は、請求項1に記載の車両用乗員保護装置において、側面衝突時における前記大腿部エネルギー吸収手段による前記大腿部の拘束タイミングは、前記腰部エネルギー吸収手段による前記腰部の拘束タイミングよりも早く設定されていることを有することを特徴としている。
【0028】
請求項12に記載の車両用乗員保護装置では、側面衝突時における大腿部エネルギー吸収手段による大腿部の拘束タイミングが、腰部エネルギー吸収手段による腰部の拘束タイミングよりも早く設定されているので、側面衝突時に腰部よりも先に大腿部を拘束することができ、これによって腰部における恥骨荷重を有効に低減させることができる。
【0029】
請求項13の発明は、請求項12に記載の車両用乗員保護装置において、前記腰部エネルギー吸収手段は、前記車両用シート又は該車両用シート側方のドアに配設され側面衝突時に前記腰部に対応して展開する腰部用エアバッグ袋体であり、前記大腿部エネルギー吸収手段は、前記車両用シート又は前記ドアに配設され側面衝突時に前記大腿部に対応して展開する大腿部用エアバッグ袋体であり、側面衝突時に前記大腿部用エアバッグ袋体が前記腰部用エアバッグ袋体よりも先に展開するように構成したことを特徴としている。
【0030】
請求項13に記載の車両用乗員保護装置では、車両用シート又は該車両用シート側方のドアに、腰部エネルギー吸収手段としての腰部用エアバッグ袋体及び大腿部エネルギー吸収手段としての大腿部用エアバッグ袋体が配設されており、側面衝突時に大腿部用エアバッグ袋体が腰部用エアバッグ袋体よりも先に展開して乗員の大腿部をいち早く拘束し、続いて腰部用エアバッグ袋体が乗員の腰部を拘束する。これにより、腰部における恥骨荷重を有効に低減させることが可能である。
【0031】
請求項14の発明は、請求項12に記載の車両用乗員保護装置において、前記腰部エネルギー吸収手段は、車両用シート側方のドアにおけるドアインナパネルとドアトリムとの間に配設された腰部エネルギー吸収パッド又は腰部エネルギー吸収リブであり、前記大腿部エネルギー吸収手段は、前記ドアにおける前記ドアインナパネルと前記ドアトリムとの間に配設された大腿部エネルギー吸収パッド又は大腿部エネルギー吸収リブであり、前記大腿部エネルギー吸収パッド又は前記大腿部エネルギー吸収リブの車室内側端部は、前記腰部エネルギー吸収パッド又は前記腰部エネルギー吸収リブの車室内側端部よりも車室内側に突出した位置に設定されていることを特徴としている。
【0032】
請求項14に記載の車両用乗員保護装置では、腰部エネルギー吸収手段としての腰部エネルギー吸収パッド又は腰部エネルギー吸収リブと、大腿部エネルギー吸収手段としての大腿部エネルギー吸収パッド又は大腿部エネルギー吸収リブとが、車両用シート側方のドアにおけるドアインナパネルとドアトリムとの間に配設されており、大腿部エネルギー吸収パッド又は大腿部エネルギー吸収リブの車室内側端部が、腰部エネルギー吸収パッド又は腰部エネルギー吸収リブの車室内側端部よりも車室内側に突出した位置に設定されているので、側面衝突時には大腿部エネルギー吸収パッド又は大腿部エネルギー吸収リブが、いち早く乗員の大腿部を拘束し、続いて腰部エネルギー吸収パッド又は腰部エネルギー吸収リブが乗員の腰部を拘束する。これにより、腰部における恥骨荷重を有効に低減させることが可能である。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の車両用乗員保護装置によれば、側面衝突時の乗員保護性能をより向上させることができる、という優れた効果が得られる。
【0034】
請求項2に記載の車両用乗員保護装置によれば、大腿部エネルギー吸収手段の剛性を、腰部エネルギー吸収手段の剛性よりも高く設定することで、側面衝突時に、乗員の腰部における恥骨荷重を、少ないエネルギー吸収ストロークで有効に低減させることができる、という優れた効果が得られる。
【0035】
請求項3に記載の車両用乗員保護装置によれば、腰部エネルギー吸収手段及び大腿部エネルギー吸収手段としてエアバッグ袋体を用い、かつ展開時に大腿部に対応する領域の内圧を腰部に対応する領域の内圧よりも高く設定することで、側面衝突時に、乗員の腰部における恥骨荷重を、少ないエネルギー吸収ストロークで有効に低減させることができる、という優れた効果が得られる。
【0036】
請求項4に記載の車両用乗員保護装置によれば、エアバッグ袋体として、互いに独立した腰部用エアバッグ袋体及び大腿部用エアバッグ袋体を用い、該大腿部用エアバッグ袋体の内圧を、腰部用エアバッグ袋体の内圧よりも高く設定することで、腰部における恥骨荷重を、少ないエネルギー吸収ストロークで有効に低減させることができる、という優れた効果が得られる。
【0037】
請求項5に記載の車両用乗員保護装置によれば、エアバッグ袋体を、腰部用チャンバと大腿部用チャンバとを有する単一のエアバッグ袋体として構成し、大腿部用チャンバの内圧を、腰部用チャンバの内圧によりも高く設定することで、腰部における恥骨荷重を、少ないエネルギー吸収ストロークで有効に低減させることができる、という優れた効果が得られる。
【0038】
請求項6に記載の車両用乗員保護装置によれば、大腿部用エアバッグ袋体に対して車両前方ほど剛性が高くなるように剛性差を与えることで、側面衝突時における大腿部の車両前方部位に対する拘束性を、より高めることができる、という優れた効果が得られる。
【0039】
請求項7に記載の車両用乗員保護装置によれば、乗員拘束時における大腿部用チャンバの変形を抑制して拘束性を高めることができると共に、大腿部の車両前方部位に対する拘束性をより高めることができる、という優れた効果が得られる。
【0040】
請求項8に記載の車両用乗員保護装置によれば、エアバッグ袋体内の単一のチャンバに対して、大腿部に対応する領域の下方から上方に向けて展開用のガスを供給することで、腰部における恥骨荷重を、少ないエネルギー吸収ストロークで有効に低減させることができる、という優れた効果が得られる。
【0041】
請求項9に記載の車両用乗員保護装置によれば、エアバッグ袋体内の単一のチャンバに対して、車両後方端部から車両前方に向けて展開用のガスを供給することで、腰部における恥骨荷重を、少ないエネルギー吸収ストロークで有効に低減させることができる、という優れた効果が得られる。
【0042】
請求項10に記載の車両用乗員保護装置によれば、大腿部エネルギー吸収手段としての腿部エネルギー吸収パッド又は大腿部エネルギー吸収リブの硬度を、腰部部エネルギー吸収手段としての腰部エネルギー吸収パッド又は腰部エネルギー吸収リブの硬度よりも高く設定することで、腰部における恥骨荷重を、少ないエネルギー吸収ストロークで有効に低減させることができる、という優れた効果が得られる。
【0043】
請求項11に記載の車両用乗員保護装置によれば、大腿部エネルギー吸収手段としての大腿部エネルギー吸収リブの板厚を、腰部エネルギー吸収手段としての腰部エネルギー吸収リブの板厚よりも厚く設定することで、腰部における恥骨荷重を、少ないエネルギー吸収ストロークで有効に低減させることができる、という優れた効果が得られる。
【0044】
請求項12に記載の車両用乗員保護装置によれば、側面衝突時における大腿部エネルギー吸収手段による大腿部の拘束タイミングを、腰部エネルギー吸収手段による腰部の拘束タイミングよりも早くすることで、該腰部における恥骨荷重を有効に低減させることができる、という優れた効果が得られる。
【0045】
請求項13に記載の車両用乗員保護装置によれば、側面衝突時に大腿部用エアバッグ袋体が腰部用エアバッグ袋体よりも先に展開して乗員の大腿部をいち早く拘束することで、腰部における恥骨荷重を有効に低減させることができる、という優れた効果が得られる。
【0046】
請求項14に記載の車両用乗員保護装置によれば、側面衝突時に大腿部エネルギー吸収パッド又は大腿部エネルギー吸収リブが、いち早く乗員の大腿部を拘束することで、腰部における恥骨荷重を有効に低減させることができる、という優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0048】
[第1実施形態]
図1において、本実施の形態に係る車両用乗員保護装置10は、車両用シート12に着座している乗員14を、側面衝突時に保護するための装置であって、腰部エネルギー吸収手段の一例たる腰部用エアバッグ袋体16と、大腿部エネルギー吸収手段の一例たる大腿部用エアバッグ袋体18とを有している。腰部用エアバッグ袋体16及び大腿部用エアバッグ袋体18は、互いに独立して展開する袋体として構成されている。
【0049】
車両用シート12は、ベースフレーム26上に、乗員14が着座可能なシートクッション22と、該シートクッション22への着座時に乗員14の背もたれとなるシートバック24とを設けて構成され、シートバック24の上部には乗員14の頭部14Hに対応するヘッドレスト28が配設されている。
【0050】
シートクッション22は、骨格として例えば略四角形の枠状体に網状のスプリングが張られたシートクッションフレーム(図示せず)を有しており、該シートクッションフレームは、所定形状に成形されたクッション材(図示せず)で被覆され、該クッション材は更にシート表皮(図示せず)により覆われている。
【0051】
シートバック24は、骨格として例えば網状のスプリングが張られたシートバックフレーム(図示せず)を有しており、該シートバックフレームは、所定形状に成形されたクッション材(図示せず)で被覆され、該クッション材は更にシート表皮(図示せず)により覆われている。
【0052】
腰部用エアバッグ袋体16は、側面衝突時に、車両用シート12に着座した乗員14の腰部14Wを拘束し該腰部14Wへの衝撃エネルギーを吸収する袋体であって、通常使用時には、例えばベースフレーム26の車幅方向外側の側部に配設されたモジュールケース34内に折畳み収納されている。
【0053】
大腿部用エアバッグ袋体18は、腰部用エアバッグ袋体16と異なるエネルギー吸収特性を有し、側面衝突時に、車両用シート12に着座した乗員14の大腿部14Tを拘束し該大腿部14Tへの衝撃エネルギーを吸収する袋体であって、通常使用時には、例えばベースフレーム26の車幅方向外側の側部に配設されたモジュールケース34内に、腰部用エアバッグ袋体16と共に折畳み収納されている。ここで、腰部用エアバッグ袋体16及び大腿部用エアバッグ袋体18のエネルギー吸収特性とは、乗員14を拘束する際のエネルギー吸収荷重、即ち剛性のことを指しており、具体的には展開時における大腿部用エアバッグ袋体18の剛性が腰部用エアバッグ袋体16の剛性よりも高く設定されている。
【0054】
モジュールケース34内には、腰部用エアバッグ袋体16及び大腿部用エアバッグ袋体18へ展開用のガスを供給する例えば1本のインフレータ32が収納されている。側突センサ等(図示せず)からの信号を受けてエアバッグECU(図示せず)が車両の側面衝突を判定した場合、図示しないワイヤーハーネスを通じてインフレータ32へ作動電流が流されるようになっており、インフレータ32は、該作動電流により作動して、ディフューザ52を介して、多量のガスを腰部用エアバッグ袋体16及び大腿部用エアバッグ袋体18へ供給するように構成されている。なお、インフレータ32は、1本のみの使用に限られず、腰部用エアバッグ袋体16及び大腿部用エアバッグ袋体18に夫々1本ずつ用いるようにしてもよい。
【0055】
車両用乗員保護装置10では、乗員拘束時に大腿部用エアバッグ袋体18の剛性を腰部用エアバッグ袋体16の剛性よりも高くするために、展開時における大腿部用エアバッグ袋体18の内圧が、腰部用エアバッグ袋体16の内圧よりも高くなるように設定されている。具体的には、腰部用エアバッグ袋体16及び大腿部用エアバッグ袋体18の容量に応じて、インフレータ32から供給するガスの量を調節したり、またベントホールの総開口面積を調整することで、展開時における大腿部用エアバッグ袋体18の内圧が、腰部用エアバッグ袋体16の内圧よりも高くなるように構成されている。
【0056】
例えば腰部用エアバッグ袋体16及び大腿部用エアバッグ袋体18の容量が同等の場合には、大腿部用エアバッグ袋体18に供給するガスの量を、腰部用エアバッグ袋体16に供給するガスの量よりも多くしたり、また腰部用エアバッグ袋体16に設けるベントホールの開口面積を、大腿部用エアバッグ袋体18に設けるベントホールの開口面積よりも大きく設定することで、大腿部用エアバッグ袋体18の内圧を腰部用エアバッグ袋体16の内圧よりも高くすることができる。インフレータを腰部用エアバッグ袋体16及び大腿部用エアバッグ袋体18に夫々1本ずつ用いる場合には、出力の異なるインフレータを用いることで、大腿部用エアバッグ袋体18の内圧をより高くすることが可能である。
【0057】
このように、車両用乗員保護装置10では、乗員拘束時における腰部用エアバッグ袋体16と大腿部用エアバッグ袋体18との間に剛性差を出すように構成されており、より具体的には、乗員拘束時における大腿部用エアバッグ袋体18の剛性を、腰部用エアバッグ袋体16の剛性よりも高くするように構成されている。その大腿部用エアバッグ袋体18と腰部用エアバッグ袋体16との剛性の比は、例えば2:1に設定されている。なお、例えば図示しないEuroSIDダミー(欧州側面衝突用ダミー)における恥骨荷重への感度を考慮して、大腿部用エアバッグ袋体18と腰部用エアバッグ袋体16との剛性差を更に出すようにしてもよい。
【0058】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。車両用乗員保護装置10では、図示しない側突センサ等からの信号を受けてエアバッグECUが車両の側面衝突を判定した場合に、該エアバッグECUからワイヤーハーネスを通じてインフレータ32に作動電流が流される。この作動電流によりインフレータ32の端部に内蔵されたイグナイタ(図示せず)が作動することで、インフレータ32内にガスが発生し、ガス噴出部(図示せず)から噴出する。このガスが、モジュールケース34内に折畳み収納されている腰部用エアバッグ袋体16に、ディフューザ52を介して矢印A方向に供給されると共に、大腿部用エアバッグ袋体18に矢印B方向に供給されることで、該腰部用エアバッグ袋体16及び大腿部用エアバッグ袋体18が展開し始める。
【0059】
このとき、腰部用エアバッグ袋体16及び大腿部用エアバッグ袋体18の容量に応じたガスの供給やベントホールからの排気等が適宜なされることで、該大腿部用エアバッグ袋体18の内圧が、腰部用エアバッグ袋体16の内圧よりも高くなり、乗員拘束時の大腿部用エアバッグ袋体18の剛性が、腰部用エアバッグ袋体16の剛性よりも高い状態となる。この比較的剛性の高い大腿部用エアバッグ袋体18により乗員14の大腿部14Tを拘束することで、大腿部14Tに対する拘束性をより高めることができる。比較的剛性の低い腰部用エアバッグ袋体16は、乗員14の腰部14Wを拘束する。
【0060】
ここで、図示しないEuroSIDダミーの各部に荷重が入力された場合の恥骨荷重への感度を考慮すると、大腿部14Tへの荷重入力が恥骨荷重に与える影響は、腰部14Wへ荷重入力される場合よりも小さいので、大腿部用エアバッグ袋体18による大腿部14Tの拘束性を高めることで、腰部14Wに対する腰部用エアバッグ袋体16のエネルギー吸収ストロークが小さくても、腰部14Wにおける恥骨荷重を有効に低減させることが可能である。即ち車両用乗員保護装置10によれば、側面衝突時における衝撃エネルギーをより適切に吸収することができ、これにより乗員保護性能をより向上させることができる。
【0061】
なお本実施形態においては、腰部用エアバッグ袋体16及び大腿部用エアバッグ袋体18の配設箇所を、ベースフレーム26の車幅方向外側の側部としたが、これに限られず、例えばシートクッション22の車幅方向外側の側部や、車両用シート12の車幅方向外側に位置するドアにおけるドアトリム内(図示せず)であってもよい。
【0062】
[第2実施形態]
図2において、本実施の形態に係る車両用乗員保護装置20では、腰部エネルギー吸収手段及び大腿部エネルギー吸収手段の一例たるエアバッグ袋体42が、腰部用チャンバ36と大腿部用チャンバ38とを有する単一のエアバッグ袋体として構成されている。
【0063】
図示されるように、腰部用チャンバ36及び大腿部用チャンバ38は、エアバッグ袋体42の内部を隔壁44により仕切ることで形成されており、展開時に大腿部用チャンバ38が乗員14の大腿部14Tを拘束し、腰部用チャンバ36が乗員14の腰部14Wを拘束するように構成されている。インフレータ32は、例えば大腿部用チャンバ38内に配設されており、隔壁44には、一旦大腿部用チャンバ38内に供給されたガスを腰部用チャンバ36に分配するための連通孔46が設けられている。エアバッグ袋体42は、通常使用時にはベースフレーム26の車幅方向外側の側部に設けられたモジュールケース34内に折畳み収納されている。なお、インフレータ32は、1本のみの使用に限られず、腰部用チャンバ36及び大腿部用チャンバ38に対して夫々1本ずつ用いるようにしてもよい。
【0064】
車両用乗員保護装置20では、展開したエアバッグ袋体42による乗員拘束時に、該エアバッグ袋体42のうち大腿部用チャンバ38の領域の剛性を、腰部用チャンバ36の領域の剛性よりも高くするために、大腿部用チャンバ38の内圧が、腰部用チャンバ36の内圧よりも高くなるように設定されている。大腿部用チャンバ38の内圧をより高くするための手段や、エアバッグ袋体42における大腿部用チャンバ38の領域と腰部用チャンバ36の領域との剛性の比は、第1実施形態と同様である。
【0065】
他の部分については、第1実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0066】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図2において、車両用乗員保護装置20では、図示しない側突センサ等からの信号を受けてエアバッグECUが車両の側面衝突を判定した場合に、該エアバッグECUから流される作動電流によりインフレータ32が作動して、ガス噴出部(図示せず)から多量のガスが噴出する。このガスがモジュールケース34内に折畳み収納されたエアバッグ袋体42に供給されることで、該エアバッグ袋体42が展開し始める。
【0067】
具体的には、インフレータ32から噴出したガスは、まず大腿部用チャンバ38に矢印A方向に供給されるが、該大腿部用チャンバ38の内圧の上昇に伴い、隔壁44の連通孔46を通じて腰部用チャンバ36にもガスが矢印B方向に分配されることで、エアバッグ袋体42が全体的に展開して行く。
【0068】
このとき、腰部用チャンバ36及び大腿部用チャンバ38の容量に応じたガスの供給やベントホール(図示せず)からの排気等が適宜なされることで、該大腿部用チャンバ38の内圧が、腰部用チャンバ36の内圧よりも高くなっており、エアバッグ袋体42による乗員拘束時における大腿部用チャンバ38の領域の剛性が、腰部用チャンバ36の領域の剛性よりも高くなる。
【0069】
このエアバッグ袋体42のうち比較的剛性の高い大腿部用チャンバ38の領域により乗員14の大腿部14Tを拘束すると共に、比較的剛性の低い腰部用チャンバ36の領域により乗員14の腰部14Wを拘束することで、大腿部14Tに対する拘束性をより高めることができる。大腿部用チャンバ38の領域による大腿部14Tの拘束性を高めることで、腰部14Wにおける恥骨荷重を、少ないエネルギー吸収ストロークで有効に低減させることが可能である。即ち車両用乗員保護装置10では、側面衝突時における衝撃エネルギーをより適切に吸収することができ、これにより乗員保護性能をより向上させることができる。
【0070】
なお本実施形態においては、エアバッグ袋体42の配設箇所を、ベースフレーム26の車幅方向外側の側部としたが、これに限られず、例えばシートクッション22の車幅方向外側の側部や、車両用シート12の車幅方向外側に位置するドアにおけるドアトリム内(図示せず)であってもよい。
【0071】
[第3実施形態]
図3において、本実施の形態に係る車両用乗員保護装置30では、エアバッグ袋体42における大腿部用チャンバ38が、車両前後方向に沿って複数のエリア48に分割されており、かつ展開時における大腿部用チャンバ38には、車両前方ほど剛性が高くなるように剛性差が与えられている。
【0072】
大腿部用チャンバ38の各エリア48はその車両下方側が開口しており、側面衝突時に、各エリア48には、インフレータ32からのガスが下方から上方に向けて、矢印A方向に流入するようになっている。展開時において大腿部用チャンバ38に剛性差を与えるための手段としては、例えば各エリア48にベントホール(図示せず)を設け、かつ車両後方のエリア48ほどベントホールの開口面積を大きく設定することで、車両前方ほど大腿部用チャンバ38の内圧が高くなるようにすることが考えられる。またこの他の手段として、インフレータ32からのガスを図示しないディフューザを用いて各エリア48へのガスの供給量を規制したり、車両前方側のエリア48に優先的にガスを供給するようにすることが考えられる。
【0073】
大腿部用チャンバ38の内圧をより高くするための手段や、エアバッグ袋体42における大腿部用チャンバ38の領域と腰部用チャンバ36の領域との剛性の比は、第1実施形態と同様である。その他の部分についても、第1実施形態又は第2実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0074】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。車両用乗員保護装置30では、図示しない側突センサ等からの信号を受けてエアバッグECUが車両の側面衝突を判定した場合に、該エアバッグECUから流される作動電流によりインフレータ32が作動して、ガス噴出部(図示せず)から多量のガスが噴出する。このガスがモジュールケース34内に折畳み収納されたエアバッグ袋体42に供給されることで、該エアバッグ袋体42が展開し始める。
【0075】
具体的には、インフレータ32から噴出したガスは、まず大腿部用チャンバ38に下方から上方に向けて矢印A方向に供給され、各エリア48を膨張展開させる。また大腿部用チャンバ38の内圧の上昇に伴い、隔壁44の連通孔46を通じて腰部用チャンバ36にもガスが矢印B方向に供給されることで、エアバッグ袋体42全体の展開が進行して行く。
【0076】
このとき、大腿部用チャンバ38の内圧は、第2実施形態と同様に、腰部用チャンバ36の内圧よりも高くなり、エアバッグ袋体42による乗員拘束時における大腿部用チャンバ38の領域の剛性についても、腰部用チャンバ36の領域の剛性より高い状態となる。従って、展開したエアバッグ袋体42のうち、比較的剛性の高い大腿部用チャンバ38の領域により乗員14の大腿部14Tを拘束し、かつ比較的剛性の低い腰部用チャンバ36の領域により乗員14の腰部14Wを拘束することで、大腿部14Tに対する拘束性をより高めることができる。
【0077】
特に車両用乗員保護装置30では、大腿部用チャンバ38が、車両前後方向に沿って複数のエリア48に分割されているので、エアバッグ袋体42が乗員14の大腿部14Tを拘束する際に、大腿部用チャンバ38内のガスが移動し難くなっており、大腿部用チャンバ38の変形を抑制することが可能である。また展開時における大腿部用チャンバ38には、車両前方ほど剛性が高くなるように剛性差が与えられているので、大腿部14Tの車両前方部位に対する拘束性がより高くなる。このように、車両用乗員保護装置30では、エアバッグ袋体42のうち大腿部用チャンバ38の領域による大腿部14Tの拘束性をより一層高めることが可能であり、これによって腰部14Wにおける恥骨荷重を、少ないエネルギー吸収ストロークで有効に低減させ、乗員保護性能をより向上させることが可能である。
【0078】
[第4実施形態]
図4において、本実施の形態に係る車両用乗員保護装置40では、腰部エネルギー吸収手段及び大腿部エネルギー吸収手段の一例たるエアバッグ袋体54が、単一のチャンバ56を有しており、エアバッグ袋体54の展開時には、チャンバ56における大腿部14Tに対応する領域の下方から上方に向けて展開用のガスが供給されるように構成されている。
【0079】
具体的には、エアバッグ袋体54は、展開状態において、車両用シート12に着座した乗員14の腰部14Wから大腿部14Tまでに対応可能な容量を有しており、通常使用時には折り畳まれた状態でインフレータ32と共にモジュールケース34に収納されている。このモジュールケース34は、例えばベースフレーム26の車幅方向外側の側部における車両前方寄りに配設されている。
【0080】
図4に示されるように、モジュールケース34内のインフレータ32は、車両側面視において、例えば乗員14の大腿部14Tにおける略中央部の下方に配設されており、第2実施形態や第3実施形態と比較して車両前方にオフセットされている。インフレータ32には、該インフレータ32から噴出したガスが車両上方に流れるように規制するディフューザ52が取り付けられている。このようにインフレータ32を配置したのは、エアバッグ袋体54の展開過程において、該エアバッグ袋体54のうち大腿部14Tに対応する領域の内圧が、腰部14Wに対応する領域の内圧よりも高くなるようにするためである。
【0081】
他の部分については、第1実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0082】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図4において、車両用乗員保護装置40では、図示しない側突センサ等からの信号を受けてエアバッグECUが車両の側面衝突を判定した場合に、該エアバッグECUから流される作動電流によりインフレータ32が作動して、ガス噴出部(図示せず)から多量のガスが噴出する。このガスがモジュールケース34内に折畳み収納されたエアバッグ袋体54に供給されることで、該エアバッグ袋体54が展開し始める。
【0083】
このとき、インフレータ32から噴出したガスは、ディフューザ52により規制されてチャンバ56における大腿部14Tに対応する領域の下方から上方に向けて、矢印A方向に供給されるので、エアバッグ袋体54は、チャンバ56における大腿部14Tに対応する領域から展開し始め、続いて腰部14Wに対応する領域が展開して行く。即ち車両用乗員保護装置40では、エアバッグ袋体54のチャンバ56を単一としつつ、その展開過程において、チャンバ56における大腿部14Tに対応する領域の内圧を、腰部14Wに対応する領域の内圧よりも一時的に高めることができる。
【0084】
車両用乗員保護装置40では、このようにして、チャンバ56における大腿部14Tに対応する領域の内圧をより高めることで、側面衝突時における大腿部14Tの拘束性をより高めることができ、腰部14Wにおける恥骨荷重を、少ないエネルギー吸収ストロークで有効に低減させて、乗員14の保護性能を向上させることができる。
【0085】
なお、図4に示されるように、本実施形態においては、エアバッグ袋体54がベースフレーム26の車幅方向外側の側部に配設されているが、これに限られず、エアバッグ袋体54を、例えばシートクッション22の車幅方向外側の側部や、車両用シート12の車幅方向外側に位置するドアにおけるドアトリム内(図示せず)に設けるようにしてもよい。
【0086】
[第5実施形態]
図5において、本実施の形態に係る車両用乗員保護装置50では、腰部エネルギー吸収手段及び大腿部エネルギー吸収手段の一例たるエアバッグ袋体58が、単一のチャンバ62を有しており、エアバッグ袋体58の展開時には、チャンバ62における車両後方端部から車両前方に向けて展開用のガスが供給されるように構成されている。
【0087】
具体的には、エアバッグ袋体54は、展開状態において、車両用シート12に着座した乗員14の腰部14Wから大腿部14Tまでに対応可能な容量を有しており、通常使用時には折り畳まれた状態でインフレータ32と共にモジュールケース34に収納されている。このモジュールケース34は、例えばシートバック24の車幅方向外側の側部に配設されている。
【0088】
図5に示されるように、モジュールケース34内のインフレータ32は、チャンバ62の車両後方端部における、乗員14の腰部14W及び大腿部14Tの高さ位置に配設されている。インフレータ32には、該インフレータ32から噴出したガスが車両前方に流れるように規制するディフューザ52が取り付けられている。エアバッグ袋体58内には、該ディフューザ52を通過したガスをチャンバ62の車両前端部付近まで案内するガス流路64が設けられている。このようにガス流路64を設けて、チャンバ62の車両前端部付近へ向けてガスを供給するようにしたのは、エアバッグ袋体58の展開過程において、該エアバッグ袋体58のうち大腿部14Tに対応する領域の内圧が、腰部14Wに対応する領域の内圧よりも高くなるようにするためである。
【0089】
他の部分については、第1実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0090】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。車両用乗員保護装置50では、図示しない側突センサ等からの信号を受けてエアバッグECUが車両の側面衝突を判定した場合に、該エアバッグECUから流される作動電流によりインフレータ32が作動して、ガス噴出部(図示せず)から多量のガスが噴出する。図5において、このガスが、モジュールケース34内に折畳み収納されたエアバッグ袋体58のチャンバ62に、車両後方端部から車両前方に向けて供給されることで、該エアバッグ袋体58が展開し始める。
【0091】
具体的には、チャンバ62の車両後方端部に位置するインフレータ32から噴出したガスは、ディフューザ52により規制されて車両前方に流れ、更にガス流路64を通ってチャンバ62の車両前端部付近へ矢印F方向に供給されるので、エアバッグ袋体58は、チャンバ62における大腿部14Tに対応する領域から展開し始め、これに続いて腰部14Wに対応する領域が展開して行く。即ち車両用乗員保護装置50では、エアバッグ袋体58のチャンバ62を単一としつつ、その展開過程において、チャンバ62における大腿部14Tに対応する領域の内圧を、腰部14Wに対応する領域の内圧よりも一時的に高めることができる。
【0092】
車両用乗員保護装置50では、このようにして、チャンバ62における大腿部14Tに対応する領域の内圧をより高めることで、側面衝突時における大腿部14Tの拘束性をより高めることができ、腰部14Wにおける恥骨荷重を、少ないエネルギー吸収ストロークで有効に低減させて、乗員14の保護性能を向上させることができる。
【0093】
なお、図5に示されるように、本実施形態においては、エアバッグ袋体58の配設位置を、シートバック24の車幅方向外側の側部としたが、これに限られず、車両用シート12の車幅方向外側に位置するドアにおけるドアトリム内(図示せず)に設けるようにしてもよい。
【0094】
[第6実施形態]
図6において、本実施の形態に係る車両用乗員保護装置60では、腰部エネルギー吸収手段の一例たる腰部エネルギー吸収パッド66と、大腿部エネルギー吸収手段の一例たる大腿部エネルギー吸収パッド68とが、車両用シート12の側方のドア72に配設され、大腿部エネルギー吸収パッド68の硬度が腰部エネルギー吸収パッド66の硬度よりも高く設定されている。
【0095】
具体的には、腰部エネルギー吸収パッド66及び大腿部エネルギー吸収パッド68は、例えばドア72を構成するドアアウタパネル74とドアインナパネル82との間に配設されると共に、該ドアインナパネル82とドアトリム84との間に配設されている。また車両前後方向において、腰部エネルギー吸収パッド66は乗員14の腰部14Wに対応する位置に配設され、大腿部エネルギー吸収パッド68は乗員14の大腿部14Tに対応する位置に配設されている。
【0096】
車両用シート12が車両前後方向にスライド可能に構成されている場合には、腰部エネルギー吸収パッド66及び大腿部エネルギー吸収パッド68の設置範囲を定めるにあたって、そのスライド範囲が考慮される。即ち腰部エネルギー吸収パッド66及び大腿部エネルギー吸収パッド68の設置範囲は、車両用シート12がスライド範囲内のどの位置にあっても、側面衝突時に、腰部エネルギー吸収パッド66により腰部14Wを拘束し、大腿部エネルギー吸収パッド68により大腿部14Tを拘束できるように定められる。
【0097】
腰部エネルギー吸収パッド66及び大腿部エネルギー吸収パッド68は、夫々衝撃吸収性のある例えば発泡樹脂により構成されており、大腿部エネルギー吸収パッド68と腰部エネルギー吸収パッド66との硬度の比は、例えば発泡率を変えることで、例えば2:1に設定されている。
【0098】
なお、腰部エネルギー吸収パッド66及び大腿部エネルギー吸収パッド68の配置は、図示の例に限られるものではなく、例えばドアインナパネル82とドアトリム84との間のみに設けてもよく、また腰部エネルギー吸収パッド66及び大腿部エネルギー吸収パッド68がドアトリム84に一体的に構成されていてもよい。
【0099】
他の部分については、第1実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0100】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図6において、車両用乗員保護装置60では、側面衝突時に、車両用シート12に着座している乗員14の大腿部14Tを、ドア72に設けられた大腿部エネルギー吸収パッド68により拘束すると共に、乗員14の腰部14Wを、同じくドア72に設けられた腰部エネルギー吸収パッド66により拘束することができる。
【0101】
ここで、車両用乗員保護装置60においては、大腿部エネルギー吸収パッド68の硬度が腰部エネルギー吸収パッド66の硬度よりも高く設定されているので、側面衝突時における大腿部14Tの拘束性をより高めることができ、これによって腰部14Wにおける恥骨荷重を、少ないエネルギー吸収ストロークで有効に低減させることが可能である。即ち車両用乗員保護装置60では、硬度の異なる腰部エネルギー吸収パッド66及び大腿部エネルギー吸収パッド68を用いることで、側面衝突時における衝撃エネルギーをより適切に吸収することができ、これにより乗員保護性能をより向上させることができる。
【0102】
[第7実施形態]
図7において、本実施の形態に係る車両用乗員保護装置70では、腰部エネルギー吸収手段の一例たる腰部エネルギー吸収リブ76と、大腿部エネルギー吸収手段の一例たる大腿部エネルギー吸収リブ78とが、車両用シート12の側方のドア72に配設され、大腿部エネルギー吸収リブ78の板厚が腰部エネルギー吸収リブ76の板厚よりも厚く設定されている。
【0103】
具体的には、腰部エネルギー吸収リブ76及び大腿部エネルギー吸収リブ78は、例えばドア72を構成するドアアウタパネル74とドアインナパネル82との間に配設されると共に、該ドアインナパネル82とドアトリム84との間に配設されている。また車両前後方向において、腰部エネルギー吸収リブ76は乗員14の腰部14Wに対応する位置に配設され、大腿部エネルギー吸収リブ78は乗員14の大腿部14Tに対応する位置に配設されている。
【0104】
車両用シート12が車両前後方向にスライド可能に構成されている場合には、腰部エネルギー吸収リブ76及び大腿部エネルギー吸収リブ78の設置範囲を定めるにあたって、そのスライド範囲が考慮される。即ち腰部エネルギー吸収リブ76及び大腿部エネルギー吸収リブ78の設置範囲は、車両用シート12がスライド範囲内のどの位置にあっても、側面衝突時に、腰部エネルギー吸収リブ76により腰部14Wを拘束し、大腿部エネルギー吸収リブ78により大腿部14Tを拘束できるように定められる。
【0105】
腰部エネルギー吸収リブ76及び大腿部エネルギー吸収リブ78は、夫々衝撃吸収性のある例えば発泡樹脂製の複数のリブ76A,リブ78Aを、基部76B,78Bから夫々車幅方向に立設すると共に、例えば車両側面視において夫々格子状に配列して構成されている。リブ76A,78Aの本数を同一とした場合、リブ78Aとリブ76Aとの厚さの比は、例えば2:1に設定され、大腿部エネルギー吸収リブ78の剛性が、腰部エネルギー吸収リブ76の剛性よりも高くなるように設定される。
【0106】
なお、腰部エネルギー吸収リブ76と大腿部エネルギー吸収リブ78との間に剛性差を出す手段は、リブ76A,78Aの厚さの設定に限られず、例えばリブ76A,78Aの厚さを同一にして、大腿部エネルギー吸収リブ78における格子の密度をより高くするようにしてもよい。また材質の発泡率を変える等して硬度に差を設けることで剛性差を出すようにしてもよい。更に硬質樹脂製としてその硬度に差を持たせたり、硬度の異なる樹脂製としてもよい。
【0107】
なお、腰部エネルギー吸収リブ76及び大腿部エネルギー吸収リブ78の配置は、図示の例に限られるものではなく、例えばドアインナパネル82とドアトリム84との間のみに設けてもよく、また腰部エネルギー吸収リブ76及び大腿部エネルギー吸収リブ78がドアトリム84に一体的に構成されていてもよい。
【0108】
他の部分については、第1実施形態又は第6実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0109】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図7において、車両用乗員保護装置70では、側面衝突時に、車両用シート12に着座している乗員14の大腿部14Tを、ドア72に設けられた大腿部エネルギー吸収リブ78により拘束すると共に、乗員14の腰部14Wを、同じくドア72に設けられた腰部エネルギー吸収リブ76により拘束することができる。
【0110】
ここで、車両用乗員保護装置70においては、大腿部エネルギー吸収リブ78におけるリブ78Aの板厚が、腰部エネルギー吸収リブ76におけるリブ76Aの板厚よりも厚く設定され、これによって大腿部エネルギー吸収リブ78の硬度が腰部エネルギー吸収リブ76の硬度よりも高く設定されているので、側面衝突時における大腿部14Tの拘束性をより高めることができ、これによって腰部14Wにおける恥骨荷重を、少ないエネルギー吸収ストロークで有効に低減させることが可能である。即ち車両用乗員保護装置70では、硬度の異なる腰部エネルギー吸収リブ76及び大腿部エネルギー吸収リブ78を用いることで、側面衝突時における衝撃エネルギーをより適切に吸収することができ、これにより乗員保護性能をより向上させることが可能である。
【0111】
[第8実施形態]
図8において、本実施の形態に係る車両用乗員保護装置80では、腰部エネルギー吸収手段の一例たる腰部用エアバッグ袋体16と、大腿部エネルギー吸収手段の一例たる大腿部用エアバッグ袋体18と、モジュールケース34内に設けられた2本のインフレータ32,33とを有しており、側面衝突時に大腿部用エアバッグ袋体18が腰部用エアバッグ袋体16よりも先に展開するように構成されている。
【0112】
インフレータ32は、図示しないエアバッグECUからの作動電流により作動して、多量のガスを、ディフューザ52を介して大腿部用エアバッグ袋体18へ供給するように構成されている。またインフレータ33は、図示しないエアバッグECUからの作動電流により作動して、多量のガスを、ディフューザ53を介して腰部用エアバッグ袋体16へ供給するように構成されている。
【0113】
エアバッグECUにより制御されるインフレータ32,33の作動タイミングには差が設けられており、インフレータ33よりもインフレータ32の方が早く作動するように設定されている。これにより、側面衝突時に、大腿部用エアバッグ袋体18を腰部用エアバッグ袋体16よりも早いタイミングで展開させることができるようになっている。
【0114】
なお、インフレータの使用は2本には限られず、例えば1本のインフレータと、ディフューザ(図示せず)とを用いて、大腿部用エアバッグ袋体18に供給するガスの量を、腰部用エアバッグ袋体16に供給するガスの量よりも多くすることで、大腿部用エアバッグ袋体18を腰部用エアバッグ袋体16よりも早くタイミングで展開させるようにしてもよい。
【0115】
また腰部用エアバッグ袋体16及び大腿部用エアバッグ袋体18を、第2実施形態のように、単一のエアバッグ袋体として構成してもよい。この場合には、例えばエアバッグ袋体の車幅方向の展開厚さについて、大腿部14Tに対応する領域を厚くし、腰部14Wに対応する領域を相対的に薄くした異形バッグを用いると共に、側面衝突時には、まず大腿部14Tに対応するチャンバ(図2の大腿部用チャンバ38を参照)にガスが供給され、続いて腰部14Wに対応するチャンバ(図2の腰部用チャンバ36を参照)にガスが供給されるように構成する。
【0116】
他の部分については、第1実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0117】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図8において、車両用乗員保護装置80では、図示しない側突センサ等からの信号を受けてエアバッグECUが車両の側面衝突を判定した場合に、該エアバッグECUからまずインフレータ32へ作動電流が流され、続いてインフレータ33へ作動電流が流される。これにより、インフレータ32がインフレータ33よりも早いタイミングで作動して、インフレータ32のガス噴出部(図示せず)から多量のガスが噴出し、続いてインフレータ33のガス噴出部(図示せず)から多量のガスが噴出する。インフレータ32から噴出したガスは、ディフューザ52を介して大腿部用エアバッグ袋体18に矢印A方向に供給され、インフレータ33から噴出したガスは、ディフューザ53を介して腰部用エアバッグ袋体16に矢印B方向に供給される。これにより、大腿部用エアバッグ袋体18は、腰部用エアバッグ袋体16よりも早いタイミングで展開し始める。
【0118】
車両用乗員保護装置80では、このようにインフレータ32がインフレータ33よりも早いタイミングで作動することで、大腿部用エアバッグ袋体18が腰部用エアバッグ袋体16よりも先に、即ち早いタイミングで展開するので、該大腿部用エアバッグ袋体18により乗員14の大腿部14Tをいち早く拘束することができる。一方腰部用エアバッグ袋体16は、大腿部用エアバッグ袋体18に続いて展開して乗員14の腰部14Wを拘束する。これにより、車両用乗員保護装置80では、側面衝突時に、腰部14Wにおける恥骨荷重を少ないエネルギー吸収ストロークで有効に低減させることができ、これによって側面衝突時における衝撃エネルギーをより適切に吸収して、乗員14の保護性能をより向上させることが可能である。
【0119】
[第9実施形態]
図9において、本実施の形態に係る車両用乗員保護装置90では、腰部エネルギー吸収手段の一例たる腰部エネルギー吸収パッド96と、大腿部エネルギー吸収手段の一例たる大腿部エネルギー吸収パッド98とが、車両用シート12の側方のドア72に配設され、大腿部エネルギー吸収パッド98の車室内側端部98Aは、腰部エネルギー吸収パッド96の車室内側端部96Aよりも車室内側に突出した位置に設定されている。
【0120】
具体的には、腰部エネルギー吸収パッド96及び大腿部エネルギー吸収パッド98は、例えばドア72を構成するドアアウタパネル74とドアインナパネル82との間に配設されると共に、該ドアインナパネル82とドアトリム84との間に配設されている。また車両前後方向において、腰部エネルギー吸収パッド96は乗員14の腰部14Wに対応する位置に配設され、大腿部エネルギー吸収パッド98は乗員14の大腿部14Tに対応する位置に配設されている。
【0121】
車両用シート12が車両前後方向にスライド可能に構成されている場合には、腰部エネルギー吸収パッド96及び大腿部エネルギー吸収パッド98の設置範囲を定めるにあたって、そのスライド範囲が考慮される。即ち腰部エネルギー吸収パッド96及び大腿部エネルギー吸収パッド98の設置範囲は、車両用シート12がスライド範囲内のどの位置にあっても、側面衝突時に、腰部エネルギー吸収パッド96により腰部14Wを拘束し、大腿部エネルギー吸収パッド98により大腿部14Tを拘束できるように定められる。
【0122】
腰部エネルギー吸収パッド96及び大腿部エネルギー吸収パッド98は、夫々衝撃吸収性のある例えば発泡樹脂により構成されている。一般にドア72と乗員14との間のスペースは限られているため、腰部エネルギー吸収パッド96の車室内側端部96Aに対する大腿部エネルギー吸収パッド98の車室内側端部98Aの突出量は、例えば50乃至100mmに設定されている。このように、本実施形態では、限られたスペースにおいて、車室内側端部96A,98Aの車室内側への突出量に差を設けることで、側面衝突時における大腿部エネルギー吸収パッド98による大腿部14Tの拘束タイミングを、腰部エネルギー吸収パッド96による腰部14Wの拘束タイミングよりも早くすることができるようになっている。
【0123】
なお、腰部エネルギー吸収パッド96及び大腿部エネルギー吸収パッド98の配置は、図示の例に限られるものではなく、例えばドアインナパネル82とドアトリム84との間のみに設けてもよく、また腰部エネルギー吸収パッド96及び大腿部エネルギー吸収パッド98がドアトリム84に一体的に構成されていてもよい。
【0124】
他の部分については、第1実施形態又は第6実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0125】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図9において、車両用乗員保護装置90では、側面衝突時に、車両用シート12に着座している乗員14の大腿部14Tを、ドア72に設けられた大腿部エネルギー吸収パッド98により拘束すると共に、乗員14の腰部14Wを、同じくドア72に設けられた腰部エネルギー吸収パッド96により拘束することができる。
【0126】
ここで、車両用乗員保護装置90においては、大腿部エネルギー吸収パッド98の車室内側端部98Aが、腰部エネルギー吸収パッド96の車室内側端部96Aよりも車室内側に突出した位置に設定されているので、大腿部エネルギー吸収パッド98でいち早く乗員14の大腿部14Tを拘束し、続いて腰部エネルギー吸収パッド96で乗員14の腰部14Wを拘束することができ、これによって腰部14Wにおける恥骨荷重を、少ないエネルギー吸収ストロークで有効に低減させることが可能である。即ち車両用乗員保護装置90では、乗員14の拘束タイミングが異なる腰部エネルギー吸収パッド96及び大腿部エネルギー吸収パッド98を用いることで、側面衝突時における衝撃エネルギーをより適切に吸収することができ、これにより乗員保護性能をより向上させることができる。
【0127】
なお上記各実施形態において、腰部エネルギー吸収手段及び大腿部エネルギー吸収手段として例示したエアバッグ袋体、エネルギー吸収パッド及びエネルギー吸収リブについては、任意に組み合わせて用いることが可能である。従って、例えば腰部エネルギー吸収手段としてエネルギー吸収パッドを用い、大腿部エネルギー吸収手段としてエアバッグ袋体を用いることも可能である。また各々のエネルギー吸収手段を単独で用いるだけでなく、側面衝突時に、例えばエネルギー吸収パッド又はエネルギー吸収リブの車幅方向内側に、エアバッグ袋体を重ねて展開させることも可能である。
【0128】
また腰部エネルギー吸収手段及び大腿部エネルギー吸収手段は、エアバッグ袋体、エネルギー吸収パッド及びエネルギー吸収リブに限られるものではなく、側面衝突時の衝撃エネルギーを吸収可能であれば、いかなる手段を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】車両側面視において、第1実施形態に係る車両用乗員保護装置の作動状態を示す部分断面図である。
【図2】車両側面視において、第2実施形態に係る車両用乗員保護装置の作動状態を示す部分断面図である。
【図3】車両側面視において、第3実施形態に係る車両用乗員保護装置の作動状態を示す部分断面図である。
【図4】車両側面視において、第4実施形態に係る車両用乗員保護装置の作動状態を示す部分断面図である。
【図5】車両側面視において、第5実施形態に係る車両用乗員保護装置の作動状態を示す部分断面図である。
【図6】車両平面視において、第6実施形態に係る車両用乗員保護装置を示す部分断面図である。
【図7】車両平面視において、第7実施形態に係る車両用乗員保護装置を示す部分断面図である。
【図8】車両側面視において、第8実施形態に係る車両用乗員保護装置の作動状態を示す部分断面図である。
【図9】車両平面視において、第9実施形態に係る車両用乗員保護装置を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0130】
10 車両用乗員保護装置
12 車両用シート
14 乗員
14T 大腿部
14W 腰部
16 腰部用エアバッグ袋体(腰部エネルギー吸収手段)
18 大腿部用エアバッグ袋体(大腿部エネルギー吸収手段)
20 車両用乗員保護装置
30 車両用乗員保護装置
36 腰部用チャンバ
38 大腿部用チャンバ
40 車両用乗員保護装置
42 エアバッグ袋体(腰部エネルギー吸収手段,大腿部エネルギー吸収手段)
48 エリア
50 車両用乗員保護装置
54 エアバッグ袋体(腰部エネルギー吸収手段,大腿部エネルギー吸収手段)
56 チャンバ
58 エアバッグ袋体(腰部エネルギー吸収手段,大腿部エネルギー吸収手段)
60 車両用乗員保護装置
62 チャンバ
66 腰部エネルギー吸収パッド(腰部エネルギー吸収手段)
68 大腿部エネルギー吸収パッド(大腿部エネルギー吸収手段)
70 車両用乗員保護装置
72 ドア
76 腰部エネルギー吸収リブ(腰部エネルギー吸収手段)
78 大腿部エネルギー吸収リブ(大腿部エネルギー吸収手段)
80 車両用乗員保護装置
90 車両用乗員保護装置
96 腰部エネルギー吸収パッド(腰部エネルギー吸収手段)
96A 車室内側端部
98 大腿部エネルギー吸収パッド(大腿部エネルギー吸収手段)
98A 車室内側端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面衝突時に、車両用シートに着座した乗員の腰部を拘束し該腰部への衝撃エネルギーを吸収する腰部エネルギー吸収手段と、
該腰部エネルギー吸収手段と異なるエネルギー吸収特性を有し、側面衝突時に、前記車両用シートに着座した前記乗員の大腿部を拘束し該大腿部への衝撃エネルギーを吸収する大腿部エネルギー吸収手段と、
を有することを特徴とする車両用乗員保護装置。
【請求項2】
前記大腿部エネルギー吸収手段の剛性は、前記腰部エネルギー吸収手段の剛性よりも高く設定されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用乗員保護装置。
【請求項3】
前記腰部エネルギー吸収手段及び前記大腿部エネルギー吸収手段は、前記車両用シート又は該車両用シート側方のドアに配設され側面衝突時に展開するエアバッグ袋体であり、
該エアバッグ袋体のうち展開時に前記大腿部に対応する領域の内圧が、前記エアバッグ袋体のうち展開時に前記腰部に対応する領域の内圧よりも高く設定されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用乗員保護装置。
【請求項4】
前記エアバッグ袋体として、互いに独立した腰部用エアバッグ袋体と、大腿部用エアバッグ袋体とを有することを特徴とする請求項3に記載の車両用乗員保護装置。
【請求項5】
前記エアバッグ袋体は、腰部用チャンバと大腿部用チャンバとを有する単一のエアバッグ袋体であることを特徴とする請求項3に記載の車両用乗員保護装置。
【請求項6】
前記大腿部用エアバッグ袋体の内部は、車両前後方向に沿って複数のエリアに分割されており、かつ展開時における前記大腿部用エアバッグ袋体には、車両前方ほど剛性が高くなるように剛性差が与えられていることを特徴とする請求項4に記載の車両用乗員保護装置。
【請求項7】
前記大腿部用チャンバは、車両前後方向に沿って複数のエリアに分割されており、かつ展開時における前記大腿部用チャンバには、車両前方ほど剛性が高くなるように剛性差が与えられていることを特徴とする請求項5に記載の車両用乗員保護装置。
【請求項8】
前記エアバッグ袋体は、単一のチャンバを有しており、
前記エアバッグ袋体の展開時には、前記チャンバにおける前記大腿部に対応する領域の下方から上方に向けて展開用のガスが供給されるように構成したことを特徴とする請求項3に記載の車両用乗員保護装置。
【請求項9】
前記エアバッグ袋体は、単一のチャンバを有しており、
前記エアバッグ袋体の展開時には、前記チャンバにおける車両後方端部から車両前方に向けて展開用のガスが供給されるように構成したことを特徴とする請求項3に記載の車両用乗員保護装置。
【請求項10】
前記腰部エネルギー吸収手段は、車両用シート側方のドアに配設された腰部エネルギー吸収パッド又は腰部エネルギー吸収リブであり、
前記大腿部エネルギー吸収手段は、前記ドアに配設された大腿部エネルギー吸収パッド又は大腿部エネルギー吸収リブであり、
前記大腿部エネルギー吸収パッド又は前記大腿部エネルギー吸収リブの硬度は、前記腰部エネルギー吸収パッド又は前記腰部エネルギー吸収リブの硬度よりも高く設定されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用乗員保護装置。
【請求項11】
前記腰部エネルギー吸収手段は、車両用シート側方のドアに配設された腰部エネルギー吸収リブであり、
前記大腿部エネルギー吸収手段は、前記ドアに配設された大腿部エネルギー吸収リブであり、
該大腿部エネルギー吸収リブの板厚は、前記腰部エネルギー吸収リブの板厚よりも厚く設定されていることを特徴とする請求項2に記載の車両用乗員保護装置。
【請求項12】
側面衝突時における前記大腿部エネルギー吸収手段による前記大腿部の拘束タイミングは、前記腰部エネルギー吸収手段による前記腰部の拘束タイミングよりも早く設定されていることを有することを特徴とする請求項1に記載の車両用乗員保護装置。
【請求項13】
前記腰部エネルギー吸収手段は、前記車両用シート又は該車両用シート側方のドアに配設され側面衝突時に前記腰部に対応して展開する腰部用エアバッグ袋体であり、
前記大腿部エネルギー吸収手段は、前記車両用シート又は前記ドアに配設され側面衝突時に前記大腿部に対応して展開する大腿部用エアバッグ袋体であり、
側面衝突時に前記大腿部用エアバッグ袋体が前記腰部用エアバッグ袋体よりも先に展開するように構成したことを特徴とする請求項12に記載の車両用乗員保護装置。
【請求項14】
前記腰部エネルギー吸収手段は、車両用シート側方のドアにおけるドアインナパネルとドアトリムとの間に配設された腰部エネルギー吸収パッド又は腰部エネルギー吸収リブであり、
前記大腿部エネルギー吸収手段は、前記ドアにおける前記ドアインナパネルと前記ドアトリムとの間に配設された大腿部エネルギー吸収パッド又は大腿部エネルギー吸収リブであり、
前記大腿部エネルギー吸収パッド又は前記大腿部エネルギー吸収リブの車室内側端部は、前記腰部エネルギー吸収パッド又は前記腰部エネルギー吸収リブの車室内側端部よりも車室内側に突出した位置に設定されていることを特徴とする請求項12に記載の車両用乗員保護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−94235(P2008−94235A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−277759(P2006−277759)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】