説明

車両用回転電機制御装置

【課題】車両に搭載された発電用の回転電機の過熱を防止しつつ走行用の回転電機の所望の出力を確保する。
【解決手段】車両用回転電機制御装置10は、ハイブリッド車両1の走行駆動力を発生する走行用モータ11と、内燃機関12の動力によって発電する発電用モータ13および該発電用モータ13の通電制御を行なう第2PDU15と、走行用モータ11および発電用モータ13と電気エネルギーの授受を行うバッテリ17と、発電用モータ13の状態と、バッテリ17の状態とに基づいて、バッテリ17の充電量および放電量を制御するMGECU18と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用回転電機制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、パルス幅変調によるインバータによって制御されるモータの鉄損に起因する過熱を防止するために、キャリア周波数とコイル温度とに応じて磁石温度を取得し、コイル温度と磁石温度とに応じてモータの出力制限を行なう制御システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−41869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術に係る制御システムによってシリーズ型のハイブリッド車両の発電用モータを制御すると、この発電用モータに連結された内燃機関の運転状態(例えば、BSFC(正味燃料消費率:Brake Specific Fuel Consumption)が最良となる運転状態など)に応じて発電用モータの温度(例えば、磁石温度)が上昇するときに、過熱状態に到ることを防止するために発電用モータの出力制限が行なわれることになる。
このとき、シリーズ型のハイブリッド車両の走行用モータに対して発電用モータから電力供給を行っている状態であると、発電用モータの出力制限に伴って走行用モータの出力も制限されてしまい、ハイブリッド車両の走行挙動が変化してしまう虞がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、車両に搭載された発電用の回転電機の過熱を防止しつつ走行用の回転電機の所望の出力を確保することが可能な車両用回転電機制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の請求項1に係る車両用回転電機制御装置は、車両の走行駆動力を発生する走行用回転電機(例えば、実施の形態での走行用モータ11)と、内燃機関(例えば、実施の形態での内燃機関12)の動力によって発電する発電用回転電機(例えば、実施の形態での発電用モータ13)と、前記走行用回転電機および前記発電用回転電機と電気エネルギーの授受を行う蓄電装置(例えば、実施の形態でのバッテリ17)と、前記発電用回転電機の状態と、前記蓄電装置の状態とに基づいて、前記蓄電装置の充電量および放電量を制御する制御手段(例えば、実施の形態でのMGECU18)と、を備える。
【0007】
さらに、本発明の請求項2に係る車両用回転電機制御装置は、前記発電用回転電機の通電制御を行なう通電制御手段(例えば、実施の形態での第2PDU15)と、前記発電用回転電機の温度および前記通電制御手段の温度により前記発電用回転電機および前記通電制御手段の運転を許容する上限温度に対する温度余裕度(例えば、実施の形態での磁石余裕温度ΔT1とチップ余裕温度ΔT2との和である発電機余裕温度ΔT)を算出する温度余裕度算出手段(例えば、実施の形態での温度判定部24)とを備え、前記制御手段は、前記温度余裕度に基づいて前記蓄電装置の充電量および放電量を制御する
【0008】
さらに、本発明の請求項3に係る車両用回転電機制御装置は、前記車両の運転状態を検出する運転状態検出手段(例えば、実施の形態での車速センサ32、回転数検出部34、トルク検出部35)と、前記運転状態検出手段により検出された前記運転状態は所定の連続運転可能領域内であるか否かを判定する運転状態判定手段(例えば、実施の形態での主制御部26)と、を備え、前記制御手段は、前記運転状態判定手段により前記運転状態は前記連続運転可能領域外であると判定された場合には、前記発電用回転電機の温度を所定の減磁防止温度以下に維持するように前記蓄電装置の充電量および放電量を制御し、前記運転状態判定手段により前記運転状態は前記連続運転可能領域内であると判定された場合には、前記減磁防止温度にかかわらずに前記蓄電装置の充電量および放電量を制御する。
【0009】
さらに、本発明の請求項4に係る車両用回転電機制御装置では、前記通電制御手段は、前記発電用回転電機の状態と、前記蓄電装置の充電量および放電量とに基づき、前記発電用回転電機の出力を制御する。
【0010】
さらに、本発明の請求項5に係る車両用回転電機制御装置は、前記蓄電装置の残容量を検出する残容量検出手段(例えば、実施の形態でのSOC検出部31)を備え、前記制御手段は、前記残容量が所定値以上の場合には前記蓄電装置の放電量を制御し、前記残容量が前記所定値未満の場合には前記蓄電装置の充電量を制御する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1に係る車両用回転電機制御装置によれば、発電用回転電機および蓄電装置の状態に基づいて蓄電装置の充電量および放電量を制御することから、発電用回転電機の過熱を防止しつつ走行用回転電機の所望の出力を確保することができる。
【0012】
本発明の請求項2に係る車両用回転電機制御装置によれば、温度余裕度(例えば、磁石余裕温度ΔT1とチップ余裕温度ΔT2との和である発電機余裕温度ΔT)に基づいて蓄電装置の充電量および放電量を制御する。これにより、発電用回転電機および通電制御手段の過熱(つまり、上限温度を超えてしまうこと)を的確に防止し、発電用回転電機および通電制御手段の温度が上限温度に至らない範囲内において走行用回転電機および内燃機関および発電用回転電機の運転を柔軟に制御して、運転効率を向上させることができる。
【0013】
本発明の請求項3に係る車両用回転電機制御装置によれば、車両の運転状態が連続運転可能領域外であっても発電用回転電機の減磁が発生することを的確に防止し、車両の運転状態が連続運転可能領域内であれば柔軟な運転制御によって運転効率を向上させることができる。
【0014】
本発明の請求項4に係る車両用回転電機制御装置によれば、発電用回転電機の過熱を防止しつつ適切に出力を制御することができる。
【0015】
本発明の請求項5に係る車両用回転電機制御装置によれば、蓄電装置が過放電あるいは過充電となることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両用回転電機制御装置の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る車両用回転電機制御装置の各PDUMおよびDC/DCコンバータの構成図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る車両用回転電機制御装置のMGECUの構成図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る車両用回転電機制御装置の発電用モータのトルクおよび回転数と発電機磁石温度との対応関係の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るハイブリッド車両の速度(車速)および駆動力に応じた運転領域の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る車両用回転電機制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態に係る車両用回転電機制御装置のバッテリのSOC目標値SOCtarとバッテリの充電が実行される割合を示す運転比率(充電割合)との対応関係の一例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る車両用回転電機制御装置のバッテリの放電モードにおける発電用モータに連結された内燃機関の運転状態の例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る車両用回転電機制御装置のバッテリの充電モードにおける発電用モータに連結された内燃機関の運転状態の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る車両用回転電機制御装置について添付図面を参照しながら説明する。
【0018】
本実施の形態による車両用回転電機制御装置10は、例えば図1に示すハイブリッド車両1に搭載されており、このハイブリッド車両1は、例えば走行用モータ(MOT)11が駆動輪Wに連結され、内燃機関(ENG)12のクランクシャフト12aに発電用モータ(GEN)13が連結されたシリーズ型のハイブリッド車両である。
【0019】
各モータ11,13は、例えば3相のDCブラシレスモータなどであって、各モータ11,13を制御する各パワードライブユニット(PDU)14,15に接続されている。
各PDU14,15は、例えばトランジスタなどのスイッチング素子を複数用いてブリッジ接続してなるブリッジ回路を具備するパルス幅変調(PWM)によるPWMインバータ14a,15aを備えて構成されている。
【0020】
そして、各PDU14,15は、例えばDC/DCコンバータ16を介してバッテリ(BATT)17に接続されている。
DC/DCコンバータ16は、例えばバッテリ(BATT)17の端子間電圧を所定の電圧まで昇圧して各PDU14,15に印加可能であると共に、各PDU14,15の端子間電圧(直流側電圧)を所定の電圧まで降圧してバッテリ17を充電可能である。
【0021】
各PDU14,15に具備されるPWMインバータ14a,15aは、例えば図2に示すように同一の構成を有し、複数のスイッチング素子(例えば、IGBT:Insulated Gate Bipolar mode Transistor)がブリッジ接続されてなる3相(例えば、U相、V相、W相の3相)のブリッジ回路41と、共通の平滑コンデンサ42とを備えて構成されている。
【0022】
ブリッジ回路41は、例えば相毎に対をなすハイ側およびロー側U相トランジスタUH,ULと、ハイ側およびロー側V相トランジスタVH,VLと、ハイ側およびロー側W相トランジスタWH,WLとがブリッジ接続されている。そして、各トランジスタUH,VH,WHはコレクタが正極側の2次側直流側端子P2に接続されてハイサイドアームを構成し、各トランジスタUL,VL,WLはエミッタが負極側の2次側直流側端子N2に接続されてローサイドアームを構成している。
そして、相毎に、ハイサイドアームの各トランジスタUH,VH,WHのエミッタはローサイドアームの各トランジスタUL,VL,WLのコレクタに接続され、各トランジスタUH,UL,VH,VL,WH,WLのコレクタ−エミッタ間には、エミッタからコレクタに向けて順方向となるようにして、各ダイオードDUH,DUL,DVH,DVL,DWH,DWLが接続されている。
また、平滑コンデンサ42は、正極側の2次側直流側端子P2と負極側の2次側直流側端子N2との間に接続されている。
【0023】
そして、各PWMインバータ14a,15aは、MGECU18から出力されてブリッジ回路41の各トランジスタのゲートに入力されるパルス幅変調(PWM)された信号によって駆動される。
例えば走行用モータ11の駆動時などには、第1PDU14のPWMインバータ14aの相毎に対をなす各トランジスタのオン(導通)/オフ(遮断)状態を切り替えることによって、2次側直流側端子P2,N2に印加される直流電力を3相交流電力に変換し、走行用モータ11の3相の巻線(図示略)への通電を順次転流させることで、各相の巻線に交流のU相電流IuおよびV相電流IvおよびW相電流Iwを通電する。一方、例えば走行用モータ11の回生時などには、走行用モータ11から出力される3相交流電力を直流電力に変換して2次側直流側端子P2,N2に印加する。
【0024】
つまり、例えば走行用モータ11の駆動時には、第1PDU14はDC/DCコンバータ16または発電用モータ13の第2PDU15から供給される直流電力を交流電力に変換して、走行用モータ11に供給する。
また、例えば内燃機関12の動力により発電用モータ13が発電する場合には、第2PDU15は発電用モータ13から出力される交流の発電電力を直流電力に変換して、DC/DCコンバータ16を介してバッテリ17を充電または走行用モータ11の第1PDU14に電力供給する。
【0025】
また、例えばハイブリッド車両1の減速時などにおいて駆動輪W側から走行用モータ11側に駆動力が伝達されると、走行用モータ11は発電機として機能していわゆる回生制動力を発生し、車体の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収する。この走行用モータ11の発電時には、第1PDU14は走行用モータ11から出力される交流の発電(回生)電力を直流電力に変換して、DC/DCコンバータ16を介してバッテリ17に充電する。
【0026】
また、DC/DCコンバータ16は、例えばチョッパ型のDC−DCコンバータであって、複数のスイッチング素子(IGBT)が接続されてなるスイッチング回路43と、チョークコイル(リアクトル)44と、平滑コンデンサ45とを備えて構成されている。
【0027】
スイッチング回路43は、例えば、対をなすハイ側スイッチング素子43Hおよびロー側スイッチング素子43Lが接続されて構成されている。
そして、ハイ側スイッチング素子43Hのコレクタは正極側の2次側直流側端子P2に接続され、ロー側スイッチング素子43Lのエミッタは負極側の2次側直流側端子N2に接続され、ハイ側スイッチング素子43Hのエミッタはロー側スイッチング素子43Lのコレクタに接続されている。
そして、ハイ側およびロー側スイッチング素子43H,43L毎のエミッタ−コレクタ間には、エミッタからコレクタに向けて順方向になるようにしてダイオードが接続されている。
【0028】
このスイッチング回路43は、MGECU18から出力されて各スイッチング素子43H,43Lのゲートに入力されるパルス幅変調(PWM)された信号(PWM信号)によって駆動され、ハイ側スイッチング素子43Hがオンかつロー側スイッチング素子43Lがオフになる状態と、ハイ側スイッチング素子43Hがオフかつロー側スイッチング素子43Lがオンになる状態とが、交互に切り替えられる。
【0029】
例えばPWM信号の1周期におけるハイ側スイッチング素子43Hのオン時間THonとロー側スイッチング素子43Lのオン時間TLonとなどにより定義されるスイッチングデューティーduty(=THon/(THon+TLon)など)に応じて、ハイ側およびロー側スイッチング素子43H,43Lのオン/オフが切り替えられる。
なお、ハイ側およびロー側スイッチング素子43H,43Lは、オン/オフの切り換え時に、同時にオンとなることが禁止され、同時にオフとなる適宜のデッドタイムが設けられている。
【0030】
チョークコイル44は、一端がスイッチング回路43のハイ側およびロー側スイッチング素子43H,43Lのエミッタ−コレクタ間に接続され、他端が正極側の1次側直流側端子P1に接続されている。
また、平滑コンデンサ45は、正極側の1次側直流側端子P1と負極側の1次側直流側端子N1との間に接続されている。
なお、負極側の1次側直流側端子N1と2次側直流側端子N2とは互いに接続された共通端子である。
【0031】
このDC−DCコンバータ16は、低電圧側(1次側)から高電圧側(2次側)への昇圧動作時には、先ず、ハイ側スイッチング素子43Hがオフかつロー側スイッチング素子43Lがオンとされ、低電圧側端子43Lから入力される電流によってチョークコイル44が直流励磁されて磁気エネルギーが蓄積される。
次に、ハイ側スイッチング素子43Hがオンかつロー側スイッチング素子43Lがオフとされ、チョークコイル44に流れる電流が遮断されることに起因する磁束の変化を妨げるようにしてチョークコイル44の両端間に起電圧(誘導電圧)が発生する。
これに伴い、チョークコイル44に蓄積された磁気エネルギーによる誘導電圧が低電圧側の入力電圧に上積みされて低電圧側の入力電圧よりも高い昇圧電圧が高電圧側に印加される。
この切替動作に伴って発生する電圧変動は平滑コンデンサ42,45により平滑化され、昇圧電圧が正極側の2次側直流側端子P2から出力される。
【0032】
なお、高電圧側から低電圧側への降圧動作時には、先ず、ハイ側スイッチング素子43Hがオフかつロー側スイッチング素子43Lがオンとされ、高電圧側から入力される電流によってチョークコイル44が直流励磁されて磁気エネルギーが蓄積される。
次に、ハイ側スイッチング素子43Hがオンかつロー側スイッチング素子43Lがオフとされ、チョークコイル44に流れる電流が遮断されることに起因する磁束の変化を妨げるようにしてチョークコイル44の両端間に起電圧(誘導電圧)が発生する。
このチョークコイル44に蓄積された磁気エネルギーによる誘導電圧は、スイッチングデューティーdutyに応じて高電圧側の入力電圧が降圧された降圧電圧となり、降圧電圧が低電圧側(つまり、正極側の1次側直流側端子P1)に印加される。
【0033】
さらに、車両用回転電機制御装置10は、例えばCPU(Central Processing Unit)などの電子回路により構成されるECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)として、ハイブリッド車両1を統合的に制御するMGECU18を備えている。
【0034】
MGECU18は、例えば図3に示すように、メモリ21およびタイマ22と、SOC判定部23と、温度判定部24と、駆動力算出部25と、主制御部26と、動力指示部27とを備えて構成されている。
【0035】
そして、MGECU18には、例えば、バッテリ17の残容量(例えば、満充電状態に対する電気量(あるいは電力量など)の割合を示すSOC:State Of Charge)を検出するSOC検出部31から出力される検出信号が入力されている。
【0036】
さらに、MGECU18には、例えば、ハイブリッド車両1の速度(車速)を検出する車速センサ32から出力される検出信号と、バッテリ17の温度を検出するバッテリ温度センサ33から出力される検出信号と、各モータ11,13の回転数を検出する回転数検出部34から出力される検出信号と、各モータ11,13のトルクを検出するトルク検出部35から出力される検出信号と、が入力されている。
【0037】
さらに、MGECU18には、例えば、第1および第2PDU14,15を構成する各PWMインバータ14a,15aなどのチップ(図示略)の温度を検出する各チップ温度検出部36,37から出力される検出信号と、各モータ11,13を構成する永久磁石(図示略)の温度を検出する各磁石温度検出部38,39から出力される検出信号と、各モータ11,13に通電される相電流を検出する相電流センサ40から出力される検出信号と、が入力されている。
【0038】
SOC判定部23は、例えば、バッテリ17の残容量(SOC)を検出するSOC検出部31から出力される検出信号に基づき、バッテリ17の残容量を取得する。
【0039】
温度判定部24は、例えば、第1および第2PDU14,15を構成するPWMインバータなどのチップ(図示略)の温度を検出する各チップ温度検出部36,37から出力される検出信号と、各モータ11,13を構成する永久磁石(図示略)の温度を検出する各磁石温度検出部38,39から出力される検出信号とに基づき、各温度を取得する。
なお、各磁石温度検出部38,39は、永久磁石の温度を直接的に検出する代わりに、予め実行される試験などによって得られる所定のマップ(例えば、各モータ11,13の冷却媒体の温度と、永久磁石の温度との対応関係を示すマップなど)を参照して、他の温度検出値(例えば、各モータ11,13の冷却媒体の温度の検出結果など)に応じて、永久磁石の温度を取得してもよい。
【0040】
そして、発電用モータ13および第2PDU15の運転を許容する所定の上限温度と発電用モータ13の永久磁石の温度との差を磁石余裕温度ΔT1とし、所定の上限温度と第2PDU15のチップの温度との差をチップ余裕温度ΔT2とし、磁石余裕温度ΔT1とチップ余裕温度ΔT2との和を発電機余裕温度ΔTとする。
【0041】
なお、所定の上限温度を、例えば発電用モータ13に具備される永久磁石(図示略)の過熱による減磁の発生を防止するために必要とされる上限磁石温度とした場合には、発電用モータ13に具備される永久磁石の温度(発電機磁石温度)は、例えば図4に示すように、発電用モータ13のトルクおよび回転数に対して所定の対応関係(例えば、トルクまたは回転数の増大に伴い、増大傾向に変化する関係など)を有する。
これに伴い、温度判定部24は、発電用モータ13のトルクおよび回転数に応じて発電機磁石温度を取得し、所定の上限温度(上限磁石温度)と発電機磁石温度との差を発電機余裕温度ΔTとしてもよい。
【0042】
駆動力算出部25は、各モータ11,13の回転数を検出する回転数検出部34から出力される検出信号と、各モータ11,13のトルクを検出するトルク検出部35から出力される検出信号と、に基づき、各モータ11,13の出力および駆動力を算出する。
【0043】
主制御部26は、メモリ21に記憶されている各種のデータおよびタイマ22による計時を参照しつつ、各種検出部31,34,35および各種センサ32,33の検出結果に基づき、例えば各モータ11,13に通電される相電流を検出する相電流センサ40の検出結果に応じた電流のフィードバック制御などを行ない、各モータ11,13の動作を指示する指令信号を出力する。
【0044】
また、主制御部26は、発電用モータ13の状態とバッテリ17の状態とに基づいて、バッテリ17の充電量および放電量を制御する。
そして、発電用モータ13の状態と、バッテリ17の充電量および放電量とに基づき、発電用モータ13の出力を制御する。
【0045】
例えば、主制御部26は、SOC判定部23により取得されたバッテリ17の残容量(SOC)と、温度判定部24により算出された発電機余裕温度ΔTと、駆動力算出部25により算出された各モータ11,13の出力および駆動力と、バッテリ温度センサ33により検出されるバッテリ17の温度と、車速センサ32により検出されるハイブリッド車両1の速度(車速)とに基づき、バッテリ17に対する充電量および放電量を算出する。
【0046】
なお、主制御部26は、ハイブリッド車両1の運転状態が所定の連続運転可能領域内であるか否かを判定しており、運転状態が連続運転可能領域外であると判定された場合には、発電用モータ13の温度(例えば、発電機磁石温度)を所定の減磁防止温度(例えば、上限磁石温度)以下に維持するようにバッテリ17の充電量および放電量を制御し、運転状態が連続運転可能領域内であると判定された場合には、減磁防止温度にかかわらずにバッテリ17の充電量および放電量を制御する。
【0047】
所定の連続運転可能領域は、例えば図5に示すように、ハイブリッド車両1の速度(車速)および駆動力に応じた運転領域であって、例えば走行用モータ11の運転可能範囲B内に含まれる発電用モータ13の限界出力C(つまり、過熱による永久磁石の減磁などの不具合が発生しない状態での発電用モータ13の最大出力)に相当する領域などとされている。
【0048】
また、主制御部26は、各PDU14,15の直流側電圧(つまり、DC/DCコンバータ16の2次側電圧)に対する目標電圧Vを設定し、この目標電圧Vに応じて各PDU14,15およびDC/DCコンバータ16の電力変換動作を制御する。
【0049】
動力指示部27は、主制御部27から出力される指令信号に応じて第1および第2PDU14,15の電力変換動作を制御するための制御信号を出力し、走行用モータ11の駆動および発電と、内燃機関12の動力による発電用モータ13の発電を制御する。
【0050】
本実施の形態による車両用回転電機制御装置10は上記構成を備えており、次に、車両用回転電機制御装置10の動作、特に、発電用モータ13を制御する処理について説明する。
【0051】
先ず、例えば図6に示すステップS01においては、ハイブリッド車両1の速度(車速)および駆動力に基づき、ハイブリッド車両1の運転状態が所定の連続運転可能領域内であるか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS02に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、後述するステップS03に進む。
そして、ステップS02においては、発電用モータ13の温度(例えば、発電機磁石温度)に対する所定の減磁防止温度(例えば、上限磁石温度)にかかわらずにバッテリ17の充電量および放電量を制御する通常運転制御の処理を実行し、エンドに進む。
【0052】
また、ステップS03においては、発電用モータ13の温度(例えば、発電機磁石温度)を所定の減磁防止温度(例えば、上限磁石温度)以下に維持するようにバッテリ17の充電量および放電量を制御する減磁防止運転制御の処理を実行する。
【0053】
次に、ステップS04においては、各種の出力値を取得する。
次に、ステップS05においては、所定の上限温度(上限磁石温度)と発電機磁石温度との差による発電機余裕温度ΔTを算出する。
次に、ステップS06においては、発電機余裕温度ΔTはゼロ未満であるか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS07に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、後述するステップS08に進む。
【0054】
そして、ステップS07においては、例えば過熱による永久磁石の減磁などの不具合が発生しない状態を維持可能な程度まで発電用モータ13の出力を低下させるパワーセーブ運転制御を実行し、エンドに進む。
このパワーセーブ運転制御においては、例えば発電用モータ13に連結された内燃機関12の運転状態(例えば、BSFC(正味燃料消費率:Brake Specific Fuel Consumptionなど)が最良となる運転状態を維持しつつ、回転数およびトルクを低下させることにより、バッテリ17の残容量(SOC)にかかわらずに発電用モータ13の出力が低下し、走行用モータ11の出力も低下する。
【0055】
また、ステップS08においては、バッテリ17の残容量(SOC)に対する目標値であるSOC目標値SOCtarを算出する。
なお、SOC目標値SOCtarは、例えば、発電機余裕温度ΔTと、バッテリ17の劣化が少ない状態の残容量などからなるSOC収束値Aと、予め実施される試験などにより得られる比例ゲインαとに基づき、例えばSOCtar=A×(1+α×ΔT)などにより算出される。
【0056】
なお、バッテリ17は、SOC目標値SOCtarに応じて充電あるいは放電が制御され、例えば充電が実行される割合を示す運転比率(充電割合)と、SOC目標値SOCtarとの対応関係では、例えば図7に示すように、SOC目標値SOCtarが所定のロー側閾値(例えば、25%)以下であれば充電割合が100%とされ、SOC目標値SOCtarが所定のハイ側閾値(例えば、75%)以上であれば充電割合が0%とされ、SOC目標値SOCtarが所定のロー側閾値からハイ側閾値に増大することに伴い、充電割合が100%から0%に低下傾向に変化するように設定されている。
【0057】
次に、ステップS09においては、SOC検出部31により検出されたバッテリ17の残容量(SOC)が、SOC目標値SOCtarよりも大きいか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS10に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、後述するステップS12に進む。
【0058】
そして、ステップS10においては、バッテリ17の充電量を制御する充電モード制御を実行する。
また、ステップS11においては、バッテリ17の放電量を制御する放電モード制御を実行する。
【0059】
次に、ステップS12においては、例えば、SOC検出部31により検出されたバッテリ17の残容量(SOC)と、SOC目標値SOCtarと、発電機余裕温度ΔTと、比例ゲインαと、バッテリ17の端子間電圧Vと、所定の比例係数Iとによる下記数式(1)により、バッテリ17の充電量または放電量である充放電量ΔPを算出する。
【0060】
【数1】

【0061】
なお、上記数式(1)によれば、バッテリ17の残容量(SOC)が少ない場合には充放電量ΔP<0であって、充電モードとなり、充放電量(つまり充電量)ΔPは、発電機余裕温度ΔTの増大に伴い増大傾向に変化する。
一方、バッテリ17の残容量(SOC)が多い場合には充放電量ΔP>0であって、放電モードとなり、充放電量(つまり放電量)ΔPは、発電機余裕温度ΔTの増大に伴い増大傾向に変化する。
【0062】
次に、ステップS13においては、充放電量ΔPと、発電用モータ13の運転状態(例えば、現在の回転数Ngen(i)およびトルクTgen(i))とに基づき、発電用モータ13の新たな運転点(例えば、新たな回転数Ngen(i+1)およびトルクTgen(i+1))を算出し、エンドに進む。
なお、回転数Ngen(i+1)=回転数Ngen(i)+回転数変化ΔNgen、かつ、トルクTgen(i+1)=トルクTgen(i)+トルク変化ΔTgen、であって、負荷変化ΔNgen×ΔTgen=充放電量ΔPとなるように設定されている。
【0063】
これにより、例えば発電用モータ13に連結された内燃機関12の運転状態(例えば、BSFCなど)が最良となる運転状態を維持する状態で回転数およびトルクが低下することに伴う負荷の低下(ΔNgen×ΔTgen)は、放電モードの実行による充放電量(つまり放電量)ΔPによって相殺され、走行用モータ11の出力は不変に維持される。
【0064】
一方、例えば発電用モータ13に連結された内燃機関12の運転状態(例えば、BSFCなど)が最良となる運転状態を維持する状態で回転数およびトルクが増大することに伴う負荷の増加(ΔNgen×ΔTgen)は、充電モードの実行による充放電量(つまり充電量)ΔPによって相殺され、走行用モータ11の出力は不変に維持される。
【0065】
例えば下記表1および図8(A)〜(C)に示すように、バッテリ17の残容量(SOC)が中程度よりも多い状態(例えば、SOCが50%よりも大きい状態など)で放電モードが実行される場合には、例えば発電用モータ13に連結された内燃機関12の運転状態(例えば、BSFCなど)が最良となる運転状態を維持する状態で回転数が低下する。
この場合、発電機余裕温度ΔTが大きくなるほど、発電用モータ13の運転効率の増大を優先するようにして、回転数変化(つまり回転数の低下)ΔNgenが小さくなるように制御される。
一方、発電機余裕温度ΔTが小さくなるほど、発電用モータ13の温度の低下を優先するようにして、回転数変化(つまり回転数の低下)ΔNgenが大きくなるように制御される。
【0066】
また、例えば下記表1および図9(A)〜(C)に示すように、バッテリ17の残容量(SOC)が中程度よりも少ない状態(例えば、SOCが50%よりも小さい状態など)で充電モードが実行される場合には、例えば発電用モータ13に連結された内燃機関12の運転状態(例えば、BSFCなど)が最良となる運転状態を維持する状態で回転数が増大する。
この場合、発電機余裕温度ΔTが大きくなるほど、発電用モータ13の出力増大を優先するようにして、回転数変化(つまり回転数の増大)ΔNgenが大きくなるように制御される。
一方、発電機余裕温度ΔTが小さくなるほど、発電用モータ13の出力増大を行ないつつ発電用モータ13の温度が所定の上限温度よりも高くならないように保護することを優先して、回転数変化(つまり回転数の増大)ΔNgenが小さくなるように(つまり、充電量が減るように)制御される。
【0067】
【表1】

【0068】
上述したように、本実施の形態による車両用回転電機制御装置10によれば、発電用モータ13およびバッテリ17の状態に基づいてバッテリ17の充電量および放電量を制御することから、発電用モータ13の過熱を防止しつつ走行用モータ11の所望の出力を確保することができる。
【0069】
さらに、発電機余裕温度ΔTに基づいてバッテリ17の充電量および放電量を制御することから、発電用モータ13および第2PDU15の過熱(つまり、上限温度を超えてしまうこと)を的確に防止し、発電用モータ13および第2PDU15の温度が上限温度に至らない範囲内において各モータ11,13および内燃機関12の運転を柔軟に制御して、運転効率を向上させることができる。
【0070】
さらに、ハイブリッド車両1の運転状態が連続運転可能領域外であっても発電用モータ13の減磁が発生することを的確に防止し、ハイブリッド車両1の運転状態が連続運転可能領域内であれば柔軟な運転制御によって運転効率を向上させることができる。
さらに、バッテリ17が過放電あるいは過充電となることを防止することができる。
【0071】
なお、上述した実施の形態において、温度判定部24は、発電機余裕温度ΔTを磁石余裕温度ΔT1とチップ余裕温度ΔT2の和としたが、さらに、コイル温度を加えてもよい。これにより、電圧変化に伴う弱め界磁電流の影響を考慮することができる。
【0072】
なお、上述した実施の形態において、ハイブリッド車両1はシリーズ型に限定されず、例えばシリーズ型およびパラレル型の両方の機能を有するハイブリッド車両、あるいはパワースプリット型ハイブリッド車両などであってもよい。
また、車両用回転電機制御装置10は、ハイブリッド車両1に限定されず、例えば走行用モータ(MOT)11が駆動輪Wに連結された電動車両に搭載されてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 ハイブリッド車両
10 車両用回転電機制御装置
11 走行用モータ(走行用回転電機)
12 内燃機関
13 発電用モータ(発電用回転電機)
14 第1PDU
15 第2PDU(通電制御手段)
17 バッテリ(蓄電装置)
18 MGECU(制御手段)
24 温度判定部(温度余裕度算出手段)
26 主制御部(運転状態判定手段)
27 動力指示部
31 SOC検出部(残容量検出手段)
32 車速センサ(運転状態検出手段)
34 回転数検出部(運転状態検出手段)
35 トルク検出部(運転状態検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行駆動力を発生する走行用回転電機と、
内燃機関の動力によって発電する発電用回転電機と、
前記走行用回転電機および前記発電用回転電機と電気エネルギーの授受を行う蓄電装置と、
前記発電用回転電機の状態と、前記蓄電装置の状態とに基づいて、前記蓄電装置の充電量および放電量を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする車両用回転電機制御装置。
【請求項2】
前記発電用回転電機の通電制御を行なう通電制御手段と、
前記発電用回転電機の温度および前記通電制御手段の温度により前記発電用回転電機および前記通電制御手段の運転を許容する上限温度に対する温度余裕度を算出する温度余裕度算出手段とを備え、
前記制御手段は、前記温度余裕度に基づいて前記蓄電装置の充電量および放電量を制御することを特徴とする請求項1に記載の車両用回転電機制御装置。
【請求項3】
前記車両の運転状態を検出する運転状態検出手段と、
前記運転状態検出手段により検出された前記運転状態は所定の連続運転可能領域内であるか否かを判定する運転状態判定手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記運転状態判定手段により前記運転状態は前記連続運転可能領域外であると判定された場合には、前記発電用回転電機の温度を所定の減磁防止温度以下に維持するように前記蓄電装置の充電量および放電量を制御し、
前記運転状態判定手段により前記運転状態は前記連続運転可能領域内であると判定された場合には、前記減磁防止温度にかかわらずに前記蓄電装置の充電量および放電量を制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用回転電機制御装置。
【請求項4】
前記通電制御手段は、前記発電用回転電機の状態と、前記蓄電装置の充電量および放電量とに基づき、前記発電用回転電機の出力を制御することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1つに記載の車両用回転電機制御装置。
【請求項5】
前記蓄電装置の残容量を検出する残容量検出手段を備え、
前記制御手段は、
前記残容量が所定値以上の場合には前記蓄電装置の放電量を制御し、
前記残容量が前記所定値未満の場合には前記蓄電装置の充電量を制御することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1つに記載の車両用回転電機制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−6509(P2013−6509A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140374(P2011−140374)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】