説明

車両用内装装置

【課題】人の手作業で潤滑剤を塗布する場合であっても、潤滑剤の塗布作業における塗布位置、塗布量のバラツキを抑制でき、潤滑剤のこぼれ、はみ出し、タレによる作業場、製品の汚れの発生を抑制できる車両用内装装置の提供。
【解決手段】固定側部材20と固定側部材20に対して可動な可動側部材30とを有し、可動側部材30が固定側部材20に対して動いたときの固定側部材20と可動側部材30との摺接部50に注入器60を用いて潤滑剤40が塗布される車両用内装装置10であって、固定側部材20と可動側部材30の少なくとも一方は、潤滑剤40を注入し摺接部50に塗布するための注入口25を備えており、注入口25は、注入器60のノズル61の径と同等径の同等径部25aと、同等径部25aより潤滑剤40の注入方向奥側に位置し同等径部25aより小径の小径部25bと、を備えている、車両用内装装置10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用小物入れ装置等の車両用内装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図11、図12に示すように、車両用小物入れ装置等の、固定側部材2と可動側部材3とを有する車両用内装装置1には、可動側部材3が固定側部材2に対して動いたときの固定側部材2と可動側部材3との摺接部5に潤滑剤4(図8,9において斜線で示す)が塗布される。なお、図11、図12において摺接部5は、固定側部材2のリテーナ2aと可動側部材3の本体3aとの摺動部5a、可動側部材3を固定側部材2に対して閉位置にロックするためのロック部5b、可動側部材3に設けられるダンパギア3bと噛み合う固定側部材2のギア部5c、可動側部材3が固定側部材2に対して回動可能とされている際の回動軸部5dなどである。
【0003】
摺接部5への潤滑剤4の塗布は、人の手作業により行なわれており、図13に示すように注入器(ディスペンサー)6を用いて行なわれたり、図14に示すようにハケ7を用いて行なわれる。
【0004】
しかし、従来の車両用内装装置1には、人の手作業で注入器6、ハケ7を用いて潤滑剤4が塗布されるため、つぎの問題点がある。
(i)潤滑剤4の塗布位置にバラツキが生じやすい。また、潤滑剤4の塗布量においても調整が困難でありバラツキが生じやすい。そのため、固定側部材2に対する可動側部材3の動きに影響が出るおそれがある。
(ii)潤滑剤4の塗布作業中に発生する潤滑剤4のこぼれ、はみ出し、タレにより、装置1や作業場が汚れるおそれがある。また、こぼれ等が生じた場合、こぼれ等した潤滑剤をふき取るさらなる作業が必要になってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−177077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、人の手作業で潤滑剤を塗布する場合であっても、潤滑剤の塗布作業における塗布位置、塗布量のバラツキを抑制でき、潤滑剤のこぼれ、はみ出し、タレによる作業場、製品の汚れの発生を抑制できる車両用内装装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) 固定側部材と該固定側部材に対して可動な可動側部材とを有し、前記可動側部材が前記固定側部材に対して動いたときの前記固定側部材と前記可動側部材との摺接部に注入器を用いて潤滑剤が塗布される車両用内装装置であって、
前記固定側部材と前記可動側部材の少なくとも一方は、前記潤滑剤を注入し前記摺接部に塗布するための注入口を備えており、
前記注入口は、前記注入器のノズルの径と同等径の同等径部と、該同等径部より前記潤滑剤の注入方向奥側に位置し該同等径部より小径の小径部と、を備えている、車両用内装装置。
【発明の効果】
【0008】
上記(1)の車両用内装装置によれば、以下の効果を得ることができる。
(a)固定側部材と可動側部材の少なくとも一方が潤滑剤を注入し摺接部に塗布するための注入口を備えているため、注入口から潤滑剤を注入するだけで摺接部に潤滑剤を塗布できる。そのため、注入口が設けられていない場合(従来)に比べて、手作業による潤滑剤塗布位置のバラツキを抑制できる。
(b)注入口が、注入器のノズルの径と同等径の同等径部を備えているため、注入口から潤滑剤を注入する際に注入器のノズルの周囲から潤滑剤がはみ出したりこぼれたりタレたりすることを抑制できる。その結果、潤滑剤を摺接部に塗布した後に潤滑剤をふき取るさらなる作業を不要にできる。
(c)注入口が、同等径部より潤滑剤の注入方向奥側に位置し同等径部より小径の小径部を備えているため、小径部の径を変更することで潤滑剤の塗布量を調整することができ、塗布量のバラツキを従来に比べて抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明実施例の車両用内装装置の、車両用内装装置が車両用小物入れ装置であって、可動側部材の本体が固定側部材のリテーナに対し回動可能とされている場合の概略斜視図である。
【図2】図1の場合の断面模式図である。
【図3】図2のA−A線部分拡大断面図である。
【図4】図3のB部とその近傍の拡大図である。
【図5】本発明実施例の車両用内装装置の、車両用内装装置が車両用小物入れ装置であって、可動側部材の本体が固定側部材のリテーナに対し回動可能とされている場合の、可動側部材の回動軸部とその近傍の斜視図である。
【図6】本発明実施例の変形例を示す図であり、車両用内装装置の、車両用内装装置が車両用小物入れ装置であって、可動側部材の本体が固定側部材のリテーナに対し往復直線動可能とされている場合の斜視図である。
【図7】図6の場合の注入口部位での断面図である。
【図8】図6の場合の、可動側部材のみの部分斜視図である。
【図9】図6の場合の断面模式図である。
【図10】本発明実施例の更なる変形例を示す図であり、車両用内装装置の、車両用内装装置が車両用小物入れ装置であって、可動側部材に注入口が設けられている場合の斜視図である。
【図11】従来の車両用内装装置の、車両用内装装置が車両用小物入れ装置であって、可動側部材の本体が固定側部材のリテーナに対し回動可能とされている場合の断面模式図である。
【図12】従来の車両用内装装置の、車両用内装装置が車両用小物入れ装置であって、可動側部材が固定側部材に対し往復直線動可能とされている場合の、断面模式図である。
【図13】従来の車両用内装装置の、摺接部への潤滑剤の塗布が注入器(ディスペンサー)を用いて行なわれる場合の部分斜視図である。
【図14】従来の車両用内装装置の、摺接部への潤滑剤の塗布がハケを用いて行なわれる場合の部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1〜図5は、本発明実施例の車両用内装装置を示しており、図6〜図9は、本発明実施例の車両用内装装置の変形例を示しており、図10は、本発明実施例の車両用内装装置の更なる変形例を示している。本発明実施例、その変形例およびその更なる変形例において共通する部分には、本発明実施例、その変形例およびその更なる変形例において同じ符号を付してある。
【0011】
[本発明実施例](図1〜図5)
本発明実施例の車両用内装装置(以下、単に装置ともいう)10は、たとえば、車両のインストルメントパネル、コンソールパネル等に配置される車両用小物入れ装置である。ただし、装置10は、後述する摺動部、ロック部、ギア部、軸部等の摺接部50を少なくとも1つ有していれば、車両用小物入れ装置に限定されるものではなく、車両用カップホルダ装置、車両用灰皿装置、車両用携帯電話保持装置等であってもよく、車両用グローブボックス、車両用グローブボックスの上方のインストルメントパネルに配置される車両用アッパボックスであってもよく、車両用コンソールボックスであってもよく、その他の装置であってもよい。
【0012】
車両用内装装置10は、図1に示すように、固定側部材20と、固定側部材20に対して可動な可動側部材30と、を有する。なお、本実施例では、可動側部材30は固定側部材20に対して回動可能とされている。
【0013】
固定側部材20は、図2に示すように、リテーナ21と、リテーナ21に設けられるロック22と、リテーナ21に設けられるギア23と、リテーナ21に設けられる軸受24と、を備える。固定側部材20は、少なくともリテーナ21を備えており、リテーナ21に設けられる部材も含む。
【0014】
リテーナ21は、たとえば樹脂製であり、車両の内装部材に対して固定されている。リテーナ21は、車両の内装部材自体であってもよく、車両の内装部材と別体に形成されて車両の内装部材に固定されていてもよい。リテーナ21は、図3に示すように、車室側に開放し可動側部材31の少なくとも一部を収容可能な凹部21aを備える。
【0015】
ロック22は、公知のハートカムと該ハートカムに係脱可能なロックピンの一方からなる。
軸受24は、可動側部材30を回動可能に支持するために設けられる。
【0016】
可動側部材30は、図1に示すように、固定側部材20に対し、少なくとも一部がリテーナ21の凹部21a内に収容される閉位置(図1の実線の状態)と、閉位置から車室内に移動した開位置(図1の二点鎖線の状態)とに、リテーナ21に回動可能に支持される。
【0017】
可動側部材30は、図2に示すように、本体31と、本体31に設けられる可動側ロック32と、本体31に設けられる可動側ギア33と、本体31に設けられる回動軸34と、を備える。可動側部材30は、少なくとも本体31を備えており、本体31に設けられる部材も含む。
【0018】
本体31は、たとえば樹脂製である。本体31は、小物類を収納可能な収納部31aを備える。本体31は、図示略の付勢バネによりリテーナ21に対し開方向に付勢されている。
【0019】
可動側ロック32は、公知のハートカムと該ハートカムに係脱可能なロックピンの他方からなり、本体31が閉位置にあるときロック22に係合可能とされている。可動側ロック32がロック22に係合することで、図示略の付勢バネの付勢力に抗して本体31をリテーナ21に対して閉位置にロック(保持)することができる。
【0020】
可動側ギア33は、ギア23に噛合する。可動側ギア33とギア23の一方は、可動側部材30の固定側部材20に対する回動速度を緩やかにするためのダンパギアである。
【0021】
回動軸34は、固定側部材20の軸受24に回動可能に支持される。回動軸34が軸受24に回動可能に支持されるため、可動側部材30はリテーナ21に回動可能に支持される。
【0022】
装置10には、図2に示すように、可動側部材30が固定側部材20に対して動いたときの固定側部材20と可動側部材30との摺接部50に注入器60(ディスペンサー)(図3参照)を用いて潤滑剤40が塗布される。なお、図2において塗布された潤滑剤40は斜線にて示してある。
【0023】
潤滑剤(グリス)40は、粘性流体である。潤滑剤40は、可動側部材30が固定側部材20に対して動いたときの固定側部材20と可動側部材30との摩擦の低減、消音のために摺接部50に塗布される。潤滑剤40は、装置10をアッセンブリ化またはサブアッセンブリ化した状態で、摺接部50に塗布される。
【0024】
摺接部50は、可動側部材30が固定側部材20に対して動いたときに、固定側部材20と可動側部材30とが摺動および/または接触(当接)し合う部位である。なお、具体的には、摺接部50は、リテーナ21と本体31との摺動部、ロック22と可動側ロック32からなるロック部52、ギア23と可動側ギア33からなるギア部53、軸受24と回動軸34からなる回動軸部54などである。
【0025】
注入器60は、図3に示すように、注入器60の内部の潤滑剤40を、ノズル61から吐出し、装置10に注入して摺接部50に塗布するために設けられる。
【0026】
前述した固定側部材20と可動側部材30の少なくとも一方には、潤滑剤40を注入し摺接部50に塗布するための注入口25が設けられている。なお、本発明実施例および図示例では、固定側部材20に注入口25が設けられている場合を説明する。
前述した固定側部材20のリテーナ21には、注入器60のノズル61の差し込み口であり、注入器60で潤滑剤40を注入し摺接部50に塗布するための注入口25が設けられている。
注入口25は、摺接部50の近傍に設けられている。注入口25は、リテーナ21の外壁を貫通して設けられており、リテーナ21の外側空間と凹部21a内空間とを連通する。潤滑剤40は、注入口25から凹部21a内空間に注入器60を用いて注入される。
【0027】
注入口25は、図4に示すように、注入器60のノズル61の径と同等径の同等径部25aと、同等径部25aより潤滑剤40の注入方向奥側(リテーナ21の内側、凹部21a側)に位置し同等径部25aより小径の小径部25bと、を備えている(図4では、ノズル61の径をd、同等径部25aの径をc、小径部25bの径をbで示している)。
注入口25は、さらに、同等径部25aより潤滑剤40の注入方向手前側(リテーナ21の外側、凹部21aと反対側)に位置し潤滑剤40の注入方向手前側にいくにつれて拡径する拡大径部25cを備えている。
【0028】
また、前述した可動側部材30の回動軸34には、図4、図5に示すように、回動軸34の軸方向に延びる溝34aまたは図示略のリブが設けられている。溝34aまたは図示略のリブは、溝34aまたは図示略のリブの内側に注入された潤滑剤40が溝34aまたは図示略のリブの外側に流出することを抑制するために設けられている。
【0029】
つぎに、本発明実施例の作用を説明する。
(a)固定側部材20が潤滑剤40を注入し摺接部50に塗布するための注入口25を備えているため、注入口25から潤滑剤40を注入するだけで摺接部50に潤滑剤40を塗布できる。そのため、注入口が設けられていない場合(従来)に比べて、手作業による潤滑剤40の塗布位置のバラツキを抑制できる。
(b)注入口25が、注入器60のノズル61の径と同等径の同等径部25aを備えているため、注入口25から潤滑剤40を注入する際に注入器60のノズル61の先端部に潤滑剤40が付着したりノズル61の周囲から潤滑剤40がはみ出したりこぼれたりタレたりすることを抑制できる。その結果、潤滑剤40を摺接部50に塗布した後に潤滑剤40をふき取るさらなる作業を不要にできる。
(c)注入口25が、同等径部25aより潤滑剤40の注入方向奥側に位置し同等径部25aより小径の小径部25bを備えているため、小径部25bの径を変更することで潤滑剤40の注入時の抵抗を変えることができる。そのため、潤滑剤40の塗布量を調整することができ、潤滑剤40の塗布量のバラツキを従来に比べて抑制できる。
(d)注入口25が、同等径部25aより潤滑剤40の注入方向手前側に位置し潤滑剤40の注入方向手前側にいくにつれて拡径する拡大径部25cを備えているため、拡大径部25cが設けられていない場合に比べて、注入器60のノズル61を容易に注入口25に差し込むことができる。
(e)注入口25がリテーナ21の外壁を貫通して設けられており、潤滑剤40が装置10をアッセンブリ化またはサブアッセンブリ化した状態で摺接部50に塗布されるため、装置10の外側から内側の摺接部50へ直接潤滑剤40を塗布できる。そのため、潤滑剤40に作業者が触れることを抑制でき、装置10の汚れを抑制できる。
(f)可動側部材30の回動軸34に、回動軸34の軸方向に延びる溝34aまたは図示略のリブが設けられているため、溝34aまたは図示略のリブの幅を変更することで潤滑剤40の塗布範囲を調整することができ、潤滑剤40の塗布範囲のバラツキを抑制できる。
【0030】
なお、本発明実施例では、装置10が、可動側部材30の本体31が固定側部材20のリテーナ21に回動可能とされており固定側部材20のリテーナ21に注入口25が設けられている場合を例にとって説明したが、以下の様であってもよい。
【0031】
[本発明実施例の変形例](図6〜図9)
図6〜図9に示す本実施例の変形例に示すように、装置10が、可動側部材30の本体31が固定側部材20のリテーナ21に往復直線動可能とされており、摺接部50がリテーナ21と本体31との摺動部51を含み、固定側部材20のリテーナ21に注入口25が設けられているものであってもよい。
【0032】
[本発明実施例の更なる変形例](図10)
図10に示す本実施例の更なる変形例に示すように、可動側部材30の本体31が固定側部材20のリテーナ21に回動可能とされており、注入口25が可動側部材30の本体31に設けられるものであってもよい。
【符号の説明】
【0033】
10 車両用内装装置
20 固定側部材
21 リテーナ
21a 凹部
22 ロック
23 ギア
24 軸受
25 注入口
25a 同等径部
25b 小径部
25c 拡大径部
30 可動側部材
31 本体
31a 収納部
32 可動側ロック
33 可動側ギア
34 回動軸、
40 潤滑剤
50,51,52,53 摺接部
60 注入器
61 注入器のノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側部材と該固定側部材に対して可動な可動側部材とを有し、前記可動側部材が前記固定側部材に対して動いたときの前記固定側部材と前記可動側部材との摺接部に注入器を用いて潤滑剤が塗布される車両用内装装置であって、
前記固定側部材と前記可動側部材の少なくとも一方は、前記潤滑剤を注入し前記摺接部に塗布するための注入口を備えており、
前記注入口は、前記注入器のノズルの径と同等径の同等径部と、該同等径部より前記潤滑剤の注入方向奥側に位置し該同等径部より小径の小径部と、を備えている、車両用内装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−918(P2011−918A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143929(P2009−143929)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(309018445)明和工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】