説明

車両用乗員拘束・運動制御装置システム

【課題】乗員拘束装置(エアバック装置、SRSプリテンショナ装置等)と運動制御装置(VSA装置)とを、より簡素な構成で制御でき、かつ付加機能を備える車両用乗員拘束・運動制御装置システムを提供する。
【解決手段】収納箱44に収納された1つのコントローラ18が、高Gセンサ14の検出値に基づき衝突を判定してエアバッグ装置28等に作動信号を出力する一方で、低Gセンサ16の検出値をCAN20経由でVSAECU24等に出力し、且つ高Gセンサ14の検出値と低Gセンサ14の検出値を比較して、高Gセンサ14又は低Gセンサ16の故障を診断し、診断結果を外部出力端子48を通じて外部に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝突時に車両の乗員を拘束する乗員拘束装置と、車両の運転状態の変化に応じて該車両の挙動変化を抑制する運動制御装置とを備える車両用乗員拘束・運動制御装置システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の衝突時における乗員の移動を規制するエアバッグ装置やシートベルト装置等の乗員拘束装置(特許文献1及び2参照)、並びに車両の運転状態の変化による該車両の挙動変化を抑制するためのVSA(車両挙動安定化制御システム)等の運動制御装置(特許文献3参照)が、車両に搭載されている。
【0003】
この場合、乗員拘束装置の作動信号は、基本的には、車両のダッシュボード下等に配置された数十G(Gは重力加速度)の検出範囲を有する加速度センサ(高Gセンサ)とコントローラとからなるSRS(補助拘束装置)ユニットにより生成され乗員拘束装置に供給される。
【0004】
一方、運動制御装置に対しては、車両のセンターコンソール下の重心近傍に配置された数Gの検出範囲を有する加速度センサ(低Gセンサ)とコントローラとからなるセンタECU(電子制御装置)から前記加速度センサの出力が供給される。
【0005】
【特許文献1】特許第2521149公報(第1図及び第2図)
【特許文献2】特許第3575475公報(図13)
【特許文献3】特開2004−341833号公報(図2参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、従来技術に係る車両用乗員拘束・運動制御装置システムでは、高Gセンサを有するSRSユニットと低Gセンサを有するセンタECUとが独立して配置され、車両内の空間利用のレイアウトが制限されている。
【0007】
すなわち、SRSユニットを車体に取り付ける構造と、センタECUを車体に取り付ける構造とが別体となっており、ネジ、補強部材等の機械要素の部品点数が多いという課題もある。
【0008】
この発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、車両内の空間利用のレイアウトが緩和され、且つ部品点数を削減でき、さらに付加機能(付加価値)を有する車両用乗員拘束・運動制御装置システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る車両用乗員拘束・運動制御装置システムは、車両の前後方向又は横方向の相対的に高Gの加速度を検出する高Gセンサと、前記高Gセンサと同一方向の相対的に低Gの加速度を検出する低Gセンサと、衝突時に乗員を拘束する乗員拘束装置と、車両の運動状態を制御する運動制御装置と、前記高Gセンサの検出値に基づき衝突を判定して前記乗員拘束装置に作動信号を出力する一方で、前記低Gセンサの検出値を前記運動制御装置に出力し、且つ前記高Gセンサの検出値と前記低Gセンサの検出値を比較して、前記高Gセンサ又は前記低Gセンサの故障を診断し、診断結果を外部に出力するコントローラとを備えることを特徴とする。
【0010】
この場合、前記高Gセンサと前記低Gセンサと前記コントローラとを一体的に収納する収納箱を有し、該収納箱が、前記車両の重心位置又はその近傍に配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、1つのコントローラが、高Gセンサの検出値に基づき衝突を判定して乗員拘束装置に作動信号を出力する一方で、低Gセンサの検出値を運動制御装置に出力し、且つ前記高Gセンサの検出値と前記低Gセンサの検出値を比較して、前記高Gセンサ又は前記低Gセンサの故障を診断し、診断結果を外部に出力するように構成されているので、前記乗員拘束装置と前記運動制御装置とをより簡素な構成で制御でき、且つ前記コントローラに高Gセンサ及び低Gセンサの故障診断機能(付加機能)を持たせることができる。
【0012】
この場合、前記低Gセンサと前記高Gセンサと前記コントローラとを一体的に収納箱に収納し、該収納箱を、前記車両の重心位置又はその近傍に配置することで、前記車両内の空間利用のレイアウトが緩和され、且つ部品点数を削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明に係る車両用乗員拘束・運動制御装置システムの好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、この実施形態に係る車両用乗員拘束・運動制御装置システム12の機能ブロック図、図2は、車両用乗員拘束・運動制御装置システム12が搭載された車両10の一部模式構成図を示している。
【0015】
車両10の前席(運転席32及び助手席34)中央のセンターコンソール36下に収納箱44が配置固定されている。
【0016】
収納箱44には、図1に示すように、±数十G(Gは重力加速度)の検出範囲(フルスケール)を有する高Gセンサ(第1加速度センサ)14と、±数Gの検出範囲(フルスケール)を有する低Gセンサ(第2加速度センサ)16と、コントローラ18とが収納されている。
【0017】
低Gセンサ16は、車両10の重心位置又はその近傍に配置されることが好ましく、高Gセンサ14は、衝突を高感度に検知できる位置が好ましいことから、収納箱44は、車両10の重心位置又はその近傍で衝突をなるべく高感度に検知できる位置に取り付けることが好ましい。そのため、収納箱44は、上述したセンターコンソール36下等、車両10の重心位置に固定されることが好ましいが、ダッシュボード40内の中央近傍であっても、一定の効果を達成することができる。
【0018】
実際上、高Gセンサ14は、車両10の前後方向及び横方向の加速度(第1加速度)を検出し、その検出値をコントローラ18に出力する。また、低Gセンサ16は、高Gセンサ14と同様に、車両10の前後方向及び横方向の加速度(第2加速度)を検出し、その検出値をコントローラ18に出力する。
【0019】
上述したように、低Gセンサ16による第2加速度の検出範囲は、高Gセンサ14による第1加速度の検出範囲よりも狭く設定されている。
【0020】
例えば、高Gセンサ14は、車両10の衝突時の加速度を検出するため、その検出範囲は、±50G(前後方向)及び±20G(横方向)程度である。
【0021】
一方、低Gセンサ16は、車両10の走行時の加速度を検出するため、その検出範囲は、例えば、±1.5G(前後方向及び横方向)程度である。
【0022】
コントローラ18は、高Gセンサ14からの検出値に基づいて車両10の衝突を判断し、衝突と判断した場合に、作動信号を、車両10に備わるそれぞれが乗員拘束装置であるエアバッグ装置28と、サイドエアバッグ装置30と、SRSプリテンショナ(シートベルト装置)26に出力する。
【0023】
エアバッグ装置28及びサイドエアバッグ装置30は、作動信号によりエアバッグを作動させ、車両10の衝突時の慣性力に起因した乗員の前方移動あるいは側方移動を規制する。また、SRSプリテンショナ26は、作動信号によりシートベルト46を巻き取り前記乗員を拘束する。
【0024】
なお、図2に示すように、実際上、エアバッグ装置28は、ステアリングホイール42の中央部やダッシュボード40の助手席34側に収容され、サイドエアバッグ装置30は、運転席32右側及び助手席34左側に収容され、プリテンショナ26は、運転席32右側後方及び助手席34左側後方に配置されている。
【0025】
また、コントローラ18は、低Gセンサ16からの検出値をLAN20経由でそれぞれが運動制御装置であるEPS(電動パワーステアリング)ECU22及びVSA(車両挙動安定化制御システム)ECU24に出力する。EPSECU22及びVSAECU24は、それぞれ、前記検出値の入力に基づいて車両10に対する操舵力を低減し、車両10の挙動変化を抑制する。
【0026】
さらに、コントローラ18は、高Gセンサ14の検出範囲の一部分(前後方向及び横方向:±1.5G)と、低Gセンサ16の検出範囲(前後方向及び横方向±1.5G)とが重複することを考慮し、低Gセンサ16の検出範囲内で且つ同一方向の加速度(例えば、+1.5G)を高Gセンサ14及び低Gセンサ16にそれぞれ検出させ、検出した高Gセンサ14の検出値と低Gセンサ16の検出値とが予め定めた一定範囲(閾値)以上異なる場合には、高Gセンサ14又は低Gセンサ16のいずれかのセンサが故障していることを示す故障診断結果信号を生成し、LAN20経由で、外部出力端子48を通じて外部に出力する。
【0027】
このように、この実施形態に係る車両用乗員拘束・運動制御装置システム12では、収納箱44に収納された1つのコントローラ18が、高Gセンサ14の検出値に基づき衝突を判定してエアバッグ装置28等の乗員拘束装置に作動信号を出力する一方で、低Gセンサ16の検出値をLAN20経由でVSAECU24等の運動制御装置に出力し、且つ高Gセンサ14の検出値と低Gセンサ14の検出値を比較して、高Gセンサ14又は低Gセンサ16の故障(故障の可能性)を診断し、診断結果を外部出力端子48を通じて外部に出力するように構成しているので、従来技術に比較して、乗員拘束装置(エアバック装置28、サイドエアバック装置30、SRSプリテンショナ26等)と運動制御装置(EPSECU22、VSAECU24、このVSAECU24により制御されるVSA装置の構成要素)とを、より簡素な構成で制御でき、且つコントローラ18が高Gセンサ14及び低Gセンサ16の故障診断機能(付加機能)を有している。
【0028】
また、高Gセンサ14と低Gセンサ16とコントローラ18とを一体的に収納箱44に収納し、この収納箱44を、車両10の重心位置又はその近傍に配置するようにしているので、効果的に所要の加速度を検出できると共に、車両10内の空間利用のレイアウトが緩和され、かつ部品点数を削減できる。
【0029】
すなわち、従来は、図3Aに示すように、高Gセンサ14とコントローラ50とを備えるSRSユニット52がダッシュボード40下に配置され、低Gセンサ16とコントローラ54とを備えるセンタECU56とがセンターコンソール36下に配置されているので、車両10内の空間利用のレイアウトが制限されていた。これに対して、この実施形態では、図2及び図3Bに示すように、各コントローラ50、54の機能を有するコントローラ18と、高Gセンサ14及び低Gセンサ16とを一体的に収納箱44に収納して、この収納箱44がセンターコンソール36下に配置固定されているので、車両10内の空間利用のレイアウトが緩和され(レイアウトの自由度が上がり)、且つ部品点数を削減することができる。
【0030】
この発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この実施形態に係る乗員拘束・運動制御装置システムを車両に適用した機能ブロック図である。
【図2】図1の高Gセンサと低Gセンサとコントローラとを収納箱に収納してコンソールパネル下に配置した状態を示す車両の一部模式構成斜視図である。
【図3】図3Aは、従来のSRSユニットとセンタECUとの配置位置を示す車両の一部模式構成斜視図であり、図3Bは、高Gセンサと低Gセンサとコントローラとを収納する収納箱の配置位置を示す車両の一部模式構成斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
10…車両
12…車両用乗員拘束・運動制御装置システム
14…高Gセンサ 16…低Gセンサ
18、50、54…コントローラ 20…LAN
22…EPSECU 24…VSAECU
26…SRSプリテンショナ 28…エアバッグ装置
30…サイドエアバッグ装置 32…運転席
34…助手席 36…センターコンソール
40…ダッシュボード 42…ステアリングホイール
44…収納箱 46…シートベルト
48…外部出力端子 52…SRSユニット
56…センタECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前後方向又は横方向の相対的に高Gの加速度を検出する高Gセンサと、
前記高Gセンサと同一方向の相対的に低Gの加速度を検出する低Gセンサと、
衝突時に乗員を拘束する乗員拘束装置と、
車両の運動状態を制御する運動制御装置と、
前記高Gセンサの検出値に基づき衝突を判定して前記乗員拘束装置に作動信号を出力する一方で、前記低Gセンサの検出値を前記運動制御装置に出力し、且つ
前記高Gセンサの検出値と前記低Gセンサの検出値を比較して、前記高Gセンサ又は前記低Gセンサの故障を診断し、診断結果を外部に出力するコントローラと、
を備える
ことを特徴とする車両用乗員拘束・運動制御装置システム。
【請求項2】
請求項1記載の車両用乗員拘束・運動制御装置システムにおいて、
前記高Gセンサと前記低Gセンサと前記コントローラとを一体的に収納する収納箱を有し、該収納箱が、前記車両の重心位置又はその近傍に配置される
ことを特徴とする車両用乗員拘束・運動制御装置システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−247145(P2008−247145A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−89536(P2007−89536)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(300052246)株式会社ホンダエレシス (105)
【Fターム(参考)】