説明

車両用内燃機関の燃料噴射装置

【課題】インジェクタの経時劣化によるドライバビリティの悪化や有害排気ガス成分の増加を抑制する。
【解決手段】アクセルペダルの踏み込み量が零で且つエンジン1が減速状態のときに、1つの気筒のみに一定量の燃料をインジェクタ5から噴射させるとともに他の気筒への燃料噴射を停止させ、このときのコモンレール内圧力の減圧特性から上記1つの気筒に対応するインジェクタ5の実燃料噴射量と指令噴射量とのずれを推定し、その減圧特性に基づいて指令噴射量を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コモンレールに蓄えた高圧燃料を内燃機関に噴射する車両用内燃機関の燃料噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用内燃機関の燃料噴射装置は、高圧燃料が蓄えられたコモンレール、コモンレールの高圧燃料を内燃機関に噴射するインジェクタ等を備え、指令噴射量に対応した時間だけインジェクタを開弁させるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−258160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の車両用内燃機関の燃料噴射装置は、インジェクタの経時劣化等により、インジェクタから実際に噴射される燃料の量(以下、実燃料噴射量という)が指令噴射量からずれたり、実燃料噴射量の各気筒間でのバラツキが大きくなるケースがある。これにより、内燃機関もしくは車両においては、ドライバビリティの悪化や、パイロット噴射量の変化による有害排気ガス成分の増加、失火等の虞がある。
【0005】
本発明は上記点に鑑みて、インジェクタの経時劣化によるドライバビリティの悪化や有害排気ガス成分の増加を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、アクセルペダルの踏み込み量が零で且つ内燃機関(1)が減速状態のときに、1つの気筒のみに一定量の燃料をインジェクタ(5)から噴射させるとともに他の気筒への燃料噴射を停止させる減速時燃料制御手段(S152)と、減速時燃料制御手段(S152)にて燃料噴射が制御されているときの、圧力センサ(7)にて検出したコモンレール内圧力の減圧特性に基づいて、指令噴射量の補正量を算出する補正量算出手段(S155、155a)とを備えることを特徴とする。
【0007】
これによると、減速時燃料制御手段(S152)にて燃料噴射が制御されているときのコモンレール内圧力の減圧特性から、燃料が噴射される1つの気筒のインジェクタ(5)について、その経時劣化等による実燃料噴射量と指令噴射量とのずれを推定することが可能であるため、その減圧特性に基づいて指令噴射量を補正することにより、実燃料噴射量と指令噴射量とのずれを小さくして、インジェクタ(5)の経時劣化によるドライバビリティの悪化や有害排気ガス成分の増加を抑制することができる。
【0008】
なお、請求項2に記載の発明のように、請求項1に記載の車両用内燃機関の燃料噴射装置において、コモンレール内圧力が所定量低下するのに要する減圧時間に基づいて指令噴射量の補正量を算出することができる。この場合、請求項3に記載の発明のように、減圧時間を予め定めた規準減圧時間と比較し、減圧時間が規準減圧時間よりも長い場合は指令噴射量を増量させ、減圧時間が規準減圧時間よりも短い場合は指令噴射量を減量させるように、指令噴射量の補正量を算出することができる。
【0009】
また、請求項4に記載の発明のように、請求項1に記載の車両用内燃機関の燃料噴射装置において、燃料を所定回数噴射させた際のコモンレール内の圧力低下量に基づいて指令噴射量の補正量を算出することができる。この場合、請求項5に記載の発明のように、圧力低下量を予め定めた規準圧力低下量と比較し、圧力低下量が規準圧力低下量よりも小さい場合は指令噴射量を増量させ、圧力低下量が規準圧力低下量よりも大きい場合は指令噴射量を減量させるように、指令噴射量の補正量を算出することができる。
【0010】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係る燃料噴射装置の全体構成図である。
【図2】ECU6において実行される噴射量制御のフローチャートである。
【図3】図2の補正量算出制御のフローチャートである。
【図4】補正量算出制御時のレール圧減圧特性を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る燃料噴射装置における補正量算出制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0013】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る燃料噴射装置の全体構成図である。
【0014】
図1に示す燃料噴射装置は、車両に搭載される多気筒(本例では4気筒)の圧縮着火式内燃機関(以下、エンジンという)1に適用される。
【0015】
燃料噴射装置は、高圧燃料を蓄えるコモンレール2と、燃料タンク3から汲み上げた燃料を加圧してコモンレール2に供給する燃料供給ポンプ4と、エンジン1の気筒毎に配置されて、コモンレール2より供給される高圧燃料をエンジン1の燃焼室1aに噴射するインジェクタ5と、本システムを電子制御する電子制御ユニット(以下ECUという)6とを備えている。
【0016】
コモンレール2には、コモンレール内の圧力(以下、レール圧という)を検出して電気信号をECU6に出力する圧力センサ7と、レール圧が予め設定された上限値を超えないように制限するプレッシャリミッタ8が取り付けられている。コモンレール2の目標レール圧はECU6により設定され、ECU6は、目標レール圧になるように、燃料供給ポンプ4からコモンレール2に供給される燃料量を制御する。
【0017】
燃料供給ポンプ4は、エンジン1に駆動されて回転するカム軸9と、このカム軸9に駆動されて燃料タンク3から燃料を汲み上げるフィードポンプ10と、カム軸9の回転に同期してシリンダ11内を往復運動するプランジャ12と、フィードポンプ10からシリンダ11内の加圧室13に吸入される燃料量を調量する電磁調量弁14などを有している。
【0018】
この燃料供給ポンプ4は、プランジャ12がシリンダ11内を上死点から下死点に向かって移動する際に、フィードポンプ10より送り出された燃料が電磁調量弁14で調量され、吸入弁15を押し開いて加圧室13に吸入される。その後、プランジャ12がシリンダ11内を下死点から上死点へ向かって移動する際に、プランジャ12によって加圧室13の燃料が加圧され、その加圧された燃料が、吐出弁16を押し開いてコモンレール2に圧送される。
【0019】
インジェクタ5は、エンジン1の気筒毎に搭載され、それぞれ高圧配管17を介してコモンレール2に接続されている。このインジェクタ5は、ECU6の指令に基づいて作動する電磁弁5aと、この電磁弁5aへの通電時に燃料を噴射するノズル5bとを備える。
【0020】
電磁弁5aは、コモンレール2の高圧燃料が印加される圧力室(図示せず)から低圧側に通じる低圧通路(図示せず)を開閉するもので、通電時に低圧通路を開放し、通電停止時に低圧通路を遮断するようになっている。
【0021】
ノズル5bは、噴孔を開閉するニードル(図示せず)を内蔵し、圧力室の燃料圧力がニードルを閉弁向き(噴孔を閉じる向き)に付勢している。そして、電磁弁5aへの通電により低圧通路が開放されて圧力室の燃料圧力が低下すると、ニードルがノズル5b内を開弁向きに移動して開弁する(噴孔を開く)ことにより、コモンレール2より供給された高圧燃料を噴孔より噴射する。一方、電磁弁5aへの通電停止により低圧通路が遮断されて、圧力室の燃料圧力が上昇すると、ニードルがノズル5b内を閉弁向きに移動して閉弁することにより、噴射が終了する。
【0022】
ECU6は、図示しないCPU、ROM、EEPROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータを備え、マイクロコンピュータに記憶したプログラムに従って演算処理を行うものである。
【0023】
ECU6は、エンジン回転数を検出する回転数センサ18、図示しないアクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセル開度センサ19、及びレール圧を検出する圧力センサ7等が接続され、これらのセンサで検出されたセンサ情報に基づいて、コモンレール2の目標レール圧と、エンジン1の運転状態に適した噴射時期及び噴射量等を算出し、その算出結果に従って、燃料供給ポンプ4の電磁調量弁14及びインジェクタ5の電磁弁5aを電子制御する。
【0024】
図2はECU6において実行される噴射量制御のフローチャート、図3は図2の補正量算出制御のフローチャートである。
【0025】
図2の制御処理は、エンジン1の始動時に図示しないキースイッチの操作によりECU6に電源が投入されると開始され、エンジン1の停止時にキースイッチの操作によりECU6への電力供給が停止されると終了する。
【0026】
まず、噴射量算出手段としてのS100(Sはステップを表す)では、回転数センサ18にて検出したエンジン回転数およびアクセル開度センサ19にて検出したアクセルペダルの踏み込み量に基づいて、インジェクタ5から噴射される燃料の量である基本指令噴射量および噴射時期を周知の方法で算出するとともに、後述する補正量算出手段にて算出された補正量を基本指令噴射量に反映させて最終指令噴射量を算出する。具体的には、本実施形態では、基本指令噴射量と補正量算出手段にて算出された補正係数との積により、最終指令噴射量を算出する。また、補正係数は、各気筒毎に設定される。
【0027】
続いて、S110では、S100で求めた最終指令噴射量および噴射時期に対応して、インジェクタ5の電磁弁5aに駆動信号を出力する。
【0028】
続いて、S120では、エンジン回転数、アクセルペダルの踏み込み量、さらには圧力センサ7にて検出したレール圧に基づいて、コモンレール2の目標レール圧を周知の方法で算出する。また、S120では、レール圧を目標レール圧に調整するために必要なコモンレール2への燃料供給量を周知の方法で算出する。
【0029】
続いて、S130では、S120で求めたコモンレール2への燃料供給量に対応して、燃料供給ポンプ4の電磁調量弁14に駆動信号を出力する。
【0030】
続いて、S140では、アクセル開度センサ19にて検出したアクセルペダルの踏み込み量が零であるか否かを判定する。そして、アクセルペダルの踏み込み量が零でない場合はS100〜S140の処理を繰り返す。また、アクセルペダルの踏み込み量が零である場合は、S150に進んで補正量算出制御処理を実行する。
【0031】
図3に示すように、補正量算出制御処理では、まずS151にて、指令噴射量の補正量を求める補正量算出条件が成立しているか否かを判定する。具体的には、アクセルペダルの踏み込み量が零で且つエンジン1が減速状態(すなわち、エンジン回転数が低下傾向状態)のときに、補正量算出条件が成立したと判定する。そして、S151にて補正量算出条件が成立したと判定されなければ補正量算出制御処理を終了し、S151にて補正量算出条件が成立したと判定されるとS152に移行する。
【0032】
なお、S151では、アクセルペダルの踏み込み量が零で且つエンジン1が減速状態であることの他に、エンジン回転数が所定値以上、エンジン冷却水温が所定値以上、および燃料温度が所定値以上のうちの少なくとも1つを、補正量算出条件の成立要件として追加してもよい。
【0033】
減速時燃料制御手段としてのS152では、エンジン1の4つの気筒の中から補正量の算出対象となる1つの気筒(以下、対象気筒という)を選択し、その対象気筒のみに一定量の燃料を圧縮行程において(すなわち、エンジン1の1サイクル中に1回)単発噴射し、他の気筒への燃料噴射を停止させる。この際、対象気筒のみに燃料噴射を行うことによる回転変動を抑制するために、対象気筒に対する燃料噴射量はアイドリング時の燃料噴射量以下に設定するのが望ましい。なお、対象気筒は、補正量算出制御処理が新規に実行されるたびに順次変更される。
【0034】
続いて、S153では、圧力センサ7にて検出したレール圧を読み込むとともに、S151にて肯定判定されてからの経過時間を計測する。
【0035】
ここで、S151にて肯定判定された場合は、目標レール圧になるようにコモンレール2に供給される燃料量を制御するルーチンにおいて、補正量算出制御処理が終了するまでコモンレール2への燃料供給が停止される。したがって、S152での燃料噴射やインジェクタ5からの燃料リークにより、図4に示すようにレール圧が低下する。
【0036】
この図4において、時刻t1はS151にて肯定判定された時であり、Poは時刻t1におけるレール圧(以下、減速開始時レール圧という)であり、ΔPは予め設定されたレール圧減圧量(以下、レール圧減圧量設定値という)である。また、図4において、特性線aは実燃料噴射量と指令噴射量とが一致している場合の特性(以下、規準減圧特性という)である。そして、この規準減圧特性における、レール圧が減速開始時レール圧Poからレール圧減圧量設定値ΔPだけ低下するのに要する時間である規準減圧時間Tstdは、ECU6のROMに記憶されている。
【0037】
続いて、S154では、レール圧が減速開始時レール圧Poからレール圧減圧量設定値ΔPだけ低下したか否かを判定する。そして、レール圧がレール圧減圧量設定値ΔPだけ低下するまでS152、S153の処理を繰り返す。また、レール圧がレール圧減圧量設定値ΔPだけ低下すると、補正量算出手段としてのS155に進む。
【0038】
このS155では、レール圧が減速開始時レール圧Poからレール圧減圧量設定値ΔPだけ低下するのに要した時間である実減圧時間(換言すると、S151にて肯定判定されてからS154にて肯定判定されるまでの経過時間)を、規準減圧時間Tstdと比較して、対象気筒に関する指令噴射量の補正係数を算出する。
【0039】
具体的には、図4の特性線bのように規準減圧特性(図4の特性線a参照)よりも急激にレール圧が低下する減圧特性の場合、換言すると、実減圧時間が規準減圧時間Tstdよりも短い場合は、対象気筒のインジェクタ5は実燃料噴射量が指令噴射量よりも多いと推定されるため、S100で対象気筒の最終指令噴射量を算出する際に用いる補正係数の値を現在の値よりも小さくする。これにより、対象気筒の最終指令噴射量は減量方向に補正され、実燃料噴射量と指令噴射量とのずれが小さくなる。
【0040】
また、図4の特性線cのように規準減圧特性(図4の特性線a参照)よりも緩やかにレール圧が低下する減圧特性の場合、換言すると、実減圧時間が規準減圧時間Tstdよりも長い場合は、対象気筒のインジェクタ5は実燃料噴射量が指令噴射量よりも少ないと推定されるため、S100で対象気筒の最終指令噴射量を算出する際に用いる補正係数の値を現在の値よりも大きくする。これにより、対象気筒の最終指令噴射量は増量方向に補正され、実燃料噴射量と指令噴射量とのずれが小さくなる。
【0041】
補正係数はECU6のEEPROMに記憶されており、対象気筒の補正係数はS155で算出した新しい補正係数の値に書き換えられる(S156)。
【0042】
本実施形態によると、減速時燃料制御手段にて燃料噴射が制御されているときのコモンレール内圧力の減圧特性から、対象気筒のインジェクタ5の経時劣化等による実燃料噴射量と指令噴射量とのずれを推定して、その減圧特性に基づいて指令噴射量を補正するようにしているため、実燃料噴射量と指令噴射量とのずれを小さくして、インジェクタ5の経時劣化によるドライバビリティの悪化や有害排気ガス成分の増加を抑制することができる。
【0043】
なお、本実施形態では、基本指令噴射量とS155にて算出された補正係数との積により最終指令噴射量を算出したが、S155では補正係数の代わりに噴射量補正値を算出し、基本指令噴射量と噴射量補正値との和により最終指令噴射量を算出するようにしてもよい。
【0044】
この場合、実減圧時間が規準減圧時間Tstdよりも短い場合は噴射量補正値を負の値にして、対象気筒の最終指令噴射量を減量方向に補正する。また、実減圧時間が規準減圧時間Tstdよりも長い場合は噴射量補正値を正の値にして、対象気筒の最終指令噴射量を増量方向に補正する。
【0045】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。図5は第2実施形態に係る燃料噴射装置における補正量算出制御のフローチャートである。
【0046】
本実施形態は、補正量算出制御の内容を一部変更したものであり、より詳細には、燃料を所定回数噴射させた際のコモンレール内の圧力低下量に基づいて指令噴射量の補正量を算出するようにしたものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
【0047】
図5に示すように、S151にて補正量算出条件が成立したと判定されると、S152にて1つの対象気筒のみに一定量の燃料を圧縮行程において(すなわち、エンジン1の1サイクル中に1回)単発噴射し、S153にて圧力センサ7により検出したレール圧を読み込むとともに、S151にて肯定判定されてからの経過時間を計測する。
【0048】
続いて、S154aでは、対象気筒に対して燃料が所定回数(例えば10回)噴射されたか否かを判定する。そして、所定回数噴射されるまでS152、S153の処理を繰り返す。また、所定回数噴射されると、補正量算出手段としてのS155aに進む。
【0049】
このS155aでは、対象気筒に対して燃料が所定回数噴射される間(換言すると、S151にて肯定判定されてからS154aにて肯定判定されるまでの間)のレール圧の低下量(以下、圧力低下量という)に基づいて、対象気筒に関する指令噴射量の補正係数を算出する。
【0050】
具体的には、実燃料噴射量と指令噴射量とが一致している場合の圧力低下量(以下、規準圧力低下量という)がECU6のROMに記憶されており、実際の圧力低下量を規準圧力低下量と比較して対象気筒に関する指令噴射量の補正係数を算出する。
【0051】
より詳細には、実際の圧力低下量が規準圧力低下量よりも大きい場合は、対象気筒のインジェクタ5は実燃料噴射量が指令噴射量よりも多いと推定されるため、S100で対象気筒の最終指令噴射量を算出する際に用いる補正係数の値を現在の値よりも小さくする。これにより、対象気筒の最終指令噴射量は減量方向に補正され、実燃料噴射量と指令噴射量とのずれが小さくなる。
【0052】
また、実際の圧力低下量が規準圧力低下量よりも小さい場合は、対象気筒のインジェクタ5は実燃料噴射量が指令噴射量よりも少ないと推定されるため、S100で対象気筒の最終指令噴射量を算出する際に用いる補正係数の値を現在の値よりも大きくする。これにより、対象気筒の最終指令噴射量は増量方向に補正され、実燃料噴射量と指令噴射量とのずれが小さくなる。
【0053】
本実施形態によると、対象気筒に対して燃料が所定回数噴射される間のレール圧の低下量から、対象気筒のインジェクタ5の経時劣化等による実燃料噴射量と指令噴射量とのずれを推定して、そのレール圧の低下量に基づいて指令噴射量を補正するようにしているため、実燃料噴射量と指令噴射量とのずれを小さくして、インジェクタ5の経時劣化によるドライバビリティの悪化や有害排気ガス成分の増加を抑制することができる。
【0054】
なお、本実施形態では、基本指令噴射量とS155aにて算出された補正係数との積により最終指令噴射量を算出したが、S155aでは補正係数の代わりに噴射量補正値を算出し、基本指令噴射量と噴射量補正値との和により最終指令噴射量を算出するようにしてもよい。
【0055】
この場合、実際の圧力低下量が規準圧力低下量よりも大きい場合は噴射量補正値を負の値にして、対象気筒の最終指令噴射量を減量方向に補正する。また、実際の圧力低下量が規準圧力低下量よりも小さい場合は噴射量補正値を正の値にして、対象気筒の最終指令噴射量を増量方向に補正する。
【符号の説明】
【0056】
1 エンジン
2 コモンレール
5 インジェクタ
7 圧力センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧燃料を蓄えるコモンレール(2)と、前記コモンレール(2)内の圧力を検出する圧力センサ(7)と、前記コモンレール(2)の高圧燃料を多気筒の内燃機関(1)に噴射するインジェクタ(5)と、前記インジェクタ(5)から噴射される燃料の量である指令噴射量を前記内燃機関(1)の運転状態に基づいて算出する噴射量算出手段(S100)とを備える車両用内燃機関の燃料噴射装置において、
アクセルペダルの踏み込み量が零で且つ前記内燃機関(1)が減速状態のときに、1つの気筒のみに一定量の燃料を前記インジェクタ(5)から噴射させるとともに他の気筒への燃料噴射を停止させる減速時燃料制御手段(S152)と、
前記減速時燃料制御手段(S152)にて燃料噴射が制御されているときの、前記圧力センサ(7)にて検出したコモンレール内圧力の減圧特性に基づいて、前記指令噴射量の補正量を算出する補正量算出手段(S155、155a)とを備えることを特徴とする車両用内燃機関の燃料噴射装置。
【請求項2】
前記補正量算出手段(S155)は、コモンレール内圧力が所定量低下するのに要する減圧時間に基づいて前記指令噴射量の補正量を算出することを特徴とする請求項1に記載の車両用内燃機関の燃料噴射装置。
【請求項3】
前記補正量算出手段(S155)は、前記減圧時間を予め定めた規準減圧時間と比較し、前記減圧時間が前記規準減圧時間よりも長い場合は前記指令噴射量を増量させ、前記減圧時間が前記規準減圧時間よりも短い場合は前記指令噴射量を減量させるように、前記指令噴射量の補正量を算出することを特徴とする請求項2に記載の車両用内燃機関の燃料噴射装置。
【請求項4】
前記補正量算出手段(155a)は、燃料を所定回数噴射させた際のコモンレール内の圧力低下量に基づいて前記指令噴射量の補正量を算出することを特徴とする請求項1に記載の車両用内燃機関の燃料噴射装置。
【請求項5】
前記補正量算出手段(155a)は、前記圧力低下量を予め定めた規準圧力低下量と比較し、前記圧力低下量が前記規準圧力低下量よりも小さい場合は前記指令噴射量を増量させ、前記圧力低下量が前記規準圧力低下量よりも大きい場合は前記指令噴射量を減量させるように、前記指令噴射量の補正量を算出することを特徴とする請求項4に記載の車両用内燃機関の燃料噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−58390(P2011−58390A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206997(P2009−206997)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】