説明

車両用制動制御装置

【課題】本発明は、精度良くブレーキペダルストロークセンサのゼロ値を示す基準値の補正を行うことのできる車両用制動制御装置を提供する。
【解決手段】初期学習許可判定にて初期学習開始条件が成立し、更にイグニッションスイッチがON後(i)に初期学習開始条件が成立すると初期学習を開始する(ii)。初期学習を継続し、ブレーキペダルストロークセンサの基準値がブレーキペダルのゼロ点の初期学習終了範囲内となるまで初期学習を行う(iii)。また、ブレーキペダルストロークセンサの基準値が初期学習終了範囲内で初期学習時間維持されると初期学習を終了する(iv)。正規学習開始条件が成立し、正規学習開始条件が成立すると正規学習を行う(v)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用制動制御装置に係り、ブレーキペダルストロークセンサの基準値学習補正に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車及びハイブリット自動車の車両用制動制御装置ではブレーキペダルの操作量に応じて電気モータを発電機に切り替え、適切な回生ブレーキを発生させるために、ブレーキペダルの操作量を電気信号に変換するブレーキペダルストロークセンサを有している。
しかしながら、ブレーキペダルストロークセンサをブレーキペダルへ取り付ける際に取付誤差が生じると、例えば、実際はブレーキペダルを操作していないにも係わらずブレーキペダルを操作しているような電気信号がブレーキペダルストロークセンサから出力されたりして、回生ブレーキの発生に狂いが生じる場合がある。
【0003】
このようなことから、エンジン停止状態でブレーキ倍力装置の負圧が判定値以下である時にブレーキペダルストロークセンサのゼロ値を示す基準値を補正する車両用制動制御装置が開発されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−61939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、上記特許文献1の車両用制動制御装置では、エンジン停止状態でブレーキ倍力装置の負圧が判定値以下である場合にブレーキペダルストロークセンサの基準値の補正を行っている。
しかしながら、上記特許文献1のように基準値の補正を行なうものでは、ブレーキペダルを微量に操作を行った状態においてエンジン停止状態でブレーキ倍力装置の負圧が判定値以下となると、ブレーキペダルが微量に操作を行われた状態を基準値、即ちゼロ値と補正されてしまう。
【0006】
従って、ブレーキペダルストロークセンサの基準値を正常に補正することができず誤補正することになり、ブレーキペダルのゼロ点とブレーキペダルストロークセンサの基準値とがずれて補正されることになり好ましいことでない。
本発明は、この様な問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、素早く且つ精度良くブレーキペダルストロークセンサの基準値の補正を行うことのできる車両用制動制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1の車両用制動制御装置は、ドライバによるブレーキペダルの操作量を検出する操作量検出手段と、前記ブレーキペダルの未操作状態を検出する操作状態検出手段と、前記操作量検出手段のゼロ値を示す基準値を前記ブレーキペダルのゼロ点に近づけるように補正する基準値補正手段とを備え、前記基準値補正手段は、前記操作状態検出手段により検出される未操作状態が第1の所定時間保持されれば、前記操作量検出手段の基準値を前記ブレーキペダルのゼロ点を含む第1の所定範囲内となるように所定補正量ずつ補正する初期学習と、前記初期学習にて補正された前記操作量検出手段の基準値が前記第1の所定範囲内で第2の所定時間保持されると前記初期学習を終了し、その後、前記操作状態検出手段により検出される未操作状態が第3の所定時間保持されると前記所定補正量よりも小さい補正量で前記操作量検出手段の基準値を補正する正規学習を行うことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2の車両用制動制御装置では、請求項1において、前記操作状態検出手段は、前記車両のブレーキを作動させるブレーキ油の油圧を検出する油圧検出手段と、前記ブレーキペダルの操作の有無を検出する操作検出手段とを有し、前記操作量検出手段にて検出される前記ブレーキペダル操作量の時間変化率が所定時間変化率以下の際に、前記油圧検出手段にて検出される前記油圧が所定油圧以下で、且つ前記操作検出手段にて検出されるブレーキペダルの操作が無い状態を未操作状態として検出することを特徴とする。
【0009】
また、請求項3の車両用制動制御装置では、請求項2において、前記初期学習を終了し、その後、車速が所定車速以上及び加速度が所定加速度以上である状態が第3の所定時間保持されると、前記正規学習を行うことを特徴とする。
また、請求項4の車両用制動制御装置では、請求項1乃至3のいずれか1項において、前記基準値補正手段は、前記車両の始動を検出してから第4の所定時間経過後に前記第1の所定時間を計測し始めることを特徴とする。
【0010】
また、請求項5の車両用制動制御装置では、請求項1乃至4のいずれか1項において、前記基準値補正手段は、前記正規学習時に前記操作量検出手段の基準値が前記ブレーキペダルのゼロ点を含む第2の所定範囲内になければ、前記初期学習を再度実施することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、操作状態検出手段により検出される未操作状態が第1の所定時間保持されれば、操作量検出手段の基準値をブレーキペダルのゼロ点を含む第1の所定範囲内となるように所定補正量ずつ補正する初期学習と、初期学習にて補正された操作量検出手段の基準値が第1の所定範囲内で第2の所定時間保持されると初期学習を終了し、その後、操作状態検出手段により検出される未操作状態が第3の所定時間保持されると所定補正量よりも小さい補正量で操作量検出手段の基準値を補正する正規学習を行うようにしている。
【0012】
このように、操作量検出手段の基準値とブレーキペダルのゼロ点との差が大きい場合には補正量が大きな初期学習で補正を行い、また操作量検出手段の基準値とブレーキペダルのゼロ点との差が小さい場合には初期学習よりも補正量の小さな正規学習で補正を行うことができるので、操作量検出手段の基準値とブレーキペダルのゼロ点との差に応じて素早く且つ精度良く操作量検出手段の基準値をブレーキペダルのゼロ点に合わせるように補正することができる。
【0013】
また、請求項2によれば、操作状態検出手段は、車両のブレーキを作動させるブレーキ油の油圧を検出する油圧検出手段と、ブレーキペダルの操作の有無を検出する操作検出手段とを有し、操作量検出手段にて検出されるブレーキペダル操作量の時間変化率が所定時間変化率以下の際に、油圧検出手段にて検出される油圧が所定油圧以下で、且つ操作検出手段にて検出されるブレーキペダルの操作が無い状態を未操作状態として検出するようにしているので、ブレーキペダルの未操作状態をより精度良く検出することができる。
【0014】
また、請求項3によれば、初期学習を終了し、その後、車速が所定車速以上及び加速度が所定加速度以上である状態が第3の所定時間保持されると、正規学習を行うようにしている。即ちドライバが車両を加速させるためにアクセルペダルを操作中でありブレーキペダルから足を放している状態であるので、確実にブレーキペダルの未操作状態を検出することができ、操作量検出手段の基準値を精度良く補正することができる。
【0015】
また、請求項4の発明によれば、始動をトリガーとして基準値補正を行うので、常に操作量検出手段の基準値を良好な状態に保つことができる。
また、請求項5の発明によれば、正規学習時に操作量検出手段の基準値がブレーキペダルのゼロ点の第2の所定範囲内になければ、補正量の大きい初期学習を再度実施するようにしているので、操作量検出手段の基準値を精度良く迅速に補正することができる。仮に、操作量検出手段の補正中にブレーキペダルを油圧検出手段及び操作検出手段が反応しないような微少な操作量で操作したような場合に誤補正が行われたとしても補正量の大きな初期学習によって再度補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用制動制御装置が適用された車両の概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る初期学習許可判定の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態に係る正規学習許可判定の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態に係る車両用制動制御装置のブレーキペダルストロークセンサの基準値補正制御での制御ルーチンを示すフローチャートの一部である。
【図5】本発明の実施形態に係る車両用制動制御装置のブレーキペダルストロークセンサの基準値補正制御での制御ルーチンを示すフローチャートの残部の一部である。
【図6】本発明の実施形態に係る車両用制動制御装置のブレーキペダルストロークセンサの基準値補正制御での制御ルーチンを示すフローチャートの残部である。
【図7】本発明の実施形態に係るブレーキペダルストロークセンサの基準値の補正制御について時系列で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両用制動制御装置が適用された車両の概略構成図であり、以下、車両の制動装置の構成を説明する。
本実施形態の車両1は、サービスブレーキとして前輪41R,41Lに液圧式ディスクブレーキシステム31と後輪42R,42Lに液圧式ドラムインディスクブレーキシステム32を備えた4輪乗用自動車である。
【0018】
図1に示すように、車両1の制動装置は、マスタシリンダユニット10、ハイドロリックユニット20、液圧式ディスクブレーキシステム31R,31L、液圧式ドラムインディスクブレーキシステム32R,32L、各種センサ、電子コントロールユニット(基準値補正手段、以下ECUという)50及び図示しないパーキングブレーキシステムから構成される。
【0019】
マスタシリンダユニット10、ハイドロリックユニット20、液圧式ディスクブレーキシステム31R,31L、液圧式ドラムインディスクブレーキシステム32R,32L、は、ブレーキ配管33にてそれぞれ接続され、当該ブレーキ配管33内は、作動油としてのブレーキフルード(ブレーキ油)が満たされている。
マスタシリンダユニット10は、ブレーキペダル11、ブレーキスイッチ(操作状態検出手段)12、ブレーキブースタ13、マスタシリンダ14及びブレーキペダルストロークセンサ(操作量検出手段)15からなる一般的なものであり、詳細な構造の説明は省略する。
【0020】
ブレーキスイッチ12は、ブレーキペダル11の操作の有無を検出し、ON或いはOFFの電気信号を出力するものである。また、ブレーキペダルストロークセンサ15は、ドライバにより操作されるブレーキペダル11の操作量を電気信号に変換し出力するものである。
ハイドロリックユニット20は、マスタシリンダ14から押し出されたブレーキフルードを前後左右輪41R,41L,42R,42Lに分配するものである。また、ハイドロリックユニット20には、ブレーキ作動時のブレーキフルード圧(ブレーキ油圧)を検出するブレーキ圧センサ(油圧検出手段)21が備えられている。
【0021】
液圧式ドラムインディスクブレーキシステム32R、32Lは、図示しない液圧式ディスクブレーキユニットの内側に図示しない液圧式ドラムブレーキユニットを備える。なお、液圧式ドラムブレーキユニットは、図示しない上記パーキングブレーキシステムのブレーキとしても作動するものである。
これより、ブレーキフルードは、ブレーキペダル11操作時にマスタシリンダ14より押し出され、ハイドロリックユニット20により前輪41R,41Lは液圧式ディスクブレーキシステム31R、31Lへ、後輪42R,42Lは液圧式ドラムインディスクブレーキシステム32R、32Lに分配される。
【0022】
車輪速センサ(車速検出手段、加速度検出手段)44a,44b,44c,44dは、前輪41R,41L及び後輪42R,42Lの近傍に取り付けられ、それぞれの車輪の回転速度を検出するものである。
イグニッションスイッチ43は、車両1に取り付けられ車両1を始動させるためのスイッチである。
【0023】
ECU50は、車両1の総合的な制御を行うための制御装置であり、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央演算処理装置(CPU)及びタイマ等を含んで構成される。
ECU50の入力側には、上記ブレーキスイッチ12、ブレーキペダルストロークセンサ15、ブレーキ圧センサ21、イグニッションスイッチ43及び車輪速センサ44a,44b,44c,44dが接続されており、これらのセンサ類からの検出情報が入力される。
【0024】
一方、ECU50の出力側には、図示しない車載装置が接続されている。
ECU50は、車輪速センサ44a,44b,44c,44dからの検出情報、予め記憶された前輪41R,41L及び後輪42R,42Lの外径及び内蔵するタイマに基づいて、車両1の車速及び加速度を算出するものである。また、各種センサ類からの検出情報に基づいて、ブレーキペダルストロークセンサ15のゼロ値を示す基準値を補正するものである。
【0025】
次に、ブレーキペダルストロークセンサ15の基準値補正制御について説明する。
図2は、ECU50が実行するブレーキペダルストロークセンサ15の基準値補正制御における初期学習許可判定の制御ルーチンを示すフローチャートである。また、図3は、正規学習許可判定の制御ルーチンを示すフローチャートである。また、図4は本発明の実施形態に係る車両用制動制御装置のブレーキペダルストロークセンサ15の基準値補正制御での制御ルーチンを示すフローチャートの一部であり、図5は基準値補正制御での制御ルーチンを示すフローチャートの残部の一部であり、図6は基準値補正制御での制御ルーチンを示すフローチャートの残部である。また、図7は、ブレーキペダルストロークセンサ15の基準値の補正制御について時系列で示す図であり、下から順にブレーキストローク量、イグニッションスイッチ43の作動の有無を示し、太実線がブレーキペダルストロークセンサ15の基準値を、太一点鎖線がブレーキペダル11のゼロ点を示している。
【0026】
図2から図6に示すように、ブレーキペダルストロークセンサ15の基準値補正制御は、詳しくは大きく分けて初期学習許可判定、正規学習許可判定、基準値補正処理からなる。
まずは、図2に示すように、ブレーキペダルストロークセンサ15の基準値補正制御における各種センサからの出力に基づいて、ブレーキペダルストロークセンサ15の基準値補正の初期学習を開始する条件の成立を判定し、成立すれば初期学習許可フラグをONとする初期学習許可判定について説明する。
【0027】
ステップS10では、ブレーキペダルストロークセンサ15により検出されるブレーキペダル11のストローク量とECU50に内蔵されるタイマにより計時される時間とに基づいて、ブレーキペダルストロークセンサ15の時間変化率を算出し、当該ブレーキペダルストロークセンサ15の変化率が所定時間変化率(例えば、2.5mm/sec)以下か否かを判別する。判別結果が真(Yes)でブレーキペダルストロークセンサ15の時間変化率が所定時間変化率以下であれば、ステップS12に進む。判別結果が偽(No)でブレーキペダルストロークセンサ15の時間変化率が所定時間変化率より大きければ、ステップS18に進み、初期学習許可フラグをOFFとし、本ルーチンをリターンする。
【0028】
ステップS12では、ブレーキ圧センサ21で検出されるブレーキフルード圧が初期学習判定油圧(所定油圧、例えば、1.0MPa)以下か否かを判別する。判別結果が真(Yes)でブレーキフルード圧が初期学習判定油圧以下であれば、ステップS14に進む。判別結果が偽(No)でブレーキフルード圧が初期学習判定油圧より大きければ、ステップS18に進み、初期学習許可フラグをOFFとし、本ルーチンをリターンする。
【0029】
ステップS14では、ブレーキスイッチ12からの出力信号がOFFか否かを判別する。即ち、ドライバによりブレーキペダル11が踏み込まれているか(操作有り)、いないか(操作無し)を判別する。判別結果が真(Yes)でブレーキスイッチ12からの出力信号がOFFであり、ドライバによりブレーキペダル11が踏み込まれていなければ(操作無し)、ステップS16に進む。判別結果が偽(No)でブレーキスイッチ12からの出力信号がOFFでなければ、即ちドライバによりブレーキペダル11が踏み込まれていれば(操作有り)、ステップS18に進み、初期学習許可フラグをOFFとし、本ルーチンをリターンする。即ち、ステップS12とステップS14とで、ブレーキペダル11の未操作状態を検出する。
【0030】
ステップS16では、初期学習許可フラグをONにする。そして、そして、本ルーチンをリターンする。
次に図3に示すように、ブレーキペダルストロークセンサ15の基準値補正制御における各種センサからの出力に基づいて、ブレーキペダルストロークセンサ15の基準値補正の正規学習を開始する条件の成立を判定し、成立すれば正規学習許可フラグをONとする正規学習許可判定について説明する。
【0031】
ステップS20では、ブレーキペダルストロークセンサ15により検出されるブレーキペダル11のストローク量とECU50に内蔵されるタイマによる計時とに基づいて、ブレーキペダルストロークセンサ15の時間変化率を算出し、当該ブレーキペダルストロークセンサ15の時間変化率が所定時間変化率(例えば、2.5mm/sec)以下か否かを判別する。判別結果が真(Yes)でブレーキペダルストロークセンサ15の時間変化率が所定時間変化率以下であれば、ステップS22に進む。判別結果が偽(No)でブレーキペダルストロークセンサ15の時間変化率が所定時間変化率より大きければ、ステップS32に進み、正規学習許可フラグをOFFとし、本ルーチンをリターンする。
【0032】
ステップS22では、ブレーキ圧センサ21で検出されるブレーキフルード圧が正規学習判定油圧(例えば、0.5MPa)以下か否かを判別する。判別結果が真(Yes)でブレーキフルード圧が正規習判定油圧以下であれば、ステップS24に進む。正規結果が偽(No)でブレーキフルード圧が正規学習判定油圧より大きければ、ステップS32に進み、正規学習許可フラグをOFFとし、本ルーチンをリターンする。
【0033】
ステップS24では、ブレーキスイッチ12からの出力信号がOFFか否かを判別する。即ち、ドライバによりブレーキペダル11が踏み込まれているか(操作有り)、いないか(操作無し)を判別する。判別結果が真(Yes)でブレーキスイッチ12からの出力信号がOFFであり、ドライバによりブレーキペダル11が踏み込まれていなければ(操作無し)、ステップS26に進む。判別結果が偽(No)でブレーキスイッチ12からの出力信号がOFFでなければ、即ちドライバによりブレーキペダル11が踏み込まれていれば(操作有り)、ステップS32に進み、正規学習許可フラグをOFFとし、本ルーチンをリターンする。即ち、ステップS12とステップS14と同様にステップS22とステップS24とで、ブレーキペダル11の未操作状態を検出する。
【0034】
ステップS26では、車輪速センサ44a,44b,44c,44dより検出されるそれぞれの車輪速とそれぞれに対応した車輪の外周長とに基づき、それぞれの車輪速に対応したそれぞれの車速を算出し、更にそれぞれの車速の平均値を算出し車両1の車速とする。また、算出された車速が所定車速以上(例えば、6.0km/h)か否かを判別する。判別結果が真(Yes)で車速が所定車速以上であれば、ステップS28に進む。判別結果が偽(No)で車速が所定車速未満であれば、ステップS32に進み、正規学習許可フラグをOFFとし、本ルーチンをリターンする。
【0035】
ステップS28では、算出された車速を時間で微分し、車両1の加速度を算出する。また、算出された加速度が所定加速度(例えば、0.8m/sec)以上か否かを判別する。判別結果が真(Yes)で加速度が所定加速度以上であれば、ステップS30に進む。判別結果が偽(No)で加速度が所定加速度未満であれば、ステップS32に進み、正規学習許可フラグをOFFとし、本ルーチンをリターンする。
【0036】
ステップS30では、正規学習許可フラグをONにする。そして、本ルーチンをリターンする。
次に図4、図5及び図6に基づき、ブレーキペダルストロークセンサ15の基準値補正処理について説明する。
図4及び図5に示すように、ステップS40では、イグニッションスイッチ43をON後、基準値補正開始判定時間(第4の所定時間、例えば4sec)を経過したか否かを判別する。判別結果が真(Yes)で基準値補正開始判定時間を経過していれば、ステップS42に進む。判別結果が偽(No)で基準値補正開始判定時間を経過していなければ、ステップS40へ戻り再度ステップS40の処理を行う。
【0037】
ステップS42では、初期学習完了フラグがONか否かを判別する。判別結果が真(Yes)で初期学習完了フラグがONであれば、ステップS80に進む。判別結果が偽(No)で初期学習完了フラグがOFFであれば、ステップS44に進む。
ステップS44では、カウンタnを0にリセットする。そして、ステップS46に進む。
【0038】
ステップS46では、初期学習許可フラグがONか否かを判別する。判別結果が真(Yes)で初期学習許可フラグがONであれば、ステップS48に進む。判別結果が偽(No)で初期学習許可フラグがOFFであれば、ステップS44へ戻り再度ステップS44の処理を行う。
ステップS48では、カウンタnに1を加算する。そして、ステップS50に進む。
【0039】
ステップS50では、カウンタnが初期学習開始判定時間(第1の所定時間、例えば1sec)以上か否か、即ち初期学習許可フラグがONである状態で初期学習開始判定時間経過したか否かを判別する。判別結果が真(Yes)でカウンタnが初期学習開始判定時間経過していれば、ステップS52に進む。判別結果が偽(No)でカウンタnが初期学習開始判定時間経過していなければ、ステップS46へ戻り再度ステップS46の処理を行う。
【0040】
ステップS52では、ブレーキペダルストロークセンサ15の基準値がブレーキペダル11のゼロ点の初期学習終了範囲(第1の所定範囲、例えば±1mm)内か否かを判別する。判別結果が真(Yes)でブレーキペダルストロークセンサ15の基準値がブレーキペダル11のゼロ点の初期学習終了範囲内であれば、ステップS54に進む。判別結果が偽(No)でブレーキペダルストロークセンサ15の基準値がブレーキペダル11のゼロ点の初期学習終了範囲内でなければ、ステップS64に進む。
【0041】
ステップS54では、カウンタnを0にリセットする。そして、ステップS56に進む。
ステップS56では、初期学習許可フラグがONか否かを判別する。判別結果が真(Yes)で初期学習許可フラグがONであれば、ステップS58に進む。判別結果が偽(No)で初期学習許可フラグがOFFであれば、ステップS44へ戻り再度ステップS44の処理を行う。
【0042】
ステップS58では、カウンタnに1を加算する。そして、ステップS60に進む。 ステップS60では、カウンタnが初期学習終了判定時間(第2の所定時間、例えば3sec)以上か否か、即ちブレーキペダルストロークセンサ15の基準値がブレーキペダル11のゼロ点の初期学習終了範囲内であって、且つ初期学習許可フラグがONである状態で初期学習開始判定時間経過したか否かを判別する。判別結果が真(Yes)でカウンタnが初期学習終了判定時間経過していれば、ステップS62に進む。判別結果が偽(No)でカウンタnが初期学習終了判定時間経過していなければ、ステップS56へ戻り再度ステップS56の処理を行う。
【0043】
ステップS62では、初期学習完了フラグをONにする。そして、ステップS42へ戻り、再度ステップS42の処理を行う。
次に、ステップS64では、ステップS52でブレーキペダルストロークセンサ15の基準値がブレーキペダル11のゼロ点に対して初期学習終了範囲内であると判別されると、ブレーキペダルストロークセンサ15の基準値を初期学習補正量(所定補正量、例えば、1mm)だけ補正する。そして、ステップS66に進む。
【0044】
ステップS66では、カウンタnを0にリセットする。そして、ステップS68に進む。
ステップS68では、初期学習許可フラグがONか否かを判別する。判別結果が真(Yes)で初期学習許可フラグがONであれば、ステップS70に進む。判別結果が偽(No)で初期学習許可フラグがOFFであれば、ステップS44へ戻り再度ステップS44の処理を行う。
【0045】
ステップS70では、カウンタnに1を加算する。そして、ステップS72に進む。
ステップS72では、カウンタnが初期学習補正時間(例えば50msec)以上か否か、即ちブレーキストロークセンサ15の基準値を補正後に初期学習補正時間経過したか否かを判別する。判別結果が真(Yes)でカウンタnが初期学習補正時間経過していれば、ステップS42へ戻り再度ステップS42の処理を行う。判別結果が偽(No)でカウンタnが初期学習補正時間経過していなければ、ステップS68へ戻り再度ステップS68の処理を行う。
【0046】
次に、図6に示すように、ステップS80では、カウンタnを0にリセットする。そして、ステップS82に進む。
ステップS82では、正規学習許可フラグがONか否かを判別する。判別結果が真(Yes)で正規学習許可フラグがONであれば、ステップS84に進む。判別結果が偽(No)で正規学習許可フラグがOFFであれば、ステップS80へ戻り再度ステップS80の処理を行う。
【0047】
ステップS84では、カウンタnに1を加算する。そして、ステップS86に進む。
ステップS86では、カウンタnが正規学習開始判定時間(第3の所定時間、例えば1sec)以上か否か、即ち正規学習許可フラグONである状態で正規学習開始判定時間経過したか否かを判別する。判別結果が真(Yes)でカウンタnが正規学習開始判定時間経過していれば、ステップS88に進む。判別結果が偽(No)でカウンタnが正規学習開始判定時間経過していなければ、ステップS82へ戻り再度ステップS82の処理を行う。
【0048】
ステップS88では、ブレーキペダルストロークセンサ15の基準値がブレーキペダル11のゼロ点の再初期学習不要範囲(第2の所定範囲、例えば±5mm)内か否かを判別する。判別結果が真(Yes)でブレーキペダルストロークセンサ15の基準値がブレーキペダル11のゼロ点の再初期学習不要範囲内であれば、ステップS90に進む。判別結果が偽(No)でブレーキペダルストロークセンサ15の基準値がブレーキペダル11のゼロ点の再初期学習不要範囲内でなければ、ステップS94に進み、初期学習完了フラグをOFFとして、そして、本ルーチンをリターンする。
【0049】
ステップS90では、ブレーキペダルストロークセンサ15の基準値を初期学習補正量より少ない補正量である正規学習補正量(所定補正量よりも小さい補正量、例えば、0.2mm)だけ補正する。そして、ステップS92に進む。
ステップS92では、正規学習許可フラグがOFFか否かを判別する。判別結果が真(Yes)で正規学習許可フラグがOFFであれば、本ルーチンをリターンする。判別結果が偽(No)で正規学習許可フラグがONであれば、ステップS92へ戻り再度ステップS92の処理を行う。
【0050】
以上のように、本発明の実施形態に係る車両用制動制御装置によれば、図6に示すようにECU50は、初期学習許可判定にて初期学習を開始する条件が成立し、且つイグニッションスイッチ43がON後(i)に初期学習を開始する条件の成立が基準値補正開始判定時間維持されると、基準値を初期学習補正時間に初期学習補正量ずつ補正する初期学習を開始する(ii)。そして、ブレーキペダルストロークセンサ15の基準値がブレーキペダル11のゼロ点の初期学習終了範囲内となるまで初期学習を行う(iii)。その後、ブレーキペダルストロークセンサ15の基準値が初期学習終了範囲内で初期学習時間維持されると初期学習を終了し正規学習に移行する(iv)。正規学習許可判定にて正規学習を開始する条件が成立し、正規学習を開始する条件の成立が正規学習開始判定時間維持されると、ブレーキペダルストロークセンサ15の基準値を正規学習補正量だけ補正する正規学習を行うようにしている(v)。なお、正規学習は、初期学習が終了し正規学習を開始する条件を満す毎に行われる。また、正規学習を開始後にブレーキペダルストロークセンサ15の基準値がブレーキペダル11のゼロ点の再初期学習不要範囲外であると判定されると再度初期学習を行うようにしている。
【0051】
このように、ブレーキペダル11が未操作状態と判別された場合に、ブレーキペダルストロークセンサ15の基準値がブレーキペダル11のゼロ点の初期学習終了範囲外であれば初期学習でブレーキペダルストロークセンサ15の基準値の補正を行い、ブレーキペダルストロークセンサ15の基準値がブレーキペダルのゼロ点の初期学習終了範囲内であれば正規学習でブレーキペダルストロークセンサ15の基準値の補正を行う。
【0052】
特に、本発明に係る車両用制動制御装置では、ブレーキペダルの未操作状態であり、ブレーキペダルストロークセンサ15の基準値がブレーキペダル11のゼロ点の初期学習終了範囲外では補正量の大きな初期学習で、初期学習終了範囲内では初期学習での補正量よりも補正量の小さい正規学習でブレーキペダルストロークセンサ15の基準値の補正を行っており、ブレーキペダルストロークセンサ15の基準値とブレーキペダル11のゼロ点との差が大きい場合には、補正量を大きくしてブレーキペダル11のゼロ点に素早く近付くようにし、ブレーキペダル11のゼロ点に近付くと補正量を小さくして精度良くブレーキペダル11のゼロ点に合わせるようしているので、素早く且つ精度良くブレーキペダルストロークセンサ15の基準値を補正することができる。
【0053】
また、ブレーキペダル11の操作量の時間変化率が所定時間変化率以下の際に、ブレーキフルード圧、ブレーキペダル11の操作の有無によりブレーキペダル11の未操作状態を判別し、また、ブレーキペダル11の操作量の時間変化率が所定時間変化率以下の際に、ブレーキフルード圧、ブレーキペダル11の操作の有無の未操作状態の判別に加えて、車両1の車速及び車両1の加速度よりブレーキペダル11の状態を判別するようにしている。車両1が所定車速以上であり所定加速度以上で加速をしていればドライバが車両1を加速させるために図示しないアクセルペダルを操作中でありブレーキペダル11から足を放している状態であるので、例えば、ブレーキペダルストロークセンサ15とブレーキ圧センサ21とで、ブレーキペダル11の操作の変化に対しての出力値の応答性が異なるような場合にブレーキペダル11が微量に操作されると、ブレーキペダル11の操作の変化に対してブレーキ圧センサ21の応答性が低いときはブレーキペダル11の微量な操作量に応じた出力値を出力することができずブレーキペダル11が操作されているにも係わらずブレーキペダル11が未操作状態と判別される虞がある。これに対して、本実施形態では上記のように車速及び加速度も含めて判別することで、ブレーキペダルストロークセンサ15の基準値が補正されるような状況でも確実にブレーキペダル11の未操作状態を検出することができ、ブレーキペダルストロークセンサ15の基準値を精度良く補正することができる。
【0054】
また、イグニッションスイッチ43のONにて車両1の始動を検出後のゼロ補正開始判定時間経過後より初期学習を行うようにしており、ブレーキ圧センサ21でのブレーキフルード圧が安定するので、ブレーキペダルストロークセンサ15の基準値を更に精度良く補正することができる。
また、正規学習時にブレーキペダルストロークセンサ15の基準値がブレーキペダル11のゼロ点の再初期学習不要範囲内になければ、初期学習を再度実施するようにしており、例えば、ブレーキペダルストロークセンサ15の補正中にブレーキペダル11をブレーキ圧センサ21及びブレーキペダルストロークセンサ15が反応しないような微少な操作量で操作したような場合に誤補正を行っても再度補正することができるのでブレーキペダルストロークセンサ15の基準値を精度良く補正することができる。
【0055】
以上で発明の実施形態の説明を終えるが、本発明の形態は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記実施形態では、車両1の始動の検出をイグニッションスイッチ43のONで検出するようにしているが、これに限定されるものではなく、図示しないバッテリの電圧をモニタするようにし、所定バッテリ電圧を超えた時に車両1が始動したと検出するようにしても良い。
【符号の説明】
【0056】
1 車両
11 ブレーキペダル
12 ブレーキスイッチ(操作検出手段)
15 ブレーキペダルストロークセンサ(操作量検出手段)
21 ブレーキ圧センサ(油圧検出手段)
42a,42b,42c,42d 車輪速センサ(車速検出手段、加速度検出手段)
43 イグニッションスイッチ
50 ECU(基準値補正手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバによるブレーキペダルの操作量を検出する操作量検出手段と、
前記ブレーキペダルの未操作状態を検出する操作状態検出手段と、
前記操作量検出手段のゼロ値を示す基準値を前記ブレーキペダルのゼロ点に近づけるように補正する基準値補正手段とを備え、
前記基準値補正手段は、
前記操作状態検出手段により検出される未操作状態が第1の所定時間保持されれば、前記操作量検出手段の基準値を前記ブレーキペダルのゼロ点を含む第1の所定範囲内となるように所定補正量ずつ補正する初期学習と、
前記初期学習にて補正された前記操作量検出手段の基準値が前記第1の所定範囲内で第2の所定時間保持されると前記初期学習を終了し、その後、前記操作状態検出手段により検出される未操作状態が第3の所定時間保持されると前記所定補正量よりも小さい補正量で前記操作量検出手段の基準値を補正する正規学習を行うことを特徴とする車両用制動制御装置。
【請求項2】
前記操作状態検出手段は、
前記車両のブレーキを作動させるブレーキ油の油圧を検出する油圧検出手段と、
前記ブレーキペダルの操作の有無を検出する操作検出手段とを有し、
前記操作量検出手段にて検出される前記ブレーキペダル操作量の時間変化率が所定時間変化率以下の際に、前記油圧検出手段にて検出される前記油圧が所定油圧以下で、且つ前記操作検出手段にて検出されるブレーキペダルの操作が無い状態を未操作状態として検出することを特徴とする、請求項1に記載の車両用制動制御装置。
【請求項3】
前記初期学習を終了し、その後、車速が所定車速以上及び加速度が所定加速度以上である状態が第3の所定時間保持されると、前記正規学習を行うことを特徴とする、請求項2に記載の車両用制動制御装置。
【請求項4】
前記基準値補正手段は、前記車両の始動を検出してから第4の所定時間経過後に前記第1の所定時間を計測し始めることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両用制動制御装置。
【請求項5】
前記基準値補正手段は、前記正規学習時に前記操作量検出手段の基準値が前記ブレーキペダルのゼロ点を含む第2の所定範囲内になければ、前記初期学習を再度実施することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車両用制動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−81918(P2012−81918A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231439(P2010−231439)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】