説明

車両用安全装置

【課題】本発明はシートベルトが必ず装着され、且つ、走行中の運転者や同乗者の安全確保が可能な車両用安全装置を提供することを目的とする。
【解決手段】シートベルト1を装着した時のみエンジン8が始動する車両用安全装置に於いて、車両の走行中にシートベルト1のプレート11を外した時にスローダウンする減速手段4を少なくとも備えた構造とする。また走行中にシートベルト1の未装着状態が設定時間経過すると、光や音を発する警告手段5が備えられると良く、又、検知手段2としてスイッチを用い、且つ、減速手段4が、車両の走行中にプレート11を外してスイッチ2が切られた時にスローダウンするために燃料カットする指令を出す減速制御部41を介し、エンジン8のECU7内部に設けた燃料噴射制御部71に接続されたものとするのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシートベルトを装着しなければエンジンの始動が行えないと共に、走行中にシートベルトを外すと強制的にスローダウンさせ、再装着すれば正常な走行が出来る車両用安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両始動安全装置としては、自動車のエンジン始動する場合、エンジンキーを差し込み、それを回す際、運転者がシートベルトを装着していない時にはエンジンが掛からない構造のものが多く提案されている。またシートベルトの装着以外に、更にブザーが鳴りランプが点灯して、運転者にシートベルトが未装着であることを二重に警告することで、法規に定められたシートベルト装着を、運転者に必ず行なわせるようにしたものとして、特開平8−150894「自動車始動安全装置」が提案されている。しかしながら、これはエンジン始動の際の対処であり、走行中のシートベルトの装着に関しては何ら影響されるものではなかった。
【0003】
又、特に後部席シートベルトの装着を促進するものとして、特開2008−254506が提案されている。これは、後部席シートベルトの装着がない時は、車両状況に応じて警告方法が徐々に注意喚起を段階的に大きくなるように変化し、心理的に不安感をもたらすと共に不快感を与え、後部席シートベルトの装着を促進させるものである。しかしながら、これは同乗者自身が対処するものであり、自動車の走行は可能であると共に、後部席に客を乗せると、客に不愉快な思いをさせる恐れがあり、自動車の本来の目的である「快適な乗り心地」が失われる恐れが大いにあった。
【0004】
一方、自動車のエンジンはシートベルトを装着した時のみ始動させ、且つ、走行中にシートベルトを外した際に対処するものとして、特開平11−5512が提案されている。これはシートベルト強制装着装置に設定された装置解除速度以上での走行中に、装着されたシートベルトが未装着の状態になると、シートベルト強制装着装置は自動的に未装着の状態を感知し、強制的にハザード或いはホーンを作動させ、運転者自身及び外部の人達にシートベルトが未装着の走行状態であることを知らせ、シートベルトの再装着、或いは走行速度がシートベルト強制装着装置に設定された装置解除速度以下に減速された時、自動的にその状態を感知確認後、ハザード或いはホーンの作動が停止される構成となっていた。
【0005】
しかしながら、特開平11−5512は、運転者自身が対処するものであり、本発明のように車両自体を強制的に安全になるような対処が行えないため、シートベルトを外したままの状態でも車両の走行が可能であった。従って、本発明のように、走行中にシートベルトを外すと強制的にスローダウンさせ、車両自体が対応する構造のものは従来にはなかった。尚、本発明は、走行中にシートベルトを外した後、再装着すれば正常な走行が出来るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−150894号公報
【特許文献2】特開2008−254506号公報
【特許文献3】特開平11−5512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はシートベルトが必ず装着され、且つ、走行中の運転者や同乗者の安全確保が可能な車両用安全装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記現状に鑑みて成されたものであり、つまり、シートベルトを装着しなければ車両のエンジンが始動出来ない車両用安全装置に於いて、車両の走行中にシートベルトが外された時にスローダウンする減速手段を少なくとも備える構造とする。また車両の走行中にシートベルトを外して設定時間経過した時に、光や音が発せられる警告手段を備えると良い。又、シートベルトが取付けられたか否かを検知する検知手段として、スイッチを用い、且つ、前記減速手段が、車両の走行中にシートベルトを外すとスイッチが切られてスローダウンするために燃料カットする指令が出される減速制御部を介し、エンジンのECU内部に設けた燃料噴射制御部に接続したものとするのが好ましい。尚、本発明で言う「車両」とは、乗用車,バス,大型貨物車などシートベルトの装着が道路交通法で義務付けられているものを指す。
【発明の効果】
【0009】
請求項1のようにシートベルト(1)の装着が確認された場合のみ車両のエンジン始動可能な車両用安全装置に於いて、車両の走行中にシートベルト(1)が外された時にスローダウンする減速手段(4)を少なくとも備えることにより、シートベルト(1)が走行中も殆んど装着されるため、走行中の運転者や同乗者の安全確保が可能なものとなる。
【0010】
請求項2のようにプレート(11)が、車両の走行中にバックル(12)から外されて設定時間経過した時に、光や音が発せられる警告手段(5)を備えることにより、走行中の運転者や同乗者の安全確保がより確実なものとなる。
【0011】
請求項3に示すように検知手段(2)としてスイッチを用いると、構造が簡単となり、
且つ、減速手段(4)が、車両の走行中にバックル(12)からプレート(11)が外されてスイッチ(2)を切った時にスローダウンするために燃料カットする指令が出される減速制御部(41)を介し、エンジン(8)のECU(7)内部に設けた燃料噴射制御部(71)に接続されることにより、既存のECU(7)の燃料カット機能部を利用して操作することが可能となるので、殆んど部品が不要で、前記スイッチ(2)の入切の出力データーをECU(7)の図示しないマイクロコンピューターに新たな制御プログラムとして追加させるだけの簡単な作業で且つ安価に行えるものとなるのである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態の要部を示す機能ブロック図である。
【図2】図1に示す減速や警告及び解除手順を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明の実施形態を示す図であり、これに基づき説明する。(1)はオス側であるプレート(11)を一端に設けると共に他端にメス側であるバックル(12)を設けた一般的なシートベルトであり、前記バックル(12)内部には、検知手段(2)であるスイッチが設けられている。この検知手段(2)は、シートベルト(1)のプレート(11)がバックル(12)に挿入して取付けられたか否かを検知するものであり、プレート(11)をバックル(12)に挿入して取付けられた時に出力されるものである。この検知手段(2)としては、スイッチや接近センサーなどのように出力できるものであれば良い。特には図中の如くプレート(11)がバックル(12)に挿入して来ると、スイッチ(2)の可動部がプレート(11)で奥へ押込まれ、スイッチ(2)の固定側と接触して通電すると共に、プレート(11)が外されると、バネ力で可動部が固定側と離れて通電しなくなる構造のものとするのが好ましい。このようなスイッチ(2)を用いれば安価で簡単に取付けできるものとなる。尚、前記スイッチ(2)は、運転席のシートベルト(1)のプレート(11)だけでなく、車内全部のシートベルト(1)のプレート(11)に設けたものとしても良い。
【0014】
(3)はスイッチ(2)の出力データー(通電)によりシートベルト(1)の装着が確認された場合のみ車両のエンジン(8)を始動可能に制御する始動制御手段であり、該始動制御手段(3)は、スイッチ(2)の出力データーを受信した時にエンジン(8)の通常の始動が行えるが、スイッチ(2)の出力データーを受信しない時にはエンジン(8)の始動が行えないものであれば良く、この始動制御手段(3)は多く提案されており、公知のものであるので、これ以上の詳細な説明を省略する。
【0015】
(4)はプレート(11)を外した(シートベルト未装着状態)時にスローダウンさせる減速手段であり、該減速手段(4)には、車両の走行中にプレート(11)を外してスイッチ(2)が切られた時にスローダウンするために燃料カットする指令を出す減速制御部(41)があり、該減速制御部(41)はエンジン(8)の後述するECU(7)内部に設けた燃料噴射制御部(71)に接続されている。また前記減速制御部(41)は走行中にスイッチ(2)が切られた時に、燃料噴射制御部(71)へ燃料カットしてスローダウンするように指令するためのものである。この時のスローダウンの程度としては、時速10Km〜30Km前後に減速するのが好ましい。尚、前記減速制御部(41)はECU(7)内部に設けても良い。
【0016】
(5)はプレート(11)が、車両の走行中にバックル(12)から外されて設定時間経過した時に、光や音を発する警告手段であり、該警告手段(5)には、光や音を発する警告機能部(51)と、プレート(11)をバックル(12)から外してスイッチ(2)が切れると設定時間までカウントした後に警告機能部(51)へ作動指令を出すタイマー制御部(52)とがある。前記警告機能部(51)では、ランプの点滅,警告音,音声メッセージなどを出力する。また前記タイマー制御部(52)は後述するECU(7)のカウント機能部(72)と接続している。前記タイマー制御部(52)のカウントする設定時間としては、2分〜4分前後の範囲とするのが良い。尚、前記タイマー制御部(52)はECU(7)内部に設けても良い。(6)は減速手段(4)によるスローダウンと、警告手段(5)による光や音を発する警告とを解除するため解除手段であり、該解除手段(6)は、スイッチ(2)が入れられた後に切れると、減速制御部(41)とタイマー制御部(52)を介して警告機能部(51)とに作動停止指令が送られて、それぞれの機能を停止させる。(7)はエンジン制御用のECUであり、これは車速,エンジン回転速度,エアコン信号,スターター信号などが入力処理回路で処理し、マイクロコンピューターで各機能を制御するものであり、本発明に於いては、ECU(7)の燃料噴射制御部(71)とカウント機能部(72)や図示しない速度制御部などを利用する。このECU(7)は公知のものであるので、詳細な説明は省略する。尚、ECU(7)の速度制御部は減速制御部(41)と接続され、スイッチ(2)が走行中に切られたものか或は停止中に切られたものかを判断するために、速度制御部が利用される。
【0017】
次に本発明による車両のエンジン(8)の始動手順,スローダウン手順,警告手順,解除手順を図2に基づいて説明する。先ず始めに車両のエンジン(8)の始動手順について説明する。先ず車両のハンドル付近に設けられたキー挿入穴に、エンジンキーを差し込み、それを回転する。この時、シートベルト(1)が装着されていない場合は、スイッチ(2)が切られた状態であるため、始動制御手段(3)には、スイッチ(2)の出力データーが受信できず、始動制御手段(3)からエンジン始動指令が出せないので、エンジン(8)は始動不可状態となるのである。これに対して、シートベルト(1)が装着された場合には、スイッチ(2)が入り、その出力データーは、図1の中線矢印のように始動制御手段(3)へ出力させる。これによって、始動制御手段(3)からエンジン始動指令が出され、エンジン(8)は始動するのである。
【0018】
エンジン(8)が始動し、車両が走行した後に、運転者又は同乗者が物を手に取る際や衣服の着脱などの用事でシートベルト(1)を外さなければならない時がある。この場合には、シートベルト(1)を走行中に外すと、車速はスローダウンする。このスローダウン手順について詳細に説明する。先ず、走行中にシートベルト(1)のプレート(11)がバックル(12)から外されると、スイッチ(2)の可動部がバネの力で元の位置に戻され、通電しなくなり、スイッチ(2)が切れる。すると、減速制御部(41)ではスイッチ(2)からの出力データーが受信されなくなり、即座に減速制御部(41)から燃料カットの指令を燃料噴射制御部(71)に送り、エンジン(8)へ送る燃料がカットされる。この結果、車速はスローダウンする。この時、シートベルト(1)が未装着状態の間は時速10Km〜30Km前後の走行になってしまうため、運転者は用事を済ました後、直ぐにシートベルト(1)を装着するのである。尚、この時、同乗者がシートベルト(1)を外した場合には、同乗者に早くシートベルト(1)の装着を運転者から促す。又、前記減速制御部(41)は、スイッチ(2)が切れると単に、燃料噴射制御部(71)に燃料カットの指令を出すのではなく、予めスイッチ(2)が入った状態から切れた時のみ燃料カットの指令を出すのである。つまり、減速手段(4)は車両の停止状態では対応しないように制御されている。またECU(7)の図示しない速度制御部からの情報によって、スイッチ(2)が走行中に切られたものか或は停止中に切られたものかを判断して、走行中だけ減速制御部(41)が対応するものとしている。
【0019】
次に警告手順について説明する。先ず、車両の走行中にシートベルト(1)が外されると、スイッチ(2)が切れて通電しなくなる。すると、スイッチ(2)の出力データーが送信されなくなると、減速制御部(41)を介して燃料噴射制御部(71)による燃料カットと共に、タイマー制御部(52)によってカウント機能部(72)でカウントし、そのカウントが所定時間になると、例えば3分に達すると、タイマー制御部(52)から警告機能部(51)に作動指令が出される。この結果、ランプの点滅,警告音,音声メッセージなどによって、運転者及び同乗者に警告する。そして、外されたシートベルト(1)が装着されるまで警告が続行するのである。
【0020】
次に減速手段(4)によるスローダウンと、警告手段(5)による警告を解除するための解除手順について説明する。先ず、外されたシートベルト(1)が装着されると、スイッチ(2)が入り、その出力データーによって解除手段(5)から作動停止指令が減速制御部(41)と警告機能部(51)とに送られ、それぞれの機能を停止させる。従って、車両の速度はアクセルペタルの踏み具合に応じて加速でき、且つ、ランプの点滅,警告音,音声メッセージなどによる警告が止み静かになるのである。
【符号の説明】
【0021】
1 シートベルト
11 プレート
12 バックル
2 検知手段(スイッチ)
3 始動制御手段
4 減速手段
41 減速制御部
5 警告手段
7 ECU
71 燃料噴射制御部
8 エンジン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートベルト(1)のプレート(11)がバックル(12)に挿入して取付けられたか否かを検知する検知手段(2)と、該検知手段(2)により前記シートベルト(1)の装着が確認された場合のみ車両のエンジン(8)を始動可能に制御する始動制御手段(3)とを少なくとも具備した車両用安全装置に於いて、車両の走行中に前記プレート(11)を前記バックル(12)から外した時にスローダウンさせる減速手段(4)が少なくとも備えられたことを特徴とする車両用安全装置。
【請求項2】
前記シートベルト(1)の前記プレート(11)が、車両の走行中に前記バックル(12)から外されて設定時間経過すると、光や音を発する警告手段(5)が備えられた請求項1記載の車両用安全装置。
【請求項3】
前記検知手段(2)がスイッチであり、且つ、前記減速手段(4)が、前記プレート(11)を外して前記スイッチ(2)が切れるとスローダウンするために燃料カット指令を出す減速制御部(41)を介し、前記エンジン(8)のECU(7)内部に設けた燃料噴射制御部(71)に接続された請求項1記載の車両用安全装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−96558(P2012−96558A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243174(P2010−243174)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(306041503)
【Fターム(参考)】