説明

車両用交流発電機

【課題】ダイオード素子をダイオード素子冷却板に組み付ける際の工数低減と、より効果的な冷却を行うことが可能な冷却フィンを持つ車両用交流発電機を提供することにある。
【解決手段】車両用交流発電機は、回転子5と、ファン15,16と、固定子1と、正極側および負極側のダイオード素子201と、正極側および負極側のダイオード素子冷却板202と、接続部材206と、ブラシホルダ12と、リアブラケット11と、フロントブラケット10と、保護カバー25とを有する。ダイオード素子冷却板202は、そのダイオード素子取付部分に設けられ、ダイオード素子挿入穴と共にダイオード素子のベース縁部が接するよう挿入穴から挿入穴内周側へ向かう張り出し部202Pを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用交流発電機に係り、特に内蔵されるダイオード素子冷却板のダイオード素子挿入部の形状に特徴を有する車両用交流発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの自動車内において電気負荷に対し電力を供給するために、自動車内の内燃機関であるエンジンに車両用交流発電機が搭載されている。車両用交流発電機内の回転子には回転子磁極に磁力を発生させるために界磁巻線やマグネットが搭載されており、エンジンの回転力をベルトやプーリーを介して回転子に伝えることで回転子は回転運動を行う。回転子が回転運動することで回転子磁極からの回転磁束が発生し、対向配置されている固定子磁極を介して固定子巻線に交流電力を発生させる。
【0003】
車両用交流発電機には全波整流を行うための整流装置が設置されており、金属端子等の導電体をインサート成型した接続部材を介して、固定子巻線と接続されて、固定子巻線から発生する交流電力を直流電力へと整流する。その整流装置には主にダイオード素子が正極側、負極側に分けて使用されており、正極側、負極側のダイオード素子は正極側、負極側それぞれ金属製のダイオード素子冷却板に組みつけられて車両用交流発電機のリアブラケットに搭載され、正極側のダイオード素子冷却板と接続されたバッテリーボルトを介して直流電力をバッテリーなどの蓄電池に供給する。
【0004】
車両用交流発電機の回転子にはファンが設置されており、回転子がエンジンにより回転されることでファンが、整流器外側に設けられた保護カバーの溝から冷却風を取り入れる。保護カバーから取り入れられた冷却風は、ダイオード素子またはダイオード素子冷却板を冷却し、ダイオード素子冷却板が搭載されたリアブラケット中心近傍に設けられた通風窓を通過し、その後車両用交流発電機内の固定子巻線のエンドコイル部を通過して、リアブラケット外周部に設けられた通風窓を通して交流発電機外部へと排気される。
【0005】
自動車の小型化、エンジンルームの小型化が進む中、車両用交流発電機自体にも小型化が要求されている一方で、自動車内の電気負荷増大による高出力化、更には車両用交流発電機自体の多機能化、高効率化もまた同時に要求されている。そのため、ダイオード素子や固定子巻線の発熱が増大し、一層の冷却性の向上が必要となっている。
【0006】
そこで、ダイオード素子冷却板は、ダイオード素子における発熱を効率よく放熱するために、金属板のプレス板から、鋳物等で冷却フィンを形成することが多くなっている。
【0007】
冷却板の構成としては、例えば、負極側のダイオード素子冷却板の外径部にサブフィンを設け、さらには保護カバーの外径部に開口部を設けることで、径方向から外気を取り入れ、負極側ダイオード素子冷却板の冷却性の向上を図るものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
また、ダイオード素子冷却板上の冷却フィンとともにダイオード素子冷却板のダイオード素子配置部周囲に貫通穴を設け冷却風がダイオード素子周辺を通り易い構造とし、ダイオード素子周囲のダイオード素子冷却板の冷却向上を図るものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
ダイオード素子のダイオード素子冷却板への組み付け方法としては、ダイオード素子のベース周辺にはローレット加工が施されており、ダイオード素子がダイオード素子冷却板に設けられた、貫通穴に圧入されることで保持されている。ダイオード素子のベースが圧入治具を用いてダイオード素子冷却板の挿入穴に圧入する際の圧入量管理としては、圧入治具の径をダイオード素子のベース部径より一回り大きいものとすることで、圧入治具がダイオード素子冷却板にあたるまで圧入する方法が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004―147486公報
【特許文献2】特表2005−533392公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そのような状況の中、金属製のダイオード素子冷却板の貫通穴にダイオード素子を圧入する過程において、圧入時にはダイオード素子冷却板またはダイオード素子のベースから金属片が発生する。ダイオード素子のベース周辺には、ローレット加工が施されていることから、金属片はローレットの谷間に入って、ダイオード素子冷却板内に収まるものもあるが、ダイオード素子冷却板の外側に飛び出してしまうものもある。そのため金属片を除去するために、ダイオード素子圧入後にエアブローにより金属片を飛ばす等の追加作業が必要となっている。
【0012】
また、特許文献1や特許文献2に記載のようなダイオード素子冷却板上に冷却フィンを設ける構造においては、ダイオード素子圧入時にダイオード素子のベースよりひと回り大きいダイオード素子圧入治具を使用する際、ダイオード素子冷却板のダイオード素子を挿入する面側に設ける冷却フィンは、圧入治具を避けた形で形成する必要がある。すなわち冷却フィンはダイオード素子のベース外周部とは離れた位置から形成しなくてはならないため、よりダイオード素子と近い位置で冷却フィンを形成することが困難となっている。
【0013】
本発明の目的は、ダイオード素子をダイオード素子冷却板に組み付ける際の工数低減と、より効果的な冷却を行うことが可能な冷却フィンを持つ車両用交流発電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、回転子磁極を有し、前記回転子磁極が固定された回転軸が2つ以上の軸受により回転自在に支持されることからなる回転子と、該回転子に取付けられ回転子の回転により冷却風を誘引するファンと、前記回転子の外周に配置された固定子巻線を有する固定子と、該固定子から発生した電力を整流するための正極側および負極側のダイオード素子と、該ダイオード素子を取り付ける正極側および負極側のダイオード素子冷却板と、前記固定子巻線と前記整流装置間を電気的に接続する導電体と前記導電体の周囲に形成された絶縁部材からなる接続部材と、前記回転子に通電するためのブラシを保持するブラシホルダと、前記軸受及び前記固定子を支持し、更には前記ファンによって引き起こされる冷却風の通路を形成するとともに、前記負極側のダイオード素子冷却板とブラシホルダを設置するリアブラケットと、前記軸受及び前記固定子を支持するフロントブラケットと、前記ブラシホルダとダイオード素子を保護するための保護カバーとを有する車両用交流発電機であって、前記ダイオード素子冷却板は、そのダイオード素子取付部分に設けられ、ダイオード素子挿入穴と共にダイオード素子のベース縁部が接するよう挿入穴から挿入穴内周側へ向かう張り出し部を備えるようにしたものである。
かかる構成により、ダイオード素子をダイオード素子冷却板に組み付ける際の工数低減と、より効果的な冷却を行うことが可能となる。
【0015】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記張り出し部は、前記ダイオード素子の縁部と接する部分の一部に設けられた逃げ部を備えるようにしたものである。
かかる構成により、ダイオードをダイオードの冷却板に圧入する時、発生する金属片の量が多い場合には、金属片が先記逃げ部に充填されることで、ダイオードの縁部がダイオード素子冷却板の張り出し部と接する位置まで圧入することが可能となる。
【0016】
(3)上記(1)において、好ましくは、前記張り出し部の周囲に設けられた冷却フィンを備えるようにしたものである。
かかる構成により、より効果的な冷却構造が可能となる。
【0017】
(4)上記(1)において、好ましくは、前記張り出し部の周囲に設けられた通風口を備えるようにしたものである。
かかる構成により、より効率的にダイオード素子、ダイオード素子冷却板の冷却が可能となる。
【0018】
(5上記(1)において、好ましくは、前記張り出し部は、前記ダイオード素子冷却板において、ダイオード素子挿入穴周囲に設けられ、ダイオード素子挿入穴周囲以外の部分の厚さが、ダイオード素子挿入穴周囲の厚さより薄くしたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ダイオード素子をダイオード素子冷却板に組み付ける際の工数低減と、より効果的な冷却を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態による車両用交流発電機の全体構成を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態による車両用交流発電機に用いる整流装置の構成を示す側面図である。
【図3】本発明の一実施形態による車両用交流発電機に用いる整流装置の要部構成を示す拡大断面図である。
【図4】本発明の一実施形態による車両用交流発電機に用いる整流装置のダイオード素子取付部の構成を示す部分断面図である。
【図5】図4の要部拡大部分断面図である。
【図6】従来の整流装置のダイオード素子取付部の構成を示す部分断面図である。
【図7】図4に示すダイオード素子取付部に他の構成のダイオード素子を取り付けた場合の説明図である。
【図8】本発明の他の実施形態による車両用交流発電機に用いる整流装置のダイオード素子取付部の構成を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図1〜図7を用いて、本発明の一実施形態による車両用交流発電機の構成について説明する。
最初に、図1を用いて、本実施形態による車両用交流発電機の全体構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態による車両用交流発電機の全体構成を示す断面図である。
【0022】
車両用交流発電機100は、ルンデル型回転子を備えた界磁巻線型回転機である。車両用交流発電機100は、固定子1と、回転子5とを備えている。
【0023】
固定子1は、固定子コア(固定子鉄心)2と、固定子巻線(電機子巻線)3を備えている。固定子1は、回転子5を囲うように円筒状に形成されている。固定子コア2は、円筒部とこの円筒部の内周側に、円筒部の中心に向かって突出した磁極部とからなる。固定子コア2は、電磁鋼板や炭素鋼板などの薄い鋼板を重ねるように積上げられ、固定子コア2の外周を数箇所積層方向に溶接して形成されている。薄板の鋼板から、円筒部に相当するリング部と、磁極部に相当する突出部が一体的にプレス打ち抜き成形される。固定子コア2の磁極部は、円筒部の内周に等間隔で形成されている。円筒部と磁極部が形成された薄板の鋼板の磁極部を合わせて重ねるように積み上げた際には、隣接する磁極部の間には、周方向に等間隔にスロット部が形成される。固定子コア2を形成する鋼板は、帯状の鋼板にスロットと磁極部を打ち抜いたものを、円筒上に形成してもよい。さらにはいくつかのスロット部と磁極部を1つの鋼板に形成し、それを円筒状上に組み合わせて形成してもよい。
【0024】
薄板の鋼板を積み上げて構成した固定子コア2のスロット部に図には示さない絶縁紙が挿入され、さらに固定子コイル3が挿入されることで、固定子コイル3が磁極部に巻回されることとなる。固定子1はアルミニウム製のフロントブラケット10と同じくアルミニウム製のリアブラケット11間に挟んだ状態とし、フロントブラケット10とリアブラケット11を通し、ボルト26(図2)にて固定することで、同時に固定子1もまた固定する。
【0025】
回転子5は、界磁巻線型回転機のルンデル型回転子である。回転子5は、回転子磁極6と、界磁巻線7を備えている。回転子磁極6は、2対のクロウポール型の磁極である。爪形磁極6Aと爪形磁極6Bの爪部が互い違いに対向して回転子磁極6を構成し、その内周側に位置する巻線枠8に界磁巻線7が巻回されて、回転子磁極6に収納されている。回転子磁極6は、圧入にてシャフト9に固定されることで、界磁巻線型回転機のルンデル型回転子5を構成する。回転子磁極6からの磁束量の増加、または漏れ電流の減少等を目的として、爪形磁極6Aと爪形磁極6Bの爪部間に、永久磁石マグネットを挟みこんで回転子5を形成しても良い。
【0026】
界磁巻線7は、巻線枠8に細い導線を幾重にも券回されており、ブラシホルダ12に収納されたブラシ13から、スリップリング14を介して電流を供給され、クロウポール型の回転磁極6に所望の磁束量を発生させる。界磁巻線7に流される電流は、ブラシホルダ12に搭載されたレギュレータ部に含まれる界磁電流制御機能にて、バッテリーの状態に合わせて制御される。スリップリング14からは絶縁被覆を被った2本の電線が出ており、また同様にして界磁巻線7からも絶縁被覆を被った2本の電線を引き出し、界磁ターミナル部17にて接続固定されている。界磁ターミナル部17は界磁線を固定するよう加工がなされた金属板を絶縁性のある樹脂材にて一体成形したものであり、シャフト9に固定されている。またブラシホルダ12に搭載されたレギュレータは、固定子巻線3から整流器を介して発生する交流発電機の出力の制御を行う。
【0027】
回転軸であるシャフト9は、回転磁極6や、界磁巻線7等を搭載した状態で、プーリー側軸受18、反プーリー側軸受19によって支持されている。
【0028】
プーリー側軸受18の内輪側は、固定子コア2との位置調整を行うスペーサ20を介在させてシャフト9に取り付けられる。また、プーリー側軸受18の外輪側は、フロントブラケット10の中心部に形成された筒状部分に納められ、おさえ板23とおさえ板用ボルト24にて固定されている。反プーリー側軸受19の内輪側はシャフト9に圧入されており、また外輪側はRブラケット11の中心部に形成された筒状部分に収納される。また、シャフト9には、プーリー21がプーリーナット22にて取り付けられており、車両用交流発電機100が車両のエンジンに取り付けられたとき、エンジン軸と回転子5のプーリー21はベルト等の連結部材を介して機械エネルギーの授受を行う。
【0029】
また、回転子磁極6には、車両用交流発電機100の冷却のためにファン15,16が取り付けられており、回転子5の回転とともに、外気を車両用交流発電機100内に取り込むことが可能となっている。フロントブラケット10側に取り付けられているファン16は、エンジン軸からの回転力がベルトを介して回転子5を回したとき、フロントブラケットの軸方向に開口している通風窓から冷却風を取り込み、固定子コイル3のうちフロントブラケット10側に位置するエンドコイル部を冷却した後、フロントブラケット10の外周側に設けられた通風窓を通して、車両用交流発電機100の外へと排出される。
【0030】
リアブラケット11の軸方向端面部には、負極側のダイオード素子201Bが圧入された負極側ダイオード素子冷却板202Bが配置してある。負極側のダイオード素子201Bは、円盤状のベース部と、リード部とから構成される。ダイオード素子の内部には半導体素子が固定され、ダイオードのカソードはベース部に接続され、アノードはリード部に接続されている。ベース部の外周側はローレット加工が施されており、冷却板202Bの圧入穴にローレット圧入され、機械的及び電気的に接続される。
【0031】
ダイオード素子201Bのベース部がリアブラケット11と接するため、熱容量の大きいリアブラケット11に負極側ダイオード素子201Bからの発熱を伝達することが可能である。またレギュレータを搭載したブラシホルダ12もこのリアブラケット11上に配置されている。界磁巻線7に電流を供給するブラシ13や、固定子巻線3から発電される電力を規定の電圧に制御するレギュレータを保有するブラシホルダ12もまた、数本のボルトにてリアブラケット11に固定されている。交流発電機100の反プーリー側の最外郭部には、保護カバー25が取り付けられており、レギュレータを搭載したブラシホルダ12、ダイオード素子201A、B、スリップリング14等の電気的接続部分を異物侵入から保護している。
【0032】
なお、図1において、正極側のダイオード素子冷却板202Aには、保護カバー25側へと伸びる向きに冷却フィンが設けてある。この冷却フィンは回転子5、ファン15およびリアブラケット11に当たらない様、プーリー21側に突出してもよい。
【0033】
また負極側ダイオード冷却板202Bにもまた、回転子5、ファン15およびリアブラケット11に当たらない様、プーリー側に突出してもよい。
【0034】
次に、図2を用いて、本実施形態による車両用交流発電機に用いる整流装置の構成について説明する。
図2は、本発明の一実施形態による車両用交流発電機に用いる整流装置の構成を示す側面図である。なお、図1と同一符号は同一部分を示している。
【0035】
図2は、図1に示した保護カバー25を外したときの交流発電機100の反プーリー側から見た状態を示している。図2において、車両用交流発電機100は6相の固定子巻線3を想定しているため、負極側ダイオード素子冷却板202Bには、負極側ダイオード素子201Bが6ヶ所圧入されている。
【0036】
また、正極側ダイオード素子201Aは、正極側ダイオード素子冷却板202Aに圧入されており、負極側と同様6個の正極側ダイオード素子201Aが圧入されている。正極側のダイオード素子201Aは、負極側ダイオード素子202Bと同様に、円盤状のベース部と、リード部とから構成されるが、ダイオードのアノードがベース部に接続され、カソードがリード部に接続されている。
【0037】
正極側ダイオード素子201Aが圧入された正極側ダイオード素子冷却板202Aと、負極側ダイオード素子201Bが圧入されたダイオード素子冷却板202Bは、接続部材206を挟んで、正極側、負極側のそれぞれのダイオード素子201のリード502が向かい合うよう組み合わされる。接続部材206は、固定子巻線3(図1)とダイオード素子と201を接続する導電体205を、樹脂モールド材にてインサート成型したものである。導電体205は、6相の回路構成を行うため、インサート成型した接続部材の中で、6個の部材に分かれている。接続部材206には樹脂モールド部に突部を設け、正極側、負極側それぞれのダイオード素子冷却板202に設けられた貫通穴と嵌め合わせることで、正極側ダイオード素子冷却板202A、負極側ダイオード素子冷却板202B、接続部材206を組み合わせる。接続部材206内の導電体205のうちダイオード素子201と接続される部分205Bは、正極側ダイオード素子201Aと負極側ダイオード素子201Bからそれぞれ伸びるリード502A、502Bの位置に立ち上がっており、導電体205とリード502A、502Bを溶接等の方法を用いて電気接続を行うことで、全波整流回路が構成できるようになっている。
【0038】
正極側のダイオード素子冷却板202Aと、負極側ダイオード素子冷却板202Bと、接続部材206とが一体となった整流装置は、負極側ダイオード素子201Bのベース部501Bがリアブラケット11の軸方向端面と接する方向に配置され、ボルト26でリアブラケット11に固定されている。
【0039】
その後、導電体205は、U字部205Aにて、この図には記載していない固定子巻線3からのコイルを挟み込み、必要に応じて、溶接または半田付け等の接続方法を用いて固定子コイルとの電気的接続を行い、全波整流回路を構成する。
【0040】
ブラシホルダ12から伸びる端子12Aは、固定子巻線3の1相分と繋がった導電体205と接続されており、車両用交流発電機100の回転数を固定子巻線3が発生する交流電圧パルスから読み取っている。またブラシホルダ12に設けられたコネクタ12Bは、車両側との通信を行うインターフェース部分として用いられる。
【0041】
ダイオード素子201にて交流から直流に整流された電力は、ダイオード冷却板202を経由して、正極側ダイオード冷却フィンに組み込まれたバッテリー端子27から車両側へと供給される。
【0042】
ダイオード素子201の周囲には、通風窓203が設けられている。通風窓203には、ダイオード素子201の外周側に設けられた円弧状の通風窓203Bと、隣接するダイオード素子201の間に設けられた矩形の通風窓203Aとがある。
【0043】
次に、図3を用いて、本実施形態による車両用交流発電機に用いる整流装置の要部を拡大して説明する。
図3は、本発明の一実施形態による車両用交流発電機に用いる整流装置の要部構成を示す拡大断面図である。なお、図1,図2と同一符号は同一部分を示している。
【0044】
図3は、図1におけるダイオード素子201の周囲部分を拡大したものである。
【0045】
回転子5がエンジンにより回転されたとき、回転子5に取り付けられたファン15にて冷却風が誘引され、保護カバー25の軸方向側端面に形成された通風窓から、冷却風を取り入れる。取り入れられた冷却風は図2の正極側ダイオード素子冷却板202Aに施された通風窓203(図2に斜線部で記載したもの)を通過する。正極側ダイオード放熱板202Aには中心軸周辺の通風孔を通る冷却風(図3の破線X1)とダイオード周辺に設けられた通風孔(図3の破線X2)と正極側のダイオード放熱板202Aと負極側のダイオード放熱板202B間の間隙を通る冷却風(図3の破線X3)がある。正極側のダイオード素子201Aはダイオード素子201とダイオード素子冷却板202Aに直接あたる冷却風や図3のX1、X2を通る冷却風により冷却される。また負極側のダイオード素子201Bはダイオード素子のベース501の底面でアルミニウム製のリアブラケット11と接しているため、リアブラケット11にダイオード素子201Bの熱を伝えること、破線X1、X2を通る冷却風、さらには正極側のダイオード放熱板202Aと負極側のダイオード放熱板202B間を通過する破線X3の冷却風等で冷却効果が得られる。
【0046】
次に、図4,図5及び図7を用いて、本実施形態による車両用交流発電機に用いる整流装置のダイオード素子取付部の構成について説明する。なお、参考までに図6に従来のダイオード素子取付部の構成を示す。
図4は、本発明の一実施形態による車両用交流発電機に用いる整流装置のダイオード素子取付部の構成を示す部分断面図である。図5は、図4の要部拡大部分断面図である。図6は、従来の整流装置のダイオード素子取付部の構成を示す部分断面図である。図7は、図4に示すダイオード素子取付部に他の構成のダイオード素子を取り付けた場合の説明図である。なお、図1〜図3と同一符号は同一部分を示している。
【0047】
図4は、本実施形態を用いた車両用交流発電機に搭載されるダイオード素子冷却板202にダイオード素子201を圧入したときの断面状態を示している。図6は、従来のダイオード素子冷却板202’とダイオード素子201とを示している。
【0048】
図4及び図6共に、ダイオード素子201の外観は、ダイオードベース501と、ダイオードリード502と、樹脂部503とで構成されているものである。ダイオードベース501および樹脂部503の内部には、ダイオード特性を形成するチップやチップ接続用の半田等の構成部品が含まれている。
【0049】
ダイオードベース503は金属にて形成されており、ベース周囲にはローレットが施されている。またダイオードリード502もまた金属にて形成されており、ダイオード素子201内のチップと電気的接続がなされている。
【0050】
ダイオード素子201は、ダイオード素子冷却板202に設けられた挿入穴にダイオードリード502の先端側から挿入された後、圧入治具600にてダイオードベース501が押されて、ダイオード素子冷却板202の挿入穴に圧入される。圧入治具600にてダイオードベース501を圧入する際、金属片が発生するが、ある程度の金属片はダイオードベース501の周囲に施されたローレット溝部に入り込む。しかしローレット溝に入り込めなかった金属片は、従来の図6の場合、ダイオード素子冷却板の外側に吐出されることとなる。この吐出された金属片は他の部品の傷つきや正極側、負極側の短絡を引き起こす等の可能性がある為、エアブロー等の除去作業が必要となる。
【0051】
それに対して、本実施形態の図4の場合、ダイオード素子201をダイオード素子冷却板202に圧入する際発生する金属片のうち、ローレット溝に入り込めなかった金属片はダイオード素子冷却板202に施された張り出し部202Pにより抑えられて、ダイオード素子冷却板の張り出し部202Pとダイオードベース502の面取り部により形成される空間Q(図5)に納められるため、ダイオード素子冷却板202の外側へ吐出されることが抑えられる。
【0052】
また、ダイオード素子201とダイオードベース501の接する面積に関して、ダイオード素子201の縁部とダイオード素子冷却板の張り出し部202Pの分だけ増加することから、ダイオード素子冷却板の張り出し部202Pの分だけダイオード素子201とダイオード素子冷却板202間の熱伝達が向上する。
【0053】
また、図6において、ダイオード素子201をダイオード素子冷却板202’に圧入する際の圧入量を管理する一例として、圧入治具600がダイオード素子冷却板202’のB1面にあたることで規定することが可能である。その際、圧入治具600の径がダイオード素子冷却板202上のダイオード挿入穴の径より小さい場合、ダイオード素子冷却板202のB1面を超えて圧入することになる。B1面を超えて圧入することで、ダイオード素子201のダイオードベース501の底面はB1よりもダイオード素子冷却板202内に入ることになる。ダイオード素子201がB1面よりもダイオード素子冷却板202’の内部に入って取り付けられたダイオード冷却板202’を、車両用交流発電機のリアブラケット等に代表される熱容量の比較的大きな部品に配置する際、ダイオードベース501と熱容量の大きな部品との間に隙間が出来てしまい、ダイオード素子201からの熱伝達を効果的に行うことが出来ない。またはB1面を超えて圧入することから、ダイオード素子201がダイオード素子冷却板202から抜けることが考えられる。よって、圧入治具600の径は、ダイオード素子冷却板のダイオード挿入穴よりも大きい必要がある。結果、圧入治具600があたる周囲には冷却用のフィン204を設けることができず、冷却フィン204とダイオード素子201のベース502との距離が離れてしまい、冷却フィン204が効果的に冷却を行うことが困難である。
【0054】
一方、本実施形態では、図4におけるダイオードベース圧入量を管理する一例として、ダイオードベースがダイオード素子冷却板202のA2面にあたることで規定されることが可能である。この場合圧入治具600の径は、ダイオード素子冷却板202上のダイオード挿入穴以下にしても、圧入量はダイオード素子冷却板202のA2面とダイオード素子201の縁部があたることで規定されるため、B1面を超えてダイオード素子201を圧入することは無い。結果、ダイオード素子冷却板202上の冷却フィン204はダイオード挿入穴近傍まで設けることが可能となり、より効果的なダイオード素子201の冷却が可能となる。
【0055】
また、図5は、図4における挿入穴内周側へ向かう突起部202P周辺の拡大図である。ダイオード素子201を圧入する際に発生する金属片のうち、ダイオードベース501周囲のローレット溝部に入り込むことが出来なかった金属片は、ダイオード素子冷却板202とダイオードベース501に施された面取り部との間に出来る空間Q部に収まることとなるが、発生する金属片の量が多く空間Q部に収まることが出来ない場合には、ダイオード素子冷却板202に逃げ部を設けることで金属片の収容容積を増やすことが可能となる。
【0056】
なお、図4や図5に図示したものは、正極側ダイオード素子の取り付け部の構成である。従って、ダイオード素子201の挿入側に冷却フィン204が設けられている。それに対して、負極側のダイオード素子の取り付け部の場合には、張り出し部202Pの周囲に冷却フィンを設けられる。
【0057】
次に、図7を用いて、図4に示すダイオード素子取付部に他の構成のダイオード素子を取り付けた場合について説明する。
【0058】
図4のダイオード素子201は、ダイオードリード502の根元部をエポキシ等の硬化する樹脂にて固めたものであるが、図7に示すリードにベンド部があるタイプのダイオード素子201Cにても同等の効果が得られる。
【0059】
次に、図8を用いて、本発明の他の実施形態による車両用交流発電機に用いる整流装置の他のダイオード素子取付部の構成について説明する。なお、本実施形態による車両用交流発電機の全体構成は、図1に示したものと同様である。また、本実施形態による車両用交流発電機に用いる整流装置の構成は図2や図3に示したものと同様である。
図8は、本発明の他の実施形態による車両用交流発電機に用いる整流装置のダイオード素子取付部の構成を示す部分断面図である。なお、図1〜図7と同一符号は同一部分を示している。
【0060】
本実施形態では、図8に示すように、ダイオード放熱板202”に設けられたダイオード挿入穴周囲以外の厚さを、ダイオード挿入穴周囲の厚さより薄くすることで、ダイオード放熱板202の軽量化に繋がるだけでなく、図3のX3の通風路を広くすることができ、通風路X3の流量を増加することが可能となる。
【0061】
ダイオード素子冷却板202”を通過した冷却風は、リアブラケット11の径方向中心部に設けられた通風窓を通過し、その後、固定子巻線3のリアブラケット11側に位置するエンドコイル部周囲を通り、リブラケット11の外周部に設けられた排気口を抜けて車両交流発電機100の外へと排気される。
【0062】
張り出し部202Pは、ダイオード素子冷却板のダイオード素子挿入穴周囲に設けられており、ダイオード素子挿入穴周囲以外の部分の厚さT2が、ダイオード素子挿入穴周囲の厚さT1より薄くなっている。これにより、図3に示す状態において、正極側ダイオード素子冷却板202Aと、接続部材206との間のギャップ及び負極側ダイオード素子冷却板202Bと接続部材206との間のギャップを広げることができ、そのギャップの通風量を増やすことができる。
【0063】
以上説明したように、本実施形態によれば、ダイオード素子冷却板のダイオード取り付け部分には、ダイオード素子挿入穴と共にダイオード素子のベース縁部が接するよう挿入穴から挿入穴内周側へ向かう張り出し部が設けてあることで、ダイオード圧入時に発生する金属片をダイオード素子冷却板の外に吐出することを抑制できるため、金属片除去作業を軽減することが可能となる。
【0064】
また、ダイオード挿入穴と共にダイオードのベース縁部が接するよう挿入穴から挿入穴内周側へ向かう張り出し部とダイオード素子のベース部が接する位置で圧入量の管理をすることで、ダイオード素子冷却板に設ける冷却フィンをダイオード挿入穴近傍に設けることが可能となる。これにより、より効果的な冷却フィン形成が可能となる。
【符号の説明】
【0065】
100…車両用交流発電機
1…固定子
2…固定子コア
3…固定子巻線(電機子巻線)
4…絶縁紙
5…回転子
6…回転子磁極
6A,6B…爪形磁極
7…界磁巻線
8…界磁巻線の巻線枠
9…シャフト
10…フロントブラケット
11…リアブラケット
12…ブラシホルダ
12A…ブラシホルダ端子
12B…ブラシホルダコネクタ
13…ブラシ
14…スリップリング
15,16…ファン
17…界磁ターミナル部
18…プーリー側軸受
19…反プーリー側軸受
20…スペーサ
21…プーリー
22…プーリーナット
23…おさえ板
24…おさえ板用ボルト
25…保護カバー
26…通しボルト
27…バッテリー端子
201,201A,201B,201C…ダイオード素子
202,202A,202B…ダイオード素子冷却板
202P…張り出し部
203…通風窓
204…冷却フィン
205…導電体
205A…固定子コイルとの接続部分
205B…ダイオード素子との接続部分
206…接続部材
501,501A,501B…ダイオード素子ベース部
502,502A,502B…ダイオード素子リード部
600…ダイオード素子圧入治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子磁極を有し、前記回転子磁極が固定された回転軸が2つ以上の軸受により回転自在に支持されることからなる回転子と、
該回転子に取付けられ回転子の回転により冷却風を誘引するファンと、
前記回転子の外周に配置された固定子巻線を有する固定子と、
該固定子から発生した電力を整流するための正極側および負極側のダイオード素子と、
該ダイオード素子を取り付ける正極側および負極側のダイオード素子冷却板と、
前記固定子巻線と前記整流装置間を電気的に接続する導電体と前記導電体の周囲に形成された絶縁部材からなる接続部材と、
前記回転子に通電するためのブラシを保持するブラシホルダと、
前記軸受及び前記固定子を支持し、更には前記ファンによって引き起こされる冷却風の通路を形成するとともに、前記負極側のダイオード素子冷却板とブラシホルダを設置するリアブラケットと、
前記軸受及び前記固定子を支持するフロントブラケットと、
前記ブラシホルダとダイオード素子を保護するための保護カバーとを有する車両用交流発電機であって、
前記ダイオード素子冷却板は、そのダイオード素子取付部分に設けられ、ダイオード素子挿入穴と共にダイオード素子のベース縁部が接するよう挿入穴から挿入穴内周側へ向かう張り出し部を備えることを特徴とする車両用交流発電機。
【請求項2】
請求項1記載の車両用交流発電機において、
前記張り出し部は、前記ダイオード素子の縁部と接する部分の一部に設けられた逃げ部を備えることを特徴とする車両用交流発電機。
【請求項3】
請求項1記載の車両用交流発電機において、
前記張り出し部の周囲に設けられた冷却フィンを備えることを特徴とする車両用交流発電機。
【請求項4】
請求項1記載の車両用交流発電機において、
前記張り出し部の周囲に設けられた通風口を備えることを特徴とする車両用交流発電機。
【請求項5】
請求項1記載の車両用交流発電機において、
前記張り出し部は、前記ダイオード素子冷却板において、ダイオード素子挿入穴周囲に設けられ、ダイオード素子挿入穴周囲以外の部分の厚さが、ダイオード素子挿入穴周囲の厚さより薄いことを特徴とする車両用交流発電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−235553(P2012−235553A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100641(P2011−100641)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】